説明

ノックス制御システム及び方法

【課題】別の排気分析装置やノックス測定センサーがなくても、 正確にノックスの量を予測し、これを基にノックスを制御することによって、信頼性のあるノックス制御システム及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ノックス制御方法において、仮想のセンサーを利用して前記ノックスの発生量を予測する段階、前記ノックス予測値を予め設定されたノックス目標値と比較する段階、及び、前記ノックス予測値が前記ノックス目標値を追従するようにノックス発生量を制御する段階、を含み、前記ノックス制御方法は、車両の運行中に続いて繰り返され、前記ノックス発生量を制御する段階は、ノックス予測値が前記目標値より小さい場合には燃費または出力向上モードで車両を制御し、前記ノックス予測値が前記目標値より大きい場合には排気モードで車両を制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノックス制御システム及び方法に係り、より詳しくは、ノックス測定センサーがなくても、車両のエンジンで発生するノックスの量を予測し、これに基づいてノックスを制御できるノックス制御システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関を備えた車両の汚染物質排出許容基準がますます厳格になる傾向にあるため、内燃機関の排出する汚染物質の量をできるだけ低くすることが要求されている。汚染物質の排出を減らす方法の一つは、内燃機関の各シリンダーで空気/燃料の混合物が燃焼する間に発生する汚染物質の排出を減らすことである。
前記方法の他の一つは、内燃機関内の排気ガス後処理システムを使用することである。排気ガス後処理システムは、それぞれのシリンダーで空気/燃料の混合物が燃焼する間に発生する汚染物質を無害な物質に変換する。このような目的で一酸化炭素、炭化水素、及び窒素酸化物を無害な物質に変換する触媒コンバータが用いられる。
【0003】
このような排気ガス触媒コンバータを用いて効率的に汚染成分を変換するためには、ノックス(Nitrogen Oxides)を制御する技術が必要であり、ノックスを制御するためには、その前提としてエンジンから発生する窒素酸化物、即ち、ノックスの量を正確に測定する必要がある。
従来技術の場合、ノックスの量を予測するために、別に、排気分析装置や、ノックス測定のためのセンサーを備えていた。しかし、このような排気分析装置やノックス測定センサーを別に具備すれば、費用が上昇する問題があり、エンジンの排気ガス内の組成物が排気分析装置やノックスセンサーを汚染させることによって、センサー自体が誤作動する問題があった。
【0004】
また、このような問題を解決するために、従来のノックス予測技術が提案されているが、このような従来技術の場合、過度に複雑な計算過程を経るか、または単純化された熱発生率式から計算された温度を利用してノックスを予測することによって、信頼性が落ちる問題があった。
したがって、上記のような従来技術によれば、ノックスの量を正確、かつ信頼性をもたせて予測することが困難であるため、これに基づいたノックス制御技術も信頼できないと言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−106734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、燃焼圧力及びエンジンの運転変数を利用して、別の排気分析装置やノックス測定センサーがなくても、正確にノックスの量を予測し、これを基にノックスを制御することによって、信頼性のあるノックス制御システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ノックス制御方法において、仮想のセンサーを利用して前記ノックスの発生量を予測する段階、前記ノックス予測値を予め設定されたノックス目標値と比較する段階、及び、前記ノックス予測値が前記ノックス目標値を追従するようにノックス発生量を制御する段階、を含むことを特徴とする。
【0008】
前記ノックス制御方法は、車両の運行中に続いて繰り返されることを特徴とする。
【0009】
前記ノックス発生量を制御する段階は、ノックス予測値が前記目標値より小さい場合には燃費または出力向上モードで車両を制御し、前記ノックス予測値が前記目標値より大きい場合には排気モードで車両を制御することを特徴とする。
【0010】
前記ノックス発生量を制御する段階は、燃料量、燃料噴射時期、EGR率、及びブースト圧力のうちの少なくとも一つ以上を制御することによって行われることを特徴とする。
【0011】
前記ノックスの発生量を予測する段階は、エンジン燃焼圧力及びエンジン運転変数を利用してNO発生率を計算する段階、前記エンジン燃焼圧力を利用してNO生成期間を算出する段階、前記NO発生率と前記NO生成期間からNO発生量を計算する段階、及び、前記NO発生量とエンジン運転領域によるNOとNOの比率からNO発生量を算出してノックス(NOx)発生量を予測する段階、を含むことを特徴とする。
【0012】
前記エンジン運転変数は、燃料量、エンジン回転数(RPM)、空燃比(AF)、及びEGR情報のうちの少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする。
【0013】
前記NO発生率は、
【数1】

を利用して計算することを特徴とする。
ここで、d[NO]/dtは時間によるNO発生率であり、Tは燃焼ガス温度であり、[O]は燃焼室内の酸素濃度であり、[N]は燃焼室内の窒素濃度であり、AとBは定数である。
【0014】
前記NO生成期間は、MFB40−80区間またはMFB50−90区間を用いて算出することを特徴とする。
ここで、MFBは、Mass Fraction Burnedを示す。
【0015】
また、本発明は、ノックス制御システムにおいて、仮想のセンサーを利用して前記ノックスの発生量を予測する測定部、前記ノックス予測値を予め設定されたノックス目標値と比較する判断部、及び、前記ノックス予測値が前記ノックス目標値を追従するようにノックス発生量を制御する制御部、を含むことを特徴とする。
【0016】
前記制御部は、前記ノックス予測値が前記目標値より小さい場合には車両が燃費または出力向上モードで運転するようにし、前記ノックス予測値が前記目標値より大きい場合には車両が排気モードで運転するように制御することを特徴とする。
【0017】
前記制御部は、燃料量、燃料噴射時期、EGR率、及びブースト圧力のうちの少なくとも一つ以上を制御することによって前記ノックス発生量を制御することを特徴とする。
【0018】
前記仮想のセンサーは、エンジン燃焼圧力及びエンジン運転変数を利用してNO発生率を計算し、前記エンジン燃焼圧力を利用してNO生成期間を算出し、前記NO生成期間からNO発生量を計算し、前記NO発生量とエンジン運転領域によるNOとNOの比率からNO発生量を算出してノックス(NOx)発生量を予測することを特徴とする。
【0019】
前記エンジン運転変数は、燃料量、エンジン回転数(RPM)、空燃比(AF)、及びEGR情報のうちの少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする。
【0020】
前記NO発生率は、
【数1】

を利用して計算することを特徴とする。
ここで、d[NO]/dtは時間によるNO発生率であり、Tは燃焼ガス温度であり、[O]は燃焼室内の酸素濃度であり、[N]は燃焼室内の窒素濃度であり、AとBは定数である。
【0021】
前記NO生成期間は、MFB40−80区間またはMFB50−90区間を用いて算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のノックス制御システム及び方法によれば、複雑な過程なしにいくつかの変数だけで燃焼過程で生成されるノックスの量を予測することができ、計算時間が短いことでリアルタイムでノックスの予測が可能である。そして、このように予測されたノックス発生量を利用して運転状況に応じる目標値を設定することによって、ノックスの排出を減らすように制御することが可能であり、排気性能を向上させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例によるノックス制御システムの構成図である。
【図2】EGR率または噴射時期とノックス発生量との関係に関するグラフである。
【図3】本発明の実施例によるノックス制御方法のフローチャートである。
【図4】本発明の実施例によるノックス発生量予測方法のフローチャートである。
【図5】本発明の実施例によるノックス発生量予測方法の概念図である。
【図6】酸素濃度、窒素濃度または燃焼ガス温度とNO発生率との関係に関するグラフである。
【図7】本発明の実施例によるNO生成期間を示したグラフである。
【図8】本発明の実施例によるNO発生量に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付した図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例によるノックス制御システム1の構成図である。
図1に示すように、本発明の実施例によるノックス制御システム1は、仮想のセンサーを利用して前記ノックスの発生量を予測する測定部10、前記ノックス予測値を予め設定されたノックス目標値と比較する判断部20、及び前記ノックス予測値が前記ノックス目標値を追従するようにノックス発生量を制御する制御部30を含む。
測定部10は、ノックスの発生量を予測する役割を果たす部分であって、従来の技術のように別のノックス量を測定するセンサーを備えずに、仮想のセンサーを利用してノックスの発生量を予測する。
【0025】
本発明の実施例の場合、前記のように仮想のセンサーを利用してノックス発生量を予測するため、排気ガス内の組成物がセンサーを汚染させることでセンサー自体が誤作動する従来の技術の問題を解消することができる。
前記仮想のセンサーを利用してノックスの発生量を予測する方法については、以下で詳細に説明する。
一方、判断部20は、測定部10で予測されたノックスの発生量の予測値を、予め設定されたノックス目標値とリアルタイムで比較して判断する。ノックス目標値は、車両の環境条件や運転領域などの条件によって変化することがあり、このような車両の環境条件や運転領域などを考慮してノックス目標値を予め設定することができる。
【0026】
制御部30は、前記ノックス予測値が前記ノックス目標値となるようにノックスの発生量を制御するものであり、車両のECU(Electric Cotrol Unit)等がこれに該当する。
一つまたは種々の実施例において、制御部30は、前記ノックス予測値が前記目標値より小さい場合には、車両が燃費または出力向上モードで運転するようにし、前記ノックス予測値が前記目標値より大きい場合には、車両が排気モードで運転するように制御することができる。
【0027】
判断部20の比較結果が、前記ノックス予測値がノックス目標値より小さいと表れる場合にはノックス発生量を増加させることができる。したがって、制御部30は車両を燃費または出力向上モードで運転するように制御し、これによってノックスの発生量が増加してノックス目標値に近接する。測定部10はリアルタイムでノックスの発生量を測定し、判断部20でもノックスの発生量が目標値に到達するか判断し続けるので、制御部30で持続的に車両の運転モードを制御する。
一方、判断部20の比較結果が、前記ノックス予測値がノックス目標値より大きいと表れる場合には、ノックスの低減のために制御部30は車両を前記排気モードで運転するように制御する。
【0028】
一つまたは種々の実施例において、制御部30は燃料量、燃料噴射時期、EGR率、及びブースト圧力のうちの少なくとも一つ以上を制御することによって、前記ノックス発生量を制御することができる。図2(a)に示すように、EGR率が落ちるほどノックス排出量は上昇し、図2(b)に示すように、燃料噴射時期が進角するほど(advance)ノックス排出量が大きくなる。燃料量とブースト圧力もノックス排出量と所定の関係を有するので、このような特性を利用して制御部30で燃料量、燃料噴射時期、EGR率、ブースト圧力のうちのいずれか一つ以上を制御することによって、測定部10で算出されるノックス予測値が前記ノックス目標値に到達するように制御することができる。
【0029】
以下、本発明の実施例によるノックス制御方法について、図面を参照して詳細に説明する。
図3に示すように、本発明の実施例によるノックス制御方法は、仮想のセンサーを利用して前記ノックスの発生量を予測する段階(S10)、前記ノックス予測値を予め設定されたノックス目標値と比較する段階(S20)、及び前記ノックス予測値が前記ノックス目標値を追従するようにノックス発生量を制御する段階(S30)を含む。
即ち、本発明の実施例によるノックス制御方法は、実際のノックス測定センサーを備えずに、仮想のセンサーを利用してノックス発生量をリアルタイムで予測し、予測されたノックス発生量が設定された目標値に到達するように制御するようになっている。
【0030】
最初に、仮想のセンサーを利用してノックスの発生量を予測する(S10)。
以下、仮想のセンサーを利用してノックスの発生量を予測する段階(S10)について、図面を参照して詳細に説明する。
仮想のセンサーを利用してノックスの発生量を予測する段階は、前記ノックス制御システムにも適用可能である。
図4は、本発明の実施例による仮想のセンサーを利用したノックス発生量予測方法(S10)のフローチャートであり、図5は、本発明の実施例による仮想のセンサーを利用したノックス発生量予測方法(S10)の概念図である。
【0031】
図4及び図5に示すように、本発明の実施例によるノックス発生量予測方法(S10)は、エンジン燃焼圧力100及びエンジン運転変数200を利用してNO発生率300を計算する段階(S11)、エンジン燃焼圧力100を利用してNO生成期間400を算出する段階(S12)、NO発生率300とNO生成期間400からNO発生量500を計算する段階(S13)、及び前記NO発生量500とエンジン運転領域によるNOとNOの比率からNO発生量を算出してノックス(NOx)発生量を予測する段階(S14)を含む。
【0032】
まず、エンジン燃焼圧力100(Pressure)及びエンジン運転変数200を利用して、NO(一酸化窒素)発生率300を計算する(S11)。
エンジン運転変数200には、燃料量210(mfuel)、エンジン回転数220(RPM)、空燃比230(AF)、及びEGR量とEGR率(EGR_rate)のようなEGR情報240が含まれる。このようなエンジン運転変数200に基づいてNO発生率300を計算する。
【0033】
一つまたは種々の実施例において、NO発生率300は下記の(数1)によって計算できる。
【数1】

(数1)において、d[NO]/dtはNO発生率300であり、Tは燃焼ガス温度310であり、[O]は燃焼室内の酸素濃度320であり、[N]は燃焼室内の窒素濃度330であり、AとBは実験や解釈によって決められる経験定数である。一つまたは種々の実施例において、A値は6×1016、B値は−69090である。
したがって、NO発生率300(d[NO]/dt)を求めるためには、燃焼室の燃焼ガス温度(T)310と燃焼室内の酸素濃度[O]320及び窒素濃度[N]330を知る必要がある。
【0034】
以下、燃焼室の燃焼ガス温度(T)と燃焼室内の酸素濃度[O]及び窒素濃度[N]を求める方法について説明する。
燃焼室の燃焼ガス温度(T=Tburned gas)310は、断熱火炎温度(Tad)に燃焼時の圧力上昇による追加的な燃焼ガス温度の上昇を考慮して計算できる。
一つまたは種々の実施例において、燃焼室の燃焼ガス温度310は下記の(数2)によって計算できる。
【数2】

(数2)において、Tburned gasは燃焼ガス温度(T)310を示し、Tadは断熱火炎温度であり、Pは燃焼開始時点の圧力であり、Pmaxは最高燃焼圧であり、kは比熱比(specific heat ratio)であって、Cv(定積比熱)/Cp(定圧比熱)値に相当する。
【0035】
(燃焼開始時点の圧力)とPmax(最高燃焼圧)は、エンジンの燃焼圧力100を測定するエンジンの燃焼圧センサーで測定できるが、その情報は電気的信号に転換されて、車両のECU(Electric Control Unit)制御部に転送される。
そして、(数2)において、断熱火炎温度(Tad)は、一つまたは種々の実施例において下記の(数3)によって計算できる。
【数3】

(数3)において、Tsocは燃焼開始時点での燃焼室温度であり、[O]は燃焼室内の酸素濃度320である。
【0036】
燃焼開始時点の燃焼室温度(Tsoc)は、図5に示すように、燃焼室の燃焼圧力100(Pressure)及び熱発散率(Heat Release Rate、HRR)から燃焼開始時点(Start Of Combustion、SOC)を決めて、決められた燃焼開始時点(SOC)を利用して求めることができる。
一つまたは種々の実施例において、燃焼開始時点の燃焼室温度(Tsoc)は下記の(数3−1)によって求められる。
【数3−1】

ここで、Pは燃焼開始時点の圧力であって、決められた燃焼開始時点(SOC)を利用して、その時点でエンジンの燃焼圧力センサーで測定された値であり、Rは理想気体の状態方程式の気体定数である。
【0037】
そして、mはシリンダー内部の混合気体の全体量を示す値であって、下記の(数3−2)によって求められる。
【数3−2】

ここで、AFは空燃比230であり、mfuelは車両のECU信号で分かる燃料量210である。AFとmfuelいずれもエンジンの運転変数200として入力される値である。
【0038】
一方、Vは燃焼開始時点の体積であって、下記の(数3−3)によって計算できる。
【数3−3】

ここで、Vはクリアランスボリューム(clearance volume)であり、rは圧縮比(compression ratio)であり、rはコネクティングロッドの長さ(connecting rod length)であり、aはクランクオフセット(crank offset)であり、Bはシリンダーの直径、Sはピストンのストロークである。
したがって、(数3−2)と(数3−3)から求めたmとV値を(数3−1)に代入して、燃焼開始時点の燃焼室温度(Tsoc)が分かる。
【0039】
一方、断熱火炎温度(Tad)を求めるためには、燃焼室内の酸素濃度[O]を求める必要があるが、これについては下記で説明する。
図5に示すように、燃焼室内の酸素濃度[O]320を求めると、(数3)から断熱火炎温度(Tad)を分かり、これを利用して燃焼室の燃焼ガス温度(T=Tburned gas)310を求めることができる。
一つまたは種々の実施例において、(数1)の燃焼室内の酸素濃度[O]と窒素濃度[N]は下記(数4)によって計算できる。
【数4】

(数4)において、O2_inとN2_inは燃焼室内の酸素濃度[O]と窒素濃度[N]を示す、EGR_rateはEGR率であり、O2_Air[vol、%]とN2_Air[vozl、%]はそれぞれ空気中酸素と窒素の濃度を示し、O2_EGR[vol、%]とN2_EGR[vol、%]はそれぞれEGRガス中酸素と窒素の濃度を示す。
【0040】
結局、燃焼室内の酸素濃度[O]320は、吸入空気中酸素濃度O2_Air[vol、%]とEGRガス中酸素濃度O2_EGR[vol、%]から求められ、燃焼室内の窒素濃度[N]330は、吸入空気中窒素濃度N2_Air[vol、%]とEGRガス中窒素濃度N2_EGR[vol、%]から求められる。
EGR率(EGR_rate)は排気ガスの再循環率であって、一般に、EGRガス量/(EGRガス量+吸入空気量)×100で計算するか、吸気管内の二酸化炭素の濃度から大気中の二酸化炭素の濃度を引いた値と、排気ガス内の二酸化炭素の濃度から大気中の二酸化炭素の濃度を引いた値との比を測定して算出できる。
2_Air[vol、%]とN2_Air[vol、%]は、吸入空気中酸素と窒素の濃度を示し、空気中酸素の濃度と窒素の濃度を用いる。
【0041】
2_EGR[vol、%]とN2_EGR[vol、%]は、EGRガス中酸素濃度と窒素濃度であって、下記の(数4−1)乃至(数4−3)によって求められる。
【数4−1】

【数4−2】

【数4−3】

【0042】
(数4−3)において、AFは空燃比230であって、燃焼に使用された燃料に対する空気の重量比率を示し、本発明の実施例ではエンジン運転変数200として測定され入力される。そして、AFstoiは理論空燃比であって、燃料の種類によって決定される値であり、当該燃料で理想的な空燃比となる。yも燃料によって決定される値であり、当該燃料の分子式で水素(H)と炭素(C)の比率(y=H/C_ratio)によって決められる。
(数4−2)において、QはEGRガスでの窒素の組成比であって、燃料によって決定される値である。例えば、ディーゼル燃料の場合、Q値は3.773である。
結局、(数4−1)乃至(数4−3)で測定され入力される値は空燃比(AF)230一つであり、それ以外のQ、AFstoi及びy値は燃料の種類によって決定される値となる。
【0043】
したがって、(数4−3)と(数4−2)から(数4−1)のO2_EGR[vol、%]とN2_EGR[vol、%]を求めることができ、これら値をさらに(数4)に代入すれば、燃焼室内の酸素濃度[O]と燃焼室内の窒素濃度[N]が求められる。
一方、図5に示すように、前記過程で求めた燃焼室内の酸素濃度[O]320を(数3)に代入すれば断熱火炎温度(Tad)が求められ、Tadから(数2)によって燃焼ガス温度(T)310が求められる。
結局、本発明の実施例によれば、燃焼ガス温度310(T)と酸素濃度[O]320及び窒素濃度[N]330を全て求めることになるので、これらの値を(数1)に適用してNO発生率(d[NO]/dt)300を求める。
そして、エンジン燃焼圧力100を利用してNO生成期間400を算出する(S12)。
【0044】
NO生成期間400は、NOの発生がMFB(Mass Fraction Burned)の変化と類似に現れる点を利用する。このために、図5に示すように、エンジン燃焼圧力100から熱発散率(HRR)を求めて、熱発散率(HRR)を積算し、積算された熱発散率が最大(Maximum)となる地点を基準にMFBを計算することができる。
燃焼圧力からの燃焼解釈を通してMFB(Mass Fraction Burned)の変化推移を示すグラフ(図7の一点鎖線参照)を表し、グラフを用いてNO生成期間400を決める。
【0045】
一つまたは種々の実施例において、NO生成期間400はMFB40−80区間またはMFB50−90区間を用いて算出できる。図7に示すように、NOが20〜90%生成される区間をNO生成期間400と仮定する時、この区間に対応するMFBの区間はMFB40−80区間である。したがって、MFB40−80区間やMFB50−90区間を利用すれば、有効にNOの生成期間400を算出することができる。即ち、NOの生成期間400はMFB40−80区間またはMFB50−90区間に相当する時間となる。
NO生成期間400が算出されると、図8に示すように、(数1)から求めたNO発生率(d[NO]/dt)300とNO生成期間(t)400からNO発生量500が計算できる(S13)。
その後、NO発生量500とエンジンの運転領域によるNOとNOの比率からNO発生量を算出して、ノックス(NOx)発生量600を予測する(S14)。
【0046】
一つまたは種々の実施例において、前記NOの発生量は、エンジン運転領域によってNO発生量500とNO発生量の比率を実験式を活用して算出できる。
一つまたは種々の実施例において、ノックス(NOx)発生量600は、NO発生量500とNO発生量を合わせた値で予測できる。
次に、図3に示すように、予測されたノックス発生量の予測値を予め設定されたノックス目標値と比較する(S20)。ノックス目標値は車両の環境条件や運転領域などの条件によって変化することがあり、このような車両の環境条件や運転領域などを考慮して、ノックス目標値を予め設定することができる。
そして、ノックス予測値とノックス目標値とに差がある場合、ノックス予測値がノックス目標値に追従するようにノックス発生量を制御する(S30)。
一つまたは種々の実施例において、制御段階(S30)では、図3に示すように、ノックス予測値が目標値より小さい場合(S31)には車両が燃費または出力向上モードで運行されるようにし、ノックス予測値が目標値より大きい場合(S32)には車両が排気モードで運行されるように制御することができる。
【0047】
(数1)から分かるように、燃焼ガス温度(T)、酸素濃度[O]、窒素濃度[N]を制御すればNO発生率を制御することができ、結局、ノックスの発生量も制御できる。
特に、図6に示すように、酸素濃度[O]と燃焼ガス温度(T)は、窒素濃度[N]に比べてノックス発生量に大きな影響を与える。
したがって、一つまたは種々の実施例において、酸素濃度[O]と燃焼ガス温度(T)を変化させることでノックス発生量を制御することができ、このために車両の燃料量、燃料噴射時期、EGR率、及びブースト圧力のうちの少なくとも一つ以上を制御することができる。一般に、燃焼ガス温度(T)は酸素濃度[O]、噴射燃料量及び燃料噴射時期などによって決定され、酸素濃度[O]はEGR率やブースト圧力などによって決定されるためである。
【0048】
一例として、変化したEGR率または燃料噴射時期とノックス発生量の関係は図2に示す通りである。車両のECUのような制御部ではこのような関係を考慮して、車両の燃料量、燃料噴射時期、EGR率、及びブースト圧力などを制御することによって、ノックス発生量を制御する。
一方、本発明の実施例によるノックス制御方法は、車両の運行中には連続的に繰り返すことができる。
上述の通り、本発明の実施例によるノックス制御システム及び方法によれば、複雑な過程なしにいくつかの変数だけで燃焼過程で生成されるノックスの量を予測することができ、計算時間が短いことでリアルタイムでノックスの予測が可能である。そして、このように予測されたノックス発生量を利用して運転状況に応じる目標値を設定することによって、ノックスの排出を減らすように制御することが可能であり、排気性能を向上させる効果がある。 また、仮想のセンサーを利用してノックス発生量を予測する技術は、LNTまたはSCRのようなノックス後処理装置の制御にも適用することができる。
【0049】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1 ノックス制御システム
10 測定部
20 判断部
30 制御部
100 エンジン燃焼圧力
200 エンジン運転変数
210 燃料量(mfuel
220 エンジン回転数(RPM)
230 空燃比(AF)
240 EGR情報
300 NO発生率
310 燃焼ガス温度(T)
320 酸素濃度[O
330 窒素濃度[N
400 NO生成期間
500 NO発生量
600 NOx発生量


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノックス制御方法において、
仮想のセンサーを利用して前記ノックスの発生量を予測する段階、
前記ノックス予測値を予め設定されたノックス目標値と比較する段階、及び、
前記ノックス予測値が前記ノックス目標値を追従するようにノックス発生量を制御する段階、
を含むことを特徴とするノックス制御方法。
【請求項2】
前記ノックス制御方法は、車両の運行中に続いて繰り返されることを特徴とする請求項1に記載のノックス制御方法。
【請求項3】
前記ノックス発生量を制御する段階は、ノックス予測値が前記目標値より小さい場合には燃費または出力向上モードで車両を制御し、前記ノックス予測値が前記目標値より大きい場合には排気モードで車両を制御することを特徴とする請求項1に記載のノックス制御方法。
【請求項4】
前記ノックス発生量を制御する段階は、燃料量、燃料噴射時期、EGR率、及びブースト圧力のうちの少なくとも一つ以上を制御することによって行われることを特徴とする請求項1に記載のノックス制御方法。
【請求項5】
前記ノックスの発生量を予測する段階は、
エンジン燃焼圧力及びエンジン運転変数を利用してNO発生率を計算する段階、
前記エンジン燃焼圧力を利用してNO生成期間を算出する段階、
前記NO発生率と前記NO生成期間からNO発生量を計算する段階、及び
前記NO発生量とエンジン運転領域によるNOとNOの比率からNO発生量を算出してノックス(NOx)発生量を予測する段階、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のノックス制御方法。
【請求項6】
前記エンジン運転変数は、燃料量、エンジン回転数(RPM)、空燃比(AF)、及びEGR情報のうちの少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする請求項5に記載のノックス制御方法。
【請求項7】
前記NO発生率は、
【数1】


を利用して計算することを特徴とする請求項6に記載のノックス制御方法。
ここで、d[NO]/dtは時間によるNO発生率であり、Tは燃焼ガス温度であり、[O]は燃焼室内の酸素濃度であり、[N]は燃焼室内の窒素濃度であり、AとBは定数である。
【請求項8】
前記NO生成期間は、MFB40−80区間またはMFB50−90区間を用いて算出することを特徴とする請求項6に記載のノックス制御方法。
ここで、MFBは、Mass Fraction Burnedを示す。
【請求項9】
ノックス制御システムにおいて、
仮想のセンサーを利用して前記ノックスの発生量を予測する測定部、
前記ノックス予測値を予め設定されたノックス目標値と比較する判断部、及び、
前記ノックス予測値が前記ノックス目標値を追従するようにノックス発生量を制御する制御部、
を含むことを特徴とするノックス制御システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記ノックス予測値が前記目標値より小さい場合には車両が燃費または出力向上モードで運転するようにし、前記ノックス予測値が前記目標値より大きい場合には車両が排気モードで運転するように制御することを特徴とする請求項9に記載のノックス制御システム。
【請求項11】
前記制御部は、燃料量、燃料噴射時期、EGR率、及びブースト圧力のうちの少なくとも一つ以上を制御することによって前記ノックス発生量を制御することを特徴とする請求項9に記載のノックス制御システム。
【請求項12】
前記仮想のセンサーは、エンジン燃焼圧力及びエンジン運転変数を利用してNO発生率を計算し、前記エンジン燃焼圧力を利用してNO生成期間を算出し、前記NO生成期間からNO発生量を計算し、前記NO発生量とエンジン運転領域によるNOとNOの比率からNO発生量を算出してノックス(NOx)発生量を予測することを特徴とする請求項9に記載のノックス制御システム。
【請求項13】
前記エンジン運転変数は、燃料量、エンジン回転数(RPM)、空燃比(AF)、及びEGR情報のうちの少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする請求項12に記載のノックス制御システム。
【請求項14】
前記NO発生率は、
【数1】

を利用して計算することを特徴とする請求項13に記載のノックス制御システム。
ここで、d[NO]/dtは時間によるNO発生率であり、Tは燃焼ガス温度であり、[O]は燃焼室内の酸素濃度であり、[N]は燃焼室内の窒素濃度であり、AとBは定数である。
【請求項15】
前記NO生成期間は、MFB40−80区間またはMFB50−90区間を用いて算出することを特徴とする請求項13に記載のノックス制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−108489(P2013−108489A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−84072(P2012−84072)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(508298075)ソウル大学校産学協力団 (27)
【Fターム(参考)】