説明

ナビゲーション装置、操作部表示方法

【課題】運転者の特性に応じて各運転者の操作性を向上させることができるナビゲーション装置及び操作部表示方法を提供すること。
【解決手段】表示部28に表示された操作部A〜Eの接触位置により操作されるナビゲーション装置100において、走行時の車両操作を検出する車両操作検出手段11、12、13と、車両操作検出手段が検出した車両操作に基づき、運転者操作情報を取得する車両操作取得手段21と、運転者操作情報に基づき運転者の運転者特性を学習する運転者特性学習手段23と、運転者特性学習手段23が学習した学習結果に応じて、操作部A〜Eの表示態様を変更する操作部生成手段24と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置等に関し、特に、表示部に表示される操作ボタンの表示態様を変更するナビゲーション装置及び操作部表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置のユーザインターフェイスに表示部と操作部を兼用したタッチパネルが用いられており、キーボードなどのハード的な操作部を最小限にして空間効率を向上させ、また、直感的な操作を可能とするなど操作性を向上させている。タッチパネルについて、走行中の操作性を向上させるべく走行中はタッチパネルに形成された操作ボタンを大きくするナビゲーション装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。走行中に操作ボタンが大きくなれば走行中の誤操作を低減することができる。
【0003】
また、ナビゲーション装置が表示する自車アイコンを変化させることができるナビゲーション装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2記載のナビゲーション装置は、高速走行を好む等の運転者の運転者特性に応じて自車アイコンを擬人化して表示したり、擬人化した自車アイコンを成長させて表示する。
【特許文献1】特開2006−17478号公報
【特許文献2】特開2000−283771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ナビゲーション装置は高機能化が進んでいるため、単に走行中に操作ボタンを大きくするだけでは、必ずしも操作性を向上させることができなくなってきている。例えば、特許文献1記載のナビゲーション装置のように、車両状態のみに応じて操作ボタンを大きくすることは、運転の得意な運転者にも運転の初心者にも同じユーザインターフェイスを提供するものであるため、各運転者の操作性を向上させることになるとは限らないという問題がある。
【0005】
この点、特許文献2記載のナビゲーション装置は、運転者特性を検出して自車アイコンを変化させるが、自車アイコンの変更は各運転者に好適な演出効果をもたらす可能性はあっても、操作性を向上させることはできない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、運転者の特性に応じて各運転者の操作性を向上させることができるナビゲーション装置及び操作部表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、表示部に表示された操作部の接触位置により操作されるナビゲーション装置において、走行時の車両操作を検出する車両操作検出手段と、車両操作検出手段が検出した車両操作(ナビ操作を含む)に基づき、運転者操作情報を取得する車両操作取得手段と、運転者操作情報に基づき運転者の運転者特性を学習する運転者特性学習手段と、運転者特性学習手段が学習した学習結果に応じて、操作部の表示態様を変更する操作部生成手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、運転者の特性に応じて操作ボタンをカスタマイズできるので、各運転者にとって操作性を向上することができる。
【0009】
また、本発明の一形態において、走行時の車両環境を検出する車両環境検出手段と、車両環境検出手段が検出した車両環境に基づき、車両環境情報を取得する環境情報取得手段と、を有し、運転者測定学習手段は、所定の車両環境における運転者操作情報に基づき運転者の運転者特性を学習する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、車両の走行環境に対応づけて運転者特性を学習できるので、走行環境毎に操作ボタンをカスタマイズすることができる。
【発明の効果】
【0011】
運転者の特性に応じて各運転者の操作性を向上させることができるナビゲーション装置及び操作部表示方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、走行中のナビゲーション装置100のHMI(Human Machine Interface)の一例を示す図である。このHMIはタッチパネルを備えた表示部28に表示される。ナビゲーション装置100は、操作ボタンA〜F(以下、区別しない場合、単に操作ボタンという)に対応した機能を提供するが、走行中は複雑な操作を制限して運転者の負荷を低減する観点から、操作ボタンA、D、Eのみが操作可能となっている(以下、走行操作制限という。)。なお、車両が停止中は、操作ボタンA〜Eの全てを操作可能である。停止中か否かはパーキングブレーキのオン、車速がゼロであることの少なくとも一方から判定される。
【0013】
本実施形態ではこの3つの操作ボタンA、D、Eの表示可否、配置、サイズ、輝度、色(以下、単に表示態様という)を運転者特性に応じて変更(以下、カスタマイズという)する。これにより、各運転者毎に操作性が向上するように表示態様をカスタマイズできる。例えば、ナビゲーション装置100の操作(以下、ナビ操作という)を間違えやすい運転者に対しては、図1の右上に示すように、基本的な機能を提供する操作ボタンA、EのみをHMIに表示する。また、操作ボタンA、Eを大きく表示したり、操作ボタンA、Eの判定範囲を操作ボタンA,Eの外縁よりも拡大することで、ナビ操作を間違いやすい運転者でも容易に操作することが可能となる。
【0014】
また、例えば、注意力が散漫になりやすい(例えば、急ブレーキの頻度が多い)運転者に対しては、図1の右中に示すように、走行中は操作ボタンA、D、Eの全ての操作を禁止することができる。ナビゲーション装置100は、操作ボタンA、D、Eをトーンダウン(輝度や彩度を低下させ)したり、HMIから消去し、仮に運転者が操作してもその機能を提供しない。したがって、走行中に注意力が散漫となる運転者の操作負荷を低減することができる。
【0015】
また、例えば、冷静な運転者に対しては、カスタマイズすることなくHMIを提供する。したがって、冷静な運転者は制限なくナビゲーション装置100を操作できる。また、冷静な運転者に対しては、走行操作制限を緩和して、カスタマイズ前が操作ボタンA、D、Eであるなら、操作ボタンB等を操作可能とするなど、走行操作制限の操作ボタンより多くの操作ボタンを操作可能としてもよい。走行操作制限は、安全サイドに設定されているため、冷静な運転者にとっては制限が厳格過ぎる場合があるが、本実施形態では走行操作制限を緩和できるので、運転者の操作性を向上させることができる。
【0016】
なお、同じ運転者であっても、精神状態、体調、運転の慣れ等により運転者特性は変化するので、本実施形態のナビゲーション装置100は、運転者特性を随時学習しながら、同じ運転者の運転者特性の変化に応じて動的にHMIをカスタマイズすることができる。
【0017】
図2は、ナビゲーション装置100の機能ブロック図の一例を示す。図2は運転者特性を学習するプロセスにおける機能ブロック図である。ナビゲーション装置100は、制御部20により制御され、制御部20には、ナビゲーション装置100を操作する操作部11、エンジン等の各車載装置を制御するECU(electronic control unit)、車両の状態を検出する各センサ13、現在位置を取得する位置取得部14、VICS(Vehicle Information and Communication System)が配信する交通情報を受信するVICS受信装置17、プローブカーセンタ(プローブカーから収集したプローブ情報から交通情報を生成し配信するサーバ)から交通情報を受信するセンター情報受信装置18、及び、操作ボタンを表示する表示部28が接続されている。
【0018】
また、制御部20はCPU、RAM、不揮発メモリ、入出力インターフェイス等を備えたコンピュータを実体とし、CPUがプログラムを実行するか、ASIC等のハードウェアにより実現される、運転者操作情報取得部21、環境情報取得部22及び運転者特性学習部23、を有し、不揮発メモリには学習した運転者特性を記憶する運転者特性DB25、制限レベルテーブル26、及び、HMI規定テーブル27を記憶する。
【0019】
操作部11は、図1のHMIに形成される操作ボタンA〜E、HMIの周囲に設けられるキーボード、リモコン、又は、音声入力のためのマイクと音声認識装置の少なくとも1以上を有する。操作部11のナビ操作からナビゲーション装置100の運転者操作情報が検出される。また、各ECU12及び各センサ13は、ナビ操作以外の運転者の運転者操作情報を取得する。車両の基本的な車両操作として、操舵、加速及び減速があり、その他の車両操作としてウィンカ操作、ワイパー操作、パーキングブレーキ操作、等がある。各ECU12及び各センサ13はこのような車両操作に伴う運転者操作情報を取得する。
【0020】
ナビ操作は、車両操作の一態様であるので車両操作に含まれるが、本実施形態では説明のため、ナビゲーション装置100を操作するナビ操作と、ウィンカ等を操作する車両操作とを区別する。
【0021】
〔運転者操作情報の取得〕
a)操作部11からナビゲーション装置100のナビ操作を検出する。運転者操作情報取得部21は、操作ボタンの一連の操作情報を記憶しておき、その間の「戻る」操作、タッチミス(操作ボタンでない位置をタッチ)等から運転者のナビ操作における間違えを検出し、それを運転者操作情報として取得する。
【0022】
b)各ECU12及び各センサ13はステアリングホイールの操舵角から車両が操舵されていることを検出し、さらに、各ECU12及び各センサ13が検出する車速、ヨーレート、横Gから、運転者操作情報取得部21は、旋回時の運転者操作情報を取得する。
【0023】
c)各ECU12及び各センサ13は例えばアクセルペダル開度から車両が加速操作されていることを検出し、さらに、各ECU12及び各センサ13が検出する加速度、車速等から、運転者操作情報取得部21は加速時の運転者操作情報を取得する。
【0024】
d)各ECU12及び各センサ13は、例えばストップランプスイッチのオンから車両が減速操作されていることを検出し、さらに、各ECU12及び各センサ13が検出する減速度、マスタシリンダ圧等から、運転者操作情報取得部21は減速時の運転者操作情報を取得する。
【0025】
e)ウィンカ操作時に各ECU12及び各センサ13は、ウィンカ操作後から操舵までの時間、車速、操舵角、を検出するので、運転者操作情報取得部21は、これらから車線変更や右左折時の運転者操作情報を取得する。例えばウィンカを点灯させてから車線変更までの時間が短い、ウィンカを点灯せずに車線変更したなどの運転者操作情報が取得される。
【0026】
f)ワイパー操作時に各ECU12及び各センサ13は、雨滴量、ワイパーの操作位置(Hi、Low、Int)、を検出するので、運転者操作情報取得部21は、これらから雨天時の運転者操作情報を取得する。例えば、雨滴が検出されてからワイパーをオンするまでの時間が長い、雨滴が検出されなくなってからワイパーを停止するまでの時間が長い、などの運転者操作情報が取得される。
【0027】
g)車速がゼロになると各ECU12及び各センサ13は、パーキングブレーキのオン/オフ、シフトポジションを検出するので、運転者操作情報取得部21は、これらから停車時にパーキングブレーキのオンに操作するか否かなど停車時の運転者操作情報を取得する。
【0028】
h)ハンズフリー装置を搭載している場合、各ECU12及び各センサ13は、着信に対し応答するか、公共モード(ドライブモード)にて対応するか、又は、相手を発呼する頻度を検出するので、運転者操作情報取得部21は、これらからハンズフリー装置の運転者操作情報を取得する。
【0029】
i)また、運転者の直接的な運転者操作情報ではないが、運転者特性として覚醒度を検出することができる。各ECU12及び各センサ13(顔カメラ)は、走行時には運転者の視線方向や眠けを検出しており、運転者操作情報取得部21は、視線が停留して漫然運転に陥ったり眠けが生じた(以下、覚醒度が低下するという)状態を運転者操作情報として検出する。
【0030】
〔環境情報の取得〕
環境情報とは、走行中に、運転者や運転者の操作の有無に関わらず各運転者の全てに共通に生じる事象である。例えば、渋滞、天候、信号待ち、特定の位置や道路の通過、等である。
【0031】
I)VICS受信装置17は、VICSがFM方法、電波ビーコン又は光ビーコンを媒体に配信する渋滞の有無やリンク等の旅行時間を含む交通情報を受信する。また、センター情報受信装置18は、例えば、携帯電話等の通信網に接続して交通情報を受信する。VICSが配信する交通情報は主要な幹線道路に限られているのに対し、プローブカーセンターが配信する交通情報は車両が通行する道路を含みうるので、より広範囲の交通情報を受信できる。なお、VICS受信装置17とセンター情報受信装置18が受信する交通情報は完全に同一でないが、本実施形態ではこれらを区別しない。環境情報取得部22は、交通情報を環境情報として取得する。
【0032】
II)各センサ13は、天候情報を取得する。この場合の各センサ13は例えば天候情報を配信するサーバに接続する通信装置、雨滴センサ、外気温センサ、日射センサ等である。なお、日本では気象庁がアメダス情報を提供しているので、環境情報取得部22は、例えばアメダス情報に含まれる降水量、積雪量、風向、気温及び日照時間等の環境情報を取得する。
【0033】
III)各センサ13は、時刻情報や曜日、日付等を検出する。この場合のセンサは時計やカレンダである。環境情報取得部22は、日中、夜間、深夜、明け方、平日、休日等の環境情報を取得する。
【0034】
IV)信号待ち、交差点、特定の位置・道路(橋梁、踏切等)、などは車両の位置から検出される環境情報となる。位置取得部14は、GPS受信機15と地図DB16を有し、GPS受信機15がGPS衛星から受信した電波の到達時間に基づき車両の現在位置(緯度・経度・標高)を検出する。地図DB16には、道路を交差点や所定間隔で区切るノードが位置情報に対応づけて記憶されており、ノードを道路に対応するリンクで結ぶことで道路網を表現している。地図DB16には、交差点、橋梁、トンネル、踏切、海岸、山間部、等を検出する情報が記憶されているので、車両が走行している位置から、環境情報が検出される。環境情報取得部22は、自車の位置に基づき信号待ち、交差点、特定の位置・道路などの環境情報を取得する。
【0035】
〔運転者特性の学習〕
運転者特性学習部23は、運転者操作情報及び環境情報に基づき運転者特性を学習する。運転者操作情報a)〜i)と環境情報I)〜IV)の組み合わせ毎に、運転者特性を学習しうる。運転者特性学習部23はこれらの組み合わせ毎に得られる運転者特性を学習していく。なお、一台の車両を複数の運転者が運転する場合があるので、例えば、キーID毎に運転者特性を学習する。
【0036】
図3、4は、運転者特性DB25に記憶される運転者特性情報の一例を示す。図3、4は、学習される一部の運転者特性を抜き出したものであって、運転者特性の一例として注意散漫度と性急度を学習している。これらの値が大きいほど、注意散漫に陥ったり焦燥感を感じやすいことになり、後述するようにHMIの制限が大きくなる。
【0037】
図3(a)はナビ操作の間違いにより学習される注意散漫度の学習量の一例を示す。ナビ操作を間違うとナビ操作に余計な時間がかかることになり、結果的に運転に割くことができる注意力が低下すると考えられる。このため、ナビ操作を間違うか、間違わないかに応じて、ナビ画面操作時の学習量が設定されている。また、払うべき注意は状況変化の大きい交差点、見通しの悪くなる夜間等の環境情報に応じて異なるので、これら環境情報に応じて学習量が異なっている。例えば、交差点を走行中にナビ操作を間違えると注意散漫度が「+4」増えることになる。学習の結果得られる現在の注意散漫度は、現在学習値として記憶される。現在学習値は、後に、HMIの表示態様をカスタマイズする際に参照される。
【0038】
図3(b)は減速時に学習される注意散漫度の学習量の一例を示す。減速時に減速度が大きい場合、停止又は減速すべき走行環境で減速の開始が遅れていると推定できる。このため、減速度が所定値以上か所定値未満かに応じて、減速時における注意散漫度の学習量が設定されている。また、交差点で大きな減速度で減速することは、歩行者の横断や信号機の表示等に直前まで気づかない状況と推定できるので、注意散漫度の学習量が位置全般よりも大きくなっている。同様に、渋滞列の末尾や渋滞列を走行中に、大きな減速度で減速することは、前方の渋滞に直前まで気づかない状況と推定できるので、渋滞時の注意散漫度の学習量が大きくなっている。
【0039】
図3(c)は前照灯の操作により学習される注意散漫度の学習量の一例を示す。トンネルを走行時、国によっては前照灯を点灯することが法令により義務づけられていることがあるが、トンネルを走行時に前照灯を点灯しないことは走行環境に対する注意力が低下していると推定できる。このため、トンネルの走行時に点灯するか否かに応じて前照灯の操作に基づく注意散漫度の学習量が設定されている。
【0040】
この他、覚醒度が低下している場合、注意力も散漫になると推定してよいので、覚醒度が低下している場合に、注意散漫度の学習量(プラス側)を増大させてもよい。これにより、覚醒度が低い場合にはHMIを制限することができる。なお、覚醒度のみを検出するのでなく、ナビ操作、減速時、前照灯の操作等、の運転者操作情報に加えて覚醒度を検出し、覚醒度が低い場合にのみ注意散漫度を学習してもよいし、覚醒度が低い場合には注意散漫度の学習量(プラス側)を大きくしてもよい。覚醒度により注意が散漫になりやすいことを考慮すると、覚醒度と共に注意散漫度を学習することでより適格に注意散漫度の学習が可能となる。
【0041】
図4(a)は操舵時に学習される性急度の学習量の一例を示す。性急度とは、目的地までの到達を必要以上に急いだり、信号待ちなどで焦燥感に駆られた際に生じうる心理状態を車両操作から検出した指標である。同じ車両操作から注意散漫度を検出してもよいが、本実施形態では便宜的に区別した。
【0042】
運転者が操舵するのは、カーブなどの旋回走行時、交差点の右左折、車線変更時等であるが、操舵時のヨーレートが大きい場合、車両の操舵が急激であると推定できる。このためヨーレートが所定値以上か所定値未満かに応じて、操舵時における性急度の学習量が設定されている。なお、操舵が急激か否かは、ヨーレートでなく横加速度やロール角等から検出してもよい。また、旋回走行、交差点の右左折又は車線変更、のぞれぞれで急激と見なせるヨーレートは異なるので、「所定値」はそれぞれの走行環境に応じて可変とする。
【0043】
図4(b)は車速に基づき学習される性急度の学習量の一例を示す。車速が制限速度を超える場合、目的地に早期に到着したいという心理状態にあると推定できるので、制限速度を守るか否かに応じて、性急度の学習量が設定されている。なお、制限速度に対する感覚は国民性や文化によって異なるので、制限速度そのものでなく制限速度の80%、制限速度の1.2倍などを基準に性急度を学習してもよい。
【0044】
図4(c)は踏切走行時の減速に基づき学習される性急度の学習量の一例を示す。国によっては踏切走行時に一時停止することが義務づけられていることがあるが、踏切走行時に一時停止しないことは目的地に急いで到着したいという心理状態であると推定できる。このため、踏切走行時に一時停止するか否か、すなわち車速がゼロになるか否か応じて性急度の学習量が設定されている。
【0045】
この他、加速時に加速度が大きい場合、目的地に急いで到着したいという心理状態であると推定できるので、加速度が所定値以上か否かに否か応じて性急度の学習量を設定してもよい。
【0046】
一方、停止後、パーキングブレーキをオンにする運転者は、冷静に運転していると推定できる。したがって、運転者特性DB25には、このように冷静な心理状態を推測させる車両操作に対しては、注意散漫度及び性急度を減少させる学習量が対応づけて記憶されている。例えば、パーキングブレーキがオンに操作されると、全ての注意散漫度及び性急度から学習量が低減される。
【0047】
また、図3に示したように降雪時などの特殊な走行環境の運転経験を登録しておくことができる。降雪時にスリップが生じやすくなり視界も不良となるなど運転への負荷が大きいが、さらに降雪時の運転が未経験であれば、ナビゲーション装置100の操作に影響が出やすいと考えられる。そこで、未経験の走行環境が検出された場合、注意散漫度又は性急度が高い場合と同様に、操作ボタンの全ての操作を禁止することで、運転者の操作負荷を低減することができる。
【0048】
学習速度について説明する。どのくらいの頻度で学習量を増減するかに応じて、ナビゲーション装置100の学習速度を調整できる。例えば、減速時の場合、所定値以上又は所定値以下の減速度が検出される度に現在学習値を増減すると、運転者の運転者操作情報を早期に学習できることになる。この場合、一日の走行のうち運転者の操作によっては同じ走行環境に対しHMIを何度かカスタマイズすることができる。一方、数ヶ月などのより長期的な運転者の運転者操作情報を学習する場合、所定値以上又は所定値以下の減速度が例えば10回検出される度に現在学習値を増減するなどにより、長期的な傾向を学習して、頻繁にはカスタマイズされないHMIを提供することができる。本実施形態のナビゲーション装置100は、いずれの学習速度に対しても対応できるが、例えば、運転者が選択して設定できるようになっている。
【0049】
〔HMIのカスタマイズ〕
HMI生成部24は、環境情報に基づき運転者特性DB25を参照して、その運転者に最適なHMIを表示部28に出力する。なお、表示部28は、タッチパネルを搭載した液晶や有機ELなどのフラットパネルディスプレイである。
【0050】
厳密には、前進走行時と後退走行時、駐車場の再検索など所定の走行環境では、走行規制状態でも操作ボタンA、D、Eと異なる操作ボタン(例えば、操作ボタンG)が表示されることがあり得る。したがって、走行環境毎にHMIをカスタマイズしうるが、実際には多くの走行環境において操作ボタンA、D、Eは共通であるとしてよい。本実施例では簡単のため走行操作制限では操作ボタンA、D,Eのみが操作できるとする。そして、この走行操作制限の制限レベルを「0」として、注意散漫度又は性急度の現在学習値に基づき、制限レベルを規定する。
【0051】
図5は、注意散漫度又は性急度の現在学習値と制限レベルの関係を規定する制限レベルテーブル26の一例を示す。制限レベルが大きいほどHMIは大きな制約を受ける。制限レベルテーブル26は、制御部20の不揮発メモリに記憶されている。図示するように、注意散漫度又は性急度それぞれの合計が所定値(図では100)以上では制限レベルが「2」に、99〜30では制限レベルが「1」に規定され、29〜−100では制限レベルが「0」に規定されている。したがって、注意散漫度又は性急度が29〜−100では走行操作制限と同じ操作ボタンが表示される。
【0052】
また、注意散漫度又性急度の現在学習値がマイナスであることは冷静に運転していることを示すため、所定値以下(図では−100以下)では走行操作制限を一部解除するように規定されている。
【0053】
HMI生成部24は運転者特性DB25の注意散漫度の現在学習値、性急度の現在学習値をそれぞれ合計して、制限レベルテーブル26を参照し制限レベルを決定する。決定された制限レベルをどのようにHMIに反映させるかは、HMI規定テーブル27に走行操作制限毎に予め定められている。
【0054】
図5(b)は、制限レベルと表示される操作ボタンとの関係を規定するHMI規定テーブル27の一例を示す。HMI規定テーブル27は、制御部20の不揮発メモリに記憶されている。操作ボタンA、D、Eが走行操作制限の場合、制限レベル「2」ではいっさい操作ボタンが表示されなくなり、制限レベル「1」では操作ボタンA、Eのみが表示され、制限レベル「0」では操作ボタンA、D、Eが表示される。そして、注意散漫度又は性急度が所定値以下の冷静な状態では、走行操作制限が一部解除され、操作ボタンBが表示されるようになる。
【0055】
また、走行操作制限において表示される操作ボタンが操作ボタンA、B、C、D、Eの場合、制限レベル「2」では操作ボタンEのみが表示され、制限レベル「1」では操作ボタンA、E、Dのみが表示され、制限レベル「0」では操作ボタンA、B、C、D、Eが表示される。そして、注意散漫度又は性急度が所定値以下の冷静な状態では、走行操作制限が一部解除され、操作ボタンFが表示されるようになる。
【0056】
このように、走行操作制限毎に、操作が複雑な操作ボタンほど表示されにくくしておことで、注意力が散漫したか又は性急な運転者の運転負荷を低減することができる。
【0057】
そして、表示する操作ボタンの数が決定されれば、操作性、意匠性、に配慮されたHMIを提供すればよいことになる。各操作ボタンの大きさが共通であるとすれば、最終的にHMIは操作ボタンの数によって規定することができる。図6は、操作ボタンの数とHMIの関係の一例を示す図である。図6(a)は表示する操作ボタンが0個の場合のHMIの一例を示す。操作ボタンが0個の場合、例えば全ての操作ボタンをトーンダウンして表示する。トーンダウンであるので、運転者は各操作ボタンを視認することができるが、仮に操作しても対応する機能は提供されない。トーンダウンするだけであれば各操作ボタンの位置が変わらないので、運転者は違和感なくナビゲーション装置を操作することができる。
【0058】
また、図6(a)の右側に示すように、トーンダウンでなく、選択できない操作ボタンを一切表示しなくてもよい。実際には道路地図などが表示されるが、操作ボタンが一切表示されないため、運転者が操作を試みることがなくなり運転負荷を低減できる。
【0059】
同様に、図6(b)は操作ボタンが1個の場合のHMIを示し、図6(c)は操作ボタンが2個の場合のHMIを示し、図6(d)は操作ボタンが3個の場合のHMIを示し、図6(e)は操作ボタンが4個の場合のHMIを示す。いずれの場合も、表示する操作ボタン以外はトーンダウンして表示するHMIと、選択できる操作ボタンのみ画面に拡大して表示するHMIがある。なお、トーンダウンするHMI又は拡大表示するHMIのどちらを表示するかを、運転者が設定できるようにしてもよい。
【0060】
拡大表示するHMIの場合、輝度や色をそのまま表示してもよいが、運転者の操作負荷を低減するという観点からは輝度を高くしたり色の彩度を上げて運転者の視認性を向上させることが好ましい。
【0061】
なお、図5(b)又(c)に示す操作ボタンの組み合わせ毎に、予めHMIを規定するファイルを記憶しておいてもよい。これにより、表示する操作ボタンの数は同じでも各操作ボタンの大きさや色を変えるなど、HMIの表現を豊富にできる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態のナビゲーション装置100は、運転者毎にHMIをカスタマイズできるので操作性を向上させることができる。HMIのカスタマイズは、同一の運転者に施されるので、運転に疲れて注意力が散漫となった運転者に対しては操作ボタンを少なくして操作負荷を低減でき、また、何ヶ月かを経て冷静な運転ができるようになった運転者には表示する操作ボタンを多くすることもできる。したがって、運転者特性に応じて柔軟にHMIをカスタマイズすることができる。
【0063】
〔ナビゲーション装置100の動作手順〕
図7(a)はナビゲーション装置100が運転者特性を学習する手順を示すフローチャート図の一例を、図7(b)は学習結果に応じてHMIをカスタマイズする手順を示すフローチャート図の一例を、それぞれ示す。図7(a)及び図7(b)の手順は所定のサイクル時間毎に繰り返し実行される。
【0064】
運転者操作情報取得部21は、運転者操作情報を検出したか否かを判定する(S10)。運転者操作情報は、ナビ画面の操作、減速、加速、前照灯のオン、操舵等である。これらの運転者操作情報を検出した場合(S10のYes)、運転者操作情報に対応して学習する環境情報が検出されたか否かを判定する(S20)。例えば、ナビ操作の間違いであれば、車両の位置に関わらず学習量が増減され、前照灯のオンであればトンネルを通過時に学習量が増減される。なお、ステップS10とS20は順不同であって、踏切の一時停止の有無のように一時停止をしないという運転者操作情報を検出するため、先にステップS20の環境情報を検出してもよい。
【0065】
環境情報が検出された場合、運転者特性学習部23は、運転者操作情報と環境情報に対応する現在学習値を増減する(S30)。ナビゲーション装置100は以上の処理を繰り返す。
【0066】
このようにして学習された現在学習値に基づき、HMI生成部24は運転者毎にHMIをカスタマイズする。まず、HMI生成部24は、予め定められている走行操作制限の操作ボタンを読み出す(S110)。
【0067】
ついで、HMI生成部24は、注意散漫度又は性急度に応じて制限レベルを決定し(S120)、制限レベルに応じて表示する操作ボタンを決定する(S130)。そして、操作ボタンの数に応じて最終的なHMIを生成する(S140)。
【0068】
以上説明したように、本実施形態のナビーション装置100は、運転者特性に応じてHMIをカスタマイズできるので、操作性を向上させることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、車両の走行時のHMIをカスタマイズする形態を例に説明したが、停止時のHMIをカスタマイズすることもできる。停止時には操作ボタンA〜Eの全てが表示されるが、車両が停止後すぐに走行を再開する走行環境(例えば、信号待ち、渋滞)では、運転者がナビの操作を開始した直後に走行を再開することになってしまう。このため、例えば、HMI生成部24は、停止時間が所定値以上になることを予想した場合にのみ、全ての操作ボタンA〜Eを表示し、それ以外は走行中と同じように選択可能な操作ボタンを制限する。これにより、注意散漫度や性急度が高い運転者に対し、ナビ操作の時間が十分にない場合は停止しても(パーキングブレーキをオンにしても)、操作が複雑でない操作ボタンのみが表示されるので、運転者の操作負荷を低減できる。停止時間が所定値以上になることは、例えば信号機との路車間通信により受信した青信号に切り替わるまでの時間、前方に渋滞した車両との車車間通信により受信した渋滞距離、等から検出される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】ナビゲーション装置のHMIの一例を示す図である。
【図2】ナビゲーション装置の機能ブロック図の一例である。
【図3】運転者特性情報の一例を示す図である。
【図4】運転者特性情報の一例を示す図である。
【図5】制限レベルテーブル、HMI規定テーブルの一例を示す図である。
【図6】操作ボタンの数とHMIの関係の一例を示す図である。
【図7】ナビゲーション装置100が運転者特性を学習する手順、及び、HMIをカスタマイズする手順を示すフローチャート図の一例である。
【符号の説明】
【0071】
11 操作部
12 各ECU
13 各センサ
14 位置取得部
20 制御部
21 運転者操作情報取得部
22 環境情報取得部
23 運転者特性学習部
24 HMI生成部
25 運転者特性DB
28 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部に表示された操作部の接触位置により操作されるナビゲーション装置において、
走行時の車両操作を検出する車両操作検出手段と、
前記車両操作検出手段が検出した前記車両操作に基づき、運転者操作情報を取得する車両操作取得手段と、
前記運転者操作情報に基づき運転者の運転者特性を学習する運転者特性学習手段と、
前記運転者特性学習手段が学習した学習結果に応じて、前記操作部の表示態様を変更する操作部生成手段と、
を有することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
走行時の車両環境を検出する車両環境検出手段と、
前記車両環境検出手段が検出した前記車両環境に基づき、車両環境情報を取得する環境情報取得手段と、を有し、
前記運転者測定学習手段は、所定の車両環境における前記運転者操作情報に基づき運転者の運転者特性を学習する、
ことを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記操作部に複数の操作ボタンが配置される場合、
前記操作部生成手段は、前記学習結果に基づき、走行時に表示する初期設定の前記操作ボタンの数よりも、少ない数の前記操作ボタンを選択可能に表示する、
ことを特徴とする請求項2記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記操作部に複数の操作ボタンが配置される場合、
前記操作部生成手段は、前記学習結果に基づき、走行時に表示する初期設定の前記操作ボタンのうち、乗員が選択可能でない前記操作ボタンを選択可能な前記操作ボタンよりもトーンダウンして表示する、
ことを特徴とする請求項2記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記操作部に複数の操作ボタンが配置される場合、
前記操作部生成手段は、前記学習結果に基づき、走行時に表示する初期設定の前記操作ボタンの数よりも、多い数の前記操作ボタンを選択可能に表示する、
ことを特徴とする請求項2記載のナビゲーション装置。
【請求項6】
前記運転者特性学習手段は、運転者の注意散漫度又は性急度を学習し、
前記操作部生成手段は、注意散漫度又は性急度が大きいほど、少ない数の前記操作ボタンを選択可能に表示する、
ことを特徴とする請求項3〜5いずれか1項記載のナビゲーション装置。
【請求項7】
表示部に表示された操作部の接触位置により操作されるナビゲーション装置の操作部表示方法において、
車両操作検出手段が、走行時の車両操作を検出するステップと、
車両操作取得手段が、前記車両操作検出手段が検出した前記車両操作に基づき、運転者操作情報を取得するステップと、
運転者特性学習手段が、前記運転者操作情報に基づき運転者の運転者特性を学習するステップと、
操作部生成手段が、運転者特性学習手段が学習した学習結果に応じて、前記操作部の表示態様を変更するステップと、
を有することを特徴とする操作部表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−257832(P2009−257832A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104733(P2008−104733)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】