説明

テープ接着装置およびテープ接着方法

【課題】 ワークに対してテープ部材を良好に接着でき、加熱および加圧処理も行うことができ、接着強度向上も図れるテープ接着装置、テープ接着方法を提供すること。
【解決手段】 テープ部材12をワーク11に対して接着するテープ接着装置10であり、上面にワーク11を載置する載置手段35と、載置手段35およびこの載置手段35に載置されるワーク11を内在させると共に、内部を密封状態で閉塞可能な圧力室50と、ワーク11の法線方向に向かい、載置手段35を移動させる移動手段30と、圧力室50の内部に設けられると共に、ワーク11の法線方向における上部でテープ部材12を保持するテープ保持手段70と、圧力室50の内部を真空吸引する吸引手段84と、圧力室50の内部に空気を加圧状態で導入する加圧手段87と、載置手段35に載置されているワーク11を加熱する加熱手段60と、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対してテープ部材を接着させるテープ接着装置およびテープ接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程においては、半導体ウエハ(以下、ウエハという。)の表面に回路パターンを形成した後に、ウエハ裏面を研磨して薄型化を図り、形成される半導体チップの小型化・薄型化に対応することがある。また、薬液を用いてケミカルエッチング処理を施して、該ウエハの薄型化を図る製造工程を行う場合もある。
【0003】
かかる製造工程においては、ウエハ表面に粘着状の保護テープ(以下、テープ部材という。)を貼り付けている。それによって、ウエハ表面が汚染されたり、該ウエハの表面に傷がついて回路が損傷するのを防いでいる。
【0004】
このようなウエハ表面に、テープ部材を接着させるテープ接着装置としては、特許文献1記載のものがある。この特許文献1記載のテープ接着装置では、本体側の部屋および上蓋側の部屋の両方とも真空にしている状態から、上蓋側の部屋を大気圧に切り替える。それによって、上蓋側の部屋と本体側の部屋との間に差圧が生じ、その差圧によって、ゴムシートが本体側の部屋に膨らむ。そして、この膨らみによって、ゴムシートがテープ部材を押し、ワークに対してテープ部材を接着させている。
【0005】
また、他の貼付装置としては、特許文献2記載のものがある。この特許文献2記載のものでは、第1の真空室と第2の真空室との間の差圧を利用して、平滑性の高い基台の中央部をテープ部材側に向けて撓ませている。これと共に、中央部を撓ませた基台を、ウエハに貼付されたテープ部材に押し付けながら、昇降装置の駆動によりウエハを持ち上げている。このようにすることで、テープ部材の中央側から外方に向けて空気を押し出しながら、ウエハに対してテープ部材を接着している。
【0006】
【特許文献1】特開2003−7808号公報(段落番号0007、図2〜4参照)
【特許文献2】特開2000−349047号公報(要約、図1〜図5参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1記載の構成は、着想レベルに留まっていて、その構成が具体的でない。そのため、かかる構成に基づいて実際に実施しようとした場合には、種々の不具合が生じる。例えば、特許文献1記載の構成では、ゴムシートが上部に位置しているため、該ゴムシートの自重による弛みを除去するためには、ゴムシートを張る際の張力をかなり高める必要がある。このため、ゴムシートの取付作業が困難となる、という課題を有している。
【0008】
特に、テープ部材の接着を効率的に行うためには、テープ部材をウエハに接着する作業を開始する初期位置では、ゴムシートに対して接触しているテープ部材と、ウエハとの間の隙間が小さいのが通常である。かかる隙間が小さい状態において、ゴムシートに弛みが生じると、真空吸引を行う前の段階から、ウエハにテープ部材が接着し、かかる接着面に気泡が入り込む、という不具合が生じることがある。
【0009】
また、特許文献1記載の構成では、複数の押しネジが設けられていて、これらの押しネジの全てを回転させる必要があり、押しネジを同時に回転させる必要がある場合、困難な作業となる。さらに、特許文献1記載の構成では、上蓋を取り除いた状態で、テープ部材やウエハを設置する必要がある。このため、工数が余分に掛かるものとなっている。
【0010】
また、特許文献2記載の構成では、第1の真空室と第2の真空室との間の差圧を利用して、ガラス板等の基台を撓ませて、ウエハが貼付されたテープ部材に対して基台を接着させると共に、この接着状態から、さらにウエハが貼付されたテープ部材および基台を持ち上げている。このため、2段階の接着工程を有し、手間が掛かり、コスト的にも好ましくない。
【0011】
また、上述の特許文献1および2に開示されているテープ接着装置では、テープ部材を加熱するための構成については、開示されていない。しかしながら、テープ部材をウエハに貼付する場合、テープ部材の粘着層を加熱により柔軟にする方が、凹凸の隙間部分に該粘着層を入り込ませることができ、接着性が良好になるという利点があり、好ましい。そのためには、テープ接着装置がヒータを備える構成となる。
【0012】
しかしながら、上述の特許文献1および2に開示されているテープ接着装置のように、ゴムシートを採用する構成では、該ゴムシートの耐熱性の関係上、ヒータの配置箇所が、ゴムシートが配置されている側とは反対側の上方側等に、限定されてしまう。その場合には、ウエハよりもテープ部材が先に加熱されてしまうため、張設状態にあるテープ部材が熱によって垂れてしまう等、好ましくない。
【0013】
さらに、テープ部材とウエハとの接着性を一層高めるためには、加圧を行うことが考えられる。しかしながら、上述の特許文献1および2に開示されているテープ接着装置では、テープ部材とウエハとの接着後に、両者を加圧するための構成については、開示されていない。特に、ゴムシートを用いる場合、加圧によるゴムシートの膨張を防ぐための手段が必要となり、装置構成が一層複雑化する虞がある。
【0014】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、ワークに対してテープ部材を良好に接着できると共に、加熱および加圧処理も行うことができ、接着強度の向上を図ることが可能なテープ接着装置、およびテープ接着方法を提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、テープ部材をワークに対して接着するテープ接着装置において、ワークを載置する載置手段と、載置手段およびこの載置手段に載置されるワークを内在させると共に、内部を密封状態で閉塞可能な圧力室と、ワークの法線方向に向かい、載置手段を移動させる移動手段と、圧力室の内部に設けられると共に、ワークに対し、その法線方向において離間した部位でテープ部材を保持するテープ保持手段と、圧力室の内部を真空吸引する吸引手段と、圧力室の内部に空気を加圧状態で導入する加圧手段と、載置手段に載置されているワークを加熱する加熱手段と、を具備するものである。
【0016】
このように構成した場合には、載置手段にワークを載置し、テープ保持手段にテープ部材を保持させる。その状態で吸引手段を作動させて、圧力室を真空吸引すると、圧力室の内部の圧力が低下し、真空に近い状態となる。この状態で、移動手段を作動させ載置手段をワークに向かって移動させると、ワークがテープ部材に接着される。この場合、加熱手段が作動し、載置手段を介してワークを加熱する。すると、テープ部材(特に、粘着層)が柔軟となり、ワークと載置手段との間の接着性を高めることが可能となる。その後、加圧手段を作動させ、圧力室の圧力を高めれば、ワークとテープ部材との間で圧着が行われる。それにより、接着が為されているワークとテープ部材との間の微小な隙間を潰すことができ、一層接着性を高めることができる。
【0017】
このため、例えばワークの表面に凹凸が生じている場合でも、加熱手段での加熱によりテープ部材を柔軟にし、その後加圧手段で加圧することにより、その凹凸に倣ってテープ部材をワークに対して接着させることができる。それにより、一層接着性を高めることができる。
【0018】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、吸引手段、加圧手段、移動手段および加熱手段の作動を制御する制御手段を具備すると共に、この制御手段は、吸引手段を作動させて、圧力室の真空吸引を行い、真空吸引の後に、移動手段を作動させて、ワークをテープ部材に向かって移動させて、ワークをテープ部材に接着させ、テープ部材の接着後に、加圧手段を作動させて圧力室の内部に空気を加圧状態で導入するものである。
【0019】
このように構成した場合には、制御手段による作動制御により、まず吸引手段の作動が開始され、圧力室の真空吸引が行われる。そして、かかる真空吸引の後に、制御手段による作動制御により、移動手段が作動し、ワークをテープ部材に向けて移動させる。それにより、ワークをテープ部材に対して接着させることができる。また、テープ部材の接着後に、加圧手段を作動させ、ワークとテープ部材との間で圧着が行われ、ワークに対するテープ部材の接着性を高めさせることができる。
【0020】
さらに、他の発明は、上述の発明に加えて更に、制御手段は、吸引手段による圧力室の真空吸引に先立って、加熱手段を作動させて、予めワークを加熱するものである。
【0021】
このように構成した場合には、吸引手段での真空吸引に先立ち、加熱手段の作動によりワークが加熱される。そのため、テープ部材のワークへの接着に際しては、加熱された状態のワークをテープ部材に接着させることができる。それにより、テープ部材を柔軟にすることができ、ワークに対するテープ部材の接着性を高めることが可能となる。
【0022】
また、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、テープ接着装置は、凹嵌部を有する本体部と、この本体部に対して開閉自在に設けられると共に凹部を有する蓋体部とを具備していて、蓋体部を本体部に対して閉じた場合に、蓋体部と本体部との間を気密に閉塞するシール部材が、これら蓋体部と本体部との境界部分に設けられ、移動手段の摺動部は、孔部を通過して圧力室の内部に延伸し、かつ該摺動部と孔部との間には、これらの間を気密に封止する封止部材が設けられると共に、蓋体部の閉塞状態において、シール部材および封止部材により封止されると共に凹嵌部および凹部を備える圧力室が形成されるものである。
【0023】
このように構成した場合には、蓋体部が本体部に対して開閉自在となる。このようにすれば、蓋体部の開閉によって、ワークやテープ部材の設置、およびテープ部材が接着された状態のワークの取り出しを、容易に行うことができる。また、シール部材の存在により、蓋体部と本体部との間を気密に閉塞することができる。この場合、封止部材により、移動手段の摺動部と孔部との間が封止される。このため、吸引手段および加圧手段の作動時には、圧力室の内部を、真空吸引および加圧することが可能となる。また、蓋体部を本体部に対して閉じた場合には、凹嵌部と凹部の存在により、蓋体部と本体部との間に圧力室が形成される。
【0024】
さらに、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、蓋体部は、本体部に当接すると共に、該本体部に対して開閉可能な固定蓋と、固定蓋に対して回転自在に設けられる回転蓋と、を具備すると共に、本体部と回転蓋との間には、回転蓋の回転により係脱可能なカム機構が設けられていて、このカム機構の存在により、蓋体部を本体部に対してロック可能としているものである。
【0025】
このように構成した場合には、固定蓋に対して回転蓋を回転させると、カム機構の係脱が為される。それにより、蓋体部を本体部に対して、簡単にロックすることが可能となり、蓋体部が加圧時の圧力に抗することができる。
【0026】
また、他の発明は、上述の発明に加えて更に、加熱手段は、ラバーヒータを具備するものである。このように構成した場合には、ワークを面状に加熱することができ、ワークの均一な加熱を行うことが可能となる。それによって、ワークをテープ部材に対して、均一に接着させることが可能となる。
【0027】
さらに、他の発明は、上述の各発明に加えて更に、ワークは、載置手段に対してワーク固定用治具を介して載置されると共に、このワーク固定用治具には、その径方向の外周側に、該ワーク固定用治具の他の部分よりもテープ部材に対する粘着性の低い非粘着コーティングが施されているものである。
【0028】
このように構成した場合には、ワークは載置手段に対して、ワーク固定用治具を介して載置されるため、ワークの位置ずれを防止することができる。また、ワーク固定用治具の外周側には、非粘着コーティングが施されている。そのため、テープ部材が接触しても、該テープ部材がワーク固定用治具に接着されるのが防止される。
【0029】
また、他の発明は、テープ部材をワークに対して接着するテープ接着方法において、ワークを載置する載置手段を加熱手段で加熱する加熱工程と、載置手段にワークを載置した状態で、該載置手段およびワークを内在させかつ内部を密封状態で閉塞可能な圧力室を、吸引手段を用いて真空吸引を行う吸引工程と、吸引工程によって、圧力室が設定された真空度に到達したことを検出する真空到達度検出工程と、真空到達度検出工程によって設定された真空度に到達したことを検出した後に、ワークの法線方向に向かって載置手段を移動させる移動手段を作動させ、テープ部材に対してワークを近付けて、ワークをテープ部材に接着させる接着工程と、接着工程における接着を予め設定された時間だけ実行した後に、加圧手段を作動させて圧力室の内部に空気を加圧状態で導入する加圧工程と、を具備するものである。
【0030】
このように構成した場合には、加熱工程では、ワークを載置する載置手段を予め加熱する。そして、吸引工程では、載置手段にワークを載置した状態で、吸引手段により圧力室を真空吸引する。また、真空到達度検出工程では、圧力室が設定された圧力に到達したか否かが検出され、設定された圧力に到達したことが検出された後に、接着工程では、移動手段によって載置手段を作動させ、テープ部材に対してワークを近付け、ワークをテープ部材に接着させる。続いて、加圧工程では、加圧手段を作動させて圧力室の内部に空気を加圧状態で導入する。
【0031】
このようにした場合、加熱手段が作動し、載置手段を介してワークを加熱するため、テープ部材(特に、粘着層)が柔軟となり、ワークと載置手段との間の接着性を高めることが可能となる。その後、加圧手段を作動させ、圧力室の圧力を高めれば、接着が為されているワークとテープ部材との間の微小な隙間を潰すことができる。このため、例えばワークの表面に凹凸が生じている場合でも、加熱手段での加熱によりテープ部材を柔軟にし、その後加圧手段で加圧することにより、ワークとテープ部材との間で圧着が行われる。それにより、凹凸に倣ってテープ部材をワークに対して接着させることができ、一層接着性を高めることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、ワークに対してテープ部材を良好に接着できると共に、加熱および加圧処理も行うことができる。また、接着強度の向上を図ることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施の形態に係るテープ接着装置10について、図1から図9に基づいて説明する。図1は、図2に示す蓋体部100を透視した状態の本体部20の平面図である。また、図2は、テープ接着装置10において、蓋体部100を閉じた状態を示すと共に回転蓋120を透視した状態を示す平面図である。また、図3はテープ接着装置10の一部の内部構成を透過した状態の正面図であり、図4は、同じく側面図である。さらに、図5は、図1のテープ接着装置10の排気系統及び制御系統の様子を簡略化して示す概略構成図である。
【0034】
図1に示すように、本体部20の平面形状は、例えば略正方形といった方形を為している。本体部20の底面には、複数(例えば4本)の支持脚21(図4参照)が取り付けられている。また、図3等に示すように、テープ接着装置10は、本体部20と、この本体部20に対して回動自在に設けられている蓋体部100とを有している。
【0035】
図3〜図5に示すように、本体部20の内部には、蓋体部100に対して近接対向する本体上面部22が設けられている。本体上面部22は、真空吸引時に負荷される圧力(特に蓋体部100側から負荷される垂直荷重)、および加圧時に負荷される圧力を受け止めるために、適切な強度を有した構成となっている。また、本体部20を支えると共にその一部となる側壁および底壁も、真空吸引時に負荷される圧力に、十分抗し得るだけの強度を有する構成である。
【0036】
また、図1、図3〜図5に示すように、本体上面部22のうち、外周側には、シール部材としてのシールリング23が取り付けられている。シールリング23は、Oリング状の部材であり、後述する蓋体部100のリング当接部113に当接する。それによって、テープ接着装置10の内部を、外部(大気)から密閉し、該テープ接着装置10の内部を真空吸引することを可能としている。
【0037】
なお、本実施の形態では、シールリング23の外径側には、さらにXリング24が取り付けられており、密閉性を一層高める構成を採用している。
【0038】
また、本体上面部22のうち、シールリング23よりも中央部側には、フレーム設置部22aが設けられている(図5参照)。フレーム設置部22aは、後述するフレーム支持部材27を設置するための部分である。なお、フレーム設置部22aは、その上方側(蓋体部100側)が吸引排気された場合でも、上方側に撓むのを防ぐため、十分な肉厚を有している。
【0039】
フレーム設置部22aのうち、径方向における略中央部分には、凹嵌部25が設けられている。凹嵌部25は、フレーム設置部22aよりも下方側に向かって窪んでいる部分であり、その平面形状は、略円形状を為している。凹嵌部25には、後述する取付板35、ウエハ用治具61等を介して、ワークとしてのウエハ11が位置する。そして、ウエハ11は、移動手段としてのシリンダ機構30の駆動によって上下動可能となっている。
【0040】
また、凹嵌部25の中央部分には、孔部26が設けられている。孔部26は、凹嵌部25を貫通するように設けられている。また、本実施の形態では、孔部26は円孔であると共に、この孔部26には、次に述べる拡径部33(ピストン32)が挿通される。そして、この拡径部33の外周面(摺動部に対応)が孔部26に沿って上下動することにより、ウエハ11をテープ部材12に対して接離させることが可能となる。なお、以下の説明においては、シールリング23、リング当接部113、フレーム設置部22a、拡径部33およびパッキン34等によって囲まれる空間を、圧力室50とする。
【0041】
ここで、シリンダ機構30の構成について、説明する。シリンダ機構30は、シリンダ31内にピストン32を挿通させていて、例えばシリンダ31内に空気を導入する等、空気圧の作用によってピストン32を上下動させるものである。この場合、ピストン32の上端側には、孔部26を塞ぎ、かつ摺動を安定化させるための拡径部33が設けられている。また、拡径部33の外周側には、封止部材としてのパッキン34が取り付けられている。そのため、拡径部33の外周面と孔部26の内周面との間には、パッキン34が介在し、圧力室50における圧力を維持することが可能となっている。
【0042】
なお、拡径部33は、ピストン32と同じように、孔部26を往復動可能となっている。このため、ピストン32に拡径部33を含めるようにしても良い。
【0043】
また、本体部20の内部には、支持板40が設けられている。この支持板40は、本体上面部22に対して、例えばネジやボルト等で固定される複数(本実施の形態では4本)の支柱41によって支持される。そして、この支持板40に対して、シリンダ31の底部が取り付けられる。また、シリンダ機構30は、空気圧によって作動させるものには限られず、油圧等、他の方式によって作動させるものであっても良い。
【0044】
また、拡径部33の上端部には、円盤状の取付板35(載置手段に対応)が取り付けられている。この取付板35の上面には、窪み36が設けられていて、この窪み36には、加熱手段としての、ラバーヒータ60が嵌め込まれている。ラバーヒータ60は、平面部材を具備し、面状に加熱可能なヒータである。本実施の形態では、ラバーヒータ60は、例えば窪み36に嵌まり込む、円盤状に設けられている。
【0045】
さらに、取付板35の上面には、該取付板35の上面側を覆うように、ワーク固定用治具としてのウエハ用治具61が取り付けられる。ウエハ用治具61は、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金等を材質とする円盤状の薄板部材であり、ラバーヒータ60により加熱される。図7に示すように、このウエハ用治具61には、複数箇所(本実施の形態では、4箇所)の位置決め部62が設けられている。位置決め部62は、ウエハ用治具61を、例えば略三角形状に切り欠くことにより形成されている。この位置決め部62には、ピン部材61aが位置する。それにより、ウエハ用治具61の周方向の位置決めが為される。
【0046】
また、ウエハ用治具61の上面には、ピン孔63が設けられている。ピン孔63には、ピン部材61bが挿通される。ピン孔63は、ウエハ用治具61の径方向の一方側に、例えば2つ並んで配置されている。それにより、このピン孔63にピン部材61bを差し込むと、差し込まれたピン部材61bは、ウエハ11のオリフラ11aに当接すると共に、位置決め部62に位置するピン部材61aも、ウエハ11の外周部分に当接する。それにより、ウエハ用治具61に対する、ウエハ11の位置決めが為される。
【0047】
なお、ウエハ用治具61には、ゴムシート64が設置される。ゴムシート64は、ウエハ11と略同一の形状を為している。このゴムシート64が、ウエハ用治具61とウエハ11との間に介在することにより、ウエハ用治具61等に凹凸が存在する場合でも、その凹凸を吸収することが可能となる。また、ウエハ用治具61と取付板35との間には、別途のプレート部材等を介在させるようにしても良い。また、ウエハ用治具61の外周部分には、テープ部材12に対する粘着力が低くなる、非粘着コーティングが施されている。このため、ウエハ用治具61の外周部分がテープ部材12に接触しても、テープ部材12とウエハ用治具61とが接着せず、剥がす等の余分な手間を省略することが可能となる。
【0048】
また、図5および図6に示すように、フレーム設置部22aには、フレーム支持部材27が取り付けられる。フレーム支持部材27は、例えばリング状を為している。このフレーム支持部材27には、複数の差込孔27a(図6参照)が設けられていて、該差込孔27aには、ピン部材28が差し込まれる。それにより、フレーム支持部材27の上方に向かい、ピン部材28が突出可能な構成となっている。
【0049】
なお、本実施の形態では、テープ接着装置10は、例えば5インチ、6インチ、8インチ等、種々の径のウエハ11に対して、テープ部材12の貼り付けを可能としている。このため、フレーム支持部材27には、種々の径のウエハ11へのテープ部材12の貼り付けに対応させた大きさのテープフレーム70を支持すべく、その大きさに応じた差込孔27aが複数設けられている。
【0050】
また、図7に示すように、ピン部材28の中には、テープフレーム70を受け止めて支持するためのピン部材28aと、テープフレーム70の回り止めの役割を果たすピン部材28bの2種類が存在する。このうち、回り止めの役割を果たすピン部材28bは、ピン部材28aよりも上方側に長く突出している。ピン部材28bは、テープフレーム70の切欠部72に位置し、該テープフレーム70の回転を防止する。
【0051】
また、図7に示すように、フレーム支持部材27には、テープ保持手段としてのテープフレーム70が設置される。テープフレーム70は、その上面にテープ部材12を張設可能としており、その外観は、円形状のウエハ11にテープ部材12を張設するために、略リング状に設けられている。また、テープフレーム70の中央部分には、ウエハ用治具61等を挿通させることが可能な挿通孔71が設けられている。この挿通孔71を、ウエハ用治具61およびウエハ11等が通過することにより、テープフレーム70に張設されているテープ部材12に対して、ウエハ11が接触可能となる。
【0052】
テープフレーム70の外周部分には、テープフレーム70を切り欠いた複数(本実施の形態では2つ)の切欠部72が設けられている。この切欠部72には、フレーム支持部材27の差込孔27aに差し込まれるピン部材28bが位置する。そのため、テープフレーム70の周方向における位置決めが為され、該テープフレーム70の回転が防止される。
【0053】
なお、本実施の形態では、ゴムシート64を介してウエハ用治具61の上面に搭載されるウエハ11は、その直径が6インチとなっている。しかしながら、ウエハ11のサイズは特に限定されず、例えば5インチ、8インチ、12インチ等、他のサイズであっても良い。なお、ウエハ11のサイズを変更する場合には、それに応じてウエハ用治具61、ゴムシート64、テープフレーム70等の他の部材のサイズも変更されることになる。しかしながら、例えば8インチウエハ等のテープフレーム70を、6インチのウエハ11の接着に際して利用しても良い。また、本実施の形態では、切欠部72の形状は、それぞれ異なると共に、ピン部材28bは、その直径が異なっている。それにより、テープフレーム70の周方向における取り付け位置が、一義的に定められる。
【0054】
また、図5に示すように、圧力室50を真空吸引/加圧するために、該圧力室50の内部には、空気管路80の端部側が配置されている。この空気管路80の一端部80aは、4本に分岐している(図5は、断面図のため、2本のみ表示)。そして、分岐している夫々の空気管路80の開口部81が、図5他に示すように、圧力室50の内部に存在している。なお、開口部81は、本実施の形態では、図1に示す平面図において、略90度間隔となるように配置されている。また、開口部81は、シールリング23の内部側であるフレーム設置部22aであってフレーム支持部材27とシールリング23の間に存在している。しかしながら、開口部81の位置は、この部位には限られず、例えば蓋体部100に設けるようにしても良い。
【0055】
また、空気管路80は、フレーム設置部22aを貫通していて、本体部20の下方において、または本体部20の外部において、分岐状態から1つの集合管82に合流している(図5参照)。また、集合管82には、ポンプ配管83の一端側が接続されている。ポンプ配管83の他端側は、真空ポンプ84に接続されていて、該真空ポンプ84の作動により、圧力室50の内部を真空吸引可能としている。また、ポンプ配管83の中途部には、第1の弁部材85が設けられている。第1の弁部材85は、開放/閉塞を切り替えることを可能としていると共に、図5において突出管部85a側への切り替え(大気導入側への切り替え)も可能となっている。この第1の弁部材85としては、例えば、ソレノイドにより開閉可能な、電磁弁を用いることが可能であるが、モータ等の他の駆動源を用いて開閉する方式であっても良い。
【0056】
また、集合管82には、コンプレッサ配管86の一端側も接続されている。コンプレッサ配管86の他端側は、コンプレッサ87に接続されていて、該コンプレッサ87の作動により、圧力室50の内部を加圧可能としている。また、コンプレッサ配管86の中途部には、第1の弁部材85と同様の、第2の弁部材88が設けられている。第2の弁部材88も、開放/閉塞を切り替えることを可能としていると共に、図5において突出管部88a側への切り替え(大気導入側への切り替え)も可能となっている。なお、第2の弁部材88も、電磁弁またはモータ等の駆動源により、開閉可能としている。
【0057】
なお、本実施の形態では、上述のように、真空ポンプ84と、コンプレッサ87とを別個に設け、これらをそれぞれ作動させることにより、圧力室50の真空吸引または加圧を行うことを可能としている。しかしながら、1台のポンプのみで真空吸引および加圧が可能な場合、真空ポンプ84およびコンプレッサ87に代えて、該1台のポンプのみを設けるようにしても良い。また、本実施の形態では、第1の弁部材85および第2の弁部材88は、大気導入側への切り替えが可能な、三方弁を用いている。しかしながら、第1の弁部材85および第2の弁部材88は、三方弁ではなく、開閉を単純に切り替え可能な弁部材を用いても良い。
【0058】
また、真空ポンプ84、空気管路80、集合管82、ポンプ配管83および第1の弁部材85等によって、吸引手段が構成される。さらに、コンプレッサ87、空気管路80、集合管82、コンプレッサ配管86および第2の弁部材88によって、加圧手段が構成される。
【0059】
また、上述のシリンダ機構30、真空ポンプ84、第1の弁部材85、コンプレッサ87、第2の弁部材88、後述する圧力計91およびセンサ92は、制御装置90に接続されていて、該制御装置90からの制御指令に対応した信号を受信した後に作動する。この制御装置90には、オン作動を行うための操作ボタン(不図示)が連結されている。このため、後述するセンサ92がオン作動を許可する蓋体部100の閉塞状態において、作業者が操作ボタンを押すと、真空ポンプ84が作動する。
【0060】
ここで、制御手段としての制御装置90は、初めに第1の弁部材85を開放側(真空ポンプ84と連通する側)に切り替えると共に、第2の弁部材88を閉塞側に切り替えた状態を維持する。この状態と共に、真空ポンプ84を作動させる。それにより、最初に圧力室50の内部を真空吸引することを可能としている。
【0061】
また、制御装置90は、真空吸引後にシリンダ機構30を作動させ、その後、作業者のボタン操作、または規定の時間が経過したと判断された場合に、今度は第1の弁部材85を閉塞側に切り替えると共に、第2の弁部材88を開放側(コンプレッサ87と連通する側)に切り替える。この切り替え後、コンプレッサ87を作動させる。それにより、圧力室50の内部を、今度は加圧することを可能としている。
【0062】
なお、上述の所定の真空度としては、約20Pa程度とする場合が、その一例として挙げられる。また、加圧する場合の圧力室50の圧力としては、約0.6MPaとする場合が、その一例として挙げられる。しかしながら、所定の真空度、および加圧時の所定の圧力は、これに限られるものではない。また、制御装置90は、接着が終了した後には、第1の弁部材85を大気導入側に切り替える作動と共に、真空ポンプ84を停止させるように、真空ポンプ84に対して制御指令を発するように構成しても良い。
【0063】
さらに、本実施の形態では、圧力計91が取り付けられている。この圧力計91は、本実施の形態では、2つ設けられている。かかる圧力計91のうちの1つは、圧力室50の内部の気圧を測定するためのものである(以下、必要に応じて圧力計91aという)。また、圧力計91のうちの他の1つは、上下動するシリンダ機構30の内部圧力を測定するためのものである(以下、必要に応じて圧力計91bという。)。なお、かかる2つの圧力計91a,91bも、制御装置90に接続されている。
【0064】
また、本体上面部22のうち、蓋体部100に近接する部位には、センサ92が設けられている。センサ92は、例えば磁気センサを用いていて、本体部20に対して蓋体部100が、所定だけ近接するまで閉じたか否かを検出するものである。なお、このセンサ92も、制御装置90に接続されていて、この制御装置90に対して蓋体部100が閉じているか否かの検出信号を送信する。そして、制御装置90は、蓋体部100が閉じている状態に対応した検出信号を受信したときのみ、真空ポンプ84等に対して作動に対応した信号を送信する。
【0065】
また、本体上面部22のうち、シールリング23よりも外径側の部分には、複数(本実施の形態では4つ)のカムブロック93が取り付けられている。カムブロック93は、金属のブロック状部材を一側面から凹形状となるように、くり抜いた構成となっており、このくり抜き部分が、ガイド溝94となっている。このガイド溝94は、蓋体部100側が開放して設けられている。また、ガイド溝94の上端面94aは、その一端側から他端側に向かうにつれて、緩やかに下方に向かって傾斜する、テーパ部を有している。そのため、後述するガイドローラ125をガイド溝94に入れ、後述するハンドル130を把持して回転させると、蓋体部100を本体上面部22側に押し付ける、ロックが行えるようになっている。なお、カムブロック93とガイドローラ125とにより、カム機構が構成されている。
【0066】
次に蓋体部100の構成について説明する。図3〜図5に示すように、蓋体部100は、固定蓋110と、回転蓋120と、ハンドル130と、を主要な構成要素としている。このうち、固定蓋110は、本体部20に対して蝶番111を介して接続されている。すなわち、蝶番111を支点として、固定蓋110は回動可能となっている。また、図2に示すように、固定蓋110には、支持部材112の一端側112aが取り付けられている。また、支持部材112の他端側112bは、本体上面部22に取り付けられている。支持部材112は、固定蓋110が本体部20に対して開放する状態を維持可能となっている。
【0067】
また、図3〜図5に示すように、固定蓋110のうち、本体部20のシールリング23に当接する部分は、リング当接部113となっている。リング当接部113は、シールリング23との当接によって、圧力室50を密閉する。なお、かかる密閉を良好にするために、リング当接部113は、本実施の形態では同一平面をなす、平板状の部分から構成されている。
【0068】
図3〜図5に示すように、固定蓋110のうち、本体部20と対向する対向面であって、リング当接部113よりも内径側の部位には、凹部114が形成されている。この凹部114は、リング当接部113よりも上方に向かって窪んだ状態に形成されている。この凹部114は、上述のフレーム設置部22aに対応する大きさを有している。このため、固定蓋110を閉じて、シールリング23がリング当接部113に当接する密閉状態となると、この凹部114、シールリング23、フレーム設置部22a、ピストン32およびパッキン34等で囲まれた空間が出現する。そして、この空間が、圧力室50となる。
【0069】
また、図5に示すように、固定蓋110の上面側かつ外周側には、レール体115が取り付けられている。レール体115は、周方向に途切れなく設けられていて、また外径側の先端側に向かうにつれて先細りとなる尖形状に設けられている。このレール体115には、後述するガイド車輪122が係合する。
【0070】
また、固定蓋110の上面側には、回転蓋120が取り付けられている。回転蓋120は、固定蓋110に対して、不図示の回転軸を介して回転自在に設けられている。また、上下方向(特に下方)への移動が規制されるよう、固定蓋110に対する接触面積が大きく設けられている。この回転蓋120には、その外径側に複数(本実施の形態では6つ)の回転軸121が取り付けられている。回転軸121は、回転蓋120を貫くように設けられていると共に、蓋回転蓋120の下方側に向かって突出するように設けられている。この回転軸121は、上述のレール体115よりも外径側であって、かつ近接する部位に配置される。なお、回転軸121の下端部は、固定蓋110に対して、非接触となっている。
【0071】
この回転軸121には、ガイド車輪122が回転自在に取り付けられている。それぞれのガイド車輪122は、その溝部122aが上述のレール体115に係合(接触)している。それにより、回転蓋120の回転を、ガイド可能となっている。また、回転蓋120の上面かつ外径側には、上方に向かって突出すると共に回転蓋120の周方向を長手とする突出部材123が取り付けられている。突出部材123には、外径側に向かうように支持軸124が取り付けられている。支持軸124は、突出部材123の長手の両端側に1つずつ、計2つ取り付けられている。また、支持軸124のうち、外径側の端部には、カムフォロアとしてのガイドローラ125が取り付けられている。ガイドローラ125は、上述のガイド溝94に入り込むものである。
【0072】
ここで、ガイドローラ125は、ガイド溝94の上端面94aに当接する。この場合、ガイドローラ125は、当初は上端面94aのうち、下方から離間しているテーパ部の入口側に位置している。しかしながら、真空ポンプ84を作動させ、真空吸引を行った後においては、蓋体部120は、真空吸引力により本体部20側に引き寄せられ、僅かに沈み込む。それにより、ガイドローラ125と上端面94aの接触状態が解かれるか、僅かに接触する状態となる。そのため、作業者は、回転蓋120を容易に回転させることができ、ガイドローラ125を、一端側(入口側)から他端側に向かうように回転させ、ガイドローラ125をテーパ部の末端側に位置させることが可能となる。それにより、蓋体部100のロックが可能となる。
【0073】
また、回転蓋120の上面側には、ハンドル130が取り付けられている。ハンドル130は、回転蓋120に対して固定的に設けられている。このハンドル130は、回転蓋120に取り付けられると共に、その上方に向かって延伸する取付軸131を有しており、この取付軸131には、把持部132が、外径方向の一方側および他方側に向かって延伸している。そのため、作業者が把持部132を把持して、回転蓋120を回転させれば、ガイドローラ125をガイド溝94の一端側から入り込ませ、真空ポンプ84の真空吸引後に、ガイドローラ125を他端側に向かって回転させることが可能となる。
【0074】
また、本体上面部22には、複数(本実施の形態では3つ)の取手140が取り付けられている。そのため、作業者は取手140を把持してテープ接着装置10を移動させることを可能としている。
【0075】
以上のような構成を有するテープ接着装置10の作用(動作)について、以下に説明する。なお、この作用(動作)については、図9に示す動作フローに基づいて、実行される。
【0076】
最初に作業者は、蓋体部100を開放し、取付板35にウエハ用治具61を取り付ける。この取付と共に、ウエハ用治具61にウエハ11を載置する(ステップS10)。続いて、作業者は、テープフレーム70にテープ部材12を取り付けると共に、このテープフレーム70をフレーム支持部材27に載置/固定する(ステップS11)。また、かかる載置に前後して、ラバーヒータ60を作動させ、ウエハ11の加熱を行えるようにする(ステップS12;加熱工程に対応)。それにより、ウエハ11の載置後、該ウエハ11は所定の温度(本実施の形態では、40〜60度の範囲内で、好ましくは約50度)に加熱される。
【0077】
次に、作業者は、蓋体部100を降下させて、蓋体部100を閉じる状態にする(ステップS13)。そして、作業者が、真空ポンプ84の作動ボタンを押すと、制御装置90は、蓋体部100が閉じ状態にある場合の、センサ92からの検出信号を受信したか否かを判断する(ステップS14)。この判断において、閉じ状態にある場合の検出信号を受信したと判断される場合(Yesの場合)、続いて、第1の弁部材85を開放状態にすると共に、第2の弁部材88を閉じ状態に切り替える(ステップS15)。また、制御装置90が、閉じ状態にある場合のセンサ92からの検出信号を受信していないと判断される場合(Noの場合)、再びステップS14に戻り、検出信号を受信したか否かの判断を継続する。
【0078】
この切り替えに続いて、制御装置90は、真空ポンプ84を作動させ、圧力室50の内部の真空吸引を開始する(ステップS16;吸引工程に対応)。かかる作動においては、初期の起動時間の短縮を図るために、コンプレッサ87も作動させておくようにしても良い。この場合、第2の弁部材88は、集合管82に対しては閉じ状態となるが、コンプレッサ87は、突出管部88aと連通し、大気導入状態となる。しかしながら、コンプレッサ87の起動が速い場合には、コンプレッサ87を停止させておくようにしても良い。
【0079】
また、真空吸引後、作業者は、ハンドル130を把持して回転蓋120を回転させ、テーパ部に倣ってガイドローラ125をガイド溝94に入り込ませる(ステップS17)。この場合、真空吸引により、蓋体部100が本体部20側に向かって僅かに沈み込むため、ガイドローラ125をガイド溝94に対して、簡単に入り込ませることができる。なお、本実施の形態では、圧力室50の真空吸引を行わない場合、ガイドローラ125をガイド溝94に入り込ませることが困難となっている。
【0080】
かかる真空吸引後、制御装置90は、圧力計91aでの圧力検出により、規定の圧力以下であることが検出されたか否かを判断する(ステップS18;真空度到達検出工程に対応)。そして、規定の圧力以下であると判断される場合、シリンダ機構30を作動させて、ウエハ11をテープ部材12側に向けて移動させる(ステップS19;接着工程に対応)。それにより、所定だけウエハ11が持ち上げられると、ウエハ11がテープ部材12に接触し、ウエハ11とテープ部材12との接着がなされる。なお、かかる接着においては、ウエハ11が加熱されているため、テープ部材12の粘着層が柔軟になり、接着性が良好となる。
【0081】
ウエハ11とテープ部材12との間の接着が、所定時間経過すると、制御装置90は、続いて第1の弁部材85を閉じ状態に切り替えると共に、第2の弁部材88を開放状態に切り替える(ステップS20)。この切り替えに続いて、制御装置90は、コンプレッサ87を作動させる(ステップS21;加圧工程に対応)。かかる作動においては、真空ポンプ84も作動させておき、初期の起動時間の短縮を図るようにしても良い。この場合、第1の弁部材85は、集合管82に対しては閉じ状態とするが、該真空ポンプ84と突出管部85aとが連通し、大気導入状態となるようにする。しかしながら、真空ポンプ84が所定の圧力に達するまでの起動時間が短い場合には、該真空ポンプ84を停止させておくようにしても良い。
【0082】
そして、圧力室50の内部の加圧を開始する。かかる加圧後、制御装置90は、圧力計91aでの圧力検出により、規定の圧力に到達したか否かを判断する(ステップS22)。そして、規定の圧力に到達したと判断される場合(Yesの場合)、制御装置90は、コンプレッサ87の作動を停止させる。そして、第1の弁部材85、第2の弁部材88、または不図示の開放弁を大気導入側に切り替えると、圧力室50の内部が大気圧となり、上述の加圧状態が解除される(ステップS23)。ここで、コンプレッサ87が所定の圧力に達するまでの間に時間を要する場合、上述のように、コンプレッサ87の作動を停止させずに、作動を継続するようにしても良い。
【0083】
その後、作業者はハンドル130を把持して、回転蓋120をロック時とは逆方向に回転させ、ガイドローラ125をガイド溝94から外す(ステップS24)。それにより、蓋体部100のロック状態が解除される。次に、作業者は、蓋体部100を開放し、テープ部材12が接着された状態のウエハ11を取り出す(ステップS25)。以上のようにして、ウエハ11の上面に対するテープ部材12の接着が終了する。
【0084】
なお、ウエハ11の上面に対するテープ部材12の接着が終了した以後は、例えばダイシングプロセスといった、次工程に進行する。
【0085】
このような構成のテープ接着装置10によれば、圧力室50を真空吸引した後に、ウエハ11をテープ部材12に接着させている。このため、ウエハ11とテープ部材12との間に、空気が入り込むのが防止され、両者の接着力(密着度)を高めることが可能となる。
【0086】
また、ラバーヒータ60により、加熱を行うため、例えば電子部品と電子部品との間に、狭い隙間が生じている場合でも、その狭い隙間に対して、テープ部材12の粘着層を変形させて入り込ませることが可能となる。ここで、ローラ等を用いる場合には、狭い隙間に対して、テープ部材12を入り込ませることができない。しかしながら、上述のように、ラバーヒータ60を用いてテープ部材12の粘着層を柔軟にし、かつ圧力室50の内部を加圧することにより、上述のような狭い隙間に対しても、テープ部材12を良好に入り込ませることが可能となる。
【0087】
さらに、圧力室50を加圧することにより、テープ部材12をウエハ11に対して密着させ、密着性を高めるようにしている。このため、ローラ等の機械的な手段により、密着性を高める構成と比較して、例えばウエハ11に半導体チップ等の電子部品が実装されている等、ウエハ11の表面に凹凸が形成されている場合でも、これらの電子部品を損傷させるのを防ぐことができる、という利点がある。また、加圧することにより、既に接着が為されているウエハ11とテープ部材12との間の微小な隙間を潰す圧着を行うことが可能となる。そのため、両者の接着力を一層高めることが可能となる。
【0088】
また、本実施の形態では、制御装置90は、真空ポンプ84での真空吸引、続いてシリンダ機構30の作動によるウエハ11とテープ部材12との接着、およびコンプレッサ87の作動によるウエハ11とテープ部材12との間の圧着を順次行っている。このため、ウエハ11に対するテープ部材12の接着性を、一層高めることが可能となっている。なお、本実施の形態では、真空ポンプ84の真空吸引に先立って、ラバーヒータ60によりウエハ用治具61を加熱している。このため、ウエハ11がテープ部材12に接触する際には、既にウエハ11は加熱された状態となっている。それにより、接触の際には、テープ部材12を柔軟にすることができ、ウエハ11とテープ部材12との間の接着性を一層かつ確実に高めることを可能としている。
【0089】
また、シールリング23およびパッキン34の存在により、圧力室50を外部から確実に封止することができ、該圧力室50の真空吸引および加圧を良好に行うことが可能となる。さらに、本実施の形態では、蓋体部100には、回転蓋120が設けられており、この回転蓋120と本体部20との間には、カムブロック93(ガイド溝94)とガイドローラ125から構成されるカム機構が設けられている。このため、固定蓋110に対して回転蓋120を回転させると、ガイドローラ125がガイド溝94から係脱される。それにより、蓋体部100を本体部20に対して、簡単にロックすることが可能となり、蓋体部100を加圧時の圧力に抗させることができる。
【0090】
ここで、作業者は、圧力室50の真空吸引後、ハンドル130を把持して、回転蓋120を回転させれば、ガイドローラ125をガイド溝94に容易に入り込ませることができ、操作性が向上する。
【0091】
また、本実施の形態では、加熱手段として、ラバーヒータ60を用いている。このため、ウエハ11に対して面状の加熱を行うことができ、ウエハ11の均一な加熱が可能となる。それによって、ウエハ11をテープ部材12に対して、均一に接着させることが可能となる。
【0092】
さらに、本実施の形態では、ウエハ11は、取付板35に対して、ウエハ用治具61を介して載置される。このため、ウエハ11の位置ずれを防止することが可能となる。特に、ウエハ11のオリフラ11aに、ピン部材61bが位置するため、ウエハ11の周方向における位置ずれも防止可能となる。また、ウエハ用治具61の外周側には、非粘着コーティングが施されている。このため、テープ部材12がウエハ用治具61に接触しても、該テープ部材12がウエハ用治具61に接着するのを防ぐことができ、テープ部材12をウエハ用治具61から剥がす等の手間を削減することができる。
【0093】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0094】
上述の実施の形態では、ゴムシート64を介して、ウエハ用治具61にウエハ11を載置している。しかしながら、別の方式を用いて、ウエハ11を載置/固定するように構成しても良い。この例を、図10および図11に示す。
【0095】
図10は、ウエハ用リング150の構成を示す平面図であり、右半分が6インチウエハ、左半分が8インチウエハに対応したものを示す図である。この図10に示すウエハ用リング150は、フレーム支持部材27に対して取り付けられる外周部151と、この外周部151の内径側に位置する内径部152とを具備している。外周部151は、内径部152よりも下方側に突出する構成となっている。この内径部152の内径側には、挿通孔153が形成されている。挿通孔153は、ウエハ用治具160を挿通させるのに対応した大きさとなっている。また、内径部152には、この挿通孔153から、外径側に向かい該内径部152を切り欠いた位置決め部154が設けられている。位置決め部154は、後述する位置決め突起163を嵌め込む部分である。
【0096】
また、外周部151には、取付用の長孔155が複数設けられている。長孔155は、ピン部材28等の取付手段を差し込むための部分であり、例えばピン部材28を介して、フレーム支持部材27にウエハ用リング150を取り付けることを可能としている。
【0097】
また、図11に示すウエハ用治具160は、ウエハ11の位置決めを行うためのピン部材(不図示)を差し込むための差込孔161、および該ウエハ用治具160を取付板35等に取り付ける等のための差込孔162が複数設けられている。なお、差込孔161のうち、図11において下方のものは、ウエハ11のオリフラ11aに当接する。それにより、ウエハ11の周方向における位置も定められる。さらに、ウエハ用治具160には、上述した位置決め部154に嵌まり込む、位置決め突起163が、径方向外方に向かい、所定の長さだけ突出している。
【0098】
かかる構成においては、ウエハ用リング150にウエハ用治具160を挿通させながら、取付板35にウエハ用治具160が取り付けられる。この場合、位置決め突起163と位置決め部154とが嵌まり合うため、ウエハ用治具160の周方向における位置が定められる。それにより、ウエハ用治具160の周方向における位置も定められるため、ウエハ11の位置決めを、確実に行うことが可能となる。
【0099】
また、上述の実施の形態では、シールリング23を本体上面部22に取り付けている。しかしながら、シールリング23は、蓋体部100側に取り付けられていても良い。このように構成した場合には、本体上面部22にリング当接部が設けられることになる。
【0100】
また、上述の実施の形態では、テープ保持手段として、テープフレーム70を用いた構成について説明している。しかしながら、テープ保持手段は、テープフレーム70には限られない。例えば、テープ部材12を吸引保持するための吸着機構を設け、これをテープ保持手段としても良い。
【0101】
また、制御手段としては、予め制御条件が設定されているものでも良く、作業者側で任意に制御条件を設定可能な構成でも良い。さらに、シール部材および封止部材は、本体部20と蓋体部100との間を気密に閉塞できる構成であれば、どのような形状・構成であっても良い。
【0102】
また、ワークとしては、ウエハ11以外に液晶等のガラス基板や特殊ガラス材、有機EL用のガラス基板等を採用しても良い。また、上述の実施の形態では、真空化後に大気(空気)を導入しているが、空気以外のもの、例えばアルゴンガス等を導入して、加圧する状態としても良い。
【0103】
また、テープ部材12は、上述の実施の形態のものには限られず、UV硬化型テープ、偏光フィルム、保護シート、透明電極等、ワークの表面に接着可能であれば、種々のものを用いることができる。
【0104】
また、別途、ウエハ11やガラス基板にテープ部材12を接着した後に、テープ部材12を切断するための機構を、テープ接着装置10の内部に設けるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明のテープ接着装置およびテープ接着方法は、ウエハを用いた半導体集積回路の製造過程や液晶を用いた液晶表示装置の製造過程において利用することができる。すなわち、半導体製造産業等において利用することができる。また、ガラス基板を用いたディスプレイの製造産業等において利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るテープ接着装置の構成を示す図であり、ウエハをゴムシート上に配置した状態で蓋体部を透視して示す平面図である。
【図2】図1のテープ接着装置の構成を示す図であり、蓋体部を閉じた状態を示す平面図である。
【図3】図1のテープ接着装置の構成を示す図であり、蓋体部を閉じた状態を示すと共に内部構成の一部を透視した状態について示す正面図である。
【図4】図1のテープ接着装置の構成を示す図であり、蓋体部を閉じた状態を示すと共に内部構成の一部を透視した状態について示す側面図である。
【図5】図1のテープ接着装置の排気系統及び制御系統の様子を簡略化して示す概略構成図である。
【図6】図1のテープ接着装置において、ゴムシートおよびテープ部材を保持する構成のうち、取付板の端部付近を拡大して示す部分的な側断面図である。
【図7】図1のテープ接着装置において、ウエハ用治具の形状を示す平面図である。
【図8】図1のテープ接着装置において、テープフレームの形状を示す平面図である。
【図9】図1のテープ接着装置を用いて、ウエハに対してテープ部材を接着する場合の動作フローを示す図である。
【図10】図1のテープ接着装置のうち、ウエハの取付態様の変更例に関する、ウエハ用リングの形状を示す平面図である。
【図11】図1のテープ接着装置のうち、ウエハの取付態様の変更例に関する、ウエハ用治具の形状を示す平面図である。
【符号の説明】
【0107】
10…テープ接着装置
11…ウエハ(ワークに対応)
12…テープ部材
20…本体部
22…本体上面部
22a…フレーム設置部
23…シールリング(シール部材に対応)
24…Xリング
25…凹嵌部
30…シリンダ機構
35…取付板(載置手段に対応)
50…圧力室
60…ヒータ(加熱手段に対応)
61…ウエハ用治具
70…テープフレーム(テープ保持手段に対応)
80…空気管路(吸引手段の一部)
82…集合管(吸引手段の一部)
84…真空ポンプ(吸引手段の一部)
85…第1の弁部材(吸引手段の一部)
86…コンプレッサ配管(加圧手段の一部)
87…コンプレッサ(加圧手段の一部)
88…第2の弁部材(加圧手段の一部)
90…制御装置(制御手段)
100…蓋体部
110…固定蓋
114…凹部
115…レール体
120…回転蓋
121…回転軸
122…ガイド車輪
125…ガイドローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ部材をワークに対して接着するテープ接着装置において、
上記ワークを載置する載置手段と、
上記載置手段およびこの載置手段に載置される上記ワークを内在させると共に、内部を密封状態で閉塞可能な圧力室と、
上記ワークの法線方向に向かい、上記載置手段を移動させる移動手段と、
上記圧力室の内部に設けられると共に、上記ワークに対し、その法線方向において離間した部位で上記テープ部材を保持するテープ保持手段と、
上記圧力室の内部を真空吸引する吸引手段と、
上記圧力室の内部に空気を加圧状態で導入する加圧手段と、
上記載置手段に載置されているワークを加熱する加熱手段と、
を具備することを特徴とするテープ接着装置。
【請求項2】
前記吸引手段、前記加圧手段、前記移動手段および前記加熱手段の作動を制御する制御手段を具備すると共に、
この制御手段は、
前記吸引手段を作動させて、前記圧力室の真空吸引を行い、
上記真空吸引の後に、前記移動手段を作動させて、前記ワークを前記テープ部材に向かって移動させて、前記ワークを前記テープ部材に接着させ、
前記テープ部材の接着後に、前記加圧手段を作動させて前記圧力室の内部に空気を加圧状態で導入する、
ことを特徴とする請求項1記載のテープ接着装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記吸引手段による前記圧力室の真空吸引に先立って、前記加熱手段を作動させて、予め前記ワークを加熱することを特徴とする請求項2記載のテープ接着装置。
【請求項4】
前記テープ接着装置は、凹嵌部を有する本体部と、この本体部に対して開閉自在に設けられると共に凹部を有する蓋体部とを具備していて、
上記蓋体部を上記本体部に対して閉じた場合に、上記蓋体部と上記本体部との間を気密に閉塞するシール部材が、これら蓋体部と本体部との境界部分に設けられ、
前記移動手段の摺動部は、孔部を通過して前記圧力室の内部に延伸し、かつ該摺動部と孔部との間には、これらの間を気密に封止する封止部材が設けられると共に、
上記蓋体部の閉塞状態において、上記シール部材および上記封止部材により封止されると共に上記凹嵌部および上記凹部を備える前記圧力室が形成される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のテープ接着装置。
【請求項5】
前記蓋体部は、
前記本体部に当接すると共に、該本体部に対して開閉可能な固定蓋と、
上記固定蓋に対して回転自在に設けられる回転蓋と、
を具備すると共に、
前記本体部と上記回転蓋との間には、上記回転蓋の回転により係脱可能なカム機構が設けられていて、このカム機構の存在により、前記蓋体部を前記本体部に対してロック可能としている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のテープ接着装置。
【請求項6】
前記加熱手段は、ラバーヒータを具備することを特徴とする請求項5記載のテープ接着装置。
【請求項7】
前記ワークは、前記載置手段に対してワーク固定用治具を介して載置されると共に、このワーク固定用治具には、その径方向の外周側に、該ワーク固定用治具の他の部分よりも前記テープ部材に対する粘着性の低い非粘着コーティングが施されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のテープ接着装置。
【請求項8】
テープ部材をワークに対して接着するテープ接着方法において、
上記ワークを載置する載置手段を加熱手段で加熱する加熱工程と、
上記載置手段にワークを載置した状態で、該載置手段および上記ワークを内在させかつ内部を密封状態で閉塞可能な圧力室を、吸引手段を用いて真空吸引を行う吸引工程と、
上記吸引工程によって、上記圧力室が設定された真空度に到達したことを検出する真空到達度検出工程と、
上記真空到達度検出工程によって設定された真空度に到達したことを検出した後に、上記ワークの法線方向に向かって上記載置手段を移動させる移動手段を作動させ、上記テープ部材に対して上記ワークを近付けて、上記ワークを上記テープ部材に接着させる接着工程と、
上記接着工程における接着を予め設定された時間だけ実行した後に、加圧手段を作動させて上記圧力室の内部に空気を加圧状態で導入する加圧工程と、
を具備することを特徴とするテープ接着方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−114598(P2006−114598A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298663(P2004−298663)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(592154547)有限会社都波岐精工 (12)
【Fターム(参考)】