説明

コンクリートカッタの制御装置

【課題】コンクリートの切断作業の状況に応じて機関回転数を、操作者によるスイッチ操作などの作業を増加させることなく制御して操作性および作業効率を向上させると共に、燃費を向上させつつ騒音を低減させるようにしたコンクリートカッタの制御装置を提供する。
【解決手段】検出された機関回転数NEとスロットル開度θTHに基づいて内燃機関の機関出力OPを推定し、推定された機関出力OPがしきい値OP1以上のとき(S24)、機関回転数NEを作業時回転数NEDaに上昇させる(S28)一方、機関出力OPがしきい値OP1未満のとき(S30)、機関回転数NEを作業停止時回転数NEDiに下降させる(S34)ように内燃機関のスロットルバルブを開閉する電動モータの駆動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリートカッタの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搭載された内燃機関で刃を回転させてコンクリートやアスファルトなどを切断するコンクリートカッタにおいて、従来、内燃機関は常に定格回転数で駆動される。しかしながら、コンクリートの切断作業を一時的に中断したり、コンクリートの切断方向を変更するためにコンクリートカッタを一旦後退させたりするような、いわゆるコンクリート切断作業停止時にあっては、内燃機関が定格回転数で駆動されると、内燃機関の出力が過大となり、燃費が悪化すると共に、騒音が大きくなるという不具合が生じる。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に記載されるコンクリートカッタのように、操作者がコンクリート切断作業時にあるか否かに応じてスイッチを操作し、その操作に基づいて機関回転数を作業時回転数と作業停止時回転数(作業時回転数より低く設定された機関回転数)とで切り換えるように構成したものが提案されている。
【特許文献1】特開平8−57843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したコンクリートカッタにおいて、操作者はコンクリートの切断作業に加え、その切断作業の状況に応じてスイッチを操作して機関回転数の切り換え(調整)作業を行う構成であることから、操作が煩雑になり、操作性および作業効率が悪化する不都合があった。また、スイッチの操作は、操作者の経験に基づいて行われるため、燃費の悪化あるいは、騒音の増加といった不具合の解消という点で満足できるものではなかった。
【0005】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決することにあり、コンクリートの切断作業の状況に応じて機関回転数を、操作者によるスイッチ操作などの作業を増加させることなく制御して操作性および作業効率を向上させると共に、燃費を向上させつつ騒音を低減させるようにしたコンクリートカッタの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、請求項1にあっては、搭載された内燃機関で刃を回転させてコンクリートなどを切断するコンクリートカッタの制御装置において、前記内燃機関のスロットルバルブを開閉するアクチュエータと、前記内燃機関の機関回転数を検出する機関回転数検出手段と、前記スロットルバルブのスロットル開度を検出するスロットル開度検出手段と、前記検出された機関回転数とスロットル開度に基づいて前記内燃機関の機関出力を推定する機関出力推定手段と、前記推定された機関出力がしきい値以上のとき、前記機関回転数を作業時回転数に上昇させるように前記アクチュエータの駆動を制御する機関回転数制御手段とを備えるように構成した。
【0007】
また、請求項2にあっては、前記機関回転数制御手段は、前記推定された機関出力が前記しきい値未満のとき、前記機関回転数を作業停止時回転数に下降させるように前記アクチュエータの駆動を制御するように構成した。
【0008】
また、請求項3にあっては、前記機関回転数制御手段は、前記推定された機関出力が第1の所定時間継続して前記しきい値以上のとき、前記機関回転数を作業時回転数に上昇させる一方、前記推定された機関出力が第2の所定時間継続して前記しきい値未満のとき、前記機関回転数を作業停止時回転数に下降させるように前記アクチュエータの駆動を制御するように構成した。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係るコンクリートカッタの制御装置においては、検出された機関回転数とスロットル開度に基づいて内燃機関の機関出力を推定し、推定された機関出力がしきい値以上のとき、機関回転数を作業時回転数に上昇させるように、内燃機関のスロットルバルブを開閉するアクチュエータの駆動を制御する如く構成したので、機関回転数をスイッチなどで調整する作業(操作)が必要ないことから、操作を簡素化することができ、操作性および作業効率を向上させることができる。また、機関出力がしきい値以上のとき、機関回転数を作業時回転数に上昇させる、逆にいえば、機関出力がしきい値未満のとき、機関回転数を作業時回転数に上昇させない(作業時回転数よりも低く設定された作業停止時回転数に保持する)ようにアクチュエータの駆動を制御する如く構成したので、機関出力が小さいとき、即ち、コンクリート切断作業停止時は、機関回転数を低い値に保持することができ、よって燃費を向上させつつ騒音を低減させることができる。
【0010】
また、請求項2にあっては、推定された機関出力がしきい値未満のとき、機関回転数を作業停止時回転数に下降させるようにアクチュエータの駆動を制御するように構成したので、上記した効果に加え、機関出力が低減したとき、即ち、コンクリート切断作業停止時に機関回転数を速やかに下降させることができるため、より効果的に燃費を向上させることができると共に、騒音を低減できる。
【0011】
また、請求項3にあっては、推定された機関出力が第1の所定時間継続してしきい値以上のとき、機関回転数を作業時回転数に上昇させる一方、推定された機関出力が第2の所定時間継続してしきい値未満のとき、機関回転数を作業停止時回転数に下降させるようにアクチュエータの駆動を制御するように構成したので、上記した効果に加え、機関出力の一時的な変動(燃料溜りなどに起因する偶発的な変動)に基づいて機関回転数を変更することがなく、よってコンクリートの切断作業の状況(コンクリート切断作業時とコンクリート切断作業停止時)に応じた機関回転数の切り換えをより的確に行うことができる。さらには、機関回転数が頻繁に切り替わる(ハンチングが生じる)のを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に即してこの発明に係るコンクリートカッタの制御装置を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、この実施の形態に係るコンクリートカッタの制御装置が搭載されるコンクリートカッタの側面図である。また、図2は、図1に示すコンクリートカッタの平面図である。
【0014】
図1および図2において、符号10はコンクリートカッタを示す。コンクリートカッタ10は、左右(図に矢印Aで示す進行方向において左右)の車輪12(図1に右側の車輪のみ示す)と、操作者に把持されるハンドルバー14L,14Rとを備えた手押し式のコンクリートカッタである。
【0015】
またコンクリートカッタ10は、フレーム16上に載置されて固定される内燃機関(以下「エンジン」という)18と、エンジン18で回転させられる円板状のブレード(刃)20とを備える。エンジン18は、リコイルスタータ22を備え、操作者によって手動で始動される。尚、図1および図2で符号24は、燃料タンクを示す。
【0016】
図3は、エンジン18の説明断面図である。
【0017】
エンジン18は、1個の気筒(シリンダ)28を備え、その内部にピストン30が往復動自在に収容される。ピストン30の頭部と気筒壁面の間には燃焼室32が形成されると共に、燃焼室32を臨む位置には吸気バルブ34と排気バルブ36が配置され、燃焼室32と吸気路38あるいは排気路40の間を開閉する。尚、エンジン18は、具体的にはガソリンを燃料とする空冷4サイクルの単気筒OHV型の内燃機関であり、163ccの排気量を備える。
【0018】
ピストン30はクランク軸18Sに連結され、クランク軸18Sはギヤを介してカム軸42と連結される。また、クランク軸18Sの一端にはフライホイール44が取り付けられると共に、フライホイール44の先端側には前記したリコイルスタータ22が取り付けられる。尚、クランク軸18Sの他端には、後述するエンジン側プーリが接続される。
【0019】
フライホイール44の内側には発電コイル(オルタネータ)46が配置され、交流電流を発電する。発電コイル46で発電された交流電流は、図示しない処理回路を介して直流電流に変換された後、ECU(後述)や点火回路(図示せず)などに動作電源として供給される。
【0020】
また、吸気路38の上流にはスロットルボディ48が配置される。尚、図3において、スロットルボディ48を収容するスロットルボディカバー(後述)は省略した。
【0021】
スロットルボディ48にはスロットルバルブ50が収容され、スロットルバルブ50はスロットル軸と減速ギヤ機構(共に図示せず)を介して電動モータ(アクチュエータ。具体的には、ステッピングモータ)52に接続される。また、スロットルボディ48においてスロットルバルブ50の上流側には、キャブレタ・アシー54(図1にのみ示す)が設けられる。キャブレタ・アシー54は、前記した燃料タンク24に接続され、スロットルバルブ50の開度に応じて吸入された空気にガソリン燃料を噴射して混合気を生成する。生成された混合気は、スロットルバルブ50、吸気路38および吸気バルブ34を通って気筒28の燃焼室32に吸入される。
【0022】
電動モータ52の付近にはスロットル開度センサ(スロットル開度検出手段)56が配置され、スロットルバルブ50の開度θTH(以下「スロットル開度θTH」という)に応じた信号を出力する。また、フライホイール44の付近には電磁ピックアップからなるクランク角センサ(機関回転数検出手段)58が配置され、所定クランク角度ごとにパルス信号を出力する。
【0023】
スロットル開度センサ56、クランク角センサ58などの各種センサの出力は、ECU(Electronic Control Unit。電子制御ユニット)60に入力される。尚、ECU60は、CPU,ROM,RAMおよびカウンタを備えたマイクロコンピュータからなり、スロットルボディ48付近に配置される。
【0024】
図1および図2の説明に戻ると、エンジン18の上方には、前記したスロットルボディカバー64が配置され、その内部にはスロットルボディ48、ECU60および図示しないエアクリーナなどが収容される。
【0025】
また、エンジン18の近傍には、マフラー66が配置される。マフラー66は前記した排気管40に接続され、エンジン18の排気音を低減させる。
【0026】
エンジン18のクランク軸18Sは、図2に示す如く、エンジン側プーリ70に巻き掛けられたベルト72を介し、ブレード20の回転軸20Sに取り付けられたブレード側プーリ74と接続される。従って、ブレード20は、ベルト72によってエンジン18の回転出力が回転軸20Sに伝達されて回転させられる。尚、ブレード20の回転軸20Sは図示しないブレードフレームによって回転自在に支持される。
【0027】
エンジン側プーリ70およびブレード側プーリ74の付近には、それらを被覆するようにプーリカバー76が配置されると共に、ブレード20の付近には、半円形状を呈したブレードカバー78がブレード20を被覆するように配置される。また、フレーム16の前方には、コンクリートカッタ10を前方に直進移動させるときに移動目標となる補助輪80が2本のアーム82を介して取り付けられる。
【0028】
左右のハンドルバー14L,14Rの間には、操作盤84が設けられる。操作盤84には、エンジン18の回転数(アイドリング回転数よりも高く設定された作業時回転数)を変更(調整)するダイヤル86と、エンジン停止スイッチ88が設けられる。
【0029】
ダイヤル86の付近にはダイヤルセンサ90が配置され、操作者によってダイヤル86を介して入力されたエンジン回転数(作業時回転数)に応じた信号をECU60へ出力する。また、エンジン停止スイッチ88は、操作者によって操作されたとき、エンジン18の停止指示信号をECU60へ出力する。
【0030】
右のハンドルバー14Rの下方には、オートスロットルレバー92が設けられる。オートスロットルレバー92の付近には、オートスロットルスイッチ94が配置され、操作者によってオートスロットルレバー92が操作されたとき、オン信号を出力する一方、然らざるときはオフ信号をECU60へ出力する。
【0031】
次いで、コンクリートカッタ10のECU60におけるエンジン回転数制御を、図4を参照して説明する。
【0032】
図4は、コンクリートカッタのエンジン回転数制御の構成を機能的に示すブロック図である。
【0033】
ECU60には、スロットル開度センサ56、クランク角センサ58の出力が入力される。ECU60は、クランク角センサ58の出力パルスをカウントしてエンジン回転数(機関回転数)NEを検出(算出)し、検出されたエンジン回転数NE、スロットル開度θTHに基づき、エンジン回転数NEが目標エンジン回転数NED(後述)に一致するように電動モータ52の通電指令値を算出すると共に、算出した通電指令値を電動モータ52に出力してその駆動を制御する。
【0034】
さらに、ECU60には、操作者によってダイヤル86(換言すれば、ダイヤルセンサ90)を介して操作者が所望するエンジン回転数(作業時回転数)NEDaが入力される。
【0035】
このように、この実施例に係るコンクリートカッタ10は、電動モータ52を含むスロットルボディ48、ECU60および各種センサなどからなる電子制御式のスロットル装置(電子ガバナ)によってスロットルバルブ50を開閉し、エンジン18の吸入空気量を調量することによってエンジン回転数NEを目標エンジン回転数NEDに制御すると共に、目標エンジン回転数NEDを操作者によって入力された作業時回転数NEDaに変更することで、エンジン回転数NEを調整できるようにした。尚、この明細書において上記したような制御を「オートスロットル制御」という。
【0036】
また、ECU60には、オートスロットルスイッチ94から出力されたオン信号あるいはオフ信号(即ち、操作者によってオートスロットルレバー92が操作されたか否か)が入力され、操作者がオートスロットル制御の実行を所望しているか否かを検出するようにした。
【0037】
次いで、図5以降を参照してこの実施例に係るコンクリートカッタの制御装置の動作、具体的には、目標エンジン回転数NEDの設定処理について説明する。
【0038】
図5は、その動作を示すフローチャートである。図示のプログラムは、ECU60において所定の周期(例えば、20[msec])ごとに実行される。
【0039】
以下説明すると、先ずS10において、オートスロットルスイッチ94(図5において「オートスロットルSW」と示す)がオン信号を出力しているか否か判断する。S10で否定されるときは、操作者がオートスロットル制御の実行を所望しない(具体的には、操作者がコンクリートの切断作業の状況に応じた目標エンジン回転数NEDの設定を所望していない、あるいは目標エンジン回転数NEDを作業停止時回転数NEDi(アイドリング回転数。例えば、2000[rpm]とする)に維持することを所望している)と判断できるため、以降の処理をスキップする。
【0040】
一方、S10で肯定されるときはS12に進み、エンジン回転数NEを検出すると共に、検出したエンジン回転数NEをECU60のRAMに格納(保存)する。次いでS14に進み、エンジン回転数NEの検出値が所定サイクル分(例えば、10サイクル分)格納されたか否か判断する。S14で否定されるときは以降の処理をスキップする一方、肯定されるときはS16に進み、エンジン回転数平均値NEavgを算出する。エンジン回転数平均値NEavgは、格納した所定サイクル分(10サイクル分)のエンジン回転数NEの平均値である。
【0041】
次いでS18に進み、スロットル開度θTHの現在値を検出すると共に、S20に進んで操作者によってダイヤル86およびダイヤルセンサ90を介して入力された作業時回転数NEDa(アイドリング回転数(作業停止時回転数NEDi)よりも高く設定されたエンジン回転数。例えば、3600[rpm]とする)を検出する。
【0042】
次いでS22に進み、エンジン18の目標エンジン回転数NEDが作業停止時回転数NEDiに設定されているか否か判断する。尚、目標エンジン回転数NEDは、ECU60の起動時に作業停止時回転数NEDiに設定されることから、ここでの判断は通常肯定される。
【0043】
S22で肯定されるときは、S24に進み、エンジン出力(機関出力)OPがしきい値OP1以上か否か、換言すれば、コンクリートカッタ10がコンクリートの切断作業を実行しているか否か検出する。
【0044】
ここで、コンクリートの切断作業が実行されているか否かの判断について概説する。
【0045】
図6は、コンクリート切断作業時およびコンクリート切断作業停止時のエンジン回転数NEに対するエンジン出力OPの特性を示すグラフである。尚、エンジン出力OPは、エンジン負荷を表す値(パラメータ)である。
【0046】
エンジン回転数NEに対するエンジン出力OPの特性は、図6に示す如く、コンクリート切断作業時とコンクリート切断作業停止時で大きく異なる(2極化されている)。この特性に基づいて、エンジン出力OPがしきい値OP1(例えば、1.0[PS]とする)以上か否かを判断することで、コンクリート切断作業時であるか否かを判断するようにした。
【0047】
図7は、エンジン出力OPがしきい値OP1のときにおける、作業停止時回転数NEDi(アイドリング回転数)からNEDmax(作業時回転数NEDaが取り得る最大値)までのエンジン回転数NEに対するスロットル開度θTHの特性を示すグラフである。
【0048】
図7に示す如く、エンジン出力OPが一定の値(所定値。例えば、しきい値OP1)であるときのエンジン回転数NEに対するスロットル開度θTHは、予め実験を通じてマップ化することができる。即ち、現在のエンジン回転数NEから、エンジン出力OPがしきい値OP1であるときのスロットル開度を求めることができる。例えば、エンジン回転数NEが作業停止時回転数NEDiであるときのスロットル開度はθTHref(以下「スロットル開度しきい値θTHref」という)となる。
【0049】
そこで、この実施例では、現在のスロットル開度θTHと前記スロットル開度しきい値θTHrefを比較し、スロットル開度θTHがスロットル開度しきい値θTHref以上であれば、現在のエンジン出力OPがしきい値OP1以上であると推定する、即ち、コンクリートの切断作業が実行されていると判断するようにした。一方、スロットル開度θTHがスロットル開度しきい値θTHref未満であれば、現在のエンジン出力OPがしきい値OP1未満であると推定する、即ち、コンクリートの切断作業が実行されていないと判断するようにした。尚、エンジン回転数NEが作業時回転数NEDaであるときも同様に、図示の特性からスロットル開度しきい値θTHrefを求めることができる。
【0050】
図5の説明に戻ると、S24において前述した如く、エンジン回転数平均値NEavg(概略的には、エンジン回転数NE)およびスロットル開度θTHに基づいてエンジン出力OPがしきい値OP1以上か否か、即ち、コンクリートの切断作業が実行されているか否かを判断する。
【0051】
S24で肯定されるとき(コンクリートの切断作業が実行されていると判断されるとき)はS26に進み、エンジン出力OPが第1の所定時間t1にわたって(継続して)しきい値OP1以上であるか否か判断する。尚、この判断は、S24で肯定されたときに図示しない別のプログラムでカウンタをスタートさせ、そのカウンタ値が第1の所定時間t1(例えば、1[sec])に達したか否か確認することによって行われる。
【0052】
S26で肯定されるときはS28に進み、目標エンジン回転数NEDをS20で検出した作業時回転数NEDaに変更する(上昇させる)。これにより、ECU60は、エンジン回転数NEが変更された目標エンジン回転数NEDに一致するように電動モータ52の駆動を制御し、よってエンジン回転数NEを上昇させる。
【0053】
一方、S24あるいはS26で否定されるとき(コンクリートの切断作業が実行されていないと判断されるとき)は、S28の処理をスキップして目標エンジン回転数NEDを作業停止時回転数NEDiに維持する。
【0054】
S28で目標エンジン回転数NEDが作業時回転数NEDaに変更されると、次回のプログラム実行時はS22で否定されてS30に進み、エンジン出力OPがしきい値OP1未満か否か、即ち、コンクリートの切断作業が停止された(実行されていない)か否かを判断する。
【0055】
S30で否定されるとき(コンクリートの切断作業が実行されていると判断されるとき)は以降の処理をスキップし、目標エンジン回転数NEDを作業時回転数NEDaに維持する一方、肯定されるとき(コンクリートの切断作業が実行されていないと判断されるとき)はS32に進み、第2の所定時間t2にわたって(継続して)エンジン出力OPが所定値OP1未満か否か判断する。尚、この判断もS26同様に、S30で肯定されたときにスタートするカウンタのカウンタ値が第2の所定時間t2(例えば、1[sec])に達したか確認することによって行われる。
【0056】
S32で否定されるときは、目標エンジン回転数NEDを作業時回転数NEDaに維持する一方、肯定されるときはS34に進み、目標エンジン回転数NEDを作業停止時回転数NEDiに変更する(下降させる)。これにより、ECU60は、エンジン回転数NEが変更された目標エンジン回転数NEDに一致するように電動モータ52を制御し、よってエンジン回転数NEが下降する。
【0057】
このように、この実施例にあっては、検出されたエンジン回転数NEとスロットル開度θTHに基づいてエンジンのエンジン出力OPを推定し、推定されたエンジン出力OPがしきい値OP1以上のとき、エンジン回転数NEを作業時回転数NEDaに上昇させるように、エンジンのスロットルバルブ50を開閉する電動モータ52の駆動を制御する如く構成したので、エンジン回転数をスイッチなどで調整する作業(操作)が必要ないことから、コンクリートの切断作業の操作を簡素化することができ、操作性および作業効率を向上させることができる。
【0058】
また、エンジン出力OPがしきい値OP1以上のとき、エンジン回転数NEを作業時回転数NEDaに上昇させる、逆にいえば、エンジン出力OPがしきい値OP1未満のとき、エンジン回転数NEを作業時回転数NEDaに上昇させない(作業時回転数NEDaよりも低く設定された作業停止時回転数NEDiに保持(維持)する)ように電動モータ52の駆動を制御する如く構成したので、エンジン出力OPが小さいとき、即ち、コンクリート切断作業停止時は、エンジン回転数NEを低い値に保持することができ、よって燃費を向上させつつ騒音を低減させることができる。
【0059】
また、推定されたエンジン出力OPがしきい値OP1未満のとき、エンジン回転数NEを作業停止時回転数NEDiに下降させるように電動モータ52の駆動を制御するように構成したので、エンジン出力OPが低減したとき、即ち、コンクリート切断作業停止時にエンジン回転数NEを速やかに下降させることができるため、より効果的に燃費を向上させることができると共に、騒音を低減できる。
【0060】
また、推定されたエンジン出力OPが第1の所定時間t1継続してしきい値OP1以上のとき、エンジン回転数NEを作業時回転数NEDaに上昇させる一方、エンジン出力OPが第2の所定時間t2継続してしきい値OP1未満のとき、エンジン回転数NEを作業停止時回転数NEDiに下降させるように電動モータ52の駆動を制御するように構成したので、エンジン出力OPの一時的な変動(燃料溜りなどに起因する偶発的な変動)に基づいてエンジン回転数NEを変更することがなく、よってコンクリートの切断作業の状況(コンクリート切断作業時とコンクリート切断作業停止時)に応じたエンジン回転数NEの切り換えをより的確に行うことができる。さらには、エンジン回転数NEが頻繁に切り替わる(ハンチングが生じる)のを防止することができる。
【0061】
以上の如く、この発明の第1実施例にあっては、搭載された内燃機関(エンジン18)で刃(ブレード20)を回転させてコンクリートなどを切断するコンクリートカッタ(10)の制御装置において、前記内燃機関のスロットルバルブ(50)を開閉するアクチュエータ(電動モータ52)と、前記内燃機関の機関回転数(エンジン回転数NE)を検出する機関回転数検出手段(クランク角センサ58、図5フローチャートのS12,S16)と、前記スロットルバルブのスロットル開度(θTH)を検出するスロットル開度検出手段(スロットル開度センサ56、図5フローチャートのS18)と、前記検出された機関回転数とスロットル開度に基づいて前記内燃機関の機関出力(エンジン出力OP)を推定する機関出力推定手段(ECU60。図5フローチャートのS24)と、前記推定された機関出力がしきい値(OP1)以上のとき、前記機関回転数を作業時回転数(NEDa)に上昇させるように前記アクチュエータの駆動を制御する機関回転数制御手段(ECU60。図5フローチャートのS28)とを備えるように構成した。
【0062】
また、前記機関回転数制御手段は、前記推定された機関出力(OP)が前記しきい値(OP1)未満のとき(図5フローチャートのS30)、前記機関回転数(NE)を作業停止時回転数(NEDi)に下降させるように前記アクチュエータ(52)の駆動を制御する(図5フローチャートのS34)ように構成した。
【0063】
また、前記機関回転数制御手段は、前記推定された機関出力(OP)が第1の所定時間(t1)継続して前記しきい値(OP1)以上のとき(図5フローチャートのS24,S26)、前記機関回転数(NE)を作業時回転数(NEDi)に上昇させる一方、前記推定された機関出力が第2の所定時間(t2)継続して前記しきい値未満のとき(図5フローチャートのS30,S32)、前記機関回転数を作業停止時回転数(NEDi)に下降させるように前記アクチュエータ(52)の駆動を制御するように構成した。
【0064】
尚、上記において、作業時回転数NEDa、作業停止時回転数NEDi、しきい値OP1、第1および第2所定時間t1,t2の数値を具体的に示したが、その値に限られない。
【0065】
また、スロットルバルブ50を開閉するアクチュエータとしてステッピングモータを使用したが、DCモータやロータリーソレノイドなど、他のアクチュエータを使用するようにしてもよい。
【0066】
また、オートスロットルスイッチ94は、オートスロットルレバー92が操作されているときにオン信号を出力するように構成したが、オートスロットルレバー92にロック機構などを配置し、オートスロットルレバー92が操作者によって操作されると、ロック(固定)されると共に、オートスロットルスイッチ94はオートスロットルレバー92がロックされる間継続してオン信号を出力するように構成してもよい。
【0067】
また、コンクリートカッタ10は手押し式である如く構成したが、操作盤84付近に車輪12と接続される回転ハンドルを設けると共に、回転ハンドルを回転させることで車輪12を回転させて移動する、いわゆる半自走式であってもよく、さらにはエンジン18の回転出力が車輪12の軸に伝達されて移動する、いわゆる自走式であってもよい。
【0068】
また、ブレード20を油圧装置などを用いて昇降させてコンクリートの切断深度を調整するような構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】この発明の第1実施例に係るコンクリートカッタの制御装置が搭載されるコンクリートカッタの側面図である。
【図2】図1に示すコンクリートカッタの平面図である。
【図3】図1に示すエンジンの説明断面図である。
【図4】図1に示すコンクリートカッタの制御装置のエンジン回転数制御の構成を機能的に示すブロック図である。
【図5】図1に示すコンクリートカッタの制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】図1に示すコンクリートカッタのエンジン回転数に対するエンジン出力の特性を示すグラフである。
【図7】図1に示すコンクリートカッタのエンジン出力がしきい値のときにおけるエンジン回転数に対するスロットル開度の特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0070】
10 コンクリートカッタ、18 エンジン(内燃機関)、20 ブレード(刃)、50 スロットルバルブ、52 電動モータ(アクチュエータ)、58 クランク角センサ(機関回転数検出手段)、56 スロットル開度センサ(スロットル開度検出手段)、60 ECU(機関回転数制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載された内燃機関で刃を回転させてコンクリートなどを切断するコンクリートカッタの制御装置において、前記内燃機関のスロットルバルブを開閉するアクチュエータと、前記内燃機関の機関回転数を検出する機関回転数検出手段と、前記スロットルバルブのスロットル開度を検出するスロットル開度検出手段と、前記検出された機関回転数とスロットル開度に基づいて前記内燃機関の機関出力を推定する機関出力推定手段と、前記推定された機関出力がしきい値以上のとき、前記機関回転数を作業時回転数に上昇させるように前記アクチュエータの駆動を制御する機関回転数制御手段とを備えることを特徴とするコンクリートカッタの制御装置。
【請求項2】
前記機関回転数制御手段は、前記推定された機関出力が前記しきい値未満のとき、前記機関回転数を作業停止時回転数に下降させるように前記アクチュエータの駆動を制御することを特徴とする請求項1記載のコンクリートカッタの制御装置。
【請求項3】
前記機関回転数制御手段は、前記推定された機関出力が第1の所定時間継続して前記しきい値以上のとき、前記機関回転数を作業時回転数に上昇させる一方、前記推定された機関出力が第2の所定時間継続して前記しきい値未満のとき、前記機関回転数を作業停止時回転数に下降させるように前記アクチュエータの駆動を制御することを特徴とする請求項1または2記載のコンクリートカッタの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−170037(P2006−170037A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−362348(P2004−362348)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】