エンジンの過給装置
【課題】 オルタネータの発電電力に基いて駆動される電動過給機を備えたエンジンの過給装置において、ノッキングやオルタネータの発電によるトルクの変化を踏まえて、効率的にトルクを向上させる。
【解決手段】 所定の過給領域で電動過給機を作動させるエンジンの過給装置において、前記電動過給機は、エンジンにより駆動されるオルタネータの発電電力に基いて駆動されるように構成されていると共に、オルタネータによる発電を行い、かつ電動過給機を定格出力時の消費電力で作動させる第1モードと、オルタネータによる発電を停止させ、かつ電動過給機を前記定格出力時の消費電力よりも低い所定の消費電力で作動させる第2モードとのいずれかを選択する過給モード選択手段が備えられ、該過給モード選択手段は、エンジン回転数が所定回転数より高いときに第1モードを選択し、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに第2モードを選択する。
【解決手段】 所定の過給領域で電動過給機を作動させるエンジンの過給装置において、前記電動過給機は、エンジンにより駆動されるオルタネータの発電電力に基いて駆動されるように構成されていると共に、オルタネータによる発電を行い、かつ電動過給機を定格出力時の消費電力で作動させる第1モードと、オルタネータによる発電を停止させ、かつ電動過給機を前記定格出力時の消費電力よりも低い所定の消費電力で作動させる第2モードとのいずれかを選択する過給モード選択手段が備えられ、該過給モード選択手段は、エンジン回転数が所定回転数より高いときに第1モードを選択し、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに第2モードを選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に駆動される電動過給機を有するエンジンの過給装置に関し、エンジンの吸気システムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジントルクの増大を図る手段として吸気を過給するスーパーチャージャやターボチャージャが周知であるが、いずれも過給能力がエンジン回転数の影響を大きく受ける結果、低回転領域で過給圧が不足するという欠点がある。これに対し、電気的に駆動される電動過給機は、エンジン回転数の影響を受けることなく回転数を制御できるので、低回転領域でも十分な過給圧を発生し得る利点がある。
【0003】
例えば特許文献1には、吸気通路に該通路を開閉する制御弁を配設すると共に、該制御弁の上、下流側を連通する過給通路を設けて、該過給通路上に電動過給機を配設し、所定の運転領域で前記制御弁を閉じた状態で電動過給機を作動させるように構成した吸気システムが開示されている。
【0004】
また、この種の電動過給機は、エンジンにより駆動されるオルタネータの発電電力に基いて駆動されるのが通例である。
【特許文献1】特開2004−346910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的に電動過給機は定格出力で作動させることになるのであるが、電動過給機を定格出力で作動させるとモータの発熱により連続的に長時間駆動できないことがある。このような電動過給機に対し、通常運転時は定格出力時の消費電力よりも低い所定の消費電力で作動させると共に、高出力要求時に限って定格出力で作動させることにより、モータの発熱を抑えつつ高出力要求に対応することが考えられる。
【0006】
また、このような電動過給機の過給により得られるエンジントルクの増加量は、該過給機への供給電力に応じて図15に示すような特性となる。即ち、定格出力時の消費電力W0よりも低い所定の消費電力W1までは、供給電力の増加に比例してトルクを増加させることができるが、所定の消費電力W1を超えると、吐出圧の上昇によりノッキングが発生し易くなり、過給により得られる発生トルクは、理論上の発生トルクより低下する。また、前記オルタネータの駆動損失により、実質的に得られる正味実トルクはさらに抑制され、前記発生トルクからオルタネータ損失トルクを引いたものとなる。
【0007】
一方、前記オルタネータによる発電量は、該オルタネータによる損失トルクとエンジン回転数との積で表され、一定の発電量を得る場合にエンジン回転数が低回転ほど消費トルクが大きくなる。
【0008】
そして、このようなノッキングやオルタネータの発電により正味実トルクが変化するため、高出力要求時に電動過給機を必ずしも定格出力で作動させることが良いとは限らない。
【0009】
そこで、本発明は、オルタネータの発電電力に基いて駆動される電動過給機を備えたエンジンの過給装置において、ノッキングやオルタネータの発電によるトルクの変化を踏まえて、効率的にトルクを向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0011】
まず、請求項1に記載の発明は、所定の過給領域で電動過給機を作動させるエンジンの過給装置において、前記電動過給機は、エンジンにより駆動されるオルタネータの発電電力に基いて駆動されるように構成されていると共に、オルタネータによる発電を行い、かつ電動過給機を定格出力時の消費電力で作動させる第1モードと、オルタネータによる発電を停止させ、かつ電動過給機を前記定格出力時の消費電力よりも低い所定の消費電力で作動させる第2モードとのいずれかを選択する過給モード選択手段が備えられ、該過給モード選択手段は、エンジン回転数が所定回転数より高いときに第1モードを選択し、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに第2モードを選択することを特徴とする。
【0012】
なお、低回転時では第1モードにおける増加トルクよりも第2モードにおける増加トルクの方が大きいが、回転数の上昇に伴ってこれらの大小が逆転する。そして、前記所定回転数とは、第1モードにおける増加トルクと第2モードにおける増加トルクとが一致する際のエンジン回転数である。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載のエンジンの過給装置において、前記過給モード選択手段は、オルタネータによる発電を行い、かつ電動過給機を前記所定の消費電力で作動させる第3モードを選択可能に構成され、該過給モード選択手段は、エンジン回転数が所定回転数より高いときに第1モードを選択し、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに第2モードを選択する選択制御と、エンジン回転数に拘らず第3モードを選択する一定制御とのいずれかを所定の条件に基いて選択することを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載のエンジンの過給装置において、高出力が要求される運転状態か否かを判定する判定手段が備えられ、前記過給モード選択手段は、該判定手段により高出力が要求される運転状態と判定されたときに、前記選択制御を選択することを特徴とする。
【0015】
一方、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、乗員の操作によりパワー走行モードと通常走行モードとを選択する走行モード選択手段が備えられ、前記判定手段は、該走行モード選択手段によりパワー走行モードが選択されているときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とする。
【0016】
そして、請求項5に記載の発明は、前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、加速状態を検出する加速状態検出手段が備えられ、前記判定手段は、該加速状態検出手段により所定の加速状態が検出されているときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、走行環境を検出する走行環境検出手段が備えられ、前記判定手段は、該走行環境検出手段により高出力が要求される走行環境が検出されているときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とする。
【0018】
さらに、請求項7に記載の発明は、前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、車両重量を検出する車両重量検出手段が備えられ、前記判定手段は、該車両重量検出手段により所定値以上の車両重量が検出されたときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とする。
【0019】
そして、請求項8に記載の発明は、前記請求項1から請求項7のいずれかに記載のエンジンの過給装置において、オルタネータにより発電された電力を蓄電するバッテリと、該バッテリの充電状態を検出する充電状態検出手段とが備えられ、前記過給モード選択手段は、該充電状態検出手段によりバッテリの充電不足が検出されたときに、第2モードの選択を抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
まず、請求項1に記載の発明によれば、エンジン回転数が所定回転数よりも高いときに、過給モード選択手段により第1モードが選択され、オルタネータにより発電を行い、かつ電動過給機を定格出力時の消費電力で作動させるように制御される。また、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに、過給モード選択手段により第2モードが選択され、オルタネータによる発電を停止させて電動過給機を定格出力時の消費電力よりも低い所定の消費電力で作動させるように制御される。
【0021】
この結果、エンジン回転数が前記所定回転数よりも高いときに第1モードを選択することにより、図15に点Xで示すような高トルクが得られると共に、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに第2モードを選択することにより、第1モードを選択したときのトルク(点Y)よりも大きなトルク(点Z)が得られる。即ち、低回転時は、第1モードにおいて得られる発生トルクからオルタネータ損失トルクを引いた正味実トルク(点Y)よりも、第2モードにおいてオルタネータ損失トルクを引かずに得られる発生トルク(点Z)の方が大きい。そして、このように低回転時は第2モードを選択することにより、消費電力を抑制しつつより高トルクが得られ、全ての回転数領域に亘って効果的に高トルクが得られることになる。
【0022】
また、請求項2に記載の発明によれば、過給モード選択手段は、オルタネータにより発電を行い、かつ電動過給機を前記所定の消費電力で作動させる第3モードを選択可能に構成され、該過給モード選択手段は、該過給モード選択手段は、エンジン回転数が所定回転数より高いときに第1モードを選択し、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに第2モードを選択する選択制御と、エンジン回転数に拘らず第3モードを選択する一定制御とのいずれかを所定の条件に基いて選択するようになっており、前記選択制御が選択されたときに、前記請求項1に記載の発明により効果的に高トルクが得られると共に、前記一定制御が選択されたときに、消費電力及びモータの発熱を抑制しつつ、効率的に過給を行うことができる。
【0023】
つまり、図15に示したように、電動過給機の消費電力がW1を超えるとノッキングが発生し易くなって、消費電力に対するトルク向上効果が低下するので、一定制御において、ノッキングの発生し難い消費電力W1で電動過給機を作動させることにより効率的に過給が行えるのである。
【0024】
一方、請求項3に記載の発明によれば、判定手段により高出力が要求される運転状態と判定されたときに選択制御が選択されて、前記請求項1に記載の発明により効果的に高トルクを得ることが可能であると共に、高出力が要求されないとき、即ち通常の走行時や緩加速時に一定制御が選択されて、消費電力及びモータの発熱を抑制しつつ効率的に過給を行うことができる。
【0025】
また、請求項4〜7は、前記請求項3に記載の発明における高出力が要求される運転状態の具体的な態様である。
【0026】
まず、請求項4に記載の発明によれば、乗員の操作によりパワー走行モードと通常走行モードとを選択する走行モード選択手段が備えられ、前記判定手段は、該走行モード選択手段によりパワー走行モードが選択されているときに高出力が要求される運転状態と判定し、この判定がなされたときに過給モード選択手段は前記選択制御を選択する。この結果、乗員がパワー走行モードを選択した際に乗員が要求する高トルクを、前記選択制御により効果的に得ることができる。
【0027】
また、請求項5に記載の発明によれば、加速状態を検出する加速状態検出手段が備えられ、前記判定手段は、該加速状態検出手段により所定の加速状態が検出されているときに高出力が要求される運転状態と判定し、この判定がなされたときに過給モード選択手段は前記選択制御を選択する。この結果、所定の加速状態が検出されたときに要求される高トルクを、前記選択制御により効果的に得ることができる。
【0028】
さらに、請求項6に記載の発明によれば、走行環境を検出する走行環境検出手段が備えられ、前記判定手段は、該走行環境検出手段により高出力が要求される走行環境が検出されているときに高出力が要求される運転状態と判定し、この判定がなされたときに過給モード選択手段は前記選択制御を選択する。この結果、高出力が要求される走行環境において要求される高トルクを、前記選択制御により効果的に得ることができる。
【0029】
そして、請求項7に記載の発明によれば、車両重量を検出する車両重量検出手段が備えられ、前記判定手段は、該車両重量検出手段により所定値以上の車両重量が検出されたときに高出力が要求される運転状態と判定し、この判定がなされたときに過給モード選択手段は前記選択制御を選択する。この結果、車両重量が増加することにより高出力が要求される状況等において要求される高トルクを、前記選択制御により効果的に得ることができる。
【0030】
一方、請求項8に記載の発明によれば、充電状態検出手段によりバッテリの充電不足が検出されたときに、第2モードの選択が抑制されるので、バッテリ上がりが防止される。つまり、第2モードが選択されたときは、オルタネータによる発電が停止され、電動過給機はバッテリに充電された電力で作動することになるが、充電不足が検出されたときには第2モードの選択が抑制され、この結果、電動過給機がオルタネータの発電電力で作動されると共にバッテリからの電力の持ち出しが抑制され、バッテリ上がりが防止されるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0032】
図1に、本実施の形態に係るエンジンの吸気システム1を示す。この吸気システム1は、新気が導入される吸気通路10を有し、該吸気通路10には、上流側からエアクリーナ11、該通路10を開閉する制御弁12、スロットル弁13、サージタンク14が設けられ、該サージタンク14から各気筒#1〜#4に連通する複数の独立吸気通路15…15が分岐されている。また、吸気通路10における前記制御弁12の上、下流側を連通する過給通路20が設けられ、該過給通路20には電動過給機30が配設されている。該電動過給機30は、モータ31を駆動させることによりブロア(図示せず)が回転し、過給通路20における電動過給機30の上流側から吸入した空気を下流側に圧送するようになっている。
【0033】
また、エンジン全体を制御するエンジンコントロールユニット100と、エンジンコントロールユニット100から出力された制御信号に基いて吸気システム1の各機器を制御する吸気システムコントローラ101と、前記電動過給機30のモータ31への供給電力の制御などを行う電動過給機コントローラ102とが備えられている。
【0034】
さらに、前記電動過給機コントローラ102に電力を供給するバッテリ40とオルタネータ41とが備えられている。該オルタネータ41は、エンジンの駆動により発電を行うようになっており、直接電動過給機コントローラ102に電力供給を行う他、発電した電力を前記バッテリ40に供給し、該バッテリ40を充電するようになっている。
【0035】
前記エンジンコントロールユニット100は、エンジン負荷を検出するものとしてアクセルペダル50aの踏込み量を検出するアクセル開度センサ50からの信号、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ51からの信号、走行モード選択スイッチ52による信号、前記バッテリ40の充電状態を検出する電圧センサ53からの信号等が入力されるようになっている。
【0036】
なお、前記走行モード選択スイッチ52は、乗員によって操作されてパワー走行モードと通常走行モードとのいずれかが選択されるようになっていると共に、該スイッチ52から出力された信号は自動変速機用のコントローラ(図示せず)にも入力され、変速パターンを高車側側に変更するようになっている。また、バッテリ40の充電状態を検出するものとして、前記電圧センサ53に代えて、該バッテリ40の充電時及び放電時の電流値を検出することにより充電状態を演算するようにしてもよい。
【0037】
そして、エンジンコントロールユニット100は、これらの入力信号に基いて、スロットル弁13を開閉駆動するスロットルアクチュエータ53、吸気システムコントローラ101などに各種の制御信号を出力する。
【0038】
前記吸気システムコントローラ101は、制御弁12を開閉駆動する制御弁アクチュエータ55、電動過給機コントローラ102などに制御信号を出力する。
【0039】
ところで、図2に示すように、前記エンジンコントロールユニット100には、各運転領域が設定された制御マップが記憶されている。この制御マップでは、低負荷側及び高回転側に自然吸気領域が設定され、高負荷低回転側に過給領域が設定されている。
【0040】
自然吸気領域では、エンジンコントロールユニット100は、吸気システムコントローラ101を介して制御弁アクチュエータ55に制御弁12を閉じるための信号を出力する。
【0041】
過給領域では、エンジンコントロールユニット100は、吸気システムコントローラ101を介して制御弁アクチュエータ55に制御弁12を開くための信号と、吸気システムコントローラ101及び電動過給機コントローラ102を介して電動過給機30へ所定の電力を供給するための信号とを出力する。
【0042】
なお、前記エンジンコントロールユニット100は請求項1に記載のエンジンの過給装置における過給モード選択手段及び請求項2に記載のエンジンの過給装置における判定手段に相当し、前記走行モード選択スイッチ52は請求項4に記載のエンジンの過給装置における走行モード選択手段に相当し、前記電圧センサ53は請求項8に記載のエンジンの過給装置における充電状態検出手段に相当する。
【0043】
以上のような構成の吸気システム1によれば、自然吸気領域では、エンジンコントロールユニット100から制御弁12を開くための信号が出力されているので、制御弁12が開かれ、吸気通路10に導入された空気が直接下流側に流れ、スロットル弁13の開度に応じてサージタンク14に供給され、該サージタンク14から独立吸気通路15…15を介して各気筒#1〜#4の燃焼室に導入される。このとき、図3に示すように、自然吸気のみによって、高回転で比較的大きなエンジントルクを出力する出力特性が得られる。
【0044】
また、過給領域では、エンジンコントロールユニット100から制御弁12を閉じるための信号が出力されているので、制御弁12が閉じられ、吸気通路10に導入された空気が過給通路20に導入される。このとき、電動過給機30を作動させる信号が出力されているので、過給通路20に導入された空気は、電動過給機30により吸引され、該過給機30から過給通路20の下流側に圧送される。そして、過給通路20の下流側に圧送された空気が吸気通路10に導入されて、該吸気通路10の下流側に流れ、スロットル弁13の開度に応じてサージタンク14に供給され、該サージタンク14から独立吸気通路15…15を介して各気筒#1〜#4の燃焼室に導入される。このとき、図3に示すように、過給によって、低回転側において自然吸気のみで得られる以上のエンジントルクを得ることが可能になる。
【0045】
一方、前記電動過給機30の定格出力時の消費電力は2kWである。そして、図4に示すように、該電動過給機30の消費電力の増加に比例して過給による発生トルクの向上効果が得られるが、消費電力が1kW付近を超えると、ノッキングの発生により、消費電力に比例する理論上の発生トルクに比べて得られる発生トルクは抑制される。
【0046】
また、前記オルタネータ41は、一定電力を発電するようになっており、この一定電力はエンジン回転数とオルタネータ41の駆動による損失トルクとの積で表される。つまり、図5に示すように、エンジン回転数とオルタネータ損失トルクとは反比例の関係にあり、高回転時は損失トルクが小さく、低回転時は損失トルクが大きくなる。
【0047】
そして、オルタネータ41による発電時は、正味実トルクとして、前記発生トルクに対してオルタネータ損失トルクを引いたトルクが得られることになるが、この正味実トルクは、オルタネータ損失トルクないしエンジン回転数に応じて変化する。即ち、高回転時はオルタネータ損失トルクが小さいので得られる正味実トルクは大きいが、低回転時はオルタネータ損失トルクが大きいので得られる正味実トルクは小さくなる。
【0048】
ところで、エンジンコントロールユニット100には、電動過給機30の消費電力とオルタネータ41による発電の有無を制御する第1〜第3モードが設定されている。即ち、第1モードでは、オルタネータ41による発電を行うと共に電動過給機30を消費電力2kWで作動させるように制御する。また、第2モードでは、オルタネータ41による発電を停止させると共に電動過給機30を消費電力1kWで作動させるように制御する。さらに、第3モードでは、オルタネータ41による発電を行うと共に電動過給機30を消費電力1kWで作動させるとように制御する。
【0049】
ここで、エンジン回転数(1500rpm〜4000rpm)に応じて前記第1〜第3モード実行時に得られる増加トルクの特性を図6のグラフに示す。まず、回転数1500rpmにおいては、第1モードで得られる増加トルクよりも第2モードで得られる増加トルクの方が大きくなっている。そして、回転数の上昇に伴って第1、第2モードで得られる増加トルクの差が小さくなり、2000rpmを超えた付近の回転数Nxで増加トルクが同一になる。そして、回転数Nxから4000rpmの範囲においては第1モードにおける増加トルクは第2モードにおける増加トルクよりも大きくなっている。また、第3モードで得られる増加トルクは、1500〜4000rpmに亘って前記第1、第2モードで得られる増加トルクよりも小さくなる。
【0050】
次に、過給時の制御について図7のフローチャートに従って説明する。
【0051】
まず、ステップS1で、各種信号の読み込みを行う。このとき、運転者のアクセルペダル50aの踏み込み量に応じてアクセル開度センサ50により検出されたアクセル開度、エンジン回転数センサ51により検出されたエンジン回転数、走行モード選択スイッチ52による信号、電圧センサ53による信号などが読み込まれる。
【0052】
次に、ステップS2で、前記走行モード選択スイッチ52により入力された信号に基いてパワー走行モードが選択されたか否かを判定する。パワー走行モードが選択されているときはステップS3に進み、前記ステップS1で読み込んだ電圧センサ53による信号に基いてバッテリ40の充電状態が良好であるか否か、即ちバッテリ40が十分に充電された状態であるか否かを判定する。
【0053】
そして、ステップS3で、バッテリ40の充電状態が良好であると判定されたときは、ステップS4に進み、エンジン回転数が所定回転数以下であるか否かを判定する。この所定回転数とは、図6で示した回転数Nxとなる。
【0054】
そして、ステップS4で、エンジン回転数が所定回転数よりも高いと判定されたときは、ステップS5に進み、第1モードの制御を行う。即ち、第1モードでは、電動過給機30を消費電力2kWで作動させると共に、オルタネータ41による発電を行う。このとき、例えば図4の点Aに該当する増加トルクが得られる。
【0055】
また、ステップS4でエンジン回転数が所定回転数以下であると判定されたときは、ステップS6に進み、第2モードの制御を行う。即ち、第2モードでは、電動過給機30を消費電力1kWで作動させると共に、オルタネータ41による発電を停止させる。このとき、図4の点Bに示す増加トルクが得られる。この点Bにおける増加トルクは、例えば図4の点A′に示すような低回転において第1モードが実行されたときに得られる増加トルクよりも大きい。
【0056】
一方、前記ステップS2で、パワー走行モードの非選択が判定されたとき、また、ステップS3で、バッテリ40の充電状態が良好でない、即ちバッテリ40の充電不足が判定されたときは、ステップS7に進み、第3モードの制御を行う。即ち、第3モードでは、電動過給機30を消費電力1kWで作動させると共に、オルタネータ41による発電を行う。
【0057】
以上のように、運転者が走行モード選択スイッチ52をパワー走行モードに操作して、高出力が要求される運転状態であるときは、第1、第2モードのいずれかが選択されるので、第3モードでの運転に対して大きな増加トルクが得られる。
【0058】
しかも、前述のように、エンジン回転数がNx以下の低回転時では、第2モードで運転することによって第1モードでの運転に対して大きな増加トルクが得られると共に、消費電力を抑制することができる。また、エンジン回転数がNx以上の高回転時では、第1モードで運転することによって、より大きな増加トルクが得られる。
【0059】
また、運転者が走行モード選択スイッチ52を通常走行モードに操作して、高出力が要求されていないときは、第3モードが選択され、消費電力に対してトルク増大作用が高い状態で運転するようになっているので、消費電力及びモータ31の発熱を抑えつつ効率的にトルクを増大させることが可能である。
【0060】
さらに、バッテリ40の充電不足が検出されたときは、第3モードを選択して、オルタネータ41による発電を行うので、バッテリ40からの電力の持ち出しが抑制され、バッテリ上がりが防止される。
【0061】
また、第1の実施の形態における他の制御例として、図8のフローチャートに示すものがある。なお、このフローチャートにおけるステップS11、S12、S14〜S17は、図7のフローチャートのステップS1、S2、S4〜S7と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0062】
即ち、ステップS13でバッテリ40の充電状態が良好でないと判定されたとき、即ち、バッテリ40の充電不足が判定されたときは、ステップS15に進み、第1モードが実行される。また、ステップS13でバッテリ40の充電状態が良好であると判定されたときは、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかが選択されることになる。
【0063】
この結果、バッテリ40の充電不足が検出されたときは、第1モードが選択されるので、オルタネータ41による発電が行われ、バッテリ40からの電力の持ち出しが抑制されてバッテリ上がりが防止されると共に、パワー走行モードで要求される高トルクを得ることが可能になる。
【0064】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0065】
この実施の形態では、図1で示した第1の実施の形態における構成から走行モード選択スイッチ52を除いた構成になっており、同一の構成要素については同一の符号を付す。
【0066】
そして、本実施の形態における過給時の制御を図9のフローチャートに従って説明する。なお、このフローチャートにおけるステップS21、S23〜S27は、前記第1の実施の形態における図7のフローチャートにおけるステップS1、S3〜S7と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0067】
即ち、ステップS22で、アクセル開度(アクセルペダル40aの踏込み量)の増加率が所定値以上か否かを判定する。アクセル開度の増加率が所定値以上であると判定されたときは、高出力が要求されるので、ステップS23に進み、バッテリ40の充電状態が良好であれば、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかでの運転が行われることになる。また、ステップS22でアクセル開度の増加率が所定値未満のとき、或いはステップS23でバッテリ40の充電不足が検出されたときは、ステップS27に進み、第3モードでの運転が行われる。
【0068】
この結果、急加速時等の運転者によりアクセルペダル40aが大きく踏込まれ、高出力が要求されたときに、前記第1の実施の形態と同様の作用効果により、第1、第2モードのいずれかが選択され、高トルクを効率良く得ることができる。
【0069】
なお、前記アクセル開度センサ50は請求項3に記載のエンジンの過給装置における加速状態検出手段に相当する。
【0070】
また、第2の実施の形態における他の制御例として、図10のフローチャートに示すものがある。なお、このフローチャートにおけるステップS31、S32、S34〜S37は、図9のフローチャートのステップS21、S22、S24〜S27と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0071】
即ち、ステップS33でバッテリ40の充電状態が良好でないと判定されたとき、即ち、バッテリ40の充電不足が判定されたときは、ステップS35に進み、第1モードが実行される。また、ステップS33でバッテリ40の充電状態が良好であると判定されたときは、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかが選択されることになる。
【0072】
この結果、バッテリ40の充電不足が検出されたときは、第1モードが選択されるので、オルタネータ41による発電が行われ、バッテリ40からの電力の持ち出しが抑制されてバッテリ上がりが防止されると共に、急加速時などに、運転者によるアクセルペダル40aの踏込みにより要求される高トルクを得ることが可能になる。
【0073】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0074】
この実施の形態では、図1で示した第1の実施の形態における走行モード選択スイッチ52に代えて、ナビゲーションが備えられている。このナビゲーションは、高速道路のランプ部や坂道等の走行環境を検出することができ、エンジンコントロールユニット100に信号を入力するようになっている。なお、同一の構成要素については、第1の実施の形態のものと同一の符号を付す。
【0075】
そして、本実施の形態における過給時の制御を図11のフローチャートに従って説明する。なお、このフローチャートにおけるステップS41、S43〜S47は、前記第1の実施の形態における図7のフローチャートにおけるステップS1、S3〜S7と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0076】
即ち、ステップS42で、ナビゲーションにより高速道路のランプ部や坂道等の高出力が要求される走行環境が検出されたときは、ステップS43に進み、バッテリ40の充電状態が良好であれば、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかの運転が行われることになる。また、ステップS42で、高出力が要求される走行環境が検出されていないとき、或いはステップS43でバッテリ40の充電不足が検出されたときは、ステップS47に進み、第3モードでの運転が行われる。
【0077】
この結果、ナビゲーションにより高速道路のランプ部や坂道等の高出力が要求される走行環境が検出されたときに、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかが選択され、前記第1の実施の形態と同様の作用効果により、高トルクを効率良く得ることができる。なお、走行環境を検出する手段は、前記ナビゲーションに限らず、センサ等であってもよい。
【0078】
なお、前記ナビゲーションは請求項6に記載のエンジンの過給装置における走行環境検出手段に相当する。
【0079】
また、第3の実施の形態における他の制御例として、図12のフローチャートに示すものがある。なお、このフローチャートにおけるステップS51、S52、S54〜S57は、図11のフローチャートのステップS41、S42、S44〜S47と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0080】
即ち、ステップS53でバッテリ40の充電状態が良好でないと判定されたとき、即ち、バッテリ40の充電不足が判定されたときは、ステップS55に進み、第1モードが実行される。また、ステップS53でバッテリ40の充電状態が良好であると判定されたときは、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかが選択されることになる。
【0081】
この結果、バッテリ40の充電不足が検出されたときは、第1モードが選択されるので、オルタネータ41による発電が行われ、バッテリ40からの電力の持ち出しが抑制されてバッテリ上がりが防止されると共に、高速道路のランプ部や坂道等の高出力が要求される走行環境において要求される高トルクを得ることが可能になる。
【0082】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0083】
この実施の形態では、図1で示した第1の実施の形態における走行モード選択スイッチ52に代えて、車両重量センサが備えられている。この車両重量センサは、車両の重量或いは重量変化を検出し、エンジンコントロールユニット100に信号を入力するようになっている。なお、同一の構成要素については、第1の実施の形態のものと同一の符号を付す。
【0084】
そして、本実施の形態における過給時の制御を図13のフローチャートに従って説明する。なお、このフローチャートにおけるステップS61、S63〜S67は、前記第1の実施の形態における図7のフローチャートにおけるステップS1、S3〜S7と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0085】
即ち、ステップS62で、乗員数の増加或いは荷物積み込み等により前記車両重量センサにより所定値以上の車両重量が検出され、高出力が要求されるときは、ステップS63に進み、バッテリ40の充電状態が良好であれば、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかの運転が行われることになる。また、ステップS62で、所定値以上の車両重量が検出されないとき、或いはステップS63でバッテリ40の充電不足が検出されたときは、ステップS67に進み、第3モードでの運転が行われる。
【0086】
この結果、車両重量が大きく、高出力が要求されるときは、第1、第2モードのいずれかが選択され、前記第1の実施の形態と同様の作用効果により、高トルクを効率良く得ることができる。なお、車両の重量変化を検出する手段としては前述のような車両重量センサに限らず、着座センサ、サスペンションのストロークを検出するセンサや、アクセル開度に対する加速度を検出することにより車両の重量変化を検出するものであってもよい。
【0087】
なお、前記車両重量センサは請求項7に記載のエンジンの過給装置における車両重量検出手段に相当する。
【0088】
また、第4の実施の形態における他の制御例として、図14のフローチャートに示すものがある。なお、このフローチャートにおけるステップS71、S72、S74〜S77は、図13のフローチャートのステップS61、S62、S64〜S67と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0089】
即ち、ステップS73でバッテリ40の充電状態が良好でないと判定されたとき、即ち、バッテリ40の充電不足が判定されたときは、ステップS75に進み、第1モードが実行される。また、ステップS73でバッテリ40の充電状態が良好であると判定されたときは、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかが選択されることになる。
【0090】
この結果、バッテリ40の充電不足が検出されたときは、第1モードが選択されるので、オルタネータ41による発電が行われ、バッテリ上がりが防止されると共に、高出力が要求される車両重量が大きい状況において、要求される高トルクを得ることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、電気的に駆動される電動過給機を有するエンジンの過給装置に関し、自動車産業に広く好適である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る吸気システムの全体図である。
【図2】エンジンの運転領域を示す制御マップである。
【図3】エンジンの出力特性の説明図である。
【図4】電動過給機の消費電力に応じて得られる増加トルクの説明図である。
【図5】一定発電量を得るときのエンジン回転数に対するオルタネータ損失トルクの説明図である。
【図6】第1〜第3モードにおけるエンジン回転数に応じた増加トルクの説明図である。
【図7】過給時の制御を示すフローチャートである。
【図8】他の制御例を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態に係る過給時の制御を示すフローチャートである。
【図10】同他の制御例を示すフローチャートである。
【図11】第3の実施の形態に係る過給時の制御を示すフローチャートである。
【図12】同他の制御例を示すフローチャートである。
【図13】第4の実施の形態に係る過給時の制御を示すフローチャートである。
【図14】同他の制御例を示すフローチャートである。
【図15】オルタネータ損失トルクに応じた増加トルクの説明図である。
【符号の説明】
【0093】
1 吸気システム
30 電動過給機
40 バッテリ
41 オルタネータ
50 アクセル開度センサ
52 走行モード選択スイッチ
53 電圧センサ
100 エンジンコントロールユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に駆動される電動過給機を有するエンジンの過給装置に関し、エンジンの吸気システムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジントルクの増大を図る手段として吸気を過給するスーパーチャージャやターボチャージャが周知であるが、いずれも過給能力がエンジン回転数の影響を大きく受ける結果、低回転領域で過給圧が不足するという欠点がある。これに対し、電気的に駆動される電動過給機は、エンジン回転数の影響を受けることなく回転数を制御できるので、低回転領域でも十分な過給圧を発生し得る利点がある。
【0003】
例えば特許文献1には、吸気通路に該通路を開閉する制御弁を配設すると共に、該制御弁の上、下流側を連通する過給通路を設けて、該過給通路上に電動過給機を配設し、所定の運転領域で前記制御弁を閉じた状態で電動過給機を作動させるように構成した吸気システムが開示されている。
【0004】
また、この種の電動過給機は、エンジンにより駆動されるオルタネータの発電電力に基いて駆動されるのが通例である。
【特許文献1】特開2004−346910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的に電動過給機は定格出力で作動させることになるのであるが、電動過給機を定格出力で作動させるとモータの発熱により連続的に長時間駆動できないことがある。このような電動過給機に対し、通常運転時は定格出力時の消費電力よりも低い所定の消費電力で作動させると共に、高出力要求時に限って定格出力で作動させることにより、モータの発熱を抑えつつ高出力要求に対応することが考えられる。
【0006】
また、このような電動過給機の過給により得られるエンジントルクの増加量は、該過給機への供給電力に応じて図15に示すような特性となる。即ち、定格出力時の消費電力W0よりも低い所定の消費電力W1までは、供給電力の増加に比例してトルクを増加させることができるが、所定の消費電力W1を超えると、吐出圧の上昇によりノッキングが発生し易くなり、過給により得られる発生トルクは、理論上の発生トルクより低下する。また、前記オルタネータの駆動損失により、実質的に得られる正味実トルクはさらに抑制され、前記発生トルクからオルタネータ損失トルクを引いたものとなる。
【0007】
一方、前記オルタネータによる発電量は、該オルタネータによる損失トルクとエンジン回転数との積で表され、一定の発電量を得る場合にエンジン回転数が低回転ほど消費トルクが大きくなる。
【0008】
そして、このようなノッキングやオルタネータの発電により正味実トルクが変化するため、高出力要求時に電動過給機を必ずしも定格出力で作動させることが良いとは限らない。
【0009】
そこで、本発明は、オルタネータの発電電力に基いて駆動される電動過給機を備えたエンジンの過給装置において、ノッキングやオルタネータの発電によるトルクの変化を踏まえて、効率的にトルクを向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0011】
まず、請求項1に記載の発明は、所定の過給領域で電動過給機を作動させるエンジンの過給装置において、前記電動過給機は、エンジンにより駆動されるオルタネータの発電電力に基いて駆動されるように構成されていると共に、オルタネータによる発電を行い、かつ電動過給機を定格出力時の消費電力で作動させる第1モードと、オルタネータによる発電を停止させ、かつ電動過給機を前記定格出力時の消費電力よりも低い所定の消費電力で作動させる第2モードとのいずれかを選択する過給モード選択手段が備えられ、該過給モード選択手段は、エンジン回転数が所定回転数より高いときに第1モードを選択し、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに第2モードを選択することを特徴とする。
【0012】
なお、低回転時では第1モードにおける増加トルクよりも第2モードにおける増加トルクの方が大きいが、回転数の上昇に伴ってこれらの大小が逆転する。そして、前記所定回転数とは、第1モードにおける増加トルクと第2モードにおける増加トルクとが一致する際のエンジン回転数である。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載のエンジンの過給装置において、前記過給モード選択手段は、オルタネータによる発電を行い、かつ電動過給機を前記所定の消費電力で作動させる第3モードを選択可能に構成され、該過給モード選択手段は、エンジン回転数が所定回転数より高いときに第1モードを選択し、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに第2モードを選択する選択制御と、エンジン回転数に拘らず第3モードを選択する一定制御とのいずれかを所定の条件に基いて選択することを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載のエンジンの過給装置において、高出力が要求される運転状態か否かを判定する判定手段が備えられ、前記過給モード選択手段は、該判定手段により高出力が要求される運転状態と判定されたときに、前記選択制御を選択することを特徴とする。
【0015】
一方、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、乗員の操作によりパワー走行モードと通常走行モードとを選択する走行モード選択手段が備えられ、前記判定手段は、該走行モード選択手段によりパワー走行モードが選択されているときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とする。
【0016】
そして、請求項5に記載の発明は、前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、加速状態を検出する加速状態検出手段が備えられ、前記判定手段は、該加速状態検出手段により所定の加速状態が検出されているときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、走行環境を検出する走行環境検出手段が備えられ、前記判定手段は、該走行環境検出手段により高出力が要求される走行環境が検出されているときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とする。
【0018】
さらに、請求項7に記載の発明は、前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、車両重量を検出する車両重量検出手段が備えられ、前記判定手段は、該車両重量検出手段により所定値以上の車両重量が検出されたときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とする。
【0019】
そして、請求項8に記載の発明は、前記請求項1から請求項7のいずれかに記載のエンジンの過給装置において、オルタネータにより発電された電力を蓄電するバッテリと、該バッテリの充電状態を検出する充電状態検出手段とが備えられ、前記過給モード選択手段は、該充電状態検出手段によりバッテリの充電不足が検出されたときに、第2モードの選択を抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
まず、請求項1に記載の発明によれば、エンジン回転数が所定回転数よりも高いときに、過給モード選択手段により第1モードが選択され、オルタネータにより発電を行い、かつ電動過給機を定格出力時の消費電力で作動させるように制御される。また、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに、過給モード選択手段により第2モードが選択され、オルタネータによる発電を停止させて電動過給機を定格出力時の消費電力よりも低い所定の消費電力で作動させるように制御される。
【0021】
この結果、エンジン回転数が前記所定回転数よりも高いときに第1モードを選択することにより、図15に点Xで示すような高トルクが得られると共に、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに第2モードを選択することにより、第1モードを選択したときのトルク(点Y)よりも大きなトルク(点Z)が得られる。即ち、低回転時は、第1モードにおいて得られる発生トルクからオルタネータ損失トルクを引いた正味実トルク(点Y)よりも、第2モードにおいてオルタネータ損失トルクを引かずに得られる発生トルク(点Z)の方が大きい。そして、このように低回転時は第2モードを選択することにより、消費電力を抑制しつつより高トルクが得られ、全ての回転数領域に亘って効果的に高トルクが得られることになる。
【0022】
また、請求項2に記載の発明によれば、過給モード選択手段は、オルタネータにより発電を行い、かつ電動過給機を前記所定の消費電力で作動させる第3モードを選択可能に構成され、該過給モード選択手段は、該過給モード選択手段は、エンジン回転数が所定回転数より高いときに第1モードを選択し、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに第2モードを選択する選択制御と、エンジン回転数に拘らず第3モードを選択する一定制御とのいずれかを所定の条件に基いて選択するようになっており、前記選択制御が選択されたときに、前記請求項1に記載の発明により効果的に高トルクが得られると共に、前記一定制御が選択されたときに、消費電力及びモータの発熱を抑制しつつ、効率的に過給を行うことができる。
【0023】
つまり、図15に示したように、電動過給機の消費電力がW1を超えるとノッキングが発生し易くなって、消費電力に対するトルク向上効果が低下するので、一定制御において、ノッキングの発生し難い消費電力W1で電動過給機を作動させることにより効率的に過給が行えるのである。
【0024】
一方、請求項3に記載の発明によれば、判定手段により高出力が要求される運転状態と判定されたときに選択制御が選択されて、前記請求項1に記載の発明により効果的に高トルクを得ることが可能であると共に、高出力が要求されないとき、即ち通常の走行時や緩加速時に一定制御が選択されて、消費電力及びモータの発熱を抑制しつつ効率的に過給を行うことができる。
【0025】
また、請求項4〜7は、前記請求項3に記載の発明における高出力が要求される運転状態の具体的な態様である。
【0026】
まず、請求項4に記載の発明によれば、乗員の操作によりパワー走行モードと通常走行モードとを選択する走行モード選択手段が備えられ、前記判定手段は、該走行モード選択手段によりパワー走行モードが選択されているときに高出力が要求される運転状態と判定し、この判定がなされたときに過給モード選択手段は前記選択制御を選択する。この結果、乗員がパワー走行モードを選択した際に乗員が要求する高トルクを、前記選択制御により効果的に得ることができる。
【0027】
また、請求項5に記載の発明によれば、加速状態を検出する加速状態検出手段が備えられ、前記判定手段は、該加速状態検出手段により所定の加速状態が検出されているときに高出力が要求される運転状態と判定し、この判定がなされたときに過給モード選択手段は前記選択制御を選択する。この結果、所定の加速状態が検出されたときに要求される高トルクを、前記選択制御により効果的に得ることができる。
【0028】
さらに、請求項6に記載の発明によれば、走行環境を検出する走行環境検出手段が備えられ、前記判定手段は、該走行環境検出手段により高出力が要求される走行環境が検出されているときに高出力が要求される運転状態と判定し、この判定がなされたときに過給モード選択手段は前記選択制御を選択する。この結果、高出力が要求される走行環境において要求される高トルクを、前記選択制御により効果的に得ることができる。
【0029】
そして、請求項7に記載の発明によれば、車両重量を検出する車両重量検出手段が備えられ、前記判定手段は、該車両重量検出手段により所定値以上の車両重量が検出されたときに高出力が要求される運転状態と判定し、この判定がなされたときに過給モード選択手段は前記選択制御を選択する。この結果、車両重量が増加することにより高出力が要求される状況等において要求される高トルクを、前記選択制御により効果的に得ることができる。
【0030】
一方、請求項8に記載の発明によれば、充電状態検出手段によりバッテリの充電不足が検出されたときに、第2モードの選択が抑制されるので、バッテリ上がりが防止される。つまり、第2モードが選択されたときは、オルタネータによる発電が停止され、電動過給機はバッテリに充電された電力で作動することになるが、充電不足が検出されたときには第2モードの選択が抑制され、この結果、電動過給機がオルタネータの発電電力で作動されると共にバッテリからの電力の持ち出しが抑制され、バッテリ上がりが防止されるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0032】
図1に、本実施の形態に係るエンジンの吸気システム1を示す。この吸気システム1は、新気が導入される吸気通路10を有し、該吸気通路10には、上流側からエアクリーナ11、該通路10を開閉する制御弁12、スロットル弁13、サージタンク14が設けられ、該サージタンク14から各気筒#1〜#4に連通する複数の独立吸気通路15…15が分岐されている。また、吸気通路10における前記制御弁12の上、下流側を連通する過給通路20が設けられ、該過給通路20には電動過給機30が配設されている。該電動過給機30は、モータ31を駆動させることによりブロア(図示せず)が回転し、過給通路20における電動過給機30の上流側から吸入した空気を下流側に圧送するようになっている。
【0033】
また、エンジン全体を制御するエンジンコントロールユニット100と、エンジンコントロールユニット100から出力された制御信号に基いて吸気システム1の各機器を制御する吸気システムコントローラ101と、前記電動過給機30のモータ31への供給電力の制御などを行う電動過給機コントローラ102とが備えられている。
【0034】
さらに、前記電動過給機コントローラ102に電力を供給するバッテリ40とオルタネータ41とが備えられている。該オルタネータ41は、エンジンの駆動により発電を行うようになっており、直接電動過給機コントローラ102に電力供給を行う他、発電した電力を前記バッテリ40に供給し、該バッテリ40を充電するようになっている。
【0035】
前記エンジンコントロールユニット100は、エンジン負荷を検出するものとしてアクセルペダル50aの踏込み量を検出するアクセル開度センサ50からの信号、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ51からの信号、走行モード選択スイッチ52による信号、前記バッテリ40の充電状態を検出する電圧センサ53からの信号等が入力されるようになっている。
【0036】
なお、前記走行モード選択スイッチ52は、乗員によって操作されてパワー走行モードと通常走行モードとのいずれかが選択されるようになっていると共に、該スイッチ52から出力された信号は自動変速機用のコントローラ(図示せず)にも入力され、変速パターンを高車側側に変更するようになっている。また、バッテリ40の充電状態を検出するものとして、前記電圧センサ53に代えて、該バッテリ40の充電時及び放電時の電流値を検出することにより充電状態を演算するようにしてもよい。
【0037】
そして、エンジンコントロールユニット100は、これらの入力信号に基いて、スロットル弁13を開閉駆動するスロットルアクチュエータ53、吸気システムコントローラ101などに各種の制御信号を出力する。
【0038】
前記吸気システムコントローラ101は、制御弁12を開閉駆動する制御弁アクチュエータ55、電動過給機コントローラ102などに制御信号を出力する。
【0039】
ところで、図2に示すように、前記エンジンコントロールユニット100には、各運転領域が設定された制御マップが記憶されている。この制御マップでは、低負荷側及び高回転側に自然吸気領域が設定され、高負荷低回転側に過給領域が設定されている。
【0040】
自然吸気領域では、エンジンコントロールユニット100は、吸気システムコントローラ101を介して制御弁アクチュエータ55に制御弁12を閉じるための信号を出力する。
【0041】
過給領域では、エンジンコントロールユニット100は、吸気システムコントローラ101を介して制御弁アクチュエータ55に制御弁12を開くための信号と、吸気システムコントローラ101及び電動過給機コントローラ102を介して電動過給機30へ所定の電力を供給するための信号とを出力する。
【0042】
なお、前記エンジンコントロールユニット100は請求項1に記載のエンジンの過給装置における過給モード選択手段及び請求項2に記載のエンジンの過給装置における判定手段に相当し、前記走行モード選択スイッチ52は請求項4に記載のエンジンの過給装置における走行モード選択手段に相当し、前記電圧センサ53は請求項8に記載のエンジンの過給装置における充電状態検出手段に相当する。
【0043】
以上のような構成の吸気システム1によれば、自然吸気領域では、エンジンコントロールユニット100から制御弁12を開くための信号が出力されているので、制御弁12が開かれ、吸気通路10に導入された空気が直接下流側に流れ、スロットル弁13の開度に応じてサージタンク14に供給され、該サージタンク14から独立吸気通路15…15を介して各気筒#1〜#4の燃焼室に導入される。このとき、図3に示すように、自然吸気のみによって、高回転で比較的大きなエンジントルクを出力する出力特性が得られる。
【0044】
また、過給領域では、エンジンコントロールユニット100から制御弁12を閉じるための信号が出力されているので、制御弁12が閉じられ、吸気通路10に導入された空気が過給通路20に導入される。このとき、電動過給機30を作動させる信号が出力されているので、過給通路20に導入された空気は、電動過給機30により吸引され、該過給機30から過給通路20の下流側に圧送される。そして、過給通路20の下流側に圧送された空気が吸気通路10に導入されて、該吸気通路10の下流側に流れ、スロットル弁13の開度に応じてサージタンク14に供給され、該サージタンク14から独立吸気通路15…15を介して各気筒#1〜#4の燃焼室に導入される。このとき、図3に示すように、過給によって、低回転側において自然吸気のみで得られる以上のエンジントルクを得ることが可能になる。
【0045】
一方、前記電動過給機30の定格出力時の消費電力は2kWである。そして、図4に示すように、該電動過給機30の消費電力の増加に比例して過給による発生トルクの向上効果が得られるが、消費電力が1kW付近を超えると、ノッキングの発生により、消費電力に比例する理論上の発生トルクに比べて得られる発生トルクは抑制される。
【0046】
また、前記オルタネータ41は、一定電力を発電するようになっており、この一定電力はエンジン回転数とオルタネータ41の駆動による損失トルクとの積で表される。つまり、図5に示すように、エンジン回転数とオルタネータ損失トルクとは反比例の関係にあり、高回転時は損失トルクが小さく、低回転時は損失トルクが大きくなる。
【0047】
そして、オルタネータ41による発電時は、正味実トルクとして、前記発生トルクに対してオルタネータ損失トルクを引いたトルクが得られることになるが、この正味実トルクは、オルタネータ損失トルクないしエンジン回転数に応じて変化する。即ち、高回転時はオルタネータ損失トルクが小さいので得られる正味実トルクは大きいが、低回転時はオルタネータ損失トルクが大きいので得られる正味実トルクは小さくなる。
【0048】
ところで、エンジンコントロールユニット100には、電動過給機30の消費電力とオルタネータ41による発電の有無を制御する第1〜第3モードが設定されている。即ち、第1モードでは、オルタネータ41による発電を行うと共に電動過給機30を消費電力2kWで作動させるように制御する。また、第2モードでは、オルタネータ41による発電を停止させると共に電動過給機30を消費電力1kWで作動させるように制御する。さらに、第3モードでは、オルタネータ41による発電を行うと共に電動過給機30を消費電力1kWで作動させるとように制御する。
【0049】
ここで、エンジン回転数(1500rpm〜4000rpm)に応じて前記第1〜第3モード実行時に得られる増加トルクの特性を図6のグラフに示す。まず、回転数1500rpmにおいては、第1モードで得られる増加トルクよりも第2モードで得られる増加トルクの方が大きくなっている。そして、回転数の上昇に伴って第1、第2モードで得られる増加トルクの差が小さくなり、2000rpmを超えた付近の回転数Nxで増加トルクが同一になる。そして、回転数Nxから4000rpmの範囲においては第1モードにおける増加トルクは第2モードにおける増加トルクよりも大きくなっている。また、第3モードで得られる増加トルクは、1500〜4000rpmに亘って前記第1、第2モードで得られる増加トルクよりも小さくなる。
【0050】
次に、過給時の制御について図7のフローチャートに従って説明する。
【0051】
まず、ステップS1で、各種信号の読み込みを行う。このとき、運転者のアクセルペダル50aの踏み込み量に応じてアクセル開度センサ50により検出されたアクセル開度、エンジン回転数センサ51により検出されたエンジン回転数、走行モード選択スイッチ52による信号、電圧センサ53による信号などが読み込まれる。
【0052】
次に、ステップS2で、前記走行モード選択スイッチ52により入力された信号に基いてパワー走行モードが選択されたか否かを判定する。パワー走行モードが選択されているときはステップS3に進み、前記ステップS1で読み込んだ電圧センサ53による信号に基いてバッテリ40の充電状態が良好であるか否か、即ちバッテリ40が十分に充電された状態であるか否かを判定する。
【0053】
そして、ステップS3で、バッテリ40の充電状態が良好であると判定されたときは、ステップS4に進み、エンジン回転数が所定回転数以下であるか否かを判定する。この所定回転数とは、図6で示した回転数Nxとなる。
【0054】
そして、ステップS4で、エンジン回転数が所定回転数よりも高いと判定されたときは、ステップS5に進み、第1モードの制御を行う。即ち、第1モードでは、電動過給機30を消費電力2kWで作動させると共に、オルタネータ41による発電を行う。このとき、例えば図4の点Aに該当する増加トルクが得られる。
【0055】
また、ステップS4でエンジン回転数が所定回転数以下であると判定されたときは、ステップS6に進み、第2モードの制御を行う。即ち、第2モードでは、電動過給機30を消費電力1kWで作動させると共に、オルタネータ41による発電を停止させる。このとき、図4の点Bに示す増加トルクが得られる。この点Bにおける増加トルクは、例えば図4の点A′に示すような低回転において第1モードが実行されたときに得られる増加トルクよりも大きい。
【0056】
一方、前記ステップS2で、パワー走行モードの非選択が判定されたとき、また、ステップS3で、バッテリ40の充電状態が良好でない、即ちバッテリ40の充電不足が判定されたときは、ステップS7に進み、第3モードの制御を行う。即ち、第3モードでは、電動過給機30を消費電力1kWで作動させると共に、オルタネータ41による発電を行う。
【0057】
以上のように、運転者が走行モード選択スイッチ52をパワー走行モードに操作して、高出力が要求される運転状態であるときは、第1、第2モードのいずれかが選択されるので、第3モードでの運転に対して大きな増加トルクが得られる。
【0058】
しかも、前述のように、エンジン回転数がNx以下の低回転時では、第2モードで運転することによって第1モードでの運転に対して大きな増加トルクが得られると共に、消費電力を抑制することができる。また、エンジン回転数がNx以上の高回転時では、第1モードで運転することによって、より大きな増加トルクが得られる。
【0059】
また、運転者が走行モード選択スイッチ52を通常走行モードに操作して、高出力が要求されていないときは、第3モードが選択され、消費電力に対してトルク増大作用が高い状態で運転するようになっているので、消費電力及びモータ31の発熱を抑えつつ効率的にトルクを増大させることが可能である。
【0060】
さらに、バッテリ40の充電不足が検出されたときは、第3モードを選択して、オルタネータ41による発電を行うので、バッテリ40からの電力の持ち出しが抑制され、バッテリ上がりが防止される。
【0061】
また、第1の実施の形態における他の制御例として、図8のフローチャートに示すものがある。なお、このフローチャートにおけるステップS11、S12、S14〜S17は、図7のフローチャートのステップS1、S2、S4〜S7と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0062】
即ち、ステップS13でバッテリ40の充電状態が良好でないと判定されたとき、即ち、バッテリ40の充電不足が判定されたときは、ステップS15に進み、第1モードが実行される。また、ステップS13でバッテリ40の充電状態が良好であると判定されたときは、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかが選択されることになる。
【0063】
この結果、バッテリ40の充電不足が検出されたときは、第1モードが選択されるので、オルタネータ41による発電が行われ、バッテリ40からの電力の持ち出しが抑制されてバッテリ上がりが防止されると共に、パワー走行モードで要求される高トルクを得ることが可能になる。
【0064】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0065】
この実施の形態では、図1で示した第1の実施の形態における構成から走行モード選択スイッチ52を除いた構成になっており、同一の構成要素については同一の符号を付す。
【0066】
そして、本実施の形態における過給時の制御を図9のフローチャートに従って説明する。なお、このフローチャートにおけるステップS21、S23〜S27は、前記第1の実施の形態における図7のフローチャートにおけるステップS1、S3〜S7と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0067】
即ち、ステップS22で、アクセル開度(アクセルペダル40aの踏込み量)の増加率が所定値以上か否かを判定する。アクセル開度の増加率が所定値以上であると判定されたときは、高出力が要求されるので、ステップS23に進み、バッテリ40の充電状態が良好であれば、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかでの運転が行われることになる。また、ステップS22でアクセル開度の増加率が所定値未満のとき、或いはステップS23でバッテリ40の充電不足が検出されたときは、ステップS27に進み、第3モードでの運転が行われる。
【0068】
この結果、急加速時等の運転者によりアクセルペダル40aが大きく踏込まれ、高出力が要求されたときに、前記第1の実施の形態と同様の作用効果により、第1、第2モードのいずれかが選択され、高トルクを効率良く得ることができる。
【0069】
なお、前記アクセル開度センサ50は請求項3に記載のエンジンの過給装置における加速状態検出手段に相当する。
【0070】
また、第2の実施の形態における他の制御例として、図10のフローチャートに示すものがある。なお、このフローチャートにおけるステップS31、S32、S34〜S37は、図9のフローチャートのステップS21、S22、S24〜S27と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0071】
即ち、ステップS33でバッテリ40の充電状態が良好でないと判定されたとき、即ち、バッテリ40の充電不足が判定されたときは、ステップS35に進み、第1モードが実行される。また、ステップS33でバッテリ40の充電状態が良好であると判定されたときは、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかが選択されることになる。
【0072】
この結果、バッテリ40の充電不足が検出されたときは、第1モードが選択されるので、オルタネータ41による発電が行われ、バッテリ40からの電力の持ち出しが抑制されてバッテリ上がりが防止されると共に、急加速時などに、運転者によるアクセルペダル40aの踏込みにより要求される高トルクを得ることが可能になる。
【0073】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0074】
この実施の形態では、図1で示した第1の実施の形態における走行モード選択スイッチ52に代えて、ナビゲーションが備えられている。このナビゲーションは、高速道路のランプ部や坂道等の走行環境を検出することができ、エンジンコントロールユニット100に信号を入力するようになっている。なお、同一の構成要素については、第1の実施の形態のものと同一の符号を付す。
【0075】
そして、本実施の形態における過給時の制御を図11のフローチャートに従って説明する。なお、このフローチャートにおけるステップS41、S43〜S47は、前記第1の実施の形態における図7のフローチャートにおけるステップS1、S3〜S7と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0076】
即ち、ステップS42で、ナビゲーションにより高速道路のランプ部や坂道等の高出力が要求される走行環境が検出されたときは、ステップS43に進み、バッテリ40の充電状態が良好であれば、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかの運転が行われることになる。また、ステップS42で、高出力が要求される走行環境が検出されていないとき、或いはステップS43でバッテリ40の充電不足が検出されたときは、ステップS47に進み、第3モードでの運転が行われる。
【0077】
この結果、ナビゲーションにより高速道路のランプ部や坂道等の高出力が要求される走行環境が検出されたときに、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかが選択され、前記第1の実施の形態と同様の作用効果により、高トルクを効率良く得ることができる。なお、走行環境を検出する手段は、前記ナビゲーションに限らず、センサ等であってもよい。
【0078】
なお、前記ナビゲーションは請求項6に記載のエンジンの過給装置における走行環境検出手段に相当する。
【0079】
また、第3の実施の形態における他の制御例として、図12のフローチャートに示すものがある。なお、このフローチャートにおけるステップS51、S52、S54〜S57は、図11のフローチャートのステップS41、S42、S44〜S47と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0080】
即ち、ステップS53でバッテリ40の充電状態が良好でないと判定されたとき、即ち、バッテリ40の充電不足が判定されたときは、ステップS55に進み、第1モードが実行される。また、ステップS53でバッテリ40の充電状態が良好であると判定されたときは、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかが選択されることになる。
【0081】
この結果、バッテリ40の充電不足が検出されたときは、第1モードが選択されるので、オルタネータ41による発電が行われ、バッテリ40からの電力の持ち出しが抑制されてバッテリ上がりが防止されると共に、高速道路のランプ部や坂道等の高出力が要求される走行環境において要求される高トルクを得ることが可能になる。
【0082】
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0083】
この実施の形態では、図1で示した第1の実施の形態における走行モード選択スイッチ52に代えて、車両重量センサが備えられている。この車両重量センサは、車両の重量或いは重量変化を検出し、エンジンコントロールユニット100に信号を入力するようになっている。なお、同一の構成要素については、第1の実施の形態のものと同一の符号を付す。
【0084】
そして、本実施の形態における過給時の制御を図13のフローチャートに従って説明する。なお、このフローチャートにおけるステップS61、S63〜S67は、前記第1の実施の形態における図7のフローチャートにおけるステップS1、S3〜S7と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0085】
即ち、ステップS62で、乗員数の増加或いは荷物積み込み等により前記車両重量センサにより所定値以上の車両重量が検出され、高出力が要求されるときは、ステップS63に進み、バッテリ40の充電状態が良好であれば、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかの運転が行われることになる。また、ステップS62で、所定値以上の車両重量が検出されないとき、或いはステップS63でバッテリ40の充電不足が検出されたときは、ステップS67に進み、第3モードでの運転が行われる。
【0086】
この結果、車両重量が大きく、高出力が要求されるときは、第1、第2モードのいずれかが選択され、前記第1の実施の形態と同様の作用効果により、高トルクを効率良く得ることができる。なお、車両の重量変化を検出する手段としては前述のような車両重量センサに限らず、着座センサ、サスペンションのストロークを検出するセンサや、アクセル開度に対する加速度を検出することにより車両の重量変化を検出するものであってもよい。
【0087】
なお、前記車両重量センサは請求項7に記載のエンジンの過給装置における車両重量検出手段に相当する。
【0088】
また、第4の実施の形態における他の制御例として、図14のフローチャートに示すものがある。なお、このフローチャートにおけるステップS71、S72、S74〜S77は、図13のフローチャートのステップS61、S62、S64〜S67と同様であるので、これらの説明は省略する。
【0089】
即ち、ステップS73でバッテリ40の充電状態が良好でないと判定されたとき、即ち、バッテリ40の充電不足が判定されたときは、ステップS75に進み、第1モードが実行される。また、ステップS73でバッテリ40の充電状態が良好であると判定されたときは、エンジン回転数に応じて第1、第2モードのいずれかが選択されることになる。
【0090】
この結果、バッテリ40の充電不足が検出されたときは、第1モードが選択されるので、オルタネータ41による発電が行われ、バッテリ上がりが防止されると共に、高出力が要求される車両重量が大きい状況において、要求される高トルクを得ることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、電気的に駆動される電動過給機を有するエンジンの過給装置に関し、自動車産業に広く好適である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る吸気システムの全体図である。
【図2】エンジンの運転領域を示す制御マップである。
【図3】エンジンの出力特性の説明図である。
【図4】電動過給機の消費電力に応じて得られる増加トルクの説明図である。
【図5】一定発電量を得るときのエンジン回転数に対するオルタネータ損失トルクの説明図である。
【図6】第1〜第3モードにおけるエンジン回転数に応じた増加トルクの説明図である。
【図7】過給時の制御を示すフローチャートである。
【図8】他の制御例を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態に係る過給時の制御を示すフローチャートである。
【図10】同他の制御例を示すフローチャートである。
【図11】第3の実施の形態に係る過給時の制御を示すフローチャートである。
【図12】同他の制御例を示すフローチャートである。
【図13】第4の実施の形態に係る過給時の制御を示すフローチャートである。
【図14】同他の制御例を示すフローチャートである。
【図15】オルタネータ損失トルクに応じた増加トルクの説明図である。
【符号の説明】
【0093】
1 吸気システム
30 電動過給機
40 バッテリ
41 オルタネータ
50 アクセル開度センサ
52 走行モード選択スイッチ
53 電圧センサ
100 エンジンコントロールユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の過給領域で電動過給機を作動させるエンジンの過給装置において、
前記電動過給機は、エンジンにより駆動されるオルタネータの発電電力に基いて駆動されるように構成されていると共に、
オルタネータによる発電を行い、かつ電動過給機を定格出力時の消費電力で作動させる第1モードと、オルタネータによる発電を停止させ、かつ電動過給機を前記定格出力時の消費電力よりも低い所定の消費電力で作動させる第2モードとのいずれかを選択する過給モード選択手段が備えられ、
該過給モード選択手段は、エンジン回転数が所定回転数より高いときに第1モードを選択し、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに第2モードを選択することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載のエンジンの過給装置において、
前記過給モード選択手段は、オルタネータによる発電を行い、かつ電動過給機を前記所定の消費電力で作動させる第3モードを選択可能に構成され、
該過給モード選択手段は、エンジン回転数が所定回転数より高いときに第1モードを選択し、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに第2モードを選択する選択制御と、エンジン回転数に拘らず第3モードを選択する一定制御とのいずれかを所定の条件に基いて選択することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載のエンジンの過給装置において、
高出力が要求される運転状態か否かを判定する判定手段が備えられ、
前記過給モード選択手段は、該判定手段により高出力が要求される運転状態と判定されたときに、前記選択制御を選択することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項4】
前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、
乗員の操作によりパワー走行モードと通常走行モードとを選択する走行モード選択手段が備えられ、
前記判定手段は、該走行モード選択手段によりパワー走行モードが選択されているときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項5】
前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、
加速状態を検出する加速状態検出手段が備えられ、
前記判定手段は、該加速状態検出手段により所定の加速状態が検出されているときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項6】
前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、
走行環境を検出する走行環境検出手段が備えられ、
前記判定手段は、該走行環境検出手段により高出力が要求される走行環境が検出されているときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項7】
前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、
車両重量を検出する車両重量検出手段が備えられ、
前記判定手段は、該車両重量検出手段により所定値以上の車両重量が検出されたときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項8】
前記請求項1から請求項7のいずれかに記載のエンジンの過給装置において、
オルタネータにより発電された電力を蓄電するバッテリと、
該バッテリの充電状態を検出する充電状態検出手段とが備えられ、
前記過給モード選択手段は、該充電状態検出手段によりバッテリの充電不足が検出されたときに、第2モードの選択を抑制することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項1】
所定の過給領域で電動過給機を作動させるエンジンの過給装置において、
前記電動過給機は、エンジンにより駆動されるオルタネータの発電電力に基いて駆動されるように構成されていると共に、
オルタネータによる発電を行い、かつ電動過給機を定格出力時の消費電力で作動させる第1モードと、オルタネータによる発電を停止させ、かつ電動過給機を前記定格出力時の消費電力よりも低い所定の消費電力で作動させる第2モードとのいずれかを選択する過給モード選択手段が備えられ、
該過給モード選択手段は、エンジン回転数が所定回転数より高いときに第1モードを選択し、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに第2モードを選択することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載のエンジンの過給装置において、
前記過給モード選択手段は、オルタネータによる発電を行い、かつ電動過給機を前記所定の消費電力で作動させる第3モードを選択可能に構成され、
該過給モード選択手段は、エンジン回転数が所定回転数より高いときに第1モードを選択し、エンジン回転数が前記所定回転数以下のときに第2モードを選択する選択制御と、エンジン回転数に拘らず第3モードを選択する一定制御とのいずれかを所定の条件に基いて選択することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載のエンジンの過給装置において、
高出力が要求される運転状態か否かを判定する判定手段が備えられ、
前記過給モード選択手段は、該判定手段により高出力が要求される運転状態と判定されたときに、前記選択制御を選択することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項4】
前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、
乗員の操作によりパワー走行モードと通常走行モードとを選択する走行モード選択手段が備えられ、
前記判定手段は、該走行モード選択手段によりパワー走行モードが選択されているときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項5】
前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、
加速状態を検出する加速状態検出手段が備えられ、
前記判定手段は、該加速状態検出手段により所定の加速状態が検出されているときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項6】
前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、
走行環境を検出する走行環境検出手段が備えられ、
前記判定手段は、該走行環境検出手段により高出力が要求される走行環境が検出されているときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項7】
前記請求項3に記載のエンジンの過給装置において、
車両重量を検出する車両重量検出手段が備えられ、
前記判定手段は、該車両重量検出手段により所定値以上の車両重量が検出されたときに高出力が要求される運転状態と判定することを特徴とするエンジンの過給装置。
【請求項8】
前記請求項1から請求項7のいずれかに記載のエンジンの過給装置において、
オルタネータにより発電された電力を蓄電するバッテリと、
該バッテリの充電状態を検出する充電状態検出手段とが備えられ、
前記過給モード選択手段は、該充電状態検出手段によりバッテリの充電不足が検出されたときに、第2モードの選択を抑制することを特徴とするエンジンの過給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−32423(P2007−32423A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216918(P2005−216918)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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