説明

カゴ型ケイ素骨格を有する有機ケイ素化合物及び高分子化合物

【課題】光エレクトロニクス材料として有用な新規な高分子化合物を提供する。
【解決手段】式(1)で示されるシルセスキオキサン骨格をポリマー主鎖中に有する高分子化合物を提供する。
化1


式(1)において、X及びYは独立して水素原子、または炭素数1〜40の1価有機基を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カゴ型シルセスキオキサン骨格を主鎖に有する新規なポリマー、このポリマーからなる薄膜に関する。本発明のポリマーおよびその薄膜は、電子材料、光学材料および光エレクトロニクスの分野において、絶縁膜、保護膜、液晶配向膜、光導波路などに用いられる。なお、「シルセスキオキサン」は、各ケイ素原子が3個の酸素原子と結合し、各酸素原子が2個のケイ素原子と結合している化合物を示す類名であるが、本発明においてはその一部が変形したシルセスキオキサン類似構造の化合物も含めてシルセスキオキサンとする。シルセスキオキサン構造およびその一部が変形したシルセスキオキサン類似構造の総称として、「シルセスキオキサン骨格」を用いる。そして、以下の説明では、用語「シルセスキオキサン」を記号「PSQ」を用いて表記することがある。
【背景技術】
【0002】
PSQに関しては、これまで数多くの研究が行われてきた。例えば非特許文献1に記載されている総説によれば、ラダー構造、完全縮合型構造、および不完全縮合型構造のほか、一定の構造を示さない不定形構造などのPSQの存在が確認されている。完全縮合型構造とは、複数の環状構造からなり、閉じた空間を形成する構造であり、その閉じた空間の形状は限定されていない。不完全縮合型構造は、完全縮合型構造の少なくとも1箇所以上が塞がれておらず、空間が閉じていない構造をさす。
【0003】
完全縮合型構造または不完全縮合型構造を有するPSQのうち、容易に合成され単離されている化合物の種類は限定されている。その中で市販されている化合物の数はさらに限定されている。最近では、完全縮合型構造または不完全縮合型構造を有するPSQに、種々の官能基が導入されたPSQ誘導体が、ハイブリッドプラスチック社より市販されており、多くの用途が提案されている。
【0004】
しかしながら、これら市販されているPSQ誘導体は完全縮合型(いわゆるT8構造)が主流であり、また不完全縮合型もカゴが1箇所だけ閉じていない(T7構造)がほとんどであった。従って、これらのPSQ誘導体を用いるには、完全縮合型誘導体を添加剤として樹脂中にブレンドする例が多い。しかし、既存のPSQ誘導体には、樹脂との相溶性が悪く、そのために均一に混合することができなかったり、塗膜にした場合に白化したり、塗膜からブリードアウトするなどの問題点があるので、その添加量に限界があった。そして、PSQが本来有する特性(難燃性、耐熱性、耐候性、耐光性、電気絶縁性、表面特性、硬度、力学的強度、耐薬品性など)を十分に付与できない例も少なくなかった。
【0005】
一方、不完全縮合型PSQ骨格をブレンド以外の形で樹脂中に導入した例がいくつか見受けられる。非特許文献2にはメタクリロイル基を有するかご型のPSQが開示されている。この化合物を重合させて得られたポリマーは、高い機械強度と酸素透過性を有する。さらに、非特許文献3ではT7構造の非縮合部をトリクロロシラン誘導体で閉環した後ジアミンを合成し、PSQ骨格を側鎖に有するポリイミドを合成している。しかし、これらはいずれもPSQを側鎖にしか導入できないという、T7骨格に由来する構造化学的な問題があった。
【0006】
近年、非縮合部位を2箇所有する新規PSQ骨格(以下、ダブルデッカー骨格と略記することがある。)が見出された。この化合物は各種ジクロロシラン類との反応により閉環し、完全縮合型PSQと類似のカゴ型ケイ素化合物となる事が特許文献1に開示されている。さらに、閉環部位に官能基を導入し、その重合によってダブルデッカー骨格式(1)が主鎖中に取り込まれたポリマーが初めて合成された(特許文献2)。しかし、開示され
たポリマーは、ヒドロシリル化反応による重付加物、ポリイミド、および環状エーテル類(エポキシ、オキセタン)の開環重合体等に限定されており、それ以外の重合体については合成の可否も含めて全く記載されていない。また、ここで開示された重合体は、モノマー中にフレキシブルなメチレン結合を多数有することからガラス転移点が低く、剛直で耐熱性に優れたカゴ型ケイ素骨格の特性を十分に発揮させるには至らなかった。
【非特許文献1】Chem. Rev. 95, 1409 (1995)
【非特許文献2】Macromolecules, 28, 8435, (1995)
【非特許文献3】Macromolecules,36,9122,(2003)
【特許文献1】WO 2004/024741号パンフレット
【特許文献2】特開2004-331647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、主鎖中にダブルデッカー骨格を有する新規な高分子化合物、およびその原料となる反応性化合物を提供することである。特に、分子鎖を極力剛直にする事によって、耐熱性や機械強度に優れた材料を提供する事である。
また、かかる高分子の薄膜を用い、新規な光エレクトロニクス材料、具体的には低誘電率の絶縁膜、耐光性に優れた液晶配向膜、または低伝送損失の光導波路材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、様々な有機ポリマー主鎖中にダブルデッカー骨格を導入し、構造制御されたカゴ型構造を含む有機−無機ハイブリッド材料を創製するという観点から鋭意研究した。その結果、重合性基(アミノ基、水酸基、酸無水物、炭素−炭素不飽和結合)を含む二官能性化合物を合成、重合させる事により、主鎖中にカゴ型ケイ素骨格が導入された、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリフェニレン、エポキシ樹脂を得る事に成功した。さらに、これら新規高分子の薄膜は、誘電特性、透明性、耐光性、耐熱性等に優れ、絶縁膜、液晶配向膜、光導波路等の電子材料に有用である事を見出し本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、本発明の高分子化合物は、二官能性ダブルデッカー誘導体を公知の方法で重合させて得られる事を特徴とする。
本発明は、以下の(1)〜(24)などに分けることができる。
【0010】
(1)式(1)で示されるシルセスキオキサン骨格をポリマー主鎖中に有する高分子化合物。
【化1】

式(1)において、X及びYは独立して水素、または炭素数1〜40の1価有機基を示す。
(2)式(1)において、Xは独立して水素、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリール、またはアリールにおける任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられて
もよいアリールアルキルであって、前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、前記アリールの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよく、前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよい、(1)の高分子化合物。
(3)式(1)において、Xは独立してメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシル又はフェニルである、(1)の高分子化合物。
(4)式(1)において、Xはフェニルである、(1)の高分子化合物。
(5)式(1)において、Yは独立して水素、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリール、またはアリールにおける任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリールアルキルであって、前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、前記アリールの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよく、前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよい、(1)〜(4)のいずれかの高分子化合物。
(6)ポリマー主鎖がポリイミドである事を特徴とする(1)〜(5)のいずれかの高分子化合物。
(7)ポリマー主鎖がポリアミドである事を特徴とする(1)〜(5)のいずれかの高分子化合物。
(8)ポリマー主鎖がポリエステルである事を特徴とする(1)〜(5)のいずれかの高分子化合物。
(9)ポリマー主鎖がポリカーボネートである事を特徴とする(1)〜(5)のいずれかの高分子化合物。
(10)ポリマー主鎖がポリウレタンである事を特徴とする(1)〜(5)のいずれかの高分子化合物。
(11)ポリマー主鎖がポリフェニレンである事を特徴とする(1)〜(5)のいずれかの高分子化合物。
(12)ポリマー主鎖がエポキシ樹脂である事を特徴とする(1)〜(5)のいずれかの高分子化合物。
(13)式(2)で示される有機ケイ素化合物。
【化2】

式(2)において、X及びYは独立して水素、または炭素数1〜40の1価有機基を示し、Zは独立してアミノ基、水酸基、ビニル基、エポキシ基、三重結合含有基(−C≡C−R)を示す。ここで、Rは水素原子または炭素数1〜10の1価有機基である。
(14)式(2)において、Xは独立して水素、炭素数1〜40のアルキル、任意の水
素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリール、またはアリールにおける任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリールアルキルであって、前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、前記アリールの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよく、前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよい、(13)の有機ケイ素化合物。
(15)式(2)において、Xは独立してメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシル又はフェニルである、(13)の有機ケイ素化合物。
(16)式(2)において、Xはフェニルである、(13)の有機ケイ素化合物。
(17)式(2)において、Yは独立して水素、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリール、またはアリールにおける任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリールアルキルであって、前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、前記アリールの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよく、前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよい、(13)〜(16)のいずれかの有機ケイ素化合物。
(18)式(3)で示される有機ケイ素化合物。
【化3】

式(3)において、X及びYは独立して水素、または炭素数1〜40の1価有機基を示す。
(19)式(3)において、Xは独立して水素、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリール、またはアリールにおける任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリールアルキルであって、前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、前記アリールの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよく、前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよい、(18)の有機ケイ素化合物。
(20)式(3)において、Xは独立してメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシル又はフェニルである、(18)の有機ケイ素化合物。
(21)式(3)において、Xはフェニルである、(18)の有機ケイ素化合物。
(22)式(3)において、Yは独立して水素、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリール、またはアリールにおける任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリールアルキルであって、前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、前記アリールの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよく、前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよい、(18)〜(21)のいずれかの有機ケイ素化合物。
(23)(13)〜(17)のいずれかの有機ケイ素化合物を単量体として重合反応を行うことにより得られる、(1)〜(12)のいずれかの高分子化合物。
(24)(18)〜(22)のいずれかの有機ケイ素化合物を単量体として重合反応を行うことにより得られる、(6)の高分子化合物。
(25)(13)〜(17)のいずれかの有機ケイ素化合物であってZがアミノ基である化合物、および(18)〜(22)のいずれかの有機ケイ素化合物を重合反応させることによって得られる事を特徴とする、(6)の高分子化合物。
(26)(1)〜(12)、および(23)〜(25)のいずれかの高分子化合物からなる薄膜。
(27)(26)の薄膜を用いる事を特徴とする絶縁膜。
(28)(26)の薄膜を用いる事を特徴とする保護膜。
(29)(26)の薄膜を用いる事を特徴とする液晶配向膜。
(30)(26)の薄膜を用いる事を特徴とする平坦化膜。
(31)(26)の薄膜を用いる事を特徴とする光導波路材料。
(32)(27)の絶縁膜を用いる事を特徴とする電気的固体装置。
(33)(28)の保護膜を用いる事を特徴とする電気的固体装置。
(34)(29)の液晶配向膜を用いる事を特徴とする液晶表示素子。
(35)(30)の平坦化膜を用いる事を特徴とする液晶表示素子。
(36)(31)の光導波路材料を用いる事を特徴とする光導波路。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高分子化合物は機械強度や耐熱性に優れた、剛直なカゴ型骨格を主鎖中に有している。しかも、ダブルデッカー骨格内部に空隙を持つ事から、本発明の高分子化合物は、耐熱性等に優れるだけでなく低い誘電率を示す。さらに、ポリマー全体に占める有機ケイ素成分の含有量が多いことから、有機残基だけで構成された同種のポリマーに比べて透明性や耐光性にも優れている。よって、従来の有機高分子に比べ、過酷な条件下で使用される層間絶縁膜やポリマー光導波路等の電子材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の高分子化合物は、式(1)で示されるシルセスキオキサン骨格をポリマー主鎖中に有する高分子化合物である。
【0013】
【化4】

【0014】
式(1)において、Xは独立して水素、または炭素数1〜40の1価有機基を示す。Xは、好ましくは、独立して水素、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリール、またはアリールにおける任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリールアルキルである。ここに、炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよい;アリールの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよい;アリールアルキルのアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
【0015】
Xの具体例は、メチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、ブチル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、ペンチル基、ヘキシル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、ヘプチル基、オクチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基などのアルキル基である。同様にシクロアルキル基として、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、デカリル基を挙げることができる。また、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナデカフルオロヘキシル基、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル基、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル基、パーフルオロ−1H,1H,2H,2H−ドデシル基、パーフルオロ−1H,1H,2H,2H−テトラデシル基などのフルオロアルキル基でも良い。さらに、3−メトキシプロピル基、メトキシエトキシウンデシル基、3−ヘプタフルオロイソプロポキシプロピル基などのアルコキシ基を挙げることができる。
【0016】
また、Xはアルケニル基の様に不飽和結合を有する有機基でも良い。その具体例は、エテニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、10−ウンデセニル基である。炭素数2〜20のアルケニルオキシアルキルの例は、アリルオキシウンデシル基である。
【0017】
置換または非置換のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、ペンタフルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、4−ヘプチルフェニル基、4−オクチルフェニル基、4−ノニルフェニル基、4−デシルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリエチルフェニル基、4−(1−メチルエチル)フェニル基、4−(1,1−ジメチルエチル)フ
ェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、2,4,6−トリス(1−メチルエチル)フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−プロポキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基、4−ペンチルオキシフェニル基、4−ヘプチルオキシフェニル基、4−デシルオキシフェニル基、4−オクタデシルオキシフェニル基、4−(1−メチルエトキシ)フェニル基、4−(2−メチルプロポキシ)フェニル基、4−(1,1−ジメチルエトキシ)フェニル基、4−エテニルフェニル基、4−(1−メチルエテニル)フェニル基、4−(3−ブテニル)フェニル基等を挙げることができる。
【0018】
これらの中で、本発明の高分子化合物、およびその原料となる有機ケイ素化合物に用いる1価有機基として好ましいのは、耐熱性や機械強度に優れた低級アルキル基とアリール基である。特に好ましいものとして具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基、およびフェニル基が挙げられ、この中ではフェニル基が最も好ましい。
【0019】
式(1)において、Yは独立して水素、または炭素数1〜40の1価有機基を示す。Yは、好ましくは、独立して水素、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリール、またはアリールにおける任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリールアルキルである。ここに、炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよい;アリールの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよい;アリールアルキルのアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよい。特に好ましいものとして具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基を挙げることができる。
【0020】
これらの炭化水素基において、水素原子がフッ素で置換されたトリフルオロメチル基、トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、フルオロフェニレン基であっても問題はない。なお、これらの炭化水素基において結合基の位置は任意である。
【0021】
本発明の高分子化合物は、通常の高分子化学的手法で製造する事が可能であるが、好適には、反応性基を持つ二官能性モノマー(式(2)、(3)で例示される)の重合で合成することができる。
【0022】
【化5】

ここで、X、Yは、(1)におけるX,Yと同様に定義される置換基を意味し、好ましい置換基も(1)と同様である。
Zは独立してアミノ基、水酸基、ビニル基、エポキシ基、三重結合含有基(−C≡C−R)を示す。ここで、Rは水素原子または炭素数1〜10の1価有機基である。
【0023】
【化6】

ここで、X、Yは、(1)におけるX,Yと同様に定義される置換基を意味し、好ましい置換基も(1)と同様である。
【0024】
これら、二官能性モノマーも通常の有機化学的手法で容易に合成が可能であるが、反応性基を有するジクロロシラン誘導体とダブルデッカー型PSQ(式(a))の閉環反応で合成するのが最も一般的である。式(2)、(3)の化合物の一般的合成法を以下に示す。
なお、ダブルデッカー型PSQは、トリアルコキシシランを水酸化ナトリウム存在下加水分解重縮合する事によって得ることができる。反応例を以下に示す。
【0025】
【化7】

【0026】
また、式(a)の化合物を脱離基(E)を持つジクロロシラン誘導体で一旦閉環した後、反応性基を有するグリニャール試薬を反応させて合成する方法も有用である。反応例を以下に示す。
【0027】
【化8】

【0028】
式(2)、(3)以外の化合物も同様にして得ることができる。
このようにして得られる化合物を単量体として重合反応を行うことにより、本発明の高分子化合物を得ることができる。
重合反応について以下に示す。
【0029】
本発明の高分子化合物において、その主鎖がポリイミドである重合体は、分子中に式(1)で示される骨格を有するジアミン、例えば式(2)においてZ=アミノ基で示される化合物と、テトラカルボン酸二無水物の重合反応で合成する事ができる。反応例を以下に示すが、式中Aは2価有機基である。
【0030】
【化9】

【0031】
本発明のポリイミド製造において、モノマーとして用いるテトラカルボン酸二無水物は何の制限も受けないが、具体名を例示すると、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2、2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(ジカルボキシシクロヘキシル)エーテル二無水物、ビス(ジカルボキシシクロヘキシル)スルホン二無水物、ビス(ジカルボキシシクロヘキシル)メタン二無水物、4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物を挙げることができる。また、式(3)で示される化合物を用いても良い。
【0032】
これらの中で、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(ジカルボキシシクロヘキシル)メタン二無水物、4,4'−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、および式(3)で示される化合物が好ましい。これらの化合物には異性体を含むものもあるが、これらの異性体混合物であってもかまわない。また、2種以上の化合物を併用しても良い。
【0033】
本発明の高分子化合物において、その主鎖がポリアミドである重合体は、分子中に式(
1)で示される骨格を有するジアミン、例えば式(2)においてZ=アミノ基で示される化合物と、ジカルボン酸またはその誘導体の重合反応で合成する事ができる。反応例を以下に示すが、式中A、Bは2価有機基である。
【0034】
【化10】

【0035】
本発明のポリアミドにおいてモノマーで用いる上記ジカルボン酸は、そのまま重合させても何ら問題はないが、反応性の誘導体に変換してから重合させるとより穏和な条件で反応させる事ができる。これらの誘導体として、カルボン酸クロリド等の酸ハロゲン化物、1−ヒドロキシベンゾトリアゾリルエステル、2,4−ジニトロフェニルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル等の活性エステルを用いることが可能である。これらの誘導体を経由する場合、最も好ましいのは酸クロリドである。
【0036】
本発明の高分子化合物において、その主鎖がポリエステルである重合体は、分子中に式(1)で示される骨格を有するジオールまたはビフェノール、例えば式(2)においてZ=水酸基で示される化合物と、ジカルボン酸またはその誘導体の重合反応で合成する事ができる。反応例を以下に示すが、式中A、Bは2価有機基である。
【0037】
【化11】

【0038】
本発明のポリエステルにおいて用いる上記ジカルボン酸は、そのまま重合させても何ら問題はないが、反応性の誘導体に変換してから重合させるとより穏和な条件で反応させる事ができる。これらの誘導体として、カルボン酸クロリド等の酸ハロゲン化物、1−ヒドロキシベンゾトリアゾリルエステル、2,4−ジニトロフェニルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル等の活性エステルを用いることが可能である。または、フェニ
ルエステルを用いて溶融重合によるエステル交換反応で重合することもできる。これらの誘導体を経由する場合、最も好ましいのは酸クロリドである。
【0039】
本発明の高分子化合物において、その主鎖がポリカーボネートである重合体は、分子中に式(1)で示される骨格を有するジオールまたはビフェノール、例えば式(2)においてZ=水酸基で示される化合物と、炭酸誘導体の重合反応で合成する事ができる。反応例を以下に示すが、式中Aは2価有機基である。
【0040】
【化12】

【0041】
本発明のポリカーボネート合成で用いる上記炭酸誘導体として、具体的にはホスゲン、クロロギ酸トリクロロメチル(ホスゲンダイマー)、トリホスゲン等の塩化物、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の炭酸エステルを挙げることができる。これらの誘導体を経由する場合、最も好ましいのはトリホスゲン、ジフェニルカーボネートである。
【0042】
本発明の高分子化合物において、その主鎖がポリウレタンである重合体は、分子中に式(1)で示される骨格を有するジオールまたはビフェノール、例えば式(2)においてZ=水酸基で示される化合物と、ジイソシアネートの重付加反応で合成する事ができる。反応例を以下に示すが、式中A、Bは2価有機基である。
【0043】
【化13】

【0044】
本発明の高分子化合物において、その主鎖がポリフェニレンである重合体は、分子中に
式(1)で示される骨格を有し、かつ三重結合を2つ有する化合物、例えば式(2)においてZ=−C≡C−Rで示される化合物と、共役ジエンまたはその誘導体の重付加反応で合成する事ができる。反応例を以下に示すが、式中A、Bは2価有機基である。
【0045】
【化14】

【0046】
この時、三重結合と反応する共役ジエンまたはその誘導体として、下記の構造を挙げることができる。なお、式中Bは後述する2価有機基である。
【0047】
【化15】

【0048】
これらの構造の中で好ましくは、ディールス−アルダー反応後、一酸化炭素または二酸化炭素の脱離を経て最終的にベンゼン環を生成する下記の構造である。
【0049】
【化16】

【0050】
本発明の高分子化合物を合成する場合において、モノマーとして用いる化合物のA,Bに該当する2価有機基は特に限定されないが、好ましくは以下の通りである。これらは、それぞれ独立しており、共重合体を合成しない場合は第三成分を必要としない。また、これらの化合物には異性体を含むものもあるが、これらの異性体混合物であってもかまわない。また、2種以上の化合物を併用しても良い。芳香族基として以下を挙げる。
【0051】
【化17】

また、次の脂肪族基を挙げることもできる。
【0052】
【化18】

【0053】
これら2価有機基の中で、特に好ましく用いられるのは以下の構造である。
【0054】
【化19】

【0055】
本発明の高分子化合物において、その主鎖がエポキシ樹脂である重合体は、分子中に式(1)で示される骨格を有するビスエポキシ化合物、例えば式(2)においてZ=エポキシ基で示される化合物と種々の硬化剤との重付加反応で合成する事ができる。硬化剤としては、脂肪族または芳香族のポリアミンや酸無水物、ポリフェノール類を挙げることができる。
【0056】
この時、樹脂特性の多様性を発揮させるために、他のエポキシ化合物、具体的にはビスフェノールAのジグリシジルエーテル、グリシジルエステル系化合物、グリシジルアミン系化合物、または環状脂肪族エポキシ化合物等を共重合させても全く問題はない。また、
硬化反応促進のため、第三アミンやルイス酸錯体を触媒型硬化剤として用いても良い。
【0057】
本発明の高分子化合物において、重合反応、溶液保存、および薄膜形成時に用いる溶媒は、重合反応を阻害することなく、モノマーとポリマーの溶解性に優れたものであれば特に制限されない。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンが好ましい。さらに好ましくは、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフランである。これらの溶媒は、単独で用いても複数混合して使用してもよい。
【0058】
さらに必要により、塗布性改善などの目的で表面張力の低い溶媒を併用してもよい。具体的には乳酸アルキル、3−メチル−3−メトキシブタノ−ル、テトラリン、イソホロン、エチレングリコ−ルモノアルキルエ−テル(エチレングリコ−ルモノブチルエ−テルなど)、ジエチレングリコ−ルモノアルキルエ−テル(ジエチレングリコ−ルモノエチルエ−テルなど)、エチレングリコ−ルモノアルキルまたはフェニルアセテ−ト、トリエチレングリコ−ルモノアルキルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノアルキルエ−テル(プロピレングリコ−ルモノブチルエ−テルなど)、マロン酸ジアルキル(マロン酸ジエチルなど)の例を挙げることができる。これらの溶媒は、先の良溶媒に対して貧溶媒的なものが多い。従って、溶解成分が析出しない程度の量を添加することが好ましい。
【0059】
さらに、塗布性を改良する等の目的で用いられる界面活性剤や、帯電防止の目的等で用いられる帯電防止剤を添加することも可能である。あるいは、さらに基板との密着性を向上させるために、シランカップリング剤やチタン系のカップリング剤を配合することも可能である。
【0060】
好ましいシランカップリング剤として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0061】
上述したような溶媒で本発明の高分子化合物を溶解し、これを基板に塗布することで薄膜を形成することができる。
高分子溶液を、薄膜を形成させる基板へ塗布する方法としては、通常使用されている方法が使用可能である。例えば、スピンナー法、印刷法、ディッピング法、滴下法などが使用できる。塗布の際、オリゴマー溶液の溶媒組成、濃度は重合時と同一でもよいが、反応溶媒を減圧濃縮等にて一旦除去した後、最適な濃度や溶媒組成に調整してから塗布しても全く問題はない。基板としては、ガラス基板、プラスティック基板、またはフィルム状基板などを用いることができる。
【0062】
また、これらの溶液を塗布した後の溶媒の乾燥に要する加熱処理などにおいても、通常の層間絶縁膜、保護膜、液晶配向膜、光導波路形成で使用している手法と同様な方法で実施することが可能である。例えば、オ−ブン、ホットプレ−ト、赤外炉中などが使用できる。溶液を塗布した後は、比較的低温で溶媒を蒸発させた後、100〜500℃程度の温度で、好ましくは150〜450℃で加熱処理する事が好ましい。加熱温度は一定でも段
階的に昇温してもよい。加熱時間は重合体の種類によって異なるが、10〜180分程度が好ましく、さらに好ましくは約30〜90分である。なお、本加熱処理においては空気中、窒素雰囲気もしくは減圧条件下のいずれで行ってもよい。
このようにして形成された薄膜は絶縁膜、保護膜、液晶配向膜、平坦化膜などとして有用である。膜のサイズや厚さは用途に応じて適宜設定することができる。
【0063】
絶縁膜とは、LSI内部の多層配線構造において、電気を通す金属配線とそれらを電気的に絶縁する機能を有する膜などを意味する。
保護膜とは、LSI多層配線構造の最上部に形成され、配線内部を外部からの汚染等から保護する機能を有する膜などを意味する。
本発明の絶縁膜及び保護膜は、半導体などの電気的固定装置の製造に好適に用いられる。
【0064】
平坦化膜とは、凹凸面を持った物体をコーティングすることにより、その表面を平坦にさせる膜などを意味する。
液晶配向膜とは、液晶表示素子内部において液晶分子の一軸配向性と、界面におけるプレチルト角を発現させる機能を有する膜などを意味する。
本発明の平坦化膜および液晶配向膜は、液晶表示素子の製造に好適に用いられる。
【0065】
一方、本発明の高分子化合物を光導波路材料として用いることもできる。
光導波路材料とは、光ファイバーや光配線等の光機能素子において、光信号を特定の領域に閉じこめて入射端から出射端に導く機能を有する材料などを意味する。
【0066】
光導波路は、公知の方法に基づいて作製することができる(特開2005−010770号公報、特開2005−029652号公報、特開2004−182909号公報など)。例えば、以下のような経路で作製される。まず、光学クラッド材用として用いられる高分子化合物を基板上に塗布し、膜を形成した後、光学コア材用の高分子化合物を塗布し、得られた塗布層上にエッチングマスクをマウントし、以下フォトリソグラフィーの手法により導波路パターンに加工する。エッチングマスクの材料としては、有機フォトレジストあるいは金属等が用いられる。次に、エッチングマスク越しに光学コア層を反応性イオンエッチングすることにより、所望の導波路パターンを形成することができる。この方法は、特にシングルモードタイプの光導波路の作製に有効である。特開平9−329721号公報には、光導波路型縮小イメージセンサーに用いるための光導波路の作製方法が記載されており、本発明の高分子化合物はこのような光導波路の調製にも適している。
【0067】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例で得られた化合物の物性は以下の方法で測定した。
融点:偏光顕微鏡にホットステージ(メトラー社製FP−82)を装着して、毎分5℃の昇温速度で測定した。
赤外吸収スペクトル(IR):日本分光株式会社製FT/IR−7000型を用い、室温でKBr法にて測定した。
プロトンNMRスペクトル(1H−NMR):日本電子株式会社製JNM−GSX400を使用し、400MHzで溶媒にクロロホルム−d、またはテトラヒドロフラン−d8を用い、内部標準物質にテトラメチルシランを用いて室温で測定した。
シリコンNMRスペクトル(29Si−NMR):日本電子株式会社製JNM−GSX400を使用し、79MHzで溶媒にクロロホルム−d、またはテトラヒドロフランを用い、内部標準物質にテトラメチルシランを用いて室温で測定した。
日本分光社製 GULLIVER1500シリーズ HPLCシステムを使用し、テト
ラヒドロフランを移動相とするGPCで測定を行った。
熱分解温度:セイコー電子工業社製、TG/DTA−220型を用い、空気中で毎分10℃の昇温速度で測定し、5%重量減少を示した点を分解温度とした。
ガラス転移温度:セイコー電子工業社製DSC−200型を用い毎分5℃の昇温速度で測定した。
【実施例1】
【0068】
式(2)において、全てのX=フェニル基、Y=メチル基、Z=−C≡C−Phで示される有機ケイ素化合物(化合物3)の合成;
以下、工程毎に詳細な説明を行う。
【0069】
【化20】

【0070】
(1) 化合物2の合成;ダブルデッカーのナトリウム塩(化合物1)を3.88g(3.36mmol)をテトラヒドロフラン(以下THF)に懸濁させた溶液に、4−ブロモフェニルメチルジクロロシラン(湖浜ら、日本化学雑誌,79巻,11号,1307頁(1958年)に準拠して合成した)2.0g(7.4mmol)を室温で滴下の後、そのまま3時間攪拌した。反応系に水を加えて、トルエンで2回抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後ロータリーエバポレーターにより濃縮した。得られた白色固体をトルエン中で再結晶し、白色固体の化合物2を2.57g(1.75mmol)得た。収率52%、融点:278.2℃、Rf=0.3 (ヘキサン:酢酸エチル=9:1)、
1H−NMR (CDCl3) ;δ= 0.49 (6H, s), 7.13-7.51 (48H, m)
【0071】
(2) 化合物3の合成;前項で合成した化合物2を1.57g(1.1mmol)、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド10mg(0.015mmol)、フェニルアセチレン330mg(3.2mmol)、ヨウ化銅(I)5mg(0.02mmol)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)12ml、トリエチルアミン8mlを100mlナスフラスコに取り、窒素気流下70℃で1時間加熱撹拌した。反応系に水を加えてトルエン溶媒で抽出後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ別しロータリーエバポレーターで濃縮後に、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付して、化合物3を0.56g(0.37mmol)固体として得た。収率37%、融点:253.6〜259.0℃、Rf=0.26(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)
1H−NMR (CDCl3);δ=0.49 (2H, s), 0.52 (4H, s), 6.99-7.62 (58H, m)
13C−NMR (CDCl3);δ= 0.25, 89.33, 90.01, 123.09, 124.62, 124.71, 127.36, 127.45, 127.54, 127.67, 128.21, 130.1, 130.21, 130.29, 130.40, 130.46, 130.7,
130.89, 131.41, 131.47, 133.2, 133.74, 133.78, 133.85, 133.88, 134.85, 136.21, 136.25
29Si−NMR (CDCl3);δ= -78.71, -79.34
NMR分析の結果、この固体はシス−トランス体混合物であった。
【実施例2】
【0072】
式(2)において、全てのX=フェニル基、Y=メチル基、Z=水酸基で示される有機ケイ素化合物(化合物5)の合成;
以下、工程毎に詳細な説明を行う。
【0073】
【化21】

【0074】
(1) 化合物4の合成;化合物1を3.86g(3.33mmol)をTHF20mlに懸濁させた溶液に、4−ベンジルオキシフェニルメチルジクロロシラン(特開2000−159714号公報に準拠して合成した)のTHF溶液を室温で滴下の後、そのまま3時間攪拌した。反応系に水を加えて、トルエンで2回抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後ロータリーエバポレーターにより濃縮した。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、得られた固体をトルエンで再結晶して白色固体の化合物4を1.58g(1.00mmol)得た。収率30.3%、融点:198.4℃、Rf=0.206 (ヘキサン:酢酸エチル=9:1)。
1H−NMR (CDCl3) ;δ= 0.49 (6H, s), 4.98 (4H, s), 6.79-6.82 (4H, m), 7.07-758 (54H, m)
29Si−NMR (CDCl3);δ= -78.3, -79.46
【0075】
(2) 化合物5の合成;前項で合成した化合物4を0.6g(0.39mmol)をTHF15mlに溶解し、1N塩酸3mlと10%パラジウム炭素0.12gを加えて、水素雰囲気下にて室温で5日間攪拌した。反応液をセライトろ過し、水洗後、トルエンで抽出して硫酸マグネシウムで乾燥させた。抽出液を濃縮後、析出した固体をヘキサン-酢酸エチル溶媒から再結晶を行い、化合物5を白色固体として0.15g(0.11mmol)得た。収率29%、融点:300℃以上、Rf=0.49 (ヘキサン:酢酸エチル=1:1)
1H−NMR (CDCl3);δ=0.49 (6H, s), 4.8 (2H, s), 6.81 (4H, d, J = 8 Hz), 7.1-7.71 (48H, m)
29Si−NMR (THF−d8);δ=−82.2,−83.3
NMR分析の結果、この固体はシス−トランス体混合物であった。
【実施例3】
【0076】
式(2)において、全てのX=フェニル基、Y=メチル基、Z=ビニル基で示される有機ケイ素化合物の合成;
化合物1を9.3g(8.0mmol)をTHF80mlに懸濁させた溶液に、トリエチルアミン2.4g加えて室温で撹拌した。ここにスチリルメチルジクロロシラン(特開昭59−126478号公報に準拠して合成した)5.2g(24mmol)を室温で滴下の後、そのまま5時間攪拌した。析出した塩をろ別し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮物をTHF30mlに溶解し、再度塩をろ別した。ろ液を濃縮し250mlのメタノールに投入した。析出した目的物をろ別後減圧乾燥し、白色固体を7.9g(5.8mmol)得た(収率73%)。
1H−NMR (CDCl3) ;δ=0.51 (6H, s), 5.25,5.27(2H,dd),5.70,5.75(2H,dd),6.63-6.72 (2H, m), 7.02-7.61 (48H, m)
29Si−NMR (THF);δ=-30.5,-77.9,-78.8,-79.1,-79.2
【実施例4】
【0077】
式(2)において、全てのX=フェニル基、Y=メチル基、Z=エポキシドで示される有機ケイ素化合物の合成;
実施例3で合成した化合物(ジビニル体)4.6g(3.4mmol)をジクロロメタン60ml、1,2−ジブロモエタン60ml、およびパーフルオロヘキサン60mlの混合溶液に懸濁して室温下撹拌した。ここへm−クロロ過安息香酸1.7g(10.0mmol)を一度に加えて、室温下19時間撹拌した。反応液を分液漏斗に移して最下層の液を分取し、その液を重曹水で1回、純水で2回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、乾燥剤をろ別して減圧濃縮した。得られた固体を少量のTHFに溶解し、大量のメタノールに投入して再沈殿を行った。固体成分をろ過し、少量の冷酢酸エチルで洗浄後減圧乾燥して、白色固体の目的物を2.5g得た(収率53%)。Rf=0.57、0.47 (ヘキサン:酢酸エチル=2:1)
1H−NMR (CDCl3) ;δ=0.51 (6H, s), 2.69(2H,t),3.10,3.11(2H,q),3.79 (2H, t), 7.07-7.64 (48H, m)
29Si−NMR (THF);δ=-30.51,-77.83,-78.90,-79.0,-79.04,-79.11
Rf値とNMRの結果から、本化合物はジアステレオマー混合物であった。
【実施例5】
【0078】
式(2)において、全てのX=フェニル基、Y=メチル基、Z=アミノ基で示される有機ケイ素化合物(化合物7)の合成;
以下、工程毎に詳細な説明を行う。
【0079】
【化22】

【0080】
(1) 4−ニトロフェニルメチルジクロロシランの合成(J.D.Rich., J.Am.Chem.Soc.,111,5886 (1989)に準拠して合成した);
p−ニトロベンゾイルクロライド8.1g(44mmol)、1,1,2,2−テトラクロロ−1,2ジメチルジシラン10.0g(44mmol)を100ml3つ口フラスコに仕込み、トリフェニルホスフィン0.2g(0.9mmol)、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)0.2g(0.4mmol)を加え、窒素気流下撹拌させ
ながら140℃まで加熱した。140℃で12時間反応させた後、減圧蒸留装置を組み込み、130〜136℃/0.80kPaの留分を分取して1.8g(収率17.4%)の黄色透明液を得た。この化合物は直ちに次の反応に用いた。
【0081】
(2) 化合物6の合成;化合物1を2.9g(3mmol)、およびトリエチルアミン0.3g(3mmol)を30mlのテトラヒドロフランに加え、窒素雰囲気下撹拌した。この懸濁液に(1)で得られたジクロロシラン1.8g(8mmol)を滴下し、室温で3時間撹拌した。反応液を過剰の水中に投入し、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤をろ別後減圧濃縮して黄色油状物を得た。
この油状物に少量の酢酸エチルを加えて結晶化させ、結晶をろ別後、ろ液を減圧濃縮して得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、得られた固形物を減圧乾燥したところ、白色粉末状の化合物6を0.9g(0.6mmol)得た。収率24.2%、融点:130℃、Rf=0.6 (ヘキサン:酢酸エチル=2:1)、
1H−NMR (CDCl3) ;δ= 0.61(6H, s), 7.12−8.05 (48H, m)
【0082】
(3) 化合物7の合成;(2)で合成した化合物6を0.8g(0.6mmol)とり、100mlの酢酸エチルに溶解した。10%パラジウム炭素0.1gを加え、水素雰囲気下室温で14時間撹拌した。触媒をろ別し、ろ液を減圧濃縮して0.8gの半透明油状物を得た。
この油状物に少量のヘキサンおよび酢酸エチルを加えて結晶化させ、結晶をろ集後減圧乾燥し、白色粉末状の化合物7を0.5g(0.4mmol)得た。収率61.4%、融点:195℃、Rf=0.5 (ヘキサン:酢酸エチル=1:1)、
1H−NMR (CDCl3) ;δ= 0.49 (6H, s), 3.62 (4H, bs), 6.48−7.57(48H, m)
29Si−NMR(CDCl3) ;δ=−30.3,−78.7,−79.6,−79.9
【実施例6】
【0083】
式(3)において、全てのX=フェニル基、Y=メチル基で示される有機ケイ素化合物(化合物8)の合成;
以下、工程毎に詳細な説明を行う。
【0084】
【化23】

【0085】
(1) 4−(ジクロロメチルシリル)フタル酸無水物の合成(J.D.Rich., J.Am.Chem.Soc., 111,5886 (1989)に準拠して合成した);
トリメリット酸無水物クロライド18.5g(88mmol)、1,1,2,2−テトラクロロ−1,2ジメチルジシラン20.0g(88mmol)、トリフェニルホスフィン0.2g(0.8mmol)、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)0.2g(0.4mmol)を用いて、実施例4と同様の反応操作を行った。減圧蒸留では140〜146℃/0.13kPaの留分を分取して5.4g(収率23.6%)の透明液体を得た。この化合物は直ちに次の反応に用いた。
【0086】
(2) 化合物8の合成;10.0g(9.0mmol)の化合物1を100mlのTHFに加え、窒素雰囲気下撹拌した。この懸濁液に(1)で得られたジクロロシラン5.4g(21mmol)を滴下し、室温で22時間撹拌した。反応液をろ別し、ろ液を減圧濃縮して7.5gの半透明油状物を得た。
この油状物に少量の酢酸エチルを加えて析出した固体をろ別し、ろ液を減圧濃縮して黄白色粘性物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチルのみ)で精製し、TLC(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で原点以外のスポットを除去した。次いで、得られた濃縮物を少量のヘキサン/酢酸エチルで結晶化させ、得られた固形物を減圧乾燥し、白色粉末状の化合物8を1.1g(0.8mmol)得た。収率8.8%、融点:195℃。
1H−NMR (CDCl3) ;δ= 0.58 (6H, s), 7.14−8.17(46H, m)
29Si−NMR(CDCl3) ;δ=−32.8,−77.4,−77.8
【実施例7】
【0087】
ポリイミドの合成1;
実施例5で合成したジアミン(化合物7)0.5019g(0.376mmol)をシクロヘキサノン1.5035gに溶かし室温で撹拌した。この溶液に、実施例6で合成した酸二無水物(化合物8)0.5033g(0.376mmol)を固体のまま添加した。室温で12時間撹拌して得られたワニスを、シクロヘキサノンで濃度20%まで希釈し、0.5ミクロンのメンブランフィルターでろ過した。この溶液をスピンナー法でガラス基板に塗布し、100℃のホットプレート上で3分間加熱した。続いて窒素雰囲気下250℃のオーブンに入れて1時間焼成したところ淡黄色薄膜が得られた。このポリイミドのガラス転移温度は201℃であった。
【実施例8】
【0088】
ポリイミドの合成2;
化合物7の仕込み量を0.1440g(0.108mmol)とし、化合物8に代えて3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物0.0349g(0.108mmol)を使用した以外は、実施例7と同様に合成を行い、ポリイミド薄膜を得た。このポリイミドのガラス転移温度は197℃であった。
【実施例9】
【0089】
ポリイミドの合成3;
ジアミン成分を4,4′−ジアミノジフェニルエーテル0.2012g(1.00mmol)に代え、化合物8の仕込み量を1.3989g(0.98mmol)とした以外は、実施例7と同様に合成を行い、ポリイミド薄膜を得た。このポリイミドのガラス転移温度は188℃であった。
【実施例10】
【0090】
ポリアミドの合成;
実施例5で合成したジアミン(化合物7)0.5019g(0.376mmol)をNMP1.11gに溶かし氷冷下で撹拌した。この溶液に、テレフタル酸ジクロリド0.0762g(0.376mmol)を固体のまま添加した。室温に戻して3時間撹拌し、反応液をメタノール100ml中に投入してポリマーを沈殿させた。沈殿物をろ集し、白色の固体を減圧下乾燥してポリアミドを得た。このポリマーの熱分解温度は509℃、ガラス転移温度は認められなかった。
【実施例11】
【0091】
ポリカーボネートの合成;
実施例2で合成したビフェノール(化合物5)1.000g(0.747mmol)を、1,2−ジクロロエタン1.25mlに溶かし室温で撹拌した。この溶液にピリジン0.24ml(2.99mmol)を添加し、70℃に昇温撹拌した。ここにトリホスゲン0.100g(0.298mol)をジクロロエタン2mlに溶かした溶液を滴下した。70℃で3時間撹拌し、室温に戻した後反応液をメタノール100ml中に投入してポリマーを沈殿させた。沈殿物をろ集し、白色の固体を減圧下乾燥してポリカーボネートを得た。このポリマーの熱分解温度は506℃、ガラス転移温度は認められなかった。
【実施例12】
【0092】
ポリエステルの合成;
実施例2で合成したビフェノール(化合物5)1.0834g(0.810mmol)を、1,2,4−トリクロロベンゼン7mlに溶かし、窒素気流下150℃で撹拌した。この溶液にテレフタル酸ジクロリド0.1644g(0.810mmol)をトリクロロベンゼン3mlに溶かした溶液を滴下した。滴下後220℃で3時間撹拌し、室温に戻した後反応液をメタノール100ml中に投入してポリマーを沈殿させた。沈殿物をろ集し、白色の固体を減圧下乾燥してポリエステルを得た。このポリマーの熱分解温度は492℃、ガラス転移温度は認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示されるシルセスキオキサン骨格をポリマー主鎖中に有する高分子化合物。
【化1】

式(1)において、X及びYは独立して水素、または炭素数1〜40の1価有機基を示す。
【請求項2】
式(1)において、Xは独立して水素、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリール、またはアリールにおける任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリールアルキルであって、前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、前記アリールの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよく、前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよい、請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項3】
式(1)において、Xは独立してメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシル又はフェニルである、請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項4】
式(1)において、Xはフェニルである、請求項1に記載の高分子化合物。
【請求項5】
式(1)において、Yは独立して水素、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリール、またはアリールにおける任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリールアルキルであって、前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、前記アリールの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよく、前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよい、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項6】
ポリマー主鎖がポリイミドである事を特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項7】
ポリマー主鎖がポリアミドである事を特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高
分子化合物。
【請求項8】
ポリマー主鎖がポリエステルである事を特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項9】
ポリマー主鎖がポリカーボネートである事を特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項10】
ポリマー主鎖がポリウレタンである事を特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項11】
ポリマー主鎖がポリフェニレンである事を特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項12】
ポリマー主鎖がエポキシ樹脂である事を特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項13】
式(2)で示される有機ケイ素化合物。
【化2】

式(2)において、X及びYは独立して水素、または炭素数1〜40の1価有機基を示し、Zは独立してアミノ基、水酸基、ビニル基、エポキシ基、三重結合含有基(−C≡C−R)を示す。ここで、Rは水素原子または炭素数1〜10の1価有機基である。
【請求項14】
式(2)において、Xは独立して水素、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリール、またはアリールにおける任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリールアルキルであって、前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、前記アリールの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよく、前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよい、請求項13に記載の有機ケイ素化合物。
【請求項15】
式(2)において、Xは独立してメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシル又はフェニルである、請求項13に記載の有機ケイ素化合物。
【請求項16】
式(2)において、Xはフェニルである、請求項13に記載の有機ケイ素化合物。
【請求項17】
式(2)において、Yは独立して水素、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリール、またはアリールにおける任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリールアルキルであって、前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、前記アリールの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよく、前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよい、請求項13〜16のいずれか一項に記載の有機ケイ素化合物。
【請求項18】
式(3)で示される有機ケイ素化合物。
【化3】

式(3)において、X及びYは独立して水素、または炭素数1〜40の1価有機基を示す。
【請求項19】
式(3)において、Xは独立して水素、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリール、またはアリールにおける任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリールアルキルであって、前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、前記アリールの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよく、前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよい、請求項18に記載の有機ケイ素化合物。
【請求項20】
式(3)において、Xは独立してメチル、エチル、プロピル、シクロヘキシル又はフェニルである、請求項18に記載の有機ケイ素化合物。
【請求項21】
式(3)において、Xはフェニルである、請求項18に記載の有機ケイ素化合物。
【請求項22】
式(3)において、Yは独立して水素、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリール、またはアリールにおける任意の水素がハロゲンまたは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよいアリールアルキルであって、前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはシクロアルケニレンで置き換えられてもよく、前記アリールの置換基である炭素
数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、シクロアルキレンまたはフェニレンで置き換えられてもよく、前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−またはシクロアルキレンで置き換えられてもよい、請求項18〜21のいずれか一項に記載の有機ケイ素化合物。
【請求項23】
請求項13〜17のいずれか一項に記載の有機ケイ素化合物を単量体として重合反応を行うことにより得られる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の高分子化合物。
【請求項24】
請求項18〜22のいずれか一項に記載の有機ケイ素化合物を単量体として重合反応を行うことにより得られる、請求項6記載の高分子化合物。
【請求項25】
請求項13〜17のいずれか一項に記載の有機ケイ素化合物であってZがアミノ基である化合物、および請求項18〜22のいずれか一項に記載の有機ケイ素化合物を重合反応させることによって得られる事を特徴とする、請求項6記載の高分子化合物。
【請求項26】
請求項1〜12、および23〜25のいずれか1項に記載の高分子化合物からなる薄膜。
【請求項27】
請求項26記載の薄膜を用いる事を特徴とする絶縁膜。
【請求項28】
請求項26記載の薄膜を用いる事を特徴とする保護膜。
【請求項29】
請求項26記載の薄膜を用いる事を特徴とする液晶配向膜。
【請求項30】
請求項26記載の薄膜を用いる事を特徴とする平坦化膜。
【請求項31】
請求項26記載の薄膜を用いる事を特徴とする光導波路材料。
【請求項32】
請求項27記載の絶縁膜を用いる事を特徴とする電気的固体装置。
【請求項33】
請求項28記載の保護膜を用いる事を特徴とする電気的固体装置。
【請求項34】
請求項29記載の液晶配向膜を用いる事を特徴とする液晶表示素子。
【請求項35】
請求項30記載の平坦化膜を用いる事を特徴とする液晶表示素子。
【請求項36】
請求項31記載の光導波路材料を用いる事を特徴とする光導波路。

【公開番号】特開2006−265243(P2006−265243A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52416(P2006−52416)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】