説明

ナビゲーション装置

【課題】車両に搭載された複数の燃料電池を効率良く使用させることができるナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】制御計画作成部7は、案内経路が探索されると、自車両がその案内経路を走行し終えた時点の各バッテリ4FL〜4RRの使用比率が均等化するようにモータ3FL〜3RRの制御計画を作成する。駆動制御部8は、経路案内が実行される期間において、制御計画と自車両の現在位置とに基づいてバッテリ4FL〜4RRからの電力供給およびモータ3FL〜3RRの駆動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4つ以上の車輪を個別に駆動するモータおよび当該モータを駆動するための電力を供給する複数の燃料電池を備えた車両に搭載されるナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、道路状況に応じて駆動輪を的確に選択する電気自動車の駆動装置が開示されている。この特許文献1の技術では、例えば、車両が左カーブを曲がる場合には、遠心力の生じる車両右側に配置されている車輪を駆動輪とする。また、車両が坂道を登る場合には、車両後側に配置されている車輪を駆動輪とする。このようにすることで、車輪と路面との摩擦力を有効に利用するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3720316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、同じ車輪が駆動輪として選択される期間が長くなると、その車輪を駆動するモータに電力を供給するように割り当てられたバッテリ(燃料電池)だけが消費される。例えば、長い山道を登り続ける経路を走行する場合には、複数のバッテリのうち、後輪を駆動するモータに電力を供給するように割り当てられたバッテリだけが消費されることになる。その結果、バッテリ毎に電圧差が生じて電源としての効率が低下してしまう。また、バッテリ毎の寿命の差が生じてしまうという問題も考えられる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両に搭載された複数の燃料電池を効率良く使用させることができるナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の手段によれば、経路案内手段は、設定された出発地から目的地までの案内経路を探索して経路案内を行う。この経路案内が実行される場合、自車両がこれから走行する道路の状況(例えばカーブ、坂道など)を探索された案内経路から把握することが可能となる。そこで、制御計画作成手段は、案内経路が探索されると、自車両がその案内経路を走行し終えた時点での複数の燃料電池のそれぞれの使用比率が均等化するようにモータ毎の制御計画を作成する。そして、経路案内が実行される期間には、駆動制御手段と通信を行うことにより、駆動制御手段が上記制御計画と自車両の現在位置とに基づくモータの駆動制御を行う。これにより、案内経路走行後に所定の燃料電池の消費量が多くなることが抑制され、車両に搭載された複数の燃料電池を効率良く使用させることができる。さらに、例えば案内経路を走行する前の時点で、複数の燃料電池のそれぞれの使用比率、つまり燃料電池の残量が異なっていた場合でも、案内経路走行後には各燃料電池の残量が均等化される、という効果が得られる。
【0007】
請求項2記載の手段によれば、案内経路に含まれているカーブを走行することにより燃料電池の使用比率に差が生じる場合、制御計画作成手段は、その案内経路に含まれている直線の経路については使用比率の少ない燃料電池により電力供給されるモータを優先して使用するように制御計画を作成する。従って、駆動制御手段がその制御計画に基づいてモータの駆動を制御すれば、カーブを走行することにより生じた燃料電池の使用比率の差を直線の経路を走行する際の燃料電池の使用比率に差を持たせることにより吸収し、使用比率を均等化させるので、複数の燃料電池を効率良く使用させることができる。
【0008】
請求項3記載の手段によれば、案内経路に含まれている坂道を走行することにより燃料電池の使用比率に差が生じる場合、制御計画作成手段は、その案内経路に含まれている無勾配の経路については使用比率の少ない燃料電池により電力供給されるモータを優先して使用するように制御計画を作成する。従って、駆動制御手段がその制御計画に基づいてモータの駆動を制御すれば、坂道を走行することにより生じた燃料電池の使用比率の差を無勾配の経路を走行する際の燃料電池の使用比率に差を持たせることにより吸収し、使用比率を均等化させるので、複数の燃料電池を効率良く使用させることができる。
【0009】
請求項4記載の手段によれば、経路案内が中止されると、自車両がこれから走行する道路の状況を把握できない。このような場合には、駆動制御手段と通信を行うことにより、制御計画に基づくモータの駆動制御を中止させる。これにより、駆動制御手段は、一般的なモータの駆動制御を実行することになり、車両を通常どおり走行させることができる。
【0010】
請求項5記載の手段によれば、経路案内が実行される期間に位置検出手段により検出された自車両の現在位置が案内経路から所定回数外れた場合には、自車両が経路案内を無視して走行している可能性が高く、その場合には、自車両がこれから走行する道路の状況を把握できない。このような場合には、駆動制御手段と通信を行うことにより、制御計画に基づくモータの駆動制御を中止させる。これにより、駆動制御手段は、一般的なモータの駆動制御を実行することになり、車両を通常どおり走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す電気自動車の駆動システムの構成図
【図2】ナビゲーション装置の構成を示すブロック図
【図3】案内開始データの一例を示す図
【図4】経路データの一例を示す図
【図5】案内経路の一例を概略的に表す図
【図6】本発明の第2の実施形態を示す図1相当図
【図7】本発明の第3の実施形態を示す図1相当図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1〜図5を参照しながら説明する。
図1は、電気自動車の駆動システムの全体構成を概略的に示している。電気自動車1(車両に相当)は、4つの車輪2FL(左前輪)、2FR(右前輪)、2RL(左後輪)、2RR(右後輪)に対し、モータ3FL、3FR、3RL、3RRがそれぞれ配置されており、各車輪2FL〜2FRの駆動力を個別に制御可能となっている。各モータ3FL〜3RRは、電源部4からそれぞれインバータ5FL、5FR、5RL、5RRを介して電力の供給を受けて駆動されるようになっている。また、各モータ3FL〜3RRにおいて回生動作が行われると、それぞれ各インバータ5FL〜5RRを介して電源部4に電力が回生されるようになっている。
【0013】
電源部4は、4つのバッテリ4FL、4FR、4RL、4RR(燃料電池に相当)を備えている。4つのバッテリ4FL〜4RRは、それぞれインバータ5FL〜5RRに個別に電力供給を行うように構成されている。なお、電源部4は、各バッテリ4FL〜4RRを任意の組み合わせで直列または並列に接続可能にするスイッチ回路を備えた構成としてもよい。その場合、インバータ5FL〜5RRに対し、各バッテリ4FL〜4RRの組み合わせに応じた様々な態様(電圧、電流)の電力供給を行うことが可能となる。
【0014】
電気自動車1に搭載されるナビゲーション装置11は、管理ユニット6との通信が可能であり、管理ユニット6に対し、経路データ(詳細は後述する)を含むデータの送信などを行う。管理ユニット6は、制御計画作成部7(制御計画作成手段に相当)および駆動制御部8(駆動制御手段に相当)を備えている。制御計画作成部7は、ナビゲーション装置11から与えられる経路データが示す経路について、各モータ3FL〜3RRのそれぞれの駆動に関する制御計画を作成(立案)する。この際、制御計画作成部7は、道路状況に対応する下記(1)〜(5)の条件を満たすように且つ各モータ3FL〜3RRの駆動比率、すなわち各モータ3FL〜3RRに対する電力供給を行うように割り当てられた各バッテリ4FL〜4RRの使用比率が上記経路走行後において均等化するように制御計画を作成する。
【0015】
(1)無勾配の経路(平坦路)について
4つの車輪2FL〜2RRのうち、少なくとも1つを駆動輪とする。
(2)上り坂について
後側に荷重がかかるため、車輪2RL(左後輪)、車輪2RR(右後輪)のいずれか一方、または両方を駆動輪とする。
(3)下り坂について
前側に荷重がかかるため、車輪2FL(左前輪)、車輪2FR(右前輪)のいずれか一方、または両方を駆動輪とする。
(4)右カーブについて
左側に遠心力が生じるため、車輪2FL(左前輪)、車輪2RL(左後輪)のいずれか一方、または両方を駆動輪とする。
(5)左カーブについて
右側に遠心力が生じるため、車輪2FR(右前輪)、車輪2RR(右後輪)のいずれか一方、または両方を駆動輪とする。
【0016】
制御計画作成部7は、上記条件を満たすように作成した制御計画に応じた制御指令を駆動制御部8に出力する。駆動制御部8には、車速を検出するための車速センサ9および加減速を検出するためのGセンサ10からの検出信号が与えられている。駆動制御部8は、制御計画作成部7から与えられる制御指令と、上記各センサ9、10からの検出信号とに基づいて、インバータ5FL〜5RRを介してモータ3FL〜3RRの駆動を制御する。また、駆動制御部8は、電源部4のバッテリ4FL〜4RRからインバータ5FL〜5RRに対する電力供給についての制御も行う。
【0017】
図2は、ナビゲーション装置11の構成を機能ブロックにより概略的に示している。ナビゲーション装置11は、この装置の動作全般を制御する制御装置12に対して、位置検出器13、地図データ入力器14、外部メモリ15、操作スイッチ群16、リモコンセンサ17、表示装置18および音声出力装置19が接続された構成を備えている。
制御装置12(経路案内手段に相当)は、CPU、ROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータを主体として構成されている。このうち、ROMにはナビゲーション機能のためのプログラムなどが格納され、RAMにはプログラム実行時の処理データや地図データ入力器14を介して取得した道路地図データなどが一時的に格納される。
【0018】
位置検出器13は、車両の相対方位を検出するためのジャイロスコープ20、車両の走行距離を検出する距離センサ21およびGPS(Global Positioning System)用人工衛星からの信号を受信するGPS受信機22から構成されている。位置検出器13は、上記各位置検出要素の検出信号を補間しながら高精度に車両の位置を検出するようになっている。なお、要求される検出精度によってはこれらの一部のみで構成してもよいし、さらに、車両の絶対方位を検出するための地磁気センサなどを加えてもよい。
【0019】
地図データ入力器14は、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリなどのような大容量の情報記憶媒体を利用して各種データを入力するためのものである。この各種データとしては、道路地図データ、目印データ、マップマッチング用データ、目的地データ(施設データベース)、交通情報を道路データに変換するためのテーブルデータなどがある。道路地図データには、道路形状、道路幅、道路名、信号、踏切、建造物、各種施設、地名、地形等のデータが含まれるとともに、その道路地図を表示装置18の画面上に表示するためのデータが含まれている。各道路について一方通行、進入禁止などが設定されている場合には、それら交通規則情報も併せて記録されている。
【0020】
目的地データは、駅等の交通機関、レジャー施設、宿泊施設、公共施設等の施設や、小売店、デパート、レストラン等の各種の店舗、住居やマンション、地名などに関する情報からなる。この目的地データには、それらの電話番号や住所、その施設の緯度および経度等のデータが含まれている。また、目的地データには、その施設を示すランドマーク等を表示装置18の画面上に道路地図に重ね合せて表示するためのデータも含まれている。
【0021】
外部メモリ15は、データ書き換え可能な不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリなど)やハードディスクにより構成されている。外部メモリ15は、例えば、地点登録データ、音楽データ、映像データなどの特定データの保存や呼出などを行うために設けられている。
【0022】
操作スイッチ群16は、表示装置18の画面の近傍に設けられたメカニカルスイッチ、表示装置18の画面上に設けられるタッチパネル等から構成されている。この操作スイッチ群16は、車両の目的地、目的地の検索に必要な情報(目的地検索条件)、通過点などの入力や、表示装置18の画面や表示態様の切り替え(地図縮尺変更、メニュー表示選択、経路探索、経路案内開始、現在位置修正、音量調整等)を行うための各種のコマンドを制御装置12に与えるために設けられている。
【0023】
リモコン23には複数の操作スイッチ(図示せず)が設けられており、そのスイッチ操作によりリモコン23からリモコンセンサ17を介して各種の指令信号(コマンド)が制御装置12に送信される。なお、操作スイッチ群16とリモコン23とは、いずれの操作によっても制御装置12に同様の機能を実行させることが可能となっている。
【0024】
表示装置18は、地図や文字等を表示するためのカラー液晶ディスプレイ等から構成されており、車両の運転席近傍に設置されている。表示装置18の画面には、車両の位置周辺の地図が各種縮尺で表示されるとともに、その表示に重ね合わせて車両の現在位置と進行方向とを示す自車位置マークが表示される。また、目的地までの経路案内の実行時には経路案内用の画面が表示され、ユーザが目的地の検索に必要な情報等を入力したり、目的地の検索や設定を行うための入力用の画面や、各種のメッセージ等も表示される。
【0025】
音声出力装置19は、制御装置12から与えられる音声出力指令に基づく音声を例えばスピーカにより出力する。このスピーカから出力される音声は、案内に関する音声、操作説明に関する音声などである。
【0026】
制御装置12は、そのソフトウエア的構成(プログラムの実行)により、自車両の現在位置を知らせるロケーション機能を実現するとともに、指定された目的地までの経路を探索して案内する経路案内機能を実現する。ロケーション機能は、地図データ入力器14を介して取得した道路地図データに基づいて表示装置18に道路地図を各種縮尺で表示させるとともに、位置検出器13により検出される自車両の現在位置と進行方向とを示す現在地マークをその道路地図上に重ね合わせて表示させるものである。また、自車両の走行に伴って現在地マークが道路地図上を相対的に移動するとともに、道路地図がスクロール表示されるようになっている。このとき、自車両の現在位置を道路上にのせるマップマッチングが行われる。
【0027】
経路案内機能は、出発地(現在位置)からユーザにより指定された目的地までの推奨する案内経路(走行経路)を探索(計算)し、求められた目的地までの経路を案内するものである。この経路探索の手法としては、例えばダイクストラ法が用いられる。この経路案内時には、表示装置18の画面に、上記道路地図および現在地マークに加え、走行すべき案内経路が目立つ色で表示される。また、この経路案内時には、所定のタイミング毎に音声出力装置19から案内音声が出力される。画面内に目的地が存在する場合には、目的地マークも表示される。
【0028】
制御装置12は、上記経路案内を開始する際、管理ユニット6に対し、経路案内に関するデータを送信する。図3および図4は、上記経路案内に関するデータの一例をデータテーブルとして示している。このうち、図3は案内開始データを示し、図4は経路データを示している。なお、図3および図4のデータの値は10進数で示している。
【0029】
図3および図4において、「種別」は2バイトのデータであり、データの種別を表している。案内開始データの「種別」は「0」とし、経路データの「種別」は「1」としている。なお、経路データは、この「種別」から「標高」までを1つのデータ列とし、1つのデータ列は地図上のリンク(線)を表している。「番号」は4バイトのデータである。案内開始データの「番号」は「0」に固定されている。経路データの「番号」は、継続番号を表しており、出発地から次の地点までのリンクを表す最初のデータ列では「1」とし、以降、各データ列ごとに1ずつインクリメントされ、目的地の1つ前の地点から目的地までのリンク(経路データの最終リンク)を表す最終のデータ列では「0」としている。
【0030】
「方向」は2バイトのデータである。案内開始データでは「方向」は使用しないため、どのような値でも構わないようにしている(図3では−で表す)。経路データの「方向」は、各データ列が表すリンクの方向(進行方向)を表しており、北を0[度]とした場合の時計回りの角度[度]となっている。なお、「方向」は形状点に対する方向でもよい。
【0031】
「距離」は2バイトのデータである。案内開始データでは「距離」は使用しないため、どのような値でも構わないようにしている(図3では−で表す)。経路データの「距離」は、各データ列が表すリンクの距離(継続距離)を表しており、単位がメートルとなっている。「標高」は2バイトのデータであり、単位がメートルとなっている。案内開始データの「標高」は、出発地の標高(高度)を表している。経路データの「標高」は、各データ列が表すリンクの終点の高度を表している。なお、「標高」は、上記したようにリンクの終点の高度を絶対値で表す代わりに、リンクの始点と終点の高度差を相対値として表してもよい。
【0032】
図5は、図4の経路データが表す案内経路の概要を示している。この案内経路について、図4および図5を参照しながら説明する。この案内経路において、出発地N1(標高=20m)から次の地点N2までの区間は、無勾配の200mの直線経路となっている。この区間の進行方向は0度(北)方向である。地点N2から次の地点N3(標高=21m)、N4(標高=22m)を通過して地点N5(標高=23m)に至るまでの区間は、緩やかな上りの300mの直線経路となっている。従って、この区間の進行方向も0度方向である。
【0033】
地点N5から地点N6(標高=23m)までの区間は、標高は変化しないが進行方向が90度変化して90度(東)方向となる。このため、地点N5から直角に右折し、90度方向への無勾配の200mの直線経路となる。地点N6から次の地点N7(標高=25m)までの区間は、標高が2m高くなるが進行方向は90度方向のままである。このため、この区間は、やや急な上りの100mの直線経路となっている。
【0034】
地点N7から次の地点N8(標高=25m)までの区間は、標高は変化しないが進行方向が10度変化して80度方向となる。このため、この区間は、無勾配の100mの緩やかな左カーブとなる。地点N8から次の地点N9(標高=26m)までの区間は、標高が1m高くなるが進行方向は80度方向のままである。このため、この区間は、緩やかな上りの100mの直線経路となっている。
【0035】
地点N9から次の地点N10(標高=30m)までの区間は、標高が4m高くなり且つ進行方向が10度変化して70度方向となる。このため、この区間は、急な上りの200mの緩やかな左カーブとなる。地点N10から次の地点N11(標高=27m)までの区間は、標高が3m低くなり且つ進行方向が10度変化して60度方向となる。このため、この区間は、やや急な下りの200mの緩やかな左カーブとなる。
【0036】
地点N11から目的地N12(標高=24m)までの区間は、標高が3m低くなり且つ進行方向が10度変化して50度方向となる。このため、この区間は、やや急な下りの200mの緩やかな左カーブとなる。上記したとおり、図4および図5に示す案内経路は、序盤から終盤に差し掛かるまでは坂道を上る経路(上り坂)が多く、終盤に坂道を下る経路(下り坂)となっている。また、経路の中盤から終盤にかけて左カーブが多くなっている。
【0037】
次に、上記構成の作用について説明する。
まず、ユーザにより目的地が設定されると、ナビゲーション装置11において経路探索が行われる。なお、ここでは、図5に示した経路が探索されたこととする。ナビゲーション装置11は、経路探索が完了すると、経路案内動作を開始するとともに、管理ユニット6の制御計画作成部7に案内開始データ(図3参照)および経路データ(図4参照)を送信する。
【0038】
制御計画作成部7は、案内開始データにより経路案内が開始されることを検出すると、経路データに従ってモータ3FL〜3RRの個別の制御計画を作成する。この場合の案内経路(図5参照)は、全体的に坂道を上る経路が多くなっている。坂道を上る区間は、車輪2RL(左後輪)および車輪2RR(右後輪)の駆動比率、つまりバッテリ4RL、4RRの使用比率が高くなる。そこで、例えば地点N1〜N2の間などの無勾配の経路において、車輪2FL(左前輪)および車輪2FR(右前輪)を優先して駆動させる、つまりバッテリ4FL、4FRを優先して使用させるような制御計画を作成する。
【0039】
また、上記案内経路では、中盤から終盤にかけて連続して左カーブが存在している。左カーブを走行する区間は、車輪2FR(右前輪)および車輪2RR(右後輪)の駆動比率、つまりバッテリ4FR、4RRの使用比率が高くなる。そこで、例えば地点N1〜N2の間などの直線の経路において、車輪2FL(左前輪)および車輪2RL(左後輪)を優先して駆動させる、つまりバッテリ4FL、4RLを優先して使用させるような制御計画を作成する。
【0040】
なお、ここでは、上り坂および左カーブの多い案内経路の場合について説明したが、下り坂および右カーブの多い案内経路の場合についても、同様の考え方に基づいて制御計画を作成すればよい。すなわち、制御計画作成部7は、全体的に坂道を下る経路が多い案内経路の場合、無勾配の経路において、車輪2RL(左後輪)および車輪2RR(右後輪)を優先して駆動させるような制御計画を作成すればよい。また、全体的に右カーブが多い案内経路の場合、直線の経路において、車輪2FR(右前輪)および車輪2RR(右後輪)を優先して駆動させるような制御計画を作成すればよい。
【0041】
制御計画作成部7は、上記のようにして作成した制御計画に応じた制御指令を駆動制御部8に出力する。駆動制御部8は、車速センサ9の検出信号に基づいて自車両の走行距離を計算し、その走行距離から案内経路中の自車両の現在位置を推定する。駆動制御部8は、推定した現在位置と制御指令とに基づいて、各インバータ5FL〜5RRに対する電力供給および各モータ3FL〜3RRの駆動を制御する。また、駆動制御部8は、Gセンサ10の検出信号に基づいてブレーキ動作の有無を検出する。駆動制御部8は、ブレーキ動作がなされたことを検出すると、全てのモータ3FL〜3RRを回生動作させる。これにより、全ての車輪2FL〜2RRに対し、回生ブレーキが作用することになる。
【0042】
駆動制御部8は、推定した自車両の現在位置が案内経路から外れたことを所定回数以上検出すると、制御指令に基づく制御の実行を中止する。また、ユーザにより経路案内を中止する操作がなされると、ナビゲーション装置11は、制御計画作成部7に対し、経路案内の中止を示すデータを送信する。これを受けて、制御計画作成部7は、駆動制御部8に対し、制御指令に基づく制御の中止を指令するデータを送信する。これにより、駆動制御部8は、制御指令に基づく制御の実行を中止する。このように、制御指令に基づく制御の実行が中止された場合、駆動制御部8は、例えば車輪2FL〜2RRを全て駆動させるなど、一般的なモータの駆動制御を実行する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば次のような効果が得られる。
制御計画作成部7は、案内経路が探索されると、自車両がその案内経路を走行し終えた時点での各バッテリ4FL〜4RRの使用比率が均等化するようにモータ3FL〜3RRの制御計画を作成する。そして、駆動制御部8は、経路案内が実行される期間において、制御計画と自車両の現在位置とに基づいて、バッテリ4FL〜4RRからの電力供給およびモータ3FL〜3RRの駆動を制御する。これにより、案内経路走行時に特定のバッテリの消費量が多くなることが抑制される。従って、各バッテリ4FL〜4RRを効率良く使用させることができるとともに、各バッテリ4FL〜4RRの寿命に差が生じることを抑制できる。
また、案内経路走行前に各バッテリ4FL〜4RRの消費量に差が生じている場合であっても、案内経路走行後には、各バッテリ4FL〜4RRの消費量は均等化されるので、各バッテリ4FL〜4RRにおいて電圧差が生じることによる寿命の低下が抑制される。
【0044】
案内経路に含まれている坂道を走行することにより各バッテリ4FL〜4RRの使用比率に差が生じる場合、制御計画作成部7は、その案内経路に含まれている無勾配の経路については使用比率の少ないバッテリにより電力供給されるモータを優先して使用するように制御計画を作成する。このように、無勾配の経路を走行する際のバッテリ4FL〜4RRの使用比率に差を持たせることで、坂道を走行することにより生じた各バッテリ4FL〜4RRの使用比率の差を吸収し、使用比率を均等化させる。これにより、4つのバッテリ4FL〜4RRを効率良く使用させることができる。
【0045】
案内経路に含まれているカーブを走行することにより各バッテリ4FL〜4RRの使用比率に差が生じる場合、制御計画作成部7は、その案内経路に含まれている直線の経路については使用比率の少ないバッテリにより電力供給されるモータを優先して使用するように制御計画を作成する。このように、直線の経路を走行する際のバッテリ4FL〜4RRの使用比率に差を持たせることで、カーブを走行することにより生じた各バッテリ4FL〜4RRの使用比率の差を吸収し、使用比率を均等化させる。これにより、4つのバッテリ4FL〜4RRを効率良く使用させることができる。
【0046】
駆動制御部8は、推定した自車両の現在位置が案内経路から外れたことを所定回数以上検出すると、制御指令に基づく制御の実行を中止する。また、ユーザにより経路案内を中止する操作がなされると、ナビゲーション装置11は、駆動制御部8の制御指令に基づく制御を中止させるように管理ユニット6と通信を行う。これにより、駆動制御部8は、制御指令に基づく制御の実行を中止する。このように、自車両がこれから走行する道路の状況を把握することができなくなった場合、駆動制御部8は、例えば車輪2FL〜2RRを全て駆動させるなど、一般的なモータの駆動制御を実行することが可能となり、電気自動車1を通常どおり走行させることができる。
【0047】
駆動制御部8は、制御計画作成部7により、これから走行する案内経路の道路状況(カーブ、勾配など)に応じて駆動する車輪を選択するように予め作成された制御計画に基づいて、モータ3FL〜3RRの駆動を制御する。このような構成によれば、勾配やカーブなどの道路状況を検出するためのストロークセンサや操舵角センサなどの各種センサを用いることなく、道路状況に適した駆動輪の切り替えを行うことができる。また、各種センサを使用しないので、検出動作などに起因する駆動輪切り替えの遅れが生じることがない。さらに、各種センサを搭載しない分だけ製造コストを低減できる。
【0048】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図6を参照しながら説明する。図6は、第1の実施形態における図1相当図であり、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。第1の実施形態では、制御計画作成手段としての機能は管理ユニット6が備えていた。これに対し、本実施形態では、制御計画作成手段としての機能をナビゲーション装置側に設けている。
【0049】
すなわち、ナビゲーション装置31は、制御計画作成部7と同様の機能を持つ制御計画作成部32(制御計画作成手段に相当)を備えている。制御計画作成部32は、例えば、ナビゲーション装置31における制御装置12のソフトウエア的な構成により実現される。管理ユニット33は、管理ユニット6の構成から制御計画作成部7を省いた構成となっている。
【0050】
制御計画作成部32は、案内経路が探索されると、その案内経路について、第1の実施形態と同様の考え方で、各モータ3FL〜3RRのそれぞれの駆動に関する制御計画を作成する。そして、制御計画作成部32は、作成した制御計画に応じた制御指令を、管理ユニット33の駆動制御部8に出力する。駆動制御部8は、第1の実施形態と同様に、上記制御指令と各センサ9、10の検出信号に基づいて、各インバータ5FL〜5RRに対する電力供給および各モータ3FL〜3RRの駆動を制御する。従って、このように、制御計画作成手段としての機能をナビゲーション装置31側に設けた本実施形態の構成によっても、第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0051】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について図7を参照しながら説明する。図7は、第1の実施形態における図1相当図であり、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。第1の実施形態および第2の実施形態では、制御計画作成手段としての機能は、管理ユニット6またはナビゲーション装置31のいずれか一方が備えていた。これに対し、本実施形態では、制御計画作成手段としての機能を2つに分割し、ナビゲーション装置および管理ユニットの両方に設けている。
【0052】
すなわち、ナビゲーション装置41は、制御計画作成部7の一部の機能を分担する制御計画作成部42を備えている。制御計画作成部42は、例えば、ナビゲーション装置41における制御装置12のソフトウエア的な構成により実現される。管理ユニット43は、制御計画作成部7の一部の機能を分担する制御計画作成部44を備えている。これら制御計画作成部42および制御計画作成部44は、互いに通信を行うことで制御計画作成手段としての機能を実現するようになっている。従って、このように、制御計画作成手段としての機能を2つに分割し、ナビゲーション装置41および管理ユニット43の両方に設けた本実施形態の構成によっても、第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0053】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、次のような変形または拡張が可能である。
電気自動車1の車輪の数は4つ以上であってもよい。また、4つの車輪2FL〜2RRの全てに対応してモータ3FL〜3RRおよびインバータ5FL〜5RRがそれぞれ設けられているものに限らず、モータおよびインバータは少なくとも2組あればよい。例えば2つの前輪(または後輪)のそれぞれに対応して設けられていたり、2つの前輪、2つの後輪に対応してそれぞれ1つずつ設けられていてもよい。
ナビゲーション装置が搭載される車両は、バッテリ4FL〜4RRを電源として駆動する電池式の電気自動車1に限らずともよく、水素燃料電池を電源として駆動する水素燃料式またはアルコールを用いるアルコール燃料式の電気自動車や、ガソリンエンジンとの組み合わせで構成されるハイブリッド型の電気自動車でもよい。従って、本発明で言う燃料電池は、水素燃料電池やアルコール直接供給式燃料電池も含んでいる。
【0054】
駆動制御部8が車速センサ9の検出信号に基づき推定する自車両の現在位置には、誤差が生じる可能性がある。一方、ナビゲーション装置11は、位置検出器13を有しており、自車両の現在位置を検出している。そこで、管理ユニット6は、ナビゲーション装置11から現在位置を示すデータを定期的に受信するように通信を行い、このデータに基づいて駆動制御部8が推定する現在位置について定期的に補正するように構成してもよい。または、駆動制御部8により推定される自車両の現在位置に代えて、ナビゲーション装置11から送信される現在位置を示すデータに基づいて、モータ3FL〜3RRの制御などを実行するように構成してもよい。その場合、駆動制御部8は、自車両の現在位置を推定する必要がなくなる。
【0055】
自車両の現在位置が案内経路から所定回数外れた場合や経路案内動作が中止された場合において、制御計画に基づくモータ3FL〜3RRの駆動制御などを中止させる制御は、必要に応じて行えばよい。
自車両の現在位置が案内経路から外れた場合、ナビゲーション装置11において経路の再計算を実行し、再計算した経路(案内経路)を示す経路データを制御計画作成部7に送信するように構成してもよい。その場合、制御計画作成部7は、新たに受信した経路データに基づいて新たな制御計画を作成し、駆動制御部8が新たな制御計画に従って、インバータ5FL〜5RRに対する電力供給およびモータ3FL〜3RRの駆動を制御すればよい。このように構成すれば、自車両が案内経路から外れた場合であっても、再び作成された制御計画に沿って駆動輪の切り替えが行われるので、特定のバッテリの消費量が多くなることが抑制される。
【0056】
経路データのうち「距離」、「標高」については、2バイトで表しきれない場合も考えられる。その場合には、データを所定の数に分割すればよい。例えば2つに分割して表せば、4バイトのデータを要する「距離」または「標高」を表すことが可能となる。ただし、分割する場合には、分割されたデータであることを示す必要がある。これについては、分割されたデータについては、例えば「種別」を「2」にするなどして、次の新たな地点を示すデータではないことを明示すればよい。
制御計画作成部7は、各車輪2FL〜2RRに対応する各モータ3FL〜3RRのトルク分担率を変更することで、特定のバッテリの使用比率が高くなることを抑制した制御計画を作成してもよい。すなわち、制御計画作成部7は、自車両が案内経路を走行し終えた時点での4つのバッテリ4FL〜4RRのそれぞれの使用比率が均等化するように制御計画を作成すればよい。
【符号の説明】
【0057】
図面中、1は電気自動車(車両)、2FL〜2RRは車輪、3FL〜3RRはモータ、
4FL〜4FRはバッテリ(燃料電池)、7、32、42、44は制御計画作成部(制御計画作成手段)、8は駆動制御部(駆動制御手段)、11、31、41はナビゲーション装置、12は制御装置(経路案内手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つ以上の車輪を個別に駆動するモータと、当該モータを駆動するための電力を供給する複数の燃料電池と、前記モータの駆動を制御する駆動制御手段とを備えた車両に搭載されるナビゲーション装置であって、
設定された出発地から目的地までの案内経路を探索して経路案内を行う経路案内手段と、
前記案内経路が探索されると、自車両が当該案内経路を走行し終えた時点の前記複数の燃料電池のそれぞれの使用比率が均等化するように前記モータ毎の制御計画を作成する制御計画作成手段とを備え、
前記経路案内が実行される期間にあっては、前記制御計画と自車両の現在位置とに基づいて前記モータの駆動が制御されるように、前記駆動制御手段と通信を行うことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記制御計画作成手段は、前記案内経路に含まれているカーブを走行することにより前記燃料電池の使用比率に差が生じる場合、前記案内経路に含まれている直線の経路については使用比率の少ない燃料電池により電力供給されるモータを優先して使用するように前記制御計画を作成することを特徴とする請求項1記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記制御計画作成手段は、前記案内経路に含まれている坂道を走行することにより前記燃料電池の使用比率に差が生じる場合、前記案内経路に含まれている無勾配の経路については使用比率の少ない燃料電池により電力供給されるモータを優先して使用するように前記制御計画を作成することを特徴とする請求項1または2記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記経路案内が中止された場合、前記制御計画に基づく前記モータの駆動制御を中止させるように、前記駆動制御手段と通信を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記経路案内が実行される期間に、自車両の現在位置が前記案内経路から所定回数外れた場合、前記制御計画に基づく前記モータの駆動制御を中止させるように、前記駆動制御手段と通信を行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−276357(P2010−276357A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126413(P2009−126413)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】