説明

コネクタおよびコネクタのロック構造

【課題】光デバイス等のコネクタ接続が必要な各種デバイスの小型化を促進しつつ、振動や衝撃に強いデバイスを実現可能なコネクタのロック構造を実現する。
【解決手段】コネクタは、弾性部材によって形成されたラッチ部17aを有するオス型コネクタ17と、前記オス型コネクタを挿入するハウジング20と、前記ラッチ部に比して硬く、前記ラッチ部に対応する係止孔45が形成された金属部40とを有するメス型コネクタ3と、を備える。前記ハウジング内に前記オス型コネクタを挿入すると、前記係止孔が前記ラッチ部を係止して、前記オス型コネクタと前記メス型コネクタとの接続がロックされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよびコネクタのロック構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両内での制御信号、画像信号、音声信号等の通信情報量の増大に伴い、情報信号の伝送に使用される伝送路にも、従来のメタルケーブルに代えて光ファイバケーブルが用いられるようになってきている(特許文献1、2参照)。光ファイバケーブルは、メタルケーブルのように通信速度の高速化により周囲にノイズを放出するという問題もないため、高速、大容量の情報通信に適する信号伝送路である。
【0003】
光ファイバケーブルは、その端部に光コネクタを備えている。光コネクタは、例えば、光ファイバケーブルの先端に取り付けられるフェルールと、このフェルールを保持し、他の光コネクタ等と嵌合して接続するための構造を有するハウジングとを備えている。一方、通信を行なう装置にも光コネクタが備えられており、光コネクタ同士を嵌合することによって、光ファイバケーブルと、通信を行なう装置とを接続することができる。また、光ファイバケーブル同士の接続も光コネクタの嵌合によって実現される。光ファイバケーブル同士の接続はWire to Wire接続と呼ばれる(特許文献3、4参照)。
【0004】
なお、通信を行う装置に備えられる光コネクタは、通信用の半導体発光素子や半導体受光素子などの光素子とともに、光デバイスを構成している。この光デバイスには、光素子が周囲からの電気的ノイズの影響を受けたり、または光素子が光通信に伴って電気的ノイズを放出して周囲に影響を与えたりすることを防止するため、金属からなるシールドケースが取り付けられる(特許文献4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−107573号公報
【特許文献2】特許第3813496号公報
【特許文献3】特開2002−318328号公報
【特許文献4】特開2002−333548号公報
【特許文献5】特開2005−70466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光ファイバケーブルを車両内のワイヤーハーネスに適用する場合、ワイヤーハーネスにより通信を行なう装置は、ルーフ部、フロア部、エンジン周り、インパネ周り等の車両の各構成単位に配置されている。したがって、各構成単位に配置された通信装置に備えられた光デバイスは、車両の製造の際のアセンブリ工程や組付け工程の際に引っ張り等の強い衝撃を受ける場合がある。また、光デバイスは、車両の走行時の振動、衝撃等も受けることとなる。したがって、特に車両内で使用される光デバイスについては、衝撃や振動に強いことが特に要求されている。
【0007】
さらには、車両内への光デバイスの設置スペースを小型化する関係上、一層の光デバイスの小型化が要求されている。一般に、光デバイスに用いられるオス型光コネクタとメス型光コネクタとを接続するためには、オス型光コネクタに設けられたラッチ部をメス型光コネクタの係止孔に取り付けている。
【0008】
ここで、オス型光コネクタは規格品であることが多く、このため、小型化のためとはいえオス型光コネクタを削るなどして、その外形を安易に小さくすることは得策とはいえない。したがって、小型化のためには、規格品であるオス型光コネクタを挿入するメス型光コネクタの内側寸法を変えずに、メス型光コネクタの外形寸法を削るなどして小型化する必要がある。しかしながら、メス型光コネクタの天板には係止孔が形成されている。このため、メス型光コネクタの外形の薄肉化は、この係止孔を形成する樹脂部材の強度低下を招来し、この結果、上述した衝撃および振動によって破損する恐れがあるという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光デバイス等のコネクタ接続が必要な各種デバイスの小型化を促進しつつ、衝撃や振動に強いデバイスを実現可能なコネクタおよびコネクタのロック構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるコネクタは、弾性部材によって形成されたラッチ部を有するオス型コネクタと、前記オス型コネクタを挿入するハウジングと、前記ラッチ部に比して硬く、前記ラッチ部に対応する係止孔が形成された金属部とを有するメス型コネクタと、を備え、前記ハウジング内に前記オス型コネクタを挿入するとともに、前記係止孔に前記ラッチ部を係止して前記オス型コネクタと前記メス型コネクタとを嵌合することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかるコネクタは、上記の発明において、前記ハウジングは、前記オス型コネクタの挿入方向を規制するガイド部を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかるコネクタは、上記の発明において、前記オス型コネクタは、前記ハウジングへの挿入方向に延伸するアーム部を備え、前記ガイド部は、前記ハウジングの挿入口に連続し且つ前記ハウジングへの前記オス型コネクタの挿入長さを持つ開口部を形成する一対の天板であり、前記開口部内に前記アーム部を案内することによって、前記オス型コネクタの挿入方向を規制することを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかるコネクタは、上記の発明において、前記メス型コネクタは、前記ハウジングの挿入口を閉じずに前記ハウジングの外面に被せる金属製のシールドケースを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかるコネクタは、上記の発明において、前記金属部は、前記シールドケースと一体であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかるコネクタは、上記の発明において、前記オス型コネクタおよび前記メス型コネクタは、光コネクタであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかるコネクタのロック構造は、オス型コネクタに設けられ、弾性部材によって形成されたラッチ部と、前記オス型コネクタを挿入するハウジングを備えたメス型コネクタに設けられ、前記ラッチ部に比して硬く、前記ラッチ部に対応する係止孔が形成された金属部と、を備え、前記ハウジング内に前記オス型コネクタを挿入するとともに、前記係止孔に前記ラッチ部を係止して前記オス型コネクタと前記メス型コネクタとを嵌合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光デバイス等のコネクタ接続が必要な各種デバイスの小型化を促進しつつ、振動や衝撃に強いデバイスを実現可能なコネクタのロック構造を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかるコネクタのロック構造を利用した光デバイスおよびコネクタ付光ファイバケーブルの模式的な分解図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態におけるオス型のコネクタ付光ファイバケーブルの模式的な斜視図である。
【図3】図3は、図1の接続体の模式的な斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態における光デバイスとコネクタ付光ファイバケーブルとの接続体の模式的な上面図である。
【図5】図5は、図4に示す接続体のA−A線断面模式図である。
【図6】図6は、図4に示す接続体のB−B線断面模式図である。
【図7】図7は、メス型光コネクタハウジングの一変形例を示す模式図である。
【図8】図8は、メス型光コネクタハウジングの別の変形例を示す模式図である。
【図9】図9は、係止孔が形成された金属部とシールドケースとが別体である場合のメス型光コネクタハウジングおよびシールドケースの一構成例を示す模式図である。
【図10】図10は、互いに相対的な上下動が可能なメス型光コネクタハウジングおよびシールドケースの一構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して本発明にかかるコネクタおよびコネクタのロック構造の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下では、接続するコネクタが光コネクタである場合を本発明の一例として説明するが、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各層の厚みと幅との関係、各層の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0020】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態にかかるコネクタのロック構造を利用した光デバイスおよびコネクタ付光ファイバケーブルの模式的な分解図である。図2は、本発明の実施の形態におけるオス型のコネクタ付光ファイバケーブルの模式的な斜視図である。図3は、図1の接続体の模式的な斜視図である。
【0021】
図1〜図3に示すように、光デバイス1は、メス型光コネクタ3を備えており、基板4に接続されるものである。メス型光コネクタ3は、メス型光コネクタハウジング20と、光素子30と、金属製のシールドケース40とを備えており、メス型光コネクタハウジング20に対して、光素子30を組み付け且つ金属製のシールドケース40を被せて構成される。コネクタ付光ファイバケーブル2は、かしめリング14および光ファイバ固定部材16を用いてフェルール15が光ファイバケーブル19に取り付けられ、さらに、このフェルール15がオス型光コネクタ17に取り付けられて構成されている。
【0022】
このような光デバイス1は、たとえばFOT(Fiber Optical Transceiver)と呼ばれるものであり、車載通信システムにおいて、通信を行う装置に搭載され、コネクタ付光ファイバケーブル2を介して装置間で相互に制御信号等の通信を行う場合に使用される。
【0023】
つぎに、コネクタ付光ファイバケーブル2の各構成要素を説明する。図1に示すように、光ファイバケーブル19は、光ファイバ10aと、光ファイバ10aを被覆する素線被覆部10bとからなる光ファイバ素線10と、光ファイバ素線10の外周に長手方向に沿って配置された抗張力体11と、抗張力体11の外周を長手方向に沿って覆う外被覆部12とを備えている。抗張力体11は、たとえばケブラー(登録商標)等のアラミド樹脂繊維からなる。また、素線被覆部10bは、例えばポリアミド樹脂からなる。そして、光ファイバケーブル19の先端で素線被覆部10bと外被覆部12とが一部除去され、光ファイバ10a、素線被覆部10b、および抗張力体11が各々所定の長さだけ外部に露出するようになっている。
【0024】
光ファイバ10aは、石英系ガラスからなるコア部とコア部よりも屈折率が低い硬質プラスチックからなるクラッド部とからなる、いわゆるHCS(Hard Clad Silica)光ファイバである。このような光ファイバ10aは、コア部のコア径が例えば200μmであり、クラッド部のクラッド径が例えば230μmであり、850nmの光信号を低損失、広帯域で伝送し、かつ低曲げ損失であり、繰り返しの曲げ、引っ張り動作にも強いように設計されている。
【0025】
フェルール15は、全体的に円筒形状を有している。フェルール15は、例えば、耐熱性、機械強度、成型性に優れるポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)からなる。フェルール15には、光ファイバケーブル19が、光ファイバ10aの接続端面がフェルール15の先端面15aと略一致するように挿通されている。そして、樋形状の光ファイバ固定部材16が、フェルール15の側面部に形成された開口孔15bに挿入固定された状態で、光ファイバケーブル19の素線被覆部10bの部分を把持する。これによって、フェルール15は、光ファイバケーブル19に固定されている。
【0026】
かしめリング14は、例えば円筒形状に形成され、光ファイバ素線10、抗張力体11、および外被覆部12を順次挿通し、抗張力体11がフェルール15の凹凸形状の後端部15c表面に載置された状態でフェルール15と光ファイバケーブル19の外被覆部12とをかしめ、この結果、フェルール15と光ファイバケーブル19とを強固に固定している。ここで、抗張力体11は、かしめリング14によってフェルール15の後端部15cに固定されている。これによって、フェルール15と光ファイバケーブル19とは一体化してより強固になり、振動や衝撃に強くなる。
【0027】
また、かしめリング14の後端部には、保護ブーツ13が被せられる。保護ブーツ13は、例えばゴムや弾性を有するプラスチックからなるものであり、フェルール15と光ファイバケーブル19との接続部が許容半径よりも小さい曲げ径で折れ曲がるのを防止しており、これによって光ファイバ素線10が折損することを防止している。
【0028】
オス型光コネクタ17は、2芯構造の光ファイバケーブル19の各先端に取り付けられた2つのフェルール15が挿通されるハウジング部を有するものであり、挿通したフェルール15を固定するための固定部材18を備える。固定部材18は、オス型光コネクタ17のハウジング下部に設けられたスリット17dに挿入される。なお、オス型光コネクタ17のハウジングは、例えばPPS、ポリブチレンテレフタレート(PBT)からなる。また、車内での利用を考慮すると耐熱性で熱膨張率の小さい樹脂が好ましい。
【0029】
また、オス型光コネクタ17は、図1および図2に示すように、メス型光コネクタ3のメス型光コネクタハウジング20に挿通固定するためのロック構造の一部を担うラッチ部17aを有する。ラッチ部17aは、樹脂部材等の弾性部材によって片持ち梁状または両持ち梁状に形成されたアーム部17bおよび係止突起部17cからなる。アーム部17bは、弾性を有し、オス型光コネクタ17の幅方向略中央において、オス型光コネクタ17の長手方向(すなわちメス型光コネクタハウジング20への挿入方向)の先端から後端に向かって延伸するように形成される。係止突起部17cは、アーム部17bの後端部に、上方に向けて突起する形状に形成される。この係止突起部17cは、後述するように、メス型光コネクタ3の金属製のシールドケース40に形成された係止孔45に係止する。
【0030】
さらに、オス型光コネクタ17は、メス型光コネクタハウジング20内に挿通した際に、その挿通固定位置を決定するための位置決め部17eを有する。位置決め部17eは、オス型光コネクタ17の外表面に凸状に形成され、オス型光コネクタ17がメス型光コネクタハウジング20内に挿通した際に、メス型光コネクタハウジング20内に突起した規制部24と当接する。これによって、メス型光コネクタハウジング20内部におけるオス型光コネクタ17の挿通位置が決定される。
【0031】
つぎに、光デバイス1の構成を説明する。光デバイス1は、上述したように、メス型光コネクタ3を備えており、図1および図3に示すように、基板4に接続される。メス型光コネクタ3は、メス型光コネクタハウジング20と、光素子30と、金属製のシールドケース40とを備える。
【0032】
メス型光コネクタハウジング20は、光素子30が収容される光素子収容部21と、オス型光コネクタ17が挿入され収容されるコネクタ収容部22とを備えている。光素子収容部21は、コネクタ収容部22の前端部に形成され、収容された光素子30とコネクタ収容部22内のオス型光コネクタ17とを接続可能な構造を有する。
【0033】
コネクタ収容部22は、オス型光コネクタ17の挿入方向を規制するガイド部23と、オス型光コネクタ17の挿入位置を規制する規制部24と、シールドケース40を安定して固定するための突起部25a,25bとを備えている。コネクタ収容部22は、ガイド部23によってガイドされつつ挿入され、規制部24によって挿入位置が規制された状態でオス型光コネクタ17を収容する。
【0034】
ガイド部23は、コネクタ収容部22の天板として機能するとともに、メス型光コネクタハウジング20の挿入口(具体的にはコネクタ収容部22の挿入口)に連続し且つメス型光コネクタハウジング20へのオス型光コネクタ17の挿入長さを持つ開口部を形成する。このようなガイド部23は、オス型光コネクタ17のアーム部17b幅と同程度または若干広めの開口部を形成するように、コネクタ収容部22の両側面に一対設けられる。この一対のガイド部23間の開口部にはアーム部17bが挿入案内され、これによって、ガイド部23は、オス型光コネクタ17の挿入方向を規制しつつ、コネクタ収容部22内へオス型光コネクタ17を案内する。最終的には、一対のガイド部23の隙間にラッチ部17aのアーム部17bおよび係止突起部17cが収まる状態になる。
【0035】
規制部24は、コネクタ収容部22へのオス型光コネクタ17の挿入を阻害しない程度に、コネクタ収容部22の内側に向けて突起したものであり、上述した一対のガイド部23に各々形成される。規制部24は、オス型光コネクタ17がコネクタ収容部22内に挿入された際、このオス型光コネクタ17の位置決め部17eと当接し、これによって、オス型光コネクタ17が限度を超えてコネクタ収容部22内に挿入しないように、オス型光コネクタ17の挿入を規制する。この結果、オス型光コネクタ17は、コネクタ収容部22内の適切な位置に収容され、光ファイバ10aの接続端面と光素子30内に収容されている図示しないレンズとが確実に当接し接続される。
【0036】
シールドケース40は、メス型光コネクタハウジング20の挿入口、すなわちコネクタ収容部22の挿入口を閉じずに、メス型光コネクタハウジング20の外面に被せる金属製の部材である。シールドケース40は、導電性があり、且つ、可能な限りインピーダンスが低い材料で構成することが好ましく、例えば銅材であれば低コストで好ましい。このような材料として、具体的には、黄銅材(例えばC2600−1/2H)を使用できる。
【0037】
また、シールドケース40は、図1に示すように、正面部41と、左右の側面部42と、天板43とからなり、メス型光コネクタハウジング20に被せた場合に、光素子収容部21内の光素子30をシールドできるとともに、コネクタ収容部22の天板部位をシールドできるように、底面側と背面側とが開放された直方体型の形状を有している。正面部41は、板ばね機能を有し、光素子収容部21内の光素子30を保護するとともに、この光素子30をコネクタ収容部22側へ押し付けている。左右の側面部42の各々には、コネクタ収容部22の側面部の突起部25a,25bを嵌め入れる開口部42a,42bが形成されている。メス型光コネクタハウジング20にシールドケース40を取り付ける際、開口部42aに突起部25aが係合し且つ開口部42bに突起部25bが係合することによって、シールドケース40は、メス型光コネクタハウジング20に安定して固定される。
【0038】
天板43は、メス型光コネクタハウジング20の上部を保護するとともに、メス型光コネクタ3とオス型光コネクタ17とを固定するロック構造の一部を担う。具体的には、天板43は、その後部44にラッチ部17aに形成された係止突起部17cに対応する係止孔45を有する。この係止孔45が形成された後部44は、天板43と一体であり、すなわち、シールドケース40と一体である。また、後部44は、シールドケース40と同材質すなわち金属であるため、樹脂部材等の弾性部材であるラッチ部17a(特に係止突起部17c)に比して硬い。ここで、この係止孔45には、コネクタ収容部22に収容されたオス型光コネクタ17の係止突起部17cが係止する。この結果、オス型光コネクタ17は、メス型光コネクタ3と着脱可能に嵌合される。
【0039】
なお、シールドケース40の正面部41および側面部42には、図1に示すように、底面側から下方に向けて延伸する端子部および係止部が形成される。この端子部および係止部は、基板4の仕様に応じて、必要数、形成されればよい。また、この端子部は、電磁波のシールドのためにグラウンドに接続される端子であってもよい。
【0040】
つぎに、図1〜図3を参照して、光デバイス1の組立方法について説明する。まず、所定の組立工程に従って光素子30を組み立て、この組み立てられた光素子30をメス型光コネクタハウジング20の光素子収容部21に収容する。つぎに、光素子30を収容したメス型光コネクタハウジング20にシールドケース40を取り付ける。このとき、シールドケース40の開口部42a,42bには、メス型光コネクタハウジング20の突起部25a,25bが各々係合する。これによって、シールドケース40は、車両の走行時の振動、衝撃等に対しても耐えうるように、メス型光コネクタハウジング20に強固に安定して固定される。
【0041】
また、シールドケース40がメス型光コネクタハウジング20に取り付けられた状態では、シールドケース40の正面部41の板ばね機構が、光素子収容部21内の光素子30を押圧して、メス型光コネクタハウジング20に光素子30を押付けている。これによって、光素子30は、車両の走行時の振動、衝撃等に対しても耐えうるように、メス型光コネクタハウジング20に強固に安定して固定される。さらには、シールドケース40はメス型光コネクタハウジング20に強固に安定して固定されるので、正面部41の板ばね機構の光素子30に対する押圧力も安定する。
【0042】
ここで、光素子30をメス型光コネクタハウジング20に押付ける板ばね機構を例えば樹脂材料によって構成したとすると、車両内が高温になった場合に、ばね弾性が低下する場合があるので、当初の押圧力を維持できないおそれがある。
【0043】
これに対して、本実施の形態では、電磁波をシールドすべき金属からなるシールドケース40に板ばね機構を設けているので、高温化でもばね弾性の低下が発生せず、安定した固定状態を維持できる。また、新たに金属からなるばね部材を追加する構成ではないので、部品点数の増加も防止される。
【0044】
つぎに、このように組み立てられた光デバイス1を基板4に取り付ける(図1、3参照)。基板4に光デバイス1を取り付ける際には、メス型光コネクタハウジング20の底面が基板4上に載置され、且つ、光素子30の端子部が基板4の孔に挿入される。さらに、シールドケース40の端子部および係止部が、基板4の各孔に各々挿入される。
【0045】
光デバイス1は、上述した基板4の孔への係止部の挿入によって、基板4に係止され且つ基板4に対して位置決めされる。その後、光素子30およびシールドケース40の各端子部は電気的導通のために基板4に半田付けされるが、光デバイス1はシールドケース40の係止部によって基板4への各端子の挿入深さも位置決めされるので、半田付けの際に光デバイス1が基板4に対して浮き上がったり、傾いたりすることが防止される。
【0046】
また、光デバイス1がシールドケース40の係止部によって基板4に固定されるため、光デバイス1に振動、衝撃等による力が加えられた場合、この係止部もその力を負担するため、光素子30およびシールドケース40の各端子部への負荷が軽減される。これによって、これらの各端子部の電気的導通のための半田に掛かる負荷も軽減される。
【0047】
その後、図3に示すように、この光デバイス1のメス型光コネクタ3にコネクタ付光ファイバケーブル2(図2参照)のオス型光コネクタ17を接続することによって、所望の光通信を実行することができる。この場合、メス型光コネクタ3のシールドケース40に形成された係止孔45には、コネクタ付光ファイバケーブル2の係止突起部17cが係止し、この係止突起部17cと係止孔45とのラッチ構造によって、光デバイス1とコネクタ付光ファイバケーブル2との接続が着脱可能にロックされる。
【0048】
つぎに、本発明の実施の形態にかかるコネクタのロック構造について詳細に説明する。図4は、本発明の実施の形態における光デバイスとコネクタ付光ファイバケーブルとの接続体の模式的な上面図である。図5は、図4に示す接続体のA−A線断面模式図である。図6は、図4に示す接続体のB−B線断面模式図である。
【0049】
図4〜図6に示すように、基板4に取り付けられた光デバイス1に対してコネクタ付光ファイバケーブル2を差し込み、接続した状態では、コネクタ付光ファイバケーブル2のオス型光コネクタ17は、メス型光コネクタ3のメス型光コネクタハウジング20内に挿入固定されている。
【0050】
この状態に至るまでに、オス型光コネクタ17のアーム部17bは、メス型光コネクタハウジング20のガイド部23によって挿入方向および挿入位置が規制されつつ、一対のガイド部23の間の開口部(図1参照)内に挿入される。この際、アーム部17bは、自身の弾性力によって若干曲がりつつ、シールドケース40の上部内壁面に係止突起部17cを押し付けながら、この開口部内に収まる。オス型光コネクタ17は、このガイド部23の作用によって、メス型光コネクタハウジング20への挿入方向が正しく規制され、この結果、例えば挿入方向に対して垂直方向または斜め方向等に不用意にぶれることなく、円滑にメス型光コネクタハウジング20内に挿入される。最終的には、オス型光コネクタ17は、図1に示した位置決め部17eと規制部24との当接によって、メス型光コネクタハウジング20内の適切な位置に収まる。この時、図6に示すように、光ファイバ10aは、メス型光コネクタハウジング20内の光素子30と光学的に接続された状態になる。
【0051】
一方、係止突起部17cは、上述した状態と同時に、シールドケース40の係止孔45の位置に到達し、アーム部17bの弾性力によって、メス型光コネクタハウジング20の内側から係止孔45を突き抜けてシールドケース40の上部表面から突出する(図5参照)。これによって、係止突起部17cは、この係止孔45に係止する。この結果、オス型光コネクタ17とメス型光コネクタ3との接続がロックされた状態となり、両コネクタは着脱可能に嵌合される。
【0052】
なお、このラッチ構造による両光コネクタの接続を解除する場合は、アーム部17bを押し下げることにより係止突起部17cを押し下げて係止孔45から係止突起部17cを外し、その後、オス型光コネクタ17をメス型光コネクタ3から離脱すればよい。
【0053】
ここで、トランシーバ等に用いられる従来のオス型コネクタおよびメス型コネクタにおいて、オス型コネクタが規格品である場合が多く、このため、デバイス等の小型化を図るためには、特に規格化されていないメス型コネクタの外壁を削ってメス型コネクタの肉厚を薄くする必要がある。しかし、メス型コネクタにはラッチ構造を実現するための係止孔が形成されており、この係止孔が形成されているコネクタ部位の材質は、一般に、オス型コネクタと同じ樹脂等の材質である。すなわち、係止孔の形成部位の材質は、オス型コネクタの係止突起部と同じものであり、このため、両コネクタに対する衝撃、振動等の外力の印加によって係止孔の形成部位の強度が劣化する可能性が高い。最終的には、係止孔の破損が生じる。この場合、メス型コネクタに固定されているデバイス等の各種部品を全て交換しなければならず、コネクタ修復に多大な費用および時間がかかる。
【0054】
これに対し、本発明の実施の形態にかかるコネクタのロック構造では、オス型光コネクタ17のラッチ部17aの材質(例えば樹脂部材)に比して硬い金属製のシールドケース40に係止孔45を設けている。このため、メス型光コネクタ3の外壁を削ってメス型光コネクタ3の肉厚を薄くし、これによって光デバイス1の小型化を図った場合であっても、メス型光コネクタ3とオス型光コネクタ17との衝撃、振動等の外力の印加に起因して係止孔45が破損することを防止できる。
【0055】
また、係止孔45が形成された金属部の強度と係止突起部17cの強度とを比較した場合、金属部の強度の方が高いため、係止孔45よりも先に係止突起部17cが破損することになる。しかし、係止突起部17cを有するオス型光コネクタ17は、光デバイス1に接続する光ファイバケーブル側のコネクタであるため、たとえ破損した場合であっても、光ファイバケーブル自体に破損はない。したがって、コネクタ付光ファイバケーブル2のコネクタ修復を行う場合、光ファイバケーブルは交換せず現状のものを使用し、ラッチ部17aが破損したオス型光コネクタ17のハウジング部を交換すればよく、この結果、メス型光コネクタ3が破損した場合に比して極めて安価且つ簡易にコネクタ付光ファイバケーブル2を修理することができる。
【0056】
以上、説明したように、本発明の実施の形態では、コネクタ付光ファイバケーブルのオス型光コネクタと光デバイスのメス型光コネクタとの接続をロックするラッチ構造において、オス型光コネクタに設けられたラッチ部に比して硬いメス型光コネクタの金属部に、このラッチ部の係止突起部が係止する係止孔を形成した。このため、メス型光コネクタの肉厚を薄くしても係止孔の形成部位の強度を係止突起部以上に維持することができ、これによって、両コネクタに対する衝撃、振動等の外力の印加が生じた場合であっても、係止孔の形成部位の強度劣化を抑制することができ、この結果、オス型光コネクタとメス型光コネクタとの接続が必要な光デバイスの小型化を促進しつつ、衝撃や振動に強い光デバイスを実現可能な光コネクタのロック構造を実現することができる。
【0057】
また、メス型光コネクタのハウジング部の挿入口に連続し且つメス型光コネクタへのオス型光コネクタの挿入長さを持つ開口部を形成する一対のガイド部をメス型光コネクタに設け、この開口部内に、オス型光コネクタが有するラッチ部のアーム部を挿入案内するように構成した。このため、オス型光コネクタは、このアーム部に対するガイド部の作用によって、メス型光コネクタへの挿入方向を規制されつつ、メス型光コネクタ内に挿入される。この結果、メス型光コネクタ内においてオス型光コネクタが不用意にぶれることを防止するとともに、メス型光コネクタ内へオス型光コネクタを円滑に挿入することができる。これによって、メス型光コネクタ内に収容された光素子とオス型光コネクタ内の光ファイバとを正確且つ容易に接続することができる。
【0058】
なお、上述した実施の形態では、メス型光コネクタハウジング20に天板(一対のガイド部23)を設けていたが、これに限らず、メス型光コネクタハウジング20は、図7に示すように、天板がなくてもよい。これによって、メス型光コネクタハウジング20をさらに小型化することができ、この結果、光デバイス1の更なる小型化を図ることができる。なお、このように天板を無くした場合、上述したシールドケース40の天板43が、図7に示すメス型光コネクタハウジング20の天板として機能すればよい。また、この天板43の内側、すなわちメス型光コネクタハウジング20側に、アーム部17bを挿入案内可能な幅に離間し且つオス型光コネクタ17の挿入長さを持ってオス型光コネクタ17の挿入方向に延伸する一対の凸部を設け、この一対の凸部を上述したガイド部23と同様に機能させてもよい。
【0059】
また、上述した実施の形態では、メス型光コネクタハウジング20に、開口部を形成する一対のガイド部23を天板として設けていたが、これに限らず、メス型光コネクタハウジング20は、図8に示すように、コネクタ収容部22の上部を覆う天板を備えてもよい。この場合、メス型光コネクタハウジング20の天板は、上述した一対のガイド部23を連続させた構造を有し、係止孔45に対応する係止孔26を備えればよい。また、図8に示すように、この天板の内側に、アーム部17bを挿入案内可能な幅に離間し且つオス型光コネクタ17の挿入長さを持ってオス型光コネクタ17の挿入方向に延伸する一対の凸部27を設け、この一対の凸部27を上述したガイド部23と同様に機能させてもよい。なお、図8に示すようなタイプのメス型光コネクタハウジング20であっても、上述した実施の形態と同様にシールドケース40を被せるようにし、シールドケース40の天板43とメス型光コネクタハウジング20の天板とが重なるように構成される。この場合、係止孔26は、シールドケース40の係止孔45に連通し、二重の係止孔構造を形成する。これによって、係止孔強度が一層増加する。
【0060】
さらに、上述した実施の形態では、係止孔45が形成された金属部をシールドケース40の天板43の後部44として構成し、この金属部とシールドケース40とを一体にしていたが、これに限らず、係止孔45が形成された金属部とシールドケース40とは別体であってもよい。例えば図9に示すように、係止孔45が形成された金属製の後部44をシールドケース40とは別体としてメス型光コネクタハウジング20の上部に取り付けてもよい。
【0061】
また、上述した実施の形態では、メス型光コネクタハウジング20とシールドケース40とを安定して固定するために、突起部25a,25bと開口部42a,42bとが形成されていたが、これに限らず、オス型光コネクタの高さに合わせ、シールドケース40がメス型光コネクタハウジング20に対して相対的に上または下にフレキシブルに動くようにしてもよい。例えば図10に示すように、メス型光コネクタハウジング20の側面部には、突起部25bを設けずに突起部25aを設け、シールドケース40の側面部には、開口部42bを設けずに上下方向に縦長の開口部42aを設ける。そして、このメス型光コネクタハウジング20にシールドケース40を被せるとともに開口部42aに突起部25aを摺動自在に嵌合する。このように構成すれば、オス型光コネクタ17のラッチ部17aの高さに応じ、シールドケース40がメス型光コネクタハウジング20に対して相対的に上または下にフレキシブルに動くので、延伸する係止部を基板に係止して所定の高さとなるようにシールドケース40を基板に固定すれば、一つのメス型光コネクタを用いて、ラッチ部の高さが異なる多種類のオス型光コネクタを挿入接続することができる。
【0062】
さらに、上述した実施の形態では、光デバイス1の一部を構成するメス型光コネクタ3に対して、コネクタ付光ファイバケーブル2のオス型光コネクタ17を接続していたが、これに限らず、本発明にかかるラッチ構造によってコネクタ接続をロックするオス型光コネクタおよびメス型光コネクタは、Wire to Wire接続における光ファイバケーブルの光コネクタであってもよい。
【0063】
また、上述した実施の形態では、オス型コネクタおよびメス型コネクタの一例として光コネクタを例示したが、これに限らず、本発明にかかるラッチ構造によってコネクタ接続をロックするオス型コネクタおよびメス型コネクタは、光コネクタではなく、メタルケーブルのコネクタであってもよい。
【0064】
さらに、上述した実施の形態では、2芯の光ファイバケーブルを用いており、光デバイスは光信号の送受信を行うものであるが、これに限らず、1芯または3芯以上の多芯の光ファイバケーブルを用いて、光信号の送信のみ、受信のみ、または送受信を行う光デバイスに適用してもよい。
【0065】
また、上述した実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1 光デバイス
2 コネクタ付光ファイバケーブル
3 メス型光コネクタ
4 基板
10 光ファイバ素線
10a 光ファイバ
10b 素線被覆部
11 抗張力体
12 外被覆部
13 保護ブーツ
14 かしめリング
15 フェルール
15a 先端面
15b 開口孔
15c 後端部
16 光ファイバ固定部材
17 オス型光コネクタ
17a ラッチ部
17b アーム部
17c 係止突起部
17d スリット
17e 位置決め部
18 固定部材
19 光ファイバケーブル
20 メス型光コネクタハウジング
21 光素子収容部
22 コネクタ収容部
23 ガイド部
24 規制部
25a,25b 突起部
26,45 係止孔
27 凸部
30 光素子
40 シールドケース
41 正面部
42 側面部
42a,42b 開口部
43 天板
44 後部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性部材によって形成されたラッチ部を有するオス型コネクタと、
前記オス型コネクタを挿入するハウジングと、前記ラッチ部に比して硬く、前記ラッチ部に対応する係止孔が形成された金属部とを有するメス型コネクタと、
を備え、前記ハウジング内に前記オス型コネクタを挿入するとともに、前記係止孔に前記ラッチ部を係止して前記オス型コネクタと前記メス型コネクタとを嵌合することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記オス型コネクタの挿入方向を規制するガイド部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記オス型コネクタは、前記ハウジングへの挿入方向に延伸するアーム部を備え、
前記ガイド部は、前記ハウジングの挿入口に連続し且つ前記ハウジングへの前記オス型コネクタの挿入長さを持つ開口部を形成する一対の天板であり、前記開口部内に前記アーム部を案内することによって、前記オス型コネクタの挿入方向を規制することを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記メス型コネクタは、前記ハウジングの挿入口を閉じずに前記ハウジングの外面に被せる金属製のシールドケースを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のコネクタ。
【請求項5】
前記金属部は、前記シールドケースと一体であることを特徴とする請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記オス型コネクタおよび前記メス型コネクタは、光コネクタであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のコネクタ。
【請求項7】
オス型コネクタに設けられ、弾性部材によって形成されたラッチ部と、
前記オス型コネクタを挿入するハウジングを備えたメス型コネクタに設けられ、前記ラッチ部に比して硬く、前記ラッチ部に対応する係止孔が形成された金属部と、
を備え、前記ハウジング内に前記オス型コネクタを挿入するとともに、前記係止孔に前記ラッチ部を係止して前記オス型コネクタと前記メス型コネクタとを嵌合することを特徴とするコネクタのロック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−11692(P2013−11692A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143354(P2011−143354)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】