説明

タイヤの外観検査方法および外観検査装置

【課題】タイヤの外観形状の検査を、従来法と比較してより短時間で、かつ、簡素な処理方法により行うことができ、さらにはタイヤ表面の微小欠陥についても検出することが可能なタイヤの外観検査方法および外観検査装置を提供する。
【解決手段】タイヤ10の表面に対し偏光Lを照射して、タイヤ表面からの偏光の反射光Lを偏光カメラ2により受光し、受光した反射光の光強度からタイヤ表面の凹凸を検出するタイヤの外観検査方法である。偏光カメラ2としては、少なくとも3以上の異なる方向の偏光子を備えるものを用いることが好ましい。また、偏光としては、直線偏光を好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの外観検査方法および外観検査装置(以下、単に「検査方法」および「検査装置」とも称する)に関し、詳しくは、製品タイヤの外観形状を自動的に検査することが可能なタイヤの外観検査方法および外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの外観形状の良否を検査する方法として、図4に示すような、光切断法を用いた検査方法が知られている。この検査方法は、検査するタイヤ60を回転装置71に搭載して回転させるとともに、半導体レーザなどを用いた投光装置72によりタイヤ60のサイド部60Kにスリット光を照射して、上記サイド部60Kのスリット像をCCDカメラなどのエリアカメラ73により撮影した後、このスリット像Sの画像データ(輝度データ)からサイド部60Kの形状を求め、これを基準となるサイド部60Kの画像と比較して、その形状の良否を判定するものである。
【0003】
タイヤ等の外観検査に係る技術としては、例えば、特許文献1に、被検体の検査対象面にスリット光を照射する投光手段と上記スリット光の照射部を撮影するエリアカメラとを備えた撮影手段と被検体とを相対的に移動させて上記被検体を撮影し、この撮影されたエリアカメラの画素データから上記被検体の座標と輝度とを算出して上記被検体の形状と濃淡とを検出し、上記被検体の形状及び外観を同時に検査するようにした被検体の外観・形状検査方法が開示されている。また、タイヤ等の外観検査を精度良く行うための技術としては、例えば、特許文献2〜4に開示されている技術も公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003‐240521号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2001‐249012号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2005‐148010号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献4】特開2008‐232779号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のタイヤの外観検査方法は、断面画像データを立体(3D)処理して形状データを取得するものであるため、1個のタイヤの検査に要する計算量が多く、処理が煩雑で、時間がかかるという問題があった。また、従来の光切断法を用いた外観検査方法では、分解能はカメラの性能およびラインレーザーの線幅により制限されるため、微細な凹凸欠陥を検出するためにはレーザーおよびカメラの両方の性能を向上させる必要があった。したがって、より短時間で、かつ、簡素な処理方法で、タイヤ表面の微小欠陥を検出することができる検査技術が求められていた。
【0006】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、タイヤの外観形状の検査を、従来法と比較してより短時間で、かつ、簡素な処理方法により行うことができ、さらにはタイヤ表面の微小欠陥についても検出することが可能なタイヤの外観検査方法および外観検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、タイヤ表面に対し偏光を照射して、その反射光の偏光状態の変化を分析する手法を用いることで、上記問題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のタイヤの外観検査方法は、タイヤの表面に対し偏光を照射して、該タイヤ表面からの該偏光の反射光を偏光カメラにより受光し、受光した反射光の光強度から該タイヤ表面の凹凸を検出することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明のタイヤの外観検査装置は、タイヤの表面に対し偏光を照射する光照射手段と、該タイヤ表面からの該偏光の反射光を受光する偏光カメラと、該偏光カメラで受光した反射光の光強度から該タイヤ表面の凹凸を検出する凹凸検出手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
本発明において好適には、前記偏光カメラとして、少なくとも3以上の異なる方向の偏光子を備えるものを用いる。また、本発明において、前記偏光としては、直線偏光を用いることが好ましい。さらに、前記偏光カメラは、前記タイヤ表面に対し垂直な方向に配置することが好ましい。さらにまた、前記偏光カメラとしてラインカメラを用いて、前記タイヤを周方向に回転させながら連続的に検査を行うことが好ましく、この場合、本発明の検査装置は、前記タイヤを周方向に回転させることが可能な回転手段を備えるものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タイヤの外観形状の検査を、従来法と比較してより短時間で、かつ、簡素な処理方法により行うことができ、しかも、従来方法では不可能だったタイヤ表面の微小欠陥の検出が可能であるタイヤの外観検査方法および外観検査装置を実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のタイヤの外観検査装置の一構成例を示す概略斜視図およびその部分上面図である。
【図2】偏光子方向θと受光強度(透過光強度)Iとの関係を示すグラフである。
【図3】本発明のタイヤの外観検査装置の他の構成例を示す概略斜視図およびその部分上面図である。
【図4】従来の光切断法を用いたタイヤの外観検査方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明のタイヤの外観検査装置の一構成例を示す概略斜視図およびその部分上面図を示す。図示するように、本発明の検査装置は、タイヤ10の表面に対し偏光Lを照射する光照射手段1と、タイヤ10の表面からの偏光の反射光Lを受光する偏光カメラ2と、偏光カメラ2で受光した反射光Lの光強度からタイヤ10の表面の凹凸を検出する凹凸検出手段(図示せず)とを備える。図中のXは偏光カメラ2の視野を示す。
【0014】
タイヤ10の表面に対し偏光を照射すると、表面の局所的な形状や粗さの違いによって偏光の入射角が異なる結果、その反射光の偏光状態も局所的に変化する。したがって、タイヤ表面に凹凸が存在すると、その凹凸部分では、反射光の偏光状態が他の部分とは異なるものとなる。本発明においては、これを利用して、偏光カメラを用いてこの偏光の反射光における偏光状態の変化、すなわち偏光角度の変化を取得、分析することで、タイヤ10の表面の凹凸情報を得るものである。これにより、従来の形状計測方法では不可能だったタイヤ表面の微小欠陥、例えば、目視では確認するのが困難なレベルの浅く小さな凹凸欠陥や、異種ゴムが加硫成型された欠陥などの検出が可能となる。また、従来法よりも簡便な方法で、高速かつ高精度に、タイヤの表面情報を取得することが可能であり、タイヤ表面の欠陥を自動的に判別することができるものである。さらに、従来の光切断法による3次元形状測定は、タイヤ表面の汚れや色むら等により多少とも影響を受け、特に微小欠陥を検出する際には、このような汚れや色むら等の影響が小さくないと考えられる。これに対し、本発明で用いる偏光の偏光角は、このような汚れや色むら等に影響されず、表面の凹凸のみにより決まるものであるので、本発明においては、この点からも、従来法と比較して、より精度の高い検出を行うことが可能である。
【0015】
本発明においては、まず、タイヤ10の表面に対し偏光Lを照射する。偏光Lを照射するための光照射手段1としては、偏光を照射できるものであれば、いかなる照明を用いてもよい。具体的には例えば、LED(Light Emitting Diode,発光ダイオード)等の照明器具と、この照明器具から出射した光を偏光させる偏光板とを組み合わせたものを用いることができる。中でも、受光感度の高い赤色のLEDを偏光板とを組み合わせたものを用いることが好ましい。また、本発明においては、タイヤ表面で反射した偏光の反射光における偏光角度の変化が検出できるものであればよいので、使用する偏光については特に制限はないが、通常は、直線偏光を用いる。直線偏光の偏光角度は、特に制限されるものではないが、p波およびs波による情報がバランスよく得られることから、45°偏光とすることが好ましい。
【0016】
タイヤ10の表面からの偏光の反射光Lは、偏光カメラ2により受光される。本発明に用いる偏光カメラ2は、CCD等のセンサより手前に、通常、少なくとも3以上の異なる方向の偏光子を備えるものである。このような偏光カメラ2を用いて反射光を受光することで、対応する画素単位ごとに3方向以上の偏光子のそれぞれの透過光強度を得て、この透過光強度から、反射光の偏光角度(偏光長軸方向)を画像化することができる。
【0017】
偏光カメラで受光した上記反射光の透過光強度データからのタイヤ表面の凹凸の検出は、以下のようにして行われる。すなわち、角度θ(θ=0〜180°)の偏光子を透過する光強度Iは、下記式、
I=M+Acos(2(θ−α))
(式中、αは、偏光子を回転した場合に最も透過光強度が大きくなる方向(偏光長軸方向)を示し、Aは、光強度のうち偏光子を回転した場合に偏光子の角度に応じて変動する成分の振幅(偏光振幅)を示し、Mは、偏光子を回転しても変動しない成分(平均値)を示し、A/Mは偏光している成分の度合い(偏光度)を意味する)により定義される(図2参照)。したがって、上記式に基づき、3方向以上の偏光子のそれぞれの方向および透過光強度のデータを用いて演算することにより、各画素単位ごとの偏光角度を導出することができるので、偏光角度の異なる凹凸部分の検出を容易に行うことが可能となる。また、この画素単位ごとの偏光角度のデータを、例えば、偏光方向により色相を変えたカラー画像として出力すれば、凹凸部分の色が他の部分と異なって表示された画像データとしても得ることができる。ここで、3方向以上の偏光子の角度としては、例えば、0°、90°および135°の組合せとすることができる。なお、上記凹凸の検出は、凹凸検出手段としての、一般的な演算処理装置(PC)を用いて行えばよい。
【0018】
上記のような画像処理により、タイヤ10の表面における微小な凹凸欠陥を検出することができ、また、タイヤ10の表面に形状変化なしで異種ゴムが加硫成型された部分があった場合にも、その検出を行うことが可能となる。
【0019】
なお、本発明においては、照射光の波長と反射光側の波長とが揃っていることが必要であるので、照射光に赤色光を用いる場合には、偏光カメラ側にも赤色フィルタを用いて、赤色光のみを受光することが必要である。
【0020】
本発明において偏光カメラ2としては、エリアカメラを用いてもラインカメラを用いてもよいが、好ましくは、ラインカメラを用いる。偏光カメラ2としてラインカメラを用いることで、図示するように、タイヤ10を周方向に一定速度で回転させながら撮影を実施して、連続的に検査を行うことが可能となる。タイヤ10の回転は、例えば、タイヤ10を図示しない回転台上に載置して、この回転台を回転させることにより行うことができる。なお、このタイヤ10の回転手段としては、タイヤ10を周方向に回転させることができるものであれば、回転台には特に制限されない。
【0021】
本発明において、光照射手段1と偏光カメラ2との配置条件としては、図1に示すように、タイヤ10の表面に対し、偏光Lが斜めから、例えば、54〜60°の角度から照射されるよう光照射手段1を配置して、偏光カメラ2をタイヤ10の表面に対し垂直な方向に配置することが好ましい。このような配置とすることで、カメラの視野Xがタイヤ半径方向に沿うものとなるので、本発明により得られた画像データと、従来法に従い3次元計測したタイヤ形状データとの位置合わせを行うことにより、タイヤ表面のうちデザイン領域部分について、マスクを行うことなどが可能となる。また、図3に示すように、光照射手段1と偏光カメラ2とを、照射光がタイヤ表面に対しブリュースター角で入射するよう配置することもでき、この場合、入射角と反射角とをブリュースター角に近づけることで、欠陥部での偏光角度変化を最大にして、検出精度を高めることができる。但し、図3に示す配置の場合、タイヤ表面が曲面であるために、偏光カメラ2の視野も、符号Yで示すように曲線状となる。したがって、この場合、得られる画像データが歪んでしまい、タイヤ表面に文字形状等が形成されている場合には、文字形状データとの対応が困難となるとともに、斜めからの撮影であるために文字部分等の凸部の背面側にカメラの死角が生ずるという難点がある。
【符号の説明】
【0022】
1 光照射手段
2 偏光カメラ
10 タイヤ
,L 偏光
X,Y 偏光カメラの視野

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの表面に対し偏光を照射して、該タイヤ表面からの該偏光の反射光を偏光カメラにより受光し、受光した反射光の光強度から該タイヤ表面の凹凸を検出することを特徴とするタイヤの外観検査方法。
【請求項2】
前記偏光カメラとして、少なくとも3以上の異なる方向の偏光子を備えるものを用いる請求項1記載のタイヤの外観検査方法。
【請求項3】
前記偏光として直線偏光を用いる請求項1または2記載のタイヤの外観検査方法。
【請求項4】
前記偏光カメラを、前記タイヤ表面に対し垂直な方向に配置する請求項1〜3のうちいずれか一項記載のタイヤの外観検査方法。
【請求項5】
前記偏光カメラとしてラインカメラを用い、前記タイヤを周方向に回転させながら連続的に検査を行う請求項1〜4のうちいずれか一項記載のタイヤの外観検査方法。
【請求項6】
タイヤの表面に対し偏光を照射する光照射手段と、該タイヤ表面からの該偏光の反射光を受光する偏光カメラと、該偏光カメラで受光した反射光の光強度から該タイヤ表面の凹凸を検出する凹凸検出手段と、を備えることを特徴とするタイヤの外観検査装置。
【請求項7】
前記偏光カメラが、少なくとも3以上の異なる方向の偏光子を備える請求項6記載のタイヤの外観検査装置。
【請求項8】
前記偏光が直線偏光である請求項6または7記載のタイヤの外観検査装置。
【請求項9】
前記偏光カメラが、前記タイヤ表面に対し垂直な方向に配置されている請求項6〜8のうちいずれか一項記載のタイヤの外観検査装置。
【請求項10】
前記偏光カメラがラインカメラであり、かつ、前記タイヤを周方向に回転させることが可能な回転手段を備える請求項6〜9のうちいずれか一項記載のタイヤの外観検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−196741(P2011−196741A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61931(P2010−61931)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】