説明

シリコン表面をパッシベーションする方法

【課題】良好なシリコン表面パッシベーション品質する表面パッシベーション方法を提供する。
【解決手段】シリコン表面をパッシベーションする方法であって、この方法は、(a)シリコン表面を洗浄する工程であって、最終工程が親水性のシリコン表面を得る化学的酸化工程である一連の工程に、シリコン表面を晒す工程を含む工程と、(b)進歩的な乾燥技術を用いて、洗浄したシリコン表面を乾燥させる工程と、(c)シリコン表面上に、ALDAl層のような酸化物層を堆積する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコン表面をパッシベーションする方法に関する。本発明の方法は、例えばシリコン太陽電池の表面パッシベーションに用いられる。
【背景技術】
【0002】
シリコン太陽電池産業は、ウエハあたりのシリコン量を大きく減らすために、より薄いウエハを用い、これにより太陽電池のコストを低減している。この結果、電池の表面対体積比(surface-to-volume ratio)が増加し、それゆえにバルクシリコン太陽電池の良好な表面パッシベーションを形成する必要性が重要になる。
【0003】
特に多結晶シリコンウエハに対して、高温プロセスについて準定常状態フォトコンダクタンス(QSSPC)方法で測定されるように、シリコンバルクの少数キャリアのライフタイムの高い感度のために、低温表面パッシベーションプロセスが、特に多結晶シリコンウエハについて、将来の産業上の高効率シリコン太陽電池のために開発されてきた。例えば、G. Agostinelli et alの"Very low surface recombination velocities on p-type silicon wafers passivated with a dielectric with fixed negative charge", Solar Energy Materials & Solar Cells 90 (2006) 3438-3443 には、原子層堆積(ALD)で成長させたアルミニウム酸化物(Al)の薄膜がp型およびn型のシリコンウエハ上で良好な表面パッシベーションを提供できることが示されている。p型結晶シリコン表面上で、Al層中に固定された負電荷密度は、効果的な電界効果パッシベーションを提供する蓄積層を誘起できる。それゆえに、ALD堆積されたAlは、有利には、例えばPERC(passivated emitter and rear contacts)型太陽電池やPERL(passivated emitter rear locally diffused)型太陽電池のような太陽電池のp型裏面パッシベーションに使用される。
【0004】
"Silicon surface passivation by atomic layer deposited Al2O3", Journal of Applied Physics 104, 044903 (2008) では、B. Hoex et alは、結晶シリコン太陽電池の表面パッシベーション膜として適用するために、ALDAl膜の特性を、それらの電位との関係で評価した。膜厚が7nmと30nmの間の範囲のAl膜を、プラズマアシストALDまたは熱ALDにより、水素終端表面を有する結晶シリコンウエハの両側に成長させた。層は、飽和した自己制限条件で200℃の温度で成長させ、金属酸化物の堆積後に、425℃で30分間、窒素雰囲気中でアニールが行われた。このアニール工程は高いレベルの表面パッシベーションを得ることを本質的に考えられた。n型ウエハとp型ウエハの双方に対して、表面パッシベーションのレベルは、研究された膜厚の範囲内で、膜厚の増加とともに大きくなることが観察された。使用されたALDリアクタに応じて、表面パッシベーション品質の不均一さが、パッシベーションされた表面で検出された。熱ALDをプラズマアシストALDと比較した場合、使用されたプロセス条件では、熱ALDを用いて得られた実効ライフタイムは、プラズマアシストALDを用いて得られた実効ライフタイムより十分に低いことが見出された。これは、それらの層中の固定電荷密度の大きな違いに関係するのであろう。
【0005】
"Characterization and implantation of thermal ALD Al2O3 as surface passivation for industrial Si solar cells", 24th European PVSEC, 21-25 September 2009, B. Vermang et al は、堆積温度200℃で熱ALDによりAl膜を堆積する手段と、それに続く200℃から500℃の範囲の温度の、10体積%の水素と90体積%の窒素の混合中での熱処理による表面パッシベーションを報告している。3つの表面準備が行われた。即ち、ピラニア(Piranha)およびRCA洗浄およびHSO:H溶液中での化学酸化物の成長である。ピラニア洗浄はHSO:H洗浄と、それに続くHF浸責を表す。RCA洗浄は以下の拡張された洗浄を表す。(a)HSO:H洗浄とそれに続くHF浸責、(b)NHOH:H:HO洗浄とそれに続くHF浸責、および(c)HCl:H:HO洗浄とそれに続くHF浸責である。ピラニアおよびRCAは、堆積前に水素終端表面を残す。第3の方法は、水酸基終端表面を含み、HSO:H洗浄中の化学酸化物の成長により準備される。実験は、ウエハ洗浄後にHF浸責を行って得られた水素終端シリコン表面上と、HSO:H洗浄中の化学酸化で得られた水酸基終端シリコン表面上で行われた。アズデポ(as-deposited)の熱ALD層に対して、規定された少数キャリアのライフタイムは、水素終端表面を有するウエハ(最大約40μs)で、水酸基終端表面を有するウエハ(最大約8μs)より最大5倍大きくなった。(金属酸化物の堆積後の)熱処理の後、同様のライフタイムが双方の表面の終端において得られた(最大約100μs)。パッシベーションされた表面の表面パッシベーションの品質の均一性についての情報は無かった。熱ALDAl層は、Al/SiN誘電体パッシベーションスタック中で使用され、部分的なBSF多結晶太陽電池を形成する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、良好な表面パッシベーションを含む電子構造を提供すること、およびそのような構造を作製する方法を提供することである。
【0007】
本発明にかかる方法の長所は、安定した表面仕上げ、結果としての水酸基終端表面を提供することである。
【0008】
本発明にかかる方法の更なる長所は、水素終端表面上にALD層を成長する方法よりも、水酸基終端表面上にALDパッシベーション層を堆積させる間に、より高い成長速度が得られることである。
【0009】
第1の形態では、本発明は、構造を作製する方法に関する。
【0010】
第2の形態では、本発明は、その構造に関する。
【0011】
そのような構造の例は、p型裏面パッシベーション太陽電池であり、例えばpassivated emitter and rear contact(PERC)太陽電池デバイスやpassivated emitter rear locally diffused(PERL)デバイスである。
【0012】
第1の形態の所定の発明の具体例は、シリコン表面の低温表面パッシベーションの方法に関する。有利には、この方法を適用することにより、表面パッシベーションの品質が、従来技術の低温表面パッシベーション方法に比較して改良され、加えて、パッシベーションされた表面の表面パッシベーションの品質が従来技術の方法に比較して改良される。
【0013】
本発明の第1の形態では、シリコン表面の低温表面パッシベーションのための方法が提供され、この方法は、酸化溶液を用いてパッシベーションされるシリコン表面を化学的に酸化する工程と、進歩的な(advanced)乾燥技術を用いて表面を乾燥する工程と、好ましくは約250℃より低い温度で、熱原子層堆積(ALD)を用いてシリコン表面上に酸化物層、好ましくは金属酸化物層を堆積する工程とを含む。この方法は、更に、金属酸化物の堆積後に熱処理を行う工程を含んでも良い。
【0014】
シリコン表面を化学的に酸化する前に、(自然酸化層または先の洗浄工程の結果の酸化物層のような)シリコン表面上に存在する酸化物層が、例えばHF浸責を行うことにより好適には除去される。
【0015】
シリコン表面の化学的酸化は、例えばNHOH:H:HO(例えば水(HO)5、27%水酸化アンモニウム(NHOH)1、30%過酸化水素(H)1の割合)、またはHCl:H:HO(例えば水(HO)6、27%塩化水素(HCl)1、30%過酸化水素(H)1の割合)を含む酸化溶液中で行われる。他の好適な化学的酸化溶液を用いても良い。
【0016】
本発明にかかる方法で使用される乾燥技術は、太陽電池産業で一般に使用される、例えば温風乾燥技術と比較して進歩的である。好適には、進歩的な乾燥技術は、良好な表面汚染制御を可能にする乾燥技術であり、即ち(例えば水マーク、乾燥マーク、または有機物のような他の表面汚染要素のような)汚染要素が実質的に表面に加えられず、または乾燥後に表面上に残らない乾燥技術である。進歩的な乾燥技術の例は、マランゴリ乾燥(Marangori drying)(A.F.M. Leenaars et alによる"A new extremely clean drying process", Langmuir 1990, 6, 1701-1703)と、真空中でのよく制御されたN乾燥である。進歩的な乾燥技術の他の例は、例えばSRD(スピン、リンス、および乾燥)と超臨界CO乾燥である。
【0017】
金属酸化物層は、例えばAl層、HFO層、または当業者に知られた他の好適な金属酸化層でも良い。本発明の第1の形態の好適な具体例では、熱ALD堆積が、約150℃と250℃の間の範囲、好適には約175℃と約225℃の間の範囲、例えば約200℃の温度で行われる。
【0018】
本発明の第1の形態の好適な具体例では、金属酸化物堆積の後に、窒素雰囲気中またはフォーミングガス雰囲気中で、好適には約200℃と500℃の間の範囲の温度で行われ、300℃と400℃の間の範囲を用いることが更に好ましく、約330℃と370℃の間の範囲が特に好ましい。
【0019】
本発明の第1の形態の他の好適な具体例では、熱ALD層の膜厚は、約5nmと50nmの間の範囲である。
【0020】
第1の形態の具体例にかかる方法は、有利には、例えば太陽電池に適用するためにp型シリコン表面をパッシベーションするために使用され、特に、PERC型電池またはPERL型電池のような局部的なBSF(Back Surface Field)電池の裏面をパッシベーションするために使用される。
【0021】
本発明の第1の形態に具体例は、金属酸化物層の堆積前に安定した洗浄を行い、水酸基終端表面を得る。従来技術の「HFラスト(HF-last)」洗浄手順が、水素終端シリコン表面となり、これにより不安定な表面仕上げとなり、不安定で制御できない自然酸化膜の成長と表面汚染に繋がりうる。本発明の第1の形態の具体例で、これは、例えば、NHOH:H:HOまたはHCl:H:HOのような好適な溶液中で化学的酸化工程を行って、シリコン表面上に安定な酸化物層を形成することにより、酸化された表面または水酸基終端された表面を使用することにより防止できる。
【0022】
例えば太陽電池産業で使用される従来の方法では、温風乾燥または窒素銃が基板を乾燥するために使用され、水マークや乾燥マークを基板上に残すことになる。本発明の第1形態の具体例では、パッシベーション層の堆積前に、マランゴニ(Marangoni)乾燥のようなより進歩的な乾燥技術が用いられる。処理の後に殆ど水マークや乾燥マークは残らず、パッシベーションされる表面上で表面パッシベーション品質がより均一になる。
【0023】
本発明の第1の形態の具体例では、ALD層が水素終端表面上に成長される方法より、堆積中により高い成長速度を得ることができる。水素終端表面上でのALDAlの成長は、表面抑制(surface-inhibited)として知られている。一方、良く選択された酸化表明上での成長は、直線的または表面強化(surface-enhanced)でさえあり、表面成長を明らかに増加させる。
【0024】
本発明の第2の形態では、裏面のパッシベーションが本発明の第1の形態のいくつかの具体例にかかる方法を用いて行われる部分的BSF太陽電池が提供される。
【0025】
発明の所定の目的と長所は上に記載された。もちろん、そのような目的と長所の全てが、本発明の特定の具体例で達成される必要がないことが理解されるであろう。このような例では、ここで教示や示唆されたような他の目的や長所を達成する必要無く、ここで教示される1つの長所または長所のグループを達成または最適化する方法で、本発明を具体化または実施できることを、当業者は認識するであろう。更に、この概要は単に例であり、本発明の範囲を制限することを意図しない。構造および操作の方法の双方である本発明は、その特徴や長所とともに、添付の図面とともに読んだ場合に以下の詳細な説明を参照することにより最も理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】異なるプレ金属酸化堆積(pre-metal-oxide-deposition)処理とポスト金属酸化堆積(post-metal-oxide-deposition)処理に対して、30nm膜厚のAl層の手段で両側をパッシベーションした、1.5Ohm・cmの抵抗率と710マイクロメータの膜厚の両面研磨のp型シリコン試料のキャリア密度像を示す。
【図2】異なるプレ金属酸化堆積処理とフォーミングガス中でのアニールに対して、30nm膜厚のAl層の手段で両側をパッシベーションした、1.5Ohm・cmの抵抗率と710マイクロメータの膜厚の両面研磨のp型シリコン試料のキャリア密度像を示す。
【図3】30nmAlでパッシベーションされ、フォーミングガス中で350℃でアニールされた2Ohm・cmのp型フロートゾーン(FZ)結晶シリコン基板の実効ライフタイムを示す。
【図4】異なる乾燥技術が用いられ、30nmAlでパッシベーションされ、フォーミングガス中で350℃でアニールされた1−3Ohm・cmのp型シリコン基板のアニール工程後に、過剰キャリア密度の関数として測定された実効表面再結合速度を示す。
【図5】異なる乾燥技術が用いられ、30nmAlでパッシベーションされた1−3Ohm・cmのp型シリコン基板の、Al堆積直後の、過剰キャリア密度の関数として測定された実効表面再結合速度を示す。
【0027】
異なる図面において、同一の参照符号は、同一または類似の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の詳細な説明では、本発明の全体の理解、および特定の具体例でどのように実施するかを提供するために、多くの特定の細部が説明される。しかしながら、本発明は、それらの特定の細部無しに実施できることが理解されるであろう。他の例では、公知の方法、手順、および技術は、本発明を不明瞭にしないために、詳細には示されない。本発明は、特定の具体例について特定の図面を参照しながら説明されるが、本発明はこれに限定されるものでは無い。ここに含まれ記載された図面は模式的であり、本発明の範囲を限定しない。また図面において、図示目的で幾つかの要素の大きさは誇張され、それゆえに縮尺通りではない。
【0029】
更に、説明や請求の範囲中の、第1、第2、第3等の用語は、類似の要素の間で区別するために使用され、一時的、空間的、序列的、または他の方法のいずれかで順序を表す必要はない。そのように使用された用語は、適当な状況下で入替え可能であり、ここに記載された発明の具体例は、ここに記載や図示されたものと異なる順序によっても操作できることを理解すべきである。
【0030】
また、説明や請求の範囲中の、上、下、上に、下に等の用語は、記載目的のために使用され、相対的な位置を示すものではない。そのように使用された用語は、適当な状況下で入替え可能であり、ここに記載された発明の具体例は、ここに記載や図示されたものと異なる位置でも操作できることを理解すべきである。
【0031】
また、「含む(comprising)」の用語は、それ以降に示される要素に限定して解釈されることを排除するものであり、他の要素や工程を排除しない。このように、言及された特徴、数字、工程、または成分は、その通りに解釈され、1またはそれ以上の他の特徴、数字、工程、または成分、またはこれらの組み合わせの存在または追加を排除してはならない。このように、「手段AおよびBを含むデバイス」の表現の範囲は、構成要素AとBのみを含むデバイスに限定されるべきではない。
【0032】
本発明の第1の形態にかかる1の具体例は、シリコン表面の低温表面パッシベーション法を提供し、この方法は、酸化溶液を用いてパッシベーションされるシリコン表面を化学的に酸化する工程と、進歩的な乾燥技術を用いて表面を乾燥させる工程と、好適には約250℃より低い堆積温度で、熱原子層堆積(ALD)によりシリコン表面上に、例えばAl層のような、好適には金属酸化物層のような酸化物層を堆積する工程と、を含む。
【0033】
シリコン表面の化学的酸化の前に、例えばHF浸責を行うことにより、好適には、シリコン表面上に存在する(自然酸化膜または先の洗浄工程の結果の酸化物層のような)酸化物層が除去される。酸化物層の堆積後に、好適には熱処理が行われる。
【0034】
本発明の記載で使用される進歩的な乾燥技術は、良好な表面汚染制御のできる乾燥技術であり、即ち(例えば水マーク、乾燥マーク、または有機物のような他の表面汚染要素のような)汚染要素が表面に実質的に加えられず、または乾燥後に表面上に残らない。
【0035】
そのような進歩的な乾燥方法の一例は、マランゴニ乾燥(A.F.M. Leenaars et al, "Marangoni drying: a new extremely clean drying process", Langmuir 1990, 6, 1701-1708)である。マランゴニ乾燥は、(水)リンス浴から試料を引き出すとともに、同時に少量の(IPAのような)有機物の蒸気とともに窒素ガスが表面に導かれる工程を含む。有機物の蒸気は水の中に溶解し、表面上のIPA:HO液体ウエット膜中で表面張力勾配を形成し、重力によりウエハ表面からより容易に液体を完全に離れさせ、効果的に乾燥したウエハ表面を残す。温風乾燥のような進歩的でない乾燥技術とは対照的に、マランゴニ乾燥中に汚染が基板表面に加えられない。
【0036】
表1に示された異なる処理または洗浄後に、200℃の堆積温度で熱ALDを用いて30nm膜厚のAl層が堆積されて実験が行われた。キャリア密度画像(CDI)と準安定状態フォトコンダクティビティ(QSSPC)測定が、Alパッシベーション層のパッシベーション品質と均一性を試験するために用いられた。
【0037】
表1に示すように、試料(a)および試料(b)は、追加の酸化工程を伴う場合と伴わない場合のいわゆる「RCA洗浄」である進歩的な洗浄手順と、ALD堆積前の特にマランゴニ乾燥のような進歩的な乾燥技術とが行われた。試料(c)は、いわゆる「ピラニア洗浄」である進歩的で無い洗浄と、これに続く温風乾燥工程とが行われた。試料(a)は、乾燥工程の直前に、NHOH:H:HO中で酸化処理が行われ、−OHで終端されたシリコン表面となる。試料(b)と試料(c)は、乾燥工程直前にHF浸責が行われ、−H終端されたシリコン表面となる。
【0038】
【表1】

【0039】
図1は、6つの両面研磨の、710マイクロメータ膜厚のp型シリコン試料(2cm×2cm)であって、1.5Ohm・cmの電気抵抗率を有し、200℃で堆積された30nm膜厚の熱ALDAl層で両面がパッシベーションされた試料で測定されたキャリア密度画像を示す。異なる試料は、金属酸化物の堆積前に異なる処理が行われ、金属酸化物の堆積後に異なる熱処理が行われた。試料a1と試料a2は、表1の「試料(a)」にかかる洗浄手順と乾燥工程を用いて前処理された。試料b1と試料b2は、表1の「試料(b)」にかかる洗浄手順と乾燥工程を用いて前処理された。試料c1と試料c2は、表1の「試料(c)」にかかる洗浄手順と乾燥工程を用いて前処理された。試料a1、b1、c1では、金属酸化物の堆積後に熱処理が行われない。試料a2、b2、c2では、金属酸化物層の堆積後に、350℃でのフォーミングガスアニールを含む熱処理が行われる。熱処理を行った後に得られた図1に示された結果から、試料a2および試料b2で使用された洗浄手順と乾燥技術は、試料c2で使用された洗浄手順と乾燥技術に比較して、より均一なパッシベーション品質とより良好なパッシベーションに繋がることが結論付けられた。
【0040】
図2は、異なる過剰キャリア密度に対して規定された試料a2、b2、c2の実効少数キャリアライフタイムを示す。特に、図2は、1015cm−3の過剰キャリア密度(破線)、1016cm−3の過剰キャリア密度(点線)に対する測定された実効ライフタイム、および1015cm−3と1016cm−3との間の過剰キャリア密度の範囲で測定された最も高い実効ライフタイム(実線)を示す。それらの結果から、(マランゴニ乾燥のような)進歩的な乾燥技術の使用が、温風乾燥のような進歩的でない乾燥技術に比較して、より高い実効ライフタイム(およびそれによるより良好なパッシベーション品質)に繋がることが結論づけられる。
【0041】
図3は、堆積温度200℃の熱ALDで堆積され、350℃でフォーミングガス中でアニールされた30nmAl層でパッシベーションされた、2Ohm・cmのp型FZ結晶シリコン基板の(準安定状態フォトコンダクタンス(QSSPC)で測定された)msでの実効ライフタイムを、注入レベルの関数として示す。ALD堆積前に、基板は、表1の試料(a)の洗浄、即ち化学的な酸化工程が行われ、続いてマランゴニ乾燥が行われることにより洗浄された。最大で2.2msの実効ライフタイム値と、最小で4.6cm/sの表面再結合速度が達成され、良好な表面パッシベーション品質を示した。
【0042】
第1の形態の1の具体例では、シリコン表面の化学的な酸化が、NHOH:H:HOまたはHCl:H:HOを含む酸化溶液中で行われる。化学的酸化溶液は、酸化溶液の跡が、例えばリンスにより容易に除去できるように、好適に選択される。それゆえに、好適には、高すぎない粘度を有する化学的酸化溶液が用いられる。リンスの後にH:HSOの跡が表面に残り、より低品質のより不均一な表面パッシベーションとなるために、H:HSOのような粘度の高い化学的酸化溶液は、好ましくは避けられことが示される。
【0043】
進歩的な乾燥技術を用いた表面の乾燥工程は、例えば上述のようにマランゴニ乾燥を含む。しかしながら、具体例はこれに限定されず、当業者に良く知られた他の進歩的な乾燥技術、例えば真空中での良く制御されたN乾燥、超臨界CO乾燥、またはSRD(スピン、リンス、および乾燥)を用いても良い。
【0044】
金属酸化物の堆積後の熱処理は、例えば窒素雰囲気中やフォーミングガス雰囲気中で、例えば約200℃と500℃の間の範囲、例えば約300℃と400℃の間、例えば約330℃と370℃の間の温度で行われても良い。
【0045】
太陽電池の表面パッシベーションのために使用する場合、例えば部分的なBSF太陽電池の裏面パッシベーションのために、1の具体例により堆積させた薄いALDパッシベーション層が、シリコン窒化物層やシリコン酸化物層のような他の誘電体層と組み合わせても良い。使用できるパッシベーションスタックの例は、例えばALDAl/SiN、ALDAl/SiO、ALDAl/sol−gelAlである。しかしながら、本発明はこれに限定されない。ALDAlの代わりに、例えばALDHfOのような他の材料が用いられても良い。
【0046】
図4は、例えばマランゴリ乾燥(丸)および温風乾燥(四角)のような異なる乾燥技術が洗浄手順後に使用された、200℃の熱ALDで堆積され、350℃でフォーミングガス中でアニールされた30nmAl層でパッシベーションされた、1−3Ohm・cmのp型シリコン基板の、アニール工程後に過剰キャリア密度の関数として測定された、実効表面再結合速度を示す。p型シリコン基板は、HSO:H溶液中で、約85℃で10分間洗浄され、続いてHF浸責される。図4に示されたように、得られた表面パッシベーションの品質は、進歩的な乾燥技術を使用した場合に特徴的に優秀であった。
【0047】
図5は、図4の試料の、マランゴニ乾燥(丸)と温風乾燥技術(四角)に対してAl堆積直後における、過剰キャリア密度を関数とした(QSSPCで測定された)実効表面再結合速度を示す。
【0048】
PERC型太陽電池は、異なる方法が裏面パッシベーションのために使用されて作製された。基板として、チョクラルスキプロセスを用いて成長させた、0.5から3Ohm・cmの抵抗率を有する125mm×125mmの略四角形のp型シリコンウエハが使用された。表面のテクスチャ後、基板の裏側が研磨され、160マイクロメータの基板膜厚となる。次に、表側のリン拡散工程(POCl拡散)が、60Ohm/squareのシート抵抗を有するエミッタ領域を形成するために行われた。続いて、ウエハが洗浄され、本発明の具体例による進歩的な乾燥技術を用いて乾燥された。ウエハの第1部分について、疎水性表面(Si−H)に繋がる洗浄手順が用いられた。特に、ウエハは、1:4のH:HSO溶液中で85℃で10分間洗浄され、続いてHF浸責(脱イオン水中の2%HF)とマランゴリ乾燥が行われた。ウエハの第2部分について、本発明に従って親水性表面(Si−OH)に繋がる洗浄手順が用いられた。特に、それらのウエハは、1:4のH:HSO溶液中で85℃で10分間洗浄され、続いてHF浸責(脱イオン水中の2%HF)と、NHOH:H:HO(1:1:5)中で10分間、環境温度での化学的酸化と、最後のマランゴニ乾燥が行われた。薄いAl層(5nmまたは10nm)が続いて、200℃の熱ALDを用いて裏面に堆積され、窒素雰囲気中でのアニール工程が400℃で行われた。PECVDSiNキャップ層が、続いてAl層上に堆積された。電池の裏側に、レーザ切除を用いてコンタクト開口部が、Al/SiNスタックを通って形成された。これに続いて、裏側コンタクトを形成するための、裏側のAlスパッタと、表側コンタクトを形成するための、表側のAgスクリーン印刷とが行われ、860℃のピーク温度を用いて金属コンタクトの同時焼成(co-firing)が行われた。
【0049】
プロセス条件(洗浄のタイプ、Al層の膜厚)のそれぞれに対して、5つの電池が作製された。開回路電圧(open-circuit voltage)(Voc)が測定され、それぞれのプロセス条件に対する平均Vocが表2にまとめられた。電池レベルのそれらの結果から、高温での焼成工程を含む完全な太陽電池のプロセス後に、本発明の方法に従って形成されたAl層は、良好な表面パッシベーション品質を提供することが結論づけられる。結果は、Al層が疎水性表面上と親水性表面上に堆積された電池の間の十分な違いを示していない。
【0050】
参照として、太陽電池が、上述の同じプロセス手順を用いて、5nm膜厚のAl層を有し、Al堆積前のマランゴニ乾燥に代わる温風乾燥を用いて作製された。それらの電池では、627mVの平均開回路電圧が測定された。この結果を表2で報告された値と比較すると、本発明のかかる進歩的な乾燥技術を用いる長所が明確に示される。
【0051】
【表2】

【0052】
先の記載は、本発明の所定の具体理を詳述する。しかしながら、テキスト中でいかに詳細に前述のものがあらわされようとも、本発明は多くの方法で実施できることが認められるであろう。本発明の所定の特徴や形態を記載する場合の、特定の用語の使用は、その用語が関連する本発明の特色や形態の特定の特徴を含むように、その用語がここで再定義されて限定されることを意味するものと取るべきでないことは留意すべきである。
【0053】
上記詳細な説明は、様々な具体例に適用されるような、本発明の新規な特徴を示し、記載し、指摘したが、記載されたデバイスまたはプロセスの形態や細部において、様々な省略、代替え、および変形が、本発明の精神から離れることなく当業者が行えることは理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン表面をパッシベーションする方法であって、この方法は、
(a)シリコン表面を洗浄する工程であって、最終工程が親水性のシリコン表面を得る化学的酸化工程である一連の工程に、シリコン表面を晒す工程を含む洗浄工程と、
(b)進歩的な乾燥技術を用いて、洗浄したシリコン表面を乾燥させる工程と、
(c)シリコン表面上に酸化物層を堆積する工程と、を含む方法。
【請求項2】
一連の工程は、化学的酸化工程および酸化物分解工程の交互のシーケンスを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化学的酸化工程は、水酸化アンモニウム、過酸化水素、および水の酸化混合物、または塩化水素、過酸化水素、および水の酸化混合物中で行われる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
更に、洗浄工程(a)を行う前に、シリコン表面上に存在する酸化物層の除去を含む請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
酸化物層の除去は、HF浸責で行われる請求項4に記載の方法。
【請求項6】
更に、堆積工程(c)の後に、約200℃と500℃の間の範囲、好適には約300℃と400℃の間、または約330℃と370℃の間の範囲の温度で行われる高温アニール工程を含む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
高温アニール工程は、窒素雰囲気中、またはフォーミングガス雰囲気中で行われる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
シリコン表面上への酸化物層の堆積は、熱原子層堆積を用いて行われる請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
熱原子層堆積は、150℃と250℃の間の範囲、好適には175℃と225℃の間に範囲の堆積温度で行われる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
堆積された酸化物層は、金属酸化物層である請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
金属酸化物層は、Al層またはHfO層である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
金属酸化物層は、5nmと50nmの間の膜厚を有する請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
進歩的な乾燥技術は、マランゴニ乾燥技術である請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
パッシベーションされたシリコン裏面を含む太陽電池デバイスであって、シリコン裏面は、請求項1〜13のいずれかに記載の方法を用いてパッシベーションされるデバイス。
【請求項15】
太陽電池デバイスは、PERC型またはPERL型の電池である請求項14に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−39088(P2012−39088A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−135169(P2011−135169)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(599098493)カトリーケ・ウニフェルジテイト・ルーベン・カー・イュー・ルーベン・アール・アンド・ディ (83)
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven,K.U.Leuven R&D
【Fターム(参考)】