説明

センサ装置

【課題】加速度を検出する検出部としての変位可能な可動電極を有する加速度センサ装置において、検出部の機械的な破損に対して冗長性を持たせることで信頼性の向上が図れるようにする。
【解決手段】検出部1〜4は、検出対象として加速度を検出するものであって、可動部としての可動電極20とこの可動電極20に対向して配置された固定電極30、40とを有するとともに、加速度の印加時には、可動電極20と固定電極30、40との間の容量が変化し、この容量変化が検出部1〜4の信号として出力されるものである。このような検出部1〜4を、1つの半導体チップ10に複数個設けることで、1個の検出部が機械的に破損したとしても、他の検出部からの出力信号により検出を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象を検出する検出部として変位可能な可動部を有するセンサ装置に関し、たとえば、加速度や角速度などの検出対象を検出する加速度センサや角速度センサなどに用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のセンサ装置としては、たとえば、櫛歯構造を有する可動電極とこれに対向して配置された固定電極とを有する加速度センサが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このものは、検出対象として加速度を検出するものであり、上記した可動電極と固定電極とにより検出部が構成されているものである。そして、可動電極は加速度の印加によって変位する可動部として構成されており、この可動電極の変位に伴う可動および固定の両電極間の容量変化を出力信号として検出することにより、印加された加速度を検出するようにしている。
【特許文献1】特開平11−295336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のこの種のセンサ装置においては、検出部を構成する可動部が機械的に破損した場合には、可動部が正常に変位しなくなり、検出対象の検出が行われなくなってしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、検出対象を検出する検出部としての変位可能な可動部を有するセンサ装置において、検出部の機械的な破損に対して冗長性を持たせることで信頼性の向上が図れるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、検出部(1〜4)を、互いに同一の検出対象を検出する複数個のものより構成し、これら複数個の検出部(1〜4)のそれぞれを、互いに独立した信号を出力するようなものとしたことを特徴とする。
【0007】
それによれば、複数個の検出部(1〜4)のうちある1個の検出部が機械的に破損したとしても、他の正常な検出部からの出力信号により検出を行うことができるため、検出部の機械的な破損に対して冗長性を持たせることができ信頼性の向上が図れる。
【0008】
この場合、検出部(1〜4)としては、検出対象として力学量を検出するものであって、可動部としての可動電極(20)とこの可動電極(20)に対向して配置された固定電極(30、40)とを有するとともに、力学量の印加時には、可動電極(20)と固定電極(30、40)との間の容量が変化し、この容量変化が検出部(1〜4)の信号として出力されるものとすることができる。
【0009】
このような可動および固定の両電極(20〜40)間の容量変化を出力する検出部(1〜4)を持つものは、容量式の力学量センサであり、具体的には、加速度センサや角速度センサなどが挙げられる。
【0010】
そして、このような容量式の力学量センサにおいて、複数個の検出部(1〜4)のうち1つの検出部における固定電極(30、40)と他の検出部における固定電極(30、40)とで、それぞれの取り出し用の配線を、1つの配線(31、41)に共通化するようにしてもよい。それによれば、それぞれの検出部(1〜4)における固定電極(30、40)の取り出し用の配線(31、41)の構造の簡素化を図ることができる。
【0011】
また、上記した容量式の力学量センサにおいては、複数個の検出部(1〜4)の個々における固定電極(30、40)の取り出し用の配線を、互いに別々の配線(31、41)にて構成してもよい。
【0012】
それによれば、複数個の検出部(1〜4)の個々における固定電極(30、40)の取り出し用の配線(31、41)のうち、ある1つの配線が破損しても他の配線が正常であれば、その正常な配線につながる検出部によって検出が可能となるため、当該配線において冗長性を持たせることができる。
【0013】
また、複数個の検出部(1〜4)のすべてを、1つの半導体チップ(10)に形成し、これら複数個の検出部(1〜4)を、半導体チップ(10)の幾何学的な中心(L)に対して点対称の形状となるように配置すれば、半導体チップ(10)内の熱応力などのひずみによる特性変化を、各検出部(1〜4)間において均一化することができるため、好ましい。
【0014】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るセンサ装置としての加速度センサ装置S1の概略平面構成を示す図である。また、図2は図1に示されるセンサ装置S1における1つの検出部1の概略平面図であり、図3は図2のA−A一点鎖線に沿った概略断面図であり、図4は図2のB−B一点鎖線に沿った概略断面図である。なお、図1では、主として、検出部1を構成する可動部としての可動電極20および固定電極30、40の平面形状について、便宜上、斜線ハッチングを施したり、太線としたりすることで表すようにしており、当該形状の細部は一部省略してある。
【0017】
本実施形態の加速度センサ装置S1は、差動容量式の半導体加速度センサであり、このような半導体加速度センサは、たとえば、エアバッグ、ABS、VSC等の作動制御を行うための自動車用加速度センサやジャイロセンサ等に適用できる。
【0018】
図1に示されるように、本実施形態の加速度センサ装置S1では、1つの半導体チップ10に複数個の検出部1、2、3、4が設けられている。図1に示される例では、4個の検出部1〜4が半導体チップ10に平面的に配置されている。このような加速度センサ装置S1は、半導体チップ10に対して、半導体プロセス技術を用いた周知のマイクロマシン加工を施すことにより形成される。
【0019】
これら4個の検出部1〜4はそれぞれ、可動部としての可動電極20とこれに対向する固定電極30、40とにより構成されている。ここでは、4個の検出部1〜4は、それぞれ実質的に同じ構成を有するものであり、櫛歯構造を有する両電極20、30、40を備えた梁構造体として構成されている。まず、個々の検出部1〜4の構成等について、図2〜図4に示される代表的な1個の検出部1を参照して述べることとする。
【0020】
本例では、半導体チップ10は、図3および図4に示されるように、第1の半導体層としての第1シリコン基板11と第2の半導体層としての第2シリコン基板12との間に、絶縁層としての酸化膜13を有する矩形状のSOI(シリコン−オン−インシュレータ)基板10である。
【0021】
第2シリコン基板12には、その厚さ方向に貫通する溝部14を形成することにより、可動電極20および固定電極30、40よりなる櫛歯形状を有する梁構造体が形成されている。また、酸化膜13のうち上記梁構造体20〜40が形成されている領域に対応した部位は、図1中の破線四角形に示されるように矩形状に除去されており、開口部15として形成されている。
【0022】
このような検出部1〜4の製造方法について、その一例を概略的に述べておく。まず、SOI基板10の第2シリコン基板12にフォトリソグラフ技術を用いて上記梁構造体20〜40に対応した形状のマスクを形成する。
【0023】
その後、CF4やSF6等のガスを用いてドライエッチング等にてトレンチエッチングを行い、溝14を形成することによって、梁構造体20〜40を一括して形成する。続いて、フッ酸等を用いた犠牲層エッチング等により酸化膜13の除去を行い、開口部15を形成する。このようにして、各検出部1〜4が半導体チップ10に形成され、図1に示される本加速度センサ装置S1ができあがる。
【0024】
ここで、図2〜図4に示されるように、各検出部1〜4においては、可動電極20は、細長四角形状の錘部21と、その両端に連結されたバネ部22とを備えたものであり、この可動電極20は、バネ部22にてアンカー部23aおよび23bに一体に連結され、支持されている。
【0025】
アンカー部23aおよび23bは、図4に示されるように、酸化膜13における開口部15の開口縁部に固定されており、第1シリコン基板11上に支持されている。これによって、錘部21およびバネ部22は、開口部15に臨んだ状態となっている。
【0026】
ここでは、バネ部22は、図2に示されるように、平行な2本の梁がその両端で連結された矩形枠状をなしており、2本の梁の長手方向と直交する方向に変位するバネ機能を有するものである。このようなバネ部22を介して可動電極20は、第1シリコン基板11上において、加速度の印加に応じて、図2中のX軸方向へ変位可能となっている。つまり、可動電極20は、半導体チップ10における第1シリコン基板11に対して変位可能な状態で支持されたものである。
【0027】
また、図2に示されるように、可動電極20は櫛歯状の櫛歯電極部24を備えている。この櫛歯電極部24は、錘部21の左側および右側にそれぞれ4個ずつ突出して形成された断面矩形の角柱であり、開口部15に臨んだ状態となっている。この櫛歯電極部24は、可動電極20の一部として、バネ部22および錘部21と一体的に形成されており、上記X軸方向へ変位可能となっている。
【0028】
また、図2において、錘部21の左側に位置する固定電極30は、第1の固定電極30であり、錘部21の右側に位置する固定電極40は、第2の固定電極40である。本例では、図2に示されるように、各固定電極30、40は、可動電極20における櫛歯電極部24の隙間にかみ合うように櫛歯状に複数本配列された断面矩形の梁である。
【0029】
そして、個々の櫛歯電極部24に対して、それぞれ固定電極30、40が対向して配置されており、各対向間隔において、櫛歯電極部24の側面と固定電極30、40の側面との間に容量を検出するための検出間隔Rが形成されている。
【0030】
これら各固定電極30、40は、それぞれ固定電極用配線31、41に一体に連結されている。各固定電極用配線31、41は、各固定電極30、40を取り出すための取り出し用の配線である。
【0031】
図2〜図4に示されるように、各固定電極用配線31、41は、矩形状の開口部15の開口縁部における対向辺部のうち、アンカー部23a、23bが支持されていないもう1組の対向辺部にて、酸化膜13に固定され、この酸化膜13を介して第1シリコン基板11上に支持されている。
【0032】
また、第1の固定電極30の固定電極用配線31と第2の固定電極40の固定電極用配線41上の所定位置には、それぞれ、第1の固定電極用パッド30aおよび第2の固定電極用パッド40aが形成されている。
【0033】
また、一方のアンカー部23bと一体に連結された状態で、可動電極用配線25が形成されている。この可動電極用配線25は、可動電極20を取り出すための取り出し用の配線である。そして、この可動電極用配線25上の所定位置には、可動電極用パッド25aが形成されている。また、図1に示されるように、半導体チップ10のうち検出部1の外側には、GNDを採るためのGNDパッド50が設けられている。
【0034】
上記した各パッド25a、30a、40a、50は、たとえばアルミニウムをスパッタや蒸着する等により形成されている。そして、これら各パッド25a、30a、40a、50には、図示しないボンディングワイヤが接続され、このワイヤを介して図示しない回路チップに電気的に接続されている。この回路チップは、本加速度センサ装置S1からの出力信号を処理するための検出回路(後述の図5参照)を備えたものである。
【0035】
また、本実施形態では、図1および図2に示されるように、各検出部1〜4における各電極20〜40の配線25、31、41は、個々の検出部1〜4で独立しており、互いの検出部1〜4の間では、溝14で区画され分離されたものとなっている。
【0036】
次に、本加速度センサ装置S1の検出動作について説明する。本実施形態では、加速度の印加に伴う可動電極20と固定電極30、40との間の容量変化に基づいて加速度を検出するようになっている。
【0037】
上述したように、本加速度センサ装置S1においては、個々の検出部1〜4において、可動電極20の櫛歯電極部24と固定電極30、40とが対向して設けられており、これら両電極20、30、40の各対向間隔において、容量を検出するための検出間隔Rが形成されている。
【0038】
ここで、各検出部1〜4において、第1の固定電極30と可動電極20との検出間隔Rに第1の容量CS1が形成されており、一方、第2の固定電極40と可動電極20との検出間隔Rに第2の容量CS2が形成されているとする。
【0039】
そして、上記図2中のX軸方向(図中の上下方向)へ加速度が印加されると、各検出部1〜4において、バネ部22のバネ機能により、可動電極20全体が一体的にX軸方向へ変位する。この可動電極20の変位は、各検出部1〜4の間で同期して起こる。つまり、上記図1において、4個の検出部1〜4における可動電極20が、加速度の印加により、図中のX軸方向(図中の上下方向)に同じタイミングで変位する。そして、各検出部1〜4において、上記各容量CS1、CS2が変化する。
【0040】
たとえば、上記図2において、可動電極20が、X軸方向に沿って下方へ変位したときを考える。このとき、第1の固定電極30と可動電極20の櫛歯電極部24との検出間隔Rは、当該変位前よりも広がって上記第1の容量CS1は小さくなり、一方、第2の固定電極40と可動電極20の櫛歯電極部24との検出間隔Rは、当該変位前よりも狭まって上記第2の容量CS2は大きくなる。
【0041】
このように、本実施形態では、各検出部1〜4において、第1の容量CS1が減る方向に変化すると、第2の容量CS2はこれとは逆に増える方向に変化するように構成されるとともに、第1の容量CS1が増える方向に変化すると、第2の容量CS2はこれとは逆に経る方向に変化するように構成されている。
【0042】
よって、各検出部1〜4においては、可動電極24と固定電極30、40による差動容量(CS1−CS2)をとることで、検出感度を高めている。この差動容量(CS1−CS2)は、個々の検出部1〜4から出力される信号であり、この信号は、上記作動メカニズムに述べたとおり、各検出部1〜4にて独立に出力できる。
【0043】
本実施形態では、4個の検出部1〜4を有しているが、本加速度センサ装置S1の検出動作に関する等価回路は図5に示される。図5は、本加速度センサ装置S1における加速度を検出するための検出回路100の一例を示す回路図である。
【0044】
この検出回路100において、スイッチドキャパシタ回路(SC回路)110は、容量がCfであるコンデンサ111、スイッチ112および差動増幅回路113を備え、それぞれの検出部1〜4から入力される上記信号(CS1−CS2)を電圧に変換するものとなっている。
【0045】
そして、本加速度センサ装置S1においては、たとえば、第1の固定電極用パッド30aから振幅Vccの搬送波1を入力し、第2の固定電極用パッド40aから搬送波1と位相が180°ずれた搬送波2を入力し、SC回路110のスイッチ112を所定のタイミングで開閉する。
【0046】
そして、上記したように、X軸方向へ加速度が印加されると、各検出部1〜4において可動電極20は同期して変位し、それによって、各検出部1〜4における上記差動容量(CS1−CS2)が変化するため、X軸方向に印加された加速度は、下記の数式1に示されるように、検出回路100から電圧値V0として出力される。
【0047】
(数1)
V0=4×(CS1−CS2)・Vcc/Cf
なお、検出部がn個の場合には、上記数式1中の左辺は、n×(CS1−CS2)・Vcc/Cfとなる。本例では、上述したようにn=4である。
【0048】
このように、本実施形態では、検出部1〜4を、可動部としての可動電極20と固定電極30、40とを有し、検出対象として力学量である加速度を検出するものとし、加速度の印加時には、両電極20、30、40間の容量変化を検出部1〜4の信号として出力する容量式加速度センサを実現している。
【0049】
そして、本実施形態では、上述したように、検出部1〜4を、互いに同一の加速度を検出する複数個のものよりなるものとし、これら複数個の検出部1〜4のそれぞれが互いに独立した信号(CS1−CS2)を出力するようになっている。
【0050】
それによれば、複数個の検出部1〜4のうちある1個の検出部が機械的に破損したとしても、他の検出部からの出力信号により検出を行うことができる。ちなみに、従来の加速度センサ装置では、検出部は1個であったため、可動部の破壊やスティッキングなど、検出部の破損が発生した場合には、検出が不可能となる。しかし、本実施形態では、このような問題は回避される。
【0051】
また、本実施形態では、1つの半導体チップ10に複数個の検出部1〜4を形成することにより、検出容量の細分化がなされるため、1つの検出部が破損したとしても、それによる影響を、従来よりも小さくすることが可能となる。こうして、本実施形態によれば、検出部の機械的な破損に対して冗長性を持たせることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0052】
なお、複数個の検出部1〜4は、互いに同一の検出対象として加速度を検出するものであるが、上記図1に示される例では、互いの検出部1〜4において検出される加速度の方向は同一のX軸方向である。
【0053】
ここで、複数個の検出部1〜4が互いに同一の検出対象(加速度)を検出することとは、すべての検出部1〜4の検出加速度の方向が同一である場合に限定されるものではなく、検出される加速度の方向は各検出部1〜4の間で異なってもよい。具体的には、1つの検出部1における可動電極20の変位方向を、上記X軸方向とし、その他の検出部2〜4における可動電極20の変位方向を、当該X軸とは交差する方向となるように、検出部を傾けて配置してやればよい。
【0054】
また、上記図1に示される例では、各検出部1〜4を実質的に同一の形状とすることで、各検出部1〜4の検出容量を実質的に同一のものとしているが、各検出部1〜4は互いに検出容量の異なるものであってもよい。たとえば、各検出部1〜4の間で、可動電極20を構成する櫛歯電極部24の長さを変えたり、櫛歯電極部24の数を変えたりすることなどにより、検出容量を変えてもよい。複数個の検出部1〜4が互いに同一の検出対象を検出することとは、このような場合も含むものである。
【0055】
ただし、複数個の検出部1〜4を1つの半導体チップ10に設ける場合、必要最低限の感度としては、検出部1個あたり1mV/G程度以上の感度が必要である。また、本実施形態では、検出部1〜4が4個設けられた例を示しているが、検出部は最低2個以上であれば、1個が故障しても残りのものが動作することにより上記した本実施形態の効果を奏する。
【0056】
また、本実施形態では、上記図1および図2に示したように、複数個の検出部1〜4の個々における固定電極取り出し用の配線すなわち固定電極用配線31、41を、各検出部1〜4毎に、別体の配線31、41として構成している。
【0057】
そのため、各検出部1〜4における固定電極用配線31、41のうち、ある1つの検出部の配線31、41が破損しても他の検出部の配線31、41が正常であれば、その正常な配線につながる検出部によって検出が可能となるため、当該配線において冗長性を持たせることができる。
【0058】
また、本第1実施形態においては、検出部1〜4の1個ずつについて、その出力(CS1−CS2)をモニタしながら、ある1つの検出部が故障したときに、この故障した検出部への電源供給をカットするように上記回路チップ側で調整するようにしてもよい。
【0059】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係るセンサ装置としての加速度センサ装置S2の概略平面構成を示す図である。この図6においても、上記図1と同様の表し方を用いて、検出部1を構成する可動部としての可動電極20および固定電極30、40の概略形状について表し、細部は一部省略してある。ここでは、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0060】
本実施形態も、上記第1実施形態と同様に、検出部1〜4を、可動部としての可動電極20と固定電極30、40とを有し、検出対象として力学量である加速度を検出するものとし加速度印加時には、両電極20、30、40間の容量変化を検出部1〜4の信号として出力するものとしている。
【0061】
そして、このような検出部1〜4を複数個形成することにより、上記第1実施形態と同様に、検出部の機械的な破損に対して冗長性を持たせることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0062】
ここで、本実施形態では、図6に示されるように、4個の検出部1〜4を、図6中の一点鎖線Kに対して線対称の形状となるように半導体チップ10に配置している。つまり、この一点鎖線Kを境界として左側の2個の検出部1、2が右側の2個の検出部3、4に重なるように、半導体チップ10を折り返したとき、当該左側の2個と当該右側の2個とが一致した形となるものである。
【0063】
具体的には、図6において、一点鎖線Kの左側に位置する2個の検出部1、2のそれぞれについては、可動電極20を中心に図中の左側に第1の固定電極30が位置して上記第1の容量CS1を形成し、右側に第2の固定電極40が位置して上記第2の容量CS2を形成している。
【0064】
それに対して、図6において、一点鎖線の右側に位置する2個の検出部3、4のそれぞれについては、可動電極20を中心に図中の右側に第1の固定電極30が位置して上記第1の容量CS1を形成し、左側に第2の固定電極40が位置して上記第2の容量CS2を形成している。
【0065】
この場合も、上記実施形態と同様に、各検出部1〜4は、加速度の印加時にX軸方向(図6中の上下方向)に同期して変位するとともに、各検出部1〜4において、第1の容量CS1が減る(増える)方向に変化すると、第2の容量CS2はこれとは逆に増える(減る)方向に変化するように構成されている。
【0066】
また、上記実施形態では、固定電極用配線31、41を、各検出部1〜4毎に、別体の配線31、41として構成していたが、本実施形態では、複数個の検出部1〜4のうち1つの検出部における固定電極30、40と他の検出部における固定電極30、40とで、それぞれの取り出し用の配線である固定電極用配線31、41を、1つの配線31、41に共通化している。
【0067】
具体的には、第2の固定電極40の固定電極用配線41については、4個の検出部1〜4において共通の配線41を使用しており、第1の固定電極30の固定電極用配線31については、検出部1と検出部2との間で共通の配線31を使用するとともに、検出部3と検出部4との間で共通の配線31を使用している。
【0068】
それによって、本実施形態では、固定電極用パッド30a、40aの数を、上記第1実施形態に比べて減らすことができるなどのメリットを有し、検出部1〜4における固定電極用配線31、41の構造の簡素化を図ることが可能となる。
【0069】
なお、本実施形態においては、複数個の検出部1〜4のうち少なくとも2つの検出部における固定電極用配線31、41同士が、1つの配線に共通化されていればよく、その配線の引き回し構成については、上記図6に示される例に限定されるものではない。
【0070】
また、図示しないが、すべての検出部1〜4における固定電極用配線31、41同士が、1つの配線に共通化されていてもよいことはもちろんである。また、検出部の数も、図6に示されるような4個に限定するものではなく、最低2個以上であればよい。
【0071】
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態に係るセンサ装置としての加速度センサ装置S3の概略平面構成を示す図である。この図7においても、上記図1と同様の表し方を用いて、検出部1を構成する可動部としての可動電極20および固定電極30、40の概略形状について表し、細部は一部省略してある。ここでも、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0072】
本実施形態も、上記各実施形態と同様に、差動容量式の検出部1〜4を複数個形成することにより、上記第1実施形態と同様に、検出部の機械的な破損に対して冗長性を持たせることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0073】
そして、本実施形態では、図7に示されるように、1つの半導体チップ10に形成されている4個の検出部1〜4を、半導体チップ10の幾何学的な中心Lに対して点対称の形状となるように配置している。
【0074】
シリコン半導体などよりなる半導体チップ10においては、温度サイクルなどによって熱応力が加わり、反りなどの歪みを生じることがある。このような歪みは、可動電極20を有する検出部1〜4において可動電極20の変位度合に誤差をもたらすなど、温度特性の変化を引き起こす。
【0075】
特に、1つの半導体チップ10に複数個の検出部1〜4を設けた場合には、上記歪みは、半導体チップ10内で部分的に度合が異なるため、各検出部1〜4間の特性変化にばらつきが生じる可能性がある。その点を考慮して、本実施形態のような検出部1〜4の配置形態を採用すれば、上記した半導体チップ10内のひずみによる特性変化を、各検出部1〜4間で均一化することができ、温度特性が補正されることとなる。
【0076】
なお、図7に示される例では、上記図6に示される例と同様に、第2の固定電極40の固定電極用配線41については、4個の検出部1〜4において1つの配線41に共通化されており、第1の固定電極30の固定電極用配線31については、検出部1、2間で共通化するとともに、検出部3、4間で共通化している。
【0077】
また、図7に示されるように、本実施形態では、各パッド25a、30a、40a、50についても、半導体チップ10の幾何学的な中心Lに対して点対称の形状となるように配置しており、上記した温度特性の補正効果を高めている。
【0078】
ここで、本実施形態においては、固定電極用配線31、41について上記した共通化の構成をとることに限定するものではなく、上記図1に示した例のように、複数個の検出部1〜4の個々における固定電極用配線31、41を、互いに別々の配線31、41にて構成するようにしてもよい。
【0079】
また、本実施形態は、複数個の検出部1〜4が上記したような半導体チップ10における点対称の配置構成をとっていればよいものであり、検出部の数は、図7に示されるような4個に限定するものではなく、最低2個以上であってもよい。
【0080】
(第4実施形態)
図8は、本発明の第4実施形態に係るセンサ装置としての加速度センサ装置S4の概略平面構成を示す図である。この図8においても、上記図1と同様の表し方を用いて、検出部1を構成する可動部としての可動電極20および固定電極30、40の概略形状について表し、細部は一部省略してある。ここでも、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0081】
本実施形態も、上記各実施形態と同様に、差動容量式の検出部1〜4を複数個形成することにより、上記第1実施形態と同様に、検出部の機械的な破損に対して冗長性を持たせることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0082】
ここで、図9は、本実施形態に係る加速度センサ装置S4のパッケージ断面図である。本実施形態の半導体チップ10は、検出部1〜4側の端面を回路チップ80側に向けてバンプ接合されている。この回路チップ80がさらに、パッケージ90にバンプ接合されている。
【0083】
このとき、回路チップ80と半導体チップ10との間の線膨張係数が異なると、熱応力が発生した際に、半導体チップ10は中心部が回路チップ80に近づき、端部が回路チップ80から遠ざかるように歪む。
【0084】
そこで、本実施形態では、図8に示す検出部3および検出部4を用いて、半導体チップ10のα方向及びβ方向への歪(曲げ、反り)を判定する。ここで、α方向およびβ方向とは、検出部が配列状に配置された場合における対角線の方向である。なお、α方向とβ方向とは互いに異なる。
【0085】
以後、α方向への歪とは、半導体チップ10においてα線上に配置された検出部1,4が、β方向の線上に配置された検出部2、3よりも第2シリコン基板12方向に存在することをいう。同様に、β方向への歪とは、半導体チップ10においてβ方向の線上に配置された検出部2、3が、α方向の線上に配置された検出部1、4よりも第2シリコン基板12方向に存在することをいう。
【0086】
具体的なα方向及びβ方向への歪の判定方法を以下に述べる。半導体チップに同一感度を有する検出部が複数存在する場合、本来、各検出部の検出する出力は同一値となるはずである。そこで、検出部3にて検出された加速度が、検出部4にて検出された加速度よりも小さいときには、α方向に半導体チップ10が歪んでいると判定する。
【0087】
この判定の根拠は、α軸方向を山として半導体チップ10が歪んでいる場合、検出部3の電極間の距離は大きく広がり、検出部4の電極間の距離が少し広がるために、検出部3で検出される加速度が検出部4で検出される加速度に比べて小さくなるという特徴に基づく。
【0088】
逆に、検出部4にて検出された加速度が、検出部3にて検出された加速度よりも小さいときには、β方向に半導体チップ10が歪んでいると判定する。
【0089】
そして、回路チップ80において、検出部3および検出部4の出力から、半導体チップ10のα方向及びβ方向への歪量(曲げ、反り)を演算し、検出部1および検出部2の出力信号を補正する。
【0090】
このように本実施形態では、センサ装置S4は、複数個の検出部1〜4の信号に基づいて、半導体チップ10に印加された加速度を演算するとともに、該複数個の検出部1〜4の信号に基づいて該半導体チップ10の歪量を演算するものであり、このような構成とすることで、第1実施形態の効果を奏しながら、さらに歪量を補正することができる。
【0091】
(第5実施形態)
図10は、本発明の第5実施形態に係るセンサ装置としての加速度センサ装置S5の概略平面構成を示す図である。この図10においても、上記図1と同様の表し方を用いて、検出部1を構成する可動部としての可動電極20および固定電極30、40の概略形状について表し、細部は一部省略してある。ここでも、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0092】
本実施形態も、上記各実施形態と同様に、差動容量式の検出部1〜4を複数個形成することにより、上記第1実施形態と同様に、検出部の機械的な破損に対して冗長性を持たせることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0093】
そして、本実施形態では、図10に示されるように、4個の検出部1〜4が形成されている1つの半導体チップ10の四隅、言い換えれば4個の検出部1〜4が配置されている配列の対角方向であって半導体チップ10の端部近傍に、半導体チップ10のα方向またはβ方向の歪みを検出する歪量検出部としての歪ゲージ60a、60bが設置されている。
【0094】
なお、α方向の歪みを検出する歪ゲージ60aは、α方向と直交する方向に延設されているため、β方向よりもα方向への曲げに対して感度が良好となる配置となっている。また、β方向の歪みを検出する歪ゲージ60bは、β方向と直交する方向に延設されているため、α方向よりもβ方向への曲げに対して感度が良好となる配置となっている。
【0095】
これらの歪ゲージ60a、60bの検出信号は、図示しないワイヤを介して図示しない回路チップに入力される。そして、この回路チップでは、歪ゲージ60aにより半導体チップ10がα方向に大きく歪んでいることが検出され、かつ、歪ゲージ60bにより半導体チップ10がβ方向に大きく歪んでいないことが検出された場合には、半導体チップ対角線上においてβ方向に並ぶ検出部2、3の検出出力をセンサ装置全体の出力とする。
【0096】
また、歪ゲージ60aにより半導体チップ10がβ方向に大きく歪んでいることが検出され、かつ、歪ゲージ60bにより半導体チップ10がα方向に大きく歪んでいないことが検出された場合には、半導体チップ対角線上においてα方向に並ぶ検出部1、4の検出出力をセンサ装置全体の出力とする。
【0097】
このように、本実施形態のセンサ装置S5は、半導体チップ10の歪量を検出する歪量検出部としての歪ゲージ60a、60bを備えており、この歪ゲージ60a、60bで歪が半導体チップ10の歪が少ない方向を検出し、その方向に配置されている検出部の出力をセンサ装置の出力とすることで、歪による影響を軽減することができる。
【0098】
(第6実施形態)
図11(a)は、本発明の第6実施形態に係るセンサ装置としての加速度センサ装置S6の概略断面図を示し、図11(b)〜(c)は平面構成を示す図である。図11(a)は、図11(b)および(c)のO−O線の断面図である。また、図11(b)は、図11(a)のM−M線の断面図であり後述の半導体チップ10aを表し、図11(c)は、図11(a)のN−N線の断面図であり後述の半導体チップ10bを表す。この図11(a)〜(c)においても、上記図1の検出部1と同様の表し方を用いて、検出部1〜4c、1〜4dを構成する可動部としての可動電極20および固定電極30、40の概略形状について表し、細部は一部省略してある。ここでも、上記第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0099】
図11(a)に示すように、本実施形態のセンサ装置は、第1基板としての第1の半導体チップ10aを、第2基板としての第2の半導体チップ10bに、バンプ71を介したバンプ接合により積層したものである。
【0100】
第2の半導体チップ10bは図1のものと同一構造であり、4個の検出部1b〜4bが2×2個対角に配置されている。一方、第1の半導体チップ10aは、検出部1a〜4aなどの配置構造は図1のものと同一であり、4個の検出部1a〜4aが2×2個対角に配置されているが、第2の半導体チップ10bの第1の固定電極用パッド30bおよび第2の固定電極用パッド40bおよび可動電極用パッド25bに対応した箇所に貫通電極70が生成されている。なお、図11では省略しているが、貫通電極70は、第1の半導体チップ10aの第1シリコン基板11とも第2シリコン基板12とも絶縁されている。
【0101】
そして、第1の半導体チップ10aの貫通電極70と、第2の半導体チップ10bの第1の固定電極用パッド30bおよび第2の固定電極用パッド40bおよび可動電極用パッド25bをバンプ71で接合することで、第1の半導体チップ10aの表面から第2の半導体チップ10bの入出力をワイヤボンディングなどで図示しない回路チップに送ることができる。また、第1の半導体チップ10aと第2の半導体チップ10bとは、バンプ71とは別に、ダミーバンプ72によっても接合されている。
【0102】
こうして、第1の半導体チップ10aは、該第1の半導体チップ10aにおいて検出部1a〜4aが配置されていない側の面が、第2の半導体チップ10bの検出部1b〜4bが配置された側の面に積層されたものとなっている。また、第1の半導体チップ10aに配置された検出部1a〜4aのパッド25a、30a、40aが形成された領域の積層の方向側には、第2の半導体チップ10bに配置された検出部1b〜4bのパッド25b、30b、40bが存在していない。
【0103】
つまり、図11(b)および(c)に示すように、この第1の半導体チップ10aは、第2の半導体チップ10bに対してx方向(チップの延設方向)の平面状で180度回転して積層されるものである。
【0104】
これにより、積層した際に第1の半導体チップ10aのパッド30a、25a、40aと第2の半導体チップ10bのパッド30b、25b、40bとが重ならないため、第1の半導体チップ10aと第2の半導体チップ10bとも同じ位置にパッドを配置することができる。すなわち、同一のマスクや工程で、第1の半導体チップ10aと第2の半導体チップ10bとを製造することができる。
【0105】
さらに、この第2の半導体チップ10bは、第1の半導体チップ10aに積層された後に、第1の半導体チップ10aの第2の半導体チップ10bが積層されていない側の面が図示しないパッケージに固定される。
【0106】
ところで、本実施形態における第1の半導体チップ10aと第2の半導体チップ10bとは、平面に垂直な方向(以下、y方向)すなわち積層の方向に対して曲げ剛性が異なり、第2の半導体チップ10bの曲げ剛性が第1の半導体チップ10aよりも強い。
【0107】
このため、パッケージが熱により膨張または収縮した場合であっても、第2の半導体チップ10bの曲げ剛性が強いため、第1の半導体チップ10aには熱応力による変形が伝播しにくい構成となっている。曲げ剛性を変える方法としては、第1シリコン基板11の厚みを厚くすれば曲げ剛性は強まり、第1シリコン基板11の厚みを薄くすれば曲げ剛性を弱めることができる。
【0108】
さらに、第1の半導体チップ10aに配置される検出部1a〜4aと、第2の半導体チップ10bに配置される検出部1b〜4bとでは、感度が異なる。前述のように、第2の半導体チップ10bは、第1の半導体チップ10aに比べ、積層の方向に対して曲げ剛性が強いが、パッケージからの熱の影響を受けやすいため第1の半導体チップ10aより大きく変形する傾向がある。そこで、第2の半導体チップ10bには検出感度が低い検出部1b〜4bが配置され、第1の半導体チップ10aには検出感度が高い検出部1a〜4aが配置される。
【0109】
これにより熱応力によって第1の半導体チップ10aおよび第2の半導体チップ10bが変形したとしても、第2の半導体チップ10bの曲げ剛性を高めることで、第1の半導体チップ10aと第2の半導体チップ10bとの間の変形量の差を抑制することができる。
【0110】
さらに、第2の半導体チップ10bが第1の半導体チップ10aより大きな変形量となっても、第2の半導体チップ10bに配置される検出部1b〜4bの感度が低いため、当該検出部1b〜4bの出力に変形量に伴うノイズ成分が含まれにくい。同時に、第1の半導体チップ10aに配置される検出部1a〜4aの感度は、第2の半導体チップ1bの検出部1b〜4bに比べて高いが、第1の半導体チップ10a自体の変形量が小さいため、精度良く検出を行うことができる。
【0111】
このような構成とすることで、正常時は、第1の半導体チップ1aの検出部1a〜4aの出力をメインの出力としながら、両チップ1a、1bの検出部1a〜4aと検出部1b〜4bとの出力差から歪量を推定し、歪量が所定値以上となった場合に異常状態と判定することができる。
【0112】
その他にも、第1の半導体チップ1aの検出部1a〜4aの出力と、第2の半導体チップ1bの検出部1b〜4bの出力との加重平均をセンサ装置の出力としても良い。
【0113】
(第7実施形態)
図12(a)〜(b)は、本発明の第7実施形態に係るセンサ装置としての加速度センサ装置S7の概略断面図を示し、図12(c)〜(d)は平面構成を示す図である。図12(a)は図12(c)および(d)のR−R線の断面図であり、図12(b)は図12(c)および(d)のS−S線の断面図である。また、図12(c)は図12(a)および(b)のP−P線の断面図であり後述の半導体チップ10cを表し、図12(d)は図12(a)および(b)のQ−Q線の断面図であり後述の半導体チップ10dを表す。
【0114】
図12(a)および(b)に示すように、検出部1c〜4cが2×2個対角に配置された第1基板としての第1の半導体チップ10cと、検出部1d〜4dが2×2個対角に配置された第2基板としての半導体チップ10dとが、回路チップ80を介して接続されている。
【0115】
第1の半導体チップ10cは回路チップ80の一面(第1面)にバンプ71およびダミーバンプ72により接合され、第2の半導体チップ10dは、回路チップ80の第1の半導体チップ10a側の面の裏面であるもう一つの面(第2面)にバンプ71およびダミーバンプ72により接合されている。そして回路チップ80は、検出回路100を第1の半導体チップ10a側の面に備えている。
【0116】
第1の半導体チップ10cを表す図12(c)と、第2の半導体チップ10dを表す図12(d)と比べると、第1の半導体チップ10cの第1の固定電極用パッド30aおよび第2の固定電極用パッド40aおよび可動電極用パッド25aのy方向側には、第2の半導体チップ10dの第1の固定電極用パッド30bおよび第2の固定電極用パッド40bおよび可動電極用パッド25bが存在しない。
【0117】
すなわち、第1の固定電極用パッド30aおよび第2の固定電極用パッド40aおよび可動電極用パッド25aと、第1の固定電極用パッド30bおよび第2の固定電極用パッド40bおよび可動電極用パッド25bとは重ならないように配置されている。ただし、チップは、バンプの接続箇所を節に変形するため、図12(a)、(b)に示すように、第1の半導体チップ10cのダミーバンプ72は、第2の半導体チップ10dのダミーバンプ72とは重ねてある。
【0118】
また、回路チップ80の検出回路100は、回路チップ80の第1の半導体チップ10c側の面に存在するため、第2の半導体チップ10d側の出力信号は回路チップ80に設けられた貫通電極73を通って、検出回路100側の面に伝達される。
【0119】
このように、2枚の半導体チップ10c、10dで回路チップ80を挟んで積層することで、第6実施形態のように、2枚の半導体チップを同方向に積層し、別途回路チップを設けた場合に比べて、センサ装置の体格を小さくすることができる。
【0120】
さらに、y方向においては回路チップ80に対して対称に、第1の半導体チップ10cと第2の半導体チップ10dが配置されているため両面の熱膨張係数が近く、熱応力によって第1の半導体チップ10cまたは第2の半導体チップ10dの片方だけが歪みにくい。このため、温度特性の変動を抑制することができる。
【0121】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、1つの半導体チップ10に複数個の検出部1〜4を設けたが、1個の半導体チップに1個の検出部を設け、これらをパッケージなどに平面的に配置した状態で固定したものであってもよい。さらには、1個の検出部が設けられた半導体チップを積層するとともに各半導体チップ間をバンプなどを介して電気的に接続することにより、複数個の検出部を重ね合わせたスタック構成としてもよい。
【0122】
また、センサ装置としては、上記した加速度センサに限定されるものではなく、変位可能な可動部をもつものであれば、それ以外に、たとえば角速度センサであってもよい。角速度センサの場合には、検出部は駆動振動のもと角速度印加時にコリオリ力によって検出振動する可動部を有するが、この検出部を、上記各実施形態のような配置にて同様に設けた構成とすればよい。
【0123】
また、センサ装置としては、圧力を検出する可動部としてのダイアフラムを有する圧力センサなどにも適用することができ、この場合、たとえば複数個のダイアフラムを設ければよい。さらには、本発明は、検出部として可動部を有するものであれば、上記した各センサ以外にも、たとえば湿度センサや流量センサなどにも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1実施形態に係る加速度センサ装置の概略平面図である。
【図2】図1に示されるセンサ装置における1つの検出部の概略平面図である。
【図3】図2のA−A概略断面図である。
【図4】図2のB−B概略断面図である。
【図5】図1に示される加速度センサ装置における検出回路の一例を示す回路図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る加速度センサ装置の概略平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る加速度センサ装置の概略平面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る加速度センサ装置の概略平面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る加速度センサ装置のパッケージ断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る加速度センサ装置の概略平面図である。
【図11】本発明の第6実施形態に係る加速度センサ装置の概略平面図である。
【図12】本発明の第7実施形態に係る加速度センサ装置の概略平面図である。
【符号の説明】
【0125】
1〜4…検出部、10…半導体チップ、20…可動部としての可動電極、
30、40…固定部としての固定電極、31、41…固定電極用配線、
60a、60b…歪ゲージ、70…貫通電極、71…バンプ、72…ダミーバンプ、
80…回路チップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象を検出する検出部(1〜4)としての変位可能な可動部(20)を有するセンサ装置において、
前記検出部(1〜4)は、互いに同一の検出対象を検出する複数個のものよりなり、これら複数個の検出部(1〜4)のそれぞれが互いに独立した信号を出力するようになっていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記検出部(1〜4)は、前記検出対象として力学量を検出するものであって、前記可動部としての可動電極(20)とこの可動電極(20)に対向して配置された固定電極(30、40)とを有し、前記力学量の印加時には、前記可動電極(20)と前記固定電極(30、40)との間の容量が変化し、この容量変化が前記検出部(1〜4)の信号として出力されるものであり、
前記複数個の検出部(1〜4)のうち1つの検出部における前記固定電極(30、40)と他の検出部における前記固定電極(30、40)とで、それぞれの取り出し用の配線が、1つの配線(31、41)に共通化されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記検出部(1〜4)は、前記検出対象として力学量を検出するものであって、前記可動部としての可動電極(20)とこの可動電極(20)に対向して配置された固定電極(30、40)とを有するものであり、
前記力学量の印加時には、前記可動電極(20)と前記固定電極(30、40)との間の容量が変化し、この容量変化が前記検出部(1〜4)の信号として出力されるものであり、
前記複数個の検出部(1〜4)の個々における前記固定電極(30、40)の取り出し用の配線は、互いに別々の配線(31、41)にて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記複数個の検出部(1〜4)のすべてが、1つの半導体チップ(10)に形成されており、
これら複数個の検出部(1〜4)は、前記半導体チップ(10)の幾何学的な中心(L)に対して点対称の形状となるように配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記センサ装置は、前記半導体チップ(10)の歪量を検出する歪量検出部(60a、60b)を備えることを特徴とする請求項1ないし4に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記センサ装置は、前記複数個の検出部(1〜4)の信号に基づいて、前記半導体チップ(10)に印加された加速度を演算するとともに、該複数個の検出部(1〜4)の信号に基づいて該半導体チップ(10)の歪量を演算するものであることを特徴とする請求項1ないし4に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記センサ装置は、前記検出部(1a〜4a)がn×n個対角に配置された第1基板(10a)と、
前記検出部(1b〜4b)がn×n個対角に配置された第2基板(10b)とを有し、
前記第1基板(10a)と前記第2基板(10b)とはバンプ接合により積層されることを特徴とする請求項1ないし6に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記センサ装置は、前記第2基板(10b)は、前記第1基板(10a)に配置された検出部(1a〜4a)よりも高感度の検出部(1b〜4b)が配置されるとともに、該第1基板(10a)に比べて前記積層の方向に対して高い曲げ剛性を有することを特徴とする請求項7に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記第1基板(10a)は、該第1基板(10a)において検出部(1a〜4a)が配置されていない側の面が、前記第2基板(10b)の検出部(1b〜4b)が配置された側の面に積層されるものであって、
前記第1基板(10a)に配置された検出部(1a〜4a)のパッド(25a、30a、40a)が形成された領域の前記積層の方向側には、前記第2基板(10b)に配置された検出部(1b〜4b)のパッド(25b、30b、40b)が存在しないことを特徴とする請求項7または8に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記センサ装置は、前記検出部(1c〜4c)がn×n個対角に配置された第1基板(10c)と、
前記検出部(1d〜4d)がn×n個対角に配置された第2基板(10d)と、
前記第1基板(10c)および前記第2基板(10d)の各検出部(1c〜4c、1d〜4d)より出力された信号を処理する回路基板(80)とを有し、
前記第1基板(10c)は、前記回路基板(80)の第1面にバンプ接合され、
前記第2基板(10d)は、前記回路基板(80)の第1面の裏面である第2面にバンプ接合されることを特徴とする請求項1ないし6に記載のセンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−96146(P2008−96146A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275110(P2006−275110)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】