説明

ハイブリッド車両の駆動装置

【課題】パワーユニットの搭載性を高めつつ、発電用モータの設計自由度を高める。
【解決手段】パワーユニット11の後端には走行用モータ21が設けられ、走行用モータ21からの動力は、モータ軸33からギア列34およびピニオン軸35を経てデファレンシャル機構23に伝達される。また、パワーユニット11の前端にはエンジン20が設けられ、パワーユニット11の中央にはジェネレータ22が設けられる。エンジン20とジェネレータ22とはギア列44を介して連結され、ジェネレータ軸43はクランク軸45よりも上方に配置される。これにより、ジェネレータ22の下方にスペースを確保することができ、ジェネレータ22の下方にピニオン軸35を配置することができるため、パワーユニット11の幅寸法を抑制することが可能となる。さらに、ジェネレータ22の下方にスペースが確保されるため、ジェネレータ22の設計自由度を高めることも可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に縦置きに搭載されるハイブリッド車両の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンおよび電動モータを駆動源とするハイブリッド車両の駆動方式として、走行用の主要な動力源としてエンジンを駆動し、発進時や加速時に電動モータを補助的に駆動するパラレル方式がある。また、発電用の動力源としてエンジンを駆動し、走行用の動力源として電動モータを駆動するシリーズ方式がある。さらに、シリーズ方式とパラレル方式とを組み合わせたシリーズパラレル方式も開発されている。このようなハイブリッド車両の駆動装置は、エンジンを備えるだけでなく、エンジンによって駆動される発電用モータ、駆動輪に連結される走行用モータ等によって構成される。この駆動装置を車体に縦置きに搭載する際には、駆動装置のエンジンと発電用モータとを同軸上に配置することが一般的であった(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−330848号公報
【特許文献2】特開2005−35313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、縦置きの駆動装置から前輪に動力を伝達するためには、特許文献2に記載された駆動装置のように、発電用モータの後方にデファレンシャル機構を設置することが多い。しかしながら、デファレンシャル機構の設置スペースを確保するためには、発電用モータを薄く設計することが必要となっていた。このように、縦置きに搭載される前輪駆動用(四輪駆動用)の駆動装置においては、発電用モータの効率を高めるように、発電用モータのコア径とコア幅とをほぼ同一に設計することが困難となっていた。
【0005】
また、縦置きの駆動装置から前輪に動力を伝達するため、駆動装置にトランスファ機構を組み付けるとともに、トランスファ機構から前方にプロペラシャフトを延ばすことも考えられる。しかしながら、駆動装置にトランスファ機構を組み付ける構造では、エンジンと同軸上の発電用モータを避けるようにトランスファ機構の出力軸を配置することが必要である。すなわち、駆動装置から車幅方向にトランスファ機構が大きく張り出すことから、駆動装置を車体に縦置きに搭載する際にフロアトンネルの形状変更を招く要因となっていた。
【0006】
本発明の目的は、車体に対する駆動装置の搭載性を高めるとともに、発電用モータの設計自由度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、エンジンと、前記エンジンに連結される発電用モータと、差動機構を介して前輪に連結される走行用モータとを備え、車体に縦置きに搭載されるハイブリッド車両の駆動装置であって、前記エンジンと前記発電用モータとの間にギア列を設け、前記エンジンのクランク軸よりも前記発電用モータの回転軸を上方に配置し、前記走行用モータからの動力を前記差動機構に伝達する前輪出力軸を、前記発電用モータの下方に配置することを特徴とする。
【0008】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、前記発電用モータの回転軸は、前記エンジンのクランク軸に対して車幅方向にずらして配置されることを特徴とする。
【0009】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、前記走行用モータの回転軸は、前記エンジンのクランク軸よりも下方に配置されることを特徴とする。
【0010】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、前記発電用モータの回転軸と前記走行用モータの回転軸とは、クラッチ機構を介して連結されることを特徴とする。
【0011】
本発明のハイブリッド車両の駆動装置は、前記発電用モータの回転軸と前記走行用モータの回転軸とは、遊星ギア列を介して連結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンジンと発電用モータとの間にギア列を設け、エンジンのクランク軸よりも発電用モータの回転軸を上方に配置したので、発電用モータの下方にスペースを確保することが可能となる。これにより、発電用モータの下方に前輪出力軸を配置することができ、前輪出力軸を備えた駆動装置の幅寸法を抑制することが可能となる。さらに、発電用モータの下方に前輪出力軸を配置した場合であっても、発電用モータの下方にスペースが確保されることから、発電用モータの径寸法を拡大することができ、効率を高めるように発電用モータを設計することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ハイブリッド車両を示す概略図である。
【図2】パワーユニットの内部構造を示すスケルトン図である。
【図3】図2のA−A線に沿ってパワーユニットの内部構造を示す断面図である。
【図4】(a)および(b)は図3に示すパワーユニットの内部構造を簡略化して示す説明図である。
【図5】(a)および(b)は図2のB−B線に沿ってギア列の位置関係を簡略化して示す説明図である。
【図6】(a)は図5(a)の回転中心CE,CG,CMを拡大して示す説明図であり、(b)は図5(b)の回転中心CE,CG,CMを拡大して示す説明図である。
【図7】本発明の他の実施の形態である駆動装置としてパラレル方式のパワーユニットを示すスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1はハイブリッド車両10を示す概略図である。このハイブリッド車両10には本発明の一実施の形態である駆動装置としてパワーユニット11が搭載されている。また、図2はパワーユニット11の内部構造を示すスケルトン図である。
【0015】
図1に示すように、エンジンルーム12からフロアトンネル13にかけて、車体14にはパワーユニット11が縦置きに搭載されている。パワーユニット11の一端部にはエンジン20が設けられ、パワーユニット11の他端部には走行用モータ21が設けられている。また、エンジン20と走行用モータ21との間には、発電用モータとしてジェネレータ22が設けられている。さらに、ジェネレータ22の下方には差動機構であるデファレンシャル機構23が配置されており、このデファレンシャル機構23から前輪24に向けてエンジン動力やモータ動力が出力されている。なお、走行用モータ21およびジェネレータ22には、図示しないインバータを介してバッテリが接続されている。また、パワーユニット11は、所謂シリーズパラレル方式のパワーユニットとなっている。
【0016】
図2に示すように、パワーユニット11の後端部を構成するリアケース30には、走行用モータ21が収容されている。走行用モータ21は、リアケース30に固定されるステータ31と、ステータ31の内側に回転自在に収容されるロータ32とを有している。走行用モータ21のロータ32にはモータ軸(回転軸)33が設けられており、このモータ軸33の端部には駆動ギア34aが固定されている。また、モータ軸33とデファレンシャル機構23との間に設けられるピニオン軸(前輪出力軸)35には、モータ軸33の駆動ギア34aに噛み合う従動ギア34bが固定されている。さらに、ピニオン軸35の端部には、デファレンシャル機構23のリングギア36aに噛み合うピニオンギア36bが固定されている。このように、走行用モータ21からのモータ動力は、モータ軸33からギア列34およびピニオン軸35を経て、デファレンシャル機構23に入力されるようになっている。
【0017】
また、パワーユニット11の中央部を構成するメインケース40には、ジェネレータ22が収容されている。ジェネレータ22は、メインケース40に固定されるステータ41と、ステータ41の内側に回転自在に収容されるロータ42とを有している。ジェネレータ22のロータ42には、車両前後方向に伸びるジェネレータ軸(回転軸)43が設けられており、ジェネレータ軸43の車両前方側の端部には従動ギア44bが固定されている。また、エンジン20のクランク軸45にはダンパ機構46を介してエンジン出力軸47が連結されており、エンジン出力軸47の端部には従動ギア44bに噛み合う駆動ギア44aが固定されている。このように、エンジン20からのエンジン動力は、ダンパ機構46、エンジン出力軸47、ギア列44、ジェネレータ軸43を経て、ジェネレータ22に入力されるようになっている。なお、ジェネレータ軸43には図示しない駆動チェーンを介してオイルポンプが連結されており、ジェネレータ軸43の回転によってオイルポンプから潤滑油が供給されている。
【0018】
なお、走行用モータ21を収容するリアケース30や、ジェネレータ22を収容するメインケース40には、冷却液を案内するウォータージャケット30a,40aが形成されている。これらのウォータージャケット30a,40a内にはリブ等が形成されており、走行用モータ21やジェネレータ22の冷却効率が高められている。また、リアケース30やメインケース40には図示しない隔壁が形成されており、走行用モータ21やジェネレータ22は潤滑油等に接触しないドライ状態に保持されている。
【0019】
また、ジェネレータ軸43の車両後方側の端部にはクラッチ機構50および駆動ギア51aが設けられており、モータ軸33には駆動ギア51aに噛み合う従動ギア51bが固定されている。このように、モータ軸33とジェネレータ軸43とは、クラッチ機構50およびギア列51を介して連結されている。また、ジェネレータ軸43のクラッチ機構50を制御することにより、パワーユニット11の駆動方式をパラレル方式とシリーズ方式とに切り換えることが可能となる。すなわち、クラッチ機構50を締結することにより、エンジン20および走行用モータ21が前輪24に接続されるため、パワーユニット11はエンジン動力およびモータ動力を前輪24に伝達するパラレル方式に切り換えられる。一方、クラッチ機構50を解放することにより、走行用モータ21だけが前輪24に接続されるため、パワーユニット11はモータ動力のみを前輪24に伝達するシリーズ方式に切り換えられる。なお、パワーユニット11をシリーズ方式で駆動する際には、バッテリの充電状態や車両の走行状況に応じてエンジン20が駆動され、エンジン動力によってジェネレータ22が発電駆動されることになる。
【0020】
なお、走行用モータ21は発電機としての機能を有しており、ジェネレータ22は電動機としての機能を有している。例えば、車両制動時にはジェネレータ22に加えて走行用モータ21を発電機として作動させることにより、多くの運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収することが可能となる。また、車両加速時や高速走行時には走行用モータ21に加えてジェネレータ22を電動機として作動させることにより、車両の走行性能を向上させることが可能となる。
【0021】
前述したように、エンジン20とジェネレータ22との間にギア列44を設けるようにしたので、ジェネレータ軸43をクランク軸45よりも上方に配置することが可能となる。すなわち、パワーユニット11内のジェネレータ22を上方にずらすことができるため、ジェネレータ22の下方にスペースを確保することが可能となる。したがって、図示するようにジェネレータ22の下方にピニオン軸35およびデファレンシャル機構23を配置する場合であっても、ジェネレータ22とデファレンシャル機構23とを上下に離すことができ、ジェネレータ22の径寸法を拡大することが可能となる。このように、ジェネレータ22の設計自由度を高めることができるため、ジェネレータ22のコア径を拡大することができ、ジェネレータ22のコア幅にコア径を近づけることが可能となる。これにより、パワーユニット11に高効率のジェネレータ22を搭載することが可能となる。
【0022】
また、パワーユニット11内のジェネレータ22を上方に移動させ、ジェネレータ22の下方にデファレンシャル機構23やピニオン軸35を配置したので、パワーユニット11の幅寸法を抑制することが可能となる。これにより、車体14に対するパワーユニット11の搭載性を高めることが可能となる。さらに、ジェネレータ22とデファレンシャル機構23とが上下に離されることから、デファレンシャル機構23を前後に移動させることが可能となり、パワーユニット11の設計自由度を飛躍的に高めることが可能となる。
【0023】
また、図2に示すように、走行用モータ21のモータ軸33は、エンジン20のクランク軸45よりも下方に配置されている。これにより、パワーユニット11内における走行用モータ21の位置を下げることができ、走行用モータ21の径寸法を拡大することが可能となる。すなわち、クランク軸45よりもモータ軸33を引き下げることにより、フロアトンネル13の形状に合うように、パワーユニット11の後端部を前端部よりも引き下げることが可能となる。これにより、パワーユニット11の後端部におけるフロアトンネル13内でのクリアランスを確保することができ、走行用モータ21の径寸法を拡大することが可能となる。これにより、走行用モータ21のコア径を拡大することができ、走行用モータ21のコア幅にコア径を近づけることができるため、パワーユニット11に高効率の走行用モータ21を搭載することが可能となる。
【0024】
また、エンジン20とジェネレータ22とをギア列44を介して連結することにより、エンジン20の効率が良好となる回転域と、ジェネレータ22の効率が良好となる回転域とが異なる場合であっても、エンジン20およびジェネレータ22を共に効率良く作動させることが可能となる。例えば、エンジン20の効率が低回転域で良好となり、ジェネレータ22の効率が高回転域で良好となる場合には、ギア列44を増速側に設計することにより、エンジン20およびジェネレータ22を共に効率の良い回転域で作動させることが可能となる。
【0025】
また、モータ軸33とピニオン軸35との間にギア列34が設けられ、ピニオン軸35とデファレンシャル機構23との間にギア列36が設けられ、ジェネレータ軸43とモータ軸33との間にギア列51が設けられている。このように、ギア列34,36,51を設けることにより、走行用モータ21およびエンジン20を効率良く作動させることが可能となる。すなわち、シリーズ走行やパラレル走行の走行条件に基づいて、ギア列34,36のギア比を調整することにより、走行用モータ21を効率の良い回転域で作動させることが可能となる。また、ギア列34,36のギア比やパラレル走行の走行条件に基づいて、ギア列51のギア比を調整することにより、エンジン20を効率の良い回転域で作動させることが可能となる。
【0026】
続いて、エンジン20とジェネレータ22との間にギア列44を設けることによって得られる他の効果について説明する。ここで、図3は図2のA−A線に沿ってパワーユニット11の内部構造を示す断面図である。また、図4は図3に示すパワーユニット11の内部構造を簡略化して示す説明図である。図4(a)はエンジン20の回転中心CEとジェネレータ22の回転中心CGとを車幅方向に一致させた状態を示し、図4(b)はエンジン20の回転中心CEとジェネレータ22の回転中心CGとを車幅方向にずらした状態を示している。なお、エンジン20の回転中心CEとはクランク軸45の中心を意味しており、ジェネレータ22の回転中心CGとはジェネレータ軸43の中心を意味している。
【0027】
図3に示すように、ジェネレータ22の回転中心CGは、エンジン20の回転中心CEに対して車幅方向に距離Wだけずれた状態となっている。すなわち、クランク軸45とジェネレータ軸43とはギア列44を介して連結されており、クランク軸45を中心にジェネレータ軸43を回転させることができるため、クランク軸45とジェネレータ軸43とは車幅方向にずれた状態で配置されている。これにより、デファレンシャル機構23のリングギア36aを避けるように、ジェネレータ22を車幅方向にずらして配置することが可能となる。すなわち、図4(a)に示すように、クランク軸45とジェネレータ軸43とを車幅方向にずらさずに配置した場合に比べて、図4(b)に示すように、クランク軸45とジェネレータ軸43とを車幅方向にずらして配置した場合には、符合αで示すように、ジェネレータ22をリングギア36aから離すことが可能となる。
【0028】
このように、ジェネレータ22をリングギア36aから離すことができるため、ジェネレータ22の径寸法を拡大することが可能となる。これにより、ジェネレータ22のコア径を拡大することができ、ジェネレータ22のコア幅にコア径を近づけることができるため、パワーユニット11に高効率のジェネレータ22を搭載することが可能となる。また、ジェネレータ22とリングギア36aとの間にスペースが生じることから、このスペースを利用してウォータージャケット30a,40aを拡大することができ、ジェネレータ22の冷却性能を高めることも可能となる。
【0029】
続いて、エンジン20とジェネレータ22との間にギア列44を設けることによって得られる他の効果について説明する。ここで、図5は図2のB−B線に沿ってギア列44,51の位置関係を簡略化して示す説明図である。図5(a)は回転中心CE,CGを車幅方向に一致させた状態を示し、図5(b)は回転中心CE,CGを車幅方向にずらした状態を示している。また、図6(a)は図5(a)の回転中心CE,CG,CMを拡大して示す説明図であり、図6(b)は図5(b)の回転中心CE,CG,CMを拡大して示す説明図である。なお、回転中心CMとは、走行用モータ21の回転中心であり、モータ軸33の中心を意味している。
【0030】
前述したように、エンジン20とジェネレータ22との間にギア列44を設けられており、ジェネレータ軸43はクランク軸45を中心に回転した状態で配置されている。このように、クランク軸45を中心にジェネレータ22を回転させることから、モータ軸33とジェネレータ軸43との軸間距離を狭めることが可能となる。すなわち、図6(a)に示すように、各回転中心CE,CG,CMを鉛直線状に配置した場合に、回転中心CG,CE間の距離を「A」とし、回転中心CE,CM間の距離を「B」とすると、回転中心CG,CM間の距離は「A+B」となる。一方、図6(b)に示すように、回転中心CEを中心として回転中心CGを所定角度θで回転させた場合には、回転中心CG,CM間の距離は「√(A+B+2ABcosθ)」となる。このように、クランク軸45を中心にジェネレータ軸43を回転させることにより、回転中心CGと回転中心CMとの距離、つまりモータ軸33とジェネレータ軸43との軸間距離を狭めることができ、ギア列51を構成する駆動ギア51aおよび従動ギア51bの小型化を達成することが可能となる。これにより、ギア列51の軽量化や低コスト化を達成することが可能となり、小型化によってギア列51の回転抵抗を軽減することも可能となる。
【0031】
前述したパワーユニット11はシリーズパラレル方式のパワーユニットであるが、これに限られることはなく、シリーズ方式やパラレル方式のパワーユニットに対して本発明を適用することが可能である。前述したパワーユニット11をベースにシリーズ方式のパワーユニットを構成する際には、ジェネレータ軸43とモータ軸33とを連結しているクラッチ機構50およびギア列51が取り外される。このように構成されるシリーズ方式のパワーユニットであっても、エンジン20とジェネレータ22との間にギア列44を設けることにより、前述したパワーユニット11と同様の効果を得ることが可能となる。
【0032】
また、図7は本発明の他の実施の形態である駆動装置としてパラレル方式のパワーユニット60を示すスケルトン図である。図7において図2に示す部材と同一の部材については、同一の符合を付してその説明を省略する。図7に示すように、ジェネレータ22の車両後方側には、エンジン動力をジェネレータ22とデファレンシャル機構23とに分配する遊星ギア列61が設置されている。ジェネレータ22のロータ42には中空構造のジェネレータ軸(回転軸)62が設けられており、このジェネレータ軸62は遊星ギア列61のサンギア61aに連結されている。また、ジェネレータ軸62の中空部には、ギア列44の従動ギア44bから伸びる伝達軸63が収容されており、この伝達軸63の端部は遊星ギア列61のキャリア61bに対して連結されている。さらに、遊星ギア列61のリングギア61cはギア列51の駆動ギア51aに対して連結されている。このように構成されるパラレル方式のパワーユニット60であっても、エンジン20とジェネレータ22との間にギア列44を設けることにより、前述したパワーユニット11と同様の効果を得ることが可能となる。
【0033】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、図示するパワーユニット11,60は、駆動輪である前輪24に動力を伝達する前輪駆動用のパワーユニットであるが、これに限られることはなく、前輪24に加えて後輪にも動力を伝達する四輪駆動用のパワーユニットに対して本発明を有効に適用することも可能である。また、図示するパワーユニット11,60内にデファレンシャル機構23が組み込まれているが、これに限られることはなく、パワーユニット11,60の外部にデファレンシャル機構23を設置しても良い。この場合には、前輪出力軸によって駆動されるプロペラシャフトを車両前方に伸ばし、このプロペラシャフトによって外部のデファレンシャル機構が駆動されることになる。前述したパワーユニット11内のピニオン軸35と同様に、前輪出力軸はジェネレータ22の下方に配置されるため、パワーユニットの幅寸法を抑制することができ、車体14に対する搭載性を高めることが可能となる。また、前輪出力軸から前方に延びるプロペラシャフトについても、フロアトンネル13の形状に影響を与えることなく設置することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
10 ハイブリッド車両
11 パワーユニット(駆動装置)
14 車体
20 エンジン
21 走行用モータ
22 ジェネレータ(発電用モータ)
23 デファレンシャル機構(作動機構)
24 前輪
33 モータ軸(回転軸)
35 ピニオン軸(前輪出力軸)
43 ジェネレータ軸(回転軸)
44 ギア列
45 クランク軸
50 クラッチ機構
60 パワーユニット(駆動装置)
61 遊星ギア列
62 ジェネレータ軸(回転軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンに連結される発電用モータと、差動機構を介して前輪に連結される走行用モータとを備え、車体に縦置きに搭載されるハイブリッド車両の駆動装置であって、
前記エンジンと前記発電用モータとの間にギア列を設け、前記エンジンのクランク軸よりも前記発電用モータの回転軸を上方に配置し、
前記走行用モータからの動力を前記差動機構に伝達する前輪出力軸を、前記発電用モータの下方に配置することを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車両の駆動装置において、
前記発電用モータの回転軸は、前記エンジンのクランク軸に対して車幅方向にずらして配置されることを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のハイブリッド車両の駆動装置において、
前記走行用モータの回転軸は、前記エンジンのクランク軸よりも下方に配置されることを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の駆動装置において、
前記発電用モータの回転軸と前記走行用モータの回転軸とは、クラッチ機構を介して連結されることを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のハイブリッド車両の駆動装置において、
前記発電用モータの回転軸と前記走行用モータの回転軸とは、遊星ギア列を介して連結されることを特徴とするハイブリッド車両の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−1127(P2012−1127A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138939(P2010−138939)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】