説明

ウエハ以上の物品に対する液体処理のための装置

【課題】 本発明は、ウエハ形状の物品、特にウエハの規定された領域に対する液体処理のための装置を提供する。
【解決手段】 マスク(2)は、毛管作用力によってマスクとウエハ形状の物品の規定された領域との間に液体が保持されるように、ウエハ形状の物品までの規定された短い距離で維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ形状の物品、特にウエハの主面の規定された領域に対する液体処理のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハ形状の物品の規定された領域、即ち特にウエハのエッジに近い部分を処理する理由を以下に示す。シリコンウエハ等のウエハは、全側部が例えば二酸化シリコンによりコーティングされている。後に続くプロセス(例えば金の層もしくはポリシリコン(多結晶シリコン)の層が形成されるとき)のために、主面の少なくともエッジ領域、任意でこの周側面並びに/もしくは第2の主面の領域において、施されたコーティングをウエハから取り除くことが必要である。これは、ドライエッチングプロセスと湿式エッチングプロセスとに主として分けることができるエッチングのプロセスにより果される。また、半導体基板の主面の所定の領域から予めガルバーニ電気的に形成された金属(例えば銅)を取り除くことが望まれることもある。この場合、この領域は、エッジに近い環状部分もしくは、正確には前主面(主面上には構造体が配される=装置の側)の、構造体が配されていない、即ちチップが形成されない領域である。
【0003】
他の応用例は、ウエハの洗浄である。ここでは、少なくとも主面のエッジ領域においてであるが、任意でこの周側面並びに/もしくは第2の主面の領域においてもウエハを洗浄する必要がある。この洗浄は、粒子並びに/もしくは他の汚染物を取り除くためである。これは、湿式洗浄プロセスにより果される。
【0004】
他の液体処理は、層の形成、例えば金属のガルバーニ電気的な金属層の形成(電気でメッキされた)のためである。これは、電流を使用してもしなくても果される。電流を使用しない場合は、“無電解電気めっき”である。
【0005】
本発明は、湿式エッチング、湿式洗浄、もしくは層の湿式化学的な形成(液体処理の概念のもと結合される)を目的とする。被処理ウエハの表面部分は、処理用の液体により湿らされ、取り除かれる層もしくは不純物が取り除かれるか、または、層が、この表面部分に形成される。
【0006】
液体処理の間、ウエハ形状の物品は、静止されるか、回転される(例えば軸を中心に)。
【0007】
処理用の液体が処理されない表面に制御されない方法で接触するのを防ぐために、EP0316296B1が、キャリアーに面し処理されない表面にガスを流すキャリアー(チャック)を提案している。この際、ガスは、ウエハのエッジとキャリアーとの間に流される。
【0008】
JP09−181026Aは、半導体ウエハのためのキャリアーを開示している。このキャリアーの外側で、環状ノズルが、外側に下がった環状段部、もしくはこのエッジの傾斜面等の特殊な形状を有する。また、入口開口が設けられている。エッジ領域における流速は、前記のような形状もしくは入口開口によって影響を受ける(減少される)。これは、上方から供給される液体がウエハのエッジを通ってチャックに面する側へと流れ、エッジ領域を処理するのを可能にするために使用されることを意図している。
【0009】
EP0316296B1もしくはJP09−181026A(英文要約)に記載された
ウエハ形状の物品を収容する手段(キャリアーもしくはチャック)が使用されるかどうかには関係なく、キャリアーに面する主面において、最長で1.5mm(ウエハの外エッジから測定)のエッジ領域が、処理される。この後、液体は、ウエハのエッジの方向へ戻るように流れ、これにより排除される。このような被処理エッジ領域は、2つの場合のいずれにおいても意図的に規定されることがない。これは、どちらかと言えば偶然の結果と言える。なぜなら、エッジ領域の大きさは、表面の組成(粗さ、吸収層の厚さ及び形式)、温度、圧力、湿度のような、お互いに多少の影響を及ぼしあう複数のパラメータにより主として決定されるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
US4,838,289Aが、ウエハのエッジをエッチングするためのシステムを開示している。ここでは、ウエハが回転する間、ノズルが、処理されるウエハの表面の領域に向けられる。このシステムの欠点は、被処理領域を正確に規定できず、液体が、処理されない領域にも接触し得る点である。
【0011】
従って、本発明の目的は、ウエハ形状の物品の表面において、規定された部分に対する液体処理を可能にすることである。また、特に、2ミリ(ウエハ形状の物品の外エッジから測定)を超えるエッジ領域を処理可能にする。また、この規定された部分というのは、ウエハ形状の物品の表面の内部領域、即ちウエハ形状の物品のエッジまで延びていない領域である。ここでは、円形ラインによって1つの領域が外側並びに/もしくは内側に区切られる場合、これは不要であるが、被処理領域は、例えば多角形に区切られ得る。ウエハ形状の物品が半導体ウエハである場合、この境界線は、チップが位置される表面領域(“装置領域”)に一致する。かくして、内側のチップ領域もしくはチップのない外側領域が処理されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かくして、この最も一般的な実施例において、本発明は、ウエハ形状の物品、特にウエハの規定された部分を液体処理するための装置を提案する。この装置は、ウエハ形状の物品を保持するための保持手段と、液体処理される規定された部分の領域に対応した大きさと形状を有するマスクと、毛管作用力によりマスクとウエハ形状の物品の規定された領域との間で液体が保持されるように、マスクとウエハ形状の物品とを互いに対して所定の短い距離を置いて保持するスペーサ手段とから成る。
【0013】
保持手段は、特に真空把持部、ウエハ形状の物品に周側エッジで接触する把持手段、もしくはいわゆるベルヌーイチャックである。
【0014】
ウエハ形状の物品(ウエハ)がキャリアーに位置されるとき、マスクがウエハ形状の物品(ウエハ)に接触しないように、即ちウエハとマスクとの間にギャップが残されるように、マスクは形成される。ウエハの主面上に通常は突出されたマスクは、液体処理されるウエハの領域を示す。ウエハ形状の物品に面するマスクの表面の材料は、毛管作用力によりウエハ形状の物品とマスクとの間のギャップ中に液体が引き込まれこのギャップ中に保持されるように液体によって良く湿らされ得ると言う観点から、選択される。一方がウエハ形状の物品に抗し、他方がマスクに抗する、液体の2つの湿式角度の合計が、180°未満、好ましくは150°未満である。言うまでもなく、予め設定されたマスクの表面において、これは、液体に付加された付加物(湿式剤)により果される。
【0015】
本発明に係わる装置の1つの利点は、被処理物品は、この被処理領域が、処理用の液体により正確に、かつ領域に固体が接触することなく、湿らされる点である。また、液体粒子が、処理されない領域もしくは処理すべきでない領域に接触しないようにされる。
【0016】
1つの効果的な実施例において、マスクは、リングの形状を有する。この場合、リングは、ウエハ形状の物品の外径より小さい内径と、ウエハ形状の物品の外径と少なくとも同じ大きさの外径とを有する。例えば半導体ウエハの規定されたエッジ領域から層を取り除く場合と同様に、被処理面が同様にリング形状を有するとき、これは不可欠である。
【0017】
スペーサ手段がマスクとウエハ形状の物品とを互いに0.05乃至1mmの距離を置いて維持させる場合に、効果的である。水溶性溶液内の溶剤もしくは種々の麻薬、水のような薄い液状媒体を使用するとき、液体は、マスクとウエハ形状の物品との間の毛細血管状の領域から流れ出てしまわないようにされる。
【0018】
一実施形態において、スペーサ手段は、ウエハ形状の物品と直接接触し、直接的もしくは非直接的にマスクに結合された把持部材から成る。これは、例えば外側のロッド(非直接的)もしくは例えば周側に位置されたピン(直接的)により成される。
【0019】
他の実施形態において、マスクと保持手段とは、マスクに垂直な軸を中心とした回転に対して、互いに静止されている。かくして、マスクと保持手段とは、どちらも回転しないか、例えば、保持手段と、これによりウエハ形状の物品とが回転する。かくして、マスクは、同じ速度で同じ回数だけ回転する。マスクとウエハ形状の物品との間の毛細血管状の領域に液体が保持されているときは、ウエハ形状の物品の表面に対するマスクの相対的な運動の欠乏が、効果的である。液体は、前記領域に保持されている間、これ自体が可能な限り小さい運動を経験する。これにより、処理されない領域に対する液体の接触が防がれる。
【0020】
スペーサ手段は、直接的もしくは非直接的にマスクに結合され、またウエハ形状の物品に向けられたガス供給手段から成る。これにより、ウエハ形状の物品は、ガスのクッションに保持され得る。このガス供給手段は、例えば、ウエハ形状の物品の表面に垂直にもしくは斜めに位置された1以上のノズル、もしくは環状ノズルである。圧力及びガスの体積流量を選択することによって、ガス供給手段の所定の形状、大きさ、配置のために、ガス供給手段とウエハ形状の物品との間の距離と、かくしてマスクとウエハ形状の物品との間の距離とが、正確に、再生可能なように、調節され得る。
【0021】
更に、本発明に関わる装置は、一実施形態において、マスクとウエハ形状の物品との間に位置された液体が毛管作用力により保持されないように、マスクとウエハ形状の物品との間の距離を長くし得る距離変更手段を有する。これは、ウエハ形状の物品の表面に対して垂直な保持手段を移動し得る運動機構、もしくはかくの如くマスクを移動し得る運動機構である。しかしながら、かくして、ウエハ形状の物品は、直接的に移動され得る。距離変更手段は、例えば付加的な把持部(例えばスプーン)であるか、または、ウエハ形状の物品を持上げるピン(持上げピン)がある。また、距離変更手段は、ウエハ形状の物品が上げ下げされるように変更される動作状態にあるガス供給手段である。
【0022】
マスクと、ウエハ形状の物品とは、前記領域に残った液体が再び取り除かれるように、1つの距離変更手段によって、互いから離れるように移動される。これは、距離変更手段が少なくとも0.2mm、好ましくは0.5mmだけ距離を長くする場合、効果的である。
【0023】
これは、液体による処理の直後もしくはこれの間に、距離変更手段がマスクとウエハ形状の物品との間の距離を変え得るように形成される場合に、効果的である。これは、例えば距離変更手段としてのガス供給手段を使用する場合に、可能である。
【0024】
一実施形態において、距離変更手段及びスペーサ手段は、スペーサ手段の部材が距離変更手段の部材を兼ねるように、形成される。スペーサ部材が、周側でウエハ形状の物品に接触する対応したノッチを備えたピンを有し、かくして、これをマスクまで所定の距離を置いて保持する場合、これらのピンは、ウエハ形状の物品の表面に垂直に移動されるとき、距離変更手段の部材を兼ねる。
【0025】
一実施形態において、ウエハ形状の物品の主面に対しほぼ垂直で、ウエハ形状の物品の位置を周側で区切る案内部材が提供される。このように、ウエハ形状の物品の位置は、変位に関しては、マスクに固定されている。案内部材の距離からウエハ形状の物品の中心までの距離は、変えられ得る。
【0026】
また、この距離は、案内部材がウエハ形状の物品を保持できるような小ささまで減じられる。この点で、これらは、保持手段の部材でもある。また、保持手段は、案内部材とガス供給手段とから成る。
【0027】
距離変更手段が、直接的もしくは非直接的にマスクに結合され、また物品の主面に向けられたガス供給手段から成る請求項8の装置において、ウエハ形状の物品は、ガスのクッションに保持される。ここでは、ガス供給手段は、スペーサ手段を兼ねる必要がない。なぜなら、スペーサ手段は単純な機械支持部であり(例えば、ピン、スペーサリング)、ウエハ形状の物品が持上げられるときのみ、ガス供給手段はガスの経路を定めればよいためである。
【0028】
しかしながら、スペーサ手段と距離変更手段とは、実質的に同じガス供給手段である。この手段により、ガス供給手段は、少なくとも2つの異なった動作状態に移行される。これら少なくとも2つの異なった動作状態を利用して、ウエハ形状の物品とマスクとの間の少なくとも2つの異なった距離が、設定され得る。これらの手段は、例えば、ガス供給手段に供給されるガスの体積流量並びに/もしくは圧力を変更し得る手段である。これらの手段は、例えば、減少バルブもしくはガス供給手段の付加的なノズルを開閉するバルブである。かくして、体積流量が比較的高い流れにおいて、ウエハ形状の物品は、比較的小さい流量の流れにおけるよりも大きいマスクまでの距離を想定する。他の手段は、ガス供給手段の大きさ、形状並びに/もしくは配置を変更する。例えば移動可能なノズルが使用される場合、ウエハ形状の物品は、より劇的に持上げられ、ノズルの配置と、ノズルが向けられたウエハ形状の物品の表面との間で、比較的大きな角度(0°乃至90°)が選択される。
【0029】
また、スペーサ手段と距離変更手段とは、別々に利用され得る2つのガス供給手段である。
【0030】
一実施形態において、保持手段は、回転され、これにより、ウエハ形状の物品も、回転する。処理用の液体がキャリアーとウエハのエッジとの両方から排除されるため、必要でない場合でも、これは効果的である。
【0031】
この実施形態において、マスクとウエハ形状の物品との間のギャップは、0.05乃至1mm、効果的には0.1乃至0.5mmである。かくして、ウエハと毛細血管形状のガス案内装置との間で、後者により、ウエハのエッジの周りを流れる液体が、吸収される。ガス供給装置に面し、液体によって湿らされる表面の内径は、ガス案内装置の環状面の内径未満である。
【0032】
これは、ウエハ形状の物品に面するガス案内装置の表面がウエハ形状の物品の主面に対して平行なとき、効果的である。かくして、ウエハ形状の物品(ウエハ)とガス案内装置
との間のギャップは、エッジ領域全体で同じ大きさである。
【0033】
一実施形態は、回転されるキャリアーを必要とする。必要でない場合でも、これは、キャリアーとかくしてウエハのエッジとから処理用の液体を振り落とせるため、効果的である。液体処理中にキャリアーが回転されない場合は、液体は、ガスのストリーム(ガス供給手段からの)により吹き飛ばされる。
【0034】
更に、装置は、マスクに面するウエハ形状の物品の表面に向けられた液体ラインを有する。このように、第1の液体により処理されていない規定された第1の領域を有する表面は、第2の液体により処理される。また、第2の領域において、これは、第1の領域の場合とは異なる。第2の領域は、皮相的に比較的大きく、第1の領域を完全に覆っている。第1の液体が例えばエッチング用の液体である場合、第2の液体(例えば消イオン化水)を用いて、マスクに面する表面から前記第1の液体の余分な分が取り除かれる。また、マスクが洗浄されるか、液体がこれから取り除かれる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明で請求されている実施形態の軸方向部分5を概略的に示す。
【図2】図2は、本発明で請求されている実施形態の軸方向部分5を概略的に示す。
【図3】図3は、本発明で請求されている実施形態の軸方向部分5を概略的に示す。
【図4】図4は、本発明で請求されている実施形態の軸方向部分5を概略的に示す。
【図5】図5は、本発明で請求されている実施形態の軸方向部分5を概略的に示す。
【図6】図6は、異なった動作状態にある、図1に示された実施形態の軸方向部分を概略的に示す。
【図7】図7は、異なった動作状態にある、図1に示された実施形態の軸方向部分を概略的に示す。
【図8】図8は、異なった動作状態にある、図1に示された実施形態の軸方向部分を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の他の詳細、特徴、効果は、図面に示された本発明の実施形態に係わる以下の説明より明らかになる。
【0037】
図1は、本発明に係わる装置1の一実施形態を示す。この装置1は、ここではリングの形状のマスク2が同心的に取り付けられたほぼ円形の基部本体4を有する。しかしながら、また、リング(マスク)2は、基部本体の外側に形成されることもできる。リング2は、ウエハの外径より大きい外径と、ウエハの外径より小さい内径とを有する。リング2に設けられた複数のピン3が、ウエハWを周側で保持する。これらピン3は、ウエハのエッジを中ロックするノッチ31を有し、かくして、ウエハを規定された水平位置に維持させる。このようなノッチ31を備えたピン3は、マスク2に対するスペーサ手段に相当する。かくして、規定されたギャップ15がマスク2とウエハの表面Wfとの間に形成される。ウエハをしっかりと留めたり、ウエハを再び解放するために持上げるか取り除くために、ピン3は、示されていない機構を介して、軸Aに対して移動される。矢印Lの方向に上下され得、またウエハWとマスク2との間の距離を変えることができる持上げ機構5(距離変更手段)が、基部本体4の中に設けられている。この持上げ機構は、ウエハに対して平行でウエハに面するほぼ平らな表面を有するキャリアーから成る。このキャリアーが持上げられると、これは下面Wfにおいてのみウエハに接触して、ウエハを持上げる。全体の装置1、またこれを用いてウエハは、ウエハの軸Aを中心に回転される。
【0038】
ウエハのエッジに近接するように外側に設けられたノズル7、もしくはマスク2に面していない方のウエハの表面Wbに向けられたノズル6のどちらかによって、処理用の液体
が与えられる。第1の場合(ノズル7)、所定量の液体20が、ウエハのエッジ近くのマスク2に直接に与えられる。液体は、毛細血管状のギャップ15によって中に引き込まれて、マスク2に規定されてマスクが重ねられた、ウエハ表面Wfの領域を正確に湿らせる。第2の場合(ノズル6)、所定量の液体18が、マスク2に面していない方の表面Wbの例えばこの中心に与えられる。この液体は、ウエハのエッジへと外側に向けて放射状に流れ、この流れは、ウエハの回転によりサポートされる。更に、液体は、ウエハのエッジの周面を流れて、ギャップ15により引き込まれる。どちらの場合でも、全液体処理中に、ウエハは回転可能である(R)。これは、ギャップ15中に引き込まれない余分な液体が、マスク2の上を制御されないで流れることがなく、制御されて流れるという利点を有する。液体ライン28を介して第2の液体(例えば消イオン水)がマスク2に面するウエハの表面Wfに与えられると同時に、キャリアー4は回転する。かくして、第2の液体は、ギャップ15に残る液体を排除する。また、この前もしくは後に、ウエハは、持上げ機構5により持上げられる。
【0039】
図2は、他の実施形態を示す。マスク(リング)2は、ディスク8により支持されている。ウエハWは、回転真空チャック3によって、マスクに面していないウエハの表面Wbで保持されている。これは、ウエハのエッジとマスクに面するウエハの表面Wfとのどちらも接触されないという利点を有する。ウエハWを保持するチャック3はRwの方向に、マスク2はRmの方向に、両者とも同軸Aを中心にして回転され得る。これが同じ回転速度で、同じ方向(Rw=Rm)に行われる場合、マスク及びウエハは、相対的に移動しない。チャック3とマスク2とは、距離変更手段5を介して互いに接続され、これにより、互いに離れたり近づいたりするように(矢印L方向に)移動される。この距離変更手段5は、流圧シリンダー、例えば空気圧シリンダーもしくはスピンドルでもよい。この距離変更手段5を用いて、ウエハとマスクとの間のギャップ15は、正確に設定され得る。かくして、これはまた、スペーサ手段にも相当する。ノズル7は、ウエハのエッジに近いマスク2に所定量の液体20を直接与える。この液体は、毛細血管状のギャップ15により引き込まれる。
【0040】
図3は、第3の実施形態を示す。装置1は、ポット形状のキャリアー14を中に備えたバスタンク27から成る。キャリアー内の空間23が、キャリアーとバスタンクとの間に位置されたバス26をシールする。キャリアー14は、持上げ機構によって、バス26から持上げられ得る。キャリアーの上エッジは、マスクに相当するリング2の形状を有する。これの表面は、ウエハWに面し、この表面Wfに面平行である。ノッチを備えたピン3が、リング(マスク)2に設けられている。ノッチは、マスクまで所定距離を置いてウエハを維持させる。これにより、ギャップ15が形成される。ウエハWが設けられたキャリアーの上エッジ2は、液体レベルがリングの少し上に位置され、ウエハのエッジが湿らされるまで、バス中に下降される(L1)。液体は、毛管作用力により、ウエハとマスクとの間のギャップ15中に引き込まれる。負圧の影響でキャリアー内の空間23に液体が浸透するのを防ぐために、空間23は、管25を介して周囲に接続されている。僅かな過圧が、管25を介してキャリアー内の空間23に蓄積され、キャリアーは、再びバスから持上げられる(L1)。液体処理の後、管25を介して供給されたガスにより蓄積された比較的強い過圧により、ギャップ15に位置された液体は、放射状に外側へ方向付けられる。また、ギャップ15は、距離変更手段5によって大きくされ得る。ここでは、上げ下げ可能な4つのピン5が示されている。これらは、マスクに当接された表面でマスク2内のウエハに接触し、これを垂直に持上げる(L2)。
【0041】
図4は、第4の実施形態を示す。装置は、処理用の液体が位置された上下可能なバスタンク27と、キャリアー11とから成る。キャリアー11は、基部本体4と、この下方に鋳造されたリング2とから成る。水平位置にあるウエハをキャリアーの下に吊るすために、リング2の下方に形成され、ノッチを備えたピン3は、リング2まで所定距離のギャッ
プを設けるように、ウエハWを周側に保持する。ウエハWが設けられたキャリアー11は、液体レベルが、リング2を湿らせ、かくしてこのリング2に面していないウエハの表面Wbとウエハのエッジの周側とを完全に湿らせるようになるまで、バス27中に浸される。液体は、ウエハとリングとの間のギャップ中に浸透する。キャリアー11は、処理後にバスから持上げられる。キャリアー内に設けられた真空ピックアップ5が、マスクに面するウエハの表面Wfでウエハに接触しこれを吸引するために、下げられる。ピックアップ、従って毛管作用力によりウエハが更に下降された後、かくして、液体は、ギャップ15中に保持され、処理される。ピックアップを回転させることにより、ウエハに残る液体は、捨てられる。
【0042】
図5は、一実施形態を示す。装置は、基部本体4を有するキャリアー11と、スペーサ41を介してキャリアーの基部本体に取り付けられたリング2とから成る。キャリアー11の回転軸Aに対して放射状に外側へ移動され、ウエハWを囲むピン53が、周側でリング2に取り付けられている。ピン53は、小さい円筒形状を有し、これらの軸は、ウエハの表面に対して垂直である。ガスのチャネル44、45が、基部本体4中に機械加工され、キャリアー11に面する方のウエハの表面が向けられたガスノズル46、49中につながる(discharge)。ノズル46、49は、外側に向けて斜めに位置される。内側から離れたノズル49は、さらに外側に位置されたノズル46より傾斜が小さい。即ち、さらに外側に位置されたノズル46の新しいガスの流れG1は、更に内側にあるノズルの新しいガスの流れG2より緩い角度で、ウエハの表面に当たる。内側のノズル49と外側のノズル46との間の領域48での基部本体4からウエハWまでの距離は、外側のノズル46より外側の領域47における前記距離より小さい。内側のノズル49と外側のノズル46との両方は、選択的に、円形に配置された複数のノズルのいずれかであり得、また、環状ノズルの形状を有し得る。
【0043】
この装置は、実質的に2つの異なった方法で動作される。第1の動作モードにおいて、外側のガスの流れG1と内側のガスの流れG2とは、別々に開閉される。第1のガスの流れG1が開かれると、ガスは、領域47のみを流れる。ウエハWは、僅かに持上げられ、これにより、小さな毛細血管状のギャップ15が、マスク2とウエハWとの間に形成される。第1の動作状態において、図1に示されたように液体が与えられると、これは、ギャップ15中に引き込まれる。ここで、ガスの流れG1に加えてもしくはこの代わりに、ガスの流れG2が開かれる場合、ガスは、外側のノズル46より外側の領域47のみでなく、外側のノズルと内側のノズルの間の領域48でも流れる。この第2の動作状態を利用して、ウエハWは、点線で示されるように多少持上げられる。ウエハのエッジは、ピン53の円筒形の表面に沿って滑動する。マスクとウエハとの間のギャップ15内の液体を毛管作用力によって保持されないようにするためには、前記のようにウエハを僅かに持上げるだけで充分である。液体は、この領域から取り除かれる。これは、ガスの流れによって果される。即ち、水滴は、放射状に外側へ吹き飛ばれる。液体の除去は、キャリアー11全体と、これを用いてウエハとを回転させることにより、サポートされ得る。更に、液体ライン28に設けられたノズルを用いて、流水液体は、基部本体4を介して、キャリアーに面するウエハの表面に流される。これにより、ギャップ15内の液体は、更に変位される。この流水液体は、一部のみが、再び取り除かれなくてはならない。
【0044】
第2の動作モードにおいて、2つのガスの流れG1、G2は、接続されている。第2の動作状態よりガスの流れが小さい第1の動作状態において、これにより、第2の動作状態のウエハは、マスク2までの距離が第1の動作状態での距離より大きい位置を想定している。第1の動作状態におけるウエハWからマスク2までの距離は、例えば0.5mmで、第2の動作状態においては、0.8mmである。
【0045】
図5乃至図8を用いて、図1の実施形態から進められる、本発明に係わる装置の動作モ
ードが示されている。第1に、ウエハWは、マスク2の近くに移動され、これにより、ギャップ15が形成される。マスク2とウエハとの間の所定距離は、スペーサ手段、ここではノッチを備えたピン3(図6)によって確保される。ここで、液体は、マスクに面していない方のウエハの表面Wbに与えられるか、もしくはウエハのエッジに直接に与えられる。液体は、部分的にギャップ15に入る(F2)。マスク並びに/もしくはウエハが回転するとき、液体F1の余分な分が、流れ落ち、排除される。液体は、マスク2の内側の外形より更に内側へ向けて流れることはない。即ち、これは、ポイントPのみに浸透する。マスク2とウエハとの間の距離alが、液体がギャップ15内の毛管作用力によって保持されるように小さく選択される。持上げ機構5が、マスク2に面するウエハの表面Wfと接触し、ピン3は、開かれる(B)。そして、ギャップ15内の液体フィルムが裂け、滴16のみがマスク並びに/もしくはウエハの表面に残るように、持上げ機構5がウエハを持上げる。これら滴16は、洗い流され、吹き飛ばされる、並びに/もしくは振り落とされる。
【符号の説明】
【0046】
2…リング(マスク)、
3…ピン、
4…基部本体、
6、7…ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ形状の物品(W)の規定された部分に対する液体処理のための装置であって、
ウエハ形状の物品を保持するための保持手段(3,53)と、
液体処理される規定された部分の領域に、大きさと形状とにおいて対応したマスク(2)と、
毛管作用力によって前記マスクとウエハ形状の物品(15)の規定された領域との間に液体が保持されるように、マスクとウエハ形状の物品とを互いに少し所定距離を置いて維持させるスペーサ手段(3,31,45,41)と、
マスクに面していないウエハ形状の物品の表面に液体を分配するノズル(28)と、
前記マスクとウエハ形状の物品との間に位置された液体が毛管作用力により保持されないように、マスクとウエハ形状の物品との間の距離(a1)を、増大された距離(a2)に長くし得る距離変更手段(5,44,49)と、
ウエハ形状の物品の位置を周側で区切り、ウエハ形状の物品の主面にほぼ垂直に位置された案内部材(3,63)と、を具備し、
前記マスクと前記保持手段とは、マスクに垂直な軸(A)を中心とした回転に対して、互いに静止されており、
前記スペーサ手段は、マスク(2)に直接的もしくは非直接的に接続されて且つウエハ形状の物品に向けられたガス供給手段(45,46)から成り、このガス供給手段により、ウエハ形状の物品がガスのクッション上に保持され、
前記スペーサ手段の部材は、距離変更手段の部材を兼ねており、
前記保持手段は、前記案内部材(63)とガス供給手段(45,46)とから成り、
前記距離変更手段は、マスク(2)に直接的もしくは非直接的に接続され且つウエハ形状の物品の主面(Wf)に向けられたガス供給手段(44,49)から成り、このガス供給手段により、ウエハ形状の物品がガスのクッション上に保持されることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記マスク(2)は、リングの形状を有する請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記リングは、ウエハ形状の物品の外径より小さい内径と、ウエハ形状の物品の外径と少なくとも同じ大きさの外径とを有する請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記スペーサ手段は、マスクとウエハ形状の物品とを、0.05乃至1mmの距離(a1)を置いて維持させる請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記スペーサ手段は、ウエハ形状の物品と直接接触し、またマスク(2)に直接的もしくは非直接的に接続された把持部材(3,53)から成る請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記距離変更手段は、液体処理の間または直後にマスクとウエハ形状の物品の間の距離を変更し得るように作られる請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記保持手段が、回転するようにされる請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記マスクに面するウエハ形状の物品の表面に向けられた液体ライン(28)を有する請求項1記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−80113(P2012−80113A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257879(P2011−257879)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【分割の表示】特願2001−334983(P2001−334983)の分割
【原出願日】平成13年10月31日(2001.10.31)
【出願人】(507161226)ラム・リサーチ・アクチエンゲゼルシヤフト (18)
【氏名又は名称原語表記】Lam Research AG
【Fターム(参考)】