説明

ゴム様弾性体製品

【課題】 水性塗料や水性接着剤を確実にむらなく塗布することのできる、ゴムや樹脂で形成されたゴム様弾性体製品を提供する。
【解決手段】 水性塗料や水性接着剤を確実にむらなく塗布(付着)させることのできるゴム様弾性体で形成した製品であり、製品本体2の塗装面S1または接着面S2に、中心線平均粗さRaが5μm〜1000μmの連続する凹凸模様3を形成する。また、凹凸模様3を、シボ3aまたは多数のスリット3bで形成する。これにより、ぬれ性を高め、水性塗料や水性接着剤をむらなく塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料や水性接着剤を、はじくことなく、その塗装面または接着面に塗布することのできる、EPDMゴムなどのゴム材およびTPE樹脂などの樹脂材を含む、いわゆるゴム様弾性体製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用のウエザーストリップや建物の目地材は、EPDMゴムやTPE樹脂などのゴム様弾性体で形成されている。こうしたゴム様弾性体製品は、その表面に水性塗料や水性接着剤を塗布する必要が多々ある。例えば、ドアウエザーストリップや目地材の視覚される部分には水性塗料が塗布され、また、ベルトラインウエザーストリップのドアガラスに摺接する部分には、植毛を貼着するために水性接着剤が塗布される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、こうしたゴム様弾性体製品に塗布された水性塗料や水性接着剤は、その表面ではじかれて水玉状となり、実質上、むらなく塗布され難いのが現状である。これは、EPDMゴムやTPE樹脂などで形成したゴム様弾性体製品は、表面のぬれ性(ぬれ指数、ぬれ張力)が小さいため、水を多く含んだ水性塗料や水性接着剤が、その高い表面張力によって、ゴム様弾性体製品の表面をはじいた状態となって水玉を形成してしまうことによるものである。
【0004】
ちなみに、固体は、そのぬれ性(ぬれ指数、ぬれ張力)の値が高いほど、液体にぬれ易いことを意味し、ぬれを付着の指標とする場合には、ぬれ性の値が大きいほど付着性が良いといえる(株式会社産業技術サービスセンター1989年8月3日初版発行「プラスチックのコーティング技術総覧;6.4付着の最適条件」より)。
【0005】
本発明はこうした点に鑑み創案されたもので、水性塗料や水性接着剤を確実にむらなく塗布することのできる、ゴムや樹脂で形成されたゴム様弾性体製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
用語の説明・・中心線平均粗さRaとは、図6(a)、(b)に示すように、粗さ曲線?(x)を求めてこれを中心線M−Mから折返し、同図の斜線部分の面積を測定長さLで割った値で表したものである(理工学社1986年8月20日発行「JISにもとづく機械設計製図便覧;第5版;第17章機械製図;17.12面の肌の図示方法;4.表面粗さの種類;(1)中心線平均粗さ」より)
ABS:アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体
EPDM:エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体
NBR:ニトリルゴム
NR:天然ゴム
PE:ポリエチレン
PP:ポリプロピレン
SBR:スチレンブタジエンゴム
TPE:熱可塑性エラストマー
TPO:オレフィン系熱可塑性エラストマー
【0007】
図1乃至図5を参照して説明する。請求項1に記載のゴム様弾性体製品1は、ゴム様弾性体で形成され、製品本体2の塗装面S1または/および接着面S2に、水性塗料または/および水性接着剤を確実にむらなく塗布(付着)することのできる製品であって、製品本体2の塗装面S1または/および接着面S2に、中心線平均粗さRaが5μm〜1000μmの連続する凹凸模様3が形成されているものである。
【0008】
請求項2に記載のゴム様弾性体製品1は、ゴム様弾性体で形成され、製品本体2の塗装面S1または/および接着面S2に、水性塗料または/および水性接着剤を確実にむらなく塗布することのできる製品であって、前記塗装面S1または/および接着面S2に、中心線平均粗さRaが5μm〜1000μmの連続する凹凸模様3が形成されているものである。また、前記凹凸模様3は、シボ3aまたは多数のスリット3bで形成されたものである。なお、スリット3bとは切込み形状を意味するもので、これには溝形状を含む(以下、同じ)。
【0009】
請求項3に記載のゴム様弾性体製品1は、ゴム様弾性体のうち、EPDMゴムまたはTPE樹脂で形成され、製品本体2の塗装面S1または/および接着面S2に、水性塗料または/および水性接着剤を確実にむらなく塗布することのできる製品であって、製品本体2の塗装面S1または/および接着面S2に、中心線平均粗さRaが5μm〜1000μmの連続する凹凸模様3が形成されているものである。また、前記凹凸模様3は、シボ3aまたは多数のスリット3bで形成されたものである。
【0010】
請求項4に記載のゴム様弾性体製品1は、請求項1乃至3の発明において、製品本体2が、自動車用のウエザーストリップ10、または建築用の目地材20である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載のゴム様弾性体製品1は、製品本体2の塗装面S1または接着面S2に、中心線平均粗さRaが5μm〜1000μmの凹凸模様3が形成されているので、その凹凸模様3が、表面張力の高い水性塗料や水性接着剤によって形成される水玉を破壊する作用を発揮し、これにより、当該塗装面S1または接着面S2のぬれ性を高めることができる。これによって水性塗料および水性接着剤は薄膜状に広がるため、当該塗装面S1および接着面S2に確実にむらなく塗布(付着)される。
【0012】
請求項2に記載のゴム様弾性体製品1は、請求項1に記載の発明と同様に、その塗装面S1または接着面S2に水性塗料や水性接着剤を確実にむらなく塗布することができる。また、凹凸模様3をシボ3aで形成した場合には、いわゆるシボ模様を現出し、外観性に優れる。また、凹凸模様3を多数のスリット3bで形成した場合には、いわゆるスリット模様を現出し、外観の見栄えを高めることができる。
【0013】
請求項3に記載のゴム様弾性体製品1は、請求項1および2に記載の発明と同様に、その塗装面S1または接着面S2に水性塗料や水性接着剤を確実にむらなく塗布することができる。また、シボ模様やスリット模様を現出し、外観性に優れる。
【0014】
さらに、ゴム様弾性体のうち、EPDMゴムまたはTPE樹脂(中でもTPO樹脂)を使用しているが、これらのぬれ性(ぬれ指数、ぬれ張力)は、30dyn/cmと、他のゴム様弾性体と比較して低く(例えば、ABS樹脂は38dyn/cm、EPOXY樹脂は40dyn/cm)、水性塗料や水性接着剤をむらなく塗布することが困難であったが、凹凸模様を形成したことで確実にむらなく塗布することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載のゴム様弾性体製品1は、製品本体2が、自動車用のウエザーストリップ10、または建築用の目地材20であるので、当該ウエザーストリップ10や目地材20に必要とされる滑性や外観性を高めるための塗料等を環境にやさしい水性とし、これら製品の塗装面S1または接着面S2に水性塗料や水性接着剤を確実にむらなく塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係るゴム様弾性体製品1の第一実施形態を、図1に示す。これは、自動車のドアガラスに摺接するウエザーストリップ(グラスラン)10であり、EPDMゴムで形成したものである。このウエザーストリップ10は、製品本体2の直線部分を押出成形によって形成し、コーナー部を型成形によって形成し、押出成形部でありドアガラスが摺接するリップ部13の接着面S2に多数のスリット3bで形成した凹凸模様3を形成し、型成形部の塗装面S1にシボ3aで形成した凹凸模様3を形成している。
【0017】
これにより、リップ部13並びに型成形部には水性塗料がむらなく塗布できるようにしている。なお、リップ部13並びに型成形部には、水性塗料ではなく水性接着剤を塗布し、水性接着剤を介して植毛を貼着することもできる。
【0018】
スリット3bの形成は、押出成形機の口金にスリット加工を施すことによって行うことができ、また、シボ3aの形成は、金型にシボ加工を施すことによって行うことができる。なお、押出成形部にシボ3aを形成することもでき、型成形部にスリット3bを形成することもできる。この場合、押出成形機の口金から押出した直後の塑性変化しやすいゴム様弾性体にシボ加工を施し、金型にスリット加工を施して行うことができる。
【0019】
本発明に係るゴム様弾性体製品1の第二実施形態を、図2に示す。これは、自動車用のドアに取付けられるウエザーストリップ10で、EPDMゴムで成形されている。このドアウエザーストリップ10の中空シール部11の塗装面S1には、多数のスリット3bで形成した凹凸模様3を形成している。これにより、中空シール部11の塗装面S1のぬれ性を高めることができ、当該塗装面S1に、水性塗料を確実にむらなく塗布することができる。なお、凹凸模様3は、シボ3aで形成することもできる。
【0020】
本発明に係るゴム様弾性体製品1の第三実施形態を、図3に示す。これは自動車用のボディに形成されたドア開口部に取付けられるウエザーストリップ(オープニングシール)10で、EPDMゴムで形成されている。このウエザーストリップ10の中空シール部11と取付基部12と内装トリム14の塗装面S1に、スリット3bで形成した凹凸模様3を成形し、当該塗装面S1に水性塗料をむらなく塗布できるようにしている。なお、凹凸模様3は、シボ3aで形成することもできる。なお、15は芯材である。
【0021】
本発明に係るゴム様弾性体製品1の第四実施形態を、図4に示す。これは、自動車のベルトラインに沿って取付けられ、ドアガラスに摺接するウエザーストリップ(ベルトラインウエザーストリップ)10であり、EPDMゴムで形成されたものである。このウエザーストリップ10のリップ部13の接着面S2には、スリット3bによって形成された凹凸模様3が形成されており、これによって、この接着面S2に水性塗料がむらなく塗布できるようにしている。なお、凹凸模様3をシボ3aで形成しても同様の効果を得ることができる。
【0022】
本発明に係るゴム様弾性体製品1の第五実施形態を、図5に示す。これは、TPE樹脂(またはEPDMゴム)で形成された建物用の目地材20であり、その塗装面(外表面)S1にシボ3aで形成した凹凸模様3を形成している。これにより、当該塗装面S1に水性塗料がむらなく塗布されるように設定し、建物の外観性を高めている。なお、凹凸模様3をスリット3bで形成することも可能である。
【0023】
上記実施形態に係るゴム様弾性体製品1は、いずれもEPDMゴムまたはTPE樹脂(例えばTPO樹脂)で形成したものである。両者のぬれ性(ぬれ指数、ぬれ張力)は、30dyn/cm程度と小さいため、凹凸模様3を形成することによってぬれ性を高め、水性塗料及び水性接着剤の付着性を高めることがきわめて有効である。
【0024】
なお、本発明に係るゴム様弾性体製品1は、EPDMゴムおよびTPE樹脂で形成した製品に限定されるものではなく、それよりぬれ性の高い(あるいは低い)他のゴム(NBR、NR、SBR等)や樹脂(PP、PEなど)で形成した製品にも適用することができる。
【実施例】
【0025】
本発明者らは、本発明に係るゴム様弾性体製品1のぬれ性を確認すべく、実験を行った。その結果を、表1に示す。この実験は、TPE樹脂で形成した製品とEPDMゴムで形成した製品を使用して行ったものであり、共に型成型によってその塗装面S1または接着面S2にシボ3aによる凹凸模様3を形成している。本発明に係るゴム様弾性体製品1の凹凸模様3の表面中心線平均粗さRaは6μmに設定し、比較する製品のRaは4μmに設定した。そして、まず、両者の表面に水(表面張力73dyn/cm)を滴下した。
【0026】









【0027】
このことから、本発明に係るゴム様弾性体製品1は、その表面に、水を多く含む水性塗料と水性接着剤を塗布した場合に、当該水性塗料と水性接着剤は、当該表面をはじくことなく、むらなく塗布されることが理解できる。
【0028】
なお、凹凸模様3の表面中心線平均粗さ(Ra)は6μmに限定されるものではなく、5μm〜1000μmの範囲で、比較製品より優れたぬれ性を発揮することを確認した。ここで、Raが4μm以下であると凹凸が小さすぎて水玉を破壊する作用を発揮せず、逆に、1000μmを超えると凹凸が大きすぎて水玉を破壊する作用を発揮しないと考える。
【0029】
ちなみに、比較製品に表面張力が水より小さい40dyn/cmの液体を滴下した場合も、その液体は表面をはじいてむらを生じさせた。また、さらに表面張力の小さい液体(30dyn/cm)を滴下した結果、この液体はむらなくその表面に広がった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(イ)は本発明に係るゴム様弾性体製品の第一実施形態を示す要部斜視図であり、二つの円内に当該部分の断面拡大図を示す。(ロ)は(イ)の左側の円内のスリットの別なパターンを示す。
【図2】本発明に係るゴム様弾性体製品の第二実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明に係るゴム様弾性体製品の第三実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明に係るゴム様弾性体製品の第四実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明に係るゴム様弾性体製品の第五実施形態を示す断面図である。
【図6】中心線平均粗さの求め方を示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ゴム様弾性体製品
2 製品本体
3 凹凸模様
3a シボ
3b スリット
10 ウエザーストリップ
11 中空シール部
12 取付基部
13 リップ部
14 内装トリム
15 芯材
20 目地材
S1 塗装面
S2 接着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム様弾性体で形成され,製品本体(2)の塗装面(S1)または/および接着面(S2)に,水性塗料または/および水性接着剤を確実にむらなく塗布することのできる製品であって、前記塗装面または/および接着面に,中心線平均粗さ(Ra)が5μm〜1000μmの凹凸模様(3)が形成されていることを特徴とするゴム様弾性体製品。
【請求項2】
ゴム様弾性体で形成され,製品本体(2)の塗装面(S1)または/および接着面(S2)に,水性塗料または/および水性接着剤を確実にむらなく塗布することのできる製品であって、前記塗装面または/および接着面に,中心線平均粗さ(Ra)が5μm〜1000μmの連続する凹凸模様(3)が形成されており、前記凹凸模様は,シボ(3a)または多数のスリット(3b)で形成されていることを特徴とするゴム様弾性体製品。
【請求項3】
ゴム様弾性体のうち,EPDMゴムまたはTPE樹脂で形成され,製品本体(2)の塗装面(S1)または/および接着面(S2)に,水性塗料または/および水性接着剤を確実にむらなく塗布することのできる製品であって、前記塗装面または/および接着面に,中心線平均粗さ(Ra)が5μm〜1000μmの連続する凹凸模様(3)が形成されており、前記凹凸模様は,シボ(3a)または多数のスリット(3b)で形成されていることを特徴とするゴム様弾性体製品。
【請求項4】
製品本体(2)が、自動車用のウエザーストリップ(10)、または建築用の目地材(20)であることを特徴とする請求項1、2または3に記載のゴム様弾性体製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−12738(P2010−12738A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176642(P2008−176642)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】