説明

エッチング装置および基板処理方法

【課題】基板全体でのエッチングレートの面内均一性を向上させるエッチング装置を提供する。
【解決手段】エッチング装置は、基板の主表面を被覆する被覆層にエッチング液を供給して被覆層を加工する装置である。エッチング装置は、被覆層に相対的に少量のエッチング液を供給する第一給液部211と、第一給液部211よりも後段側に配置され、被覆層に相対的に多量のエッチング液を供給する第二給液部221とを備える。第一給液部211は、被覆層の表層部分を除去可能な量のエッチング液を被覆層に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング装置および基板処理方法に関し、特に、基板の主表面を被覆する被覆層にエッチング液を供給して被覆層を加工する、エッチング装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に薄膜を成膜し、フォトリソグラフィーによりパターンを形成する方法におけるエッチング工程において、エッチング液がノズルから噴出するスプレー層の中を基板を通過させてエッチングを行なうスプレーエッチング方式が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1では、エッチング液による基板の漏れ始めにおいて、ノズルからスプレーされたエッチング液がハネ返り、エッチング液に浸される前の基板上に付着することなく、基板表面をエッチング液が均一に濡らして連続的にエッチングを行なう方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−224221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のエッチング方法において、特に大型の基板上にパターンを形成する際に、基板の中央部でエッチングレートが遅く、基板の端部でエッチングレートが早くなるなど、エッチングレートの面内均一性が低下する場合がある。基板上の場所によってエッチングレートが異なると、エッチングにより形成されるパターン幅にばらつきが生じる。
【0005】
たとえば、液晶表示装置用の基板をエッチングする場合にゲート電極の幅がばらつくと、各ゲート電極の電気抵抗値にばらつきが発生する。その結果、液晶表示装置の画面内での表示ムラや、また一枚の基板から複数の液晶表示装置を作製する多面取りの場合には製品毎のムラが発生し、液晶表示装置の品質不良を招来する問題があった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、基板全体でのエッチングレートの面内均一性を向上させるエッチング装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエッチング装置は、基板の主表面を被覆する被覆層にエッチング液を供給して被覆層を加工する装置である。エッチング装置は、被覆層に相対的に少量のエッチング液を供給する第一給液部と、第一給液部よりも後段側に配置され、被覆層に相対的に多量のエッチング液を供給する第二給液部とを備える。第一給液部は、被覆層の表層部分を除去可能な量のエッチング液を被覆層に供給する。
【0008】
上記エッチング装置において好ましくは、第一給液部は、ミスト状のエッチング液を被覆層に供給する。
【0009】
上記エッチング装置において好ましくは、第一エッチング槽と、第一エッチング槽から搬出された基板が搬入される第二エッチング槽とを備える。第一給液部は、第一エッチング槽内にエッチング液を供給する。第二給液部は、第二エッチング槽内にエッチング液を供給する。
【0010】
上記エッチング装置において好ましくは、第一給液部は、第一エッチング槽の入口部に配置されている。
【0011】
本発明に係る基板処理方法は、主表面を有する基板を準備する工程と、主表面を被覆する被覆層を形成する工程と、被覆層に少量のエッチング液を供給し、被覆層の表層部分を除去する工程と、被覆層に多量のエッチング液を供給し、被覆層を除去して主表面を露出させる工程とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエッチング装置によると、基板全体でのエッチングレートの面内均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態のエッチング装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】エッチング処理槽の構成を示す模式図である。
【図3】本実施の形態の基板処理方法の各工程を示す流れ図である。
【図4】レジスト膜がパターニングされた状態を示す断面模式図である。
【図5】第一給液部よりエッチング液が供給された状態を示す断面模式図である。
【図6】第二給液部よりエッチング液が供給された状態を示す断面模式図である。
【図7】ゲート電極膜がエッチング加工された状態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0015】
なお、以下に説明する実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下の実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、上記個数などは例示であり、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0016】
図1は、本実施の形態のエッチング装置1の全体構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態のエッチング装置1は、複数の処理槽を備える。典型的には、エッチング装置1は、ローダ部100と、エッチング処理槽200と、水洗処理槽300と、乾燥処理槽400と、アンローダ部500とを備える。図1に示す各処理槽は、各々順に接続されて配置されている。
【0017】
エッチング装置1によりエッチングされる対象物である基板は、前工程を終えてカセットなどの搬送容器に収納された状態で、ローダ部100に搬入される。ローダ部100に搬入された基板は、カセットから取り出されて、図示しない搬送装置に載置される。この搬送装置は、ローダ部100からアンローダ部500まで繋がって設置されている。搬送装置は、ローダ部100、エッチング処理槽200、水洗処理槽300、乾燥処理槽400、アンローダ部500の順に、基板を搬送する。
【0018】
エッチング処理槽200では、基板をエッチング処理するエッチング液が基板に散布される。このエッチング液により、基板の主表面を被覆する被覆層においてレジストに被覆されていない部分が除去されるウェットエッチングが行なわれ、被覆層がパターニングされる。図1に示すように、本実施の形態のエッチング処理槽200は、前段側の第一エッチング槽210と、後段側の第二エッチング槽220とを含む。第二エッチング槽220は、第一エッチング槽210よりも、エッチング装置1における基板の処理フローの下流側に配置されている。
【0019】
水洗処理槽300では、基板に純水を噴出することによって、エッチング液を洗浄する。純水を散布するための純水スプレーよりも上流側に、エッチング液を予め除去するための除去装置が配置されていてもよい。除去装置としては、たとえば基板に高圧空気を吹き付けるエアナイフを用いることができる。
【0020】
乾燥処理槽400では、水洗処理槽300で散布された純水を乾燥させる。たとえばエアナイフが用いられ、基板に対して高圧空気を吹き付けることにより、純水からなる液滴を液切りして基板を乾燥させることができる。
【0021】
アンローダ部500では、基板を後工程に搬出するため、カセットなどの搬送容器に基板10を収納する。カセットに収納された基板10は、後工程に搬出される。
【0022】
図2は、エッチング処理槽200の構成を示す模式図である。エッチング処理槽200は、基板の処理フローにおいて上流側に配置された第一エッチング槽210と、下流側に配置された第二エッチング槽220とを含む。すなわち、ローダ部100から搬送された処理対象物である基板は、まず第一エッチング槽210内に搬送される。第一エッチング槽210から搬出された基板が、第二エッチング槽220内に搬送される。図2中に図示する矢印は、エッチング処理槽200において基板が搬送される流れの方向を示している。
【0023】
第一エッチング槽210には、第一エッチング槽210の槽内にエッチング液を供給する、第一給液部211が設置されている。第一給液部211は、第一エッチング槽210の天井部に配置されており、第一給液部211から下向きにエッチング液が噴霧される。第一エッチング槽210は、第一エッチング槽210への基板の搬入口となる入口部214と、第一エッチング槽210からの基板の搬出口となる出口部215とを有する。第一給液部211は、第一エッチング槽210の入口部214に配置されている。
【0024】
第二エッチング槽220には、第二エッチング槽220の槽内にエッチング液を供給する、第二給液部221が設置されている。第二給液部221は、第二エッチング槽220の天井部に配置されており、第二給液部221から下向きにエッチング液が噴霧される。エッチング装置1において、第二給液部221は、第一給液部211よりも後段側に配置されている。第一給液部211が基板にエッチング液を供給した後に、第二給液部221が基板にエッチング液を供給する。
【0025】
第一給液部211は、基板に対し、相対的に少量のエッチング液を供給するように設けられている。第二給液部221は、基板に対し、相対的に多量のエッチング液を供給するように設けられている。第一給液部211は、第二給液部221が第二エッチング槽220内へ供給するエッチング液の量よりも少量のエッチング液を、第一エッチング槽210内へ供給する。第二給液部221は、第一給液部211が第一エッチング槽210内へ供給するエッチング液の量よりも多量のエッチング液を、第二エッチング槽220内へ供給する。
【0026】
第一給液部211は、複数のミストノズルを有し、ミスト状のエッチング液を第一エッチング槽210内に供給する。第一給液部211は、第一エッチング槽210の内部空間に含まれる気体中に、エッチング液の微粒子を分散させる。このミストノズルは、第一エッチング槽210の入口部214において一列に配列されている。搬送装置により第一エッチング槽210内を移動する基板の移動方向に直交する方向を幅方向と称すると、ミストノズルは、基板の幅方向全体にミスト状のエッチング液が散布されるように、一列に並べられて配置されている。
【0027】
第一給液部211により供給されるエッチング液のミスト径やミスト濃度は、特に限定されるものではない。第一エッチング槽210内をエッチング液のミスト雰囲気に保ち、第一エッチング槽210に搬入される基板の表面全体に確実にミスト状のエッチング液を供給できるように、適切なミストノズルを選定することができる。
【0028】
第一給液部211よりも第一エッチング槽210の出口部215側に、エアカーテンを配置してもよい。この場合、基板が搬送装置によって当該エアカーテンよりも出口部215側に移動したときに、第一給液部211から供給されるミスト状のエッチング液が基板に散布されない。そのため、基板上に少量のエッチング液が供給された状態を安定して保つことが可能となる。
【0029】
第二給液部221は、複数のシャワーノズルを有し、エッチング液の液滴を第二エッチング槽220内に供給する。第二給液部221は、複数のノズル列222,223,224を有する。ノズル列222,223,224は、基板の幅方向全体にシャワー状のエッチング液が散布されるように、幅方向にシャワーノズルが並べられて形成されている。ノズル列222,223,224は、第二エッチング槽220内の基板の移動方向に沿って順々に配置されている。基板が第二エッチング槽220内を移動中に、常にフレッシュなエッチング液が基板に供給されるように、第二給液部221は形成されている。
【0030】
次に、このエッチング装置1を用いた基板処理方法について説明する。図3は、本実施の形態の基板処理方法の各工程を示す流れ図である。図3に示すように、まず工程(S1)において、主表面11を有する基板10を準備する。基板10の形成材料として、たとえばガラス、シリコン、有機系の樹脂材料などを用いることができる。
【0031】
続いて工程(S2)において、基板10の主表面11上に、主表面11の全面を被覆する被覆層の一例としての、ゲート電極膜20を形成する。たとえばタンタル、モリブデン、アルミニウムまたはその合金などが用いられ、基板10を覆う金属膜を成膜することにより、ゲート電極膜20が形成される。
【0032】
続いて工程(S3)において、ゲート電極膜20上にレジストが塗布され、レジスト膜30が形成される。レジスト膜30の材料としては、特に制限されないが、エッチング液に対して耐性があり、有機溶媒や酸またはアルカリ水溶液などで容易に除去できるものを選択することができる。たとえばアクリル樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂などから用途に応じて選択することができる。
【0033】
続いて工程(S4)において、レジスト膜30のパターニングを行なう。具体的には、たとえば、フォトマスクを介して、紫外光に代表される活性エネルギー線をレジスト膜30に照射する露光を行なう。このとき、フォトマスクの透光部を通過して活性エネルギー線が照射された部分が硬化される。次にフォトマスクを取り外し、現像を行なう。現像により、露光の際に光が照射されなかった未硬化部分が除去され、ゲート電極膜20上にレジスト膜30の凸状パターンが形成される。
【0034】
図4は、レジスト膜30がパターニングされた状態を示す断面模式図である。図4に示すように、上述した工程(S1)〜(S4)によって、基板10の主表面11上に主表面11を被覆するようにゲート電極膜20が積層され、ゲート電極膜20の表面21においてレジスト膜30の凸状パターンが積層された、積層体が形成される。レジスト膜30の一部が除去されているために、ゲート電極膜20の表面21の一部が露出している。またゲート電極膜20の表面21の他の部分は、レジスト膜30によって被覆され、外部に露出していない状態である。
【0035】
図3に戻って、次に工程(S5)において、図4に示す積層体を第一エッチング槽210内へ搬送して、ゲート電極膜20の厚み方向における表層部分をエッチングすることにより、ゲート電極膜20の表層部分のみを除去する。図2を参照して説明したように、第一エッチング槽210では、第一給液部211によりゲート電極膜2にミスト状の少量のエッチング液が供給される。エッチング液は、レジスト膜30の形成材料に合わせて最適なものが選択される。たとえばリン酸、硝酸、硫酸、フッ酸などの、一般的にエッチングに用いられる種々の薬液を、エッチング液として使用することができる。
【0036】
図5は、第一給液部211よりエッチング液が供給された状態を示す断面模式図である。図5に示すように、第一給液部211よりミスト状のエッチング液が供給されることにより、ゲート電極膜2の表面21と、レジスト膜30の凸状パターンの表面31とは、薄いエッチング液の液膜40で覆われる。このとき、ゲート電極膜2を表面21から僅かな厚み分のみ加工できるだけの量のエッチング液が、第一給液部211より供給される。
【0037】
ここで、ゲート電極膜2の表面21において局所的に酸化や窒化が進み、表面21に局所的に酸化膜や窒化膜などのエッチングされにくい不活性体が形成されるなど、ゲート電極膜2の表面21の状態が部分的に異なる場合がある。この場合に、十分な量のエッチング液を供給してゲート電極膜2のウェットエッチングを行なうと、基板10上の場所によってエッチングレートが変わり、その結果、ウェットエッチングにより得られるパターニング形状にばらつきが生じる虞がある。
【0038】
つまり、エッチング液が表面21に十分供給されていれば、表面21を加工してエッチング性の劣化したエッチング液が置換され、エッチング活性を有する新たなエッチング液が表面21に供給される。そのため、エッチングレートの早い部分ではエッチングが進行する。一方、酸化膜などの不活性体が形成された部分では、不活性体をエッチングして除去するために時間を要するので、エッチングレートが遅くなる。エッチングレートが基板10の面内で不均一となると、不活性体の形成されていない部分でゲート電極膜20が過剰にエッチングされ、他方、不活性体の形成されている部分ではゲート電極膜20のエッチングが不十分となる。その結果、エッチングにより形成されるゲート電極膜20のパターン幅にばらつきが生じてしまう。
【0039】
これに対し、本実施の形態では、表面21を薄い液膜40で被覆して、ゲート電極膜20の表層部分を除去可能なだけの少量のエッチング液が、ゲート電極膜20に供給される。これにより、表面21に酸化膜などが形成されておらずエッチングレートの早い部分において、エッチングが過剰に進行しないようにコントロールすることができる。
【0040】
つまり、ゲート電極膜20の表面21に供給されるエッチング液の量が制限されている。そのため、ゲート電極膜20の表面21に形成された不活性体を除去している間に、不活性体の形成されていない部分では、表面21をエッチングして活性を失ったエッチング液がゲート電極膜20に接触したまま残存する。すなわち、不活性体の形成されていない部分において、劣化したエッチング液が置換されてエッチングがさらに進むことが抑制されている。その結果、第一エッチング槽210において第一給液部211よりエッチング液を供給された際に、ゲート電極膜20の表層部分を均一に除去することができるので、ゲート電極膜20の表面21全体でのエッチングレートの面内均一性が向上する。
【0041】
第一給液部211は、ミストノズルを用いてミスト状のエッチング液を供給する。エッチング液の供給をシャワーやケミカルナイフで行なわず、エッチング液のミストをゲート電極膜20に供給することで、ゲート電極膜20の表面21上に薄い液膜40をより均一に形成することができる。
【0042】
また、第一給液部211が第一エッチング槽210の入口部214に配置されていることにより、ゲート電極膜20の表面21にエッチング液の液膜40が付着している状態をより長い時間確保することができる。そのため、ゲート電極膜20の表面21が外部に露出している部分の全体において、第一給液部211から供給された少量のエッチング液によって表層部分が除去されるために必要な時間を確保することができる。したがって、第一給液部211よりエッチング液を供給された際の、表面21全体でのエッチングレートの面内均一性を一層向上させることができる。
【0043】
図3に戻って、次に工程(S6)において、第一エッチング槽210でのエッチングを終え第一エッチング槽210から搬出された後の積層体を、第二エッチング槽220内へ搬入する。第二エッチング槽220内で第二給液部221よりエッチング液を供給することにより、厚み方向におけるゲート電極膜20の全部をエッチングして除去する。図6は、第二給液部221よりエッチング液が供給された状態を示す断面模式図である。図6では、前工程(S5)においてゲート電極膜20の表層部分がエッチングされたことにより、ゲート電極膜20の新たな表面21aが露出している。
【0044】
図2を参照して説明したように、第二エッチング槽220では、第二給液部221によりゲート電極膜2に多量のエッチング液が供給される。そのため、図6に示すように、第二エッチング槽220内では、基板10、ゲート電極膜20およびレジスト膜30が積層された積層体の表面全体に、エッチング液の液層50が形成されている。
【0045】
ゲート電極膜20の表面21aにエッチング液の液層50を接触させ、ゲート電極膜20に十分な量のエッチング液を供給する。これにより、上述したように、ゲート電極膜20を加工してエッチング性の劣化したエッチング液が随時置換され、エッチング活性を有する新たなエッチング液がゲート電極膜20に常に供給される。
【0046】
その結果、ゲート電極膜20の、レジスト膜30により被覆されておらず表面21aが露出している部分は、ゲート電極膜20の厚み方向の全部が除去される。前工程(S5)においてゲート電極膜20の表層部分がエッチングされ、表面21の不活性体が除去されていることにより、ゲート電極膜20の表面21aの全体において、エッチングが均一に進行する。これにより、基板10の全体においてばらつきなく均一にゲート電極膜20が加工され、基板10の主表面11が露出した、図7に示す構成が得られる。なお図7は、ゲート電極膜20がエッチング加工された状態を示す断面模式図である。
【0047】
第一給液部211は、第一エッチング槽210に設けられており、第一エッチング槽210の内部空間に、ミスト状の少量のエッチング液を供給する。第二給液部221は、第二エッチング槽220に設けられており、第一エッチング槽210の内部空間と異なる空間である第二エッチング槽220の内部空間に、シャワー状の多量のエッチング液を供給する。
【0048】
第一給液部211と第二給液部221とは、それぞれ異なる空間内にエッチング液を供給する。そのため、第一エッチング槽210内でゲート電極膜20の表層部分のみを均一にエッチングして除去し、ゲート電極膜20の全体で表面21aを確実に露出させた後に、第二エッチング槽220内でゲート電極膜20に多量のエッチング液を供給することができる。均一に形成されたゲート電極膜20の表面21aを、十分なエッチング液で加工することができるので、基板10の全面においてエッチングレートの面内均一性を向上させることができる。
【0049】
再び図3に戻って、次に工程(S7)において、エッチングによりゲート電極のパターンが形成された後の積層体を、水洗処理槽300へ搬送する。水洗処理槽300にて洗浄液としての純水を供給して、積層体を水洗する。これにより、基板10の主表面11上に残るエッチング液や、ゲート電極膜20およびレジスト膜30の残渣が洗浄される。
【0050】
続いて工程(S8)において、積層体を乾燥処理槽400に搬送し、たとえばエアナイフを用いてエアを噴出することにより、積層体を乾燥させる。その後積層体はアンローダ部500に搬送され、後工程へ搬出される。このようにして、本実施の形態のエッチング装置1を用いたエッチング処理を含む、基板処理が終了する。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態のエッチング装置1は、ゲート電極膜20に相対的に少量のエッチング液を供給する第一給液部211と、第一給液部211よりも後段側に配置され、ゲート電極膜20に相対的に多量のエッチング液を供給する第二給液部221とを備える。第一給液部211は、ゲート電極膜20の表面21近傍の表層部分を除去可能な量のエッチング液を、ゲート電極膜20に供給する。
【0052】
このようにすれば、第一給液部211によりゲート電極膜20の表面21に供給されるエッチング液の量が制限されているために、表面21に形成された不活性体を除去している間に、不活性体の形成されていない部分においてエッチングが過剰に進むことが抑制されている。そのため、第一給液部211よりエッチング液を供給された際の、ゲート電極膜20の表面21全体でのエッチングレートの面内均一性が向上する。
【0053】
したがって、第二給液部221よりエッチング液を供給する際に、ゲート電極膜20の表面21aの全体においてエッチングを均一に進行させ、基板10の全体において均一にゲート電極膜20を加工させることができるので、基板10の全面においてエッチングレートの面内均一性を向上させることができる。
【0054】
なお、これまでの説明においては、エッチング処理槽200が、一つの第一エッチング槽210と、一つの第二エッチング槽220とを備える例について説明した。エッチング処理槽200は、複数、たとえば三つの第二エッチング槽220を備えてもよい。このようにすれば、第二給液部221から多量のエッチング液が供給される時間をより長くすることができるので、より確実にゲート電極膜20をエッチング加工して、所望のゲート電極の凸状パターンを得ることができる。
【0055】
また、第一給液部211と第二給液部221とを、独立して設けられ内部に別々の空間を形成する第一エッチング槽210と第二エッチング槽220とに、それぞれ設置する例について説明した。本実施の形態のエッチング装置1は、この構成に限られるものではない。たとえば、一つの容器内に、基板10の流れの上流側に第一給液部211を配置し、下流側に第二給液部221を配置して、当該容器内空間において第一給液部211がエッチング液を供給する部分と第二給液部221がエッチング液を供給する部分とを、エアカーテンなどを用いて仕切る構成としてもよい。このようにすれば、エッチング装置1の小型化を達成することができる。
【0056】
また、一つの容器内の、基板10の流れの下流側に第二給液部221としてのシャワーノズルを配置し、そのシャワーノズルからのシャワー状のエッチング液の供給によって容器内部空間をエッチング液のミスト雰囲気に保つようにすれば、容器内に搬入された基板10に対しミストを供給することができる。つまり、シャワーノズルに、ミスト状の少量のエッチング液を基板10に供給する第一給液部211の機能を持たせることにより、ミストノズルを不要とし、エッチング装置1の装置構成を簡略化することができるので、エッチング装置1のコスト低減を達成することができる。
【0057】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のエッチング装置および基板処理方法は、液晶表示装置用のTFT(Thin Film Transistor)基板上に薄膜のパターンを形成する工程に、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0059】
1 エッチング装置、2 ゲート電極膜、10 基板、11 主表面、20 ゲート電極膜、21,21a 表面、30 レジスト膜、31 表面、40 液膜、50 液層、100 ローダ部、200 エッチング処理槽、210 第一エッチング槽、211 第一給液部、214 入口部、215 出口部、220 第二エッチング槽、221 第二給液部、222,223,224 ノズル列、300 水洗処理槽、400 乾燥処理槽、500 アンローダ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主表面を被覆する被覆層にエッチング液を供給して前記被覆層を加工するエッチング装置において、
前記被覆層に相対的に少量の前記エッチング液を供給する第一給液部と、
前記第一給液部よりも後段側に配置され、前記被覆層に相対的に多量の前記エッチング液を供給する第二給液部とを備え、
前記第一給液部は、前記被覆層の表層部分を除去可能な量の前記エッチング液を前記被覆層に供給する、エッチング装置。
【請求項2】
前記第一給液部は、ミスト状の前記エッチング液を供給する、請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項3】
第一エッチング槽と、
前記第一エッチング槽から搬出された前記基板が搬入される第二エッチング槽とを備え、
前記第一給液部は、前記第一エッチング槽内に前記エッチング液を供給し、
前記第二給液部は、前記第二エッチング槽内に前記エッチング液を供給する、請求項1または請求項2に記載のエッチング装置。
【請求項4】
前記第一給液部は、前記第一エッチング槽の入口部に配置されている、請求項3に記載のエッチング装置。
【請求項5】
主表面を有する基板を準備する工程と、
前記主表面を被覆する被覆層を形成する工程と、
前記被覆層に少量のエッチング液を供給し、前記被覆層の表層部分を除去する工程と、
前記被覆層に多量のエッチング液を供給し、前記被覆層を除去して前記主表面を露出させる工程とを備える、基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−186188(P2012−186188A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161906(P2009−161906)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】