タンクおよびその製造方法
【課題】フープ層に生じうる段差に起因してヘリカル層が損傷するという事態を抑制する。
【解決手段】タンクのFRP層が、ライナ20の外周に繊維束70が巻回されて形成されるヘリカル層と、段差抑制部材を含むフープ層とから形成されている。段差抑制部材は例えばシート繊維71であり、この場合、FRP層は、ライナ20の外周に繊維束70が巻回されて形成されるヘリカル層と、該ヘリカル層とともに積層されたシート繊維71からなるフープ層とから形成されている。シート繊維71からなるフープ層が、ヘリカル層の少なくとも一つに対して内層側と外層側とに設けられて当該ヘリカル層を挟んでいることが好ましい。
【解決手段】タンクのFRP層が、ライナ20の外周に繊維束70が巻回されて形成されるヘリカル層と、段差抑制部材を含むフープ層とから形成されている。段差抑制部材は例えばシート繊維71であり、この場合、FRP層は、ライナ20の外周に繊維束70が巻回されて形成されるヘリカル層と、該ヘリカル層とともに積層されたシート繊維71からなるフープ層とから形成されている。シート繊維71からなるフープ層が、ヘリカル層の少なくとも一つに対して内層側と外層側とに設けられて当該ヘリカル層を挟んでいることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクおよびその製造方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、水素ガス等が高圧で充填されるタンクにおける構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
水素等の貯蔵に利用されるタンク(高圧ガス容器)として、ライナ(タンク内容器)の外周にフープ層とヘリカル層とが積層されたFRPの補強層を備えるものが利用されている(例えば特許文献1参照)。フープ層は、例えば炭素繊維などの繊維束がフープ巻(タンク胴体部においてタンク軸にほぼ垂直に巻き付ける巻き方)されて形成された層であり、ヘリカル層は、繊維束がヘリカル巻(タンク胴体部およびタンクドーム部に繊維束を螺旋状に巻き付ける巻き方)されて形成された層である(本願の図2、図10参照)。
【0003】
また、フープ層、ヘリカル層、さらにインプレーン層(タンク胴体部およびタンクドーム部に繊維束を直線状に巻き付けるインプレーン巻によって形成された層)からなる補強層を備えた高圧ガス容器として、滑り止め防止のためにライナと補強層との間にシート状のプリプレグ(炭素繊維、ガラス繊維等の織物やシートに、半硬化の熱硬化性樹脂(一般的にはエポキシ樹脂)をあらかじめ含浸させたシート)が設けられているものも提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−340291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のごとき従来のタンク(高圧ガス容器)においては、フープ層に生じうる段差に起因してヘリカル層が損傷するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、フープ層に生じうる段差に起因してヘリカル層が損傷することを抑制しうるタンクおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。従来、タンクを製造するに際し、タンク軸方向に対して様々な角度で繊維束を巻回し、フープ層やヘリカル層を積層させるフィラメントワインディング(FW)法によりFRP層を形成することが行われている(図10参照)。これらのうち、特にフープ層を形成する際には、下層(タンク内側に位置する層)を完全に繊維束で覆うことがタンク強度向上の点で有効であることから、隣接する繊維束どうしをオーバーラップさせ、確実に下層を被覆することが一般的に行われている(図11参照)。ところが、このオーバーラップにより生じるフープ層の凹凸が、上層のヘリカル層の繊維に曲げ方向の応力を発生させる。一般に、繊維は、引っ張られた場合よりも曲げ方向の外力を受けた場合のほうが圧倒的に弱いことから、当該曲げの部分を基点にして破壊が生じ、タンクが設計値以下の圧力で破壊してしまうおそれがある。この点、生産性を維持しつつ、繊維束のオーバーラップの排除と確実な下層被覆とを低コストで両立させることに着目してさらに検討した本発明者は、かかる課題の解決に結び付く新たな知見を得るに至った。
【0008】
本発明はかかる知見に基づくもので、ライナと、該ライナの外周に形成されるFRP層とを有するタンクにおいて、FRP層が、ライナの外周に繊維束が巻回されて形成されるヘリカル層と、段差抑制部材を含むフープ層とから形成されているというものである。段差抑制部材は例えばシート繊維、あるいはゴム製の部材である。段差抑制部材がシート繊維である場合、FRP層が、ライナの外周に繊維束が巻回されて形成されるヘリカル層と、該ヘリカル層とともに積層されたシート繊維からなるフープ層とから形成されていることが好ましい。
【0009】
上述したように、繊維束を用いたフィラメントワインディング法でフープ層を形成する場合、オーバーラップ(重なり)がない状態で、尚かつ隙間なく繊維束を高速で巻回していくことは一般に難しい。この点、本発明では、例えばシート繊維を利用して段差を抑制したフープ層を形成することにより、繊維束を巻回する手法に比べて高速かつ確実に、しかも段差のない状態で下層を完全被覆することができる。したがって、本発明を適用することによって生産性向上とタンク耐久性向上の両立が可能となる。
【0010】
また、シート繊維を用いる場合、当該シート繊維からなるフープ層が、ヘリカル層の少なくとも一つに対して内層側と外層側とに設けられて当該ヘリカル層を挟んでいることが好ましい。さらに、ヘリカル層とフープ層との間にゴム製部材が少なくとも一つ介在していることも好ましい。
【0011】
また、本発明にかかる方法は、ライナと、該ライナの外周に形成されるFRP層とを有するタンクの製造方法において、ライナの外周に繊維束を巻回して形成されるヘリカル層と、シート繊維からなるフープ層とを積層してFRP層を形成する、というものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フープ層に生じうる段差に起因してヘリカル層が損傷するという事態を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】高圧タンクの構造を示す断面図および部分拡大図である。
【図2】高圧タンクの構造を示す断面図である。
【図3】高圧タンクの口金付近の構造例を示す断面図である。
【図4】平滑ヘリカル層におけるヘリカル巻の一例を示す斜視図である。
【図5】平滑ヘリカル層におけるヘリカル巻の一例を示す、タンク軸方向に沿った投影図である。
【図6】本発明の一実施形態であって、シート繊維をライナの外側に巻き付けてフープ層を形成する様子を示す図である。
【図7】シート繊維の形状例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態を示す高圧タンクのFRP層の断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態を示す高圧タンクのFRP層の断面図である。ヘリカル層を形成する繊維束を巻回する際のフィラメントワインディング装置の平面図である。
【図10】繊維束により形成されるフープ層およびヘリカル層について説明するための参考図である。
【図11】図10に示したフープ層とヘリカル層の交差部分における断面を拡大して示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1〜図8に本発明にかかるタンクおよびその製造方法の実施形態を示す。以下では、燃料電池システム等において利用される水素燃料供給源としての高圧水素タンク(以下、高圧タンクともいう)1を挙げ、当該高圧タンク1をFRP成形する場合を例示しつつ説明する。
【0016】
高圧タンク1は、例えば両端が略半球状である円筒形状のタンク本体10と、当該タンク本体10の長手方向の一端部に取り付けられた口金11を有する。なお、本明細書では略半球状部分をドーム部、筒状胴体部分をストレート部といい、それぞれ符号1d,1sで表す(図1、図2等参照)。また、本実施形態で示す高圧タンク1は両端に口金11を有するものであるが、説明の便宜上、当該高圧タンク1の要部を示す図3中のX軸の正方向(矢示する方向)を先端側、負方向を基端側として説明を行う。このX軸に垂直なY軸の正方向(矢示する方向)がタンク外周側を指している。
【0017】
タンク本体10は、例えば二層構造の壁層を有し、内壁層であるライナ20とその外側の外壁層である樹脂繊維層(補強層)としての例えばFRP層21を有している。FRP層21は、例えばCFRP層21cのみ、あるいは該CFRP層21cおよびGFRP層21gによって形成されている(図1参照)。
【0018】
ライナ20は、タンク本体10とほぼ同じ形状に形成される。ライナ20は、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、またはその他の硬質樹脂などにより形成されている。あるいは、ライナ20はアルミニウムなどで形成された金属ライナであってもよい。
【0019】
ライナ20の口金11のある先端側には、内側に屈曲した折返し部30が形成されている。折返し部30は、外側のFRP層21から離間するようにタンク本体10の内側に向けて折り返されている。折返し部30は、例えば折り返しの先端に近づくにつれて次第に径が小さくなる縮径部30aと、当該縮径部30aの先端に接続され径が一定の円筒部30bとを有している。この円筒部30bによりライナ20の開口部が形成されている。
【0020】
口金11は、略円筒形状を有し、ライナ20の開口部に嵌入されている。口金11は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、例えばダイキャスト法等により所定の形状に製造されている。口金11は射出成形された分割ライナに嵌め込まれている。また、口金11は例えばインサート成形によりライナ20に取り付けられてもよい。
【0021】
また、口金11は、例えば先端側(高圧タンク1の軸方向の外側)にバルブ締結座面11aが形成され、そのバルブ締結座面11aの後方側(高圧タンク1の軸方向の内側)に、高圧タンク1の軸に対して環状の凹み部11bが形成されている。凹み部11bは、軸側に凸に湾曲しR形状になっている。この凹み部11bには、同じくR形状のFRP層21の先端部付近が気密に接触している。
【0022】
例えばFRP層21と接触する凹み部11bの表面には、例えばフッ素系の樹脂などの固体潤滑コーティングCが施されている。これにより、FRP層21と凹み部11bとの間の摩擦係数が低減されている。
【0023】
口金11の凹み部11bのさらに後方側は、例えばライナ20の折返し部30の形状に適合するように形成され、例えば凹み部11bに連続して径の大きい鍔部(ツバ部)11cが形成され、その鍔部11cから後方に一定径の口金円筒部11dが形成されている。上記ライナ20の折返し部30の縮径部30aは、鍔部11cの表面に密着し、円筒部30bは、口金円筒部11dの表面に密着している。円筒部30bと口金円筒部11dとの間には、シール部材40、41が介在している。
【0024】
バルブアッセンブリ50は、外部のガス供給ライン(供給路22)と高圧タンク1の内部との間で燃料ガスの給排を制御するものである。バブルアッセンブリ50の外周面と口金11の内周面との間には、シール部材60、61が介在されている。
【0025】
FRP層21は、例えばフィラメントワインディング成形(FW成形)により、ライナ20の外周面と口金11の凹み部11bに、樹脂を含浸した繊維(補強繊維)70を巻き付け、当該樹脂を硬化させることにより形成されている(なお、後述するように本実施形態では一部繊維70の代わりに繊維シートを利用する)。FRP層21の樹脂には、例えばエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が用いられる。また、繊維70としては、炭素繊維(CF)、金属繊維などが用いられる。フィラメントワインディング成形の際には、タンク軸を中心としてライナ20を回転させながら繊維70のガイドをタンク軸方向に沿って動かすことにより当該ライナ20の外周面に繊維70を巻き付けることができる。なお、実際には複数本の繊維70が束ねられた繊維束がライナ20に巻き付けられることが一般的であるが、本明細書では繊維束である場合を含めて単に繊維と呼ぶ。
【0026】
次に、タンク1における繊維(例えば炭素繊維CF)70の構造的曲げを低減するための一般的な繊維巻きパターンについて説明しておく(図2等参照)。
【0027】
上述したように、タンク1は、ライナ20の外周に繊維(例えば炭素繊維)70を巻き付け、樹脂を硬化させることにより形成されている。ここで、繊維70の巻き付けにはフープ巻とヘリカル巻があり、樹脂がフープ巻された層によってフープ層(図8において符号70Pで示す)が、ヘリカル巻された層によってヘリカル層(図4、図5において符号70Hで示す)がそれぞれ形成される。前者のフープ巻は、タンク1のストレート部(タンク胴体部分)に繊維70をコイルスプリングのように巻くことによって当該部分を巻き締め、気体圧によりY軸正方向へ向かう力(径方向外側へ拡がろうとする力)に対抗するための力をライナ20に作用させるものである。一方、後者のヘリカル巻はドーム部を巻き締め方向(タンク軸方向の内側向き)に巻き締めることを主目的とした巻き方であり、当該ドーム部に引っ掛かるようにして繊維70をタンク1に対し全体的に巻き付けることにより、主として当該ドーム部の強度向上に寄与する。なお、コイルスプリングのように巻かれた繊維70の弦巻(つるまき)線(ネジにおけるネジ山の線)と、当該タンク1の中心線(タンク軸12)とのなす角度(のうちの鋭角のほう)が繊維70の「タンク軸(12)に対する巻角度」であり、図2において符号θho、θheで示す。
【0028】
これら種々の一般的な巻き付け方のうち、フープ巻は、ストレート部において繊維70をタンク軸にほぼ垂直に巻くものであり、その際の具体的な巻角度は例えば80〜90°である(図2参照)。ヘリカル巻(または、インプレーン巻)は、ドーム部にも繊維70を巻き付ける巻き方であり、タンク軸に対する巻角度がフープ巻の場合よりも小さい(図2参照)。ヘリカル巻を大きく2つに分ければ高角度ヘリカル巻と低角度ヘリカル巻の2種類があり、そのうち高角度ヘリカル巻はタンク軸に対する巻角度が比較的大きいもので、その巻角度の具体例は70〜80°である。一方、低角度ヘリカル巻は、タンク軸に対する巻角度が比較的小さいもので、その巻角度の具体例は5〜30°である。
【0029】
続いて、本実施形態における高圧タンク1のFRP層21の構成について説明する。
【0030】
本実施形態の高圧タンク1においては、段差抑制部材を含むフープ層70Pが形成されている。段差抑制部材は当該フープ層70Pに生じうる段差を抑制するという作用を奏するもので、シート繊維やゴム製部材などで構成することができる。例えば本実施形態では、あらかじめシート状に形成されているシート繊維71をこの段差抑制部材として用い、ライナ20の周囲に筒状に巻き付けることによって段差が抑制されたフープ層70Pを形成している(図6参照)。一方、ヘリカル層70Hは、従前と同様に、繊維70を巻回することによって形成することとしている。
【0031】
このようにシート繊維71を利用してフープ層70Pを形成する場合、繊維70を巻回する従前の方法と比べると、より高速かつ確実に、しかも段差なく下層を完全に被覆することが可能である。このため、高圧タンク1の製造の際の生産性向上とタンク耐久性向上を図ることができる。また、フープ層70Pに生ずる応力はもっぱらフープ方向の引っ張り応力(フープ応力)であり、当該シート繊維71が損傷しにくいこともタンク強度や耐久性を向上させる一因となる。したがって、一方向の引っ張り強度にすぐれる異方性のシート繊維71を利用する場合、当該引っ張りにすぐれる方向を周方向(フープ巻の方向)に一致させることにより、強い巻き締め力を発揮しうるフープ層70Pを形成することができる(図6参照)。このようなシート状の一方向強化材を用いる場合、プリプレグ、樹脂含浸(wet法)のいずれのシートを用いてもよい。また、強化材の幅は、高圧タンク1のストレート部1sのみを覆うもの、ストレート部1sに加えてドーム部1dの一部または全部を覆うもののいずれでもよい。
【0032】
また、本実施形態では矩形のシート繊維71を利用するが(図6参照)、この他、台形等の形状のシート繊維71を用いることもできる。シート繊維71を例えば図7に示すような台形と、両側の略三角形の部分でドーム部1dを覆うこととすれば、当該シート繊維71の外周面において、ストレート部1sとドーム部1dとの間に段差がない状態でシート繊維71を巻き付けることが可能である。
【0033】
また、上述のごときシート繊維71を巻き付ける際は、ヘリカル層70Hの上下のうちの少なくとも一方、好ましくは両方にシート繊維71を巻き付けてフープ層70Pを形成することが好ましい。例えば本実施形態では、当該シート繊維71からなるフープ層70Pが、ヘリカル層70Hの少なくとも一つに対して内層側と外層側とに配置して当該ヘリカル層70Hを挟むようにしている(図8参照)。
【0034】
さらに、ヘリカル層70Hとフープ層70Pとの間にゴムシート等のゴム製部材を介在させることも好ましい。これにより、フープ層70Pに段差が生じることをさらに抑制し、あるいはフープ層の段差がヘリカル層に与えうる影響をさらに抑制することが可能となる。例えばゴムシートを用いる場合、材質や性状は特に限定されないが、段差を解消するという観点からすれば、ゴム硬度(ゴムの硬さ)が20〜40度程度のものが好ましい。また、取り扱いやすさ、段差吸収性能を考慮すれば、ゴムシートの厚さは5〜100μm程度が好ましい。さらに、耐環境性を考慮すれば、ゴムシートの材質は、シリコンゴム、フッ素ゴムのような材質、あるいは通常のゴムであれば各メーカーにおける耐環境性を有するグレードのものが好ましい。
【0035】
以上説明した本実施形態の高圧タンク1においては、シート繊維71を利用して段差を抑制したフープ層70Pを形成することにより、繊維70を巻回する手法に比べて高速かつ確実に、しかも段差のない状態で当該層の下層を完全に被覆することができる。これによれば、当該フープ層70Pに生じうる段差に起因してヘリカル層70Hが損傷するといった事態を効果的に抑制することができる。また、シート繊維71を利用した場合、ライナ20の外側に当該シート繊維71を筒状に巻き付けることによって段差が抑制されたフープ層70Pを形成することができるので、当該高圧タンク1の生産性と耐久性の向上を同時に図ることが可能である。
【0036】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述した各実施形態では、繊維シート71を利用してフープ層70Pを形成し、さらに場合によってはゴムシートを介在させたが、これら以外の構造、例えば層間に硬化性液状ゴム(一例として、スリーボンド製TB−1280)72を塗布した構造とすることもできる(図9参照)。これによれば、繊維70どうしのオーバーラップにより段差(凹凸)が生じている場合にも、かかる段差を解消し、これによってヘリカル層が損傷するおそれを低減させることができる。また、この手法は、繊維70を用いたFW法を維持しつつ段差を解消することを可能とするものであるため、新たに設備投資を実施しなくて済むという利点もある。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、FRP層を有するタンク(高圧ガス容器)に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0038】
1…高圧タンク(タンク)、20…ライナ、21…FRP層、70…繊維(繊維束)、70H…ヘリカル層、70P…フープ層、71…シート繊維(段差抑制部材)、72…硬化性液状ゴム(段差抑制部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクおよびその製造方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、水素ガス等が高圧で充填されるタンクにおける構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
水素等の貯蔵に利用されるタンク(高圧ガス容器)として、ライナ(タンク内容器)の外周にフープ層とヘリカル層とが積層されたFRPの補強層を備えるものが利用されている(例えば特許文献1参照)。フープ層は、例えば炭素繊維などの繊維束がフープ巻(タンク胴体部においてタンク軸にほぼ垂直に巻き付ける巻き方)されて形成された層であり、ヘリカル層は、繊維束がヘリカル巻(タンク胴体部およびタンクドーム部に繊維束を螺旋状に巻き付ける巻き方)されて形成された層である(本願の図2、図10参照)。
【0003】
また、フープ層、ヘリカル層、さらにインプレーン層(タンク胴体部およびタンクドーム部に繊維束を直線状に巻き付けるインプレーン巻によって形成された層)からなる補強層を備えた高圧ガス容器として、滑り止め防止のためにライナと補強層との間にシート状のプリプレグ(炭素繊維、ガラス繊維等の織物やシートに、半硬化の熱硬化性樹脂(一般的にはエポキシ樹脂)をあらかじめ含浸させたシート)が設けられているものも提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−340291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のごとき従来のタンク(高圧ガス容器)においては、フープ層に生じうる段差に起因してヘリカル層が損傷するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、フープ層に生じうる段差に起因してヘリカル層が損傷することを抑制しうるタンクおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。従来、タンクを製造するに際し、タンク軸方向に対して様々な角度で繊維束を巻回し、フープ層やヘリカル層を積層させるフィラメントワインディング(FW)法によりFRP層を形成することが行われている(図10参照)。これらのうち、特にフープ層を形成する際には、下層(タンク内側に位置する層)を完全に繊維束で覆うことがタンク強度向上の点で有効であることから、隣接する繊維束どうしをオーバーラップさせ、確実に下層を被覆することが一般的に行われている(図11参照)。ところが、このオーバーラップにより生じるフープ層の凹凸が、上層のヘリカル層の繊維に曲げ方向の応力を発生させる。一般に、繊維は、引っ張られた場合よりも曲げ方向の外力を受けた場合のほうが圧倒的に弱いことから、当該曲げの部分を基点にして破壊が生じ、タンクが設計値以下の圧力で破壊してしまうおそれがある。この点、生産性を維持しつつ、繊維束のオーバーラップの排除と確実な下層被覆とを低コストで両立させることに着目してさらに検討した本発明者は、かかる課題の解決に結び付く新たな知見を得るに至った。
【0008】
本発明はかかる知見に基づくもので、ライナと、該ライナの外周に形成されるFRP層とを有するタンクにおいて、FRP層が、ライナの外周に繊維束が巻回されて形成されるヘリカル層と、段差抑制部材を含むフープ層とから形成されているというものである。段差抑制部材は例えばシート繊維、あるいはゴム製の部材である。段差抑制部材がシート繊維である場合、FRP層が、ライナの外周に繊維束が巻回されて形成されるヘリカル層と、該ヘリカル層とともに積層されたシート繊維からなるフープ層とから形成されていることが好ましい。
【0009】
上述したように、繊維束を用いたフィラメントワインディング法でフープ層を形成する場合、オーバーラップ(重なり)がない状態で、尚かつ隙間なく繊維束を高速で巻回していくことは一般に難しい。この点、本発明では、例えばシート繊維を利用して段差を抑制したフープ層を形成することにより、繊維束を巻回する手法に比べて高速かつ確実に、しかも段差のない状態で下層を完全被覆することができる。したがって、本発明を適用することによって生産性向上とタンク耐久性向上の両立が可能となる。
【0010】
また、シート繊維を用いる場合、当該シート繊維からなるフープ層が、ヘリカル層の少なくとも一つに対して内層側と外層側とに設けられて当該ヘリカル層を挟んでいることが好ましい。さらに、ヘリカル層とフープ層との間にゴム製部材が少なくとも一つ介在していることも好ましい。
【0011】
また、本発明にかかる方法は、ライナと、該ライナの外周に形成されるFRP層とを有するタンクの製造方法において、ライナの外周に繊維束を巻回して形成されるヘリカル層と、シート繊維からなるフープ層とを積層してFRP層を形成する、というものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フープ層に生じうる段差に起因してヘリカル層が損傷するという事態を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】高圧タンクの構造を示す断面図および部分拡大図である。
【図2】高圧タンクの構造を示す断面図である。
【図3】高圧タンクの口金付近の構造例を示す断面図である。
【図4】平滑ヘリカル層におけるヘリカル巻の一例を示す斜視図である。
【図5】平滑ヘリカル層におけるヘリカル巻の一例を示す、タンク軸方向に沿った投影図である。
【図6】本発明の一実施形態であって、シート繊維をライナの外側に巻き付けてフープ層を形成する様子を示す図である。
【図7】シート繊維の形状例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態を示す高圧タンクのFRP層の断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態を示す高圧タンクのFRP層の断面図である。ヘリカル層を形成する繊維束を巻回する際のフィラメントワインディング装置の平面図である。
【図10】繊維束により形成されるフープ層およびヘリカル層について説明するための参考図である。
【図11】図10に示したフープ層とヘリカル層の交差部分における断面を拡大して示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1〜図8に本発明にかかるタンクおよびその製造方法の実施形態を示す。以下では、燃料電池システム等において利用される水素燃料供給源としての高圧水素タンク(以下、高圧タンクともいう)1を挙げ、当該高圧タンク1をFRP成形する場合を例示しつつ説明する。
【0016】
高圧タンク1は、例えば両端が略半球状である円筒形状のタンク本体10と、当該タンク本体10の長手方向の一端部に取り付けられた口金11を有する。なお、本明細書では略半球状部分をドーム部、筒状胴体部分をストレート部といい、それぞれ符号1d,1sで表す(図1、図2等参照)。また、本実施形態で示す高圧タンク1は両端に口金11を有するものであるが、説明の便宜上、当該高圧タンク1の要部を示す図3中のX軸の正方向(矢示する方向)を先端側、負方向を基端側として説明を行う。このX軸に垂直なY軸の正方向(矢示する方向)がタンク外周側を指している。
【0017】
タンク本体10は、例えば二層構造の壁層を有し、内壁層であるライナ20とその外側の外壁層である樹脂繊維層(補強層)としての例えばFRP層21を有している。FRP層21は、例えばCFRP層21cのみ、あるいは該CFRP層21cおよびGFRP層21gによって形成されている(図1参照)。
【0018】
ライナ20は、タンク本体10とほぼ同じ形状に形成される。ライナ20は、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、またはその他の硬質樹脂などにより形成されている。あるいは、ライナ20はアルミニウムなどで形成された金属ライナであってもよい。
【0019】
ライナ20の口金11のある先端側には、内側に屈曲した折返し部30が形成されている。折返し部30は、外側のFRP層21から離間するようにタンク本体10の内側に向けて折り返されている。折返し部30は、例えば折り返しの先端に近づくにつれて次第に径が小さくなる縮径部30aと、当該縮径部30aの先端に接続され径が一定の円筒部30bとを有している。この円筒部30bによりライナ20の開口部が形成されている。
【0020】
口金11は、略円筒形状を有し、ライナ20の開口部に嵌入されている。口金11は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、例えばダイキャスト法等により所定の形状に製造されている。口金11は射出成形された分割ライナに嵌め込まれている。また、口金11は例えばインサート成形によりライナ20に取り付けられてもよい。
【0021】
また、口金11は、例えば先端側(高圧タンク1の軸方向の外側)にバルブ締結座面11aが形成され、そのバルブ締結座面11aの後方側(高圧タンク1の軸方向の内側)に、高圧タンク1の軸に対して環状の凹み部11bが形成されている。凹み部11bは、軸側に凸に湾曲しR形状になっている。この凹み部11bには、同じくR形状のFRP層21の先端部付近が気密に接触している。
【0022】
例えばFRP層21と接触する凹み部11bの表面には、例えばフッ素系の樹脂などの固体潤滑コーティングCが施されている。これにより、FRP層21と凹み部11bとの間の摩擦係数が低減されている。
【0023】
口金11の凹み部11bのさらに後方側は、例えばライナ20の折返し部30の形状に適合するように形成され、例えば凹み部11bに連続して径の大きい鍔部(ツバ部)11cが形成され、その鍔部11cから後方に一定径の口金円筒部11dが形成されている。上記ライナ20の折返し部30の縮径部30aは、鍔部11cの表面に密着し、円筒部30bは、口金円筒部11dの表面に密着している。円筒部30bと口金円筒部11dとの間には、シール部材40、41が介在している。
【0024】
バルブアッセンブリ50は、外部のガス供給ライン(供給路22)と高圧タンク1の内部との間で燃料ガスの給排を制御するものである。バブルアッセンブリ50の外周面と口金11の内周面との間には、シール部材60、61が介在されている。
【0025】
FRP層21は、例えばフィラメントワインディング成形(FW成形)により、ライナ20の外周面と口金11の凹み部11bに、樹脂を含浸した繊維(補強繊維)70を巻き付け、当該樹脂を硬化させることにより形成されている(なお、後述するように本実施形態では一部繊維70の代わりに繊維シートを利用する)。FRP層21の樹脂には、例えばエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が用いられる。また、繊維70としては、炭素繊維(CF)、金属繊維などが用いられる。フィラメントワインディング成形の際には、タンク軸を中心としてライナ20を回転させながら繊維70のガイドをタンク軸方向に沿って動かすことにより当該ライナ20の外周面に繊維70を巻き付けることができる。なお、実際には複数本の繊維70が束ねられた繊維束がライナ20に巻き付けられることが一般的であるが、本明細書では繊維束である場合を含めて単に繊維と呼ぶ。
【0026】
次に、タンク1における繊維(例えば炭素繊維CF)70の構造的曲げを低減するための一般的な繊維巻きパターンについて説明しておく(図2等参照)。
【0027】
上述したように、タンク1は、ライナ20の外周に繊維(例えば炭素繊維)70を巻き付け、樹脂を硬化させることにより形成されている。ここで、繊維70の巻き付けにはフープ巻とヘリカル巻があり、樹脂がフープ巻された層によってフープ層(図8において符号70Pで示す)が、ヘリカル巻された層によってヘリカル層(図4、図5において符号70Hで示す)がそれぞれ形成される。前者のフープ巻は、タンク1のストレート部(タンク胴体部分)に繊維70をコイルスプリングのように巻くことによって当該部分を巻き締め、気体圧によりY軸正方向へ向かう力(径方向外側へ拡がろうとする力)に対抗するための力をライナ20に作用させるものである。一方、後者のヘリカル巻はドーム部を巻き締め方向(タンク軸方向の内側向き)に巻き締めることを主目的とした巻き方であり、当該ドーム部に引っ掛かるようにして繊維70をタンク1に対し全体的に巻き付けることにより、主として当該ドーム部の強度向上に寄与する。なお、コイルスプリングのように巻かれた繊維70の弦巻(つるまき)線(ネジにおけるネジ山の線)と、当該タンク1の中心線(タンク軸12)とのなす角度(のうちの鋭角のほう)が繊維70の「タンク軸(12)に対する巻角度」であり、図2において符号θho、θheで示す。
【0028】
これら種々の一般的な巻き付け方のうち、フープ巻は、ストレート部において繊維70をタンク軸にほぼ垂直に巻くものであり、その際の具体的な巻角度は例えば80〜90°である(図2参照)。ヘリカル巻(または、インプレーン巻)は、ドーム部にも繊維70を巻き付ける巻き方であり、タンク軸に対する巻角度がフープ巻の場合よりも小さい(図2参照)。ヘリカル巻を大きく2つに分ければ高角度ヘリカル巻と低角度ヘリカル巻の2種類があり、そのうち高角度ヘリカル巻はタンク軸に対する巻角度が比較的大きいもので、その巻角度の具体例は70〜80°である。一方、低角度ヘリカル巻は、タンク軸に対する巻角度が比較的小さいもので、その巻角度の具体例は5〜30°である。
【0029】
続いて、本実施形態における高圧タンク1のFRP層21の構成について説明する。
【0030】
本実施形態の高圧タンク1においては、段差抑制部材を含むフープ層70Pが形成されている。段差抑制部材は当該フープ層70Pに生じうる段差を抑制するという作用を奏するもので、シート繊維やゴム製部材などで構成することができる。例えば本実施形態では、あらかじめシート状に形成されているシート繊維71をこの段差抑制部材として用い、ライナ20の周囲に筒状に巻き付けることによって段差が抑制されたフープ層70Pを形成している(図6参照)。一方、ヘリカル層70Hは、従前と同様に、繊維70を巻回することによって形成することとしている。
【0031】
このようにシート繊維71を利用してフープ層70Pを形成する場合、繊維70を巻回する従前の方法と比べると、より高速かつ確実に、しかも段差なく下層を完全に被覆することが可能である。このため、高圧タンク1の製造の際の生産性向上とタンク耐久性向上を図ることができる。また、フープ層70Pに生ずる応力はもっぱらフープ方向の引っ張り応力(フープ応力)であり、当該シート繊維71が損傷しにくいこともタンク強度や耐久性を向上させる一因となる。したがって、一方向の引っ張り強度にすぐれる異方性のシート繊維71を利用する場合、当該引っ張りにすぐれる方向を周方向(フープ巻の方向)に一致させることにより、強い巻き締め力を発揮しうるフープ層70Pを形成することができる(図6参照)。このようなシート状の一方向強化材を用いる場合、プリプレグ、樹脂含浸(wet法)のいずれのシートを用いてもよい。また、強化材の幅は、高圧タンク1のストレート部1sのみを覆うもの、ストレート部1sに加えてドーム部1dの一部または全部を覆うもののいずれでもよい。
【0032】
また、本実施形態では矩形のシート繊維71を利用するが(図6参照)、この他、台形等の形状のシート繊維71を用いることもできる。シート繊維71を例えば図7に示すような台形と、両側の略三角形の部分でドーム部1dを覆うこととすれば、当該シート繊維71の外周面において、ストレート部1sとドーム部1dとの間に段差がない状態でシート繊維71を巻き付けることが可能である。
【0033】
また、上述のごときシート繊維71を巻き付ける際は、ヘリカル層70Hの上下のうちの少なくとも一方、好ましくは両方にシート繊維71を巻き付けてフープ層70Pを形成することが好ましい。例えば本実施形態では、当該シート繊維71からなるフープ層70Pが、ヘリカル層70Hの少なくとも一つに対して内層側と外層側とに配置して当該ヘリカル層70Hを挟むようにしている(図8参照)。
【0034】
さらに、ヘリカル層70Hとフープ層70Pとの間にゴムシート等のゴム製部材を介在させることも好ましい。これにより、フープ層70Pに段差が生じることをさらに抑制し、あるいはフープ層の段差がヘリカル層に与えうる影響をさらに抑制することが可能となる。例えばゴムシートを用いる場合、材質や性状は特に限定されないが、段差を解消するという観点からすれば、ゴム硬度(ゴムの硬さ)が20〜40度程度のものが好ましい。また、取り扱いやすさ、段差吸収性能を考慮すれば、ゴムシートの厚さは5〜100μm程度が好ましい。さらに、耐環境性を考慮すれば、ゴムシートの材質は、シリコンゴム、フッ素ゴムのような材質、あるいは通常のゴムであれば各メーカーにおける耐環境性を有するグレードのものが好ましい。
【0035】
以上説明した本実施形態の高圧タンク1においては、シート繊維71を利用して段差を抑制したフープ層70Pを形成することにより、繊維70を巻回する手法に比べて高速かつ確実に、しかも段差のない状態で当該層の下層を完全に被覆することができる。これによれば、当該フープ層70Pに生じうる段差に起因してヘリカル層70Hが損傷するといった事態を効果的に抑制することができる。また、シート繊維71を利用した場合、ライナ20の外側に当該シート繊維71を筒状に巻き付けることによって段差が抑制されたフープ層70Pを形成することができるので、当該高圧タンク1の生産性と耐久性の向上を同時に図ることが可能である。
【0036】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述した各実施形態では、繊維シート71を利用してフープ層70Pを形成し、さらに場合によってはゴムシートを介在させたが、これら以外の構造、例えば層間に硬化性液状ゴム(一例として、スリーボンド製TB−1280)72を塗布した構造とすることもできる(図9参照)。これによれば、繊維70どうしのオーバーラップにより段差(凹凸)が生じている場合にも、かかる段差を解消し、これによってヘリカル層が損傷するおそれを低減させることができる。また、この手法は、繊維70を用いたFW法を維持しつつ段差を解消することを可能とするものであるため、新たに設備投資を実施しなくて済むという利点もある。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、FRP層を有するタンク(高圧ガス容器)に適用して好適なものである。
【符号の説明】
【0038】
1…高圧タンク(タンク)、20…ライナ、21…FRP層、70…繊維(繊維束)、70H…ヘリカル層、70P…フープ層、71…シート繊維(段差抑制部材)、72…硬化性液状ゴム(段差抑制部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライナと、該ライナの外周に形成されるFRP層とを有するタンクにおいて、
前記FRP層が、前記ライナの外周に繊維束が巻回されて形成されるヘリカル層と、段差抑制部材を含むフープ層とから形成されていることを特徴とする、タンク。
【請求項2】
前記段差抑制部材がシート繊維であり、前記FRP層が、前記ライナの外周に繊維束が巻回されて形成されるヘリカル層と、該ヘリカル層とともに積層された前記シート繊維からなるフープ層とから形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のタンク。
【請求項3】
前記シート繊維からなるフープ層が、前記ヘリカル層の少なくとも一つに対して内層側と外層側とに設けられて当該ヘリカル層を挟んでいる、請求項2に記載のタンク。
【請求項4】
ヘリカル層とフープ層との間にゴム製部材が少なくとも一つ介在している、請求項2または3に記載のタンク。
【請求項5】
前記段差抑制部材がゴム製である、請求項1に記載のタンク。
【請求項6】
ライナと、該ライナの外周に形成されるFRP層とを有するタンクの製造方法において、
前記ライナの外周に繊維束を巻回して形成されるヘリカル層と、シート繊維からなるフープ層とを積層して前記FRP層を形成する、タンクの製造方法。
【請求項1】
ライナと、該ライナの外周に形成されるFRP層とを有するタンクにおいて、
前記FRP層が、前記ライナの外周に繊維束が巻回されて形成されるヘリカル層と、段差抑制部材を含むフープ層とから形成されていることを特徴とする、タンク。
【請求項2】
前記段差抑制部材がシート繊維であり、前記FRP層が、前記ライナの外周に繊維束が巻回されて形成されるヘリカル層と、該ヘリカル層とともに積層された前記シート繊維からなるフープ層とから形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のタンク。
【請求項3】
前記シート繊維からなるフープ層が、前記ヘリカル層の少なくとも一つに対して内層側と外層側とに設けられて当該ヘリカル層を挟んでいる、請求項2に記載のタンク。
【請求項4】
ヘリカル層とフープ層との間にゴム製部材が少なくとも一つ介在している、請求項2または3に記載のタンク。
【請求項5】
前記段差抑制部材がゴム製である、請求項1に記載のタンク。
【請求項6】
ライナと、該ライナの外周に形成されるFRP層とを有するタンクの製造方法において、
前記ライナの外周に繊維束を巻回して形成されるヘリカル層と、シート繊維からなるフープ層とを積層して前記FRP層を形成する、タンクの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2010−265931(P2010−265931A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115839(P2009−115839)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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