説明

セラミックス膜の製造方法及びセラミックス膜を含む構造物

【課題】 AD法を用いて、高温プロセスを経ることなく結晶性の良い膜を作製できるセラミックス膜の製造方法等を提供する。
【解決手段】 この製造方法は、エアロゾルを利用したセラミックス膜の製造方法であって、非結晶性の成分を含有するセラミックス原料粉をガスに分散させることによってエアロゾルを生成する工程(a)と、工程(a)において生成されたエアロゾルを基板が配置されたチャンバ内に供給して、上記セラミックス原料粉を基板に堆積させることにより膜を形成する工程(b)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータや超音波トランスデューサ等において用いられるセラミックス膜の製造方法及びセラミックス膜を含む構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電体の両面に電極が形成された構造体は、圧電アクチュエータ、圧電ポンプ、インクジェットプリンタのインクヘッド、超音波トランスデューサ等の様々な用途に利用されている。近年、MEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)関連の機器の開発に伴い、このような構造を有する素子の微細化及び集積化がますます進んでいる。そのため、そこで用いられる圧電体についても、微細化や性能の向上等が望まれている。
【0003】
そのような事情から、近年、バインダを混入させることなく圧電体層を形成するために、エアロゾルデポジション(aerosol deposition:AD)法や、ガスデポジション法等を含む固体粒子の衝突付着現象を利用した成膜方法が注目されている。例えば、AD法は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(lead) zirconate titanate)等の原料の微粒子をガスに分散させたエアロゾルをノズルから基板に向けて噴射して、微粒子を基板や先に形成された膜に衝突させることにより、原料を基板上に堆積させる成膜方法である。このAD法によれば、緻密且つ強固な厚膜を形成することができる。
【0004】
特許文献1には、粒径が1μm以下のセラミックス系誘電体微粒子をガス中に浮遊させてエアロゾル化し、エアロゾル化したセラミックス系誘電体微粒子を、ノズルを介して高速で基板上に噴射して堆積させ、厚さ1〜20μmのセラミックス誘電体厚膜層を形成するセラミックス誘電体製品の製造方法が開示されている(第1頁、図2)。
【0005】
また、特許文献2には、結晶性の高いセラミックス膜を形成するために、セラミックス粉体を含むエアロゾルを基板に吹き付け、セラミックス粉体を基板に衝突させることによって基板上に膜を成長させるためのセラミックス膜の形成方法において、Cu−Kα線を使用したときのX線回折線の最強度回折線ピークの半値幅が0.3°未満である結晶性の高いセラミックス粉体を用いてセラミックス膜の形成を行うことが開示されている(第1頁、図1)。即ち、特許文献2においては、セラミックス膜の結晶性を向上させるためには、原料の粉体(原料粉)の結晶性を高くすることが重要であるとされている。
【0006】
ところで、一般的に、圧電材料における圧電性能の良否は、結晶の配向度(配向率)に応じて大きく左右される。即ち、配向度が高い方が、圧電材料に分極処理を施す際に分極の向きが揃いやすいので、良好な圧電性能を得ることができる。ここで、配向度とは、多結晶体に含まれる結晶面の内で特定の方向を向いた結晶面の割合のことである。例えば、c軸における配向度Fは、次式(1)によって定義される。
F(%)=(P−P)/(1−P)×100 …(1)
式(1)において、Pは、完全にランダムに配向している多結晶体のc軸におけるX線回折強度、即ち、完全にランダムに配向している多結晶の(00L)面からの反射強度I(0 0 L)の合計ΣI(0 0 L)と、その多結晶体の各結晶面(H K L)からの反射強度I(H K L)の合計ΣI(H K L)との比{ΣI(0 0 L)/ΣI(H K L)}である。また、式(1)において、Pは、試料のc軸におけるX線回折強度、即ち、試料の(0 0 L)面からの反射強度I(0 0 L)の合計ΣI(0 0 L)と、その試料の各結晶面からの反射強度I(H K L)の合計ΣI(H K L)との比{ΣI(0 0 L)/ΣI(H K L)}である。なお、H、K、Lの各々は、0以上の任意の整数を取ることができる。
【0007】
ここで、式(1)において、Pは既知の定数である。従って、(0 0 L)面からの反射強度I(0 0 L)の合計ΣI(0 0 L)と、各結晶面(H K L)からの反射強度I(H K L)の合計ΣI(H K L)が等しい場合、即ち、P=1の場合に、試料のc軸における配向度(F%)は100%となる。
【0008】
例えば、代表的な圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(lead) zirconate titanate)において、正方晶系では<001>軸方向に配向した場合に最も大きな圧電変位が得られ、菱面体晶系では<111>軸方向に配向した場合に最も大きな圧電変位が得られる。反対に、配向制御されていない多結晶体においては、結晶軸がランダムな方向を向いているので、単結晶体や配向を制御された多結晶体と比較して圧電性能は劣る。そのため、圧電性能を高くするために、多結晶体における結晶性を高くすると共に、配向度が高くなるように、配向を制御できることが望まれている。
【0009】
しかしながら、先に説明したAD法によれば、強固で密着性の高い膜を形成することはできるが、結晶性を向上させるためには高い熱処理温度が必要である。現実には、成膜後に1000℃付近の高い温度でアニール(熱処理)することにより、PZT膜の結晶性及び圧電性能を高めている。また、AD法において結晶面の配向を制御することは行われていない。そのため、AD法による成膜自体は600℃程度を上限とする温度で行うことができても、実用化しうる十分な圧電性能を得るためには、やはり高温プロセス等により、高いエネルギーを与える必要が生じてしまう。
【特許文献1】特開平4−188503号公報(第1頁、図2)
【特許文献2】特開2004−43893号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、AD法等の固体粒子の衝突付着原料を利用した成膜方法を用いることにより、高温プロセスを経ることなく結晶性の良いセラミックス膜を製造することを第1の目的とする。また、本発明は、そのような成膜方法を用いることにより、結晶性の良いセラミックス膜を製造するために必要なエネルギーを低減することを第2の目的とする。さらに、本発明は、そのような成膜方法を用いることにより、基板面に対して所定の方向に配向されたセラミックス膜を製造することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る製造方法は、エアロゾルを利用したセラミックス膜の製造方法であって、非結晶性の成分を含有するセラミックス原料粉をガスに分散させることによってエアロゾルを生成する工程(a)と、工程(a)において生成されたエアロゾルを基板が配置されたチャンバ内に供給して、上記セラミックス原料粉を基板に堆積させることにより、膜を形成する工程(b)とを具備する。
【0012】
また、本発明の第2の観点に係る製造方法は、エアロゾルを利用したセラミックス膜の製造方法であって、外部からエネルギーを与えることにより発熱反応を生じる成分を含有するセラミックス原料粉をガスに分散させることによってエアロゾルを生成する工程(a)と、工程(a)において生成されたエアロゾルを基板が配置されたチャンバ内に供給して、上記セラミックス原料粉を基板に堆積させることにより、膜を形成する工程(b)とを具備する。
【0013】
本発明の第1の観点に係る構造物は、基板と、非結晶性の成分を含有する原料粉をエアロゾル化させて上記基板上に堆積させることにより形成された膜とを具備する。
本発明の第2の観点に係る構造物は、基板と、外部からエネルギーを与えることにより発熱反応を生じさせる成分を含有する原料粉をエアロゾル化させて上記基板上に堆積させることにより形成された膜とを具備する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、AD法等のエアロゾルを利用した成膜方法において、ポテンシャルエネルギーが多結晶体よりも高い非結晶性の成分を含有する原料粉や、外部からエネルギーを与えることにより発熱反応を生じる成分を含有する原料粉を用いるので、比較的高い温度における熱処理等を要することなく結晶性の良い膜を作製することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1〜第5の実施形態に係るセラミックス膜の製造方法において用いられる成膜装置を示す模式図である。この成膜装置は、予め他の手法により用意された原料の微小な粉体(原料粉)をガスに分散させることによって生成されたエアロゾルを基板に吹き付けることにより膜を形成するエアロゾルデポジション(aerosol deposition:AD)法を用いている。ここで、AD法は、固体粒子の衝突付着現象を利用した成膜方法の内の1つである。
【0016】
図1に示す成膜装置は、ガスボンベ1と、搬送管2a及び2bと、エアロゾル生成室3と、成膜室4と、排気ポンプ5と、成膜室4内に設けられたノズル6及び基板ホルダ7とを含んでいる。
ガスボンベ1には、キャリアガスとして使用される窒素(N)、酸素(O)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、又は、乾燥空気等が充填されている。また、ガスボンベ1には、キャリアガスの供給量を調節するための圧力調整部1aが設けられている。
【0017】
エアロゾル生成室3は、成膜材料である原料の微小な粉体(原料粉)が配置される容器である。ガスボンベ1から搬送管2aを介して、エアロゾル生成室3にキャリアガスを導入することにより、そこに配置された原料粉が噴き上げられてエアロゾルが生成される。生成されたエアロゾルは、搬送管2bを介してノズル6に供給される。また、エアロゾル生成室3は、エアロゾル生成室3に振動等を与えることにより、その内部に配置された原料粉を攪拌するための容器駆動部3aが設けられている。
【0018】
なお、エアロゾルの生成方法には、粉体をガス中に分散させることができれば、この他にも様々な公知の方法を適用することができる。例えば、キャリアガスの気流が形成されている容器に原料粉を投入することによってエアロゾルを生成しても良い。
【0019】
成膜室4の内部は、排気ポンプ5によって排気されており、それによって所定の真空度に保たれている。
ノズル6は、所定の形状及び大きさ(例えば、長さ5mm、幅0.5mm程度)の開口を有しており、エアロゾル生成室3から供給されたエアロゾルを基板10に向けて高速で噴射する。それにより、エアロゾル状態となった原料粉が、基板や基板上に形成された堆積物(以下において、「下層」という)に衝突し、下層に付着して堆積する。
基板ホルダ7は、基板10を保持している。また、基板ホルダ7には、基板ホルダ7を3次元的に移動させるための基板ホルダ駆動部7aが設けられている。これにより、ノズル6と基板10との相対位置及び相対速度が制御される。
【0020】
次に、本発明に係るセラミックス膜の製造方法の原理について、一般的なセラミックス形成技術と比較しながら説明する。図2及び図3は、結晶粒成長のメカニズムを説明するための図である。
一般に、セラミックスは、セラミックス粉体を圧縮成形した圧粉体や、セラミックス粉体とバインダとを混合したものにより作製した成形体を焼結することによって作製される。それにより、セラミックスが融点以下における固相拡散によって緻密化すると共に、粒成長が進行する。この焼結工程は、大きく初期、中期、及び、後期の3つの段階に分けられる。
【0021】
まず、焼結初期段階においては、粒子の再配列及び合体が進行し、ネック(粒子同士が接触しているくびれ部分)が太く成長して行く。このとき、粒子間に存在する空孔(ポア)は、膜の内部に閉じ込められる。
次に、焼結中期段階においては、さらに合体が進行し、球形の粒子が多面体となる。また、膜の内部に形成された気孔は収縮する。
【0022】
ここで、図2の(a)を参照すると、結晶粒Iと結晶粒IIとの界面(粒界面)には、界面エネルギーが付随している。また、湾曲した粒界面の両側(例えば、位置Aと位置Bとの間)には、式(2)によって表される自由エネルギーの差(界面を横切るときの自由エネルギー変化)ΔGが存在する。式(2)において、γは界面エネルギーであり、Vはモル体積であり、r及びrは2つの界面の主曲率半径である。
ΔG=γV{(1/r)+(1/r)} …(2)
図2の(b)は、原子の位置に応じた自由エネルギーの変化を示している。粒界面の両側に存在する物質の間におけるこのような自由エネルギーの差が、粒界をその曲率の中心に向けて動かす駆動力となる。
【0023】
従って、結晶粒成長は、次のようなメカニズムで進行する。図2の(a)及び(b)に示すように、粒界の左側(位置A)に存在する原子100は、活性化エネルギーΔGを得ることにより、粒界の反対側の位置Bにジャンプする。それにより、粒界が図の左方向に移動し、結果として結晶粒IIが成長する。
【0024】
図3は、焼結の中期及び後期段階における結晶粒成長の様子を模式的に表している。図3に示す矢印は、粒界の移動方向を示している。図2の(a)及び式(2)を用いて説明したように、粒界はその曲率の中心に向かって移動するため、辺の数が6より小さい(即ち、外に凸な界面を有する)粒界は小さくなり、辺の数が6より多い(即ち、内に凸な界面を有する)粒界は大きく成長する傾向にある。
さらに、焼結後期段階においては、膜の内部の気孔が収縮して消滅していく。
【0025】
このような一般的なセラミックス形成技術に対し、AD法においては、次のようなメカニズムによって膜が形成される。即ち、原料粉が下層に衝突したときの衝撃により原料粉が破砕し、それによって生成された新たな破砕面が下層に付着する。このようなメカニズムは、メカノケミカル反応と呼ばれている。
【0026】
このAD法によって形成された膜(AD膜)においては、膜が形成された時点において既に粒子が互いに緻密に結合しており、一般的なセラミックス形成技術の焼結初期段階におけるような気孔は見られない。従って、AD膜を熱処理することは、一般的なセラミックス形成技術における焼結中期から後期段階に相当する。そのため、AD膜について結晶粒成長を促進するためには、図3に示す結晶組織において、粒界をいかにスムーズに移動させるかということが重要になる。そのためには、活性化エネルギーΔG以上の大きなエネルギーを外部から与えるか、予め原子のエネルギー状態を高くしておくことにより活性化エネルギーΔGを小さくすることが望ましい。
【0027】
次に、非結晶性の成分を含有している原料粉や、パイロクロア(pyrochlore)構造を有する原料粉や、外部からエネルギーを与えることにより発熱反応を生じる成分を含有している原料粉を用いてAD膜を形成する場合について検討する。これらの原料粉は、結晶性の高い原料粉に比較してエネルギー状態が高い。ここで、非結晶性の成分とは、言い換えれば、アモルファス構造を有している成分のことである。アモルファス構造とは、短距離秩序を有するが、結晶のような長距離秩序を有しない構造のことであり、熱力学的には、非平衡準安定状態にある。また、外部からエネルギーを与えることにより発熱反応を生じる成分とは、成膜時に、加熱された基板上に堆積したり、下層又は原料粉同士で衝突することにより、自ら発熱反応を連鎖的に生じさせる成分や、成膜後の熱処理工程において加熱されることにより、自ら発熱反応を連鎖的に生じさせる成分のことを言う。そのような成分としては、例えば、有機物を含有しているゲル粉が挙げられる。なお、ゲル粉とは、ゾルゲル法によって製造された粉体のことである。
【0028】
そのような原料粉を用いて作製されたAD膜は、先に説明した通常のAD膜と同様に、既に、焼結中期から後期段階の状態にある。しかしながら、非結晶性の成分を含有している原料粉は、もともとエネルギー状態が高い。そのため、図4に示すように、粒界の一方の側に位置する原子を粒界の反対側にジャンプさせるために必要な活性化エネルギーΔGは、多結晶の原料粉よりも小さくなる。また、ゲル粉を用いる場合には、加熱された基板に対して成膜する時、又は、成膜後の熱処理時に、ゲル粉において発熱反応が連鎖的に進むことにより生成された熱エネルギーが、原子の活性化エネルギーとして利用される。
【0029】
そのため、本願においては、非結晶性の成分を含有している原料粉や、外部からエネルギーを与えることにより発熱反応を生じる成分を含有している原料粉を用いてAD法により成膜を行うこととしている。それにより、AD膜における結晶粒成長を促進させるために外部から与えられるエネルギーを低く抑えることが可能となるからである。ここで、AD膜に与えられるエネルギーには、ポストアニール(熱処理)による熱エネルギー、紫外線照射や赤外線照射による光(電磁波)エネルギー、プラズマ照射によるエネルギー等が該当する。
【0030】
本願において、非結晶性の成分を含有する原料粉は、非結晶性の成分のみで構成される原料粉だけでなく、ある程度結晶性の成分を含んでいても構わない。例えば、結晶性の粒子と非結晶性の粒子とが混合している材料であっても良いし、内側が結晶性であり、外側が非結晶性である粒子を含む材料であっても良い。いずれにしても、結晶化度が50%以下、望ましくは30%以下、さらに望ましくは10%以下である原料粉であれば、本願発明に適用できる。
【0031】
ここで、結晶化度X(%)は、XRD(X線回折装置)によって測定された散乱強度を用いて、次式(3)によって表される。
X=(ΣI/ΣIC100)×100 …(3)
式(3)において、Iは、未知の物質における結晶質部分の散乱強度であり、IC100は、結晶質が100%である試料における散乱強度を表している。なお、結晶質が100%である試料としては、例えば、焼結密度が95%以上のバルク焼結体が該当する。
【0032】
次に、本発明の第1の実施形態に係るセラミックス膜の製造方法について、図1及び図5を参照しながら説明する。本実施形態においては、PZT(Pb(lead) zirconate titanate)膜を製造する場合について説明する。
まず、原料粉として、非結晶性の成分を含有するPZT前駆体の粉体(微粒子)を用意する。このようなPZT前駆体の粉体は、アルコキシドゾルゲル法、クエン酸ゾルゲル法、ポリオールゾルゲル法を含むゾルゲル法や、尿素均一沈殿法等の公知の方法を用いて作製することができる。この原料粉の粒子径は、約2μm以下であることが望ましい。
また、PZT膜を形成する基板として、SUS(ステンレス鋼)430によって形成された基板を用意する。
【0033】
次に、用意した基板10を図1に示す基板ホルダ7にセットし、所定の温度(例えば、原料粉が結晶化する温度)に保つ。さらに、原料であるPZT前駆体の粉体をエアロゾル生成室3に配置して成膜装置を駆動する。それにより、ノズル6から噴射されたPZT前駆体の粉体11が基板に衝突する。その際に、基板10が加熱されていた場合には、アモルファス構造を有していたPZT前駆体が結晶化する。このような現象が連鎖して生じることにより、結晶化されたPZT膜12が基板上に形成される。
【0034】
実施例として、本実施形態に係るセラミックス膜の製造方法を用い、厚さが約10μmのPZT膜を作製した。原料であるPZT前駆体の粉体としては、アルコキシドゾルゲル法によって作製され、平均粒子径が約0.3μm、粒子径の範囲が0.1μm〜1μm程度であるものを用いた。なお、この原料粉の結晶化度は10%以下であった。また、成膜温度(基板温度)は、約700℃とした。
【0035】
作製されたPZT膜の特性を測定したところ、次のような結果を得ることができた。即ち、X線回折法により測定を行ったところ、PZTからの回折ピークのみが観察された。従って、アモルファス構造を有していたPZT前駆体が結晶化されていることが確認できた。また、PZTのメインピークである(110)面を表す回折ピークの半値幅は0.25°であった。さらに、片持ち梁法によって測定した圧電歪定数d31は90pm/Vであり、良好な圧電性能が得られていることが確認できた。
【0036】
比較例として、PZT多結晶粉体(平均粒子径が約0.3μm、粒子径の範囲が0.1μm〜1μm程度)を原料粉として用い、図1に示す成膜装置を用いて約10μmのPZT膜を作製した。なお、この原料粉の結晶化度は60%以上であった。また、成膜温度は、約600℃、約700℃、及び、約800の3種類とした。
【0037】
比較例についてX線回折法により測定を行ったところ、PZTの(110)面を表す回折ピークの半値幅は、成膜温度600℃における成膜品では0.6°程度、700℃における成膜品では0.45°程度、800℃における成膜品では0.4°程度であった。また、比較例において、片持ち梁法によって測定した圧電歪定数d31は60pm/V以下であり、実施例よりも低い値となった。
【0038】
図6に、実施例及び比較例、並びに、参考としてバルク焼結体におけるX線回折法による測定結果を示す。図6より明らかなように、実施例においては、比較例(従来法)よりも低い温度で成膜したにもかかわらず、半値幅(FWHM)がより小さい、結晶性の良い膜を形成できた。さらに、実施例においては、700℃程度で成膜したにもかかわらず、1200℃以上で焼結したバルク焼結体並みの半値幅、即ち、高い結晶性を得ることができた。これより、結晶化過程の著しい低温化を図ることが可能となった。
【0039】
このように、本実施形態に係るセラミックス膜の製造方法によれば、高温プロセス(例えば、1000℃以上)を要することなく、結晶性の良い膜をAD法によって作製することができる。従って、AD法において用いられる基板材料の選択の幅を広げることが可能となる。例えば、成膜温度を600℃以下にすることにより、SUS等の金属基板やガラス基板等を使用することが可能となる。また、成膜温度を400℃以下とすることにより、樹脂基板を使用することが可能となる。反対に、従来と同程度の温度によって成膜する場合には、より結晶性の高いセラミックス膜を得ることが可能となる。
【0040】
本実施形態においては、結晶成分をほとんど含まないPZT前駆体の粉体を原料として用いたが、ある程度までは結晶成分を含んでいても、従来よりも結晶性の良い膜を得ることができる。即ち、PZT前駆体の粉体がアモルファス構造を有する成分を含んでおり、微粒子中のPZTの結晶化度が50%以下、望ましくは30%以下、さらに望ましくは10%以下であれば良い。ここで、PZT前駆体の粉体には、PZT以外の結晶、即ち、鉛(Pb)、ジルコン(Zr)、又は、チタン(Ti)と、炭素(C)とを含む高分子的な構造を有する成分が含まれている場合がある。そのような成分は、上記のPZTの結晶構造を有する成分には含まないものとする。
【0041】
ここで、AD法においては、原料粉を基板等の下層に衝突させて堆積させるため、原料粉が下層に食い込む現象が生じる場合がある。この現象はアンカーリングと呼ばれている。アンカーリングによって生じるアンカー層(粉体が食い込んだ層)の厚さは、基板の材質や粉体の速度等によって異なるが、通常10nm〜300nm程度となる。従って、基板と基板上に形成されたPZT膜との界面を観察することにより、そのPZT膜がAD法によって形成されたものであるか否かを判別できる場合がある。
【0042】
次に、本発明の第2の実施形態に係るセラミックス膜の製造方法について、図1及び図7を参照しながら説明する。
まず、原料粉として、先に説明した第1の実施形態におけるものと同様に、アモルファス構造を有するPZT前駆体の粉体を用意し、図1に示す成膜装置を用いて、基板上にAD膜を形成する。このとき、成膜温度は常温で構わない。
【0043】
次に、図7に示すように、そのようにして基板20上に形成されたAD膜21を成膜装置から取り出し、赤外線加熱炉22内のステージ23上に配置して、所定の温度(例えば、700℃)でアニールする。それにより、AD膜21中のアモルファス構造を有する成分が、活性化エネルギーを得て結晶化される。
【0044】
このように、本実施形態によれば、成膜後のポストアニールにおいて、アニール温度を低温化することができる。従って、基板材料の選択の幅を、従来耐熱性の観点から使用できなかったSUS等の金属基板や、ガラス基板や、樹脂基板等にまで広げることが可能となる。
【0045】
或いは、一般的なセラミックス形成におけるのと同程度の温度(例えば、1000℃程度)でアニールする場合には、従来よりも結晶粒成長を効率良く促進させることができるので、結晶性をさらに向上させることが可能となる。従って、性能の高いセラミックス膜を得ることが可能となる。
【0046】
次に、本発明の第3の実施形態に係るセラミックス膜の製造方法について説明する。
まず、第1の実施形態におけるものと同様に、アモルファス構造を有するPZT前駆体の粉体を用意し、図1に示す成膜装置を用いて、基板上にAD膜を形成する。このとき、成膜温度は常温で構わない。
【0047】
次に、図8に示すように、基板30上に形成されたAD膜31に電磁波を照射する。電磁波としては、マイクロ波を含む電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線等の内から、AD膜の厚さや基板材料等の種々の条件に応じて電磁波が選択される。ここで、マイクロ波とは、1m〜1mm程度の波長を有する電磁波のことであり、UHF波(デシメータ波)、SHF波(センチ波)、EHF波(ミリ波)、及び、サブミリ波を含んでいる。例えば、AD膜材料の吸収波長を含む赤外線(例えば、PZTに対して波長が10.6μmの赤外線)を照射する場合には、AD膜に含まれる分子が赤外線エネルギーを吸収して加熱される。また、AD膜材料の吸収波長を含む紫外線(例えば、PZTに対して波長が248nmの紫外線)を照射する場合には、AD膜に含まれる原子が紫外線エネルギーを吸収することにより外殻電子が遷移して活性化する。その結果、AD膜に含まれるアモルファス構造を有する成分が、活性化エネルギーを得て結晶化する。
【0048】
電磁波を照射する方向については、図8の(a)に示すように、AD膜の上方から電磁波を直接照射しても良いし、比較的波長の長い電磁波を用いる場合には、図8の(b)に示すように、AD膜の側方から照射しても良い。或いは、電磁波に対して透過性を有する基板を用いる場合(例えば、可視光線に対してガラス基板を用いる場合)には、図8の(c)に示すように、基板側からAD膜に向けて電磁波を照射しても良い。
【0049】
本実施形態においては、AD膜に電磁波を照射するのと同時に、AD膜に熱処理を施しても良い。それにより、電磁波を単独で照射する場合よりも電磁波を低エネルギー化することができる。或いは、加熱のみを行う場合よりも低温で熱処理することができる。
【0050】
次に、本発明の第4の実施形態に係るセラミックス膜の製造方法について、図1及び図9を参照しながら説明する。
まず、原料粉として、第1の実施形態におけるものと同様に、アモルファス構造を有するPZT前駆体の粉体を用意し、図1に示す成膜装置を用いて、基板上にAD膜を形成する。このとき、成膜温度は常温で構わない。
【0051】
次に、図9に示すように、そのようにして基板40上に形成されたAD膜41を成膜装置から取り出し、プラズマ発生チャンバ42に配置する。
プラズマ発生チャンバ42には、高周波電源(RF)44及びマッチングボックス(MB)45に接続された基板ホルダ43と、排気ポンプ46とが配置されている。基板ホルダ43は、基板40を保持すると共に、プラズマ発生チャンバ42内に高周波放電を発生させるための電極として用いられる。基板ホルダ43の面積は、基板40の周囲に形成される電場を均一にするために、基板40と同程度か、それより大きくすることが望ましい。
【0052】
高周波電源44は、例えば、周波数13.56MHzの交流電圧を発生するプラズマ発生用高周波電源装置である。また、マッチングボックス45は、負荷の持つリアクタンス成分をキャンセルすることにより、負荷と高周波電源44との間でインピーダンスを整合する。マッチングボックス45としては、例えば、ブロッキングコンデンサを用いたマッチングボックスを用いることができる。ブロッキングコンデンサは、直流成分をカットし、交流成分のみを通過させる。
【0053】
排気ポンプ46は、プラズマ発生用チャンバ42の内部を減圧させるために設けられている。大気圧付近において放電を行うと、局部的な放電やアーク放電が発生し易いからである。安定して放電を生じさせるためには、圧力を1×10−1Pa程度以上、1×10Pa程度以下とすることが好ましい。
【0054】
このようなプラズマ発生用チャンバ42を動作させることにより、基板40及びAD膜41の周囲にプラズマ47が発生する。その結果、AD膜41中のアモルファス構造を有する成分が、活性化エネルギーを得て結晶化される。
なお、プラズマを発生させるためには、図9に示すもの以外にも様々な公知の方法及び装置を用いることができる。例えば、本実施形態においては、高周波電源を用いることによりグロー放電を生じさせているが、コロナ放電を生じさせても良い。
【0055】
また、本実施形態においても、プラズマ発生チャンバ内に加熱源を配置することにより、AD膜へのプラズマ照射及び加熱を同時に行っても良い。それにより、プラズマを単独で照射する場合よりもプラズマを低エネルギー化することができる。或いは、加熱のみを行う場合よりも低温で熱処理することができる。
【0056】
次に、本発明の第5の実施形態に係るセラミックス膜の製造方法について、図1及び図10を参照しながら説明する。
まず、原料粉として、先に説明した第1の実施形態におけるものと同様に、アモルファス構造を有するPZT前駆体の粉体を用意する。また、図10に示すように、PZT膜が形成される基板として、酸化マグネシウム(MgO)等の単結晶基板50を用意し、その主面上に、所定の方向(例えば、(100)面)に配向した白金膜51を形成する。白金の配向膜は、スパッタ法等の公知の成膜技術を用いて形成することができる。この白金膜51は、PZTの結晶を所望の方向に配向させるための下地として機能する。
【0057】
次に、白金膜51が形成された基板50を図1に示す基板ホルダ7にセットすると共に、PZT前駆体の粉体をエアロゾル生成室3に配置して成膜装置を駆動する。それにより、原料粉がノズル6から噴射されて白金膜51上に堆積し、その結果、膜52が形成される。さらに、所定の厚さになるまで膜52を形成した後で、成膜装置から基板50を取り出し、赤外線加熱炉等において所定の温度でアニールする。それにより、基板上に形成された膜52に含まれる非結晶性の成分(アモルファス構造を有する成分)が、下地である白金電極の結晶方位に従って配向しながら結晶化する。その結果、PZTの多結晶配向膜が得られる。
【0058】
本実施形態に係るセラミックス膜の製造方法を用いることにより、厚さが約10μmのPZT膜を作製した。原料であるPZT前駆体の粉体としては、アルコキシドゾルゲル法によって作製され、平均粒子径が約0.3μm、粒子径の範囲が0.1μm〜1μm程度であるものを用いた。このPZT前駆体の粉体の構造をX線回折法により測定したところ、PZTの結晶成分は全く観察されなかった。なお、基板上に形成された白金電極の配向を(100)方向とした。また、アニール温度を約800℃とした。
【0059】
作製されたPZT膜の特性を測定した。まず、X線回折法により測定を行ったところ、PZTからの回折ピークのみが観察された。従って、PZT前駆体の粉体のアモルファス構造が結晶化されていることが確認できた。また、作製されたPZT膜について、次式を用いて(100)方向の配向度を算出したところ、60%以上であった。即ち、PZT膜に含まれる結晶粒が(100)方向に強く配向していることが確認できた。
配向度F(%)=(P−P)/(1−P)×100
上式において、Pは、完全にランダムに配向している多結晶体のc軸におけるX線回折強度であり、Pは、試料のc軸におけるX線回折強度である。
【0060】
このように、本実施形態に係るセラミックス膜の製造方法によれば、ポテンシャルエネルギーが高い材料を出発原料として用いるので、基板又は下地層とのエピタキシャル性により、高温プロセスを経ることなく、配向性が制御された多結晶膜を作製することができる。従って、セラミックス膜の性能を向上させることが可能となる。なお、本実施形態においては、成膜後に膜をアニールしたが、第1の実施形態におけるのと同様に、所定の成膜温度の下で成膜を行っても良いし、第3及び第4の実施形態におけるのと同様に、膜に電磁波やプラズマを照射しても良い。それらの場合においても、比較的小さいエネルギーを与えるだけで、配向性を制御しながら結晶性を向上させることが可能となる。
【0061】
以上説明したように、本発明の第1〜第5の実施形態によれば、高温プロセスを要することなく、結晶性の良い膜や配向度の高い膜を作製することができる。従って、従来、高い耐熱性を要するために限られた基板材料(例えば、高価なジルコニア)しか用いることができなかった箇所について、金属や、シリコンや、ガラスや、樹脂等の基板材料を使用できるようになる。それにより、セラミックス膜を適用できる機器の幅を広げることが可能となる。また、本発明の第1〜第5の実施形態によれば、密着性や緻密度の高いセラミックス厚膜を乾式で作製できるというAD膜の特徴に、結晶性の良い膜や配向度の高い膜を形成できるという利点を付加することができる。
【0062】
本発明の第1〜第5の実施形態においては、例えば、約10μmのPZT膜を作製する場合について説明したが、図1に示す成膜装置において成膜速度や成膜時間を制御することにより、それよりも薄い膜又は厚い膜を作製することも可能である。
本発明の第1〜第5の実施形態に係るセラミックス膜の製造方法を用いて作製されたPZT膜は、結晶の配向度が高く、比較的厚い膜(例えば、1μm〜100μm程度)を必要とするデバイスにおいて利用することができる。そのようなデバイスとしては、例えば、インクジェットプリンタにおいて用いられるプリンタヘッド用デバイスや、超音波用探触子において超音波を送受信するための超音波トランスデューサ等が挙げられる。
【0063】
また、本発明の第1〜第5の実施形態においては、PZT膜を作製する場合について説明したが、本発明は、それ以外のセラミックス膜を作製する場合にも適用することが可能である。その場合にも、AD法における原料粉としては、非結晶成分を含有するセラミックス前駆体物質を用いれば良い。具体的には、PZT以外の圧電材料として、Pb(Mg1/3Nb2/3)O、Pb(Zn1/3Nb2/3)O、Pb(Ni1/3Nb2/3)Oや、それらの複合化合物や、それらとPZTとの複合化合物が挙げられる。また、耐熱材料として用いられるMgO、SiC、Si等のセラミックスや、高強度材料として用いられるAl、TiC、BC、BN等のセラミックスや、磁性材料として用いられるFe、(Mn,Zn)Fe等のセラミックスや、誘電材料として用いられるTa、Nb、PbTiO、(Ca,Ba,Sr)TiO、(Li,K)(Nb,Ta)O、SrBi(Ta,Nb)、BiTi12等のセラミックスや、半導性材料として用いられるZrO、SnO、ZnO、La(Cr,Mn)O、TiO等のセラミックスや、導電性材料として用いられるIrO、LaNiO、(Ca,Sr,Ba)RuO、In-SnO等のセラミックスや、光学材料として用いられるSiO、YAl12、YFe12、(Pb,La)(Zr,Ti)O等のセラミックスや、超伝導材料として用いられるYBaCu、BiSrCaCu10、LaSrCuO等のセラミックスや、熱電変換材料として用いられるNa(Co,Cu)、(Bi,Pb)SrCo等のセラミックスが挙げられる。
【0064】
また、本発明の第1〜第5の実施形態においては、原料粉として非結晶性の成分を含有する粉体を用いたが、その替わりに、パイロクロア型構造を有するセラミックス前駆体物質を用いても良い。なお、PZTの場合には、パイロクロア型構造の一般組成式Aにおいて、Aサイトは鉛(Pb)を含み、Bサイトはジルコン(Zr)及びチタン(Ti)を含む。パイロクロア型構造は、PZTの通常の結晶構造であるペロブスカイト型構造(一般組成式はABO)と比較して不安定であり、ポテンシャルエネルギーが高いものと考えられる。従って、パイロクロア型構造を含む前駆体物質を原料粉として用いた場合においても、第1〜第5の実施形態におけるものと同様に、比較的高い温度による熱処理を要することなく、結晶性の良いPZT膜を作製することができる。或いは、原料粉として、成膜時又は熱処理時に、外部からエネルギーを与えることにより発熱反応を生じる成分を含有しているセラミックス粉を用いても良い。
【0065】
以上の説明においては、AD法を用いて成膜しているが、本発明は、その他のエアロゾルを利用した様々な成膜技術に適用することができる。例えば、原料粉を分散させたエアロゾルを基板が配置されたチャンバ内に供給することにより、基板に直接的に吹き付けることなく、基板上に堆積させる方法や、高圧力の下でサブミクロン以下の超微粒子を生成し、これを基板に超音速で吹き付けることによりナノクリスタル膜を作製するHPPD(Hypersonic plasma particle deposition)法が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、圧電アクチュエータや超音波トランスデューサ等において用いられるセラミックス膜の製造方法及びセラミックス膜を含む構造物において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】エアロゾルデポジション(AD)法を用いた成膜装置の構成を示す模式図である。
【図2】結晶粒成長のメカニズムを説明するための図である。
【図3】結晶粒成長のメカニズムを説明するための図である。
【図4】エネルギー状態が高い場合における原子の位置に応じた自由エネルギーの変化を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るセラミックス膜の製造方法を説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係るセラミックス膜の製造方法及び従来法を用いてそれぞれ作製されたPZT膜の(110)面を表す回折ピークの半値幅を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るセラミックス膜の製造方法を説明するための図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るセラミックス膜の製造方法を説明するための図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るセラミックス膜の製造方法を説明するための図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係るセラミックス膜の製造方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0068】
1 ガスボンベ
1a 圧力調整部
2a、2b 搬送管
3 エアロゾル生成室
3a 容器駆動部
4 成膜室
5 排気ポンプ
6 ノズル
7 基板ホルダ
7a 基板ホルダ駆動部
10、20、30、40、50 基板
11 粉体
12 PZT膜
21、31、41、52 AD膜
22 赤外線加熱炉
23 ステージ
42 プラズマ発生チャンバ
43 基板ホルダ
44 高周波電源(RF)
45 マッチングボックス(MB)
46 排気ポンプ
47 プラズマ
51 白金膜
100 原子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾルを利用したセラミックス膜の製造方法であって、
非結晶性の成分を含有するセラミックス原料粉をガスに分散させることによってエアロゾルを生成する工程(a)と、
工程(a)において生成されたエアロゾルを基板が配置されたチャンバ内に供給して、前記セラミックス原料粉を前記基板に堆積させることにより、膜を形成する工程(b)と、
を具備するセラミックス膜の製造方法。
【請求項2】
工程(b)が、工程(a)において生成されたエアロゾルをノズルから前記基板に向けて噴射することにより、前記原料粉を前記基板上に堆積させることを含む、請求項1記載のセラミックス膜の製造方法。
【請求項3】
エアロゾルを利用したセラミックス膜の製造方法であって、
外部からエネルギーを与えることにより発熱反応を生じる成分を含有するセラミックス原料粉をガスに分散させることによってエアロゾルを生成する工程(a)と、
工程(a)において生成されたエアロゾルを基板が配置されたチャンバ内に供給して、前記セラミックス原料粉を前記基板に堆積させることにより、膜を形成する工程(b)と、
を具備するセラミックス膜の製造方法。
【請求項4】
前記原料粉がゲル粉を含む、請求項3記載のセラミックス膜の製造方法。
【請求項5】
工程(b)が、工程(a)において生成されたエアロゾルをノズルから前記基板に向けて噴射することにより、前記原料粉を前記基板上に堆積させることを含む、請求項3又は4記載のセラミックス膜の製造方法。
【請求項6】
工程(b)が、前記基板を所定の温度に保ち、前記基板上において前記セラミックス原料粉に含まれる非結晶性の成分を結晶化させながら膜を形成することを含む、
請求項1又は2記載のセラミックス膜の製造方法。
【請求項7】
工程(b)が、前記基板を所定の温度に保ち、前記基板上においてセラミックス原料粉を結晶化させながら膜を形成することを含む、
請求項3〜5のいずれか1項記載のセラミックス膜の製造方法。
【請求項8】
工程(b)において前記基板上に形成された膜を加熱することにより、該膜に含まれる非結晶性の成分を結晶化させる工程(c)をさらに具備する請求項1又は2記載のセラミックス膜の製造方法。
【請求項9】
工程(b)において形成された膜を加熱することにより、該膜において結晶粒を成長させる工程(c)をさらに具備する請求項3〜5のいずれか1項記載のセラミックス膜の製造方法。
【請求項10】
工程(b)において前記基板上に形成された膜に電磁波を照射することにより、該膜に含まれる非結晶性の成分を結晶化させる工程(c)をさらに具備する請求項1又は2記載のセラミックス膜の製造方法。
【請求項11】
工程(b)において前記基板上に形成された膜に電磁波を照射することにより、該膜において結晶粒を成長させる工程(c)をさらに具備する請求項3〜5のいずれか1項記載のセラミックス膜の製造方法。
【請求項12】
工程(b)において前記基板上に形成された膜にプラズマを照射することにより、該膜に含まれる非結晶性の成分を結晶化させる工程(c)をさらに具備する請求項1又は2記載のセラミックス膜の製造方法。
【請求項13】
工程(b)において前記基板上に形成された膜にプラズマを照射することにより、該膜において結晶粒を成長させる工程(c)をさらに具備する請求項3〜5のいずれか1項記載のセラミックス膜の製造方法。
【請求項14】
前記原料粉が圧電材料を含む、請求項1〜13のいずれか1項記載のセラミックス膜の製造方法。
【請求項15】
前記原料粉が、Pb(Zr,Ti)O、Pb(Mg1/3Nb2/3)O、Pb(Zn1/3Nb2/3)O、Pb(Ni1/3Nb2/3)O、(Pb,La)(Zr,Ti)O、MgO、SiC、Si、Al、TiC、BC、BN、Fe、(Mn,Zn)Fe、Ta、Nb、PbTiO、(Ca,Ba,Sr)TiO、(Li,K)(Nb,Ta)O、SrBi(Ta,Nb)、BiTi12、ZrO、SnO、ZnO、La(Cr,Mn)O、TiO、IrO、LaNiO、(Ca,Sr,Ba)RuO、In-SnO、SiO、YAl12、YFe12、YBaCu、BiSrCaCu10、LaSrCuO、Na(Co,Cu)、及び、(Bi,Pb)SrCoの内の少なくとも1つを含む、請求項1〜13のいずれか1項記載のセラミックス膜の製造方法。
【請求項16】
前記原料粉の結晶化度が50%以下である、請求項1、2、6、8、10、12、14、15のいずれか1項記載のセラミックス膜の製造方法。
【請求項17】
工程(b)が、単結晶基板上に前記セラミックス原料粉を堆積させることにより、前記単結晶基板の配向に応じた膜を形成することを含む、請求項1〜16のいずれか1項記載のセラミックス膜の製造方法。
【請求項18】
基板と、
非結晶性の成分を含有する原料粉をエアロゾル化させて前記基板上に堆積させることにより形成された膜と、
を具備する構造物。
【請求項19】
基板と、
外部からエネルギーを与えることにより発熱反応を生じさせる成分を含有する原料粉をエアロゾル化させて前記基板上に堆積させることにより形成された膜と、
を具備する構造物。
【請求項20】
前記基板が、単結晶基板であり、
前記膜が、前記単結晶基板の配向に応じた配向を有する、
請求項18又は19記載の構造物。
【請求項21】
前記膜において、多結晶体に含まれる結晶面の内で特定の方向を向いた結晶面の割合を表す配向度が60%以上である、請求項20記載の構造物。
【請求項22】
前記基板が単結晶基板であり、
前記膜が非結晶性の成分を含有する、
請求項18記載の構造物。
【請求項23】
前記基板が単結晶基板であり、
前記膜が、外部からエネルギーを与えることにより発熱反応を生じさせる成分を含有する、
請求項19記載の構造物。
【請求項24】
加熱することにより、前記膜に含有されている非結晶性の成分が、前記単結晶基板の配向に応じて配向しながら結晶化する、請求項22記載の構造物。
【請求項25】
外部からエネルギーを与えることにより、前記膜に含有されている成分が、前記単結晶基板の配向に応じて配向しながら結晶化する、請求項23記載の構造物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−188046(P2006−188046A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331784(P2005−331784)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】