説明

ガス処理装置

【課題】パージガスの量を従来と比較して減らすことが可能となり、原料ガスの流れへの影響を減らしたり、絞り穴を大きくして観察部の視野を広くしたりすることができるガス処理装置を提供する。
【解決手段】被処理体3を処理用ガスで処理するガス処理装置1であって、ガス処理室2と、処理中の前記被処理体3を観察可能な観察窓が形成されたパージガス室30と、前記観察窓からの観察方向上で、前記観察窓と前記被処理体3の載置位置との間に絞り穴が形成された絞り部材と、前記パージガス室30内にパージガスを導入するパージガス導入口と、を備え、前記パージガスの導入方向が、前記観察方向からみて前記絞り穴の重心線からずれるように前記パージガス導入口が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハなどの被処理体上にガスを利用して結晶成長させるガス処理装置に関し、特に、ガス処理室の内部における被処理体を結晶成長中に観察・計測可能なガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザー素子、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)素子等の化合物半導体の製造にはMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相蒸着法)装置などの基板処理装置が広く用いられる(例えば、特許文献3及び4等を参照)。図6は、MOCVD装置1aの一つの構成例を示す側面断面図である。
【0003】
図6に示すように、このMOCVD装置100は、成膜室(ガス処理室)70の内部において、基板72が回転台73の上面に設けられた複数の載置プレート74(本図では2個のみ図示)に載せられた構成を備える。
【0004】
基板72の材料は、例えばSi、GaAs、GaN、又はサファイアガラス等が例示され、生産する素子の種類により適切なものが使用される。
【0005】
回転台73は、回転軸75の上端に支持されており、回転軸75はモーター76によって回転する。また、回転台73の上面に載らせた複数の載置プレート74は、それぞれ自転するように構成されている。基板72は、載置プレート74上に載せられて、回転台73の回転と載置プレート74の自転とで、自転および公転をする。基板72を自転および公転させる仕組みは、基板72上に形成される結晶成長層の均一性を向上させるために設けられたもので、結晶成長中に基板72を自転させることにより、成長する膜の均一性を高めることができる。
【0006】
更に、回転台73の下方にはヒーター78が配置されており、ヒーター78によって基板3を加熱する。回転台73の上方には成膜室70内部の空間を隔てる略平行な隔壁79が設けられている。
【0007】
成膜室70の側面にはガス供給配管77が接続されており、このガス供給配管77の先端は、ガス吹出口77aとなっており、原料ガス50aが結晶膜の原料として基板72表面に供給される。また、ガス供給配管77の他端はガス供給器50が接続されている。
【0008】
この原料ガス50aは、載置プレート74上に載せられ、且つヒーター78によって加熱された基板72上を通過後、下流側に設けられた排気経路70dよりガス排出口70bから排出される。その結果、基板3上の近傍で所望の化学反応が行われることによって基板72上に所望の成膜処理が実行される。
【0009】
上記MOCVD装置100では、成膜中における基板72の温度、反り、又は膜のバンドギャップ(Band Gap)を光学的手段により観察することにより、成膜プロセスの最適化を行うために基板計測装置60を取り付ける場合がある。こうした目的のため、MOCVD装置100には観察部80が設けられ、観察部80には石英等の光学的に透明な観察窓80aが取り付けられている。
【0010】
この観察部80、詳しくは観察窓80aがMOCVD装置100の原料ガス50aにより曇ることを回避するため、図7に示すような観察部81に対しては、窒素などのパージガス90を別途流すことが行われる(例えば、特許文献5〜7等参照)。
【0011】
また、パージガスを利用する他の態様として、特許文献1に係る気相成長装置では、処理対象となる基板とビューポート(観察部)との間に、パージガスを原料ガスと同一流れ方向、同一速度、同一圧力、かつ層流状態で流すことによって、原料ガスや反応生成物がビューポート側へ流出して発生する曇りを防止している。
【0012】
一方、観察に要求される開口径が小さい場合は、特許文献2に係る半導体製造装置のように、パージガスの流路に開口が形成された絞り板を設けることによって、少ないパージガスで観察窓の曇りを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−53360号公報(公開日:2008年3月6日)
【特許文献2】特開平5−160111号公報(公開日:1993年6月25日)
【特許文献3】特開2008−153409号公報(公開日:2008年7月3日)
【特許文献4】特開2008−177187号公報(公開日:2008年7月31日)
【特許文献5】特開昭58−207941号公報(公開日:1983年12月3日)
【特許文献6】特開昭61−53645号公報(公開日:1986年3月17日)
【特許文献7】特開昭61−68134号公報(公開日:1986年4月8日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、図7に示すMOCVD装置100では、観察窓16への原料ガス50aの到達をパージガスのみにより防止する構成であるため、観察窓16全体を原料ガス50aによる曇りから保護するためには相当量のパージガスが必要となる。
【0015】
また、上記特許文献1に係る技術では、各種公差や機構の揺らぎから上記条件を安定的に満足することは困難である。その結果、良好な成膜結果を維持するためにパージガス流量を減らさざるを得なくなり、結果として観察窓の曇りの防止は困難である。」
一方、上記特許文献2に係る構成によれば、パージガスの流量が一定であれば絞り板に形成される開口(絞り穴)の面積が小さいほど、観察窓の曇りの防止効果が高くなる。
【0016】
しかしながら、例えば特許文献2に係る構成のように、絞り穴を小さくすると、以下のような課題が発生する。
【0017】
第1課題は、パージガスが直接絞り穴から成膜室の内部に噴出することによって、パージガスが、成膜室内部の原料ガスの流れ並びに成膜結果に影響することである。さらに、パージガスが成膜室の内部に噴出する速度は絞り穴の開口面積が小さいほど、あるいはパージガスの流量が多いほど速くなる。このため、現実には、成膜結果を維持するためにパージガス流量を減らさざるをえなく、結果として観察窓が曇ってしまう課題があった。
【0018】
第2の課題は、絞り穴の開口面積を小さくすると、観察可能領域が縮小されてしまうことである。観察可能領域が減少すると、視野が狭くなることから基板計測装置の配置が困難になる。MOCVD装置は内部が高温(数百℃〜千℃以上)となるため、熱膨張等の原因で構成部品の位置関係が変動することがあり、基板計測装置の設置を常温で行うと、成膜中では観察位置が変化する。また、観察可能領域が小さいと、常温時に観察可能に基板計測装置を設置しても成膜中には装置内部の部品同士の位置関係が変化して観察できなくなる場合がある。
【0019】
そこで、絞り穴の開口面積を大きくすると、レイノルズ数が大きくなり、成膜室から観察部側に入る原料ガスが多く、絞り穴の近傍で渦流が発生しやすくなり、観察窓の曇りが発生して、成膜室内部の観察及び基板に対する計測が影響を受けるようになる。
【0020】
上記の問題に鑑みて、本発明の目的は、パージガス流量を減らして処理用ガス(原料ガス等)の流れへの影響を減らしたり、絞り穴を大きくして観察部の視野を広くしたりする場合でも、観察窓の曇りを抑制可能なガス処理装置(基板処理装置等)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明に係るガス処理装置は、被処理体を処理用ガスで処理するガス処理装置であって、内置される被処理体を処理用ガスで処理するガス処理室と、上記被処理体を観察可能な観察窓が形成されたパージガス室と、上記観察窓からの観察方向上で、かつ上記観察窓とガス処理室内での被処理体の配置位置との間に位置する絞り穴が形成された絞り部材と、一端にパージガス導入口が形成され、上記パージガス室にパージガスを導入するパージガス導入部とを備え、上記パージガス導入部から上記パージガス室へのパージガスの導入方向が、上記観察方向からみて上記絞り穴の重心線からずれるように、上記パージガス導入部が配置されることを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、上記パージガス導入部から上記パージガス室へのパージガスの導入方向が、上記観察方向からみて上記絞り穴の重心線からずれるように、上記パージガス導入部を配置するので、観察窓近傍におけるパージガスの流速の差と、発生する渦流の中心の位置ずれとによって、絞り部材の絞り穴の重心線が観察窓と交差する領域に処理用ガスによる生成物が付着することを抑制できる。絞り穴の重心線が観察窓に交差する位置は、光学的手段によって装置内部を観察する際に使用される領域で、当該領域への生成物の付着を抑制することで、光学的手段による観察に影響を与えない。さらに、パージガスの量を従来技術と比較して減らすことが可能となり、処理用ガスの流れへの影響を減らしたり、絞り穴を大きくして観察窓の視野を広くしたりすることができる。
【0023】
上記パージガス導入部から上記パージガス室へのパージガスの導入方向が、上記観察窓が形成されたパージガス室の壁と交差する内壁に対して交差するように、上記パージガス導入部が配置されることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、パージガス導入部からパージガス室へ導入されるパージガスが、観察窓が形成されたパージガス室の壁と交差する内壁に対して交差するので、内壁に噴きつけたパージガスにより渦が発生しやすく、発生された渦は、その中心が、観察窓に絞り穴を投影した際の中心からずれているので、観察窓の曇り防止効果がよい。
【0025】
上記ガス処理装置において、上記パージガス導入部を複数備え、上記観察窓の観察方向から見て、隣り合う少なくとも一組のパージガス導入部同士が、パージガスの導入方向が互いに略平行に配置されていることが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、観察窓付近ではパージガスの渦が絞り穴の重心線からずれて二箇所に発生するため、処理用ガスが分割されて観察窓へ到達する。その結果、観察窓の単位面積当たりの処理用ガス由来の生成物の付着量が低減されるので、観察窓の曇り防止効果がより一層向上する。
【0027】
または、上記観察窓の観察方向から見て、少なくとも一組の上記パージガス導入部が備えるパージガス導入口同士を結んだ線の中心が、上記絞り穴の重心と異なっていることが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、一組のパージガス導入部を協同させることによって、より一層少ないパージガス量で、絞り穴の重心線からずれたパージガス渦流を発生させることができる。
【0029】
上記ガス処理装置において、上記絞り部材は開閉可能に構成されていることが好ましい。
【0030】
上記構成によれば、必要に応じて絞り部材を開閉することができる。したがって、成膜処理を行う場合には閉状態にして、大量の処理用ガスがパージ室に侵入するのを防止でき、成膜処理を行っていない場合には開状態にして、より広範囲の計測を行うことができる。
【0031】
上記ガス処理装置において、上記絞り部材が、1)上記観察窓に対向して配置された上記パージガス室の底壁、2)上記観察窓に対向した配置された上記ガス処理室の上壁、3)上記ガス処理室の上壁の下に設置された絞り板、であることも可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、絞り部材の絞り穴の重心線が観察窓と交差する領域に処理用ガスによる生成物が付着することが抑制されたガス処理装置を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のMOCVD装置の一例を示す構成図である。
【図2】図1に示すMOCVD装置が備える観察部及び成膜室の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係るパージガス導入口の形成状態及びパージガスの導入状態を示す模式図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係るパージガス導入口の形成状態及びパージガスの導入状態を示す模式図である。
【図5】本発明の第3の実施例に係るパージガス導入口の形成状態及びパージガスの導入状態を示す模式図である。
【図6】従来におけるMOCVD装置の構成の一例を示す図である。
【図7】従来におけるMOCVD装置の構成の他の一例を示す図である。
【図8】図2に対する比較として、パージガスの導入方向と、観察部及び成膜室の一部との位置関係を拡大して示す断面図の一例である。
【図9】図2に対する比較として、パージガスの導入方向と、観察部及び成膜室の一部との位置関係を拡大して示す断面図の他の一例である。
【図10】本発明のMOCVD装置における観察部構成の他の一例を示す図である。
【図11】本発明の他の実施例に係る構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の実施形態を挙げて説明する。下記実施形態において、本発明のガス処理装置として、MOCVD装置を例として説明する。
【0035】
以下の説明においては、各形態に先行する形態ですでに説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する場合がある。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。
【0036】
なお、本発明は、実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せ、寸法等に限るものではなく、特に支障が生じなければ、異なる組合せ、寸法であっても良い。つまり、下記のような実施形態は、本発明に係る技術を具体化するために例示するものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0037】
(MOCVD装置の全体構成)
図1は、MOCVD装置1の概略の構成を表す。図1に示すように、本発明の実施形態におけるMOCVD装置1は、基板(被処理体)3の被処理面に結晶成長を実行する反応装置と、反応装置内に取り付けられた基板3に計測用レーザー光を照射して、結晶成長中において反応装置の基板の反りを計測する基板計測装置20とを有している。
【0038】
反応装置は、成膜室(ガス処理室)2、成膜室2の内部に配置される回転台4、回転台4の上面に載置される複数の載置プレート5、加熱手段として回転台4の下側に配置されるヒーター6、回転台4の下側に接続される回転軸7、回転軸7を駆動するモーター8、ガス供給配管9を介して成膜室2の内部に原料ガス10aを供給するガス供給器10及びガス排出配管11を介して排気する排気装置(図示せず)などを備えている。
【0039】
成膜室2には、原料ガス(処理用ガス)を供給して基板3の被処理面に結晶を成長させるための容器であり、ガス導入口2a、ガス排出口2b、及び成膜室2の内部観察用にも用いる開口2cが形成されている。ガス導入口2aは、ガス供給器10から供給される結晶成長に必要な原料ガス10aの入り口、詳しくはガス供給配管9の挿入口となる。ガス排出口2bは、排気装置に接続されて、成膜室2内部の原料ガス10a等を排出する。開口2cは、基板計測装置20から照射される計測用レーザー光が通過可能であり、成膜室2の内部観察用に用いられる窓である。
【0040】
詳しくは、ガス導入口2aは、基板3の被処理面に向かって原料ガス10aを吹出することができるように、上記基板3の被処理面に対向する成膜室2の上壁に形成されている。ガス排出口2bは、基板3からみてガス導入口2aの反対側に形成されている。また、開口2cは、成膜室2内部、具体的には基板3の被処理面へ向かって計測用レーザー光が照射され、且つ基板3の状況を観察可能な場所に形成される。例えば、開口2cは、計測用レーザー光が基板3の被処理面を垂直(実質的に垂直であると見なすことができる場合も含む)に照射することができるように、上記基板3の被処理面に面したその被処理面の中央部(実質的に中央部であると見なすことができる近傍部分も含む)を臨み得るように、成膜室2の上壁に形成されている。
【0041】
基板3は、各載置プレート5の上面に配置される。装置によっては載置プレート5の上面に基板3を直接置かずに、石英、窒化ホウ素、炭化ケイ素又はグラファイト等で作られた基板ホルダーを使用する場合もある。なお、基板3としては、たとえばSi、GaAs、InP、GaN又はサファイア等からなる基板が使用される。
【0042】
回転台4は、円盤状に形成されており、下側中心部に接続された回転軸7によって回転可能であり、成膜室2の内部に設置されている。回転台4は、モーター8が回転軸7を駆動することによって、任意の速度で回転するようになっている。なお、本発明の実施形態においては、回転軸7の下端に設けられたモーター8を成膜室2の外部に配置しているが、これに限らず、成膜室2の内部に配置することもできる。
【0043】
また、載置プレート5は、基板3を、回転台4に対して回転(自転)させることができるように回転機構(図示せず)を備えている。したがって、基板3は、被処理面に結晶を成長させるときに、自転及び公転(回転台4の回転に応じた回転)を行うようになっている。これにより、原料ガス10aを基板3の被処理面に導入して結晶を成長する際に、所望の薄膜をより安定に形成し、かつ、薄膜の膜厚及び膜の組成を均一化することができる。
【0044】
ヒーター6は、基板3を加熱するための加熱手段として、回転台4の下側に設置されている。より詳細には、ヒーター6は、回転台4を挟んで、載置プレート5と対向する位置に設けられており、回転台4及び載置プレート5を介して基板3を加熱する。本発明の実施形態においては、加熱手段として、ヒーター6を成膜室2に内蔵して設置したが、これに限らず、例えば、成膜室2全体を加熱するためにヒーターあるいはコイルなどの加熱手段を成膜室2の外周部に設置してもよい。
【0045】
ガス供給配管9は、その一端がガス供給器10に接続されており、他端はガス導入口2aを通って成膜室2の上部から内部に挿入されている。そして、挿入された先端は、成膜室2の上壁と回転台4との間に位置して、ガス吹出口9aとなっている。したがって、ガス供給器10から供給された原料ガス10aは、ガス供給配管9を経由して、回転台4の回転軸上から回転台4の表面に沿って放射状に、結晶膜の原料として供給される。反応後のガス(原料ガス等)は、排気経路13に沿って、ガス排出口2bに接続されているガス排出配管11などを経由して、成膜室2から外部に排出される。その結果、基板3上近傍で所望の化学反応が行われることによって基板3上に所望の成膜処理が実行される。
【0046】
また、図1,2に示すように、成膜室2の上壁には、開口2cを覆うように観察部(パージガス室)30が設置されている。また、成膜プロセスの最適化を行うために基板計測装置20は、当該観察部30の上方に設置されている。
【0047】
図3に示すように、本発明の実施形態において、観察部30は円筒状に形成されている。また、図2に示すように、成膜室2の上壁から突出して設置された側壁31を備え、側壁31の一端(上端)には石英等の光学的に透明な(透光性の)観察窓32が取り付けられ側壁31の他端(下端)は底壁33と接続している。底壁33は、ほぼ中央部に開口2cの形成位置に対応する開口33aが形成されている。
【0048】
観察部30の底壁33上には、観察部30の内部で開閉可能な絞り板35が取り付けられている。絞り板35は、円筒状の観察部30の内周より充分に小さな円盤状に形成されたものであり、例えば、絞り板35の外周部の何れかの位置にヒンジなどの回転機構(図示せず)を設置し、当該回転機構を軸に、絞り板35を観察部30の内部で回転することができる。絞り板35が観察部30の底壁33に平行に設置した場合を閉状態とし、この状態は、成膜処理を行うときに適用されて、成膜室2から観察部30内に、大量の原料ガス10aを含むガスが侵入することを防止する。また、絞り板35が観察部30の底壁33に垂直に設置した場合を開状態とする。この状態は、成膜処理を行っていないときに適用されて、成膜室2内のより広範囲の計測を行うことができる。
【0049】
あるいは、図2において、観察部30が長四角柱状の場合、観察部30の内部で開閉可能な絞り板35は、観察部30の内周とほぼ同じ大きさの四角形状に形成してもよい。そして、例えば、絞り板35の外周部をなす一辺にヒンジなどの回転機構(図示せず)を設置し、当該回転機構を軸に、絞り板35を観察部30の内部で回転することができる。
【0050】
また、絞り板35のほぼ中央部には、観察部30の底壁33に形成された開口33aの大きさをさらに制限できる絞り穴35aが形成されており、絞り板35が閉状態にあるときには、絞り穴35aにより観察部30と成膜室2とが連通する。ここで、絞り穴35aを観察部30の底壁33の開口33aと同心にして形成することが好ましい。
【0051】
もちろん、絞り板35は必ず観察部30の底壁33上に取り付けられるものではない。例えば、観察部30が高さ方向に細長い構成を有する場合、絞り板35を、観察部の側壁31に対して固定し、開閉可能に取り付けてもよい。この場合は、観察部30の底壁33は必須ではない。また、絞り板35を絞り穴35aを通るラインで二つに分割して、分割片それぞれの端部の可能な位置に回転機構を取り付けて、絞り板35を開閉可能に設置することもできる。あるいは、絞り穴を有する絞り板を、観察窓と平行な方向に移動可能とするスライド機構を別途設けて、絞り板を開閉可能とすることもできる。
【0052】
なお、開閉可能な絞り板35を観察部30の側壁31に対して固定する場合であって、かつ観察部30が円筒状の場合には、例えば、側壁31の一部にその内径を縮小するリング状の突出を設けて、当該突出上に絞り板35とその回転機構とを固定すればよい。
【0053】
また、絞り穴35aは、観察手段、各組み立て公差、流しうるパージガスの量などから決められる。例えば、絞り穴35aを円形にする場合、その直径を10mm以上〜20mm以下にすることが好ましい場合がある。絞り穴35aを10mm以上とすることで、視野が充分に広く確保されるので基板計測装置等の配置がより一層容易となる。また、絞り穴35aを20mm以下とすることで、パージガス流量をより低減した場合であっても、成膜室から観察部側に流出する、観察窓の曇りを発生する原料ガスの量を充分に制限することができる。
【0054】
また、観察部30には、観察窓32の曇りを防止するために、パージガス40をその内部に導入する、チューブまたは配管などからなるパージガス導入手段34(パージガス導入部)が設けられている。このパージガス導入手段34の一端に設けられた吐出口がパージガス導入口34’となって、ここからパージガス40が吐出される。このパージガス導入手段34は観察部30の内部とパージガス導入手段34とが連通されるよう観察部30の側壁31にパージガス導入口34’が位置してもよいし、図に示すように、観察部30の内部まで挿入されていてもよい。さらに、パージガス導入口34’は、観察部30の高さ方向において、側壁31の中心(観察部30の高さ方向の中心位置)よりも観察窓32側に設置されている。このため、観察窓32近傍でのパージガスの流れの制御がより容易となって、観察窓32の曇りをより効率的に防止することができる。
【0055】
また、パージガス導入手段34を観察部30の内部まで挿入する(内部に突き出すように挿入する)と、パージガスの流れ方向を、パージガス導入手段34のパージガス導入口34’の端面に垂直にすることができるので、望ましい。
【0056】
特にパージガス導入手段34が設置される側壁31が曲面状である場合は、パージガス導入手段34を観察部30の内部まで挿入することによってパージガスを観察部30に吐出したときに、パージガスの流れ方向が側壁31に沿うように変化する恐れをより確実に抑制可能となるために望ましい。
【0057】
なお、観察部30の側壁31及び底壁33は、観察部30を通過する基板計測装置20からのレーザー光が、外部光の影響を受けないように、不透光の部材により構成することが好ましい。
【0058】
基板計測装置20は、レーザー光によるドップラー効果の原理を用いた速度計測手段である。レーザー光によるドップラー効果の原理を用いた速度計測手段とは、計測用レーザー光を対象物に照射して当該対象物で反射した戻り光を受光し、対象物の速度によって戻り光の周波数がシフト(変化)するドップラー効果を用いて、対象物の速度(この場合、対象物の反り状態によって当該対象物の中央部と周縁部とで僅かに変化する速度の違い)を計測する速度計測手段である。
【0059】
本発明の実施形態において、基板計測装置20は、照射した計測用レーザー光20aが観察窓32を透過して絞り板35の絞り穴35aの中心から成膜室2内部の基板3に到達し、かつ、基板3で反射してさらに観察窓32を透過した戻り光20bを受光することができる位置に配置されている。
【0060】
なお、本発明の実施形態での基板計測装置20が形状測定装置であるため、観察窓32は、計測用レーザー光20a及びその戻り光20bが通過する構成であるが、その限りではない。例えば、基板計測装置20が放射温度計の場合は、成膜室2内部から発せられた赤外放射が観察窓32を透過することになる。
【0061】
MOCVD装置1において、成膜室2の内部には、その上壁と基板3の被処理面との間、すなわち、成膜室2の上壁と回転台4との間に、レーザー光が通過可能な通孔12aが少なくとも一つ開いた隔壁12が設置されている。
【0062】
隔壁12は、ガス透過性が低い部材からなっており、成膜室2の上壁及び回転台4と平行(実質的に平行であると見なすことができる場合も含む)に形成され、成膜室2内部の空間を上下に隔てるように配置されている。つまり、隔壁12により、基板3の被処理面側の上部空間を、基板3側の空間と成膜室2の内壁(上壁)側の空間とに隔てる。
【0063】
また、通孔12aは、計測用レーザー光20a及び戻り光20bが通過できるように、観察部30の観察窓32及び絞り板35の絞り穴35a、成膜室2の開口2cに対応する位置、すなわち、観察窓32から基板3の被処理面の中央部を臨み得る、隔壁12上の位置に形成されている。さらに、ガス吹出口9aは、隔壁12と回転台4との間に配置される。したがって、ガス供給器10から供給された原料ガス10aは、隔壁12と回転台4との間において、ガス供給配管9を経由して、回転台4の回転軸上から回転台4表面に沿って放射状に、結晶膜の原料として供給される。
【0064】
なお、隔壁12を設置することで、観察窓32の曇りの主因となる原料ガス10aが観察部30に入ることをより一層防止することができる。
【0065】
ここで、例えば、隔壁12の通孔12aの直径を10mm以上〜20mm以下の範囲内とすることができる。これにより、観察部側へ原料ガスが入り込むことを防止しつつ、観察窓32から絞り穴35aを経由して成膜室2に内置された基板3を観察するに充分な観察領域を確保可能となる。
【0066】
(パージガス導入口と絞り穴との位置関係)
以下、図3〜図5も参照して、パージガス導入口34’と、絞り穴35aとの位置関係及びパージガスの導入状態について説明する。
【0067】
基板3成膜中は原料ガス10aが基板3の被処理表面に供給され、原料ガス10aの一部は隔壁12の通孔12aから観察窓32の方向に漏れる。この漏れた原料ガス10aが観察窓32に到達すると観察窓32が曇り、計測用レーザー光20a及びその戻り光20bの光量が低下することで基板計測装置20が機能を果たせなくなる場合がある。
【0068】
この場合、例えば、パージガス40の量を増やすことによって、若しくは絞り穴35aを小さくすることによって、若しくはその両方を行うことによって原料ガス10aが観察窓32に到達することを防止できる。本実施形態に係るMOCVD装置1では、パージガス40の導入方向を検討することで、上記対策を行った場合でも、パージガス40が隔壁12の通孔12aから基板3側に侵入し、成膜結果に影響を与える虞を低減可能なものである。また、絞り穴35aを小さくした場合でも、温度変化などにより各構成要素の位置がすれて観察不可能となる虞を低減可能なものである。
【0069】
まず、図8及び図9に基づき、パージガスの量を増やすことによって、若しくは絞り穴を小さくすることによって招来する現象につき説明する。
【0070】
図8にその観察部81及び成膜室2の一部を拡大して示すMOCVD装置は、パージガス90の流路に配した絞り部材となる絞り板81cにより、原料ガス50aの観察部81側への流入を抑えるものである。構成としては、上記説明の本発明に係るMOCVD装置1とほぼ同じである。相違点は、パージガス90の導入方向が図2に示すパージガス40の導入方向と異なる点である。つまり、観察部81を拡大して示した図8、図9のように、側壁81bに形成されたパージガス導入口81dは、それから導入されるパージガス90の導入方向(すなわちパージガス導入口81dの法線方向)が、観察窓81aから見て絞り穴81e、81e’の中心を通るように形成されている。すなわち、パージガス導入口81dの法線Cと、絞り板81cの絞り穴81e、81e’の中心線Dとが点Aで交差している。
【0071】
詳しくいうと、原料ガス50aの観察部81側への流入を抑えるには、パージガス90の流量が一定であれば絞り板81cに形成される開口面積が小さいほど効果が高くなる。
【0072】
まず、図8を参照し、一定のパージガス流量下で、絞り板81cに形成された絞り穴81eの開口面積が十分小さい場合を説明する。パージガス導入口81dからのパージガス90は、観察部81の下に供給され、この場合、絞り穴81eの開口面積が小さいため、絞り穴81eの開口領域では、ほぼ一様に観察部81側から成膜室70に出ていくパージガス90のみと見なすことができる。この場合は、観察窓81aに原料ガス及びその反応物が付着する虞は低い。
【0073】
ただし、絞り穴81eを小さくしすぎると、パージガス90が直接絞り穴81eから成膜室70の内部に噴出して、パージガス90が成膜室70内部の原料ガス50aの流れに影響を与えうる。ここで、原料ガス50aの流れの変化は、基板72の表面の結晶膜特性悪化原因となる。
【0074】
次に、図9を参照し、図8に対し絞り板81cに形成された絞り穴81e’の開口面積を大きくした場合を説明する。この場合、絞り穴81e’の開口面積が大きいため、絞り穴81e’の開口領域におけるガスの流れは一様ではなくなり、観察部81の側から成膜室70の側に出ていくパージガス90と、成膜室70の側から観察部81の側に入ってくる混合ガス10bとが存在するようになる。これは、絞り穴81e’の開口面積が大きくなることによってレイノルズ数が大きくなり、渦92が発生しやすくなることが原因である。つまり、このとき発生する渦92は、ドーナッツ状になっているので、渦92の中心から混合ガス50bが侵入しやすく、観察窓81aの曇り防止効果がない。
【0075】
一方、本発明では、図8及び図9に示す形態と比較して、パージガス導入口34’の形成、詳しくはパージガス導入口34’からの導入方向を改善している。
【0076】
図3〜図5は、それぞれパージガス導入手段(パージガス導入部)34の第1の実施例〜第3の実施例に係る、図2を観察窓32の側から見て、パージガス導入口34’高さで切断した上面断面図である。図面を見やすくするために、図3〜図5では成膜室2の詳細な構成が示されていない。また、これら図面において、矢印で表されているパージガス40の流れはパージガス導入口34’から供給された直後のパージガス40の流れ方を表している。パージガス40の流れを示す矢印は、複数の矢印の、流れ方向に直交する方向における間隔が狭いほど流速が早いことを表している。なお、矢印の長さは特に意味は無い。
【0077】
〔第1の実施例〕
図3は、第1の実施例に係るパージガス導入手段34の配置に関する構成を示す断面図である。本実施例では、パージガス導入手段34を一つ形成した場合を説明する。本実施例は、図8及び図9の構成に比べ、パージガス導入手段34のパージガス導入口34’から観察部30の内部に入るパージガス40の導入方向が異なっている。すなわち、本実施例において、パージガス導入手段34は観察部30の内部まで挿入して、パージガス導入口34’からのパージガス40の導入方向(すなわちパージガス導入口34’の法線方向)と観察部30の絞り板33の絞り穴35aの重心線とが、観察窓32の観察方向(概ね観察窓32の法線方向)から見てずれるように、パージガス導入口34’の向きが調整されている。
【0078】
ここで、パージガス導入口34’からのパージガス40の導入方向と絞り穴35aの重心線とがずれるとは、パージガス導入口34’の重心線と絞り穴35aの重心線とに交点がないとの構成を示す。
【0079】
上記構成によると、図3に示すように、パージガス導入口34’近傍ではパージガス40の流速は早く、それ以外の場所では遅くなった渦流ができる。また、図示していないが、この渦流は徐々に小さくなりながら絞り穴35aに接近し、基板3側に出てゆく。一方、基板3側から絞り穴35aを通って進入する原料ガス10aは、この渦の中心41の付近を通過しながら観察窓32に接近する。これは、渦の中心付近が渦の外周部と比較して流速が遅いので原料ガスが通過しやすいためである。
【0080】
渦の中心41は、図3に示されているように、パージガス導入口34’の高さ近傍では絞り穴35aの中心からずれて形成される。その結果、観察窓32まで到達する原料ガス10aは、計測用レーザー光20a及びその戻り光20bが通過する絞り穴35aの中心位置からずれるため、曇りが生ずる位置がずれることになって、計測への影響が抑制される。
【0081】
このため、図8及び図9に示す場合と比較して、パージガス40の量を減らす、若しくは絞り穴35aを大きくする、若しくはその両方を行っても計測への影響が抑制でき、原料ガス10aの流れへの影響を少なくすることができる。
【0082】
〔第2の実施例〕
図4は、第2の実施例に係るパージガス導入手段34の配置に関する構成を示す断面図である。本実施例は第1の実施例と比較して、パージガス導入手段34を二カ所に設けられている点のみで異なる。
【0083】
図4に示す構成では、二つのパージガス導入口34’は、観察窓の観察方向から見て、絞り穴35aを挟むように対称な位置に配置される。二つのパージガス導入口34’は、ほぼ同じ(互いに略平行な)パージガス導入方向をもってパージガス40を導入するように配置されている。その結果、それぞれのパージガス導入口34’の近傍ではパージガス40の流速は早く、それ以外の場所では遅くなって、2つの渦が発生し、渦の中心41は観察窓32に絞り穴35aを投影した際の中心からずれている。この2つの渦の中心41は、それぞれ絞り穴35aに近づくほど接近しつつパージガス40が絞り穴35aから成膜室2に設置された基板3側に出ていく。一方、基板3側から絞り穴35aを通って進入する原料ガス10aを含む混合ガス10bは、ぞれぞれの渦の中心41の付近を通過しながら観察窓32に接近する。
【0084】
渦の中心41は、図4に示されているように、パージガス導入口34’の高さ近傍では絞り穴35aの中心からずれて二カ所に形成される。その結果、パージガス導入手段34を二カ所に設けた場合は、一つしか設けない場合と比較して観察窓32に到達する原料ガス10aが分割されるので一カ所あたりの観察窓32の曇りの量が少なくなり、したがって、計測への影響がさらに良く防止される。
【0085】
〔第3の実施例〕
図5は、第3の実施例に係るパージガス導入手段34に関する構成を示す断面図である。本実施例は第2の実施例と比較して、二つのパージガス導入手段34の設置位置が異なっている。
【0086】
本実施例では、少なくとも一組のパージガス導入口34’同士を結んだ線分の中心が、観察窓の観察方向から見て、絞り穴35aの中心と異なるように、パージガス導入口34’が位置されている。また、一方のパージガス導入口34’からのパージガスの導入方向と、他方のパージガス導入口34’からのパージガスの導入方向とが、互いに略逆平行の関係にある。この場合、観察窓32の近傍における渦の中心41は、互い違いに対向するパージガス導入口34’を結んだ線分の中心あたりに発生する。このため、他の実施例と同様に、観察窓32に到達する原料ガス10aは、計測用レーザー光20a及びその戻り光20bが通過する位置からずれるため、曇りが生ずる位置がずれることになって、計測への影響が防止される。
【0087】
本実施例では二つのパージガス導入手段34を協同させることによって、第1の実施例と比較して、少ないパージガス量で強い渦を作り出すことができるので、パージガスの量を減らすことができる。
【0088】
〔その他の実施例〕
上記では、パージガス導入手段34を挿入するためのパージガス導入口34’を、観察部30の側壁31(観察窓が形成されたパージガス室(観察部)の壁と交差する壁)に形成した場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図10に示すように、観察部30の観察窓32が形成された壁からパージガス導入手段34を挿入する構成も用いられる。または、観察窓32が形成された壁に平行な壁からパージガス導入手段34を挿入することも可能である。
【0089】
この場合は、パージガスの導入方向が、絞り穴35aの重心線とずれるように、パージガス導入手段34を配置すればよい。好ましくは、パージガス導入口34’から観察部30へのパージガスの導入方向が、観察窓32が形成された観察部30の壁と交差する内壁(すなわち、側壁31)に対して交差するように、パージガス導入手段34を配置すればよい。
【0090】
また、上記では、絞り部材として、観察部30の内部に絞り穴35aが形成された絞り板35を取り付けた場合を説明したが、絞り部材となる構成はこれに限定されない。
【0091】
例えば、図11(a)に示すように、観察部30に一体形成された底板33を絞り部材とし、底板33に形成された開口33aを絞り穴33aをとして用いてもよい。この場合、観察部30の観察窓32からの観察方向からみて、パージガス導入口34’から成膜室2へのパージガスの導入方向が、当該開口33aの重心線からずれるように、パージガスの導入方向を調整すればよい。また、観察部30の底板33上の開口33aを、その大きさが10mm〜20mmの条件を満足するように形成することが好ましい。ただし、この場合、成膜室2上の開口2cの大きさは、絞り板35の外径より小さく形成する必要がある。
【0092】
或いは、図11(b)に示すように、成膜室2の内部の上壁の下に、中心部に絞り穴35aが形成された絞り板35を設置してもよい。この場合、観察部30の観察窓32からの観察方向からみて、パージガス導入口34’から成膜室2へのパージガスの導入方向が、当該絞り穴35aの重心線からずれるように、パージガスの導入方向を調整すればよい。また、観察部30の底壁に形成される開口33a’、成膜室2の上壁に形成されたガス導入口2aの大きさには関係なく、絞り板35上の絞り穴35aを、その大きさが10mm〜20mmの条件を満足するように形成することが好ましい。ただし、この場合、観察部30の底壁33の開口33aおよび成膜室2上の開口2cの大きさは、絞り板35の外径より小さく形成する必要がある。
【0093】
また、図11(b)に示す構成でも、絞り板35を、いずれか一側の端部に回転機構を設置することができる。または、一つの絞り穴35aを二つの絞り板35のそれぞれの端部の回転機構を設置し、それぞれ開閉可能に設置することもできる。
【0094】
或いは、図11(c)に示すように、成膜室2に一体形成された上壁を絞り部材とし、それに形成された開口2c’を絞り穴とする構成も可能である。そして、観察部30の観察窓32からの観察方向からみて、パージガス導入口34’から成膜室2へのパージガスの導入方向が、当該開口2cの重心線からずれるように、パージガスの導入方向を調整すればよい。また、観察部30の底壁に形成される開口33a’の大きさには関係なく、開口2c’を、その大きさが10mm〜20mmの条件を満足するように形成することが好ましい。なお、観察部30の底壁により開口2c’が覆われないようにすればよい。
【0095】
なお、上記パージガス導入口の個数に対しては特に限定がなく、複数設けることが可能である。特に、複数のパージガス導入口を対向して設ける場合は、それぞれオフセットして設置することで、観察窓の曇り防止の効果が得られる。
【0096】
なお、上記では、基板を被処理体として処理するMOCVD装置を説明したが、本発明は上記装置に限定されず、例えば、金属または半導体材料を溶融する加熱炉を含む装置(単結晶引き上げ炉、鋳物製造装置など)、成膜時にある程度のガスを使用する成膜装置(スパッタ装置等)にも適用される。つまり、被処理体を処理用ガスで処理するガス処理装置において、処理用ガスの影響を避けて、ガス処理室に内置された被処理体を光学手段にて観察する必要のある装置であれば、本発明を好適に適用することができる。
【0097】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、被処理体を処理用ガスで処理するガス処理装置において、ガス処理室に内置された被処理体を光学手段にて観察する必要のある装置に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 MOCVD装置(ガス処理装置)
2 成膜室(ガス処理室)
2a ガス導入口
2b ガス排出口
2c 開口
3 基板(被処理基板)
4 回転台
5 載置プレート
6 ヒーター
7 回転軸
8 モーター
9 ガス供給配管
10 ガス供給器
10a 原料ガス
10b 混合ガス
11 ガス排出配管
12 隔壁
12a 通孔
13 排気経路
20 基板計測装置
30 観察部(パージガス室)
31 側壁
32 観察窓
33 底壁
33a 開口
34 パージガス導入手段(パージガス導入部)
34’ パージガス導入口(パージガス導入部)
35 絞り板
35a 絞り穴
40 パージガス
41 渦の中心


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を処理用ガスで処理するガス処理装置であって、
内置される被処理体を処理用ガスで処理するガス処理室と、
上記被処理体を観察可能な観察窓が形成されたパージガス室と、
上記観察窓からの観察方向上で、かつ上記観察窓とガス処理室内での被処理体の配置位置との間に位置する絞り穴が形成された絞り部材と、
一端にパージガス導入口が形成され、上記パージガス室にパージガスを導入するパージガス導入部とを備え、
上記パージガス導入部から上記パージガス室へのパージガスの導入方向が、上記観察方向からみて上記絞り穴の重心線からずれるように、上記パージガス導入部が配置されることを特徴とするガス処理装置。
【請求項2】
上記パージガス導入部から上記パージガス室へのパージガスの導入方向が、上記観察窓が形成されたパージガス室の壁と交差する内壁に対して交差するように、上記パージガス導入部が配置されることを特徴とする請求項1に記載のガス処理装置。
【請求項3】
上記パージガス導入部を複数備え、
上記観察窓の観察方向から見て、隣り合う少なくとも一組のパージガス導入部同士が、パージガスの導入方向が互いに略平行となるように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガス処理装置。
【請求項4】
上記パージガス導入部を複数備え、
上記観察窓の観察方向から見て、少なくとも一組の上記パージガス導入部が備えるパージガス導入口同士を結んだ線分の中心が、上記絞り穴の重心と異なっていることを特徴とする請求項1または2に記載のガス処理装置。
【請求項5】
上記絞り部材は開閉可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のガス処理装置。
【請求項6】
上記絞り部材が、1)上記観察窓に対向して配置された上記パージガス室の底壁、2)上記観察窓に対向した配置された上記ガス処理室の上壁、3)上記ガス処理室の上壁の下に設置された絞り板、であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のガス処理装置。
【請求項7】
上記処理用ガスを原料ガスとして、上記被処理体上で当該原料ガスを用いた気相成長を行う気相成長装置である請求項1〜6の何れか一項に記載のガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−18985(P2012−18985A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154186(P2010−154186)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】