説明

トロイダル変速機用の油圧回路

トロイダル変速機(10)用の油圧回路(50)は、単一のポンプを有し、ポンプ(70)に連結されていて、主ライン(72)中に主ライン圧力(PL)を発生させる主圧力コントローラ(74)を有し、主ライン(72)に連結されているローラコントローラ(100)を有し、2つのローラ制御圧力(P1′,P2′)が、主ライン圧力(PL)に基づいてローラコントローラ(100)中に生じ、2つのディスク(28,30)によって構成されたトロイダル空間(32)内のローラ(34)を空間的に調節する少なくとも1つの油圧ローラアクチュエータ(102)を有し、ローラアクチュエータ(102)は、ローラコントローラ(100)に連結されており、主ラインに連結されているディスクコントローラ(110)を有し、ディスク制御圧力(PEL)が、主ライン圧力(PL)に基づいてディスクコントローラ(110)中に生じ、ディスク(28,30)のうち少なくとも一方を軸方向に調節する少なくとも1つの油圧ディスクアクチュエータ(112)を有し、ディスクアクチュエータ(112)は、ディスクコントローラ(110)に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロイダル変速機用の油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
変速機、特に自動車両用変速機の分野における技術動向は、無段変速機に向けられている。一般に、無段変速機により、自動車両内で通常上流側に配置されている内燃機関をそれぞれの車速とは独立して有利なエンジン速度範囲内で作動させることが可能である。その結果、内燃機関及び無段変速機により形成されるドライブトレインの効率が向上する。さらに、無段変速機は、特に高い運転快適度をもたらす。
【0003】
無段変速機のうち、トロイダル(ドーナツ形又は円環状)変速機は、特定の重要性を備えており、即ち、ベルト式無段変速機(CVT)と比較してトルク容量が高いので特に重要である。
【0004】
トロイド形変速機のうちで、“Torotrak”(登録商標)システムは、特に重要である(www.torotrak.com参照)。この変速機は、入力側に始動クラッチ又は又は流体力学的トルクコンバータを必要としない。一般にカウンタシャフト型変速機のように構成されているのは、フルトロイダル(full-toroidal)変速機である。バリエータは、変速比の連続調節を行う。バリエータは、駆動ディスク及び出力ディスクを有し、これらディスクは、トロイダル(ドーナツ形又は円環状)空間を構成する。トロイダル空間内には、トルクを駆動ディスクから出力ディスクに伝達するよう設計された3つのローラが、周囲に沿って分布して配置されている。変速比の調節のため、ローラは、トロイダル空間内で空間的に調節される。
【0005】
ローラの調節は、複動油圧シリンダにより行われる。“Torotrak”システムでは、トルク荷重を支持するのに必要なアクチュエータシステムも又、油圧設計のものであって、ディスクのうちの少なくとも一方を軸方向に支持するようになっている。さらに、2つの変速比範囲が、2つのクラッチによって設定できる。クラッチの作動も又、油圧アクチュエータシステムにより行われる。最後に、駆動ディスクからローラ及び(又は)ローラから出力ディスクへのトルク伝達には、高い冷却能力が必要であり、かかる高い冷却能力は、一般に、潤滑油及び(又は)冷却油により提供される。また、潤滑膜がローラとディスクとの間の接触楕円領域で壊れないようにしなければならない。
【0006】
かかるトロイダル変速機用の油圧回路は、英国特許出願公開第2,369,164号明細書で知られている。
【0007】
この刊行物で知られている油圧回路は、油を2つの別々の油圧回路に送るタンデム形ポンプを有する。一方の油圧回路は、それぞれのローラの複動ピストン/シリンダ装置のチャンバにそれぞれ連結されている。他方の油圧回路は、他方のそれぞれのチャンバに連結されている。
【0008】
この関係で、一方のピストン/シリンダユニットは、油圧回路の各々に関して「マスター」として構成されている。このユニット内に、可変スロットルが構成されている。したがって、通常の作動中、油は、対応のチャンバを通ってそれぞれの定比制御弁内に流れる。通常の作動中、これら制御弁は、チャンバ内の圧力を制御する(したがって、それぞれのローラアクチュエータにより及ぼされる力を制御する)。マスターピストン/シリンダ装置は、行程範囲の終わりでのみその絞り機能に影響を及ぼす。この関係で、ピストンヘッドは、シリンダキャップの出口開口部を閉鎖することにより適用された体積流量を絞る。このように、これらピストン/シリンダ装置のピストンは、アクチュエータシステムを機械的停止部から保護する。ローラアクチュエータシステムの行程の停止位置のところのこれら「油圧停止部」は、行程減衰の効果的な停止位置を表している。行程減衰のこの停止位置は、行程減衰システムの従来型の停止位置とは対照的に、油圧能力を必要とする。加うるに、行程減衰の停止位置により、バリエータ(ディスクアクチュエータ)に加わる軸方向圧力との相互作用を一段と維持することができる。このように油圧制御されるバリエータは、技術的に信頼性が高いものであると考えられる。
【0009】
レンジクラッチを制御する制御装置は、一方において、マスターピストン/シリンダ装置の下流側に連結されるのがよい。この場合、油圧−機械的連結が生じる場合がある(例えば、交互逆止弁(「シャトル弁」)によって)。これは、定比制御弁の前の圧力を比較する。それぞれ高い圧力は、動作状態のレンジクラッチの接触圧のための源として役立つ。
【0010】
また、他方、レンジクラッチ用の圧力をそれぞれのタンデム形ポンプにより得られる圧力から直接逸らすことが可能である。
【0011】
少なくとも1つのバリエータディスクに軸方向に油圧的に圧接するディスクコントローラの油圧供給源のための第2のシャトル弁が設けられている(「エンドロードシステム(end load system)」)。これは、タンデム形ポンプにより得られる圧力を比較する。高い圧力は、ディスクに圧接する源として役立つ。
【0012】
潤滑油回路が、油圧制御回路に連結されている。潤滑油回路は、油圧抵抗に打ち勝つ流れ圧力を必要とする。この関係で、外部冷却システムの油圧抵抗及びローラ、ディスク、軸受及び歯車装置の平行な抵抗に打ち勝たなければならない。
【0013】
この公知の油圧回路は、ドライブトレインからの機械的外乱に対して堅調である。これは、体積流量が適用された2つの別々の油圧回路により達成される。それぞれの機械的油圧連結により、信頼性のある作動が保証される。したがって、信頼性のある非常作動を実施することができる。
【0014】
それにもかかわらず、創出された油圧方式は、油圧能力レベルでの油圧相互作用を必要とする。この関係で、ローラアクチュエータシステムを司る体積流量からの圧力は直接、ディスク制御及びクラッチ制御に用いられる。さらに、2つのポンプ(タンデムポンプ)が必要である。
【0015】
連続可変トロイダル変速機用の別の油圧制御システムが独国特許出願第69807134号明細書(欧州特許第8066242号明細書に対応している)で知られている。
この公知の油圧回路では、単一のポンプが設けられる。主圧力ラインでは、第1の主圧力は、ソレノイド弁によって調節される。補助圧力は、補助圧力ライン中のポンプ圧力に基づいて発生し、特に、別のソレノイド弁によって生じる。2つの圧力は、変速比の制御(ローラアクチュエータシステム)に用いられる。さらに、潤滑油の流れは、ポンプ圧力から逸らされ、このポンプ圧力は部分的に、冷却器を介して差し向けられる。潤滑油圧力も又、調節される。
【0016】
クラッチ制御圧力はそれぞれ適当なソレノイド弁によって主圧力ライン中の主圧力から逸らされてトロイダル変速機のレンジクラッチを作動させる。
【0017】
バリエータディスクに加わる軸方向接触圧は、機械的ばね装置により得られる。
【0018】
タンデムポンプを備えた別の油圧制御方式が、独国特許出願公開第19534391号明細書で知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明に関する上述の背景技術に鑑みて、本発明の目的は、トロイダル変速機用の改良型油圧回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は、トロイダル変速機用の油圧回路であって、
−単一のポンプを有し、
−ポンプに連結されていて、主ライン中に主ライン圧力を発生させる主圧力コントローラを有し、
−主ラインに連結されているローラコントローラを有し、2つのローラ制御圧力が、主ライン圧力に基づいてローラコントローラ中に生じ、
−2つのディスクによって構成されたトロイダル空間内のローラを空間的に調節する少なくとも1つの油圧ローラアクチュエータを有し、ローラアクチュエータは、ローラコントローラに連結されており、
−主ラインに連結されているディスクコントローラを有し、ディスク制御圧力が、主ライン圧力に基づいてディスクコントローラ中に生じ、
−ディスクのうち少なくとも一方を軸方向に調節する少なくとも1つの油圧ディスクアクチュエータを有し、ディスクアクチュエータは、ディスクコントローラに連結されている、油圧回路によって達成される。
【0021】
本発明の油圧回路では、単一のポンプだけが設けられる。主ライン圧力は、ポンプにより生じる圧力に基づいて生じる。一方、ローラの制御ユニット及びアクチュエータシステムは、これにより動力供給される。他方、ディスクのための制御ユニット及びアクチュエータシステムは、それにより動力供給される。その結果、これら別々の回路相互間には油圧的な相互作用は存在しない。ローラ制御圧力は、ディスク制御圧力とは無関係である。先行技術とは対照的に、これら圧力相互間には、幾何学的形状によってあらかじめ決定される一定の圧力比は存在しない。効率も又、ディスク制御圧力の別々の制御により、特にアクティブな制御によって最適化できる。動作上の信頼性も又、向上する。というのは、ディスク制御圧力は、高い主ライン圧力に基づいて制御され、好ましくはフィードバック調節されるからである。
【0022】
油圧システムは、互いに別々に制御されると共に(或いは)調節される。その結果、個々のシステム及びこれらの機能発揮を最適化することができる。
【0023】
主ライン圧力に基づいてクラッチ圧力をクラッチライン中に発生させるクラッチ圧力コントローラを設けると特に有利である。
【0024】
また、この関係で、別の補助油圧システム(1つ又は2つ以上のクラッチ用)が、他の補助油圧システム(ローラ及び(又は)ディスク用)から切り離した状態で設けられる。
【0025】
クラッチ圧力を主ライン圧力から逸らす手段により、経済的に効率的なカスケード構成が得られる。
【0026】
この関係で、クラッチラインに連結されたクラッチ制御装置を設けると特に有利であり、クラッチ制御圧力は、クラッチ圧力に基づいてクラッチ制御装置中に生じる。
【0027】
この関係で、クラッチ制御装置には、クラッチラインからクラッチ圧力が供給される。トロイダル変速機のクラッチ、例えば1つ又は複数のレンジクラッチを制御する制御圧力が、クラッチ制御装置から生じる。
【0028】
したがって、その結果、少なくとも1つのレンジクラッチを作動させる少なくとも1つの油圧クラッチアクチュエータを設けると有利であり、クラッチアクチュエータは、クラッチ制御装置に連結される。
【0029】
別の好ましい実施形態によれば、クラッチ圧力に基づいて冷却圧力を冷却ライン中に生じさせる冷却器圧力コントローラが設けられる。
【0030】
これら手段により、圧力コントローラのカスケードが拡張される。かくして、冷却圧力は、クラッチ圧力に基づいて生じ、このクラッチ圧力は、主ライン圧力に基づいて生じる。
【0031】
この関係で、好ましくは、冷却ラインに連結された1つの冷却器が設けられる。
【0032】
別の好ましい実施形態によれば、冷却圧力に基づいて潤滑油圧力を潤滑油ライン中に生じさせる潤滑油圧力コントローラが設けられる。
【0033】
また、これにより、圧力コントローラカスケードの拡張が得られる。潤滑油圧力は、冷却圧力に基づいて生じ、この冷却圧力は、いずれの場合においても、既に低い。
【0034】
この関係で、潤滑油ラインを冷却器の出口に連結すると特に有利である。
【0035】
その結果、冷却油を潤滑油回路中に送り込むことができる。油圧制御回路に連結された潤滑油回路は、潤滑目的と冷却目的の両方に使用でき、したがって、分岐される。
【0036】
したがって、別の好ましい実施形態によれば、潤滑油ラインは、ローラコントローラに連結され、ローラコントローラから押し退けられた油を受け取る。
【0037】
この手段により、ポンプにより生じた油体積流量は、より効率的に利用される。ローラコントローラ中のローラ制御圧力は一般に体積流量により動的に設定されるので、潤滑油回路のためにこの体積流量を利用することは、効率の観点から特に有利である。
【0038】
全体として好ましい実施形態によれば、油圧回路の単一のポンプは、ハイドロスタティックポンプである。
【0039】
その結果、必要とされる油圧能力が低いので、効率を一段と向上させることができる。
【0040】
一般に、本発明により、先行技術と比較して顕著な利点が達成されることが分かる。具体的には、個々の機能のための個々の補助回路、例えば、ローラ回路、ディスク回路、クラッチ回路等は、互いに油圧的に切り離される。その結果、これら回路の個々のコンポーネント及びこれらの機能の最適化を向上させることができる。油圧相互作用は生じない。
【0041】
加うるに、ひとまとめに形成される圧力コントローラカスケードにより、特にそれぞれの必要な機能に匹敵したそれぞれの油圧を最適に逸らすことができる。
【0042】
さらに、上述したように英国特許出願公開第2369164号明細書に記載された先行技術のシステムの利点が維持される。これは特に、ローラアクチュエータにおける行程減衰の油圧停止位置を設定する可能性に適用される。ローラアクチュエータは又、複動ピストン/シリンダ装置のように従前どおり設計できる。
【0043】
本発明の範囲から逸脱することなく、上述の特徴及び以下に詳細に説明される特徴は、提供されるそれぞれの組み合わせで用いられるだけでなく、他の組み合わせで又は別々に利用できることはいうまでもない。
【0044】
本発明の実施形態は、以下の説明において詳細に説明され、図面に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
図1において、概略的に図示されたトロイダル変速機が全体的に符号10で示されている。
トロイダル変速機10は、変速機入力シャフト12、カウンタシャフト14及び変速機出力シャフト16を有している。
【0046】
トロイダル変速機10のバリエータ(変速歯車装置)構造が符号20で示されている。バリエータ構造20は、バリエータメインシャフト22及びバリエータセコンダリシャフト24を有している。さらに、バリエータ構造20は、2つのバリエータ26A,26Bを有している。
【0047】
各バリエータは、駆動ディスク28A,28B及び被動ディスク30A,30Bを有している。
駆動ディスク28A,28Bは、それぞれの被動ディスク30A,30Bと一緒になって、トロイダル又は円環状空間32A,32Bをそれぞれ包囲している。
【0048】
複数個のローラ34、一般に、3つのローラ34が各々、トロイダル空間全体にわたり円周方向に分布して配置されるようトロイダル空間32A,32B内にそれぞれ配置されている。
【0049】
ローラ34を、符号36で概略的に示されている(詳細には示されてはいない)アクチュエータ機構によってトロイダル空間32内で空間的に調節できる。その目的は、バリエータ構造20の変速比を変化させることにある。かくして、バリエータ26A,26Bのローラ34は全て、生じる反力をバリエータ構造20の周囲全体にわたり一様に吸収できるよう同一方向に調節されることが分かる。
【0050】
バリエータのディスクが軸方向に加圧されることが符号37のところに示されている。この接触圧は、ディスクアクチュエータシステムにより得られる。一般に、バリエータ26の2つのディスク28,30のうち一方が加圧される。しかしながら、両方のディスクを加圧してもよい。
【0051】
図1ではバリエータ26Aについて矢印36,37が単に示されているが、バリエータ26Bについても対応のアクチュエータシステムが設けられていることはいうまでもない。
【0052】
歯車装置が符号38で示されており、この歯車装置は、カウンタシャフト14を一定の仕方でバリエータセコンダリシャフト24に連結し、このセコンダリシャフトには、駆動ディスク28A,28Bが固定されている。出力ディスク30A,30Bは、バリエータメインシャフト22に固定され、このメインシャフトは、加算型変速機(summing transmission)40に連結されている。
【0053】
加算型変速機40は、遊星歯車装置42を有している。バリエータメインシャフト22は、遊星歯車装置42の太陽歯車に連結されている。カウンタシャフト14は、別の歯車装置(図示せず)により遊星歯車装置42の遊星枠に連結されている。
【0054】
太陽歯車を、ハイレジーム(high-regime )クラッチ(又は第1のレンジクラッチ)44により変速機出力シャフト16に連結するのがよい。遊星歯車装置42のリング歯車をローレジーム(low-regime)クラッチ(又は第2のレンジクラッチ)46により変速機出力シャフト16に連結するのがよい。
【0055】
符号48のところに、レンジクラッチ44のアクチュエータシステムが概略的に示されている。符号49のところに、第2のレンジクラッチ46のアクチュエータシステムが概略的に示されている。
【0056】
トロイダル変速機10の作動モードは一般に知られており、説明を簡単にする理由で本明細書においては詳細には説明しない。
【0057】
図2において、本発明の油圧回路の実施形態が符号50で概略的に示されている。
油圧回路50は、圧力制御部分52と、ローラ部分54と、ディスク部分56と、クラッチ部分58と、潤滑油部分60とを有している。
【0058】
さらに、油圧回路50を制御する中央制御装置62が設けられている。さらに、制御装置62は、他の制御装置に対するインターフェイスとして役立ち、かかる他の制御装置は例えば、本発明の油圧回路50を備えたトロイダル変速機10が搭載された車両内に設けられるのがよい。
【0059】
制御装置62は、制御信号64を出力し、これら制御信号は、部分52〜60の個々の装置に送られる。これはそれぞれ、更に開示されるべきそれぞれの装置に向いた矢印によって示されている。
【0060】
また、制御装置62によって、個々の部分52〜60を制御された仕方で互いに結合することが可能である。したがって、以下に更に開示するように、個々の部分52〜60相互間の油圧結合は、一般に行われない。
【0061】
圧力制御部分52は、流体静力学的油圧をもたらす単一のハイドロスタティックポンプ70を有する。ポンプ70は、主ライン72に連結されている。主ライン72の圧力は、主圧力コントローラ74によって調節される。このように調節された主ライン圧力が、PLによって示されている。
【0062】
圧力制御部分52は、クラッチ圧力コントローラ78を更に有している。クラッチ圧力コントローラ78は、主圧力コントローラ74に従属しており、主ライン圧力PLに基づいてクラッチ圧力PLCLを発生させ、このクラッチ圧力は、主ライン圧力PLよりも低い。クラッチ圧力PLCLをクラッチライン76に加える。
【0063】
圧力制御部分52は、冷却器圧力コントローラ82を更に有している。冷却器圧力コントローラ82は、クラッチ圧力コントローラ78に従属しており、クラッチ圧力PLCLに基づいて冷却圧力PCOを発生させ、この冷却圧力は、クラッチ圧力PLCLよりも低い。冷却圧力PCOを冷却ライン80に加える。
【0064】
最後に、圧力調節部分52は、潤滑油圧力コントローラ86を有する。潤滑油圧力コントローラ86は、冷却器圧力コントローラ82に従属しており、冷却圧力PCOに基づいて潤滑油圧力PLUを発生させる。潤滑油圧力PLUは、冷却圧力PCOよりも低い。潤滑油圧力PLUを潤滑油ライン84に加える。
【0065】
潤滑油ライン84は、冷却/潤滑回路92に連結されており、この冷却/潤滑回路に冷却/潤滑のための潤滑油を供給する。トロイダル変速機10のとりわけバリエータ26、レンジクラッチ44,46、歯車装置等は、冷却/潤滑回路92に連結されている。
【0066】
潤滑油ライン84は、冷却器90の出口に更に連結されており、この冷却器は、冷却ライン80の入力側に接続されている。
【0067】
潤滑油ライン84により提供される油体積流量を冷却器90により冷却することができる。
潤滑油ライン84は、ローラコントローラ100に更に連結されている。ここでは不要な油は、潤滑油ライン84に送り込まれ、かくして冷却/潤滑に用いられる。
【0068】
ローラコントローラ100は、ローラ部分54の一部である。ローラコントローラ100は、主ライン72に連結されており、ローラアクチュエータ102のための2つのローラ制御圧力P1′,P2′を発生させる。ローラアクチュエータ102は、2つの油チャンバを備えた複動ピストン/シリンダ装置として構成されている。一方のローラ制御圧力P1′は、一方の油チャンバに加えられ、他方の制御圧力P2′は、他方の油チャンバに加えられる。
【0069】
ローラアクチュエータ102は、マスターピストン/シリンダ装置であるのがよい。この関係で、行程減衰の油圧的にアクティブな停止位置(「油圧停止部」)は、このローラアクチュエータにおいて2つの方向について構成される。その結果、即ち、ローラアクチュエータ102の行程の停止位置に達しない場合、体積流量はそれぞれ一般に、2つの油チャンバから生じ、かかる体積流量の圧力は、図2にP1及び(又は)P2を備える。
【0070】
これら圧力は、アクチュエータチェーン104に伝わり、即ち、それぞれのバリエータの他のローラについて全て従属的な(「スレーブ」)ローラアクチュエータ内では平行である。上述したように、バリエータ26は一般に、全て同一方向に調節しなければならない3つのローラ34を有している。その結果、ローラのうちの1つは「マスターローラ」と考えられ、他のローラの作動は、これに従属して行われる。これは、「アクチュエータチェーン」104により概略的に示されている。
【0071】
ローラ圧力P1,P2が論理コントローラによりモニタされることが符号106のところに記載されている。符号108a,108bのところに、制御圧力測定装置が示されており、この制御圧力測定装置は、ローラ圧力P1,P2を測定し、測定信号をモニタ目的のために例えばランキングの高い制御装置62に送る。
【0072】
さらに、「S(iv)」と表示された点線の矢印により示されているように、アクチュエータチェーン104と「マスター」ローラアクチュエータ102との間にはフィードバックが生じることが示されている。
【0073】
ローラアクチュエータ102,104は、動的に流れる油の流れによって圧力制御される。出力側でのこの油の流れは、潤滑油ライン84中に送られる。
【0074】
マスターローラアクチュエータ102は、適用された運動の結果として圧力差を無くすと共にシステム減衰を設定するために内部バイパス点を備えることがよいことが理解される。その結果、ローラアクチュエータ102,104及びこれらを備えたバリエータ34は、技術的に信頼性が高いものと考えられる。
【0075】
ディスク部分56は、ディスクコントローラ110を有する。ディスクコントローラ110は、主ライン72に連結され、その結果、ローラコントローラ100と並列に配置される。ディスクコントローラ110では、ディスク制御圧力PELが生じ、このディスク制御圧力は、ディスクアクチュエータ112に供給される。
【0076】
ディスクコントローラ110は又、入力として別の圧力、即ち、圧力Phighを受け取る。この圧力Phighは、2つのローラ圧力P1,P2のうちの大きい方の圧力である。
【0077】
最後に、点線及び圧力PCEによって示すように、圧力制御機能がディスクコントローラ110内に設けられている。
ディスク制御圧力PELを測定して例えば制御装置62で制御及び(又は)調節目的で用いる。
【0078】
クラッチ部分58は、クラッチ制御装置114を有する。クラッチ制御装置114は、クラッチライン76に連結されており、このクラッチ制御装置にはクラッチ圧力PLCLが供給される。
【0079】
クラッチ制御装置114は、このクラッチ圧力に基づいてクラッチ制御圧力PCLを発生させ、このクラッチ制御圧力は、クラッチアクチュエータ118を作動させるために用いられる。クラッチアクチュエータ118は、トロイダル変速機10のレンジクラッチ44,46を独立制御するための複数個のアクチュエータを更に有するのがよい。
【0080】
クラッチ制御装置114とクラッチアクチュエータ118との間には遮断弁116が連結されている。この遮断弁116は、例えば、エレクトロニクスが故障した場合に「安全機能」を発揮する安全弁である。この関係で、レンジクラッチ44,46を解除し、かくして安全状態を確立する。
【0081】
全体として、本発明の油圧回路50では、以下の利点のうちの少なくとも1つを達成することができる。
油圧能力レベルでは、油圧相互作用が回避される。
ローラ制御圧力P1′,P2′とディスク制御圧力PELの圧力比は、幾何学的形状によってはあらかじめ規定された固定比ではない。
【0082】
レンジクラッチ44,46の充填圧力及び閉鎖圧力を調節することができる。
充填圧力と閉鎖圧力を切り換えるように設計することができる。
油圧損失が少ない。
結果として、ローラシステムの高い最高調節速度が得られる。
さらに、押し退けられた体積流量と調節体積流量は、オーバラップしない。
たとえ温度が低くても良好な機能発揮が保証される。
必要なポンプは1つだけである。
【0083】
レンジクラッチの充填時間は、制御可能な充填圧力の結果として短い。
したがって、ハイドロドスタティックポンプの使用により、必要な油圧能力は低い。
効率は、ライン圧力に基づいてディスク制御圧力PELのアクティブな制御又は調節によって最適化される。
【0084】
さらに、高い主ライン圧力PLに基づいて、ディスク制御圧力の基本的な制御により高い動作上の信頼性が達成される。
【0085】
バリエータ、レンジクラッチ並びに冷却油/潤滑油の冷却及び配分のために個々に制御される圧力回路が設けられる。これにより、油圧システムが切り離され、個々のシステム及びこれらの機能発揮を最適化することができる。
【0086】
バリエータ制御システムでは不要な油は、冷却に用いられる。
ポンプにより送り出された油の全てが用いられる(高速では減少する恐れがあることは別にして)。
低いポンプ能力で高い調節速度が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】トロイダル変速機の略図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態としての油圧回路のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロイダル変速機(10)用の油圧回路(50)であって、
−単一のポンプ(70)を有し、
−前記ポンプ(70)に連結されていて、主ライン(72)中に主ライン圧力(PL)を発生させる主圧力コントローラ(74)を有し、
−前記主ライン(72)に連結されているローラコントローラ(100)を有し、2つのローラ制御圧力(P1′,P2′)が、前記主ライン圧力(PL)に基づいて前記ローラコントローラ(100)中に生じ、
−2つのディスク(28,30)によって構成されたトロイダル空間(32)内のローラ(34)を空間的に調節する少なくとも1つの油圧ローラアクチュエータ(102)を有し、前記ローラアクチュエータ(102)は、前記ローラコントローラ(100)に連結されており、
−前記主ラインに連結されているディスクコントローラ(110)を有し、ディスク制御圧力(PEL)が、前記主ライン圧力(PL)に基づいて前記ディスクコントローラ(110)中に生じ、
−前記ディスク(28,30)のうち少なくとも一方を軸方向に調節する少なくとも1つの油圧ディスクアクチュエータ(112)を有し、前記ディスクアクチュエータ(112)は、前記ディスクコントローラ(110)に連結されている、油圧回路。
【請求項2】
前記主ライン圧力(PL)に基づいてクラッチ圧力(PLCL)をクラッチライン(76)中に発生させるクラッチ圧力コントローラ(78)を有する、請求項1記載の油圧回路。
【請求項3】
前記クラッチライン(76)に連結されているクラッチ制御装置(114)を有し、クラッチ制御圧力(PCL)が、前記クラッチ圧力(PLCL)に基づいて前記クラッチ制御装置(114)中に生じる、請求項2記載の油圧回路。
【請求項4】
少なくとも1つのレンジクラッチ(44,46)を作動させる少なくとも1つの油圧クラッチアクチュエータ(118)を有し、前記クラッチアクチュエータ(118)は、前記クラッチ制御装置(114)に連結されている、請求項3記載の油圧回路。
【請求項5】
前記クラッチ圧力(PLCL)に基づいて冷却圧力(PCO)を冷却ライン(80)中に発生させる冷却器圧力コントローラ(82)を有する、請求項2〜4のうちいずれか一に記載の油圧回路。
【請求項6】
前記冷却ライン(80)に連結されている冷却器(90)を有する、請求項5記載の油圧回路。
【請求項7】
前記冷却圧力(PCO)に基づいて潤滑油圧力(PLU)を潤滑油ライン(84)中に発生させる潤滑油圧力コントローラ(86)を有する、請求項5又は6記載の油圧回路。
【請求項8】
前記潤滑油ライン(84)は、冷却器(90)の出口に連結されている、請求項7記載の油圧回路。
【請求項9】
前記潤滑油ライン(84)は、前記ローラコントローラ(100)に連結されていて、前記ローラコントローラ(100)から押し退けられた油を受け取る、請求項7又は8記載の油圧回路。
【請求項10】
前記ポンプ(70)は、ハイドロスタティックポンプ(70)である、請求項1〜9のうちいずれか一に記載の油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−537404(P2007−537404A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512048(P2007−512048)
【出願日】平成17年5月7日(2005.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004970
【国際公開番号】WO2005/111472
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(505152284)ゲットラーク ゲットリーベ ウント ツァーンラトファブリーク ヘルマン ハーゲンマイアー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (21)
【出願人】(503326801)ヒドラウリク・リンク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【Fターム(参考)】