説明

グラビア版のセルの容積測定方法

【課題】セルの内表面の正確な空間形状を把握できて容積を正確に算出できるグラビア版のセルの容積測定方法
【解決手段】グラビア版の表面を撮像素子で撮像して一のセルを選択して面積を算出し、セル輪郭データを決め、セル内壁面にも光を照射し、セル輪郭内に対応する絞り込み画像データをメモリに記憶することを、グラビア版の表面位置よりセルの底面位置に移動するまでの間、対物レンズを一定ピッチ移動する毎に行い、絞り込み画像データを画像処理した各階層のマトリックスデータに対して、拡大升単位で合計コントラスト値を算出しマトリックス化することを、各階層について行い、全階層の同一位置の拡大升単位のコントラストデータの最大値となる拡大升を特定して各一の階層におけるセルの輪郭とし、各階層についてのセルの輪郭と階層とから全階層の容積を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア版のセルの容積測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来において、グラビア版のセルの測定方法の発明には幾つかの提案が行なわれている。
特許文献1のグラビア刷版セル体積積算装置は、セル体積データ演算手段により彫刻により版面に形成されるセルの深度と相関関係を有する彫刻データからセル体積データを演算し、次いで積算セル体積データ演算手段により上記セル体積データをグラビア版の所定領域において積算して積算セル体積データを得るものであり、版面の全体に形成したセル体積の総和を得ることを可能とするものである。
【0003】
特許文献2の印刷版のセル測定装置は、測定結果の記録をビデオプリンタのみで行うことができるようにするもので、オートフォーカスユニットにより版銅の表面とセルの底に、それぞれ顕微鏡本体の焦点を合わせることによりセルの深度を測定し、版銅の映像をフレームメモリに取り込み、2値化してセルと版銅の表面の境界線を認識してセルの幅を測定し、同様に、版銅の映像をフレームメモリに取り込み、静止画像にしてから電子ラインによりセルの角度を測定するものである。
【0004】
特許文献3のグラビア版彫刻セル測定装置および方法は、撮像手段によりグラビア版面に形成した彫刻セルの開口形状を撮像し画像データを得て、彫刻針形状推定手段により画像データから彫刻針の先端形状を推定し、セル体積演算手段により推定した先端形状に基づいて彫刻セルの体積を演算し、セルの開口形状から彫刻針の先端形状を推測し、磨耗などによる彫刻針の先端形状の変化によらず、セルの体積を算出できるようにするものである。
【特許文献1】特開2000−301686号公報
【特許文献2】特開平7−332924号公報
【特許文献3】特開2003−326665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のグラビア刷版セル体積積算装置は、版面の全体に形成したセル体積の総和を得るものであり、又、彫刻により版面に形成されるセルを対象としていて、1個のセルの正確な立体形状を表示できず又正確な体積を表示できず、又、フォトリソグラフィーエッチング法により形成されるセルを対象としていない。
【0006】
特許文献2の印刷版のセル測定装置は、測定結果の記録をビデオプリンタのオートフォーカスユニットを操作してセルの深度と幅と角度を測定するもので、セルの体積は算出できない。
【0007】
特許文献3のグラビア版彫刻セル測定装置および方法は、撮像手段により彫刻セルを撮像した画像データから彫刻針の先端形状を推定することに基づいて彫刻セルの体積を演算するもので、彫刻セルの正確な立体形状を表示できず又正確な体積を表示できず、又、フォトリソグラフィーエッチング法により形成されるセルを対象としていない。
【0008】
上記のように、従来においては、彫刻セルの体積の演算は推定に基づいたものであり、セルの内表面を正確に把握できず正確な空間形状を把握できない。
【0009】
本発明は、上述の従来の技術の問題を鑑みてなされたものであって、セルの内表面の正確な空間形状を把握できる3次元データを正確に求めることができセルの容積を正確に算出でき3次元デジタル画像より高精細な立体画像として表示できるグラビア版のセルの容積測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願請求項1の発明のグラビア版のセルの容積測定方法は、対物レンズと撮像素子とを備えた顕微鏡により、グラビア版のセルの内壁面にも光を照射しその反射光を上記対物レンズを通して撮像し、画像処理した表示画像中から選択した一つのセルに対応する絞り込み画像データを記憶することを、上記対物レンズの焦点が上記グラビア版の表面より上記セルの底面に移動するまでの間、上記対物レンズを一定ピッチ移動する毎に行い、次いで、各階層の絞り込み画像データの所要数の一塊りのピクセルを1単位とする各拡大升の合計コントラスト値を算出してから、全階層について同一位置の拡大升単位の合計コントラスト値を比較して最大値となる拡大升を特定し、各階層について特定した全ての最大値となる拡大升によって形成される形状線を各階層におけるセルの輪郭として、各階層のセルの輪郭と階層分の深さとから階層数とからセルの容積とする、ことを特徴とする。
【0011】
上記発明の下位概念となる、一層具体的で好ましい、本願請求項2の発明のグラビア版のセルの容積測定方法は、対物レンズと撮像素子とを備えた顕微鏡により対物レンズの焦点をグラビア版の表面に合わせて撮像しこの撮像画像を表示装置に表示すると共にこの画像データを記憶し、次いで、上記コンピュータの表示装置に表示される撮像画像の中の任意の位置のセル輪郭データを記憶し、次いで、上記一のセルに対して、セル内壁面にも光を照射し反射光を上記対物レンズを通して上記顕微鏡により画像を撮像してこの画像データの中の上記セル輪郭内に対応する絞り込み画像データを記憶することを、上記対物レンズの焦点が上記グラビア版の表面より上記セルの底面に移動するまでの間、上記対物レンズを上記グラビア版に接近する方向へ一定ピッチ移動する毎に行い、次いで、上記絞り込み画像データを画像処理し各ピクセルのコントラスト値を保存することを、各階層について行い、次いで、各階層のコントラストデータに対して所要数の一塊りのピクセルを1単位とする拡大升で区切って各拡大升の合計コントラスト値を保存し、次いで、全階層の同一位置の拡大升単位の合計コントラスト値を比較して最大値となる拡大升を特定し、各階層について特定した全ての最大値となる拡大升によって形成される形状線を当該一の階層におけるセルの輪郭のデータとして保存し、次いで、各階層についてのセルの輪郭から得られる面積と階層分の深さとから各階層についての体積を求め、全階層についての容積を積算して、セルの容積とすることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、本発明のグラビア版のセルの容積測定方法は、以下の順序で行なわれる。
(1)対物レンズとCCDビデオカメラとを備えた顕微鏡の対物レンズの焦点をグラビア版の表面に合わせる。
(2)顕微鏡でグラビア版の表面を撮像して表示装置に表示すると共にこの画像データを記憶する。
(3)上記表示装置に表示される撮像画像の中の任意の位置のセル輪郭データを記憶する。
(4)上記一のセルに対して、セル内壁面にも光を照射し反射光を上記対物レンズを通して上記顕微鏡により画像を撮像してこの画像データの中の上記セル輪郭内に対応する絞り込み画像データを記憶する。
(5)上記(4)の処理を、上記対物レンズの焦点が上記グラビア版の表面より上記セルの底面に移動するまでの間、上記対物レンズを上記グラビア版に接近する方向へ一定ピッチ移動する毎に行う。
(6)上記絞り込み画像データを画像処理し各ピクセルのコントラスト値を保存することを、各階層について行う。
(7)各階層のコントラストデータに対して、所要数の一塊りのピクセルを1単位とする拡大升で区切って各拡大升の合計コントラスト値を算出し保存することを、各階層について行う。
(8)全階層の同一位置の拡大升単位の合計コントラスト値を比較して最大値となる拡大升を特定し、一の階層について特定した全ての最大値となる拡大升によって形成される形状線を当該一の階層におけるセルの輪郭のデータとして保存することを、各階層について行う。
(9)各階層についてのセルの輪郭から得られる面積と階層分の深さとから各階層についての体積を求め、全階層についての容積を積算して、セルの容積とする。
【0013】
上記(1)の処理工程は、対物レンズとCCDビデオカメラとを備えた顕微鏡の対物レンズの焦点をグラビア版の表面に合わせる。この処理工程は、グラビア版の表面の画像を鮮明に撮像することができ正確なセル輪郭を決められることに繋がる。この処理工程では、対物レンズの移動を、モータ等のアクチュエータで行い、そして、対物レンズの焦点をグラビア版の表面に合わせることを、対物レンズの移動と画像処理とを連携させるソフトウエア制御により行なうことが好ましい。例えば、まず、グラビア版の大きさ(径)をコンピュータに入力し、該コンピュータで、対物レンズからグラビア版の表面までのおおよその距離を計算して対物レンズの下降移動量とを算出し、次いで、モータ等のアクチュエータを駆動して対物レンズを上記算出した移動量だけ下降して対物レンズの焦点をグラビア版の表面の近傍に移動し、次いで、このポイントをスタートとして、対物レンズを引き続いて下降していき、一定ピッチ下降する毎にそのときの撮像素子の入力画像をホールドして各入力画像を画像処理(コントラストデータ取得)し、各階層のコントラストの総計を算出し、各画像データをビットマップ形式でメモリに記憶し、全ての各階層のコントラストの総計のうちで最大となる階層までの移動位置をもってグラビア版の表面として決定する。なお、手動により表面合わせを行なっても良い。
【0014】
上記(1)の処理工程では、落射光を用いることが好ましい。落射光はグラビア版の表面とセルの底面に照射し、その反射光は対物レンズを通り、撮像素子に受光される。対物レンズの焦点をグラビア版の表面に一致させると、グラビア版の表面の画像を鮮明に撮像することができる。落射光はセルの側面には殆ど照射されず、僅かに照射された光の反射光は対物レンズを通らない。従って、上記(3)の処理工程において、撮像素子11fが撮像した撮像画像をコンピュータの表示装置15に表示するが、表示装置15は、グラビア版の表面を明るく、セルの部分を黒く表示することになる。なお、グラビア版の表面を落射光の色で明るく表示することもできる。
【0015】
上記(1)の処理工程によって、対物レンズの焦点をグラビア版の表面に超精密に一致させた後、上記(2)の処理工程によって、顕微鏡でグラビア版の表面を撮像して、その画像データを画像処理し表示装置に表示すると共にこの画像データとコントラスデータを記憶する。表示装置に表示される撮像画像は、グラビア版の表面を明るく、セルの部分を黒く表示することになる。なお、グラビア版の表面を落射光の色で明るく表示することもできる。
【0016】
上記(3)の処理工程では、表示装置に表示される撮像画像の中の任意の位置のセルの黒色の画素部分の輪郭部分のみを抽出して輪郭データとして記憶することができる。コンピュータは、黒く表示されるピクセルの数を集計して総和数とピクセルの大きさを乗算して面積を算出し、そして、セルの輪郭データと共に記憶することができる。セルの面積は、セルの容積の算出にも利用される。上記(3)の処理工程では、セル輪郭データのメモリへの記憶は不揮発性の大記憶容量の記憶装置にビットマップ形式で行なうのが良い。
【0017】
上記(4)の処理工程においては、上記処理した任意の位置のセルに対して、セル内壁面にも光を照射する。顕微鏡の光軸を通る落射光は、セル内壁面にも僅かに照射するが、落射光の反射光は、顕微鏡の光軸を逆方向に全く通ることがないので、対物レンズの周囲に斜め軸に光を放射するリング照明を備えてこのリング照明の光をセル内壁面に照射しその反射光を対物レンズを通して顕微鏡のCCDビデオカメラ等の撮像素子に受光させる。このときの、画像データの中の上記セル輪郭内に対応する絞り込み画像データをビットマップ形式でメモリに記憶する。これによって、対物レンズの焦点の高さ位置をセル内壁面に位置させるときに、この絞り込み画像は、対物レンズの焦点の高さ位置を通るセル内壁面の一の輪切り線部分のピントが最も合う画像になり、もって、ピントが最も合う一の輪切り線部分の深度位置は、セルに対する対物レンズの焦点の深度位置に一致する。
【0018】
上記(5)の処理工程においては、上記(4)の処理を、セルの深さ方向に選択した1つのセルの全深さにわたり階層化し、そして、上記(6)の処理工程において、各階層について、各ピクセルのマトリックス化したコントラストデータをメモリに保存する。
【0019】
上記(7)の処理工程において、所要数の一塊りのピクセルを1単位とする拡大升で区切って各拡大升の合計コントラスト値を算出し保存することを、各階層について行うことは、誤差を修正するための前処理である。各階層のマトリックスデータに対して、平面方向に同一ポイントになる1ピクセルのコントラストデータを全比較して最大値となる階層を抽出するときは、ピクセルが小さすぎるため、対物レンズが1階層分下降することによる光の照射具合と反射具合の変化や機械の撓み変化が1ピクセルのコントラストデータに影響を及ぼすので、セルに対して任意の輪切り断面となる連続した輪郭が得られがたい。これに対して、例えば縦横各3ピクセル幅の合計9ピクセルの一塊りの拡大升を1単位とするマトリックスを考えて各拡大升の合計コントラスト値を対象にすると、1ピクセルのときに生じ得る誤差を解消できる。
【0020】
上記(8)の処理工程においては、各階層の拡大升単位の合計コントラスト値を比較して最大値となる拡大升を特定するので、各一の階層について特定した全ての最大値となる拡大升によって形成されるエンドレスな形状線を当該一の階層におけるセルの輪郭線(輪切り線)として決定することができる。
【0021】
上記(9)の処理工程においては、各階層についてのセルの輪郭から得られる面積と階層分の深さとから各階層についての体積を求め、全階層についての容積を積算して、セルの容積とするものであり、階層と階層との階高を例えば0.5ミクロンという数値にすると、各階層についての体積を集積したときの誤差が少なくなり、セルの容積を超精密に求めることができる。
上記のように、セルの内壁面形状を等高表示線で把握して表示できるので、数ピッチ毎にピックアップする階層の内壁面位置を示す等高表示線と、セルに対してY方向に微少寸法でピッチ割りするX方向の線と、セルに対してX方向に微少寸法でピッチ割りするY方向の線とで、セルの空間形状を3次元表示表示できさらに3次元表示をα軸回転表示でき、又、セルを通る任意線の断面形状を3次元に表示できる。
セルは、彫刻によって形成されるセルやエッチングによって形成されるセルのいずれについても適用できる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、セルの内表面の正確な空間形状を把握できる3次元データを求めることができセルの容積を正確に算出できて3次元デジタル画像より高精細な立体画像として表示できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明のグラビア版のセルの容積測定方法の実施形態を図面を用いて説明する。
図1は、グラビア版のセルの容積測定装置の概略正面図を示し、図2は、グラビア版のセルの容積測定装置の原理図を示す。
【0024】
グラビア版のセルの容積測定装置10は、顕微鏡11と、コントロールボックス12と、これらを支持してグラビア版Rに跨って載置される装置本体13と、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ14と、液晶表示装置等の表示装置15と、キーボード等の入力手段16とからなる。
【0025】
顕微鏡11は、装置本体13に上下動可能に支持されるステージ11aと、装置本体13に設けられステージ11aを上下動させるモータを駆動源とするステージ上下動手段11bと、ステージ11aに設けられ一光軸線上に配列される対物レンズ11cと倍率変更レンズ11dと45度に傾斜するハーフミラー11e及びCCDビデオカメラ11fと、レンズ回転機構11gと、落射照明11hと、リング照明11iと、を備えてなる。
【0026】
上記落射照明11hの光は、ハーフミラー11eの傾斜下面に照射して、倍率変更レンズ11dと対物レンズ11cを通り、グラビア版Rに照射されるように構成されている。そして、グラビア版Rからの反射光は、対物レンズ11cと倍率変更レンズ11dとハーフミラー11eとを通りCCDビデオカメラ11fに受光される。
【0027】
上記リング照明11iは、複数個のLEDを、各LEDの放射軸を上記一光軸線に斜めに交差させるように対物レンズ11cの周囲に配設してなる。リング照明11iの照明光は、グラビア版Rのセルの内壁面を明るく照射して、その反射光が、対物レンズ11cと倍率変更レンズ11dとハーフミラー11eとを通りCCDビデオカメラ11fに受光されるように構成されている。
【0028】
上記倍率変更レンズ11dは、偏心回転体の偏心軸の周りに120度異なる3つの位置に倍率の異なる3種類のレンズを支持してこの偏心回転体をレンズ回転機構11gにより回転して所望の1つのレンズを顕微鏡の光軸線上に位置させることにより3段階に倍率変更できるように構成されている。
【0029】
上記コントロールボックス12は、上記ステージ上下動手段11bのモータを駆動制御する第1のモータ制御基板12aと、このモータ制御基板12aに給電する第1の電源手段12bと、上記レンズ回転機構11gのモータを駆動制御する第2のモータ制御基板12cと、このモータ制御基板12cに給電する第2の電源手段12dと、上記落射照明11hの点灯及び消灯並びに上記リング照明11iの点灯及び消灯を制御する照明制御基板12eと、この照明制御基板12eに給電する第3の電源手段12fと、上記各基板12a,12c,12eを制御する各基板制御基板12gとを備えてなる。
【0030】
上記コンピュータ14は、CPUとROMとRAM等を備えたメイン制御基板14aと、ビデオボード14bと、一時記憶装置14cと、大容量記憶装置14dとを備えてなる。
【0031】
ビデオボード14bは、CCDビデオカメラ11fの撮像信号を連続的に入力するようになっていて、撮像信号を画像信号に変えて一時記憶装置14cに入力し、一時記憶装置14cは、画像データを常時にメイン制御基板14aに入力するように構成されている。
【0032】
メイン制御基板14aは、本発明のグラビア版のセルの容積測定方法をCPUにより実行するためのソフトプログラムをROMに格納していて、このプログラムに基づいて、一時記憶装置14cからの画像データを常時に表示装置16に出力して画像表示させると共に、必要なタイミングで1画面分の画像データをホールドして大容量記憶装置14dに画像データを記憶させるように構成されている。さらに、メイン制御基板14aは、必要に応じて大容量記憶装置14dに記憶させた画像データを読み出してプログラムに従った処理を行ない、処理後の画像データ等を大容量記憶装置14dに記憶させるように構成されている。CPUが実行するためのソフトプログラムの概略の内容を、図3〜図8に示すフローチャートに示す。
【0033】
続いて、上記構成の装置の作用である本発明のグラビア版のセルの容積測定方法を説明する。
図3は、本発明のグラビア版のセルの容積測定方法をメイン制御基板14aのCPUが実行するためのメインプログラムの概略のフローチャートを示す。
図1に示すように、グラビア版のセルの容積測定装置10をグラビア版Rの上に跨がせて、プログラムを開始する(ステップS101)。最初に測定対象の情報の設定を行なう(ステップS102)。この設定は、測定対象であるグラビア版Rに関する直径、その他の各種設定を行なう。この設定は、表示装置15に表示される入力テーブルに入力手段16により直径、その他を入力することにより行なう。次いで、表示装置15に表示される測定開始の実行ボタンをオンする(ステップS103)。次いで、測定(ソフトウエア処理)が実行され(ステップS104)、次いで、出力結果の確認、データ保存を行う(ステップS105)。次いで、他のグラビア版の測定を行なうか否かを入力することとして(ステップS105)、測定続行のときは測定の設定のステップ(ステップS102)へ戻り(ステップS107)、測定続行しないときはプログラム終了となる(ステップS108)。
【0034】
図4は、図3のメインプログラムの概略のフローチャート、の中のステップS104に対応するサブプログラムの概略のフローチャートを示す。
プログラムを開始すると(ステップS201)、初期化処理を行ない(ステップS202)、次いで、表面合わせ(ステップS203)を行い、次いで、画像処理による面積測定(ステップS204)を行い、次いで、画像処理による容積測定(ステップS205)を行い、次いで、終了処理(ステップS206)を行い、終了となる(ステップS207)。
【0035】
図5は、図4のサブプログラムの概略のフローチャート、のステップS202に対応するさらに詳しいプログラムのフローチャートを示す。
プログラムを開始すると(ステップS301)、各種設定値の初期化・設定を行ない(ステップS302)、次いで、照明制御手段12eにより落射照明11h、リング照明11iを点灯し(ステップS303)、終了となる(ステップS304)。
【0036】
図6は、図4のサブプログラムの概略のフローチャート、のステップS203に対応するさらに詳しいプログラムのフローチャートを示す。
プログラムを開始すると(ステップS401)、入力された円周長からグラビア版Rのおおよその表面位置を計算し(ステップS402)、次いで、表面位置へステージを移動させ(ステップS403)、次いで、表面位置の±0.5mmの範囲で正確な表面位置を求め(ステップS404)、終了となる(ステップS405)。
【0037】
上記表面位置を求める処理は(ステップS404)、ここでは時間の短縮化のために、例えば、3段階で行なうことが好ましい。
詳述すると、第1段階として、対物レンズ11cの焦点が表面位置から例えば0.5mm離れた位置から対物レンズ11cを接近移動していき対物レンズ11cの焦点が表面位置から例えば0.5mm内方へ移動するまでの間、対物レンズ11cが20μmピッチ移動する毎に、CCDビデオカメラ11fの画面データを画像処理して全表面又は所要範囲の表面の合計コントラスト値を算出して記憶し、各階層の合計コントラスト値を比較して最大値を求める。
【0038】
第2段階として、上記コントラストデータが最大値のときの対物レンズ11cの位置よりも、例えば40μm上方へ対物レンズ11cを上昇復帰してから、再び対物レンズ11cを接近移動し、この上昇復帰位置から例えば80μmの移動距離となるように接近移動するまでの間、対物レンズ11cが2μmピッチ移動する毎に、CCDビデオカメラ11fの画面データを画像処理して全表面又は所要範囲の表面の合計コントラスト値を算出して記憶し、各階層の合計コントラスト値を比較して最大値を求める。
【0039】
第3段階として、上記第2段階の測定結果におけるコントラストデータが最大値のときの対物レンズ11cの位置よりも、例えば4μm上方へ対物レンズ11cを上昇復帰してから、対物レンズ11cを三度接近移動し、この上昇復帰位置から例えば8μmの移動距離となるように接近移動するまでの間、対物レンズ11cが0.5μmピッチ移動する毎に、CCDビデオカメラ11fの画面データを画像処理して全表面又は所要範囲の表面の合計コントラスト値を算出して記憶し、各階層の合計コントラスト値を比較して最大値を求める。第3段階目の測定により得られた最大値のときのステージ11aの下降位置をメモリに記憶して、当該ステージ11aの下降位置をもって、対物レンズ11cの焦点をグラビア版Rの表面に合わせたことになる。
【0040】
図7は、図4のサブプログラムの概略のフローチャート、のステップS204に対応するさらに詳しいプログラムのフローチャートを示す。
プログラムを開始すると(ステップS501)、リング照明11hを消灯し(ステップS502)、次いで、CCDビデオカメラ11fの画像信号をビデオカード14bを介して画像処理して一次記憶装置14cにロードし(ステップS503)、次いで、面積算出のための画像処理を行ない(ステップS504)、次いで、測定値や結果表示用画像等の処理結果を保存し(ステップS505)、終了となる(ステップS506)。
【0041】
上記画像処理のステップS504では、各種フィルタを用い、セルの面積エリアとエリア内、エリア間の距離を求める。各種フィルタには、二値化(閾値は自動検出)、表面キズ除去、ラベル付け(複数のセルの分別)、エリア内塗り潰し、エリア内ピクセル数計算などがある。
上記画像処理を行なうと(ステップS504)、表示装置15は、CCDビデオカメラ11fが撮像した撮像画像を、グラビア版の表面を明るく、セルの部分を黒く表示するので、表示装置16に表示される撮像画像の中の一のセルを操作者が選択すると、コンピュータが、黒く表示されるピクセルの数を集計して総和数とピクセルの大きさを乗算して面積を算出する。
ステップS505では、各階層のマトリックスデータに対して、平面方向に同一ポイントになる拡大升単位の合計コントラスト値を比較して最大値となる拡大升を特定することで、各一の階層について特定した全ての最大値となる拡大升によって形成される形状線を当該一の階層におけるセルの輪郭を決定する。
そして、ステップS505では、セルの面積及びセル輪郭データをビットマップ形式でHDD、DVD等の大記憶容量の不揮発性記憶装置14dに記憶する。
【0042】
図8は、図4のサブプログラムの概略のフローチャート、のステップS205に対応するさらに詳しいプログラムのフローチャートを示す。
プログラムを開始すると(ステップS601)、リング照明11hを点灯し(ステップS602)、次いで、対物レンズ11cの焦点をグラビア版Rの表面に合わせた位置からステージ11aを上に20μm移動し(ステップS603)、この位置からステージ11aを下へ70μm移動し(ステップS604)、次いで、ステージ11aを0.5μmピッチ移動する毎にCCDビデオカメラ11fの画像信号をビデオカード14bを介して画像処理を行い一次記憶装置14cにロードし(ステップS605)、次いで、画像データを不揮発性記憶装置14dに保存し(ステップS606)、次いで、容積算出のための画像処理を行ない(ステップS607)、次いで、画像処理データから各拡大升のピクセルの深度を求め(ステップS608)、次いで、測定値や結果表示用画像等の処理結果を保存し(ステップS609)、終了となる(ステップS610)。
【0043】
ステップS605においては、上記処理された任意の位置のセルに対して、落射光とリング照明の光がセル内壁面及びセル底面に照射する。反射光は対物レンズ11cを通してCCDビデオカメラ11fに受光するので、対物レンズ11cの焦点位置をセル内壁面に位置させるときにセル内壁面の画像を撮像することができる。
ステップS605においては、画像データの中の上記セル輪郭内に対応する絞り込み画像データを一次記憶装置14cにロードする。この絞り込み画像は、セルに対して一の輪切り線部分の画像がピントが最も合う画像になり、一の輪切り線部分の深度位置は、対物レンズの焦点の深度位置に一致している。
ステップS606においては、各階層の絞り込み画像データについて、各ピクセルのマトリックス化したコントラストデータを画像処理してビットマップ形式で不揮発性記憶装置14dに保存する。
ステップS607においては、縦方向及び横方向にそれぞれ3つのピクセル幅毎に区画して9つのピクセルの大きさの拡大升のマトリックスとしてかつ拡大升単位で合計コントラスト値を算出しマトリックス化して上記メモリに保存することを、各階層について行う。この処理工程があることにより、対物レンズが1階層分下降することによる光の照射具合と反射具合の変化や機械の撓み変化が1ピクセルのコントラストデータに影響を及ぼすことがあっても、1ピクセルのときに生じ得る誤差を解消できる。
ステップS608においては、全階層の同一位置の拡大升単位の合計コントラスト値を比較して最大値となる拡大升を特定し、一の階層について特定した全ての最大値となる拡大升によって形成される形状線を当該一の階層におけるセルの輪郭としてデータ化して上記メモリに保存することを、各階層について行う。
さらに、ステップS608においては、各階層についてのセルの輪郭から得られる面積と階層分の深さとから各階層についての体積を求め、全階層についての容積を積算して、セルの容積とする。階層と階層との階高を例えば0.5ミクロンという数値にしているので、各階層についての体積を集積誤差が少なくなり、セルの容積を極めて精密に求めることができる。
【0044】
そして、セルの階層の内壁面位置を等高表示線で表示できるので、数ピッチ毎にピックアップする階層の内壁面位置を示す等高表示線と、セルに対してY方向に微少寸法でピッチ割りするX方向の線と、セルに対してX方向に微少寸法でピッチ割りするY方向の線とで、セルの空間形状を3次元表示表示できさらに3次元表示をα軸回転表示でき、又、セルを通る任意線の断面形状を3次元に表示できる。これらは、プログラムによって実行され、表示装置15に表示される。
【0045】
上記の実施形態は、本願請求項2の発明のグラビア版のセルの容積測定方法に対応するように具体化したものである。しかし、本発明は、上記の実施形態に限定されるものでない。本発明は、本願請求項1の発明のグラビア版のセルの容積測定方法の構成を逸脱しない限り、種々の設計変更を含むものである。
本発明においては、彫刻により版面に形成されるセルを対象として1つのセルの容積を得ることに適用でき、又、フォトリソグラフィーエッチング法により形成されるセルを対象として1つのセルの容積を得ることに適用できる。グラビア版は、ロールに限定されない、平版にも適用される。さらに、複数のセルを選択すれば、該複数のセルの合計の容積を算出することができる。本発明は、セルの容積を算出する方法であるが、セルの内壁面の正確な立体形状を表示することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】グラビア版のセルの容積測定装置の概略正面図
【図2】グラビア版のセルの容積測定装置の原理図
【図3】本発明のグラビア版のセルの容積測定方法を実行するためのメインプログラムの概略のフローチャート
【図4】図3のステップS104に対応する詳しいフローチャート
【図5】図4のステップS202に対応する詳しいフローチャート
【図6】図4のステップS203に対応する詳しいフローチャート
【図7】図4のステップS204に対応する詳しいフローチャート
【図8】図4のステップS205に対応する詳しいフローチャート
【符号の説明】
【0047】
10…グラビア版のセルの容積測定装置
R…グラビア版
11…顕微鏡
11c…対物レンズ
11f…CCDビデオカメラ(撮像手段)
11h…落射照明
11i…リング照明
14…コンピュータ
14a…メイン制御基板
14b…ビデオボード
14c…一時記憶装置
14d…大容量記憶装置(メモリ)
15…表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズと撮像素子とを備えた顕微鏡により、グラビア版のセルの内壁面にも光を照射しその反射光を上記対物レンズを通して撮像し、画像処理した表示画像中から選択した一つのセルに対応する絞り込み画像データを記憶することを、上記対物レンズの焦点が上記グラビア版の表面より上記セルの底面に移動するまでの間、上記対物レンズを一定ピッチ移動する毎に行い、
次いで、各階層の絞り込み画像データの所要数の一塊りのピクセルを1単位とする各拡大升の合計コントラスト値を算出してから、全階層について同一位置の拡大升単位の合計コントラスト値を比較して最大値となる拡大升を特定し、各階層について特定した全ての最大値となる拡大升によって形成される形状線を各階層におけるセルの輪郭として、各階層のセルの輪郭と階層分の深さとから階層数とからセルの容積とする、
ことを特徴とするグラビア版のセルの容積測定方法。
【請求項2】
対物レンズと撮像素子とを備えた顕微鏡により対物レンズの焦点をグラビア版の表面に合わせて撮像しこの撮像画像を表示装置に表示すると共にこの画像データを記憶し、
次いで、上記コンピュータの表示装置に表示される撮像画像の中の任意の位置のセル輪郭データを記憶し、
次いで、上記一のセルに対して、セル内壁面にも光を照射し反射光を上記対物レンズを通して上記顕微鏡により画像を撮像してこの画像データの中の上記セル輪郭内に対応する絞り込み画像データを記憶することを、上記対物レンズの焦点が上記グラビア版の表面より上記セルの底面に移動するまでの間、上記対物レンズを上記グラビア版に接近する方向へ一定ピッチ移動する毎に行い、
次いで、上記絞り込み画像データを画像処理し各ピクセルのコントラスト値を保存することを、各階層について行い、
次いで、各階層のコントラストデータに対して所要数の一塊りのピクセルを1単位とする拡大升で区切って各拡大升の合計コントラスト値を保存し、
次いで、全階層の同一位置の拡大升単位の合計コントラスト値を比較して最大値となる拡大升を特定し、各階層について特定した全ての最大値となる拡大升によって形成される形状線を当該一の階層におけるセルの輪郭のデータとして保存し、
次いで、各階層についてのセルの輪郭から得られる面積と階層分の深さとから各階層についての体積を求め、全階層についての容積を積算して、セルの容積とすることを特徴とするグラビア版のセルの容積測定方法。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−315802(P2007−315802A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143151(P2006−143151)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(301031026)ネクストソリューション株式会社 (2)
【出願人】(506175460)株式会社 キーストンインターナショナル (1)
【出願人】(506174810)有限会社 TIサービスandテクノロジー (1)
【Fターム(参考)】