説明

アダマンタン誘導体、エポキシ樹脂及びそれらを含む樹脂組成物を用いた光学電子部材

【課題】透明性、耐光性などの光学特性、長期耐熱性、及び誘電率などの電気特性に優れた硬化物を与える樹脂組成物及びその樹脂組成物を用いた光学電子部材を提供する。
【解決手段】アダマンタン誘導体、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、それらを含む樹脂組成物及びその樹脂組成物を用いた光学電子部材である。電子回路用封止剤、光学電子部材及びこれらに用いる接着剤として好適な、透明性、耐光性などの光学特性、長期耐熱性、誘電率などの電気特性に優れた硬化物を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアダマンタン誘導体、新規なアダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂及びそれらを含む樹脂組成物を用いた光学電子部材に関し、詳しくは、電子回路用封止剤(光半導体用封止剤及び有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子用封止剤など)及び光学電子部材(光導波路、光通信用レンズ及び光学フィルムなど)などに用いられる樹脂組成物、並びにその樹脂組成物を用いた光学電子部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アダマンタンは、シクロヘキサン環が4個、カゴ形に縮合した構造を有し、対称性が高く、安定な化合物であり、その誘導体は、特異な機能を示すことから、医薬品原料や高機能性工業材料の原料などとして有用であることが知られている。アダマンタンは、例えば、光学特性や耐熱性などを有することから、光ディスク基板、光ファイバーあるいはレンズなどに用いることが試みられている(例えば、特許文献1及び2参照)。また、アダマンタンエステル類を、その酸感応性、ドライエッチング耐性、紫外線透過性などを利用して、フォトレジスト用樹脂原料として、使用することが試みられている(例えば、特許文献3参照)。
近年、液晶や有機EL素子などを用いたフラットパネルディスプレイの高精細化、高視野角化、高画質化、発光ダイオード(LED)などの光半導体を用いた光源の高輝度・短波長化、白色化、さらに電子回路の高周波数化や光を用いた回路・通信など、光学・電子部品の高性能化や改良のための検討が進められている。
その改良手法として、液晶材料や有機EL素子用の発光材料などの基本材料の研究開発がされているが、それらの材料と共に使用されるコーティング材料あるいは封止材料などの樹脂の高性能化も検討されている。光学・電子部品のコーティング材料や封止材料用の樹脂として、種々の熱硬化樹脂や光硬化樹脂、あるいは熱可塑性樹脂が適用されている。それらは樹脂単独での耐熱性や透明性、溶解性、密着性などの特性に応じて適用されている。
高性能化が進んでいるLEDの分野では、近紫外や青色発光素子からなる白色LEDを用いた照明やライトなどへの提案や実用化が進められており、将来、家庭用の照明や自動車などへの展開が期待されている。LED素子は無機半導体に蛍光体を含有した樹脂で封止するが、従来のビスフェノールA型エポキシ樹脂等の熱硬化タイプの樹脂では耐熱性や耐光性に限界があり、それらの要求特性を満たす封止材料が求められている(例えば、非特許文献1参照)。その改良品として、短波長域での光吸収の少ない水添系脂環エポキシなども提案されているが、逆に耐熱性が低下する。
【0003】
また、ディスプレイ分野では、小型、高精細、省エネに優れる有機EL素子が使用されており、トップエミッション型などの方式が採用されている。それにともない、有機EL素子の封止樹脂としても、従来のステンレスなどの封止基板とガラス基板を接着する機能やガスバリア性などの機能のほかに、封止樹脂自体での透明性や耐光性、耐熱性、機械強度などがより求められている。(例えば、非特許文献2参照)。
また、半導体などを集積した電子回路についても、情報化社会の進展に伴い、情報量や通信速度の増大と装置の小型化が進んでおり、回路の小型化、集積化、高周波数化が必要となっている。さらに、より高速処理が可能となる光導波路などを用いた光回路も検討されている。これらの用途に使用されている封止樹脂やフィルム、あるいはレンズ用の樹脂として、従来、使用されているビスフェノールA型のエポキシ樹脂などでは、電子回路では誘電率が高かったり、光導波路やLED封止では芳香環による光吸収のため、透明性の低下や樹脂の劣化による黄変などが発生する。
そこで、炭素−炭素二重結合をエポキシ化する方法、多価の脂環式アルコールをエピクロロヒドリンと反応させる方法、芳香族エポキシ樹脂の芳香環を水素化する方法などで製造される、芳香環を持たない脂環式エポキシ樹脂が用いられている。しかしながら、炭素−炭素二重結合をエポキシ化する方法で得られる環状脂肪族エポキシ樹脂(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなど)の硬化物は脆く、衝撃強度や金属などへの接着強度が不足している。また、多価の脂環式アルコールをエピクロロヒドリンと反応させる方法や芳香族エポキシ樹脂の芳香環を水素化する方法で得られる脂環式エポキシ樹脂としてビスフェノールAやビスフェノールFを水添したエポキシ樹脂が知られているが(例えば、特許文献4参照)、耐熱性がビスフェノール型エポキシ樹脂より劣っている。さらに、水添ビスフェノールAをエピクロロヒドリンと反応させて得られたエポキシ樹脂では、その製造上、製品中に塩素分が残りやすく、誘電率の上昇など電気特性の劣化を招くという問題があった。
一方、アダマンタン骨格を有する高分子化合物は、耐熱性が良好であり、例えば、アダマンタンジオールを用いたポリエステル、ポリカーボネート等が知られている。また、アダマンタンを用いた樹脂組成物として、1,3−ビス(グリシジルオキシフェニル)アダマンタンを用いた樹脂組成物(例えば、特許文献5参照)、2,2−ビス(グリシジルオキシフェニル)アダマンタンを用いた樹脂組成物(例えば、特許文献6参照)が開示されている。これらの樹脂組成物は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と比較して、誘電率の低下、透明性の向上が認められているが、これらのアダマンタンは芳香環を有していることからその効果は十分とは言えず、また、これらのアダマンタンは高融点の結晶であるため、硬化剤と混合する際に加熱する必要があり、このため可使時間が短くなるという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平6−305044号公報
【特許文献2】特開平9−302077号公報
【特許文献3】特開平4−39665号公報
【非特許文献1】技術情報協会発行:月刊「マテリアルステージ」2003年6月号20〜24頁
【非特許文献2】技術情報協会発行:月刊「マテリアルステージ」2003年3月号52〜64頁
【特許文献4】特開2000−143939号公報
【特許文献5】特開2003−321530号公報
【特許文献6】特開平10−130371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような状況から、電子回路用封止剤(光半導体用封止剤及び有機EL素子用封止剤など)、光学電子部材(光導波路、光通信用レンズ及び光学フィルムなど)及びこれらに用いる接着剤として好適な、透明性、耐光性などの光学特性、長期耐熱性、及び誘電率などの電気特性に優れた硬化物を与えるアダマンタン誘導体、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、それらを含む樹脂組成物及びその樹脂組成物を用いた光学電子部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、特定のアダマンタン誘導体や特定のアダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂を用いることにより、光学電子部材として好適な硬化物を与える樹脂組成物が得られることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、以下のアダマンタン誘導体、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、それらを含む樹脂組成物及びその樹脂組成物を用いた光学電子部材を提供するものである。
1. 下記一般式(I)で表されるアダマンタン誘導体。
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、Wは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン置換炭化水素基、環式炭化水素基、ハロゲン置換環式炭化水素基、水酸基、カルボキシル基、及び2つのWが一緒になって形成された=Oから選ばれる基を示す。Xは、下記一般式(II)
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表される基を示す。Yは、−CO2−、−O−、−N(R3)−(R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基)及び−N(Z)−から選ばれる基を示す。Zは、下記式(III)又は(IV)
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、R1はメチル基又はエチル基を示す。)
で表される基を示す。kは0〜10の整数である。mは0〜14の整数、nは2〜16の整数であり、かつm+n=16である。]
2. 一般式(I)において、Xがアダマンタン骨格の橋頭部に結合し、nが2〜4である上記1に記載のアダマンタン誘導体。
3. 一般式(I)において、nが2であり、Xがアダマンタン骨格の同一のメチレン部位に結合した上記1に記載のアダマンタン誘導体。
4. 一般式(I)において、Yが−O−である上記2又は3に記載のアダマンタン誘導体。
5. 加水分解性塩素分が500質量ppm以下である上記1〜4のいずれかに記載のアダマンタン誘導体。
6. 下記一般式(V)又は(VI)で表されるアダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂。
【0013】
【化4】

【0014】
[式中、X、Y及びR1は上記と同じである。p及びqは0〜5の整数である。]
7. 加水分解性塩素分が500質量ppm以下である上記6に記載のエポキシ樹脂。
8. 対応する芳香族アダマンタン誘導体をロジウム触媒又はルテニウム触媒の存在下で核水素化することを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
9. 上記1〜5のいずれかに記載のアダマンタン誘導体及び/又は上記6もしくは7に記載のエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤とを含む樹脂組成物。
10. エポキシ樹脂硬化剤が、カチオン重合開始剤及び/又は酸無水物系硬化剤である上記9に記載の樹脂組成物。
11. 上記9又は10に記載の樹脂組成物を用いてなる光学電子部材。
12. 上記9又は10の樹脂組成物を用いてなる電子回路用封止剤。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアダマンタン誘導体及び/又はアダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物は、電子回路用封止剤(光半導体用封止剤及び有機EL素子用封止剤など)、光学電子部材(光導波路、光通信用レンズ及び光学フィルムなど)及びこれらに用いる接着剤として好適な、透明性、耐光性などの光学特性、長期耐熱性、誘電率などの電気特性に優れた硬化物を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のアダマンタン誘導体は、下記一般式(I)で表される。
【0017】
【化5】

【0018】
式中、Wは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン置換炭化水素基、環式炭化水素基、ハロゲン置換環式炭化水素基、水酸基、カルボキシル基、及び2つのWが一緒になって形成された=Oから選ばれる基を示す。Wで示される炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基及びアルコキシ基などが好ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びシクロヘキシル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基及びエトキシ基などが挙げられる。ハロゲン置換炭化水素基としては、上記炭化水素基の水素原子が1個以上ハロゲン原子で置換された基、例えばトリフルオロメチル基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。
Wで示される環式炭化水素基としては、例えば炭素数5〜10のシクロアルキル基、具体的にはシクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基及びエチルシクロヘキシル基などが挙げられる。また、ハロゲン置換環式炭化水素基としては、上記環式炭化水素基の水素原子が1個以上ハロゲン原子で置換された基、例えばフルオロシクロペンチル基、フルオロシクロヘキシル基、トリフルオロメチルシクロペンチル基及びトリフルオロメチルシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0019】
上記一般式(I)において、Xは、下記一般式(II)で表される基を示す。
【0020】
【化6】

【0021】
式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を示す。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、各種プロピル基及び各種ブチル基が挙げられる。複数のR2は同一であっても異なっていてもよい。
上記一般式(I)において、Yは、−CO2−、−O−、−N(R3)−(R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基)及び−N(Z)−から選ばれる基を示す。Zは、下記式(III)又は(IV)で表される基を示す。R3のうちの炭素数1〜4のアルキル基は、上記R2で説明したとおりである。
【0022】
【化7】

【0023】
式中、R1はメチル基又はエチル基を示す。kは0〜10の整数である。上記一般式(I)において、mは0〜14の整数、nは2〜16の整数であり、かつm+n=16である。
本発明のアダマンタン誘導体としては、例えば、一般式(I)において、Xがアダマンタン骨格の橋頭部に結合し、nが2〜4であるアダマンタン誘導体、nが2であり、Xがアダマンタン骨格の同一のメチレン部位に結合したアダマンタン誘導体、及びこれらの誘導体においてYが−O−であるアダマンタン誘導体などが挙げられる。上記一般式(I)で表されるアダマンタン誘導体においては、加水分解性塩素分は500質量ppm以下であることが好ましい。
上記一般式(I)で表されるアダマンタン誘導体は、非芳香族アダマンタン誘導体であり、耐熱性及び透明性に優れるアダマンタンに、シクロヘキシル構造を含む連結基を介して環状エーテル基を結合させたものである。このような構造とすることにより、耐熱性及び透明性に加えて、耐光性や誘電率などが向上し、また、実用上必要な溶解性が付与される。
上記一般式(I)で表されるアダマンタン誘導体の合成方法としては、対応するアダマンタン含有カルボン酸誘導体やアダマンタン含有アルコール誘導体をエピクロロヒドリンなどと反応させて合成する方法や、対応する芳香族アダマンタン誘導体を核水添して合成する方法があるが、得られる非芳香族アダマンタン誘導体中の加水分解性塩素分を少なくするには後者の合成方法が望ましい。上記一般式(I)で表されるアダマンタン誘導体の合成法としては、例えば下記合成法1〜3が挙げられる。
合成法1は、例えば下記式(i−1)及び(i−2)
【0024】
【化8】

【0025】
で表される1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン及び2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタンなどのアダマンタンビスフェノールグリシジルエーテル類を水素添加して、非芳香族系アダマンタン誘導体を合成する方法である。
上記水素添加の際の反応温度は、通常20〜150℃程度、望ましくは40〜100℃である。反応温度が20℃以上であると、反応速度が低下せず適度のものとなるため、反応時間が短縮される。また、反応温度が150℃以下であると、目的物であるアダマンタン誘導体の水素添加反応が抑制される。反応の際の圧力は、水素圧力で1〜30MPa程度、望ましくは3〜10MPaである。圧力が30MPa以下であると、安全性が確保されるので特別な装置が不要となり、産業上有用である。反応時間は、通常1分〜24時間程度、望ましくは1〜10時間である。
【0026】
上記反応は、通常、ロジウム触媒又はルテニウム触媒の存在下で行う。ロジウム触媒としては、ロジウムを活性炭やアルミナに担持させたもの、及び酸化ロジウムなどが挙げられる。ルテニウム触媒としては、ルテニウムを活性炭やアルミナに担持させたもの、酸化ルテニウム及びルテニウムブラックなどが挙げられる。
ロジウム触媒又はルテニウム触媒の使用割合は、原料モノマーに対して、ロジウム又はルテニウム換算で0.01〜10質量%程度であり、好ましくは0.05〜5質量%である。これらの触媒の使用割合が0.01質量%以上であると十分な活性が得られ、また、活性向上の観点から10質量%以下で十分であり、経済性の面からも実用的である。
反応は、溶媒の存在下で行う。溶媒としては、上記反応条件において安定な溶媒であればよく、さらに原料モノマーの溶解度の点からエーテル系溶媒及びエステル系溶媒が優れている。具体的には、テトラヒドロフラン及び酢酸エチルなどが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
反応生成物は、蒸留、晶析、カラム分離などにより精製することができ、精製方法は、反応生成物の性状と不純物の種類により選択することができる。
【0027】
合成法2は、非芳香族アダマンタン類とアルキル基含有環状エーテル化合物とを塩基性触媒の存在下で反応させて、環状エーテル基を導入した非芳香族アダマンタン誘導体を合成する方法である。
非芳香族アダマンタン類としては、1,3−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)アダマンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)アダマンタン等のアダマンタンビスフェノール類を水素化して得られるシクロヘキシル基含有アダマンタン誘導体、1,3−ビス(4−アミノシクロヘキシル)アダマンタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)アダマンタン等のアダマンタンビスアニリン類を水素化して得られるシクロヘキシル基含有アダマンタン誘導体、1,3−ビス(4−ヒドロキシカルボニルシクロヘキシル)アダマンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシカルボニルシクロヘキシル)アダマンタン等のアダマンタンビスアニリン類を水素化して得られるシクロヘキシル基含有アダマンタン誘導体などが挙げられる。
アルキル基含有環状エーテル化合物としては、例えば、下記一般式
【0028】
【化9】

【0029】
[式中、X1はCl,Br,I,OTs(トシルオキシ基)又はOMs(メシルオキシ基)である。]
で表される置換アルキル基含有環状エーテル化合物などが挙げられる。
上記非芳香族アダマンタン類とアルキル基含有環状エーテル化合物との反応は、通常0〜200℃程度、望ましくは20〜150℃の温度において行う。反応温度が0℃以上であると、反応速度が低下せず適度のものとなるため、反応時間が短縮される。また、反応温度が200℃以下であると、生成物の着色が抑制される。反応の際の圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaである。圧力が10MPa以下であると、安全性が確保されるので特別な装置が不要となり、産業上有用である。反応時間は、通常1分〜24時間程度、望ましくは1〜10時間である。
【0030】
上記反応は、塩基性触媒の存在下で行う。塩基性触媒としては、ナトリウムアミド,トリエチルアミン,トリブチルアミン,トリオクチルアミン,ピリジン,N,N−ジメチルアニリン,1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN),1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU),テトラメチルアンモニウムクロリド,テトラエチルアンモニウムクロリド,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水素化ナトリウム,燐酸ナトリウム,燐酸カリウム,炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,酸化銀,ナトリウムメトキシド及びカリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。
反応原料に対する塩基性触媒の使用割合は、塩基性触媒/原料モノマーの活性水素(モル比)が、0.8〜10程度となる量であり、好ましくは1〜5となる量である。
上記反応の際には、テトラメチルアンモニウムクロライド及びテトラエチルアンモニウムブロマイドなどの4級アンモニウム塩を相間移動触媒として添加してもよい。この4級アンモニウム塩の使用割合は、非芳香族アダマンタン類に対して0.01〜20mol%程度であり、好ましくは0.1〜10mol%である。
【0031】
反応は、無溶媒又は溶媒の存在下で行う。溶媒としては、上記非芳香族アダマンタン類の溶解度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いるのが有利である。溶媒の使用量は上記アダマンタン類の濃度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上となる量である。このとき、上記アダマンタン類は懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。溶媒として具体的には、ヘキサン,ヘプタン、トルエン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、酢酸エチル、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランなどが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
反応生成物は、蒸留、晶析、カラム分離などにより精製することができ、精製方法は、反応生成物の性状と不純物の種類により選択することができる。
【0032】
合成法3は、非芳香族アダマンタン類とハロヒドリン化合物を酸性条件下で付加反応させた後、塩基性触媒の存在下で閉環反応させて、非芳香族系アダマンタンのエポキシ化合物を合成する方法である。
非芳香族アダマンタン類としては、1,3−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)アダマンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)アダマンタン等のアダマンタンビスフェノール類を水素化して得られるシクロヘキシル基含有アダマンタン誘導体などが挙げられる。
ハロヒドリン化合物としては、例えば、下記一般式
【0033】
【化10】

【0034】
(式中、X2はCl,Br又はIである。)
で表される化合物などが挙げられる。
ハロヒドリン化合物の付加反応は、通常0〜100℃程度、望ましくは20〜85℃の温度において行う。反応温度が0℃以上であると、反応速度が低下せず適度のものとなるため、反応時間が短縮される。また、反応温度が100℃以下であると、ハロゲン元素含有物質の副生量が抑制される。反応の際の圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaである。圧力が10MPa以下であると、安全性が確保されるので特別な装置が不要となり、産業上有用である。反応時間は、通常1分〜24時間程度、望ましくは30分〜3時間である。
上記付加反応は、通常、酸性触媒の存在下で行う。酸性触媒としては、硫酸、三フッ化ホウ素及び四塩化スズなどが挙げられる。
酸性触媒の使用割合は、原料モノマーに対して0.1〜20mol%程度であり、好ましくは0.5〜10mol%である。酸性触媒の使用割合が20mol%以下であると、塩素含有物質の副生量が抑制され、0.1mol%以上であると、反応速度が低下せず適度のものとなるため、反応時間が短縮される。
【0035】
反応は、無溶媒又は溶媒の存在下で行う。溶媒としては、上記非芳香族アダマンタン類の溶解度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上の溶媒を用いるのが有利である。溶媒の使用量は上記アダマンタン類の濃度が0.5質量%以上、望ましくは5質量%以上となる量である。このとき、上記アダマンタン類は懸濁状態でもよいが、溶解していることが望ましい。溶媒として具体的には、ヘキサン,ヘプタン、トルエン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、酢酸エチル、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランなどが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
合成法3においては、上記付加反応に続いて、塩基性触媒の存在下で閉環反応を行う。この閉環反応は、通常20〜100℃程度、望ましくは30〜80℃の温度において行う。反応温度が20℃以上であると、反応速度が低下せず適度のものとなるため、反応時間が短縮される。また、反応温度が100℃以下であると、副反応が抑制され、得られるアダマンタン誘導体中の塩素分を低減することができる。反応の際の圧力は、絶対圧力で0.01〜10MPa程度、望ましくは常圧〜1MPaである。圧力が10MPa以下であると、安全性が確保されるので特別な装置が不要となり、産業上有用である。反応時間は、通常1分〜24時間程度、望ましくは30分〜10時間である。
【0036】
塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,燐酸ナトリウム,燐酸カリウム,炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
塩基性触媒の使用割合は、ハロヒドリン化合物の付加反応に用いた酸触媒の中和に使用される量を除いて、原料モノマーの水酸基、カルボキシル基に対して1〜2当量程度、好ましくは1〜1.5当量である。塩基性触媒の使用割合が2当量以下であると、グリシジルエーテルへの水和反応が抑制され、1当量以上であると、閉環反応によるグリシジルエーテル化が十分に進行する。
上記のハロヒドリン化合物の付加反応で溶媒を用いた場合、この溶媒をそのまま使用することができる。上記付加反応を無溶媒で行った場合は、上記と同様の溶媒を用いることができる。
反応生成物は、蒸留、晶析、カラム分離などにより精製することができ、精製方法は、反応生成物の性状と不純物の種類により選択することができる。
上記合成法1〜3で得られる反応生成物から目的化合物を単離せず、目的化合物の硬化性基に原料モノマーをさらに反応させることにより、下記一般式(V)又は(VI)
【0037】
【化11】

【0038】
[式中、X、Y及びR1は上記と同じである。p及びqは0〜5の整数である。]
で表されるアダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂を得ることができる。上記一般式(V)又は(IV)で表されるエポキシ樹脂においては、加水分解性塩素分は500質量ppm以下であることが好ましい。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、上記一般式(I)で表されるアダマンタン誘導体及び/又は上記一般式(V)もしくは(IV)で表されるエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤とを含む。本発明の樹脂組成物においては、硬化物の機械強度や樹脂組成物の溶解性、作業性などの最適化のために、上記一般式(I)で表されるアダマンタン誘導体及び/又は上記一般式(V)もしくは(IV)で表されるエポキシ樹脂と、他の公知のエポキシ樹脂との混合樹脂も使用することができる。
公知のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールGジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAFジグリシジルエーテル、ビスフェノールCジグリシジルエーテル等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ樹脂等の含窒素環エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、低吸水率硬化体タイプの主流であるビフェニル型エポキシ樹脂及びジシクロ環型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル等の多官能エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂等の含フッ素エポキシ樹脂、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルなどが挙げられる。これらの中でも芳香環を有しないエポキシ樹脂好ましい。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
上記公知のエポキシ樹脂は、常温で固形でも液状でもよいが、一般に、使用するエポキシ樹脂の平均エポキシ当量が、120〜2000のものが好ましい。エポキシ当量が120以上であると、樹脂組成物の硬化体が脆くならず適度の強度が得られる。また、エポキシ当量が2000以下であると、その硬化体のガラス転移温度(Tg)が低くならず適度のものとなる。
上記一般式(I)で表されるアダマンタン誘導体及び/又は上記一般式(V)もしくは(IV)で表されるエポキシ樹脂と、上記公知のエポキシ樹脂との混合樹脂中、上記一般式(I)で表されるアダマンタン誘導体及び/又は上記一般式(V)もしくは(IV)で表されるエポキシ樹脂の含有量は5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上である。この含有量が5質量%以上であると、本発明の樹脂組成物の光学特性、長期耐熱性及び電気特性が充分なものとなる。
【0041】
本発明の樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂硬化剤としては、カチオン重合開始剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤及びフェノール系硬化剤から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。すなわち、本発明の樹脂組成物は、カチオン重合開始剤を用いたカチオン重合により、酸無水物系硬化剤やアミン系硬化剤などの硬化剤を用いた反応により、あるいはカチオン重合開始剤と酸無水物系硬化剤を用いた反応により硬化させることができる。
カチオン重合開始剤としては、熱又は紫外線によりエポキシ基あるいはオキセタニル基と反応するものであればよく、例えば、p−メトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族ジアゾニウム塩、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族スルホニウム塩、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族ヨードニウム塩、芳香族ヨードシル塩、芳香族スルホキソニウム塩、メタロセン化合物などが挙げられる。中でもトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族スルホニウム塩、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族ヨードニウム塩が最適である。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
カチオン重合開始剤の使用量は、上記アダマンタン誘導体及び/又は上記エポキシ樹脂、あるいは上記混合樹脂100質量部(以下、「樹脂成分」と称することがある。)に対して、0.01〜5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜3.0質量部である。カチオン開始剤の含有率を上記範囲とすることにより、良好な重合及び光学特性など物性を発現できる。
【0042】
本発明において、硬化剤としては、目的に応じて酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤及びアミン系硬化剤などを併用することができる。耐熱性、透明性に優れる本発明のアダマンタン誘導体を硬化剤と反応させることで、耐熱性、透明性の他に耐光性、さらに誘電率などが向上し、また、実用上必要となる溶解性が付与される。
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。中でもヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸が最適である。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
酸無水物系硬化剤を用いる場合、その硬化を促進する目的で硬化促進剤を配合してもよい。この硬化促進剤の例としては、3級アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン化合物類またはこれらの塩、オクチル酸亜鉛及びオクチル酸スズ等の金属石鹸類などが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0043】
フェノール系硬化剤としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂などが挙げられる。アミン系硬化剤としては、例えばジシアンジアミドや、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの硬化剤の中では、硬化樹脂の透明性などの物性の点から、酸無水物系硬化剤が好適であり、中でも、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸が最適である。
【0044】
樹脂成分と硬化剤との配合割合は、グリシジル基と反応する硬化剤の官能基の比率で決定する。通常は、グリシジル基1当量に対して、対応する硬化剤の官能基が0.5〜1.5当量、好ましくは0.7〜1.3当量となる割合である。樹脂成分と硬化剤との配合割合を上記範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化速度が遅くなることや、その硬化樹脂のガラス転移温度が低くなることがなく、また、耐湿性の低下もないので好適である。
【0045】
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、従来から用いられている、例えば、硬化促進剤、劣化防止剤、変性剤、シランカップリング剤、脱泡剤、無機粉末、溶剤、レベリング剤、離型剤、染料、顔料などの、公知の各種の添加剤を適宜配合してもよい。
上記硬化促進剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリス(2,4,6−ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート等のリン化合物、4級アンモニウム塩、有機金属塩類、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、あるいは併用してもよい。これら硬化促進剤の中では、3級アミン類、イミダゾール類及びリン化合物を用いることが好ましい。
硬化促進剤の含有率は、上記樹脂成分100質量部に対して、0.01〜8.0質量部であることが好ましく、より好ましくは、0.1〜3.0質量部である。硬化促進剤の含有率を上記範囲とすることにより、充分な硬化促進効果を得られ、また、得られる硬化物に変色が見られない。
【0046】
劣化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、リン系化合物などの、従来から公知の劣化防止剤が挙げられる。劣化防止剤を添加すると、耐熱性や透明性等の特性を保持することができる。
フェノール系化合物としては、イルガノクス1010(Irganox1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガノクス1076(Irganox1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガノクス1330(Irganox1330、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガノクス3114(Irganox3114、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガノクス3125(Irganox3125、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、イルガノクス3790(Irganox3790、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)BHT、シアノクス1790(Cyanox1790、サイアナミド社製、商標)及びスミライザーGA−80(SumilizerGA−80、住友化学社製、商標)などの市販品を挙げることができる。
【0047】
アミン系化合物としては、イルガスタブFS042(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商標)、GENOX EP(クロンプトン社製、商標、化合物名;ジアルキル−N−メチルアミンオキサイド)など、さらにはヒンダードアミン系である旭電化社製のADK STAB LA−52、LA−57、LA−62、LA−63、LA−67、LA−68、LA−77、LA−82、LA−87、LA−94、CSC社製のTinuvin123、144、440、662、Chimassorb2020、119、944、Hoechst 社製のHostavin N30、Cytec社製の Cyasorb UV−3346、UV−3526、GLC社製のUval 299及びClariant社製の SanduvorPR−31等を挙げることができる。
有機硫黄系化合物としては、DSTP(ヨシトミ)(吉富社製、商標)、DLTP(ヨシトミ)(吉富社製、商標)、DLTOIB(吉富社製、商標)、DMTP(ヨシトミ)(吉富社製、商標)、Seenox 412S(シプロ化成社製、商標)及びCyanox 1212(サイアナミド社製、商標)などの市販品を挙げることができる。
【0048】
変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類及びアルコール類などの、従来から公知の変性剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、シラン系、チタネート系などの、従来から公知のシランカップリング剤が挙げられる。脱泡剤としては、例えば、シリコーン系などの、従来から公知の脱泡剤が挙げられる。無機粉末としては、用途に応じて粒径が数nm〜10μmのものが使用でき、例えば、ガラス粉末、シリカ粉末、チタニア、酸化亜鉛及びアルミナなどの公知の無機粉末が挙げられる。溶剤としては、エポキシ樹脂が粉末の場合や、コーティングの希釈溶剤として、トルエンやキシレンなどの芳香族系溶剤やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤などが使用可能である。
【0049】
本発明の樹脂組成物の硬化方法としては、例えば、上記の樹脂成分、硬化剤及び/又はカチオン重合開始剤と、各種添加剤を混合し、成型する金型(樹脂金型)への注入、あるいはコーティングにより所望の形状にした後に、加熱あるいは紫外線を照射して硬化する方法を用いることができる。熱硬化の場合、硬化温度としては、通常50〜200℃程度、好ましくは100〜180℃である。50℃以上とすることにより硬化不良となることがなく、200℃以下とすることにより着色などを生じることが無くなる。硬化時間は使用する樹脂成分、硬化剤、促進剤や開始剤によって異なるが、0.5〜6時間が好ましい。
紫外線の照射強度は、通常500〜5000mJ/cm2程度、好ましくは1000〜4000mJ/cm2である。紫外線照射後に後加熱を行ってもよく、70〜200℃で0.5〜12時間行うことが好ましい。
成形方法としては射出成形、ブロー成形、プレス成形等、特に限定されるものではないが、好ましくはペレット状の樹脂組成物を射出成形機に用いて、射出成形することにより製造される。
【0050】
本発明の樹脂組成物を硬化して得られた樹脂は耐熱性や透明性に優れており、全光線透過率を70%以上とすることができる。また、後の実施例に示すように、溶解温度が低いので加工性に優れ、ガラス転移温度が高く、優れた耐久性(耐熱性及び耐光性)を有し、誘電率など電気特性にも優れた硬化物が得られる。
このように本発明の樹脂組成物は、優れた特性を有するので、光半導体(LEDなど)、フラットパネルディスプレイ(有機EL素子、液晶など)、電子回路、光回路(光導波路)用の樹脂(封止剤、接着剤)、光通信用レンズ及び光学用フィルムなどの光学電子部材に好適に用いることができる。
【0051】
このため本発明の樹脂組成物は、半導体素子/集積回路(IC他),個別半導体(ダイオード、トランジスタ、サーミスタなど)として、LED(LEDランプ、チップLED、受光素子、光半導体用レンズ),センサー(温度センサー、光センサー、磁気センサー)、受動部品(高周波デバイス、抵抗器、コンデンサなど)、機構部品(コネクター、スイッチ、リレーなど)、自動車部品(回路系、制御系、センサー類、ランプシールなど)、接着剤(光学部品、光学ディスク、ピックアップレンズ)などに用いられ、表面コーティング用として光学用フィルムなどにも用いられる。
従って、本発明は、上述の本発明の樹脂組成物を用いてなる光半導体用封止剤、光導波路、光通信用レンズ、有機EL素子用封止剤及び光学フィルムなどの光学電子部材、及び電子回路用封止剤をも提供する。
【0052】
光半導体(LEDなど)用封止剤としての構成は、砲弾型あるいはサーフェスマウント(SMT)型などに素子に適用でき、金属やポリアミド上に形成されたGaNなどの半導体と良好に密着し、さらにYAGなどの蛍光色素を分散しても使用できる。さらに、砲弾型LEDの表面コート剤、SMT型LEDのレンズなどにも使用可能である。
有機EL用に適用する際の構成は、一般的なガラスや透明樹脂などの透光性基板上に、陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極が順次設けられた構成の有機EL素子に適用可能である。有機EL素子の封止剤として、金属缶や金属シートあるいはSiNなどのコーティングされた樹脂フィルムをEL素子にカバーする際の接着剤、あるいは本発明の樹脂組成物にガスバリアー性を付与するために無機フィラーなどを分散することで、直接、EL素子を封止することも可能である。表示方式として、現在、主流のボトムエミッション型にも適用可能であるが、今後、光の取出し効率などの点で期待されるトップエミッション型に適用することで、本発明の樹脂組成物の透明性や耐熱性の効果を活かせる。
電子回路用に適用する際の構成は、層間絶縁膜、フレキシブルプリント基板用のポリイミドと銅箔との接着剤、あるいは基板用樹脂として適用可能である。
光回路に使用する際の構成は、シングルモードやマルチモード用の熱光学スイッチやアレイ導波路型格子、合分波器、波長可変フィルター、あるいは光ファイバーのコア材料やクラッド材料にも適用できる。また、導波路に光を集光するマイクロレンズアレイやMEMS型光スイッチのミラーにも適用できる。また、光電変換素子の色素バインダーなどにも適用可能である。
光学用フィルムとして用いる際の構成は、液晶用のフィルム基板、有機EL用フィルム基板などのディスプレイ用として、あるいは光拡散フィルム、反射防止フィルム、蛍光色素などを分散することによる色変換フィルムなどに適用可能である。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、得られた樹脂組成物の評価を次のように行った。
(1)ガラス転移温度
示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製, DSC−7)を用い、試料10mgを窒素雰囲気下50℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた熱流束曲線に観測される不連続点をガラス転移温度Tgとした。
(2)光線透過率
試料として肉厚5mmの試験片を用いてJIS K7105に準拠し、測定波長400nmで測定した(単位%)。測定装置は株式会社島津製作所製の分光光度計UV−3100Sを用いた。
(3)耐光性試験
株式会社東洋精機製作所製のサンテストCPS+を用いて、試料を60℃で500時間光照射し、サンシャインテスターを用いて照射前後の400nmの光線透過率の変化を測定し、光線透過率の低下率が20%未満の場合を「○」、20%以上の場合を「×」とした。
(4)長期耐熱性試験
140℃の恒温槽に100時間放置した後の試料と恒温槽に放置する前の試料について、サンシャインテスターを用いて、400nmの光線透過率の変化を測定し、恒温槽に放置した後の試料の光線透過率の低下率が20%未満の場合を「○」、20%以上の場合を「×」とした。
【0054】
実施例1
(1)1,3−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)アダマンタンの合成
1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン(エポキシ当量227)8.0g、ロジウム触媒(エヌ・イー ケムキャット株式社製、商品名 5%Rhカーボン)0.5g及びテトラヒドロフラン(THF)20gを内容積100mlのオートクレーブに仕込み、系内を水素置換した。撹拌しながら、温度50℃、水素圧力4MPaで水素の圧力低下が終了するまで約5時間反応を行った。反応終了後、触媒をろ過により除去し、次いで溶媒を留去し、目的化合物である下記式
【0055】
【化12】

【0056】
で表される1,3−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)アダマンタンを得た。この化合物の核水素化率を紫外線(波長275nm)吸収の減少量から求めたところ99%であった。また、この化合物のエポキシ当量は264であり、エポキシ残存率は88%であった。
この化合物を、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR、13C−NMR)により同定した。核磁気共鳴スペクトルは、溶媒としてCDCl3を用いて、日本電子株式会社製のJNM−ECA500により測定した。なお、下記において、数字は炭素原子及び炭素原子に結合した水素原子の位置を示し、同一炭素原子に結合した水素原子が2箇所に分かれて検出される場合、一方にアポロストフィーを付した。
【0057】
1H-NMR(500MHz):0.81(m,2H,(10),(14)),1.21(s,2H,(17)),1.22-1.31(m,8H,(5),(6)),1.31-1.37(m,4H,(9),(11),(13),(15)),1.41-1.50(m,8H,(6)',(9)',(11)',(13)',(15)'),1.52(s,2H,(16)),1.91-2.00(m,6H,(5)',(7)),2.59(dd,2H,(1)),2.75(t,2H,(1)'),3.09-3.13(m,2H,(2)),3.37(dd,2H,(3)),3.56(m,2H,(4)),3.60(dd,2H,(3)')
13C-NMR(127MHz):20.0((6)),29.4((7)),30.5,30.8((5)),35.1((8),(12)),37.4((16)),39.5((9),(11),(13),(15)),42.4((17)),44.6((1)),48.5((10),(14)),51.4((2)),68.5((3)),74.0((4))
【0058】
【化13】

【0059】
(2)樹脂硬化物の製造
上記(1)1で得られた1,3−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)アダマンタン1g(エポキシ当量264)、酸無水物としてメチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化株式会社製、商品名 MH700)0.64g、及び硬化促進剤として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(サンアプロ株式会社製、商品名 SA102)0.01gを室温で混合し、脱泡して樹脂組成物を調製した。次いで、120℃で2時間、その後150℃で2時間加熱し、樹脂硬化物(膜厚3mmのシート)を製造した。得られた樹脂硬化物のガラス転移温度、光線透過率を測定し、さらに耐光性試験及び長期耐熱性試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0060】
実施例2
(1)2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)アダマンタンの合成
2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン(エポキシ当量227)8.0g、ロジウム触媒(エヌ・イー ケムキャット株式社製、商品名 5%Rhカーボン)0.5g及びTHF20gを内容積100mlのオートクレーブに仕込み、系内を水素置換した。撹拌しながら、温度50℃、水素圧力4MPaで水素の圧力低下が終了するまで約5時間反応を行った。反応終了後、触媒をろ過により除去し、次いで溶媒を留去し、目的化合物である下記式
【0061】
【化14】

【0062】
で表される2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)アダマンタンを得た。この化合物の核水素化率をUV吸収(波長275nm)の減少量から求めたところ98%であった。また、この化合物のエポキシ当量は258であり、エポキシ残存率は90%であった。
【0063】
(2)樹脂硬化物の製造
上記(1)で得られた2,2−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)アダマンタン1g(エポキシ当量258)、酸無水物としてメチルヘキサヒドロ無水フタル酸(新日本理化株式会社製、商品名 MH700)0.65g、及び硬化促進剤として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(サンアプロ株式会社製、商品名 SA102)0.01gを室温で混合し、脱泡して樹脂組成物を調製した。次いで、120℃で2時間、その後150℃で2時間加熱し、樹脂硬化物(膜厚3mmのシート)を製造した。得られた樹脂硬化物のガラス転移温度、光線透過率を測定し、さらに耐光性試験及び長期耐熱性試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0064】
比較例1
実施例1(2)において、1,3−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)アダマンタンの替わりに、BPA(ビスフェノールA)エポキシ樹脂(エポキシ当量185)を用い、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸の使用量を0.91gとした以外は、実施例1(2)と同様の方法で樹脂硬化物を製造し、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0065】
比較例2
実施例1(2)において、1,3−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)アダマンタンの替わりに、水添BPAエポキシ樹脂(エポキシ当量204)を用い、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸の使用量を0.82gとした以外は、実施例1(2)と同様の方法で樹脂硬化物を製造し、同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0066】
比較例3
1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン(エポキシ当量227)1gをメチルヘキサヒドロ無水フタル酸と0.74gと混合しようとしたが、室温では溶解しないため70℃まで加熱し混合した。硬化促進剤である1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(サンアプロ株式会社製、商品名 SA102)0.01gを加え、脱泡した後、120℃で2時間、その後150℃で2時間加熱し、樹脂硬化物(膜厚3mmのシート)を製造した。得られた樹脂硬化物のガラス転移温度、光線透過率を測定し、さらに耐光性試験及び長期耐熱性試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0067】
比較例4
1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン(エポキシ当量227)1gをメチルヘキサヒドロ無水フタル酸と0.74gと混合しようとしたが、室温では溶解しないため80℃まで加熱し混合した。硬化促進剤である1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(サンアプロ株式会社製、商品名 SA102)0.01gを加え、脱泡した後、120℃で2時間、その後150℃で2時間加熱し、樹脂硬化物(膜厚3mmのシート)を製造した。得られた樹脂硬化物のガラス転移温度、光線透過率を測定し、さらに耐光性試験及び長期耐熱性試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のアダマンタン誘導体やアダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物は、透明性、耐光性などの光学特性、長期耐熱性、及び誘電率などの電気特性に優れた硬化物を与え、光半導体用封止剤、光導波路、光通信用レンズ、有機EL素子用封止剤及び光学用フィルムなどの光学電子部材、及び電子回路用封止剤に好適に用いることができる。また、有機EL素子、液晶などのディスプレイ、LEDなどを用いた照明用途、あるいは光回路などの情報通信用部材のコーティング剤、封止剤及び接着剤などとしても有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるアダマンタン誘導体。
【化1】

[式中、Wは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン置換炭化水素基、環式炭化水素基、ハロゲン置換環式炭化水素基、水酸基、カルボキシル基、及び2つのWが一緒になって形成された=Oから選ばれる基を示す。Xは、下記一般式(II)
【化2】

(式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表される基を示す。Yは、−CO2−、−O−、−N(R3)−(R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基)及び−N(Z)−から選ばれる基を示す。Zは、下記式(III)又は(IV)
【化3】

(式中、R1はメチル基又はエチル基を示す。)
で表される基を示す。kは0〜10の整数である。mは0〜14の整数、nは2〜16の整数であり、かつm+n=16である。]
【請求項2】
一般式(I)において、Xがアダマンタン骨格の橋頭部に結合し、nが2〜4である請求項1に記載のアダマンタン誘導体。
【請求項3】
一般式(I)において、nが2であり、Xがアダマンタン骨格の同一のメチレン部位に結合した請求項1に記載のアダマンタン誘導体。
【請求項4】
一般式(I)において、Yが−O−である請求項2又は3に記載のアダマンタン誘導体。
【請求項5】
加水分解性塩素分が500質量ppm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のアダマンタン誘導体。
【請求項6】
下記一般式(V)又は(VI)で表されるアダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂。
【化4】

[式中、Xは、下記一般式(II)
【化5】

(式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表される基を示す。Yは、−CO2−、−O−、−N(R3)−(R3は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基)及び−N(Z)−から選ばれる基を示す。R1はメチル基又はエチル基を示す。kは0〜10の整数、p及びqは0〜5の整数である。]
【請求項7】
加水分解性塩素分が500質量ppm以下である請求項6に記載のエポキシ樹脂。
【請求項8】
対応する芳香族アダマンタン誘導体をロジウム触媒又はルテニウム触媒の存在下で核水素化することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアダマンタン誘導体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載のアダマンタン誘導体及び/又は請求項6もしくは7に記載のエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤とを含む樹脂組成物。
【請求項10】
エポキシ樹脂硬化剤が、カチオン重合開始剤及び/又は酸無水物系硬化剤である請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の樹脂組成物を用いてなる光学電子部材。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の樹脂組成物を用いてなる電子回路用封止剤。



【公開番号】特開2007−70407(P2007−70407A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256795(P2005−256795)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】