サメ軟骨の抽出物、その製造方法及び使用
【課題】新規な抗炎症剤の提供。
【解決手段】コラーゲン分解性または炎症性を有する疾患または障害の治療のための組成物であって、活性成分としてサメ軟骨抽出物を含んで成り、該サメ軟骨抽出物は全サメ軟骨の水性均質化物の遠心分離の後に得られる上清の画分であり、該画分は、前記上清を500kDaの分子量カットオフ値を有する膜上で分画して回収したものであって、500kDa未満の分子量の分子を有し且つ抗−コラーゲン溶解活性および抗−炎症活性を有する、ことを特徴とする組成物。
【解決手段】コラーゲン分解性または炎症性を有する疾患または障害の治療のための組成物であって、活性成分としてサメ軟骨抽出物を含んで成り、該サメ軟骨抽出物は全サメ軟骨の水性均質化物の遠心分離の後に得られる上清の画分であり、該画分は、前記上清を500kDaの分子量カットオフ値を有する膜上で分画して回収したものであって、500kDa未満の分子量の分子を有し且つ抗−コラーゲン溶解活性および抗−炎症活性を有する、ことを特徴とする組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
軟骨は無血管化された組織であり、そして抗血管形成因子を含有する潜在的候補として研究されてきている。また、軟骨は腫瘍発生に対して比較的耐性の組織である。軟骨に関連する腫瘍、すなわち、軟骨肉腫は、充実腫瘍のうちで血管化が最も少ないものである。血管形成は、腫瘍の発生において重要な因子の1つのである。腫瘍細胞が隣接血管網状組織を誘発して拡張させて、それらの栄養要求物を供給できる場合、離散した充実腫瘍の塊が現れる。したがって、血管形成に関係する因子は腫瘍および抗血管形成因子の発生における役割について研究されてきており、さらに、血管形成阻害活性を有する薬剤は、また、腫瘍の増殖を抑制するか、または腫瘍を退行させるツールとして研究されてきている。
【0002】
仔ウシの肩甲骨の軟骨は、充実腫瘍の血管化を阻害する物質を含有することが発見された(Langer et al.、1976)。それは抗腫瘍剤としての可能性を促進するために、軟骨のより大きい供給源が探索されてきている。
【0003】
サメはこの種類の血管形成インヒビターの潜在的源である。なぜなら、サメの体内骨格は完全に軟骨から形成されているからである(サメの体重の6%/仔ウシにおいて0.6%)。また、興味ある特性として、サメは腫瘍を発生する性向が少ない。サメにおける腫瘍発生の確率が少ないことを説明するために、多数の仮説が苦心して作られて来ている。Marchalonis et al.(1990)は、IgM抗体が攻撃性因子を容易に攻撃できることを示した。McKinney et al.(1990)は、サメが正常細胞を新形成細胞と区別し、新形成細胞を破壊できるマクロファージを有することを示した。RosenおよびWoodhead(1980)は、軟骨魚網(elasmobranchs)(サメおよびエイが属するグループ)において腫瘍がほとんど存在しないのは、それらの組織中のイオン強度が高いためであり、これは高い体温に相当することを仮定した。
【0004】
これらの条件において、これらの著者らは免疫系が100%近い免疫学的監視機構を発揮すると考えている。Moore et al.(1993)は、サメは抗菌性および抗原生動物性を有するアミノステロールを産生することを発見した。最後に、LeeおよびLanger(1983)およびFolkmanおよびKlagsbrun(1987)は、サメが血管新生化を阻害する物質を産生することを示した。LeeおよびLanger(前掲)は、変性条件においてサメ軟骨からこの物質を抽出すること(グアニジン抽出)によって、この物質を単離した。しかしながら、この抽出法は非常に長く(41日)、変性された因子を有する抽出物を発生することがあり、そして活性成分の収率は低い。仔ウシから分離された活性物質は約16キロダルトン(kd)の分子量を有するが、同一グループの研究者らはサメにおいて取り出されたものに正確な分子量を与えなかった。
【0005】
この物質は、3500ダルトンより高い分子量を有するとして定義されるだけである。Oikawa et al.(1990)は、期間を短くした(41日の代わりに2日)以外、LeeおよびLangerが記載する方法と同一の抽出法を適用した。Oikawa et al.がサメから単離した抗血管形成物質は、1000〜10,000ダルトンの範囲の分子量を有する分子に制限される。Schinitsky(米国特許第4,473,551号)は、粗製粉末状サメ軟骨の水抽出物を記載し、その100,000ダルトンより大きい画分は単独で、またはグルコサミンと組み合わせて抗炎症活性を有する。この抽出物の抗血管形成活性または抗腫瘍活性を有する成分は、この特許において示唆されてない。Kuetner et al.(米国特許第4,746,729号)は、ウシ軟骨からの多形核好中球(PMN)エラスターゼインヒビターを単離した。
【0006】
このインヒビターは軟骨の水性抽出物から得られ、それから50,000ダルトンより小さい分子量の分子が保持された。セファクリル(Sephacryl)S-200上の分画において、多数の画分が得られ、これらの画分が抗エラスターゼ活性を示した後、これらから10〜40kDの画分をプールした。活性成分は9.5の等電点を有し、そして約15,000ダルトンの分子量を有することがある。Kuetner et al.(米国特許第4,042,457号)は、また、ウシ軟骨が50,000より小さい分子量の成分を有し、この成分が細胞増殖阻害活性を有し、内皮細胞増殖に対する活性をもたないことを示した。
【0007】
Balassa et al.(米国特許第4,822,607号)は、水溶液中の軟骨抽出物を獲得し、この抽出物は抗腫瘍活性を有する。しかしながら、我々はBalassaの方法を再現することによって得られた抽出物において抗腫瘍活性を観測しなかった。Spilburg et al.(米国特許第4,243,582号)は、ウシ軟骨から65kDの分子量および3.8のplを有する2つの糖タンパク質を単離し(グアニジン抽出)た。これは抗トリプシン活性および内皮細胞増殖阻害活性を示す。
【0008】
仔ウシおよびサメの軟骨は、多数の生物学的活性、例えば、前炎症活性、抗炎症活性、抗血管形成活性、リゾチーム活性、細胞増殖活性、コラゲナーゼIおよびIV型、エラスターゼ、および他のプロテアーゼ、例えば、トリプシン、キモトリプシンおよびプラスミンに対する阻害活性を含有する。しかしながら、臨床的に価値ある活性のプールを含んでなる軟骨抽出物は、まだ、得られていない。
【0009】
サメ軟骨の1または2以上の抗血管形成成分は、一般に、ウサギ角膜ポケットのアッセイまたはヒヨコ漿尿膜(CAM)アッセイにおいて試験された。今日まで、全粉末状軟骨は直接in vivoにおいて腫瘍上で、ヌードマウスに移植されたヒト黒色腫異種移植片上で試験され(米国特許第5,075,112号)、また、CAM試験において抗血管形成作用について試験された。抗腫瘍作用は軟骨抽出物にに帰属されたが、この作用は血液供給から腫瘍を除去する抗血管形成成分に最もしばしば帰属された。現在まで、サメ軟骨が腫瘍細胞の増殖に対して直接の作用を有するという証拠は存在しない。
【0010】
サメ軟骨抽出物および画分を得るわずかの方法が既に知られている。それらのいくつかは、抽出を使用しないで粉末状粗製軟骨を製造する(米国特許第5,075,112号)。他の方法は、グアニジンのような変性剤を使用する(米国特許第4,243,582号)。他の方法は、酵素消化により軟骨を前処理して、軟骨を取り囲む筋肉、神経または血管構造物を除去し、この前処理工程に引き続いて有機溶媒中で脂肪を排除し、次いで活性成分を水性相中で抽出する。(Balassa et al.、米国特許第3,478,146号、同第4,350,682号、同第4,656,137号および同第4,822,607号)。
【0011】
生物学的に活性な軟骨成分の完全性の保存に対する、このような前処理の効果は知られていない。酵素消化は、度である場合、活性タンパク質成分加水分解することがある。Balassaの方法は、抽出物中の活性成分を濃縮する分画工程を含まない。他の方法は、単に、非可溶化物質を排除することによって、軟骨の水性抽出物(水中において(米国特許第4,473,551号)または塩溶液(米国特許第4,746,729号))を製造する。後者方法において、それ以上の研究および精製のために、特定の分子量の特定の画分が特に保持された(上記説明を参照のこと)。
【0012】
上に引用した方法は、いくつかの欠点を有する。それらの方法は、いくつかの価値ある成分を変性することがある。そうでない場合、それらの方法は実際的目的に時間がかかり過ぎるという欠点を有する。そのうえ、時間を要する方法は必然的に十分な量の活性成分を生成せず、そして回収された成分の間で、あるものは全く回収されないか、または検出可能活性を示すためには不十分な収量で回収されるか、または特定の活性を得ることに集中することによって、いくつかの方法は無視されてきている。
【0013】
血管形成は癌の発生にのみ関係しない。異なる生理学的系(括弧内に示す)に影響を与える、多数の疾患または症状は、血管形成依存性であり、それらの例は下記の通りである:関節炎およびアテローム性動脈硬化症の班(骨および靱帯)、糖尿病性網膜炎、血管新生緑内障、トラコーマおよび角膜移植血管新生化(眼)、乾癬、硬皮症、血管腫および過形成性瘢痕(皮膚)、血管付着および血管線維腫(血液系)。したがって、新規な、有効な抗血管形成「因子」は、これらの疾患の治療ならびに癌治療において使用することができる。そのうえ、前述の疾患または症状の多数は炎症成分をも有するので、新規な、有効な抗炎症性「因子」は、これらの疾患の治療ならびに他の炎症性疾患または症状の治療において使用することができる。
【0014】
さらに、コラゲナーゼのようなプロテアーゼは、コラーゲン分解活性を有するために、多様な疾患および症状、例えば、癌および早期の老化に関係するので、新規な、有効な抗膠原溶解「因子」は、膠原溶解成分を有する疾患または症状の治療において使用することができる。血管形成、炎症およびプロテアーゼ、例えば、コラゲナーゼは、非常に種々の疾患または症状において、単独で、または組合わせで直面することがあるので、正常の身体機能に影響を与えないで少なくともすべてのこれらの活性を中和することができる生成物は大きい治療上の価値を有するであろう。
【0015】
発明の説明
本発明は、多数の治療上価値ある活性を含有するという利点を有する、軟骨抽出物を製造する新規な方法を提供する。これらのうちで、抗血管形成活性、抗炎症活性、抗膠原溶解活性、in vivo抗腫瘍増殖活性および直接in vitro抗腫瘍増殖活性は、サメ軟骨抽出物の中に満足すべき濃度において存在することが確証された。他の活性は同定または確証されてない。腫瘍細胞系において測定された作用は、直接抗腫瘍増殖活性の外に、細胞障害活性が存在するように思われることを示してである。すべての活性はサメ軟骨の液状抽出物において得られ、そしてそれらのいくつかはサメ軟骨の固体状抽出物において得られるか、または証明された。
【0016】
本発明は、無傷の軟骨中に存在する生物学的活性な水溶性成分の実質的な部分を有する液状抽出物を得る方法に関して、この方法は下記の工程を含んでなる:
a)軟骨が約500μmより小さいか、またはそれに等しい大きさを有する粒子に小さくなるまで、前記生物学的に活性な成分の完全性の保存に適合する条件において、軟骨を水溶液中で均質化して、粒子と前記生物学的に活性な成分を有する粗製の液状抽出物との混合物を形成し、
b)前記ホモジネートを遠心して粒子を粗製の液状抽出物から分離し、そして
c)約500キロダルトンより小さいか、またはそれに等しい分子量を有する軟骨分子を含有する最終の液状抽出物を得るために、粗製の液状抽出物をさらに分離する。
【0017】
この新規な方法は、実施が容易でありかつ効率よいという利点を有する。高い収量の軟骨抽出物はが得られ、この抽出物は、特にサメ軟骨から得られ、少なくともすべての前述の生物学的活性を含有する。好ましくは冷たい温度(約0〜10℃)において、非変性条件において(好ましくは純粋な水)において、ほぼ中性のpH(約6〜8)において実施して、未知の物理化学的特性の化合物を回収する確率を最大とする。この方法によれば、軟骨成分は小さい体積の溶液(軟骨の1Kgについて1リットル程度に少ない)で、短い期間の均質化(10〜15分まで程度に短い)後に抽出することができる。固体状抽出物を回収するために、同一の方法を使用するが、ただしペレットを回収し、そして、上清を無視して、凍結乾燥する。
【0018】
本発明は、軟骨抽出物、特に軟骨魚網の種、より特にサメから供給される抽出物に関する。固体状抽出物は活性を示した。それはコラーゲンおよび非加水分解性成分を含有することがある。それは、また、全体の液状抽出物から抽出された残留活性を含有することがある。全体の液状抽出物は、活性に非常に富んでいる。それはそのままで使用するか、または濃縮することができる。生物学的活性の維持を好適にする濃縮工程は可能であった。活性成分を劣化させる方法、例えば、加熱蒸発方法に頼ることは、注意して回避された。約1KDaの分子量カットオフ値を有する膜を使用する限外濾過を使用して、本発明の液状抽出物を濃縮した。
【0019】
結局、約1〜500KDaの分子量の分子を含有する軟骨抽出物はが得られ、試験した。全体の液状抽出物(0〜500KDa)をさらに分画して、その活性成分を特徴づけた。多数の画分が異なる方法により得られた。腫瘍細胞系について試験した画分のあるものは、分子量および等電点によりおおまかに特徴づけられた。他の画分は活性、特に抗膠原溶解活性または抗血管形成活性を割り当てられた。これらの画分は完全に特性決定および同定されてない。したがって、価値ある活性が全体の液状抽出物および画分において回収され、これらは有利に使用することができる。大きい量の粉末状軟骨を投与する代わりに、いっそう許容されかつ濃縮された抽出物を今や投与することができる。
【0020】
本発明は、また、活性成分として、前述の軟骨抽出物の1つを含んでなる治療用または化粧用組成物に関する。最大の関心は、皮膚科学および化粧学において使用するための局所用組成物に向けられた。この関心は軟骨抽出物の観察された活性から来る。これに関して、観察された抗膠原溶解活性および抗炎症活性、および角質細胞におけるタンパク質キナーゼCの誘導により仲介される細胞分化の中和作用は、炎症の減少、しわまたは皮膚の萎縮の調節、早期の老化の遅延、アクネの減少、皮膚バリヤー機能の改善、炎症または刺激の減少および皮膚平滑化作用の組成物および方法において、サメ軟骨抽出物を使用するためのルートを開くものと考えられた。このような方法は本発明の範囲内に入る。
【0021】
サメ軟骨の液状抽出物は、癌、関節炎、乾癬およびアクネの症例において首尾よく試験され、腫瘍の増殖、血管形成、炎症および膠原溶解から成る群より選択される1または2以上の成分を有する疾患または症状を治療する組成物および方法は本発明の範囲内に入る。
【0022】
本発明の説明
本発明は添付図面に示されている特定の態様によりいっそう容易に理解されるであろう。添付図面の目的は本発明の範囲を制限するよりむしろ本発明を例示することである。
【0023】
特定の態様において、サメのブラック・スパイニイ・ドッグ・フィッシュ(Black Spiny Dog Fish)およびコモン・スパイニイ・ドッグ・フィッシュ(Commonn Spiny Dog Fish)から、軟骨を得た。エタノール処理したメスおよびハサミで引っ掻くことによって、筋肉および結合組織を除去した。次いで、軟骨をプラスチックバッグの中に真空包装し、それ以上の使用のために-20℃において凍結した。本発明の方法において、任意の軟骨源を使用することができる。「背景」の節において明確に述べた理由で、我々はサメの軟骨を選択した。軟骨魚網(これはこのグループの動物源としてサメおよびエイを包含する)の軟骨から出発して、ほぼ等しい生成物が得られると考えられる。軟骨の哺乳動物源を使用する場合、生成物は異なる可能性が最も強い。
【0024】
抽出前の軟骨の調製の変更は、それが問題の生成物(例えば、全体の液状抽出物またはその特定の画分)の活性に実質的に影響を与えないかぎり、使用することができる。いくつかの活性成分はBalassa et al.(米国特許第4,822,607号)が教示するようにタンパク質分解消化に耐性であって、軟骨から取り囲む組織を除去することができるが、他のものはこのような処理に耐えることができない。このような前処理に耐性であると思われない活性の1つは、抗血管形成活性である(図27)。したがって、別々の活性が割り当てられた水溶性活性成分のすべてのできるだけ多くを含有する液状抽出物を製造しようと望む場合、このような消化工程は回避するか、または広範な加水分解またはタンパク質分解を防止するように注意して監視すべきである。
【0025】
凍結乾燥された軟骨の調製
きれいな軟骨を新鮮な状態で使用するか、または4℃において融解した。次いで軟骨をエタノール処理した肉細断機の孔を適切な体積水(等しい量(重量/体積)はほぼ最小体積であるが、価値ある成分の回収の収率に影響を与えないで増加することができる)と一緒に多数回(特に3回以上)させた。小さい体積は、実際的観点から、不必要に大きい体積よりも操作が便利であるので、好ましい。実際に、水を逆浸透および0.1μmのフィルター上の濾過により精製した。多数の水溶液(例えば、塩を含有する)を水の代わりに使用できるであろう。複数の水溶性活性の反応を考えるとき、ほぼ中性のpHおよび非変性条件における作業は、軟骨成分のあるものの溶解または変性を回避するために好ましい。
【0026】
水溶液中の未知のタンパク質の挙動は予測不可能である;あるものは酸性加水分解において、あるものは塩基性pHにおいて、いっそう「快適」であることがある。さらに、あるタンパク質は適度の変性条件において抽出可能である。ただし、このような変性は水溶液中でこれらのタンパク質の復元に不可逆的に影響を与えないことを条件する。したがって、これらの因子のすべてを考慮して、純粋な水中で軟骨の活性成分を抽出する方法は、非常にすぐれた収率で、未知の構造および挙動を有する成分を回収するための賢明な選択であることが示された。
【0027】
次いで、約4℃において台所用ブレンダー中で最大速度において撹拌することによって、軟骨/水のブレンドを均質化した。もちろん、撹拌の速度ならびに水溶液の体積は抽出時間に影響を及ぼすことがある。したがって、均質化時間の合理的な範囲は約10分程度に短く、24時間程度に長く、好ましくは約10〜60分であることができる。温度は約10℃程度に低く維持して、酵素インヒビターを使用するとき、内因性酵素による活性化合物の分解を回避すべきである。理想的には、0℃に近い温度が探求されるべきである。通常このような実験は、温度を4〜10℃に維持できる、低い室温において実施されるので、この温度範囲は本発明の方法において許容される。明瞭および簡潔を目的として、以後この許容温度範囲を表示するために、用語「約4℃」を使用する。
【0028】
ブレンダーが粒子の大きさを十分に減少しなかった場合、このホモジネートを4℃において10分間ポリトロン(Polytron)ディスインテグレーターにかけることによって、このホモジネートをさらに液化することができる。また、ブレンドはブレンダー-ディスインテグレーターにおいて単に均質化することができ、これは、我々の手において、10分の液化工程を節約する。均質化工程が完結したとき、残留粒子の大きさは約500μmより小さい。もちろん、最初の軟骨の粉砕について説明した時間および温度の同一の許容範囲が等しく適用される。均質化後の粒子の大きさは非常に小さくある必要はない。したがって、抽出前に軟骨を微粉砕する必要性を回避することができる。事実、水性抽出前の粉末の形態の軟骨の微粉砕は、このような微粉砕を凍結乾燥状態または加熱乾燥状態で実施するとき、価値ある活性を変性することがある。
【0029】
ホモジネートを4℃、13,000×gにおいて15分間遠心分離する。この工程はペレットから上清を急速にかつ効率よく分離する1つの方法である。これらのパラメーターの変動および調節は、当業者の知識の範囲内であり、ホモジネートの体積および使用する装置の体積に依存するであろう。
生ずるペレットを24〜48時間凍結乾燥する。この最初の画分を、以後において、凍結乾燥物または固体状抽出物と定義する。
【0030】
必要に応じて、上清を24μmのワットマン(Whatman)フィルターで濾過して、限外濾過カラムの性能に影響を与えやすい粒子を除去することができる。次いで、濾過した材料を、約4℃において、約500,000ダルトンの多孔度を有する接線方向流の濾過カラム上で限外濾過する。このカラムは、0〜約500KDaの分子量の水溶性分子を含んでなる、最初の粗製透過物を与える。この粗製透過抽出物を0.22μmのフィルターで滅菌濾過し、それ以上の使用のために、アリコートを無菌のびんに入れた。この画分を、以後において、粗製透過物または全体の液状抽出物と呼ぶ。
【0031】
また、ペレットおよび上清を得るために、より高い性能の遠心分離手順が開発された。13,600×gにおける15分の遠心分離および引き続くワットマン(Whatman)フィルター上の全体の濾過の工程を、30μmの多孔度のナイロンポケットを装備したCEPA遠心分離機による3000〜4000×gの遠心分離と置換した。25kg/25リットルの調製物を、その方法において、30分以内の間遠心分離し、29リットルの上清を得ることができる。得られる水性体積は水の出発体積よりも大きく、軟骨それ自体の水分が収穫されたことを示唆する。凍結乾燥物および全体の液状抽出物は、下記の近似組成を有することがあり、この組成はバッチ毎に、異なる材料を使用するとき、観測される変動をおおよそ考慮している:
【0032】
【表1】
【0033】
タンパク質含量は、Kjeldahl法により評価し、この方法は事実有機窒素(N)を測定する。有機窒素は、下記の方程式を使用して、タンパク質当量に変換される:
【0034】
タンパク質含量(mg/ml)=(N%×6.25)/100
炭水化物は検出不可能であり、炭水化物は1つまたは他の抽出物の中に存在するが、プロテオグリカンおよび/またはムコポリサッカリドの形態にあると推定することができる。これらの化合物は測定されたレベルの湿度において含めることができる。凍結乾燥物は予期しないレベルの湿度を含有し、これはOH基により測定された。20%の水分は軟骨において通常回収される炭水化物の百分率に近いが、凍結乾燥物の湿度は0%に近くあるべきであるので、この仮説は証明されるべき状態にある。
【0035】
下記によりUSP XXIIIを適用して、無菌はコントロールされた:
1) Laboratoire de genie sanitaire du Quebec Inc.
1090、1'Escarbot、Centre Industriel St-Malo、Quebec GIN
4J4、および
2) Northview Laboratories Inc.
1880、Holste Road、Northbrook、IL、60062 U.S.A.FDA resitration no.1
4-18028。
【0036】
活性のアッセイ:
凍結乾燥物:
in vitroアッセイ:
これらのアッセイは、ホルモン依存性癌細胞系MCF-7およびZR75-1(それぞれ、ATCC(R)No.22-HTBおよび1500-CRL)について実施された。
【0037】
ZR75-1細胞:
基本RPMI培地:
52gのRPMI1640(フェノールレッドを含まない)(Sigma R8755)、17.875gのHepes(酸を含まない;Sigma H0763)、0.55gのピルビン酸ナトリウム(Sigma P5280)および10gのNaHCO3 を5リットルの純粋な水中で混合し、NaOHでpH7.40とした。
直ちに使用しない場合、この溶液を光から保護して光不安定性物質を保存しなくてはならない。この溶液を濾過し、500mlの無菌のびんの中に分配し、4℃において最大3カ月間貯蔵した。
【0038】
細胞培養維持培地:
基本RPMI培地に、10%(v/v)のFBS(胎仔ウシ血清)、100UのペニシリンG/50μgの硫酸ストレプトマイシン(Sigma P0906)/mlの培地、2mMのL-グルタミン(Sigma G1517)および1nMのE2 (β-エストラジオール Sigma E8875)を補充した。
実験培地:
基本RPMI培地に、5%のFBSA(デキストラン-炭上に吸着された胎仔ウシ血清)、2mMのL-グルタミン、100UのペニシリンG/50μgの硫酸ストレプトマイシン/mlの培地および50ng/mlのインスリン(Sigma)を補充した。この培地に、増加する濃度の前述の凍結乾燥物ならびに異なる濃度のエストラジオール(10-12~-5M)を添加した。
【0039】
MCF-7細胞:
基本DME-F12培地:
DME-F12培地(重炭酸塩およびフェノールレッドを含まない;Sigma)を、純粋な水中で製造業者の指示に従い再構成した。1リットルについて、1.2gの重炭酸ナトリウムを添加し、pHをNaOH/HClで7.40にした。この溶液を濾過し、500mlの無菌のびんに分配し、4℃において最大3カ月間貯蔵した。
細胞培養維持培地:
基本DME-F12培地に、10%(v/v)のFBS(胎仔ウシ血清)、100UのペニシリンG/50μgの硫酸ストレプトマイシン/mlの培地、2mMのL-グルタミン(Sigma)および1nMのE2 (エストラジオール)を補充した。
【0040】
実験培地:
基本DME-F12培地に、5%のFBSA(デキストラン-炭上に吸着された胎仔ウシ血清)、2mMのL-グルタミン、100UのペニシリンG/50μgの硫酸ストレプトマイシン/mlの培地および50ng/mlのインスリン(Sigma)を補充した。ZR75-1細胞について記載したように、凍結乾燥し、エストラジオールを同一濃度で添加した。
【0041】
FBSAの調製:
胎仔ウシ血清を1%(w/v)の炭(アルカリ性物質を脱色する炭)と混合した。デキストランT70の溶液を炭-血清溶液に添加して、0.1%(w/v)の濃度とした。この混合物を4℃において一夜撹拌した。4℃、10,000×gにおいて30分間遠心分離した後、血清をデカンテーションし、再び同一比率の炭およびデキストランと混合し、室温において3時間撹拌し、遠心分離した。次いで血清を56℃において20分間加熱不活性化し、滅菌濾過し、無菌のコニカル・ファルコン管の中にアリコートを入れた。
【0042】
ZR75-1およびMCF-7細胞を、24ウェルのプラーク上で20,000細胞/ウェルまたは6ウェルのプラーク上で15,000細胞/ウェルの集団の密度に到達するまで、増殖させ、異なる濃度の前述のように調製した凍結乾燥物の存在または非存在において処理した。これを行うために、凍結乾燥物を培地の中に再懸濁させ、滅菌濾過して、その水溶性成分を回収し、試験した。すべての実験は三重反復実験において実施した。2日毎に、培地を抜き出し、新鮮な培地と交換した。37℃において5%のCO2 を含有する、一定に加湿された雰囲気下に、細胞を17、7、3または3日間インキュベーター中で増殖させ、それらは、それぞれ、第1、第2、第3または第4実験に相当した。細胞を直接計数するか、またはウェルのDNA含量を測定することによって、細胞増殖の阻害を測定した。
【0043】
【表2】
【0044】
細胞増殖の上記の阻害百分率が証明するように、凍結乾燥物は投与量依存的方法において、これらの2つの細胞系の細胞の増殖を阻害することができる。
図1は、50および100mg/mlの凍結乾燥物が、3日間の処理後、これらの細胞系上の減形成を明瞭に誘発する。
【0045】
図2は、10-12 〜10-9Mのエストラジオールの存在において、処理された細胞はこれらのホルモン投与割合により非刺激とされることによって対照細胞のように応答することを示す。しかしながら、1nMより上において、対照細胞は強く刺激され、そしてDNA濃度は107 Mのエストラジオールの存在において3.75μgに到達する(これに対して、エストラジオールの非存在において0.69μg)。30および50mg/mlの凍結乾燥物で処理された細胞において、最大刺激において測定されたDNAは、それぞれ、1.9および1.8μgである。
【0046】
図2は、エストラジオールに対する処理された細胞の親和性定数(Km)が、それぞれ、30および50mg/mlの存在において、対照細胞のKm値(11.7nM)より3〜16倍高い(31.3nMおよび174.0nM)ことを示す。これが意味するように、軟骨の凍結乾燥された固体状抽出物が存在するとき、細胞の同一の増殖を達成するために、より高い濃度のエストラジオールが必要とされる。したがって、この抽出物は最大応答を減少し(その90%阻害)そしてエストラジオールに対する処理された細胞の親和性定数を増加する。
【0047】
in vivoアッセイ:
400匹の日齢40の雌のSpraque-Dawleyラット(Charles River Co.、St-Constant、Quebec、から購入した)を、それらの環境に12日間適合させた。その時において、20mgのDMBA/1mlのトウモロコシ油(9,10-ジメチル-1,2-ベンズアントラセン;Sigma Chemical Co.から購入した)を栄養により投与した。この処置後3カ月において、240匹の乳癌を有するラットを選択し、2つのグループに分けた。第1グループは5つのサブグループのラットから成っていた。処置したグループのラットに3mlの水中の増加する濃度の凍結乾燥物の抽出物の1日量を8週間与えたが、対照グループには同一体積の水を与えた。
【0048】
第2グループは4つのサブグループのラットから成っていた。処置したグループのラットに、また、上清と組合わせるか、または組合わせせない、3mlの水中の凍結乾燥物の抽出物の1日量を10週間与えたが、対照グループには同一体積の水を与えた。3000mg/Kg/日の濃度の凍結乾燥物および3mlの上清で処置されたラットの第2グループのただ1つのサブグループに、また、より少ない投与量の上清(1mlの水中の約8mgのタンパク質)を腹腔内(i.p.)注射した。
ラットは2つの実験の開始において151〜175gの体重であり、食物および水を任意に与えた。ラットの第1グループは平均直径0.9cmの腫瘍を有したが、ラットの第2グループは平均直径0.6cmの腫瘍を有した。
結果は下記のように要約される:
【0049】
【表3】
【0050】
これらの結果が証明するように、凍結乾燥物は活性成分を含有し、この活性成分は胃腸管の中に吸収され、そして腫瘍大きさに対する作用を有する。この作用は腫瘍細胞に対する直接の作用であるか、または抗血管形成仲介作用であろう。
また、これらの結果が示すように、上清は約5%の腫瘍大きさの補助的減少により反映される活性を有する。
これらの結果が、また、示すように、凍結乾燥物は活性成分を含有し、この活性成分は水溶性ではなく、および/または残留の水溶性を含有できる。したがって、究極的に、収率をなお改良できる場合、ペレットを水溶液中で再抽出して水溶性成分を最大に回収することができる。
【0051】
組織病理学
軟骨抽出物の活性分子の無毒を評価するために、前述のin vivo実験において使用した動物を断頭により殺し、分析のために下記の組織を採った:肝臓、肺、腎臓、心臓、脳、筋肉および乳腺。これらの組織から脂肪を除去し、次いでそれらをブワン液中で2日間固定した。エタノール中で脱水した後、固定した組織をパラフィンの中に埋めた。それらの切片を形成し、ガラススライド上に取付け、ヘモトキシリンで着色し、顕微鏡下に可視化した。
【0052】
組織学的実験において、最大の投与量の凍結乾燥物を単独で使用したとき(データは示されていない)、または上清と組み合わせて凍結乾燥物を使用したとき(参照、図3および図4、図5および図6、および図7および図8)、有害作用は視ることはできないことが明らかにされた。
これが示唆するように、凍結乾燥物および上清は選択的腫瘍大きさ応答活性を有する。
癌性乳腺において(参照、図9および図10)、血管の面積の重要な減少が観測された。次いで、これらの活性分子の抗血管形成作用は、図11に例示しかつ要約されている結果により確証される。
【0053】
図11は、凍結乾燥物(p.o.)-上清(p.o.+i.p.)の組合わせを使用したとき(参照、図9および図10)、血管面積の55%の減少が腫瘍において観察された。
腫瘍大きさの減少は、その血管化の重要な減少、腫瘍細胞に対する直接作用、または双方の現象の組合わせのためであろう。これらの抽出物の抗血管形成作用は、上記においてよく描写されている。直接の減形成作用はホルモン依存性細胞に対してin vitroにおいて観察されたが、これはin vivoにおいて確証されてない。
上清がZR75-1細胞に対して凍結乾燥物の作用を越えた増加した作用を示すことを前述の結果が示したので、その成分をさらに研究した。
【0054】
活性分子を含む液体分画の調製方法
サメの軟骨を採取し、前記のように処理した。遠心分離後、ペレットを廃棄し、上澄み液を前記と同じ方法で処理して、0.22μmのフィルターで無菌濾過を行なった。
上澄み液は、以後、例えば限外濾過後の生成物のように、粗透過物と呼ぶものとする。
このようにして得られた粗透過物を、FPLC(高速タンパク質液体クロマトグラフィ)に通す。
FPLC条件:
カラム:Hiload 26mm×60cm Sephacryl S-300
FPLC系:Pharmacia社のもの
【0055】
サンプルはすべて、カラムに充填する前に、0.22μmのフィルターで濾過した。溶離緩衝液は、15分脱ガスされた濾過済みホスフェート緩衝塩液(PBS)であった。充填されたサンプルの容積は、通常3.2mlであり(13mlまでであってもよい)、流量は、ml/分であった。10mlの分画を回収した。溶離化合物を、紫外線吸収(280nm)で検出した。検量線図は、Sigma社のMW-GF-1000検量キットを用いて得られた。この検量サンプルは、分析のために充填されたサンプルと同じ容積であった(3.2ml)。サンプルの溶離容積は、カラムの空隙容積が差引かれた溶離容積に対して、検量キットの化合物の分子量をプロットすることによって導き出した。空隙容積は、デキストランブルーを注入して得られた(分子量=2,000,000)。
【0056】
これらの分画の活性テストを、ZR75-1細胞に対して行なった。興味深い分画が同定されたが、これらの特徴をさらなる調査によって確認した(下記)。
透過物の活性成分のこのほかの特性決定は、Rotofor(Biorad 170-2950:下記の等電集束(isoelectrofocalization)参照)、および分子量が10〜30KD、30〜100KD、100KD以上の分画を得るための種々のカットオフ値のAmiconフィルターで実施した。
【0057】
等電集束
サメ軟骨の標本(46ml透過物1kg/l)を、5%グリセリン含有純水4リットルに対して、4℃で、スペクトル細孔#7MWCO 3500 KD膜(スペクトル132110)を用いて一晩透析した。透析溶液を、pH3.5〜10.0の両性電解質(Pharmacia社の380-1125-87)2.75ml、およびCHAPS(Sigma社のC3023;3-[(3-コラミドプロピル)-ジメチルアンモニオ]-1-プロパン-スルフォネート)0.5gと混合した。容積が55mlになるまで純水を補充した。溶液をRotoforに充填した。等電集束を、4℃で12ワットの定電力で(3000xi電力供給Biorad165-0554)、温度の維持を確保するために一定水循環下に実施した。分離の当初は、電圧が380ボルト、アンペア数は31mAであった。アンペア数が(14mAで)安定した時、電力は870ボルトであった。等電集束を停止した。20分画が回収された。
【0058】
【表4】
【0059】
これらのタンパク質の同定は、電気泳動ゲルで分子量を測定して実施した(Laemmli、米国、1970年、Nature(Lond.)227号:680頁)。
これらの分画を、充填緩衝液(Laemmli参照)で4倍希釈した。非還元条件下に8μlアリコートを電気泳動に付した。
図12および図13は、各分画および等電集束前の材料の電気泳動曲線を示す。
すべての分画を、層流フード下、細孔度0.22μmの無菌Millipack-60フィルターに通して、無菌瓶詰めにした。
分画のタンパク質含量を、Lowry計量法で評価した。1kg/2リットルの溶液(透過物1リットルあたりの粗軟骨重量として表わしたもの)について、培地中の種々の濃度で、ZR75-1に対してテストを実施した。結果を下記にまとめた。
【0060】
第一テスト:
透過物を凍結乾燥し、PBS中に再懸濁し、FPLGを行なった。形成不全活性は検出できなかった(データは示されていない)。
第二テスト:
Rotofor分画でテストを実施した(透過物を蒸発によって濃縮させた):タンパク質の同定
【0061】
【表5】
【0062】
第三テストは、FPLC分画に対して実施された(透過物を蒸発によって濃縮させた):
分画 分子量
6と7 1〜2.5KD
第四テストは、Amicon分子フィルターで得られた100μl分画に対して実施された。
【0063】
【表6】
【0064】
FPLC分画6および7は、非常に低い分子量すなわち1〜2.5KDの活性成分を含んでいる。
この分画の形成不全作用は、凍結乾燥物の場合に見られた作用より、33,000倍までも高いことがある。前記結果は、凍結乾燥によって、溶離液に含まれているタンパク質の直接的な抗腫瘍活性のなんらかの損失が引起こされるらしいということを示している。一方、固体抽出物の凍結乾燥では、このような損失は生じなかった。このことは、軟骨粒子に含まれている活性成分が、凍結乾燥の変性作用に対してあまり敏感でない環境にあるようであるということを示唆している。形成不全活性は、凍結乾燥に対して敏感であるので、水に戻された時、おそらくは、安定剤または保護剤を、抽出物全体、または凍結乾燥前にこの活性を含んでいる特別な分画へ添加することによって、実質的にこの活性を保持できるのであろう。
【0065】
溶離物の活性成分のもう1つの同定
活性分画(ZR75-1細胞でテストされたもの)を、下記分子量の範囲において回収し、別の型の精製によって測定した。測定は、まず同じ透過物(1kg/l)から開始し、前記のFPLCおよびRotofor手順を用いて、直径10mm×長さ30cmのSuperose-12カラムで実施した。流量は1ml/分にした。1mlの45分画を回収した。
【0066】
【表7】
【0067】
特異性
腫瘍細胞への活性の特異性を評価するために、限外濾過後に得られた透過物について、他の間葉織から発生する細胞、すなわちヒトテノン線維芽細胞(HTFs)(これは正常な線維芽細胞である)に対してテストを実施した。
【0068】
B.試験管内
a.患者
二人の患者(一人は血管新生性緑内障(NVG)患者、もう一人は原発開放角緑内障(POAG)患者である)からのHTFsだけを用いた。
【0069】
b.HTFsの植継ぎ培養および保管
各融合性培養物に、0.05%トリプシン/0.5mMのEDTA(Gibco610-5300AG)0.5mlで、5〜10分間37℃の洗浄および分離を行なった。ついで15%胎児ウシ血清(FBS)を含むDME/F-12培地1.5mlを添加して、トリプシン/EDTAを中和した。
粉砕および25cm2 T-フラスコへの移し替えによって、細胞の会合を行なった。このフラスコへ、10%(FBS)を含む追加の培地を添加した。融合に達した後、HTFsを75cm2 T-フラスコ、場合によっては180cm2 T-フラスコに移した。十分な細胞が得られたら、このうちのいくつかの細胞を下記実験に用い、他の細胞は、同時に、将来の実験のための同様の処理を行なうために冷凍した。
【0070】
c.実験記録
融合に達したら、2〜3個の同じ180cm2 T-フラスコで成長している、一人の患者から採取された細胞を、前記手順によって解離させた。短時間の低速遠心分離後、256-チャネライザーを備えたZMI Coulter計数器216013で、細胞の数を数えた。
【0071】
以下の試験管内実験のすべてについて、約5万個の細胞を、1%FBSを含むDME/F-12培地1ml中において、各々16mm皿と12個の穴付プレートに植え付けた。接種から17時間(hrs)後、1%FBSが補われた新しい同じ培地1ml(「絶対」対照)を加えた。実験の設計(上記および下記参照)に依って、1%FBS培地には、GFs(成長因子)または透過物1kg/2L(軟骨重量/水容積)溶液を補うか、あるいは補わず、無菌濾過を行なった。この日(0日目)、培養効率を測定するため、いくつかの細胞サンプルの細胞数をも数えた(この効率は95%あるいはそれ以上であるべきである)。
【0072】
実験の着手から48時間後、細胞を洗い、前記手順で解離させ、再び計数した。細胞数は、「絶対」対照において得られた数の百分率として表わされた。
各々1%または5%FBSを含む、各「絶対対照」すなわち決定的な対照、および各実験群には、1%FBS、および個別のGF、あるいは3つのサンプルから成る軟骨透過物が補足された。
各実験は、一人または二人の患者の細胞に対して同時に実施し、少なくとも2度繰り返した。
成長因子(GFs)または軟骨透過物による線維芽細胞の増殖への刺激を、同じものの5%FBSによる刺激と比較した。
【0073】
これらの実験において、ブタ血小板に由来する成長因子(pPDGF)およびヒト組み換え型基本線維芽細胞成長因子(hr bFGF)(イタリア国ミラノ市のFarmitalia Carlo Erba社からDr.P.Brazeauへ寄贈されたもの)を、各々、1%FBS中10〜100ng/mlの濃度で添加した。実験の開始から48時間後、細胞をトリプシン-EDTAで分散し、Coulter計数器で細胞数を数えた。
下記に示された3つの値(カラム1、2、3)のすべては、1つの穴あたりの総数の1/20に等しい。
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
血小板に由来する成長因子(PDGF)および基本線維芽細胞成長因子(bFGF)のような成長因子は、ヒトテノン線維芽細胞(HTFs)に対して刺激活性を示したが、これらの細胞が軟骨透過物の存在下(1kg/2リットル)に成長が行なわれた場合には、プラス作用もマイナス作用も観察されなかった。形成不全作用も見られなかった。このことは、この透過物が腫瘍細胞に固有の形成不全作用あるいは細胞毒性作用を有するが、正常な細胞には検知可能な作用は有しないことを示唆している。同じ軟骨抽出物は、別の型の線維芽細胞であるHSF(ヒト皮膚線維芽細胞:データが示されていない)にも影響を与えなかった。試験は行なわなかったが、凍結乾燥物も正常な細胞には影響を与えないと考えられる。
【0078】
従来技術の生成物との比較
軟骨エキスに大きな関心を抱いたのは我々が最初ではないため、従来技術に記載の、あるいは従来技術から導き出せる二種類の生成物、すなわちBalassa(米国特許第4,822,607号)と及川ら(前出)の方法による生成物との並列比較試験で本法で抽出した鮫軟骨流エキスの独特の性質を検証した。及川らが記載した方法によると、主な画分が二つ得られ、一つは分子量が1〜10キロダルトンの間の分子を有し、二つ目は10キロダルトンより大きい成分を有する。及川らは抗血管形成特性を一つ目の画分だけに起因すると考え、二つ目にはCAM試験で活性が全くないと述べている。及川の生成物を適切に比較することによって、我々は総流エキスを二つの対応する画分に分画し、1〜10キロダルトンを有する方を取っておいた。
【0079】
Balassaは総流エキスを抽出する方法を記載しているので、我々は我々の総軟骨流エキス(1〜500キロダルトン)を、子ウシ軟骨を鮫軟骨に置き換えたBalassaの方法によって再度調製した生成物と比較した。Balassaと及川が等価な方法を記載していれば、FPLCとHPLCで得られるパターンがほぼ重なり、CAM試験で検査すると、この生成物は我々のものと類似の活性を示すはずだと仮定する。FPLCとHPLCクロマトグラフィーの前にすべての試料の最終濃度を12μg/μL(乾燥重量/溶液の体積)とした。及川の生成物は不溶性の物質を含むため、クロマトグラフィーの前に遠心分離、ろ過した。
【0080】
A)FPLC条件:スーパーローズ12(ファルマシア)、ゲルろ過カラム
B)HPLC条件:CS-S-ヘキシルカラム5μm、25×0.94cm、CSC#059-085、逆相カラム。
3種類の方法で抽出した鮫軟骨試料を(推定乾燥重量/溶液の体積で)以下のように標識した。
1)DUPは、1〜500キロダルトンの分子を含むように分画した本発明の調製物である(12μg/μl)。
【0081】
2)BALは、Balassaらの処方による調製物である(12μg/μl)。
3)OIKは、及川らによる画分3の調製物である(270μg/μl)。あらゆるの分析に先立ち、すべての試料を最終濃度12μg/μl(乾燥重量/体積)とした。OIK試料には多量の不溶物質が入っていたが、13,200RPMの遠心分離または0.2μmメンブランによるろ過によって容易にペレット化できた。不溶物質のろ過や濃縮は、HPLCおよびHPLCの前に不可欠である(A、B)。
【0082】
A)FPLC測定結果のまとめ
リン酸緩衝液(PBS)を溶出液として毎分0.5mlの流速で試料をスーパーローズ12(10/30)ゲルろ過カラムに流した(チャート速度=毎分0.25cm)。濃度を調整した試料の部分標本100μlを注入前に0.2μmメンブランでろ過した。OD280をモニターした。
【0083】
カラムは以下の標準品で較正した(分子量、単位:ダルトン)。カタラーゼ(232,000)、アルドラーゼ(158,000)、アルブミン(56,000)、卵白アルブミン(44,000)、キモトリプシン(25,700)、リボヌクレアーゼ(13,700)、インシュリン(5,700)、インシュリンB鎖(3500)、インシュリンA鎖(2500)、バシトラシン(1450)、ビタミンB-12(1355)。主ピークの分子量は下式に従って計算した。Log10MW=7.52-0.212×RT、ここでRT=溶出体積(単位:mL)、R2 =0.976である。シチジン(246ダルトン)を用いて決定したところ全カラム体積(VT )は21.93mLであった。ボイド体積(V0 )はブルー・デキストラン(2×106 ダルトン)によって8.38mLと決定された。
【0084】
図18では、我々の試料DUPは最初の主ピーク(1)が18.76mLに溶出し、分子量3500ダルトンを示した。続いて溶出した22.7mLのピーク(2)と23.7mLのピーク(3)は全カラム体積(シチジンによる決定で21.93mL)を超えていた。これらのピークにはカラム・マトリックスに対する親和性があると思われる。
図19では、Balassaの試料BALはカラムのV0 (8.4mL)付近に溶出する小ピーク(1)、18,5mL(4000ダルトン)のピーク(2)、さらにVt 以降の22.6mLと28.2mLに溶出する2本のピークを示す。
【0085】
図20では、及川の試料OIKもV0 に小ピーク(1)、18.9mL(3300ダルトン)にピーク(2)、21.5mL(1000ダルトン)にピーク(3)および27.3mLにピーク(4)を示す。
試料を比較すると、3300ダルトンは別として、DUP試料の主バンドはその他の試料の同じ強度には見られないことが分かる。OIK試料にはまさに少量の27.3mLピークがあると思われた。BAL試料には28.2mLに移動するピークがあり、DUP試料中の小ピークと対応させることができた。
ヘキシル逆相カラムによるHPLCのため、OD210とOD280を同時にモニターした。遠心分離した試料(すべて12μg/μl)の部分標本50μlを負荷し、100%H2 Oで溶出した。OD210(実施例1)およびOD280によって標識した各クロマトグラムのピークは「実施例1」に記す。このカラムのV0 は5.5mLであった(1.4分)。
【0086】
図21では、DUPにOD210を介して観察される3本の主ピーク(1、2、3)と2本の小ピーク(4,5)があった。ピーク1から離れて2本の側ピークが観察され、1aおよび1bと名付けた。ピーク1、1a、1bおよび3にはかなりのOD280吸収があった。対照的に、ピーク2に対応するOD280はOD210よりずっと低かった。
【0087】
図22では、BALはもっと多くのOD210ピークを示したが、強度はDUPピークと比較して弱かった。ピークの重なりによって分子の同一性を示すことができた限りでは、Balassa試料のピーク3とピーク7だけがDUP試料中のピークの保持時間と相関があるように思われる(それぞれピーク1aまたは1bおよびピーク4)。
図23では、OIKエキス中に3本のピーク(1、2、3)だけが観察された。ピーク1とピーク3はDUP試料のピーク1とピーク3と相関があったが、OIKのクロマトグラムにはピーク1の側ピークは見られなかった。OIK試料中のピーク高さはDUPよりも低かった。FPLCおよびHPLCのパターンは識別した生成物について特徴的であったが、我々はCAM試験でこの3種類の生成物の抗血管形成活性を検証した。
【0088】
CAM試験
まず、異なる濃度(37、75および150μg)のプロタミンを用いてCAM試験を行った。水を含むメチルセルロース・ディスクと、陽性対照としてプロタミンを含む別のディスクをニワトリ胚の絨毛尿膜上に置いた(n=分析した胚の数)。その位置限定を簡単にするため各ディスク上にOリングを配置した。翌日、通常の仕方で一組の科学者が各Oリング中の血管新生のレベルを点数化した。CAM試験用の評価尺度は1-2-3点数によった。(点数=3)対照胚の縦に対向する四分円または対応する四分円と比較したときの正常な血管新生。(点数=2)血管がOリングに入り込むが、途中で消滅する。
【0089】
主な血管がOリングを横断するが、その軌跡は明らかに影響を受けている。Oリングのせいで分枝形成は少ない。(点数=1)Oリング内に血管が全くないかそれた血管がない。血管はOリングを迂回してそれを超えていかない限り、Oリングを超えて成長しない。四分円の血管領域はOリングのせいで明らかに縮小されている。図24では、各カラム上の数値が各試料の最終点数を示す。同一卵上に置いた2枚のディスク間の差の有意性を比較するためウィルコクソン統計検定を使用した。期待した通り、用量-反応関係が観察された。
【0090】
DUPエキスの10キロダルトンより低い画分と高い画分を同一条件で試験した。血管新生阻害において両者は強さが等しいことが示された(図25)。
我々の総抽出DUPをBalassaの生成物BALと比較した。Balassaの生成物に有意な抗血管形成活性は再現されなかった(図26)。
粗DUPエキスを及川OIKの画分3と比較した。DUPとOIKは両方ともほぼ同等であった(図27)。それにもかかわらず、及川らは分子量が10キロダルトンより高い画分には活性が検出できなかったと述べたため本発明とかけ離れた教示を行ったが、図25の我々の結果と矛盾している。
【0091】
従って、Balassaの方法と我々の方法の類似性にもかかわらず、これら二つの方法によって得られた生成物は明らかに同じではない。
我々の生成物と比較した二種類の従来技術の生成物は、それでも軟骨エキスを調製する古典的な方法と考えられる。上記の結果によると、本発明の方法は抗血管形成活性に関する限り意外に良好な活性のある生成物を生成する。その他の活性は本明細書中で後に検証するので、本発明の方法が単一のエキス中に多様な水溶活性を再発見することに成功したと仮定することが可能である。
【0092】
臨床試験
予備臨床試験を進める前に、超遠心分離後に得られた粗透過物を2倍および20倍濃縮して濃縮活性透過物を調製した。これらの濃縮度は孔隙1000ダルトンの横流ろ過カラムによって得られ、溶出液の体積は2倍および20倍となった。濃縮した透過物を孔隙0.22μmのミリポア・フィルターでろ過した。軟骨を代替の遠心分離法(孔隙30μmのメンブラン・フィルターを備えたCEPA遠心機を使用)で処理したところ、10倍濃縮によって上記の20倍濃縮エキスとほぼ同じタンパク質濃度を有する濃縮エキスが得られ、例えば約8〜12mg/mL(実験室規模の方法)のかわりに約12〜25mg/mL(改良法)が得られた。
【0093】
無菌10倍濃縮透過物を無菌フラスコに部分標本7mL(タンパク質約85mg)ずつ分注し、-80℃で一夜凍結し、使用するまでさらに-20℃に保存した。粗透過物と濃縮透過物の主な相違はタンパク質濃度である。タンパク質含量の決定に使用した方法では全窒素化合物であってタンパク質だけではない(ケルダール法)ことは注意されるであろう。通常ローリー法でタンパク質含量を決定する場合はタンパク質濃度が体積濃縮度に比例するのに、比例しない理由がこれによって説明できる。このように、この濃縮段階では低分子窒素化合物と同様に水も透過できると考える。
【0094】
抗血管形成効果
濃縮した透過物を血管形成-依存性疾患の治療に使用した。3種類の代表的な血管形成-依存性疾患についてヒトの診療で試験を行った。1番目の病型は癌(前立腺癌)、2番目の病型は皮膚障害(乾癬)、3番目の病型は関節炎であった。下記実施例を見れば、この流エキス剤の少なくとも抗血管形成活性が説明され、示されるであろう。
【0095】
複数の皮膚疾患から乾癬症例を選択した。試験を行った乾癬症例中、角化症を併発した乾癬と併発しないものとの差異に注目することは有意義である。角化症では、プラークの形態で角化外皮が形成される。このようなプラークは活性成分が効率よく血管に入り込むのを妨げる物理的障壁となる。
前立腺癌を患う患者は10倍濃縮軟骨透過物を自発的に試した。この患者は一連の従来の連続治療を受けたが、その成功は一時的であった。癌が常習性を示した後に、この患者は本軟骨エキスの使用を開始した。
他のボランティアで、関節炎を患い、以前に薬物治療(プレドニゾン)を受けたことがある者またはそれを受けていない者が濃縮軟骨エキスの使用を開始した。関節の疼痛と硬直の軽減によって検証したところ、その病状が改善していたことが立証された。
【0096】
本明細書で後に示す結果は極めて有望であり、これによると、粗透過物とその画分が有用なのはすべての血管形成-依存性疾患の治療に対してであって、試験を行った特定の疾患だけではないことが予測されると考えられる。疾患に血管形成が含まれる限り、本発明の軟骨エキスは、その有効量を含む組成物中に入っていて、この組成物が適切な形態や正しい投薬であれば、その疾患については効果があると考えられる。
【0097】
従って、当業者なら非常に多くの組成物を導き出すことができ、その選択はその投与方法と対照の病組織によって導かれるので、本発明が血管形成疾患の治療に使用する以下の特定の組成物に限定されないことが理解されるであろう。組成物は様々な経路で投与され、例えば局所、経口、舌下、直腸、静脈内、筋肉内、拡散法等がある。
軟骨エキスは魚のような味とにおいがあるので、患者の服薬遵守を促進するために、この組成物に調味料や香料を添加することができる。
【0098】
乾癬
乾癬を患う患者でその有効性を検証するために、以下の外皮用組成物を作成し、試験を行った。
○EMULGADETMCLB 29%(w/w)
○20倍粗透過物 69.5%(w/w)
○GERMABENTMII 1%(w/w)
○ラバンデューラ・アングスチフォリア 0.5%(w/w)
【0099】
ステアリン酸エステル、脂肪族アルコール、非イオン性乳化剤の混合物であるEMULGADE↑TM↑CLB(ヘンケル・カナダ社から購入)を撹拌しながら65〜70℃で加熱した。混合物の撹拌を続けながら加熱を停止した。混合物の温度が45℃に達したときに、精油のラバンデューラ・アングスチフォリアと防腐剤のGERMABENTMII(ジアゾニジル尿素30%、メチルパラベン11%、プロピルパラベン3%、プロピレンパラベン56%、サットン・ラボラトリーズ、米国、ニュージャージー州)を添加した。この混合物の温度が30℃に達したときに、軟骨エキスを加えた。こうして得た組成物は、滑らかな非油脂性のクリームであった。製造指針によれば、EMULGADETMの割合を変更することによって他の形態の種々の粘度の外皮用組成物(乳剤、ローション剤、軟膏剤)が得られる。ペースト剤、ゲル剤その他あらゆる形態の経皮吸収製剤を得るためにその他のビヒクルや賦形剤を使用することができる。
【0100】
上記の製剤を2週間の期間中、試みられた従来の治療に応答性であったがしばらくすると治療抵抗性となった乾癬を患う9名の患者のパネル(局所投与)に1日2回投与した。この試験のために四肢の両側に同じくらい対称的な程度に乾癬がある患者を選択した。これらの試験は二重盲検方式で行い、いずれの患側が軟骨エキスを含む組成物で治療され、いずれが対照組成物で治療されたかは皮膚科医も患者も知らなかった。乾癬が角化症を併発していない5名の患者で顕著な改善が見られた。角化症のある患者についての結果は中度良好であった。患者2名の身体部分の写真を図14と図15に示す。図14では、角化症を併発した乾癬に冒された患者は、それにもかかわらず、1ヶ月間の治療後には紅斑がかなり軽減し、心因性掻痒を随伴していなかった。しかしながら、角化症は依然重要である。
【0101】
角化症を併発していない乾癬を患う2番目の患者の写真(図15)には3ヶ月間治療後のずっと良好な改善が示されている。乾癬は多因子性疾患と思われるので、患者の応答は、定着やこの状態の永続化における血管形成や炎症などの構成要素の波及の重要性に依存すると仮定される。我々のエキスには、抗血管形成活性が本当に存在し、それはDMBA処理ラットとCAM試験で示されている通りである。また、抗炎症活性も検証した(下記考察)。この種の処方を関連他因子に向けられた他の治療剤(角質溶解剤、他の抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、免疫抑制剤等)で補えば、より良好な結果が得られそうである。
【0102】
この補完は、例えば有効量の角質溶解剤を含むように処方を修正するという形にすることができる。また、このような相補性の治療剤を同時に、あるいは現在の局所処方の代わりに、別に投与することによっても達成できる。さらに、この相補的な薬剤を同じ経路で投与する必要はない。
軟骨エキスの割合が高いのにもかかわらず、上記の処方は全身効果を示さず(効果が治療した領域に限定される)、二次効果も示さない。
【0103】
癌
前立腺癌を患う患者1名が10倍濃縮透過物を試みた。1986年に腺癌が診断された。そのとき、放射線治療が行われた。1991年に、PSA(前立腺血清抗原)濃度が正常値の上限4μg/Lに対して138μg/Lであった。次いでこの患者は抗アンドロゲン治療(EUFLEXTM)を併用した性腺摘除によって完全に異なる治療を受けた。この治療は3年の間効果があったが、その後PSA濃度が再び上昇し始めた。1994年以来、この患者は10倍透過物(舌下1日投与量約75mgタンパク質/7mlエキス、約1〜1.5mg/kg体重/日に相当する)を使用している。
【0104】
DMBA処理動物で得られた結果(上記参照)によれば、かなりの投薬量を服用していても、おそらくかなりの割合で胃腸管で吸収されているはずである。PSA濃度は12から0.9μg/Lにゆっくりと低下し、これは例えば充分にPSAの正常濃度の範囲内である(最終結果は1995年5月に得られた)。また、この調薬養生法は、病理を制御するべく、投与経路、活性成分の生物学的利用能、所望の積極性に従って意のままに修正できる。このとき、無毒性ラット(上記実施例参照)およびヒト(データは示していない)で検証した。
【0105】
DMBA処理ラットで行ったもう一方の生体内実験では、流エキスの体重当たりの投与量は約190〜220mgタンパク質/kg体重であり、癌血管領域の縮退に貢献したと推定される(タンパク質量がずっと多量の凍結乾燥品を併用したとき55%)。従って、約0.1から約200mg/kg体重/日は、血管形成を軽減または完全に破壊することによって、少なくとも部分的には、癌の治療にとって正確に近い妥当な範囲の50%有効量(ED50)であると仮定される。
【0106】
関節炎
関節炎を患う患者が自発的に総流エキス7mlを1日につき1から2単位数ヶ月間試した。これらの患者は関節の機能回復、疼痛および炎症の減退によって容態がゆっくりと改善するのが見られた(約60%に及ぶまで)。関節炎は血管形成および炎症の構成要素を有するので、上記の効果は軟骨エキスの抗血管形成活性および抗炎症活性に帰属される。
非抗血管形成効果
【0107】
座瘡
発明者らが知る限りでは、座瘡は血管形成の構成要素を有する疾患や障害ではないが、それにも関わらず、軟骨エキスを座瘡に冒された患者で試験することに心がそそそられた。座瘡に冒された患者で軟骨エキスの実験を行うため、以下のゲル製剤を作成した。
CARBOPOLTM 1.2%
精製水 77.2%
NaOH 0.3%
PHENOXETOLTM 0.3%
TWEEN 80TM 03.%
2倍軟骨エキス 20.0%
40倍アロエ・エキス 0.5%
【0108】
2倍軟骨エキスには9〜12mg/mLのタンパク質が含まれる。この製剤によると、多少とも重症の形態の座瘡(炎症性座瘡とkystic座瘡、データは示さない)に冒された患者の皮膚の様相が顕著に改善される。
この結果は抗血管形成効果によるか(従って座瘡中の血管形成構成要素が明らかにされる)、あるいは血管形成以外の効果を有する活性成分による(例えば抗炎症効果、下記考察参照)。
上記の臨床試験で得られるすべての結果によると、血管形成依存性または炎症性疾患、あるいはその両方の治療における軟骨エキスの大きな潜在能力が示される。軟骨エキスの量並びにその処方は、特定の必要を満たすために意のままに変更できる。
【0109】
局所その他のすべての組成物は、タンパク質含量に基づいて、広範な用量の軟骨エキスを含むことができる。試験を行った3種類の特定カテゴリーの症例中、極めて多様な薬用量または処方、あるいはその両方を使用した。予測されるすべての適用に対し(点眼剤から皮膚科および抗癌剤の製剤まで)、総流エキスの最低最終タンパク質濃度は極めて低いと推定される(約0.1mg/mLから)。この濃度範囲が比較的低いのは、活性成分が作用部位に達するときの到達能と浸透性、並びにこの活性成分が効果的に捕捉され、組織が血管形成抑制因子に対して感受性であること、すなわち応答することに依存している。ある適用の処方の最終タンパク質濃度の上限は今のところ未知である。試験したなかで最高の最終濃度は乾癬症例用初訪中の約9mg/mLタンパク質と、前立腺癌症例で投与した7mLの薬用量単位の約12mg/mLである。
【0110】
上で述べたように、鮫軟骨流エキスの活性は水溶液中で凍結乾燥するといくらか失われる。しかしながら、凍結乾燥の前に当業界で公知の安定剤や保護剤を添加すれば、感受性ある活性が保たれ、比較的高用量の軟骨エキスを乾燥状態で投与することが可能となる。
【0111】
プロテインキナーゼC(PKC)媒介事象の拮抗剤としての軟骨エキス
最近の発表によると、PKC活性によって正常表皮細胞が炎症の媒体であるインターロイキン-8(IL-8)の産生量が増えた(Chabot-Fletcherら(1994)J.Invest.Dermatol.103:509-505)。さらに、乾癬表皮細胞が極めて多量のIL-8を産生し、それによって乾癬プラークにおける血管新生がさらに促進された(Nickoloffら(1994)Am.J.Pathol.144:820-828)。軟骨エキスが乾癬の治療に大変有望であることが示されたので、この細胞形質導入路の公知の拮抗剤であるトリホルボールアセテート(TPA)でPKCを活性化した表皮細胞でその効果を試験した。
【0112】
図28に表皮細胞の分化度がTPAによって5倍に上昇していることを示す。鮫軟骨自体には角化外皮の形成に何の効果もなかった。しかし、鮫軟骨エキスを添加すると、TPAによって誘発された角化外皮形成が約60%を超えて阻害された。TPA誘発が乾癬表皮細胞によく似ているかどうか我々は知らない。もしよく似ていれば、この結果は軟骨が生体内で正常表皮細胞には何も効果がなく、その一方で乾癬(すなわち活性化)表皮細胞には効果があることを示している。TPAによって活性化された表皮細胞、並びに乾癬プラークまたは表皮細胞におけるIL-8産生の軟骨エキスによる阻害の検証が残っている。IL-8濃度の減少は本エキスの抗炎症効果と抗血管形成効果の確認として価値がある。
【0113】
鮫軟骨エキスでは抗炎症活性と抗血管形成活性とは別種である
血管形成は多くの疾患で炎症に随伴することが多いため、鮫軟骨エキス中で各活性の原因を個別に特定することが望ましい。これに関して、血管形成の疑いのない皮膚刺激モデルを選択してエキスの抗炎症活性および鎮静活性の試験を行った。試験のためにペルーバルサムに対する皮膚感受性の病歴のある9名のボランティアが選ばれた。試験化合物は次の通りであった。
1.1倍鮫軟骨50%/D-MEM培地
2.1倍鮫軟骨20%/D-MEM培地
3.1倍鮫軟骨10%/D-MEM培地
4.コーラ・ニチダ(インデナ)10%/水-アルコール 1:1
【0114】
この4種類の試験化合物をボランティアの腹側前腕に塗布した。この物質を20分間吸収させた後、刺激物であるペルーバルサムを試験部位に塗布した。皮膚刺激は皮膚発赤の強さによって測定した。発赤度はミノルタ・クロマメータで測定し、陽性対照および陰性対照と比較した。陽性対照は、ペルーバルサムだけで処理した皮膚の色であり、陰性対照はコーラ溶液で処理して試験製品と同様に誘発した皮膚の部位とした。統計的有意差は両側確立t検定を介して計算した。図29に10%のコーラが70%活性であることを示す。鮫軟骨は、濃度20%および10%の抗刺激剤としてそれぞれ58%および60%であった。用量-応答効果はなかった。これらの結果より、本軟骨エキスが抗血管形成効果とは別種の抗炎症活性および鎮静効果を有することが示唆される。
【0115】
抗コラーゲン溶解活性
HPLCクロマトグラフィー
流エキス(DUP)の試料980mLを横流限外ろ過装置(ペリコンTM、ミリポア)内の10キロダルトンのカットオフ・メンブランでろ過した。装置をまず1Lの水で洗浄した。最終回収量は10キロダルトンを超える画分480mLと10キロダルトン未満の画分1.8Lであった。10キロダルトン未満の画分を冷フィンガ蒸発によって180mLに濃縮した(<10-10X)。<10-10Xの部分標本8×100μlをCDC-Sヘキシル5μmHPLCカラム(25×0.94cm)に負荷し、まず4mL/分の100%H2 Oで、次いで8.5mL/分の100%メタノールで溶出した。OD214 のピークに対応する画分を分取した。
5つの画分、すなわちFr1、Fr2、Fr3、Fr4およびFr5を分取した(図30)。最初の3つの画分には少なくとも主ピークが含まれる。
【0116】
コラゲナーゼ活性測定
組換えヒト皮膚コラゲナーゼタイプ1(MMP1)を用い、蛍光ペプチド基質(活性測定1)とコラーゲン基質(活性測定2)を使用してコラゲナーゼ活性測定を行った。
活性測定1
この活性測定はKnightら(1992)FEBS Let.296,263-266に記載されている。この方法にはメタロプロテイナーゼの活性部位を模擬した蛍光ペプチド基質(Mca-pro-leu-glu-leu-Dpa-ala-arg-NH2 )が利用される。この基質は蛍光基(Mca)を一端に有し蛍光消光部位(Dpa)を他端に有する。無損傷の基質では、消光基が効果的に蛍光をマスキングする。基質が酵素切断されると、試験管中の蛍光が増量する。
【0117】
コラゲナーゼ活性化はWeingartenら(1985)Biochemistry24,6730に記載されている。50mMトリス塩酸、10mMCaCl2 、pH7.5で1μgを100μgに希釈し、10mg/mlのトリプシン溶液(1mMHCl溶液)1μlを添加し、20℃で15分間インキュベートした。大豆トリプシンインヒビター(SBTI、5mg/ml)を加えることによって活性化を終結させた。各々にミクロキュベットを添加した。
インヒビター25μlまたは50μl(H2 で50μlに調製する)、
50mMトリス塩酸40μl、200mMNaCl、10mMCaCl2 、pH7.5、
活性化コラゲナーゼ8μl(最終67ng)、
基質2μl(1mM原液/DMSO、最終20μM)。
蛍光はλex=328nm、λem=393nmで記録した。
【0118】
この結果によると、Fr1が最もコラゲナーゼ阻害活性の高い画分であった(図31)。すべての画分により低い水準の活性があった。オタマジャクシ脊椎動物コラゲナーゼについて試験した場合、この酵素は鮫軟骨エキスによってかなり阻害された(EC50約10〜20μg/mL)。
【0119】
本活性測定はWelgusら(1979)JBC256、9511-9516に記載されている。この方法ではSDS-PAGEを使用してコラゲナーゼ・タイプ1(MMP1)による切断を試験する。コラゲナーゼ・タイプ1は天然コラーゲン分子を一ヶ所で切断して元のコラーゲンの75%と25%の2個のフラグメントにする。数時間切断後、SDS-PAGEによって基質から生成物を分離することによって反応を監視する。切断コラーゲンの非切断コラーゲンに対する比は、ゲルをクーマジー・ブルー(または銀染色)で染色することによって視覚化される。
【0120】
活性化コラゲナーゼ21ng(活性測定1参照)を最終体積20μlのウシ皮膚コラーゲン(Worthington)5μl+/-インヒビターに添加した。反応を35℃で16時間インキュベートした後、40mMEDTAを含むSDS-PAGE試料を添加することによって停止させ、煮沸し、8%ゲル上に負荷した。
結果を以下の表にまとめる。
【0121】
【表11】
【0122】
40mMEDTAはコラゲナーゼを阻害した。総流エキスDUPによると、抵抗コラゲナーゼ活性が示された。画分1から5には活性があった。最も活性が高かったのは画分1であった。10キロダルトンより高い分子量では有意な阻害活性が示されなかった。
【0123】
化粧品応用および組成物
上記の試験によると、本発明の軟骨エキスが非常に多くの医学的応用があることが分かる。本エキスに回収された多様な活性、すなわち抗コラーゲン溶解活性、抗炎症活性およびPKC誘発分化に対する阻害活性は、特に化粧品応用において望ましい。本発明の軟骨エキスはPKCを媒体とする細胞事象の拮抗効果を示したことと、このような拮抗効果が当業界で皮膚障壁修復機能を改善するものであることが示唆されていることから、ほ乳類の皮膚に軟骨エキスおよび製剤学的に許容できる運搬体を含む組成物を塗布する段階からなるほ乳類の皮膚の皮膚障壁修復機能を改善する方法、そしてこのような組成物は本発明の範囲内にある。
【0124】
また、その他または類似の組成物も、皮膚の鎮静化、すなわちほ乳類の皮膚における炎症の鎮静化に使用できると理解される。炎症は化学的刺激物、物理的剥離、および紫外線照射に曝されることなどの種々の作用因によって引き起こされる。また、皮膚中のコラゲナーゼを阻害する組成物と方法も企図される。コラゲナーゼと炎症は早期老化(コラーゲンの分解)と関連づけられ、従って軟骨エキス中に回収された拮抗活性も早期老化を遅らせ、ほ乳類のしわと萎縮を調節する組成物と方法に寄与させることができる。しわや萎縮の原因としては、年齢、紫外線照射や環境汚染物質に曝されること等が挙げられる。
【0125】
局所組成物にはそれぞれの特定の応用によって決定される有効量の鮫軟骨を含ませることができる。一般には、これらの組成物には約0.1から約75重量%の1倍から20倍の流エキスと、約50から99.9重量%の製剤学的に許容できる賦形剤を含ませることができる。これらの組成物には皮膚中の過酸化脂質の形成を予防する作用物質などの抗酸化剤を含ませることができる。このような抗酸化剤の例としては、トコフェロール、トコフェロール誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、およびBHTがある。
【0126】
この組成物にはホスホリパーゼA2インヒビターや植物由来の抗刺激物質であるコーラおよび緑茶のエキスなどの抗炎症剤を補うことができる。局所組成物は液剤、懸濁剤、ローション剤、チンキ剤、ゲル剤、クリーム剤、噴霧剤、乳剤、展着剤、軟膏剤、リポソーム(少なくとも少量の軟骨流エキスがリポソーム中に存在する)などの多様な形態とすることができる。
【0127】
結論
本発明の方法は臨床価値の大きい軟骨エキスの製造を提供するものとして示した。この新規の方法によって製造される鮫軟骨エキスは、良好な収率で回収される複数の活性を含む。軟骨エキス、特に流エキスとその画分は、正常細胞に対しては無毒である一方で多種多様な疾患や状態に効果があるため、きわだった潜在能力を有する。
【0128】
必要な材料
○冷却器
○手術器具
○肉細断機
○プラスチック製の袋
○工業用ブレンダー(フィッシャー・サイエンティフィクから購入した3速ブレンダー使用)
【0129】
○水精製装置(逆浸透圧および0.1μmろ過、コンチネンタル・ウォーター・システム、PRE2202型、製造番号91089、フィッシャー・サイエンティフィク(ケベック州モントリオール)から購入したモデュラブ・バイオサイエンスRQ/研磨装置)。この装置は発熱性]物質のない高水質の水を供給する。
○フィッシャー・サイエンティフィクから購入した精密天秤メトラーAEシリーズ
○デュポン・カナダから購入した遠心機Sorvall RC-285
○遠心機CEPA
○孔隙率30μMのナイロン・ポケット
○オートクレーブ(自動蒸気滅菌機サンヨーMAC350P型)
○132℃で10分間滅菌し35分間乾燥したナルゲン500mL容器
○孔隙率24μmのワットマン・リーブ・エンジェル円錐形ろ紙
【0130】
○限外ろ過カラム(分子量カットオフ:適切な場合500キロダルトンおよび1キロダルトン、表面積:25平方フィート、流速:130L/分、吸込圧力:30psi、吐出し圧力:5psi、米国マサチューセッツ州ウイルミントンのコッホ・メンブラン・システムズ社から購入)
○130L/分の流速を提供するための衛生遠心ポンプ(モナーク・インダストリーズ、ACE-S100モデルA型)
○無菌箱(イングラム&ベルから購入した層流箱NuAir)
○ミリパック-60 0.22μm滅菌フィルター
○無菌透明または褐色ガラス瓶
○DC-10アミコン濃縮器
【0131】
○Rotoforバイオラッド170-2950
○カットオフ値各10、30、100キロダルトンのアミコン・フィルターSIOY10、SIOY30、SIOY100
○FPLCファルマシア216007(コンピュータ ファルマシア216014)
○ミルスタンドS-300 26mm/60cm(ファルマシア)
○スーパーローズS-12 10mm/30cm(ファルマシア)
○凍結乾燥機ラブコンコ10273A
【0132】
本発明は本明細書上記に記載され、本開示から逸脱することなく、本発明の要素を同じ目的を達成するであろうその等価物によって実現する取り替えによって修正をもたらすことは、当業者の能力と知識で十分可能であると理解すべきである。これらの明瞭な変型は本適用によって包含されると思量される。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】図1は、ZR75-1およびMCF-7細胞に対する、増加する投与量のサメ軟骨(固体状抽出物)の阻害活性を示す。
【図2】図2は、2つの濃度の軟骨の凍結乾燥物を使用するか、または使用しないで、増加する濃度のエストラジオールの存在において、DNA含量により測定したMCF-7細胞の量の投与量-応答曲線を示す。
【図3】図3は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺癌を発生したラット、および水のみを投与したもの、の肝臓切片の比較を示す。
【図4】図4は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺癌を発生したラット、および水のみを投与したもの、の肝臓切片の比較を示す。
【図5】図5は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺癌を発生したラット、および水のみを投与したもの、の腎臓切片の比較を示す。
【図6】図6は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺癌を発生したラット、および水のみを投与したもの、の腎臓切片の比較を示す。
【図7】図7は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺癌を発生したラット、および水のみを投与したもの、の肺切片の比較を示す。
【図8】図8は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺癌を発生したラット、および水のみを投与したもの、の肺切片の比較を示す。
【図9】図9は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺腫瘍を発生したラット、および水のみを投与したもの、の乳腺腫瘍切片の比較を示す。
【図10】図10は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺腫瘍を発生したラット、および水のみを投与したもの、の乳腺腫瘍切片の比較を示す。
【図11】図11は、図9および図10から誘導されたヒストグラムであり、腫瘍における血管面積に対する軟骨抽出物の効果を示す。
【図12】図12は、ロトフォー(Rotofor)で分離された液状画分の非変性条件における電気泳動プロフィルを表す;分子量マーカーは左に存在し、次いで分離された画分との比較のために、分画前の粗製透過物の試料が存在する。
【図13】図13は、ロトフォー(Rotofor)で分離された液状画分の非変性条件における電気泳動プロフィルを表す;分子量マーカーは左に存在し、次いで分離された画分との比較のために、分画前の粗製透過物の試料が存在する。
【図14】図14は、角質化した乾癬を有する患者の初期の症状を示す、図面代用写真である。
【図15】図15は、角質化した乾癬を有する患者の、有効量の濃縮された液状軟骨抽出物で治療した時の患者の症状の有意な改善を示す、図面代用写真である。
【図16】図16は、角質化しない乾癬を有する患者の初期の症状を示す、図面代用写真である。
【図17】図17は、角質化しない乾癬を有する患者の、有効量の濃縮された液状軟骨抽出物で治療した時の患者の症状の有意な改善を示す、図面代用写真である。
【図18】図18は、本発明のサメ軟骨の液状抽出物のFPLC移動パターンを示す。
【図19】図19は、先行技術(Balassaら)のサメ軟骨の抽出物のFPLC移動パターンを示す。
【図20】図20は、先行技術(Oikawaら)のサメ軟骨の抽出物のFPLC移動パターンを示す。
【図21】図21は、図18において規定したのと同一の抽出物のHPLC移動パターンを示す。
【図22】図22は、図19において規定したのと同一の抽出物のHPLC移動パターンを示す。
【図23】図23は、図20において規定したのと同一の抽出物のHPLC移動パターンを示す。
【図24】図24は、対照と比較した、抗血管形成参照化合物であるプロタミンの異なる濃度を使用して実施したCAM試験の結果を示す。
【図25】図25は、本発明のサメ軟骨の本発明の全体の液状抽出物(DUP)の2つの画分を使用して実施したCAM試験の結果を示し、一方は10,000ダルトンより小さい分子量を有し、他方は10,000ダルトンより大きい分子を有する。
【図26】図26は、Balassaの方法により製造された生成物(BAL)の等しい濃度と比較したときにおける、本発明の全体の液状抽出物(DUP)を使用して実施したCAM試験の結果を示す。
【図27】図27は、Oikawaの方法により製造された生成物(OIK)の等しい量の乾燥物質重量から得られる試料と比較したときにおける、本発明の全体の液状抽出物(DUP)を使用して実施したCAM試験の結果を示す。
【図28】図28は、本発明に従い調製された全体のサメ軟骨の液状抽出物の存在または非存在において測定した、DMSO対照と比較した、ケラチノサイトに対するTPAの効果を示す。
【図29】図29は、皮膚の刺激のモデルに対する本発明の全体の液状抽出物の抗炎症効果を示す。
【図30】図30は、10,000ダルトンより小さい分子量を有する本発明の全体の液状抽出物の画分の他のHPLC移動パターンを示し、前記画分は濃縮し、5つのサブ画分に分離された。
【図31】図31は、異なる被験体積における図30に示した各サブ画分の抗膠原溶解作用を示す。
【背景技術】
【0001】
発明の背景
軟骨は無血管化された組織であり、そして抗血管形成因子を含有する潜在的候補として研究されてきている。また、軟骨は腫瘍発生に対して比較的耐性の組織である。軟骨に関連する腫瘍、すなわち、軟骨肉腫は、充実腫瘍のうちで血管化が最も少ないものである。血管形成は、腫瘍の発生において重要な因子の1つのである。腫瘍細胞が隣接血管網状組織を誘発して拡張させて、それらの栄養要求物を供給できる場合、離散した充実腫瘍の塊が現れる。したがって、血管形成に関係する因子は腫瘍および抗血管形成因子の発生における役割について研究されてきており、さらに、血管形成阻害活性を有する薬剤は、また、腫瘍の増殖を抑制するか、または腫瘍を退行させるツールとして研究されてきている。
【0002】
仔ウシの肩甲骨の軟骨は、充実腫瘍の血管化を阻害する物質を含有することが発見された(Langer et al.、1976)。それは抗腫瘍剤としての可能性を促進するために、軟骨のより大きい供給源が探索されてきている。
【0003】
サメはこの種類の血管形成インヒビターの潜在的源である。なぜなら、サメの体内骨格は完全に軟骨から形成されているからである(サメの体重の6%/仔ウシにおいて0.6%)。また、興味ある特性として、サメは腫瘍を発生する性向が少ない。サメにおける腫瘍発生の確率が少ないことを説明するために、多数の仮説が苦心して作られて来ている。Marchalonis et al.(1990)は、IgM抗体が攻撃性因子を容易に攻撃できることを示した。McKinney et al.(1990)は、サメが正常細胞を新形成細胞と区別し、新形成細胞を破壊できるマクロファージを有することを示した。RosenおよびWoodhead(1980)は、軟骨魚網(elasmobranchs)(サメおよびエイが属するグループ)において腫瘍がほとんど存在しないのは、それらの組織中のイオン強度が高いためであり、これは高い体温に相当することを仮定した。
【0004】
これらの条件において、これらの著者らは免疫系が100%近い免疫学的監視機構を発揮すると考えている。Moore et al.(1993)は、サメは抗菌性および抗原生動物性を有するアミノステロールを産生することを発見した。最後に、LeeおよびLanger(1983)およびFolkmanおよびKlagsbrun(1987)は、サメが血管新生化を阻害する物質を産生することを示した。LeeおよびLanger(前掲)は、変性条件においてサメ軟骨からこの物質を抽出すること(グアニジン抽出)によって、この物質を単離した。しかしながら、この抽出法は非常に長く(41日)、変性された因子を有する抽出物を発生することがあり、そして活性成分の収率は低い。仔ウシから分離された活性物質は約16キロダルトン(kd)の分子量を有するが、同一グループの研究者らはサメにおいて取り出されたものに正確な分子量を与えなかった。
【0005】
この物質は、3500ダルトンより高い分子量を有するとして定義されるだけである。Oikawa et al.(1990)は、期間を短くした(41日の代わりに2日)以外、LeeおよびLangerが記載する方法と同一の抽出法を適用した。Oikawa et al.がサメから単離した抗血管形成物質は、1000〜10,000ダルトンの範囲の分子量を有する分子に制限される。Schinitsky(米国特許第4,473,551号)は、粗製粉末状サメ軟骨の水抽出物を記載し、その100,000ダルトンより大きい画分は単独で、またはグルコサミンと組み合わせて抗炎症活性を有する。この抽出物の抗血管形成活性または抗腫瘍活性を有する成分は、この特許において示唆されてない。Kuetner et al.(米国特許第4,746,729号)は、ウシ軟骨からの多形核好中球(PMN)エラスターゼインヒビターを単離した。
【0006】
このインヒビターは軟骨の水性抽出物から得られ、それから50,000ダルトンより小さい分子量の分子が保持された。セファクリル(Sephacryl)S-200上の分画において、多数の画分が得られ、これらの画分が抗エラスターゼ活性を示した後、これらから10〜40kDの画分をプールした。活性成分は9.5の等電点を有し、そして約15,000ダルトンの分子量を有することがある。Kuetner et al.(米国特許第4,042,457号)は、また、ウシ軟骨が50,000より小さい分子量の成分を有し、この成分が細胞増殖阻害活性を有し、内皮細胞増殖に対する活性をもたないことを示した。
【0007】
Balassa et al.(米国特許第4,822,607号)は、水溶液中の軟骨抽出物を獲得し、この抽出物は抗腫瘍活性を有する。しかしながら、我々はBalassaの方法を再現することによって得られた抽出物において抗腫瘍活性を観測しなかった。Spilburg et al.(米国特許第4,243,582号)は、ウシ軟骨から65kDの分子量および3.8のplを有する2つの糖タンパク質を単離し(グアニジン抽出)た。これは抗トリプシン活性および内皮細胞増殖阻害活性を示す。
【0008】
仔ウシおよびサメの軟骨は、多数の生物学的活性、例えば、前炎症活性、抗炎症活性、抗血管形成活性、リゾチーム活性、細胞増殖活性、コラゲナーゼIおよびIV型、エラスターゼ、および他のプロテアーゼ、例えば、トリプシン、キモトリプシンおよびプラスミンに対する阻害活性を含有する。しかしながら、臨床的に価値ある活性のプールを含んでなる軟骨抽出物は、まだ、得られていない。
【0009】
サメ軟骨の1または2以上の抗血管形成成分は、一般に、ウサギ角膜ポケットのアッセイまたはヒヨコ漿尿膜(CAM)アッセイにおいて試験された。今日まで、全粉末状軟骨は直接in vivoにおいて腫瘍上で、ヌードマウスに移植されたヒト黒色腫異種移植片上で試験され(米国特許第5,075,112号)、また、CAM試験において抗血管形成作用について試験された。抗腫瘍作用は軟骨抽出物にに帰属されたが、この作用は血液供給から腫瘍を除去する抗血管形成成分に最もしばしば帰属された。現在まで、サメ軟骨が腫瘍細胞の増殖に対して直接の作用を有するという証拠は存在しない。
【0010】
サメ軟骨抽出物および画分を得るわずかの方法が既に知られている。それらのいくつかは、抽出を使用しないで粉末状粗製軟骨を製造する(米国特許第5,075,112号)。他の方法は、グアニジンのような変性剤を使用する(米国特許第4,243,582号)。他の方法は、酵素消化により軟骨を前処理して、軟骨を取り囲む筋肉、神経または血管構造物を除去し、この前処理工程に引き続いて有機溶媒中で脂肪を排除し、次いで活性成分を水性相中で抽出する。(Balassa et al.、米国特許第3,478,146号、同第4,350,682号、同第4,656,137号および同第4,822,607号)。
【0011】
生物学的に活性な軟骨成分の完全性の保存に対する、このような前処理の効果は知られていない。酵素消化は、度である場合、活性タンパク質成分加水分解することがある。Balassaの方法は、抽出物中の活性成分を濃縮する分画工程を含まない。他の方法は、単に、非可溶化物質を排除することによって、軟骨の水性抽出物(水中において(米国特許第4,473,551号)または塩溶液(米国特許第4,746,729号))を製造する。後者方法において、それ以上の研究および精製のために、特定の分子量の特定の画分が特に保持された(上記説明を参照のこと)。
【0012】
上に引用した方法は、いくつかの欠点を有する。それらの方法は、いくつかの価値ある成分を変性することがある。そうでない場合、それらの方法は実際的目的に時間がかかり過ぎるという欠点を有する。そのうえ、時間を要する方法は必然的に十分な量の活性成分を生成せず、そして回収された成分の間で、あるものは全く回収されないか、または検出可能活性を示すためには不十分な収量で回収されるか、または特定の活性を得ることに集中することによって、いくつかの方法は無視されてきている。
【0013】
血管形成は癌の発生にのみ関係しない。異なる生理学的系(括弧内に示す)に影響を与える、多数の疾患または症状は、血管形成依存性であり、それらの例は下記の通りである:関節炎およびアテローム性動脈硬化症の班(骨および靱帯)、糖尿病性網膜炎、血管新生緑内障、トラコーマおよび角膜移植血管新生化(眼)、乾癬、硬皮症、血管腫および過形成性瘢痕(皮膚)、血管付着および血管線維腫(血液系)。したがって、新規な、有効な抗血管形成「因子」は、これらの疾患の治療ならびに癌治療において使用することができる。そのうえ、前述の疾患または症状の多数は炎症成分をも有するので、新規な、有効な抗炎症性「因子」は、これらの疾患の治療ならびに他の炎症性疾患または症状の治療において使用することができる。
【0014】
さらに、コラゲナーゼのようなプロテアーゼは、コラーゲン分解活性を有するために、多様な疾患および症状、例えば、癌および早期の老化に関係するので、新規な、有効な抗膠原溶解「因子」は、膠原溶解成分を有する疾患または症状の治療において使用することができる。血管形成、炎症およびプロテアーゼ、例えば、コラゲナーゼは、非常に種々の疾患または症状において、単独で、または組合わせで直面することがあるので、正常の身体機能に影響を与えないで少なくともすべてのこれらの活性を中和することができる生成物は大きい治療上の価値を有するであろう。
【0015】
発明の説明
本発明は、多数の治療上価値ある活性を含有するという利点を有する、軟骨抽出物を製造する新規な方法を提供する。これらのうちで、抗血管形成活性、抗炎症活性、抗膠原溶解活性、in vivo抗腫瘍増殖活性および直接in vitro抗腫瘍増殖活性は、サメ軟骨抽出物の中に満足すべき濃度において存在することが確証された。他の活性は同定または確証されてない。腫瘍細胞系において測定された作用は、直接抗腫瘍増殖活性の外に、細胞障害活性が存在するように思われることを示してである。すべての活性はサメ軟骨の液状抽出物において得られ、そしてそれらのいくつかはサメ軟骨の固体状抽出物において得られるか、または証明された。
【0016】
本発明は、無傷の軟骨中に存在する生物学的活性な水溶性成分の実質的な部分を有する液状抽出物を得る方法に関して、この方法は下記の工程を含んでなる:
a)軟骨が約500μmより小さいか、またはそれに等しい大きさを有する粒子に小さくなるまで、前記生物学的に活性な成分の完全性の保存に適合する条件において、軟骨を水溶液中で均質化して、粒子と前記生物学的に活性な成分を有する粗製の液状抽出物との混合物を形成し、
b)前記ホモジネートを遠心して粒子を粗製の液状抽出物から分離し、そして
c)約500キロダルトンより小さいか、またはそれに等しい分子量を有する軟骨分子を含有する最終の液状抽出物を得るために、粗製の液状抽出物をさらに分離する。
【0017】
この新規な方法は、実施が容易でありかつ効率よいという利点を有する。高い収量の軟骨抽出物はが得られ、この抽出物は、特にサメ軟骨から得られ、少なくともすべての前述の生物学的活性を含有する。好ましくは冷たい温度(約0〜10℃)において、非変性条件において(好ましくは純粋な水)において、ほぼ中性のpH(約6〜8)において実施して、未知の物理化学的特性の化合物を回収する確率を最大とする。この方法によれば、軟骨成分は小さい体積の溶液(軟骨の1Kgについて1リットル程度に少ない)で、短い期間の均質化(10〜15分まで程度に短い)後に抽出することができる。固体状抽出物を回収するために、同一の方法を使用するが、ただしペレットを回収し、そして、上清を無視して、凍結乾燥する。
【0018】
本発明は、軟骨抽出物、特に軟骨魚網の種、より特にサメから供給される抽出物に関する。固体状抽出物は活性を示した。それはコラーゲンおよび非加水分解性成分を含有することがある。それは、また、全体の液状抽出物から抽出された残留活性を含有することがある。全体の液状抽出物は、活性に非常に富んでいる。それはそのままで使用するか、または濃縮することができる。生物学的活性の維持を好適にする濃縮工程は可能であった。活性成分を劣化させる方法、例えば、加熱蒸発方法に頼ることは、注意して回避された。約1KDaの分子量カットオフ値を有する膜を使用する限外濾過を使用して、本発明の液状抽出物を濃縮した。
【0019】
結局、約1〜500KDaの分子量の分子を含有する軟骨抽出物はが得られ、試験した。全体の液状抽出物(0〜500KDa)をさらに分画して、その活性成分を特徴づけた。多数の画分が異なる方法により得られた。腫瘍細胞系について試験した画分のあるものは、分子量および等電点によりおおまかに特徴づけられた。他の画分は活性、特に抗膠原溶解活性または抗血管形成活性を割り当てられた。これらの画分は完全に特性決定および同定されてない。したがって、価値ある活性が全体の液状抽出物および画分において回収され、これらは有利に使用することができる。大きい量の粉末状軟骨を投与する代わりに、いっそう許容されかつ濃縮された抽出物を今や投与することができる。
【0020】
本発明は、また、活性成分として、前述の軟骨抽出物の1つを含んでなる治療用または化粧用組成物に関する。最大の関心は、皮膚科学および化粧学において使用するための局所用組成物に向けられた。この関心は軟骨抽出物の観察された活性から来る。これに関して、観察された抗膠原溶解活性および抗炎症活性、および角質細胞におけるタンパク質キナーゼCの誘導により仲介される細胞分化の中和作用は、炎症の減少、しわまたは皮膚の萎縮の調節、早期の老化の遅延、アクネの減少、皮膚バリヤー機能の改善、炎症または刺激の減少および皮膚平滑化作用の組成物および方法において、サメ軟骨抽出物を使用するためのルートを開くものと考えられた。このような方法は本発明の範囲内に入る。
【0021】
サメ軟骨の液状抽出物は、癌、関節炎、乾癬およびアクネの症例において首尾よく試験され、腫瘍の増殖、血管形成、炎症および膠原溶解から成る群より選択される1または2以上の成分を有する疾患または症状を治療する組成物および方法は本発明の範囲内に入る。
【0022】
本発明の説明
本発明は添付図面に示されている特定の態様によりいっそう容易に理解されるであろう。添付図面の目的は本発明の範囲を制限するよりむしろ本発明を例示することである。
【0023】
特定の態様において、サメのブラック・スパイニイ・ドッグ・フィッシュ(Black Spiny Dog Fish)およびコモン・スパイニイ・ドッグ・フィッシュ(Commonn Spiny Dog Fish)から、軟骨を得た。エタノール処理したメスおよびハサミで引っ掻くことによって、筋肉および結合組織を除去した。次いで、軟骨をプラスチックバッグの中に真空包装し、それ以上の使用のために-20℃において凍結した。本発明の方法において、任意の軟骨源を使用することができる。「背景」の節において明確に述べた理由で、我々はサメの軟骨を選択した。軟骨魚網(これはこのグループの動物源としてサメおよびエイを包含する)の軟骨から出発して、ほぼ等しい生成物が得られると考えられる。軟骨の哺乳動物源を使用する場合、生成物は異なる可能性が最も強い。
【0024】
抽出前の軟骨の調製の変更は、それが問題の生成物(例えば、全体の液状抽出物またはその特定の画分)の活性に実質的に影響を与えないかぎり、使用することができる。いくつかの活性成分はBalassa et al.(米国特許第4,822,607号)が教示するようにタンパク質分解消化に耐性であって、軟骨から取り囲む組織を除去することができるが、他のものはこのような処理に耐えることができない。このような前処理に耐性であると思われない活性の1つは、抗血管形成活性である(図27)。したがって、別々の活性が割り当てられた水溶性活性成分のすべてのできるだけ多くを含有する液状抽出物を製造しようと望む場合、このような消化工程は回避するか、または広範な加水分解またはタンパク質分解を防止するように注意して監視すべきである。
【0025】
凍結乾燥された軟骨の調製
きれいな軟骨を新鮮な状態で使用するか、または4℃において融解した。次いで軟骨をエタノール処理した肉細断機の孔を適切な体積水(等しい量(重量/体積)はほぼ最小体積であるが、価値ある成分の回収の収率に影響を与えないで増加することができる)と一緒に多数回(特に3回以上)させた。小さい体積は、実際的観点から、不必要に大きい体積よりも操作が便利であるので、好ましい。実際に、水を逆浸透および0.1μmのフィルター上の濾過により精製した。多数の水溶液(例えば、塩を含有する)を水の代わりに使用できるであろう。複数の水溶性活性の反応を考えるとき、ほぼ中性のpHおよび非変性条件における作業は、軟骨成分のあるものの溶解または変性を回避するために好ましい。
【0026】
水溶液中の未知のタンパク質の挙動は予測不可能である;あるものは酸性加水分解において、あるものは塩基性pHにおいて、いっそう「快適」であることがある。さらに、あるタンパク質は適度の変性条件において抽出可能である。ただし、このような変性は水溶液中でこれらのタンパク質の復元に不可逆的に影響を与えないことを条件する。したがって、これらの因子のすべてを考慮して、純粋な水中で軟骨の活性成分を抽出する方法は、非常にすぐれた収率で、未知の構造および挙動を有する成分を回収するための賢明な選択であることが示された。
【0027】
次いで、約4℃において台所用ブレンダー中で最大速度において撹拌することによって、軟骨/水のブレンドを均質化した。もちろん、撹拌の速度ならびに水溶液の体積は抽出時間に影響を及ぼすことがある。したがって、均質化時間の合理的な範囲は約10分程度に短く、24時間程度に長く、好ましくは約10〜60分であることができる。温度は約10℃程度に低く維持して、酵素インヒビターを使用するとき、内因性酵素による活性化合物の分解を回避すべきである。理想的には、0℃に近い温度が探求されるべきである。通常このような実験は、温度を4〜10℃に維持できる、低い室温において実施されるので、この温度範囲は本発明の方法において許容される。明瞭および簡潔を目的として、以後この許容温度範囲を表示するために、用語「約4℃」を使用する。
【0028】
ブレンダーが粒子の大きさを十分に減少しなかった場合、このホモジネートを4℃において10分間ポリトロン(Polytron)ディスインテグレーターにかけることによって、このホモジネートをさらに液化することができる。また、ブレンドはブレンダー-ディスインテグレーターにおいて単に均質化することができ、これは、我々の手において、10分の液化工程を節約する。均質化工程が完結したとき、残留粒子の大きさは約500μmより小さい。もちろん、最初の軟骨の粉砕について説明した時間および温度の同一の許容範囲が等しく適用される。均質化後の粒子の大きさは非常に小さくある必要はない。したがって、抽出前に軟骨を微粉砕する必要性を回避することができる。事実、水性抽出前の粉末の形態の軟骨の微粉砕は、このような微粉砕を凍結乾燥状態または加熱乾燥状態で実施するとき、価値ある活性を変性することがある。
【0029】
ホモジネートを4℃、13,000×gにおいて15分間遠心分離する。この工程はペレットから上清を急速にかつ効率よく分離する1つの方法である。これらのパラメーターの変動および調節は、当業者の知識の範囲内であり、ホモジネートの体積および使用する装置の体積に依存するであろう。
生ずるペレットを24〜48時間凍結乾燥する。この最初の画分を、以後において、凍結乾燥物または固体状抽出物と定義する。
【0030】
必要に応じて、上清を24μmのワットマン(Whatman)フィルターで濾過して、限外濾過カラムの性能に影響を与えやすい粒子を除去することができる。次いで、濾過した材料を、約4℃において、約500,000ダルトンの多孔度を有する接線方向流の濾過カラム上で限外濾過する。このカラムは、0〜約500KDaの分子量の水溶性分子を含んでなる、最初の粗製透過物を与える。この粗製透過抽出物を0.22μmのフィルターで滅菌濾過し、それ以上の使用のために、アリコートを無菌のびんに入れた。この画分を、以後において、粗製透過物または全体の液状抽出物と呼ぶ。
【0031】
また、ペレットおよび上清を得るために、より高い性能の遠心分離手順が開発された。13,600×gにおける15分の遠心分離および引き続くワットマン(Whatman)フィルター上の全体の濾過の工程を、30μmの多孔度のナイロンポケットを装備したCEPA遠心分離機による3000〜4000×gの遠心分離と置換した。25kg/25リットルの調製物を、その方法において、30分以内の間遠心分離し、29リットルの上清を得ることができる。得られる水性体積は水の出発体積よりも大きく、軟骨それ自体の水分が収穫されたことを示唆する。凍結乾燥物および全体の液状抽出物は、下記の近似組成を有することがあり、この組成はバッチ毎に、異なる材料を使用するとき、観測される変動をおおよそ考慮している:
【0032】
【表1】
【0033】
タンパク質含量は、Kjeldahl法により評価し、この方法は事実有機窒素(N)を測定する。有機窒素は、下記の方程式を使用して、タンパク質当量に変換される:
【0034】
タンパク質含量(mg/ml)=(N%×6.25)/100
炭水化物は検出不可能であり、炭水化物は1つまたは他の抽出物の中に存在するが、プロテオグリカンおよび/またはムコポリサッカリドの形態にあると推定することができる。これらの化合物は測定されたレベルの湿度において含めることができる。凍結乾燥物は予期しないレベルの湿度を含有し、これはOH基により測定された。20%の水分は軟骨において通常回収される炭水化物の百分率に近いが、凍結乾燥物の湿度は0%に近くあるべきであるので、この仮説は証明されるべき状態にある。
【0035】
下記によりUSP XXIIIを適用して、無菌はコントロールされた:
1) Laboratoire de genie sanitaire du Quebec Inc.
1090、1'Escarbot、Centre Industriel St-Malo、Quebec GIN
4J4、および
2) Northview Laboratories Inc.
1880、Holste Road、Northbrook、IL、60062 U.S.A.FDA resitration no.1
4-18028。
【0036】
活性のアッセイ:
凍結乾燥物:
in vitroアッセイ:
これらのアッセイは、ホルモン依存性癌細胞系MCF-7およびZR75-1(それぞれ、ATCC(R)No.22-HTBおよび1500-CRL)について実施された。
【0037】
ZR75-1細胞:
基本RPMI培地:
52gのRPMI1640(フェノールレッドを含まない)(Sigma R8755)、17.875gのHepes(酸を含まない;Sigma H0763)、0.55gのピルビン酸ナトリウム(Sigma P5280)および10gのNaHCO3 を5リットルの純粋な水中で混合し、NaOHでpH7.40とした。
直ちに使用しない場合、この溶液を光から保護して光不安定性物質を保存しなくてはならない。この溶液を濾過し、500mlの無菌のびんの中に分配し、4℃において最大3カ月間貯蔵した。
【0038】
細胞培養維持培地:
基本RPMI培地に、10%(v/v)のFBS(胎仔ウシ血清)、100UのペニシリンG/50μgの硫酸ストレプトマイシン(Sigma P0906)/mlの培地、2mMのL-グルタミン(Sigma G1517)および1nMのE2 (β-エストラジオール Sigma E8875)を補充した。
実験培地:
基本RPMI培地に、5%のFBSA(デキストラン-炭上に吸着された胎仔ウシ血清)、2mMのL-グルタミン、100UのペニシリンG/50μgの硫酸ストレプトマイシン/mlの培地および50ng/mlのインスリン(Sigma)を補充した。この培地に、増加する濃度の前述の凍結乾燥物ならびに異なる濃度のエストラジオール(10-12~-5M)を添加した。
【0039】
MCF-7細胞:
基本DME-F12培地:
DME-F12培地(重炭酸塩およびフェノールレッドを含まない;Sigma)を、純粋な水中で製造業者の指示に従い再構成した。1リットルについて、1.2gの重炭酸ナトリウムを添加し、pHをNaOH/HClで7.40にした。この溶液を濾過し、500mlの無菌のびんに分配し、4℃において最大3カ月間貯蔵した。
細胞培養維持培地:
基本DME-F12培地に、10%(v/v)のFBS(胎仔ウシ血清)、100UのペニシリンG/50μgの硫酸ストレプトマイシン/mlの培地、2mMのL-グルタミン(Sigma)および1nMのE2 (エストラジオール)を補充した。
【0040】
実験培地:
基本DME-F12培地に、5%のFBSA(デキストラン-炭上に吸着された胎仔ウシ血清)、2mMのL-グルタミン、100UのペニシリンG/50μgの硫酸ストレプトマイシン/mlの培地および50ng/mlのインスリン(Sigma)を補充した。ZR75-1細胞について記載したように、凍結乾燥し、エストラジオールを同一濃度で添加した。
【0041】
FBSAの調製:
胎仔ウシ血清を1%(w/v)の炭(アルカリ性物質を脱色する炭)と混合した。デキストランT70の溶液を炭-血清溶液に添加して、0.1%(w/v)の濃度とした。この混合物を4℃において一夜撹拌した。4℃、10,000×gにおいて30分間遠心分離した後、血清をデカンテーションし、再び同一比率の炭およびデキストランと混合し、室温において3時間撹拌し、遠心分離した。次いで血清を56℃において20分間加熱不活性化し、滅菌濾過し、無菌のコニカル・ファルコン管の中にアリコートを入れた。
【0042】
ZR75-1およびMCF-7細胞を、24ウェルのプラーク上で20,000細胞/ウェルまたは6ウェルのプラーク上で15,000細胞/ウェルの集団の密度に到達するまで、増殖させ、異なる濃度の前述のように調製した凍結乾燥物の存在または非存在において処理した。これを行うために、凍結乾燥物を培地の中に再懸濁させ、滅菌濾過して、その水溶性成分を回収し、試験した。すべての実験は三重反復実験において実施した。2日毎に、培地を抜き出し、新鮮な培地と交換した。37℃において5%のCO2 を含有する、一定に加湿された雰囲気下に、細胞を17、7、3または3日間インキュベーター中で増殖させ、それらは、それぞれ、第1、第2、第3または第4実験に相当した。細胞を直接計数するか、またはウェルのDNA含量を測定することによって、細胞増殖の阻害を測定した。
【0043】
【表2】
【0044】
細胞増殖の上記の阻害百分率が証明するように、凍結乾燥物は投与量依存的方法において、これらの2つの細胞系の細胞の増殖を阻害することができる。
図1は、50および100mg/mlの凍結乾燥物が、3日間の処理後、これらの細胞系上の減形成を明瞭に誘発する。
【0045】
図2は、10-12 〜10-9Mのエストラジオールの存在において、処理された細胞はこれらのホルモン投与割合により非刺激とされることによって対照細胞のように応答することを示す。しかしながら、1nMより上において、対照細胞は強く刺激され、そしてDNA濃度は107 Mのエストラジオールの存在において3.75μgに到達する(これに対して、エストラジオールの非存在において0.69μg)。30および50mg/mlの凍結乾燥物で処理された細胞において、最大刺激において測定されたDNAは、それぞれ、1.9および1.8μgである。
【0046】
図2は、エストラジオールに対する処理された細胞の親和性定数(Km)が、それぞれ、30および50mg/mlの存在において、対照細胞のKm値(11.7nM)より3〜16倍高い(31.3nMおよび174.0nM)ことを示す。これが意味するように、軟骨の凍結乾燥された固体状抽出物が存在するとき、細胞の同一の増殖を達成するために、より高い濃度のエストラジオールが必要とされる。したがって、この抽出物は最大応答を減少し(その90%阻害)そしてエストラジオールに対する処理された細胞の親和性定数を増加する。
【0047】
in vivoアッセイ:
400匹の日齢40の雌のSpraque-Dawleyラット(Charles River Co.、St-Constant、Quebec、から購入した)を、それらの環境に12日間適合させた。その時において、20mgのDMBA/1mlのトウモロコシ油(9,10-ジメチル-1,2-ベンズアントラセン;Sigma Chemical Co.から購入した)を栄養により投与した。この処置後3カ月において、240匹の乳癌を有するラットを選択し、2つのグループに分けた。第1グループは5つのサブグループのラットから成っていた。処置したグループのラットに3mlの水中の増加する濃度の凍結乾燥物の抽出物の1日量を8週間与えたが、対照グループには同一体積の水を与えた。
【0048】
第2グループは4つのサブグループのラットから成っていた。処置したグループのラットに、また、上清と組合わせるか、または組合わせせない、3mlの水中の凍結乾燥物の抽出物の1日量を10週間与えたが、対照グループには同一体積の水を与えた。3000mg/Kg/日の濃度の凍結乾燥物および3mlの上清で処置されたラットの第2グループのただ1つのサブグループに、また、より少ない投与量の上清(1mlの水中の約8mgのタンパク質)を腹腔内(i.p.)注射した。
ラットは2つの実験の開始において151〜175gの体重であり、食物および水を任意に与えた。ラットの第1グループは平均直径0.9cmの腫瘍を有したが、ラットの第2グループは平均直径0.6cmの腫瘍を有した。
結果は下記のように要約される:
【0049】
【表3】
【0050】
これらの結果が証明するように、凍結乾燥物は活性成分を含有し、この活性成分は胃腸管の中に吸収され、そして腫瘍大きさに対する作用を有する。この作用は腫瘍細胞に対する直接の作用であるか、または抗血管形成仲介作用であろう。
また、これらの結果が示すように、上清は約5%の腫瘍大きさの補助的減少により反映される活性を有する。
これらの結果が、また、示すように、凍結乾燥物は活性成分を含有し、この活性成分は水溶性ではなく、および/または残留の水溶性を含有できる。したがって、究極的に、収率をなお改良できる場合、ペレットを水溶液中で再抽出して水溶性成分を最大に回収することができる。
【0051】
組織病理学
軟骨抽出物の活性分子の無毒を評価するために、前述のin vivo実験において使用した動物を断頭により殺し、分析のために下記の組織を採った:肝臓、肺、腎臓、心臓、脳、筋肉および乳腺。これらの組織から脂肪を除去し、次いでそれらをブワン液中で2日間固定した。エタノール中で脱水した後、固定した組織をパラフィンの中に埋めた。それらの切片を形成し、ガラススライド上に取付け、ヘモトキシリンで着色し、顕微鏡下に可視化した。
【0052】
組織学的実験において、最大の投与量の凍結乾燥物を単独で使用したとき(データは示されていない)、または上清と組み合わせて凍結乾燥物を使用したとき(参照、図3および図4、図5および図6、および図7および図8)、有害作用は視ることはできないことが明らかにされた。
これが示唆するように、凍結乾燥物および上清は選択的腫瘍大きさ応答活性を有する。
癌性乳腺において(参照、図9および図10)、血管の面積の重要な減少が観測された。次いで、これらの活性分子の抗血管形成作用は、図11に例示しかつ要約されている結果により確証される。
【0053】
図11は、凍結乾燥物(p.o.)-上清(p.o.+i.p.)の組合わせを使用したとき(参照、図9および図10)、血管面積の55%の減少が腫瘍において観察された。
腫瘍大きさの減少は、その血管化の重要な減少、腫瘍細胞に対する直接作用、または双方の現象の組合わせのためであろう。これらの抽出物の抗血管形成作用は、上記においてよく描写されている。直接の減形成作用はホルモン依存性細胞に対してin vitroにおいて観察されたが、これはin vivoにおいて確証されてない。
上清がZR75-1細胞に対して凍結乾燥物の作用を越えた増加した作用を示すことを前述の結果が示したので、その成分をさらに研究した。
【0054】
活性分子を含む液体分画の調製方法
サメの軟骨を採取し、前記のように処理した。遠心分離後、ペレットを廃棄し、上澄み液を前記と同じ方法で処理して、0.22μmのフィルターで無菌濾過を行なった。
上澄み液は、以後、例えば限外濾過後の生成物のように、粗透過物と呼ぶものとする。
このようにして得られた粗透過物を、FPLC(高速タンパク質液体クロマトグラフィ)に通す。
FPLC条件:
カラム:Hiload 26mm×60cm Sephacryl S-300
FPLC系:Pharmacia社のもの
【0055】
サンプルはすべて、カラムに充填する前に、0.22μmのフィルターで濾過した。溶離緩衝液は、15分脱ガスされた濾過済みホスフェート緩衝塩液(PBS)であった。充填されたサンプルの容積は、通常3.2mlであり(13mlまでであってもよい)、流量は、ml/分であった。10mlの分画を回収した。溶離化合物を、紫外線吸収(280nm)で検出した。検量線図は、Sigma社のMW-GF-1000検量キットを用いて得られた。この検量サンプルは、分析のために充填されたサンプルと同じ容積であった(3.2ml)。サンプルの溶離容積は、カラムの空隙容積が差引かれた溶離容積に対して、検量キットの化合物の分子量をプロットすることによって導き出した。空隙容積は、デキストランブルーを注入して得られた(分子量=2,000,000)。
【0056】
これらの分画の活性テストを、ZR75-1細胞に対して行なった。興味深い分画が同定されたが、これらの特徴をさらなる調査によって確認した(下記)。
透過物の活性成分のこのほかの特性決定は、Rotofor(Biorad 170-2950:下記の等電集束(isoelectrofocalization)参照)、および分子量が10〜30KD、30〜100KD、100KD以上の分画を得るための種々のカットオフ値のAmiconフィルターで実施した。
【0057】
等電集束
サメ軟骨の標本(46ml透過物1kg/l)を、5%グリセリン含有純水4リットルに対して、4℃で、スペクトル細孔#7MWCO 3500 KD膜(スペクトル132110)を用いて一晩透析した。透析溶液を、pH3.5〜10.0の両性電解質(Pharmacia社の380-1125-87)2.75ml、およびCHAPS(Sigma社のC3023;3-[(3-コラミドプロピル)-ジメチルアンモニオ]-1-プロパン-スルフォネート)0.5gと混合した。容積が55mlになるまで純水を補充した。溶液をRotoforに充填した。等電集束を、4℃で12ワットの定電力で(3000xi電力供給Biorad165-0554)、温度の維持を確保するために一定水循環下に実施した。分離の当初は、電圧が380ボルト、アンペア数は31mAであった。アンペア数が(14mAで)安定した時、電力は870ボルトであった。等電集束を停止した。20分画が回収された。
【0058】
【表4】
【0059】
これらのタンパク質の同定は、電気泳動ゲルで分子量を測定して実施した(Laemmli、米国、1970年、Nature(Lond.)227号:680頁)。
これらの分画を、充填緩衝液(Laemmli参照)で4倍希釈した。非還元条件下に8μlアリコートを電気泳動に付した。
図12および図13は、各分画および等電集束前の材料の電気泳動曲線を示す。
すべての分画を、層流フード下、細孔度0.22μmの無菌Millipack-60フィルターに通して、無菌瓶詰めにした。
分画のタンパク質含量を、Lowry計量法で評価した。1kg/2リットルの溶液(透過物1リットルあたりの粗軟骨重量として表わしたもの)について、培地中の種々の濃度で、ZR75-1に対してテストを実施した。結果を下記にまとめた。
【0060】
第一テスト:
透過物を凍結乾燥し、PBS中に再懸濁し、FPLGを行なった。形成不全活性は検出できなかった(データは示されていない)。
第二テスト:
Rotofor分画でテストを実施した(透過物を蒸発によって濃縮させた):タンパク質の同定
【0061】
【表5】
【0062】
第三テストは、FPLC分画に対して実施された(透過物を蒸発によって濃縮させた):
分画 分子量
6と7 1〜2.5KD
第四テストは、Amicon分子フィルターで得られた100μl分画に対して実施された。
【0063】
【表6】
【0064】
FPLC分画6および7は、非常に低い分子量すなわち1〜2.5KDの活性成分を含んでいる。
この分画の形成不全作用は、凍結乾燥物の場合に見られた作用より、33,000倍までも高いことがある。前記結果は、凍結乾燥によって、溶離液に含まれているタンパク質の直接的な抗腫瘍活性のなんらかの損失が引起こされるらしいということを示している。一方、固体抽出物の凍結乾燥では、このような損失は生じなかった。このことは、軟骨粒子に含まれている活性成分が、凍結乾燥の変性作用に対してあまり敏感でない環境にあるようであるということを示唆している。形成不全活性は、凍結乾燥に対して敏感であるので、水に戻された時、おそらくは、安定剤または保護剤を、抽出物全体、または凍結乾燥前にこの活性を含んでいる特別な分画へ添加することによって、実質的にこの活性を保持できるのであろう。
【0065】
溶離物の活性成分のもう1つの同定
活性分画(ZR75-1細胞でテストされたもの)を、下記分子量の範囲において回収し、別の型の精製によって測定した。測定は、まず同じ透過物(1kg/l)から開始し、前記のFPLCおよびRotofor手順を用いて、直径10mm×長さ30cmのSuperose-12カラムで実施した。流量は1ml/分にした。1mlの45分画を回収した。
【0066】
【表7】
【0067】
特異性
腫瘍細胞への活性の特異性を評価するために、限外濾過後に得られた透過物について、他の間葉織から発生する細胞、すなわちヒトテノン線維芽細胞(HTFs)(これは正常な線維芽細胞である)に対してテストを実施した。
【0068】
B.試験管内
a.患者
二人の患者(一人は血管新生性緑内障(NVG)患者、もう一人は原発開放角緑内障(POAG)患者である)からのHTFsだけを用いた。
【0069】
b.HTFsの植継ぎ培養および保管
各融合性培養物に、0.05%トリプシン/0.5mMのEDTA(Gibco610-5300AG)0.5mlで、5〜10分間37℃の洗浄および分離を行なった。ついで15%胎児ウシ血清(FBS)を含むDME/F-12培地1.5mlを添加して、トリプシン/EDTAを中和した。
粉砕および25cm2 T-フラスコへの移し替えによって、細胞の会合を行なった。このフラスコへ、10%(FBS)を含む追加の培地を添加した。融合に達した後、HTFsを75cm2 T-フラスコ、場合によっては180cm2 T-フラスコに移した。十分な細胞が得られたら、このうちのいくつかの細胞を下記実験に用い、他の細胞は、同時に、将来の実験のための同様の処理を行なうために冷凍した。
【0070】
c.実験記録
融合に達したら、2〜3個の同じ180cm2 T-フラスコで成長している、一人の患者から採取された細胞を、前記手順によって解離させた。短時間の低速遠心分離後、256-チャネライザーを備えたZMI Coulter計数器216013で、細胞の数を数えた。
【0071】
以下の試験管内実験のすべてについて、約5万個の細胞を、1%FBSを含むDME/F-12培地1ml中において、各々16mm皿と12個の穴付プレートに植え付けた。接種から17時間(hrs)後、1%FBSが補われた新しい同じ培地1ml(「絶対」対照)を加えた。実験の設計(上記および下記参照)に依って、1%FBS培地には、GFs(成長因子)または透過物1kg/2L(軟骨重量/水容積)溶液を補うか、あるいは補わず、無菌濾過を行なった。この日(0日目)、培養効率を測定するため、いくつかの細胞サンプルの細胞数をも数えた(この効率は95%あるいはそれ以上であるべきである)。
【0072】
実験の着手から48時間後、細胞を洗い、前記手順で解離させ、再び計数した。細胞数は、「絶対」対照において得られた数の百分率として表わされた。
各々1%または5%FBSを含む、各「絶対対照」すなわち決定的な対照、および各実験群には、1%FBS、および個別のGF、あるいは3つのサンプルから成る軟骨透過物が補足された。
各実験は、一人または二人の患者の細胞に対して同時に実施し、少なくとも2度繰り返した。
成長因子(GFs)または軟骨透過物による線維芽細胞の増殖への刺激を、同じものの5%FBSによる刺激と比較した。
【0073】
これらの実験において、ブタ血小板に由来する成長因子(pPDGF)およびヒト組み換え型基本線維芽細胞成長因子(hr bFGF)(イタリア国ミラノ市のFarmitalia Carlo Erba社からDr.P.Brazeauへ寄贈されたもの)を、各々、1%FBS中10〜100ng/mlの濃度で添加した。実験の開始から48時間後、細胞をトリプシン-EDTAで分散し、Coulter計数器で細胞数を数えた。
下記に示された3つの値(カラム1、2、3)のすべては、1つの穴あたりの総数の1/20に等しい。
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
血小板に由来する成長因子(PDGF)および基本線維芽細胞成長因子(bFGF)のような成長因子は、ヒトテノン線維芽細胞(HTFs)に対して刺激活性を示したが、これらの細胞が軟骨透過物の存在下(1kg/2リットル)に成長が行なわれた場合には、プラス作用もマイナス作用も観察されなかった。形成不全作用も見られなかった。このことは、この透過物が腫瘍細胞に固有の形成不全作用あるいは細胞毒性作用を有するが、正常な細胞には検知可能な作用は有しないことを示唆している。同じ軟骨抽出物は、別の型の線維芽細胞であるHSF(ヒト皮膚線維芽細胞:データが示されていない)にも影響を与えなかった。試験は行なわなかったが、凍結乾燥物も正常な細胞には影響を与えないと考えられる。
【0078】
従来技術の生成物との比較
軟骨エキスに大きな関心を抱いたのは我々が最初ではないため、従来技術に記載の、あるいは従来技術から導き出せる二種類の生成物、すなわちBalassa(米国特許第4,822,607号)と及川ら(前出)の方法による生成物との並列比較試験で本法で抽出した鮫軟骨流エキスの独特の性質を検証した。及川らが記載した方法によると、主な画分が二つ得られ、一つは分子量が1〜10キロダルトンの間の分子を有し、二つ目は10キロダルトンより大きい成分を有する。及川らは抗血管形成特性を一つ目の画分だけに起因すると考え、二つ目にはCAM試験で活性が全くないと述べている。及川の生成物を適切に比較することによって、我々は総流エキスを二つの対応する画分に分画し、1〜10キロダルトンを有する方を取っておいた。
【0079】
Balassaは総流エキスを抽出する方法を記載しているので、我々は我々の総軟骨流エキス(1〜500キロダルトン)を、子ウシ軟骨を鮫軟骨に置き換えたBalassaの方法によって再度調製した生成物と比較した。Balassaと及川が等価な方法を記載していれば、FPLCとHPLCで得られるパターンがほぼ重なり、CAM試験で検査すると、この生成物は我々のものと類似の活性を示すはずだと仮定する。FPLCとHPLCクロマトグラフィーの前にすべての試料の最終濃度を12μg/μL(乾燥重量/溶液の体積)とした。及川の生成物は不溶性の物質を含むため、クロマトグラフィーの前に遠心分離、ろ過した。
【0080】
A)FPLC条件:スーパーローズ12(ファルマシア)、ゲルろ過カラム
B)HPLC条件:CS-S-ヘキシルカラム5μm、25×0.94cm、CSC#059-085、逆相カラム。
3種類の方法で抽出した鮫軟骨試料を(推定乾燥重量/溶液の体積で)以下のように標識した。
1)DUPは、1〜500キロダルトンの分子を含むように分画した本発明の調製物である(12μg/μl)。
【0081】
2)BALは、Balassaらの処方による調製物である(12μg/μl)。
3)OIKは、及川らによる画分3の調製物である(270μg/μl)。あらゆるの分析に先立ち、すべての試料を最終濃度12μg/μl(乾燥重量/体積)とした。OIK試料には多量の不溶物質が入っていたが、13,200RPMの遠心分離または0.2μmメンブランによるろ過によって容易にペレット化できた。不溶物質のろ過や濃縮は、HPLCおよびHPLCの前に不可欠である(A、B)。
【0082】
A)FPLC測定結果のまとめ
リン酸緩衝液(PBS)を溶出液として毎分0.5mlの流速で試料をスーパーローズ12(10/30)ゲルろ過カラムに流した(チャート速度=毎分0.25cm)。濃度を調整した試料の部分標本100μlを注入前に0.2μmメンブランでろ過した。OD280をモニターした。
【0083】
カラムは以下の標準品で較正した(分子量、単位:ダルトン)。カタラーゼ(232,000)、アルドラーゼ(158,000)、アルブミン(56,000)、卵白アルブミン(44,000)、キモトリプシン(25,700)、リボヌクレアーゼ(13,700)、インシュリン(5,700)、インシュリンB鎖(3500)、インシュリンA鎖(2500)、バシトラシン(1450)、ビタミンB-12(1355)。主ピークの分子量は下式に従って計算した。Log10MW=7.52-0.212×RT、ここでRT=溶出体積(単位:mL)、R2 =0.976である。シチジン(246ダルトン)を用いて決定したところ全カラム体積(VT )は21.93mLであった。ボイド体積(V0 )はブルー・デキストラン(2×106 ダルトン)によって8.38mLと決定された。
【0084】
図18では、我々の試料DUPは最初の主ピーク(1)が18.76mLに溶出し、分子量3500ダルトンを示した。続いて溶出した22.7mLのピーク(2)と23.7mLのピーク(3)は全カラム体積(シチジンによる決定で21.93mL)を超えていた。これらのピークにはカラム・マトリックスに対する親和性があると思われる。
図19では、Balassaの試料BALはカラムのV0 (8.4mL)付近に溶出する小ピーク(1)、18,5mL(4000ダルトン)のピーク(2)、さらにVt 以降の22.6mLと28.2mLに溶出する2本のピークを示す。
【0085】
図20では、及川の試料OIKもV0 に小ピーク(1)、18.9mL(3300ダルトン)にピーク(2)、21.5mL(1000ダルトン)にピーク(3)および27.3mLにピーク(4)を示す。
試料を比較すると、3300ダルトンは別として、DUP試料の主バンドはその他の試料の同じ強度には見られないことが分かる。OIK試料にはまさに少量の27.3mLピークがあると思われた。BAL試料には28.2mLに移動するピークがあり、DUP試料中の小ピークと対応させることができた。
ヘキシル逆相カラムによるHPLCのため、OD210とOD280を同時にモニターした。遠心分離した試料(すべて12μg/μl)の部分標本50μlを負荷し、100%H2 Oで溶出した。OD210(実施例1)およびOD280によって標識した各クロマトグラムのピークは「実施例1」に記す。このカラムのV0 は5.5mLであった(1.4分)。
【0086】
図21では、DUPにOD210を介して観察される3本の主ピーク(1、2、3)と2本の小ピーク(4,5)があった。ピーク1から離れて2本の側ピークが観察され、1aおよび1bと名付けた。ピーク1、1a、1bおよび3にはかなりのOD280吸収があった。対照的に、ピーク2に対応するOD280はOD210よりずっと低かった。
【0087】
図22では、BALはもっと多くのOD210ピークを示したが、強度はDUPピークと比較して弱かった。ピークの重なりによって分子の同一性を示すことができた限りでは、Balassa試料のピーク3とピーク7だけがDUP試料中のピークの保持時間と相関があるように思われる(それぞれピーク1aまたは1bおよびピーク4)。
図23では、OIKエキス中に3本のピーク(1、2、3)だけが観察された。ピーク1とピーク3はDUP試料のピーク1とピーク3と相関があったが、OIKのクロマトグラムにはピーク1の側ピークは見られなかった。OIK試料中のピーク高さはDUPよりも低かった。FPLCおよびHPLCのパターンは識別した生成物について特徴的であったが、我々はCAM試験でこの3種類の生成物の抗血管形成活性を検証した。
【0088】
CAM試験
まず、異なる濃度(37、75および150μg)のプロタミンを用いてCAM試験を行った。水を含むメチルセルロース・ディスクと、陽性対照としてプロタミンを含む別のディスクをニワトリ胚の絨毛尿膜上に置いた(n=分析した胚の数)。その位置限定を簡単にするため各ディスク上にOリングを配置した。翌日、通常の仕方で一組の科学者が各Oリング中の血管新生のレベルを点数化した。CAM試験用の評価尺度は1-2-3点数によった。(点数=3)対照胚の縦に対向する四分円または対応する四分円と比較したときの正常な血管新生。(点数=2)血管がOリングに入り込むが、途中で消滅する。
【0089】
主な血管がOリングを横断するが、その軌跡は明らかに影響を受けている。Oリングのせいで分枝形成は少ない。(点数=1)Oリング内に血管が全くないかそれた血管がない。血管はOリングを迂回してそれを超えていかない限り、Oリングを超えて成長しない。四分円の血管領域はOリングのせいで明らかに縮小されている。図24では、各カラム上の数値が各試料の最終点数を示す。同一卵上に置いた2枚のディスク間の差の有意性を比較するためウィルコクソン統計検定を使用した。期待した通り、用量-反応関係が観察された。
【0090】
DUPエキスの10キロダルトンより低い画分と高い画分を同一条件で試験した。血管新生阻害において両者は強さが等しいことが示された(図25)。
我々の総抽出DUPをBalassaの生成物BALと比較した。Balassaの生成物に有意な抗血管形成活性は再現されなかった(図26)。
粗DUPエキスを及川OIKの画分3と比較した。DUPとOIKは両方ともほぼ同等であった(図27)。それにもかかわらず、及川らは分子量が10キロダルトンより高い画分には活性が検出できなかったと述べたため本発明とかけ離れた教示を行ったが、図25の我々の結果と矛盾している。
【0091】
従って、Balassaの方法と我々の方法の類似性にもかかわらず、これら二つの方法によって得られた生成物は明らかに同じではない。
我々の生成物と比較した二種類の従来技術の生成物は、それでも軟骨エキスを調製する古典的な方法と考えられる。上記の結果によると、本発明の方法は抗血管形成活性に関する限り意外に良好な活性のある生成物を生成する。その他の活性は本明細書中で後に検証するので、本発明の方法が単一のエキス中に多様な水溶活性を再発見することに成功したと仮定することが可能である。
【0092】
臨床試験
予備臨床試験を進める前に、超遠心分離後に得られた粗透過物を2倍および20倍濃縮して濃縮活性透過物を調製した。これらの濃縮度は孔隙1000ダルトンの横流ろ過カラムによって得られ、溶出液の体積は2倍および20倍となった。濃縮した透過物を孔隙0.22μmのミリポア・フィルターでろ過した。軟骨を代替の遠心分離法(孔隙30μmのメンブラン・フィルターを備えたCEPA遠心機を使用)で処理したところ、10倍濃縮によって上記の20倍濃縮エキスとほぼ同じタンパク質濃度を有する濃縮エキスが得られ、例えば約8〜12mg/mL(実験室規模の方法)のかわりに約12〜25mg/mL(改良法)が得られた。
【0093】
無菌10倍濃縮透過物を無菌フラスコに部分標本7mL(タンパク質約85mg)ずつ分注し、-80℃で一夜凍結し、使用するまでさらに-20℃に保存した。粗透過物と濃縮透過物の主な相違はタンパク質濃度である。タンパク質含量の決定に使用した方法では全窒素化合物であってタンパク質だけではない(ケルダール法)ことは注意されるであろう。通常ローリー法でタンパク質含量を決定する場合はタンパク質濃度が体積濃縮度に比例するのに、比例しない理由がこれによって説明できる。このように、この濃縮段階では低分子窒素化合物と同様に水も透過できると考える。
【0094】
抗血管形成効果
濃縮した透過物を血管形成-依存性疾患の治療に使用した。3種類の代表的な血管形成-依存性疾患についてヒトの診療で試験を行った。1番目の病型は癌(前立腺癌)、2番目の病型は皮膚障害(乾癬)、3番目の病型は関節炎であった。下記実施例を見れば、この流エキス剤の少なくとも抗血管形成活性が説明され、示されるであろう。
【0095】
複数の皮膚疾患から乾癬症例を選択した。試験を行った乾癬症例中、角化症を併発した乾癬と併発しないものとの差異に注目することは有意義である。角化症では、プラークの形態で角化外皮が形成される。このようなプラークは活性成分が効率よく血管に入り込むのを妨げる物理的障壁となる。
前立腺癌を患う患者は10倍濃縮軟骨透過物を自発的に試した。この患者は一連の従来の連続治療を受けたが、その成功は一時的であった。癌が常習性を示した後に、この患者は本軟骨エキスの使用を開始した。
他のボランティアで、関節炎を患い、以前に薬物治療(プレドニゾン)を受けたことがある者またはそれを受けていない者が濃縮軟骨エキスの使用を開始した。関節の疼痛と硬直の軽減によって検証したところ、その病状が改善していたことが立証された。
【0096】
本明細書で後に示す結果は極めて有望であり、これによると、粗透過物とその画分が有用なのはすべての血管形成-依存性疾患の治療に対してであって、試験を行った特定の疾患だけではないことが予測されると考えられる。疾患に血管形成が含まれる限り、本発明の軟骨エキスは、その有効量を含む組成物中に入っていて、この組成物が適切な形態や正しい投薬であれば、その疾患については効果があると考えられる。
【0097】
従って、当業者なら非常に多くの組成物を導き出すことができ、その選択はその投与方法と対照の病組織によって導かれるので、本発明が血管形成疾患の治療に使用する以下の特定の組成物に限定されないことが理解されるであろう。組成物は様々な経路で投与され、例えば局所、経口、舌下、直腸、静脈内、筋肉内、拡散法等がある。
軟骨エキスは魚のような味とにおいがあるので、患者の服薬遵守を促進するために、この組成物に調味料や香料を添加することができる。
【0098】
乾癬
乾癬を患う患者でその有効性を検証するために、以下の外皮用組成物を作成し、試験を行った。
○EMULGADETMCLB 29%(w/w)
○20倍粗透過物 69.5%(w/w)
○GERMABENTMII 1%(w/w)
○ラバンデューラ・アングスチフォリア 0.5%(w/w)
【0099】
ステアリン酸エステル、脂肪族アルコール、非イオン性乳化剤の混合物であるEMULGADE↑TM↑CLB(ヘンケル・カナダ社から購入)を撹拌しながら65〜70℃で加熱した。混合物の撹拌を続けながら加熱を停止した。混合物の温度が45℃に達したときに、精油のラバンデューラ・アングスチフォリアと防腐剤のGERMABENTMII(ジアゾニジル尿素30%、メチルパラベン11%、プロピルパラベン3%、プロピレンパラベン56%、サットン・ラボラトリーズ、米国、ニュージャージー州)を添加した。この混合物の温度が30℃に達したときに、軟骨エキスを加えた。こうして得た組成物は、滑らかな非油脂性のクリームであった。製造指針によれば、EMULGADETMの割合を変更することによって他の形態の種々の粘度の外皮用組成物(乳剤、ローション剤、軟膏剤)が得られる。ペースト剤、ゲル剤その他あらゆる形態の経皮吸収製剤を得るためにその他のビヒクルや賦形剤を使用することができる。
【0100】
上記の製剤を2週間の期間中、試みられた従来の治療に応答性であったがしばらくすると治療抵抗性となった乾癬を患う9名の患者のパネル(局所投与)に1日2回投与した。この試験のために四肢の両側に同じくらい対称的な程度に乾癬がある患者を選択した。これらの試験は二重盲検方式で行い、いずれの患側が軟骨エキスを含む組成物で治療され、いずれが対照組成物で治療されたかは皮膚科医も患者も知らなかった。乾癬が角化症を併発していない5名の患者で顕著な改善が見られた。角化症のある患者についての結果は中度良好であった。患者2名の身体部分の写真を図14と図15に示す。図14では、角化症を併発した乾癬に冒された患者は、それにもかかわらず、1ヶ月間の治療後には紅斑がかなり軽減し、心因性掻痒を随伴していなかった。しかしながら、角化症は依然重要である。
【0101】
角化症を併発していない乾癬を患う2番目の患者の写真(図15)には3ヶ月間治療後のずっと良好な改善が示されている。乾癬は多因子性疾患と思われるので、患者の応答は、定着やこの状態の永続化における血管形成や炎症などの構成要素の波及の重要性に依存すると仮定される。我々のエキスには、抗血管形成活性が本当に存在し、それはDMBA処理ラットとCAM試験で示されている通りである。また、抗炎症活性も検証した(下記考察)。この種の処方を関連他因子に向けられた他の治療剤(角質溶解剤、他の抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、免疫抑制剤等)で補えば、より良好な結果が得られそうである。
【0102】
この補完は、例えば有効量の角質溶解剤を含むように処方を修正するという形にすることができる。また、このような相補性の治療剤を同時に、あるいは現在の局所処方の代わりに、別に投与することによっても達成できる。さらに、この相補的な薬剤を同じ経路で投与する必要はない。
軟骨エキスの割合が高いのにもかかわらず、上記の処方は全身効果を示さず(効果が治療した領域に限定される)、二次効果も示さない。
【0103】
癌
前立腺癌を患う患者1名が10倍濃縮透過物を試みた。1986年に腺癌が診断された。そのとき、放射線治療が行われた。1991年に、PSA(前立腺血清抗原)濃度が正常値の上限4μg/Lに対して138μg/Lであった。次いでこの患者は抗アンドロゲン治療(EUFLEXTM)を併用した性腺摘除によって完全に異なる治療を受けた。この治療は3年の間効果があったが、その後PSA濃度が再び上昇し始めた。1994年以来、この患者は10倍透過物(舌下1日投与量約75mgタンパク質/7mlエキス、約1〜1.5mg/kg体重/日に相当する)を使用している。
【0104】
DMBA処理動物で得られた結果(上記参照)によれば、かなりの投薬量を服用していても、おそらくかなりの割合で胃腸管で吸収されているはずである。PSA濃度は12から0.9μg/Lにゆっくりと低下し、これは例えば充分にPSAの正常濃度の範囲内である(最終結果は1995年5月に得られた)。また、この調薬養生法は、病理を制御するべく、投与経路、活性成分の生物学的利用能、所望の積極性に従って意のままに修正できる。このとき、無毒性ラット(上記実施例参照)およびヒト(データは示していない)で検証した。
【0105】
DMBA処理ラットで行ったもう一方の生体内実験では、流エキスの体重当たりの投与量は約190〜220mgタンパク質/kg体重であり、癌血管領域の縮退に貢献したと推定される(タンパク質量がずっと多量の凍結乾燥品を併用したとき55%)。従って、約0.1から約200mg/kg体重/日は、血管形成を軽減または完全に破壊することによって、少なくとも部分的には、癌の治療にとって正確に近い妥当な範囲の50%有効量(ED50)であると仮定される。
【0106】
関節炎
関節炎を患う患者が自発的に総流エキス7mlを1日につき1から2単位数ヶ月間試した。これらの患者は関節の機能回復、疼痛および炎症の減退によって容態がゆっくりと改善するのが見られた(約60%に及ぶまで)。関節炎は血管形成および炎症の構成要素を有するので、上記の効果は軟骨エキスの抗血管形成活性および抗炎症活性に帰属される。
非抗血管形成効果
【0107】
座瘡
発明者らが知る限りでは、座瘡は血管形成の構成要素を有する疾患や障害ではないが、それにも関わらず、軟骨エキスを座瘡に冒された患者で試験することに心がそそそられた。座瘡に冒された患者で軟骨エキスの実験を行うため、以下のゲル製剤を作成した。
CARBOPOLTM 1.2%
精製水 77.2%
NaOH 0.3%
PHENOXETOLTM 0.3%
TWEEN 80TM 03.%
2倍軟骨エキス 20.0%
40倍アロエ・エキス 0.5%
【0108】
2倍軟骨エキスには9〜12mg/mLのタンパク質が含まれる。この製剤によると、多少とも重症の形態の座瘡(炎症性座瘡とkystic座瘡、データは示さない)に冒された患者の皮膚の様相が顕著に改善される。
この結果は抗血管形成効果によるか(従って座瘡中の血管形成構成要素が明らかにされる)、あるいは血管形成以外の効果を有する活性成分による(例えば抗炎症効果、下記考察参照)。
上記の臨床試験で得られるすべての結果によると、血管形成依存性または炎症性疾患、あるいはその両方の治療における軟骨エキスの大きな潜在能力が示される。軟骨エキスの量並びにその処方は、特定の必要を満たすために意のままに変更できる。
【0109】
局所その他のすべての組成物は、タンパク質含量に基づいて、広範な用量の軟骨エキスを含むことができる。試験を行った3種類の特定カテゴリーの症例中、極めて多様な薬用量または処方、あるいはその両方を使用した。予測されるすべての適用に対し(点眼剤から皮膚科および抗癌剤の製剤まで)、総流エキスの最低最終タンパク質濃度は極めて低いと推定される(約0.1mg/mLから)。この濃度範囲が比較的低いのは、活性成分が作用部位に達するときの到達能と浸透性、並びにこの活性成分が効果的に捕捉され、組織が血管形成抑制因子に対して感受性であること、すなわち応答することに依存している。ある適用の処方の最終タンパク質濃度の上限は今のところ未知である。試験したなかで最高の最終濃度は乾癬症例用初訪中の約9mg/mLタンパク質と、前立腺癌症例で投与した7mLの薬用量単位の約12mg/mLである。
【0110】
上で述べたように、鮫軟骨流エキスの活性は水溶液中で凍結乾燥するといくらか失われる。しかしながら、凍結乾燥の前に当業界で公知の安定剤や保護剤を添加すれば、感受性ある活性が保たれ、比較的高用量の軟骨エキスを乾燥状態で投与することが可能となる。
【0111】
プロテインキナーゼC(PKC)媒介事象の拮抗剤としての軟骨エキス
最近の発表によると、PKC活性によって正常表皮細胞が炎症の媒体であるインターロイキン-8(IL-8)の産生量が増えた(Chabot-Fletcherら(1994)J.Invest.Dermatol.103:509-505)。さらに、乾癬表皮細胞が極めて多量のIL-8を産生し、それによって乾癬プラークにおける血管新生がさらに促進された(Nickoloffら(1994)Am.J.Pathol.144:820-828)。軟骨エキスが乾癬の治療に大変有望であることが示されたので、この細胞形質導入路の公知の拮抗剤であるトリホルボールアセテート(TPA)でPKCを活性化した表皮細胞でその効果を試験した。
【0112】
図28に表皮細胞の分化度がTPAによって5倍に上昇していることを示す。鮫軟骨自体には角化外皮の形成に何の効果もなかった。しかし、鮫軟骨エキスを添加すると、TPAによって誘発された角化外皮形成が約60%を超えて阻害された。TPA誘発が乾癬表皮細胞によく似ているかどうか我々は知らない。もしよく似ていれば、この結果は軟骨が生体内で正常表皮細胞には何も効果がなく、その一方で乾癬(すなわち活性化)表皮細胞には効果があることを示している。TPAによって活性化された表皮細胞、並びに乾癬プラークまたは表皮細胞におけるIL-8産生の軟骨エキスによる阻害の検証が残っている。IL-8濃度の減少は本エキスの抗炎症効果と抗血管形成効果の確認として価値がある。
【0113】
鮫軟骨エキスでは抗炎症活性と抗血管形成活性とは別種である
血管形成は多くの疾患で炎症に随伴することが多いため、鮫軟骨エキス中で各活性の原因を個別に特定することが望ましい。これに関して、血管形成の疑いのない皮膚刺激モデルを選択してエキスの抗炎症活性および鎮静活性の試験を行った。試験のためにペルーバルサムに対する皮膚感受性の病歴のある9名のボランティアが選ばれた。試験化合物は次の通りであった。
1.1倍鮫軟骨50%/D-MEM培地
2.1倍鮫軟骨20%/D-MEM培地
3.1倍鮫軟骨10%/D-MEM培地
4.コーラ・ニチダ(インデナ)10%/水-アルコール 1:1
【0114】
この4種類の試験化合物をボランティアの腹側前腕に塗布した。この物質を20分間吸収させた後、刺激物であるペルーバルサムを試験部位に塗布した。皮膚刺激は皮膚発赤の強さによって測定した。発赤度はミノルタ・クロマメータで測定し、陽性対照および陰性対照と比較した。陽性対照は、ペルーバルサムだけで処理した皮膚の色であり、陰性対照はコーラ溶液で処理して試験製品と同様に誘発した皮膚の部位とした。統計的有意差は両側確立t検定を介して計算した。図29に10%のコーラが70%活性であることを示す。鮫軟骨は、濃度20%および10%の抗刺激剤としてそれぞれ58%および60%であった。用量-応答効果はなかった。これらの結果より、本軟骨エキスが抗血管形成効果とは別種の抗炎症活性および鎮静効果を有することが示唆される。
【0115】
抗コラーゲン溶解活性
HPLCクロマトグラフィー
流エキス(DUP)の試料980mLを横流限外ろ過装置(ペリコンTM、ミリポア)内の10キロダルトンのカットオフ・メンブランでろ過した。装置をまず1Lの水で洗浄した。最終回収量は10キロダルトンを超える画分480mLと10キロダルトン未満の画分1.8Lであった。10キロダルトン未満の画分を冷フィンガ蒸発によって180mLに濃縮した(<10-10X)。<10-10Xの部分標本8×100μlをCDC-Sヘキシル5μmHPLCカラム(25×0.94cm)に負荷し、まず4mL/分の100%H2 Oで、次いで8.5mL/分の100%メタノールで溶出した。OD214 のピークに対応する画分を分取した。
5つの画分、すなわちFr1、Fr2、Fr3、Fr4およびFr5を分取した(図30)。最初の3つの画分には少なくとも主ピークが含まれる。
【0116】
コラゲナーゼ活性測定
組換えヒト皮膚コラゲナーゼタイプ1(MMP1)を用い、蛍光ペプチド基質(活性測定1)とコラーゲン基質(活性測定2)を使用してコラゲナーゼ活性測定を行った。
活性測定1
この活性測定はKnightら(1992)FEBS Let.296,263-266に記載されている。この方法にはメタロプロテイナーゼの活性部位を模擬した蛍光ペプチド基質(Mca-pro-leu-glu-leu-Dpa-ala-arg-NH2 )が利用される。この基質は蛍光基(Mca)を一端に有し蛍光消光部位(Dpa)を他端に有する。無損傷の基質では、消光基が効果的に蛍光をマスキングする。基質が酵素切断されると、試験管中の蛍光が増量する。
【0117】
コラゲナーゼ活性化はWeingartenら(1985)Biochemistry24,6730に記載されている。50mMトリス塩酸、10mMCaCl2 、pH7.5で1μgを100μgに希釈し、10mg/mlのトリプシン溶液(1mMHCl溶液)1μlを添加し、20℃で15分間インキュベートした。大豆トリプシンインヒビター(SBTI、5mg/ml)を加えることによって活性化を終結させた。各々にミクロキュベットを添加した。
インヒビター25μlまたは50μl(H2 で50μlに調製する)、
50mMトリス塩酸40μl、200mMNaCl、10mMCaCl2 、pH7.5、
活性化コラゲナーゼ8μl(最終67ng)、
基質2μl(1mM原液/DMSO、最終20μM)。
蛍光はλex=328nm、λem=393nmで記録した。
【0118】
この結果によると、Fr1が最もコラゲナーゼ阻害活性の高い画分であった(図31)。すべての画分により低い水準の活性があった。オタマジャクシ脊椎動物コラゲナーゼについて試験した場合、この酵素は鮫軟骨エキスによってかなり阻害された(EC50約10〜20μg/mL)。
【0119】
本活性測定はWelgusら(1979)JBC256、9511-9516に記載されている。この方法ではSDS-PAGEを使用してコラゲナーゼ・タイプ1(MMP1)による切断を試験する。コラゲナーゼ・タイプ1は天然コラーゲン分子を一ヶ所で切断して元のコラーゲンの75%と25%の2個のフラグメントにする。数時間切断後、SDS-PAGEによって基質から生成物を分離することによって反応を監視する。切断コラーゲンの非切断コラーゲンに対する比は、ゲルをクーマジー・ブルー(または銀染色)で染色することによって視覚化される。
【0120】
活性化コラゲナーゼ21ng(活性測定1参照)を最終体積20μlのウシ皮膚コラーゲン(Worthington)5μl+/-インヒビターに添加した。反応を35℃で16時間インキュベートした後、40mMEDTAを含むSDS-PAGE試料を添加することによって停止させ、煮沸し、8%ゲル上に負荷した。
結果を以下の表にまとめる。
【0121】
【表11】
【0122】
40mMEDTAはコラゲナーゼを阻害した。総流エキスDUPによると、抵抗コラゲナーゼ活性が示された。画分1から5には活性があった。最も活性が高かったのは画分1であった。10キロダルトンより高い分子量では有意な阻害活性が示されなかった。
【0123】
化粧品応用および組成物
上記の試験によると、本発明の軟骨エキスが非常に多くの医学的応用があることが分かる。本エキスに回収された多様な活性、すなわち抗コラーゲン溶解活性、抗炎症活性およびPKC誘発分化に対する阻害活性は、特に化粧品応用において望ましい。本発明の軟骨エキスはPKCを媒体とする細胞事象の拮抗効果を示したことと、このような拮抗効果が当業界で皮膚障壁修復機能を改善するものであることが示唆されていることから、ほ乳類の皮膚に軟骨エキスおよび製剤学的に許容できる運搬体を含む組成物を塗布する段階からなるほ乳類の皮膚の皮膚障壁修復機能を改善する方法、そしてこのような組成物は本発明の範囲内にある。
【0124】
また、その他または類似の組成物も、皮膚の鎮静化、すなわちほ乳類の皮膚における炎症の鎮静化に使用できると理解される。炎症は化学的刺激物、物理的剥離、および紫外線照射に曝されることなどの種々の作用因によって引き起こされる。また、皮膚中のコラゲナーゼを阻害する組成物と方法も企図される。コラゲナーゼと炎症は早期老化(コラーゲンの分解)と関連づけられ、従って軟骨エキス中に回収された拮抗活性も早期老化を遅らせ、ほ乳類のしわと萎縮を調節する組成物と方法に寄与させることができる。しわや萎縮の原因としては、年齢、紫外線照射や環境汚染物質に曝されること等が挙げられる。
【0125】
局所組成物にはそれぞれの特定の応用によって決定される有効量の鮫軟骨を含ませることができる。一般には、これらの組成物には約0.1から約75重量%の1倍から20倍の流エキスと、約50から99.9重量%の製剤学的に許容できる賦形剤を含ませることができる。これらの組成物には皮膚中の過酸化脂質の形成を予防する作用物質などの抗酸化剤を含ませることができる。このような抗酸化剤の例としては、トコフェロール、トコフェロール誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、およびBHTがある。
【0126】
この組成物にはホスホリパーゼA2インヒビターや植物由来の抗刺激物質であるコーラおよび緑茶のエキスなどの抗炎症剤を補うことができる。局所組成物は液剤、懸濁剤、ローション剤、チンキ剤、ゲル剤、クリーム剤、噴霧剤、乳剤、展着剤、軟膏剤、リポソーム(少なくとも少量の軟骨流エキスがリポソーム中に存在する)などの多様な形態とすることができる。
【0127】
結論
本発明の方法は臨床価値の大きい軟骨エキスの製造を提供するものとして示した。この新規の方法によって製造される鮫軟骨エキスは、良好な収率で回収される複数の活性を含む。軟骨エキス、特に流エキスとその画分は、正常細胞に対しては無毒である一方で多種多様な疾患や状態に効果があるため、きわだった潜在能力を有する。
【0128】
必要な材料
○冷却器
○手術器具
○肉細断機
○プラスチック製の袋
○工業用ブレンダー(フィッシャー・サイエンティフィクから購入した3速ブレンダー使用)
【0129】
○水精製装置(逆浸透圧および0.1μmろ過、コンチネンタル・ウォーター・システム、PRE2202型、製造番号91089、フィッシャー・サイエンティフィク(ケベック州モントリオール)から購入したモデュラブ・バイオサイエンスRQ/研磨装置)。この装置は発熱性]物質のない高水質の水を供給する。
○フィッシャー・サイエンティフィクから購入した精密天秤メトラーAEシリーズ
○デュポン・カナダから購入した遠心機Sorvall RC-285
○遠心機CEPA
○孔隙率30μMのナイロン・ポケット
○オートクレーブ(自動蒸気滅菌機サンヨーMAC350P型)
○132℃で10分間滅菌し35分間乾燥したナルゲン500mL容器
○孔隙率24μmのワットマン・リーブ・エンジェル円錐形ろ紙
【0130】
○限外ろ過カラム(分子量カットオフ:適切な場合500キロダルトンおよび1キロダルトン、表面積:25平方フィート、流速:130L/分、吸込圧力:30psi、吐出し圧力:5psi、米国マサチューセッツ州ウイルミントンのコッホ・メンブラン・システムズ社から購入)
○130L/分の流速を提供するための衛生遠心ポンプ(モナーク・インダストリーズ、ACE-S100モデルA型)
○無菌箱(イングラム&ベルから購入した層流箱NuAir)
○ミリパック-60 0.22μm滅菌フィルター
○無菌透明または褐色ガラス瓶
○DC-10アミコン濃縮器
【0131】
○Rotoforバイオラッド170-2950
○カットオフ値各10、30、100キロダルトンのアミコン・フィルターSIOY10、SIOY30、SIOY100
○FPLCファルマシア216007(コンピュータ ファルマシア216014)
○ミルスタンドS-300 26mm/60cm(ファルマシア)
○スーパーローズS-12 10mm/30cm(ファルマシア)
○凍結乾燥機ラブコンコ10273A
【0132】
本発明は本明細書上記に記載され、本開示から逸脱することなく、本発明の要素を同じ目的を達成するであろうその等価物によって実現する取り替えによって修正をもたらすことは、当業者の能力と知識で十分可能であると理解すべきである。これらの明瞭な変型は本適用によって包含されると思量される。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】図1は、ZR75-1およびMCF-7細胞に対する、増加する投与量のサメ軟骨(固体状抽出物)の阻害活性を示す。
【図2】図2は、2つの濃度の軟骨の凍結乾燥物を使用するか、または使用しないで、増加する濃度のエストラジオールの存在において、DNA含量により測定したMCF-7細胞の量の投与量-応答曲線を示す。
【図3】図3は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺癌を発生したラット、および水のみを投与したもの、の肝臓切片の比較を示す。
【図4】図4は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺癌を発生したラット、および水のみを投与したもの、の肝臓切片の比較を示す。
【図5】図5は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺癌を発生したラット、および水のみを投与したもの、の腎臓切片の比較を示す。
【図6】図6は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺癌を発生したラット、および水のみを投与したもの、の腎臓切片の比較を示す。
【図7】図7は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺癌を発生したラット、および水のみを投与したもの、の肺切片の比較を示す。
【図8】図8は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺癌を発生したラット、および水のみを投与したもの、の肺切片の比較を示す。
【図9】図9は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺腫瘍を発生したラット、および水のみを投与したもの、の乳腺腫瘍切片の比較を示す。
【図10】図10は、栄養により軟骨の凍結乾燥物と上清との組合わせを投与した乳腺腫瘍を発生したラット、および水のみを投与したもの、の乳腺腫瘍切片の比較を示す。
【図11】図11は、図9および図10から誘導されたヒストグラムであり、腫瘍における血管面積に対する軟骨抽出物の効果を示す。
【図12】図12は、ロトフォー(Rotofor)で分離された液状画分の非変性条件における電気泳動プロフィルを表す;分子量マーカーは左に存在し、次いで分離された画分との比較のために、分画前の粗製透過物の試料が存在する。
【図13】図13は、ロトフォー(Rotofor)で分離された液状画分の非変性条件における電気泳動プロフィルを表す;分子量マーカーは左に存在し、次いで分離された画分との比較のために、分画前の粗製透過物の試料が存在する。
【図14】図14は、角質化した乾癬を有する患者の初期の症状を示す、図面代用写真である。
【図15】図15は、角質化した乾癬を有する患者の、有効量の濃縮された液状軟骨抽出物で治療した時の患者の症状の有意な改善を示す、図面代用写真である。
【図16】図16は、角質化しない乾癬を有する患者の初期の症状を示す、図面代用写真である。
【図17】図17は、角質化しない乾癬を有する患者の、有効量の濃縮された液状軟骨抽出物で治療した時の患者の症状の有意な改善を示す、図面代用写真である。
【図18】図18は、本発明のサメ軟骨の液状抽出物のFPLC移動パターンを示す。
【図19】図19は、先行技術(Balassaら)のサメ軟骨の抽出物のFPLC移動パターンを示す。
【図20】図20は、先行技術(Oikawaら)のサメ軟骨の抽出物のFPLC移動パターンを示す。
【図21】図21は、図18において規定したのと同一の抽出物のHPLC移動パターンを示す。
【図22】図22は、図19において規定したのと同一の抽出物のHPLC移動パターンを示す。
【図23】図23は、図20において規定したのと同一の抽出物のHPLC移動パターンを示す。
【図24】図24は、対照と比較した、抗血管形成参照化合物であるプロタミンの異なる濃度を使用して実施したCAM試験の結果を示す。
【図25】図25は、本発明のサメ軟骨の本発明の全体の液状抽出物(DUP)の2つの画分を使用して実施したCAM試験の結果を示し、一方は10,000ダルトンより小さい分子量を有し、他方は10,000ダルトンより大きい分子を有する。
【図26】図26は、Balassaの方法により製造された生成物(BAL)の等しい濃度と比較したときにおける、本発明の全体の液状抽出物(DUP)を使用して実施したCAM試験の結果を示す。
【図27】図27は、Oikawaの方法により製造された生成物(OIK)の等しい量の乾燥物質重量から得られる試料と比較したときにおける、本発明の全体の液状抽出物(DUP)を使用して実施したCAM試験の結果を示す。
【図28】図28は、本発明に従い調製された全体のサメ軟骨の液状抽出物の存在または非存在において測定した、DMSO対照と比較した、ケラチノサイトに対するTPAの効果を示す。
【図29】図29は、皮膚の刺激のモデルに対する本発明の全体の液状抽出物の抗炎症効果を示す。
【図30】図30は、10,000ダルトンより小さい分子量を有する本発明の全体の液状抽出物の画分の他のHPLC移動パターンを示し、前記画分は濃縮し、5つのサブ画分に分離された。
【図31】図31は、異なる被験体積における図30に示した各サブ画分の抗膠原溶解作用を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲン分解を有する疾患または障害(癌、乾癬、座瘡、および関節炎を除く)の治療のための組成物であって、活性成分としてサメ軟骨抽出物を含んで成り、該サメ軟骨抽出物は全サメ軟骨の水性均質化物の遠心分離の後に得られる上清の画分であり、該画分は、前記上清を500キロダルトン(500kDa)の分子量カットオフ値を有する膜上で分画して回収したものであって、500キロダルトン(500kDa)未満の分子量の分子を有し且つ抗−コラーゲン溶解活性および抗−炎症活性を有する、ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記抽出物が、1kDaの分子量カットオフ値を有する膜上で濃縮され、1〜500kDaの分子量の分子が富化されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
局所投与用である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
更に、抗酸化剤を含む、請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗酸化剤が、トコフェロール、トコフェロール誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体およびBHTから成る群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
抗−炎症剤を更に含んで成る、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗−炎症剤が、植物由来の抗刺激剤である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗炎症剤が、コラまたは緑茶抽出物である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗炎症剤が、フォスフォリパーゼA2阻害剤である、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
溶液、懸濁液、ローション、チンキ、ゲル、クリーム、スプレー、乳剤、スティックまたは軟膏である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記抽出物がリポソーム中に存在する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項1】
コラーゲン分解を有する疾患または障害(癌、乾癬、座瘡、および関節炎を除く)の治療のための組成物であって、活性成分としてサメ軟骨抽出物を含んで成り、該サメ軟骨抽出物は全サメ軟骨の水性均質化物の遠心分離の後に得られる上清の画分であり、該画分は、前記上清を500キロダルトン(500kDa)の分子量カットオフ値を有する膜上で分画して回収したものであって、500キロダルトン(500kDa)未満の分子量の分子を有し且つ抗−コラーゲン溶解活性および抗−炎症活性を有する、ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記抽出物が、1kDaの分子量カットオフ値を有する膜上で濃縮され、1〜500kDaの分子量の分子が富化されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
局所投与用である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
更に、抗酸化剤を含む、請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗酸化剤が、トコフェロール、トコフェロール誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体およびBHTから成る群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
抗−炎症剤を更に含んで成る、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗−炎症剤が、植物由来の抗刺激剤である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗炎症剤が、コラまたは緑茶抽出物である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記抗炎症剤が、フォスフォリパーゼA2阻害剤である、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
溶液、懸濁液、ローション、チンキ、ゲル、クリーム、スプレー、乳剤、スティックまたは軟膏である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記抽出物がリポソーム中に存在する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2006−290904(P2006−290904A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208897(P2006−208897)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【分割の表示】特願2003−28771(P2003−28771)の分割
【原出願日】平成7年10月30日(1995.10.30)
【出願人】(503012258)エテルナ ゼンタリス インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【分割の表示】特願2003−28771(P2003−28771)の分割
【原出願日】平成7年10月30日(1995.10.30)
【出願人】(503012258)エテルナ ゼンタリス インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】
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