説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】ハイブリッド車両において、電動機の体格拡大を防止し、電動機及びその付帯設備の車両への搭載性を向上させる。
【解決手段】ハイブリッド駆動機構10Aにおいて、第1変速装置400及び第2変速装置500の作用により、電気CVTモードと固定変速モードの二種類の変速モードが実現される。また各変速モードでは、更に変速比の異なる複数の変速モードが実現される。ECU100は、変速制御において、エンジン要求出力Peに応じて変速モードを選択する。即ち、エンジン要求出力Peが、エンジン200の最高効率点に相当する基準値Peth未満である場合に、電気CVTモードが選択され、エンジン200の動作点が、高効率領域を通る動作線M上から選択されると共に、エンジン要求出力Peが基準値Peth以上となる領域では、固定変速モードが選択され、駆動力の伝達効率向上が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と電動発電機とを動力源として備え、変速モードとして固定変速モード及び無段変速モードを有してなるハイブリッド車両の制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置を適用可能なものとして、二組の遊星歯車機構を組み合わせて四つの回転要素を有する歯車機構として構成された分配機構を備えたハイブリッド車の駆動装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたハイブリッド車の駆動装置(以下、「従来の技術」と称する)によれば、二つの出力要素を出力部材に選択的に連結する連結機構を備えるため、複数の駆動形態の中から走行要求に適した駆動形態を選択することができる、エネルギ効率の良い走行が可能になるとされている。
【0003】
尚、無段変速モードと固定変速モードを設定可能なハイブリッド車の駆動装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−155891号公報
【特許文献2】特開2004−345527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術においても、内燃機関の動作効率を可及的に最適化し得る無段変速モードに類する駆動形態を選択可能であるが、内燃機関の広範な動作点に対し常に無段変速モードを実現しようとすると、内燃機関の最大出力や最大トルクに応じて、反力要素及び出力要素いずれの電動機もその体格を大型化せざるを得ず、経済性及び車両への搭載性の悪化を伴う。即ち、従来の技術には、電動機及びその付帯設備を車両に搭載するに際して搭載性の悪化が避け難い旨の技術的な問題点がある。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、電動機の体格拡大を防止し、電動機及びその付帯設備の車両への搭載性を向上させ得るハイブリッド車両の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関、第1電動機及び第2電動機に連結された相互に差動回転可能な第1、第2及び第3の回転要素及び車軸に連結される出力部材を有する動力分配手段、並びに前記内燃機関の出力軸と該出力部材との回転速度比を連続変化させる無段変速モードと当該回転速度比を固定する固定変速モードとの間で変速モードを切り替え可能な変速手段を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、前記内燃機関の運転条件を特定する特定手段と、該特定された運転条件が所定の高効率領域に該当する場合に前記変速モードが前記無段変速モードとなるように前記変速手段を制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る動力分配手段は、第1、第2及び第3の回転要素を含む相互に差動回転可能な複数の回転要素(即ち、第1、第2及び第3の回転要素は、動力分配手段に備わる回転要素の少なくとも一部であって、必ずしも全てでない)を備える。
【0009】
一方、変速手段は、ハイブリッド車両の変速モードとして無段変速モードと固定変速モードとを適宜に切り替え可能な構成を有しており、例えば摩擦係合式或いは噛合式等各種態様を採り得る複数の係合手段(ブレーキ装置やクラッチ装置を含む)により、出力部材とこれら複数の回転要素との接続状態(即ち、元より接続可能であるか否かによらず少なくとも接続の有無を含み、概念上は、どの程度接続されているかといった定量的状態を含む)を適宜に切り替えること(即ち、これら複数の回転要素のうち出力部材との接離可能に構成された少なくとも一部と出力部材とを適宜に係合及び離間させること等を好適な一形態として含む)等によって、これら複数の変速モードを実現する。
【0010】
無段変速モードは、内燃機関の出力軸の回転速度(即ち、機関回転速度)と車軸に直接的に又は間接的に連結された出力部材との回転速度比(即ち、変速比)を、理論的に、実質的に又は何らかの現実的な制約の範囲で連続的に変化させる変速態様であり、例えば、動力分配手段が一種の遊星歯車機構として構成され、第1電動機及び第2電動機のうちいずれか一方を反力要素とし他方を出力要素とすることによって、反力要素による内燃機関の機関回転速度の連続制御を可能とする態様等を好適な一形態として含み得る。
【0011】
尚、本発明に係る変速手段の態様は、多種多様であって、例えば、この種の動力分配手段の後段に公知の有段変速機(A/T等)を連結し、反力要素の回転を例えば各種係合手段により阻止して出力部材と内燃機関の出力軸とを直結(即ち、差動作用がない状態で結合)することにより、無段変速モードと有段の固定変速モードとを選択的に切り替え可能に構成されてもよいし、第1及び第2電動機を、反力要素としても出力要素としても利用し得る構成を採ることにより、採り得る変速比の範囲が相互に異なる複数の無段変速モードを実現し得る構成を有していてもよい。また、動力分配手段と変速手段とは、必ずしも物理的に、機械的に、機構的に、電気的に又は磁気的に独立した構成を有しておらずともよく、少なくとも一部がハードウェア的に一体に構成されていてもよい。
【0012】
ここで、動力分配手段及び変速手段が如何なる態様を採るにせよ、無段変速モードを内燃機関の広範な動作点(例えば、機関回転速度とトルクとの組み合わせとして規定される動作条件等を指す)で実現しようとすると、反力要素として機能する電動機も、出力要素として機能する電動機も、その体格を拡大せざるを得ず、これら電動機及びその付帯設備(例えば、バッテリやインバータ等)の搭載性が相対的に悪化する。
【0013】
そこで、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置では、以下の如くにして電動機及びその付帯設備の搭載性の悪化が防止される。即ち、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、その動作時には、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る特定手段により、例えば要求出力、要求駆動力或いは要求トルク等の形態を採り得る内燃機関の運転条件が特定される。
【0014】
尚、本発明における「特定」とは、例えば、特定対象又は特定対象と対応関係を有する指標値を何らかの検出手段を介して直接的に又は間接的に物理的数値又は物理的数値に対応する電気信号等として検出すること、何らかの検出手段を介して直接的に又は間接的に例えば電気信号等の形で検出された、特定対象又は指標値に基づいて予め然るべき記憶手段等に記憶されたマップ等から該当する数値を選択すること、これら検出された又は選択された特定対象、指標値又は数値等から、例えば予め設定されたアルゴリズムや計算式等に従って導出すること、或いはこのように検出、選択又は導出された指標値等を、例えば電気信号等の形で単に取得すること等を包括する広い概念であり、本発明に係る特定手段の動作態様は、多種多様であってよい。
【0015】
一方、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、その動作時には、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る制御手段が、この特定された運転条件が所定の高効率領域に該当する場合に、変速モードが無段変速モードとなるように変速手段を制御する。この際、好適な一形態としては、これ以外の領域では固定変速モード(尚、ハイブリッド車両を電動機の駆動力のみにより走行させる所謂EV走行モードは、一種の固定変速モードとして扱われてもよい)が選択される。
【0016】
ここで、「高効率領域」とは、好適な一形態としては、電動機及びその付帯設備の体格拡大に係る不利益と無段変速モードによる内燃機関の動作効率の向上に係る利益という相互にトレードオフとなる要件に鑑み、無段変速モードが選択されることによる利益がより支配的である旨の実践上の判断を下し得る領域である。
【0017】
一般に、内燃機関の動作効率が最高となる最高効率点を含む比較的高効率の領域は、程度の差こそあれ高出力領域から乖離している場合が多い。従って、高出力領域まで無段変速モードで賄おうとしても、無段変速モードにより相応の利益はもたらされるものの、高出力をカバーする必要により生じる電動機の体格拡大がもたらす不利益の方が顕在化し易い。
【0018】
一方で、固定変速モードでは、内燃機関の出力軸と出力部材は直結状態にあり、動力分配手段及び変速手段全体を通した駆動力の機械的な伝達効率は、電動機の充放電効率が影響する無段変速モードに対して高くなる。即ち、このように、元より高効率な領域に言わば限定的に無段変速モードを選択し且つ実行することによって、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置では、ハイブリッド車両全体のエネルギ消費効率を可及的に維持しつつ、電動機の体格向上による電動機及びその付帯設備の搭載性悪化(この種の搭載性悪化は、即ち、車両重量の増加による燃費の低下、車両体格を一定とした場合のキャビンスペース又はラゲッジスペースの縮小等を招く)を防止することができるのである。
【0019】
尚、このような本発明に係る実践上の利益は、とりわけ過給リーンバーン方式の内燃機関等、相対的にみて低負荷な領域(低出力領域)に(言い換えれば、リーン燃焼領域に)高効率領域が存在する内燃機関に対しては顕著に有効である。
【0020】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の一の態様では、前記高効率領域は、前記内燃機関の最高効率点を含む領域である。
【0021】
この態様によれば、高効率領域が内燃機関の最高効率点を含むため、無段変速モードによる内燃機関の動作効率の最適化が顕著に実現される。
【0022】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記運転条件が前記高効率領域に該当する場合として、前記内燃機関の要求出力が予め設定された基準値以下である場合に、前記変速モードが前記無段変速モードとなるように前記変速手段を制御する。
【0023】
この態様によれば、内燃機関の要求出力が、例えば上述した最高効率点やその近傍値に対応する、或いは例えば内燃機関が過給リーンバーン方式の内燃機関である場合等にはリーン燃焼領域の上限に対応する基準値以下である場合に、無段変速モードが選択され且つ実行される。即ち、例えば予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、内燃機関における出力と動作効率との対応関係が明らかにされていれば、要求出力を高効率領域であるか否かの判断指標として利用することができ、制御上の負荷が軽減される。
【0024】
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記内燃機関は、所定の低出力領域に前記高効率領域を有する。
【0025】
この態様によれば、内燃機関は、上述した過給リーンバーン方式を好適に含み得る、低出力領域に高効率領域を有する内燃機関である。本発明は、内燃機関の最高出力点(或いは最高出力領域)が最高効率点(或いは最高効率領域)と、その程度の差こそあれ幾らかなり乖離している点に着眼してなされたものであり、制御手段の作用によりもたらされる利益(即ち、ハイブリッド車両全体のエネルギ消費効率を維持しつつ電動機及びその付帯設備の搭載性を向上させる旨の利益)は、この種の乖離が相対的に大きいこの種の内燃機関を駆動力源として搭載するハイブリッド車両においては、明らかに大となる。
【0026】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
【0028】
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両10の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッド車両10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【0029】
図1において、ハイブリッド車両10は、ECU100、ハイブリッド駆動機構10A、減速機構11、PCU(Power Control Unit)12、バッテリ13、車速センサ14及びアクセル開度センサ15を備えた、本発明に係る「ハイブリッド車両」の一例である。
【0030】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM等を備え、ハイブリッド車両10の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の制御装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する変速制御を実行することが可能に構成されている。尚、ECU100は、本発明に係る「特定手段」及び「制御手段」の夫々一例として機能するように構成された一体の電子制御ユニットであり、これら各手段に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係るこれら各手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
【0031】
ハイブリッド駆動機構10Aは、ハイブリッド車両10のパワートレインとして機能する駆動力ユニットである。ハイブリッド駆動機構10Aの詳細な構成については後述する。
【0032】
減速機構11は、ハイブリッド駆動機構10Aの駆動力の出力軸たる後述するカウンタ軸700(即ち、本発明に係る「出力部材」の一例)と平行し、且つ当該カウンタ軸700と適宜カウンタギアを介して連結された、デファレンシャル等各種減速ギアを含む減速装置である。減速機構11は、ハイブリッド車両10の駆動輪たる左前輪FL及び右前輪FRに夫々連結されるドライブシャフトSFL及びSFR(即ち、本発明に係る「車軸」の一例)と連結されている。
【0033】
PCU12は、バッテリ13から取り出した直流電力を交流電力に変換して後述するモータジェネレータMG1及びMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ13に供給することが可能に構成されたインバータ等を含み、バッテリ13と各モータジェネレータとの間の電力の入出力を、或いは各モータジェネレータ相互間の電力の入出力(即ち、この場合、バッテリ13を介さずに各モータジェネレータ相互間で電力の授受が行われる)を制御することが可能に構成された制御ユニットである。PCU12は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
【0034】
バッテリ13は、モータジェネレータMG1及びMG2を力行するための電力に係る電力供給源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。
【0035】
車速センサ14は、ハイブリッド車両10の車速Vを検出することが可能に構成されたセンサである。車速センサ14は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100によって一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
【0036】
また、アクセル開度センサ15は、ハイブリッド車両10の図示せぬアクセルペダルの操作量(即ち、アクセル開度)を検出することが可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ15は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度Taは、ECU100によって一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
【0037】
次に、図2を参照し、ハイブリッド駆動機構10Aの詳細な構成について説明する。ここに、図2は、ハイブリッド駆動機構10Aの構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0038】
図2において、ハイブリッド駆動機構10Aは、エンジン200、動力分割機構300、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、第1変速装置400、第2変速装置500、動力伝達遮断クラッチ600、及びカウンタ軸700を備える。
【0039】
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たる過給リーンバーン方式のガソリンエンジンであり、ハイブリッド車両10の主たる動力源として機能するように構成されている。尚、過給リーンバーン方式とは、吸気系にターボチャージャ或いはスーパチャージャ等の過給器を備え、ポンピングロスによる効率低下が顕在化し易い低負荷領域において希薄燃焼を実行することにより吸気絞りの抑制を図り、もってポンピングロスの軽減を図る方式を指す。即ち、この種のエンジンでは、相対的に低負荷な領域に最高効率領域が現れる。
【0040】
モータジェネレータMG1は、本発明に係る「第1電動機」の一例たる電動発電機であり、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた構成となっている。モータジェネレータMG2は、本発明に係る「第2電動機」の一例たる電動発電機であり、モータジェネレータMG1と同様に、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた構成となっている。尚、モータジェネレータMG1及びMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、例えば外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える構成を有していてもよいし、他の構成を有していてもよい。
【0041】
動力分割機構300は、本発明に係る「動力分配手段」の一例たる駆動力の伝達機構である。動力分割機構300は、所謂ダブルピニオン式の遊星歯車機構を含んで構成される。即ち、動力分割機構300は、相互に同軸上に配置されたサンギア320及びリングギア310と、サンギア320に噛合された第2ピニオンギア340と、この第2ピニオンギア340及びリングギア310に噛合する第1ピニオンギア330と、第1ピニオンギア330及び第2ピニオンギア340を自転可能且つ一体的に公転可能に支持してなるキャリア350とを有している。
【0042】
動力分割機構300では、エンジン200の機関出力軸たるクランクシャフト200Aが、リングギア310に連結されており、エンジン200からの動力は、リングギア310に伝達される構成となっている。即ち、リングギア310は、本発明に係る「第1の回転要素」の一例となっている。
【0043】
また、キャリア350は、モータジェネレータMG2のロータに連結された、中空の入力軸370(即ち、MG2の出力回転軸と等価である)に連結されている。即ち、キャリア350は、本発明に係る「第3の回転要素」の一例となっている。
【0044】
更に、サンギア320は、中空の入力軸370内に収容された入力軸360に連結されている。この入力軸360は、モータジェネレータMG1のロータに連結された出力回転軸380と同軸上に配置されており、後述する動力伝達遮断クラッチ600が締結されている場合には、出力回転軸380と一体に回転する構成となっている。尚、特に断りのない限り、これ以降の説明では、動力伝達遮断クラッチ600は締結されているものとする。即ち、サンギア320は、本発明に係る「第2の回転要素」の一例となっている。
【0045】
このような構成において、動力分割機構300では、エンジン200の出力トルク(以下、適宜「エンジントルク」と称する)が、リングギア310に入力され、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2のいずれか一方により反力トルクが受け持たれる。即ち、リングギア310が入力要素となり、サンギア320及びモータジェネレータMG1が反力要素となった場合は、キャリア350が出力要素となる。このキャリア350から出力されたトルクは、入力軸370に伝達される。一方、リングギア310が入力要素となり、モータジェネレータMG2及びキャリア350が反力要素となった場合には、サンギア320が出力要素となる。このサンギア320から出力されたトルクは、入力軸360に伝達される。
【0046】
カウンタ軸700は、入力軸360及び入力軸370と平行に配置され、入力軸360及び入力軸370の回転軸線と平行な軸線を中心として回転可能な、本発明に係る「出力部材」の一例たる回転軸である。カウンタ軸700は、前述した減速機構11と間接的に連結され、各ドライブシャフトの回転速度と一義的な関係を保って回転することが可能に構成される。
【0047】
第1変速装置400は、カウンタ軸700と、モータジェネレータMG1の出力回転軸380(即ち、動力伝達遮断クラッチ600が締結されていれば、入力軸360と等価である)との間に設けられた、本発明に係る「変速手段」の一例たる変速装置である。第1変速装置400は、出力回転軸380とカウンタ軸700との回転速度比としての変速比を複数段階に変更することが可能に構成されている。
【0048】
第1変速装置400は、2速ギア410及び4速ギア420を備える。2速ギア410は、相互に噛合してなる2速用駆動ギア411及び2速用従動ギア412を備える。また、4速ギア420は、相互に噛合してなる4速用駆動ギア421及び4速用従動ギア422を備える。2速用駆動ギア411及び4速用駆動ギア421は、出力回転軸380と一体に回転するように出力回転軸380に連結されており、2速用従動ギア412及び4速用従動ギア422は、カウンタ軸700に対し相対回転可能に取り付けられている。
【0049】
第2変速装置500は、カウンタ軸700と、入力軸370との間に設けられた本発明に係る「変速手段」の一例たる変速装置である。第2変速装置500は、出力回転軸370とカウンタ軸700との回転速度比としての変速比を複数段階に変更することが可能に構成されている。
【0050】
第2変速装置500は、1速ギア510及び3速ギア520を備える。1速ギア510は、相互に噛合してなる1速用駆動ギア511及び1速用従動ギア512を備える。また、3速ギア520は、相互に噛合してなる3速用駆動ギア521及び3速用従動ギア522を備える。1速用駆動ギア511及び3速用駆動ギア521は、出力回転軸370と一体に回転するように出力回転軸380に連結されており、1速用従動ギア512及び3速用従動ギア522は、カウンタ軸700に対し相対回転可能に取り付けられている。
【0051】
補足すると、出力回転軸380(即ち、動力伝達遮断クラッチ600が締結されていれば、入力軸360)とカウンタ軸700との間の変速比は、2速ギア410の方が4速ギア420よりも大きく、入力軸370とカウンタ軸700との間の変速比は、1速ギア510の方が3速ギア520よりも大きい。また、1速ギアに係る変速比は、2速ギアに係る変速比よりも大きく、3速ギアに係る変速比は、4速ギアに係る変速比よりも大きい。
【0052】
第1変速装置400とカウンタ軸700との間の動力伝達は、第1変速装置400の一部として構成された第1クラッチ機構430により制御される。
【0053】
第1クラッチ機構430は、2速用従動ギア412及び4速用従動ギア422のいずれか一方をカウンタ軸700に対し動力伝達可能に接続すると共に、2速用従動ギア412及び4速用従動ギア422の両方をカウンタ軸700に対し動力伝達不可能に維持する(即ち、カウンタ軸700に接続しない)ことが可能に構成された、噛合式のドグクラッチ機構である。
【0054】
より具体的には、第1クラッチ機構430は、2速用従動ギア412に連結された2速用クラッチ板432及び4速用従動ギア422に連結された4速用クラッチ板433と、これら2速用クラッチ板432及び4速用クラッチ板433とに係合可能な主クラッチ板431を備えており、主クラッチ板431と2速用クラッチ板432(即ち、2速用従動ギア412)とが接続された状態(以下、適宜「2速ギアが選択された状態」等と称する)、主クラッチ板431と4速用クラッチ板433(即ち、4速用従動ギア422)とが接続された状態(以下、適宜「4速ギアが選択された状態」等と称する)、及び主クラッチ板431がいずれのクラッチ板とも接続されていない状態(以下、適宜「遮断状態」等と称する)の三状態を採ることが可能に構成される。
【0055】
このような構成において、主クラッチ板431をいずれか一方のクラッチ板へ接続する場合、同期接続が行われる。本実施形態では、主クラッチ板431は、図示せぬ油圧(或いは電動)アクチュエータにより駆動される構成を有しており、接続対象となるクラッチ板と回転同期が取れた状態において、接続対象となるクラッチ板の方向へ所定量ストロークされる構成となっている。一方、第1クラッチ機構430は、ドグクラッチ機構であり、接続の際には、接続対象に形成された噛合用の突起部と、主クラッチ板431に形成された同じく噛合用の突起部とが、各々における突起部と陥没部とが対応するように噛合し、接続が行われる。この際、噛合後に、接続対象となるクラッチ板を介してトルクが主クラッチ板431に伝達され、接続が完了する。尚、主クラッチ板431を駆動するアクチュエータは、ECU100により上位に制御される構成となっている。また、本実施形態では、主クラッチ板431が、一方のクラッチ板の方向へストロークする構成となっているが、これらは相対移動可能であればよく、各従動ギアに連結されたクラッチ板が主クラッチ板431の方向へ所定量ストロークする構成を有していてもよい。
【0056】
第2変速装置500とカウンタ軸700との間の動力伝達は、第2変速装置500の一部として構成された第2クラッチ機構530により制御される。
【0057】
第2クラッチ機構530は、1速用従動ギア512及び3速用従動ギア522のいずれか一方をカウンタ軸700に対し動力伝達可能に接続すると共に、1速用従動ギア512及び3速用従動ギア522の両方をカウンタ軸700に対し動力伝達不可能に維持する(即ち、カウンタ軸700に接続しない)ことが可能に構成された、噛合式のドグクラッチ機構である。
【0058】
より具体的には、第2クラッチ機構530は、1速用従動ギア512に連結された1速用クラッチ板532及び3速用従動ギア522に連結された3速用クラッチ板533と、これら1速用クラッチ板532及び3速用クラッチ板533とに係合可能な主クラッチ板531を備えており、主クラッチ板531と1速用クラッチ板532(即ち、1速用従動ギア512)とが接続された状態(以下、適宜「1速ギアが選択された状態」等と称する)、主クラッチ板531と3速用クラッチ板533(即ち、3速用従動ギア522)とが接続された状態(以下、適宜「3速ギアが選択された状態」等と称する)、及び主クラッチ板531がいずれのクラッチ板とも接続されていない状態(以下、適宜「遮断状態」等と称する)の三状態を採ることが可能に構成される。
【0059】
このような構成において、主クラッチ板531をいずれか一方のクラッチ板へ接続する場合、同期接続が行われる。本実施形態では、主クラッチ板531は、図示せぬ油圧(或いは電動)アクチュエータにより駆動される構成を有しており、接続対象となるクラッチ板と回転同期が取れた状態において、接続対象となるクラッチ板の方向へ所定量ストロークされる構成となっている。一方、第2クラッチ機構530は、ドグクラッチ機構であり、接続の際には、接続対象に形成された噛合用の突起部と、主クラッチ板531に形成された同じく噛合用の突起部とが、各々における突起部と陥没部とが対応するように噛合し、接続が行われる。この際、噛合後に、接続対象となるクラッチ板を介してトルクが主クラッチ板531に伝達され、接続が完了する。尚、主クラッチ板531を駆動するアクチュエータは、ECU100により上位に制御される構成となっている。また、本実施形態では、主クラッチ板531が、一方のクラッチ板の方向へストロークする構成となっているが、これらは相対移動可能であればよく、各従動ギアに連結されたクラッチ板が主クラッチ板531の方向へ所定量ストロークする構成を有していてもよい。
【0060】
動力伝達遮断クラッチ600は、モータジェネレータMG1の出力回転軸380と入力軸360との間の動力伝達を制御することが可能に構成された湿式多板摩擦式クラッチ機構である。動力伝達遮断クラッチ600は、図示せぬアクチュエータにより駆動される構成を有しており、これら軸間の動力伝達を遮断する解放状態と、これら軸間の動力伝達を可能とする締結状態の二値状態を採ることが可能に構成されている。尚、本実施形態では、特に断りの無い限り、動力伝達遮断クラッチ600は、締結状態に制御されているものとする。尚、上記アクチュエータは、ECU100と電気的に接続されており、動力伝達遮断クラッチ600の状態は、上述した第1及び第2クラッチ機構と共に、ECU100により制御される構成となっている。
【0061】
<実施形態の動作>
ハイブリッド駆動機構10Aでは、第1変速装置400及び第2変速装置500の作用により、ハイブリッド駆動機構10Aの変速比を規定する変速モードを、複数の変速モードの中から適宜に選択することが可能である。即ち、適宜に変速が可能である。ここで、図3を参照し、ハイブリッド駆動機構10Aにおける変速モードの詳細について説明する。ここに、図3は、ハイブリッド駆動機構10Aにおける変速モードと変速装置の状態との対応関係を表す表である。
【0062】
図3において、ハイブリッド駆動機構10Aは、1速ギア510のみをカウンタ軸700に接続することにより実現される1速モード(図示「1速」)、1速ギア510と2速ギア410とを同時にカウンタ軸700に接続することにより実現される1速+2速モード(図示「1速+2速」)、2速ギア410のみをカウンタ軸700に接続することにより実現される2速モード(図示「2速」)、2速ギア410と3速ギア520とを同時にカウンタ軸に700に接続することにより実現される2速+3速モード(図示「2速+3速」)、3速ギア520のみをカウンタ軸に接続することにより実現される3速モード(図示「3速」)、3速ギア520と4速ギア420とを同時にカウンタ軸700に接続することにより実現される3速+4速モード(図示「3速+4速」)、4速ギア420のみをカウンタ軸に接続することにより実現される4速モード(図示「4速」)、及び1速ギア510と4速ギア420とを同時にカウンタ軸700に接続することにより実現される1速+4速モード(図示「1速+4速」)の8種類の変速モードが実現可能である。
【0063】
これら8種類の変速モードのうち、第1変速装置400及び第2変速装置500がいずれもカウンタ軸700への動力伝達に供される4種類の変速モードでは、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2がいずれもカウンタ軸700に接続された状態となり、これらの回転状態は、ハイブリッド車両10の走行条件に応じて一義的に規定される。従って、この状態では、これら各モータジェネレータは反力要素としても出力要素としても機能することはなく、実質的にエンジン200のみがハイブリッド車両10の動力源として機能する。この4種類の変速モードは、内燃機関のクランク軸200Aとカウンタ軸700との間の変速比が一の値に固定される、固定変速モードである。
【0064】
一方、第1変速装置400及び第2変速装置500のうちいずれか一方がカウンタ軸700への動力伝達に供される4種類の変速モードでは、第1変速装置400が動力伝達に寄与している場合には、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2が夫々出力要素及び反力要素となり、第2変速装置500が動力伝達に寄与している場合には、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2が夫々反力要素及び出力要素として機能する。この場合、反力要素となるモータジェネレータの回転速度制御により、エンジン200のクランク軸200Aの回転速度は物理的、機械的、機構的又は電気的に可能な範囲で連続的に無段階に制御可能であり、所謂電気CVT機能が実現される。即ち、この4種類の変速モードは、本発明に係る「無段変速モード」の一例たる電気CVTモードである。
【0065】
ハイブリッド車両10では、ECU100によって実行される変速制御により変速モードの切り替え(即ち、変速)が実行される。ここで、図4を参照し、変速制御の詳細について説明する。ここに、図4は、変速制御のフローチャートである。
【0066】
図4において、ECU100は、車速V及びアクセル開度Taを取得する(ステップS101)。車速V及びアクセル開度Taを取得すると、ECU100は、ドライバ要求駆動力Ftを算出する(ステップS102)。ドライバ要求駆動力Ftは、予めROMに格納された、車速V及びアクセル開度Taをパラメータとする要求駆動力マップより選択的に取得される。尚、本実施形態に係る「算出」とは、このように予め設定された対応関係に従って一の値を決定する態様を含む概念である。
【0067】
続いて、ECU100は、このドライバ要求駆動力Ftに基づいてエンジン要求出力Peを取得する(ステップS103)。ここで、エンジン要求出力Peは、ドライバ要求駆動力Ftに対応する要求出力(即ち、車軸に出力すべき軸トルクに対応する出力)に対し、各部の損失及び補器(エアコンディショナや各種電装品)の要求電力を考慮した補正処理がなされた結果として取得される。
【0068】
エンジン要求出力Peが算出されると、ECU100は、エンジン要求出力Peが基準値Peth未満であるか否かを判別する(ステップS104)。エンジン要求出力Peが基準値Peth未満であれば(ステップS104:YES)、ECU100は電気CVTモードを選択し(ステップS105)、エンジン要求出力Peが基準値Peth以上であれば(ステップS104:NO)、ECU100は固定変速モードを選択する(ステップS106)。
【0069】
いずれかの変速モードが選択されると、選択された変速モードの中から(即ち、本実施形態では既に述べた如く各々4種類の変速モードが存在する)ハイブリッド車両の運転条件に応じた一の変速モードが更に選択され、各変速装置の制御を介して選択された変速モードに従った走行が実現される。ステップS105又はステップS106に係る処理が実行されると、処理はステップS101に戻され、一連の処理が繰り返し実行される。
【0070】
ここで、図5を参照し、変速制御について更に説明する。ここに、図5は、変速制御の概念に係るエンジン200の動作線の模式図である。
【0071】
図5において、縦軸及び横軸には夫々エンジントルクTr及び機関回転速度NEが表される。従って、この二次元座標系上の一座標点は、エンジン200の一動作点を表している。図5において、エンジン200の動作線(即ち、実制御に供される動作点を繋げて得られる線)は、図示動作線M(図示太実線参照)として表される。ここで、エンジン200の最大トルクを表す最大トルク線は、図示の通り高負荷領域にあり、動作線Mは、この最大トルク線から大きく乖離している。
【0072】
一方、エンジン200の動作効率は、図示高効率領域(破線で示された楕円領域)において最も高くなる。この高効率領域内にエンジン200の最高効率点(図示白丸参照)が存在している。他方、この最高効率点を貫通する等出力線は、図示等出力線EP1となっており、等出力線EP1が表すエンジン200の出力値は、上述した基準値Pethに等しくなっている。即ち、上述した変速制御においては、要求出力Peが、エンジン200の最高効率点に相当する出力値未満(以下であっても問題ない)の領域で電気CVTモードが選択され、反力要素となるモータジェネレータによる回転速度制御によって、エンジン200の動作点が、要求出力に応じて動作線Mの中から選択されるのである。また、要求出力がPeth以上となる領域では、図示鎖線として表される各固定変速モードの動作線に従って、有段変速が実現される。
【0073】
ここで、エンジン200は、元より低負荷領域で効率化が図られた過給リーンバーンエンジンであり、高効率領域が顕著に低負荷側に存在する。従って、この高効率領域でエンジン200が運転されるように設定される動作線M上で動作点が設定されることにより、エンジン200の動作点全域で電気CVTモードを実現しようとする場合(即ち、最大トルク線近傍においてもMG1及びMG2を反力要素及び出力要素として機能させる必要がある場合)と較べて、反力要素及び出力要素の別を問わずモータジェネレータの体格を大幅に縮小することができる。
【0074】
翻って、高出力領域では、元よりエンジン200の動作効率は低下しており、高効率領域において電気CVTモードを実行するのと比較して顕著な利益は得られない。逆に、固定変速モードによれば、駆動力の伝達効率自体は電気CVTモードよりも向上する。即ち、本実施形態に係る変速制御によれば、ハイブリッド車両10全体のエネルギ消費効率を可及的に維持しつつ、各モータジェネレータの体格縮小によるモータジェネレータ及び付帯設備(例えば、PCU12等)の搭載性を向上させる(少なくとも、この種の搭載性向上に係る利益を相対的に大とする)ことが可能となるのである。
【0075】
最後に、図6を参照し、電気CVTモード或いは固定変速モード各々における、変速モードの選択態様について説明する。ここに、図6は、ハイブリッド車両10における変速条件を表す変速マップの模式図である。
【0076】
図6において、縦軸及び横軸には夫々駆動力及び車速が表されている。この二次元座標系上で、1速、2速、3速及び4速の各電気CVTモードは、図示実線で示される領域で実行される。複数の電気CVTモードがカバーするオーバラップ領域では、上述した同期変速が可能であり、エンジン200の機関回転速度を変化させることなく、効率的な変速が実現される。一方、各固定変速モードについても同様であるが、固定変速モードは、電気CVTモードと較べて相対的に高車速高負荷領域(即ち、高出力領域)で、車速及び駆動力に応じて切り替えられる。
【0077】
尚、本実施形態では、ハイブリッド駆動機構10Aが、複数のモータジェネレータの各々を、反力要素としても出力要素としても機能させることにより多段の電気CVTモードを実現する、所謂マルチモードハイブリッドと称される駆動形態を有するが、本発明に係る搭載性向上に係る利益は、この種のハイブリッド駆動機構のみならず、広く適用可能である。
【0078】
例えば、シングルピニオン型の遊星歯車機構のサンギアにMG1、リングギアにMG2及びキャリアにエンジン200を連結し、リングギアを暫定的な出力軸たる中間軸に連結すると共に、この中間軸を更に有段変速装置(例えば、A/T)に入力して、当該有段変速装置の出力軸から駆動力を出力してもよい。この場合、電気CVTモードでは、有段変速装置において選択されている変速段により規定される範囲で変速比を自由に変更可能であり、一方で、例えばMG1をクラッチやブレーキ等でロック状態に制御することにより、出力軸とエンジン200とを直結状態にした場合には、有段変速装置において選択されている変速段の変速比と車速等によって一義的に決定される回転速度でエンジン200が動作する、固定変速モードを実現できる。このような比較的簡素な構成においても、電気CVTモードと固定変速モードとを有する限りにおいて、本発明に係る利益は享受される。
【0079】
また、本実施形態では、本発明に係る効果を顕著にするため、エンジン200を過給リーンバーンエンジンとして説明したが、一般的に、最高効率点又はそれに準じる高効率点を含むエンジンの高効率領域は、最大トルク又はそれに準じる高トルクを出力する高トルク領域(又は、高出力領域)には存在しない場合が多い。従って、高効率領域に限定して電気CVTモードによる変速を実行する本発明に係る実践上の利益は、その大小はあれ、他の方式のエンジンであっても変らず享受されるものである。
【0080】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【図2】図1のハイブリッド車両におけるハイブリッド駆動機構10Aの構成を概念的に表してなる概略構成図である。
【図3】図2のハイブリッド駆動機構における変速モードと変速装置の状態との対応関係を表す表である。
【図4】図1のハイブリッド車両においてECUにより実行される変速制御のフローチャートである。
【図5】図4の変速制御の概念に係るエンジン200の動作線の模式図である。
【図6】図4の変速制御に供される変速マップの模式図である。
【符号の説明】
【0082】
10…ハイブリッド車両、10A…ハイブリッド駆動機構、100…ECU、200…エンジン、200A…クランクシャフト、300…動力分割機構、MG1…モータジェネレータ、MG2…モータジェネレータ、400…第1変速装置、500…第2変速装置、600…動力伝達遮断クラッチ、700…カウンタ軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関、第1電動機及び第2電動機に連結された相互に差動回転可能な第1、第2及び第3の回転要素及び車軸に連結される出力部材を有する動力分配手段、並びに前記内燃機関の出力軸と該出力部材との回転速度比を連続変化させる無段変速モードと当該回転速度比を固定する固定変速モードとの間で変速モードを切り替え可能な変速手段を備えたハイブリッド車両の制御装置であって、
前記内燃機関の運転条件を特定する特定手段と、
該特定された運転条件が所定の高効率領域に該当する場合に前記変速モードが前記無段変速モードとなるように前記変速手段を制御する制御手段と
を具備することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
前記高効率領域は、前記内燃機関の最高効率点を含む領域である
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記運転条件が前記高効率領域に該当する場合として、前記内燃機関の要求出力が予め設定された基準値以下である場合に、前記変速モードが前記無段変速モードとなるように前記変速手段を制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関は、所定の低出力領域に前記高効率領域を有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−234498(P2009−234498A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85265(P2008−85265)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】