説明

バッテリ情報提供装置、方法およびプログラム

【課題】高効率および低コストで走行予定経路を走行することができなかった。
【解決手段】バッテリの電力によって駆動される車両の走行予定経路を取得し、前記車両が前記走行予定経路を走行する際の電力の使用状況を推定し、前記使用状況に応じた電力を出力するために搭載すべきバッテリを示すバッテリ情報を取得し、前記バッテリ情報を案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行予定経路を走行するために適したバッテリに関する情報を提供するバッテリ情報提供装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目的地に到達するために必要な電気自動車用主電源の充電時間を告知する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−112121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術においては、効率よく走行予定経路を走行することができなかった。すなわち、従来の技術においては、車両に搭載されているバッテリは固定的であり、走行予定経路を走行するために適したバッテリを選択することができない。従って、仕事率やエネルギー密度の観点でより有利なバッテリが他に存在し、車両に固定的に搭載されたバッテリでは不利になる場合であってもそのまま走行せざるを得ない。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、走行予定経路を効率よく走行するために適したバッテリに関する情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するため、本発明においては、車両が走行予定経路を走行する際の電力の使用状況を推定し、当該使用状況に応じた電力を出力するために搭載すべきバッテリを示すバッテリ情報を案内する。すなわち、走行予定経路を走行する際の電力を賄うために搭載すべきバッテリを示すバッテリ情報を案内すると、利用者は当該案内に従って当該搭載すべきバッテリを車両に搭載して車両を走行させることができる。従って、走行予定経路を効率よく走行可能なバッテリに関する情報を提供することができる。
【0005】
走行予定経路取得手段は、自車両における現在位置以降の走行予定経路を取得することができればよい。ここで、走行予定経路は、自車両の走行開始位置から目的地までの経路として予め設定された経路を示す情報であっても良いし、自車両の現在位置より先の経路を推定して得られた経路を示す情報であっても良く、種々の構成を採用可能である。
【0006】
電力使用状況推定手段は、走行予定経路を走行する際の電力の使用状況を推定することができればよい。ここで、使用状況は走行時に使用される電力を示す各種の情報である。すなわち、電力の使用状況は、走行予定経路を走行する際にバッテリから出力されるべき電力を示し、当該電力の使用状況によって車両に搭載すべきバッテリを特定することができる限りにおいて、種々のパラメータを当該電力の使用状況の推定値とすることが可能である。
【0007】
例えば、走行予定経路の各位置で車両にて必要とされる仕事率を推定すれば、当該仕事率で車両を駆動するための電力の使用状況を推定することができ、当該使用状況に応じた電力を出力するために搭載すべきバッテリを特定することができる。また、走行予定経路の各位置での車両の累積使用エネルギーを推定すれば、当該累積使用エネルギーを賄うような電力の使用状況を推定することができ、当該使用状況に応じた電力を出力するために搭載すべきバッテリを特定することができる。
【0008】
なお、走行予定経路の各位置で車両にて必要とされる仕事率は、車両の重量や摩擦係数、空気抵抗、加速抵抗、勾配抵抗、前面投影面積等に基づいて取得可能である。当該車両に関する仕事率は、当該仕事率にて走行予定経路を走行する際に使用される電力の使用状況に対応する。例えば、モーターの伝達効率や車両に搭載された伝達軸の伝達効率を利用すれば、車両にて必要とされる仕事率をバッテリに要求される出力性能としての仕事率(出力可能仕事率の上限)に変換することができる。従って、車両にて必要とされる仕事率にて走行を行わせるために搭載すべきバッテリを特定することが可能である。
【0009】
さらに、走行予定経路の各位置における車両の累積使用エネルギーは、車両の重量や摩擦係数、空気抵抗、加速抵抗、勾配抵抗、前面投影面積等に基づいて取得可能である。当該車両に関する累積使用エネルギーは、当該累積使用エネルギーを消費して走行予定経路を走行する際に使用される電力の使用状況に対応する。例えば、モーターの伝達効率や車両に搭載された伝達軸の伝達効率を利用すれば、車両における累積使用エネルギーを賄うためのバッテリ容量や充電済エネルギー量を取得することができる。従って、車両の累積使用エネルギーを賄うために搭載すべきバッテリを特定することが可能である。なお、累積使用エネルギーは、走行予定経路の各位置で必要とされるエネルギーの累積値であるため、回生エネルギーをバッテリに充電する場合には、そのエネルギーを考慮して累積使用エネルギーとして良い。
【0010】
バッテリ情報取得手段は、走行予定経路を走行する際の電力の使用状況に基づいて、当該使用状況に応じた電力を出力するために搭載すべきバッテリを特定し、当該バッテリを示すバッテリ情報を取得することができればよい。ここで、搭載すべきバッテリは、バッテリを使用して走行予定経路を走行したときに充分な電力を供給することが可能なバッテリである。
【0011】
従って、搭載すべきバッテリは、電力の使用状況を示すパラメータとしてどのようなパラメータを採用するかによって変動し得るが、ここでは、当該使用状況に応じた電力を出力するために搭載すべきバッテリを案内することによって、利用者に当該搭載すべきバッテリを判断させ、走行予定経路を高効率および低コストで走行できるように促すことができればよい。例えば、車両にて必要とされる仕事率を当該車両にて出力させるために、バッテリにて必要とされる仕事率が電力の使用状況として特定されているときには、当該仕事率を出力させるためのバッテリが搭載すべきバッテリとして特定される。また、車両の累積使用エネルギーを賄うためにバッテリにて必要とされるエネルギーが電力の使用状況として特定されているときには、当該エネルギーを出力させるためのバッテリが搭載すべきバッテリとして特定される。また、電力の使用状況を示すパラメータが、車両にて必要とされる仕事率および車両の累積使用エネルギーであれば、当該仕事率および累積使用エネルギーの双方を実現するバッテリが搭載すべきバッテリとして特定される。
【0012】
さらに、走行予定経路を走行する際の電力の使用状況に基づいて、当該使用状況に応じた電力を出力するために最低限必要なバッテリを取得して、上述の搭載すべきバッテリとしてもよい。例えば、走行予定経路を走行する際の電力を賄うために必要な最低限のバッテリを搭載して走行した場合、車両においてはそのバッテリを使用して走行予定経路を走行することが可能である。また、バッテリの容量が重量に比例し、最低限のバッテリが最低限の重量のバッテリとなる場合には、最低限のバッテリを搭載することによって車両の重量が軽くなる。このため、バッテリ情報で案内されたバッテリを車両に搭載して走行することで、当該車両においてバッテリを使用して高効率で走行予定経路を走行することが可能になる。また、走行予定経路を走行するために必要とされる電力を出力するために最低限必要なバッテリを車両に搭載して走行することで、バッテリに対する充電量も最低限の充電量とすることが可能である。このため、充電のために必要なコストを抑制することが可能である。さらに、過剰なバッテリを搭載せずに車両を走行させ、また、バッテリが不足する状態で車両を走行させることを防止することができる。
【0013】
さらに、上述の使用状況に応じた電力を出力するために搭載すべきバッテリは、種々の指標に基づいて特定することができ、例えば、個数や種類によってバッテリを特定すれば、走行予定経路の走行を完了するために必要になるバッテリを明確に案内することが可能である。具体的には、個数を指標にすれば、上述の仕事率や累積使用エネルギーを出力することが可能なバッテリの個数の下限値に基づいて最低限必要なバッテリを特定することができる。この構成によれば、車両の重量をできるだけ軽くするバッテリを示すバッテリ情報を取得することが可能であり、このバッテリを搭載した状態で車両を走行させることにより、高効率で走行可能な状態とすることができる。
【0014】
さらに、バッテリの種類を最低限必要なバッテリを特定するための指標にすれば、上述の車両における仕事率や累積使用エネルギーに対応した電力を出力するために必要なバッテリを容易に特定することができる。むろん、同種のバッテリにおいて、重量や容量等のサイズが異なる場合には、最低限必要なバッテリを特定するための指標としてサイズを採用しても良い。
【0015】
なお、バッテリはその種類によってその性能が異なり、一般に、仕事率密度(W/kg)とエネルギー密度(Wh/kg)はトレードオフの関係にある。すなわち、現在市販されているバッテリにおいては、概して、仕事率密度が大きいバッテリほどエネルギー密度が小さく、エネルギー密度が大きくなるにつれ仕事率密度が小さくなる傾向がある。従って、走行予定経路に、大きな仕事率での走行が必要となる区間が含まれている場合、その仕事率で車両を走行させるための電力を出力可能なバッテリの種類は限られてくる。そこで、走行予定経路を走行する際の電力の使用状況としてバッテリに要求される出力性能としての仕事率を特定すれば、走行予定経路の走行するために車両にて必要とされる仕事率を出力させるために搭載することが必要となる種類のバッテリを特定することができる。
【0016】
また、走行予定経路の走行に必要な累積使用エネルギーが特定されると、車両に当該累積使用エネルギーを出力させるために最低限搭載する必要のあるバッテリの個数を種類毎に特定することができる。従って、上述のトレードオフを加味しながら最も有利なバッテリの種類および個数の組み合わせを特定すれば、走行予定経路を走行するために車両にて必要とされる仕事率および車両の累積使用エネルギーの双方を出力可能な最低限必要なバッテリの状態を特定することが可能である。ここで、最も有利なバッテリの種類および個数は、種々の指標に基づいて判断することが可能であり、例えば、総重量が最も軽くなるようなバッテリの組み合わせや、充電コストが最も安くなるようなバッテリの組み合わせを採用可能である。
【0017】
さらに、最低限必要なバッテリの個数および種類を特定するための手法として、仕事率に基づいて高仕事率バッテリの個数を特定し、その後に累積使用エネルギーに基づいて高エネルギー密度バッテリの個数を特定する構成を採用しても良い。具体的には、所定の基準以上の仕事率を車両に出力させることが可能な高仕事率バッテリと当該高仕事率バッテリよりもエネルギー密度の高い高エネルギー密度バッテリとが存在するとき、走行予定経路の各位置で車両にて必要とされる仕事率を特定すれば、車両にて所定の基準以上の仕事率が必要とされる高仕事率区間が存在するか否か特定可能である。
【0018】
走行予定経路に当該高仕事率区間が含まれる場合には高仕事率バッテリが必要となるため、高仕事率区間で車両に必要とされる仕事率を出力させるために最低限必要な高仕事率バッテリの個数を取得する。高仕事率区間にて使用するバッテリを特定したら、走行予定経路を走行するために必要なエネルギーの残りを賄うことができるように、各位置での累積使用エネルギーの最大値から高仕事率区間において高仕事率バッテリによって車両から出力される出力エネルギーを除いた残余エネルギーを特定する。そして、残余エネルギーを車両から出力させるために最低限必要な高エネルギー密度バッテリの個数を取得する。すなわち、エネルギー密度が高い高エネルギー密度バッテリの方が、高仕事率バッテリと比較して同じ重量でより多くのエネルギーを蓄積することが可能である。そこで、高仕事率が必要となる区間において高仕事率バッテリを使用することとし、残余エネルギーを高エネルギー密度バッテリで賄うこととすれば、より効率的な走行を実現するために最低限必要なバッテリの状態を特定することができる。
【0019】
なお、前記所定の基準は、当該基準を超える仕事率の出力が可能であるか否かに基づいてバッテリの種類を特定できるように予め定義されていれば良く、例えば、高エネルギー密度バッテリによって車両に出力させることが可能な仕事率の上限値等を基準として採用可能である。また、特定の仕事率を出力させることが可能であるか否かを判断するためには、特定の仕事率を継続して出力させることができるか否かに基づいて判断することが好ましい。
【0020】
さらに、バッテリ情報案内手段は、使用状況に応じた電力を出力するために搭載すべきバッテリに関する情報を案内することができれば良く、バッテリを積み込み、または、おろすことを促す案内であっても良いし、バッテリの過剰、または、不足を示す案内であっても良い。むろん、自動でバッテリを搭載する機器を制御して自動でバッテリの積み込み作業やおろし作業を行うように構成してもよい。
【0021】
さらに、走行予定経路を走行する際の電力の使用状況に基づいて、当該使用状況に応じた電力を出力するために搭載すべきバッテリを特定する手法は、この処理を行うプログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなバッテリ情報提供装置、方法、プログラムは、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあれば、車両に搭載されない各部と連携して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、バッテリ情報提供装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(2)バッテリ情報案内処理:
(3)他の実施形態:
【0023】
(1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、本実施形態にかかるバッテリ情報提供装置を含むナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、CPU、RAM、ROM等を備える制御部20と記憶媒体30とを備えており、記憶媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとしてバッテリ情報を案内する機能を備えるナビゲーションプログラム21を実行可能である。
【0024】
本実施形態にかかるナビゲーション装置10が搭載された車両は、バッテリ42に蓄積された電力を動力源としたモーター40を備えている。モーター40は図示しない動力伝達機構に連結されており、当該動力伝達機構によって回転駆動力を車両の推進力に変換することによって車両を駆動する。すなわち、本実施形態における車両はバッテリ42によって駆動される電気自動車である。
【0025】
電力制御回路41は、バッテリ42を充電し、また、バッテリ42から電力を取得して他の構成要素に伝達する回路である。本実施形態においては、図示しない外部の商用電源から電力線を介して供給される電力と、モーター40が発電した電力とによってバッテリ42を充電するように構成されている。すなわち、車両にて発生した回生エネルギーの一部をモーター40に伝達するように構成されており、この際にモーター40によって発電された電力は電力制御回路41によって取得され、バッテリ42が充電される。
【0026】
なお、本実施形態においては車両に搭載するバッテリ42を複数の種類(図1においてはバッテリA,バッテリBの2種類)から選択可能であり、各種類のバッテリのそれぞれをN個,M個ずつ(N,Mは1以上の自然数)搭載することができる。また、本実施形態において、バッテリAはバッテリBが継続的に出力可能な仕事率よりも大きな仕事率を継続的に出力可能な高仕事率バッテリであり、バッテリBは高仕事率バッテリよりもエネルギー密度の高い高エネルギー密度バッテリである。
【0027】
図2は、バッテリの種類毎の出力性能を示す図であり、縦軸は仕事率密度(パワー密度:W/kg)、横軸はエネルギー密度(Wh/kg)である。同図2において、実線で示す円は一般的なリチウムイオン2次電池における仕事率密度およびエネルギー密度の分布範囲を示し、一点鎖線,破線,二点鎖線は、それぞれ、鉛蓄電池,電気2重層キャパシタ,コンデンサにおける仕事率密度およびエネルギー密度の分布範囲を示している。
【0028】
同図2に示すように、各種のバッテリにおいては、概して、仕事率密度が大きいバッテリほどエネルギー密度が小さく、エネルギー密度が大きくなるにつれて仕事率密度が小さくなる傾向がある。例えば、電気2重層キャパシタはリチウムイオン2次電池よりも仕事率密度が大きい傾向にあるが、電気2重層キャパシタはリチウムイオン2次電池よりもエネルギー密度が小さい。従って、電気2重層キャパシタを高仕事率バッテリとしたとき、リチウムイオン2次電池は高エネルギー密度バッテリとなる。本実施形態においては、このように特性の異なる2種類のバッテリを適宜選択し、走行予定経路を走行するための最適な組み合わせ(単独よりも効率がよい組み合わせ)を取得してバッテリ情報を特定することになる。
【0029】
本実施形態において、電力制御回路41は車両ECU43に制御される。すなわち、車両ECU43は電力制御回路41に対して制御信号を出力可能であり、電力制御回路41に対して制御信号を出力してモーター40が回転駆動力を発生させるように制御する。従って、本実施形態においては、車両ECU43が出力する制御信号によって車両の駆動や停止、モーター40による充電、バッテリ42の放電によるモーター40の駆動が選択される。
【0030】
車両ECU43は、制御部20からの制御信号に応じて当該制御部20に対して各種の信号を出力する。本実施形態においては、この信号の一つとしてバッテリ42に関する情報を示す信号を出力する。すなわち、バッテリ42として搭載可能なバッテリの種類および上限個数と、現在搭載されているバッテリの種類および個数を示す信号を出力する。制御部20は、当該信号に基づいてバッテリ42として搭載可能なバッテリの種類および上限個数と、現在搭載されているバッテリの種類および個数を取得する。
ユーザI/F部44は、ユーザに各種の情報を提供し、またはユーザの指示を入力するためのインタフェース部であり、図示しないディスプレイやスピーカ、ボタンやマイクなどを備えている。
【0031】
GPS受信部45は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の現在位置を取得する。車速センサ46は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の速度を取得する。ジャイロセンサ47は、車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両の向きに対応した信号を出力する。制御部20は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車両の走行方向を取得する。車速センサ46およびジャイロセンサ47は、GPS受信部45の出力信号から特定される車両の現在位置を補正するためなどに利用される。また、車両の現在位置は、後述する地図情報30aと照合することにより適宜補正される。
【0032】
制御部20は、ナビゲーションプログラム21を実行することにより、走行予定経路を走行する際に適したバッテリを示すバッテリ情報を取得し、当該バッテリ情報を案内する。このためナビゲーションプログラム21は、走行予定経路取得部21aと電力使用状況推定部21bとバッテリ情報取得部21cとバッテリ情報案内部21dとを備えている。
【0033】
また、記憶媒体30には、ナビゲーションプログラム21による案内を実施するため地図情報30aが記憶されている。地図情報30aは、道路上に設定されたノードを示すノードデータやノード同士の連結を示すリンクデータ、ノード間の高低差(勾配)や、各リンクに対応した道路の摩擦や空気抵抗など車両走行時に作用する抵抗力を評価するための抵抗係数、休憩所等の施設や目的地など道路に付随する構造物を示すデータ等を含み、自車両の位置の特定や走行予定経路の特定,目的地への案内,走行予定経路を走行する際の電力の使用状況の特定等に利用される。
【0034】
走行予定経路取得部21aは、車両の走行予定経路を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、走行予定経路取得部21aの処理により、GPS受信部45が出力する信号に基づいて車両の現在位置を特定し、ユーザI/F部44にて入力される目的地を取得する。そして、地図情報30aを参照して公知のアルゴリズムによって現在位置から目的地までの経路を探索し、探索された経路を走行予定経路情報として取得する。
【0035】
電力使用状況推定部21bは、車両が走行予定経路を走行する際の電力の使用状況を推定する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、電力使用状況推定部21bの処理により、車両の重量や上述の抵抗係数など、車両の諸元や走行時の動作を評価するためのパラメータを取得し、走行予定経路の勾配変化および各位置で予定される加速度および車速を取得し、車両を当該加速度および車速で走行させる際に車両にて必要とされる仕事率を各位置について算出する。また、各位置の仕事率を走行予定経路に沿って積分することによって走行時に使用されるエネルギーの累積値である累積使用エネルギーを各位置について算出する。
【0036】
車両は、バッテリ42の電力によって駆動されたモーター40の回転力が伝達軸等を介して車輪に伝達されることで駆動される。そこで、モーター40の伝達効率や車両に搭載された伝達軸の伝達効率等に基づいて損失を予め見積もっておき、制御部20は、バッテリ42の電力が当該損失を経て車両の推進力に変換されることを前提として、上述の仕事率および累積仕事エネルギーに対応した電力の使用状況を取得する。すなわち、制御部20は、車両において上述の仕事率を出力させるためにバッテリ42にて必要とされる出力性能としての仕事率を上述の損失に基づいて推定する。また、上述の累積使用エネルギーを車両にて利用するためにバッテリ42に必要とされるバッテリ容量あるいは充電済エネルギー量を上述の損失に基づいて推定する。
【0037】
バッテリ情報取得部21cは、車両が走行予定経路を走行する際の電力の使用状況に基づいて、当該使用状況に応じた電力を出力するために最低限必要なバッテリを示すバッテリ情報を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、バッテリ情報取得部21cの処理により、バッテリ42にて必要とされる出力性能としての仕事率と、累積使用エネルギーを車両にて利用するためにバッテリ42に必要とされるバッテリ容量(あるいは充電済エネルギー量)とに基づいて、当該走行予定経路を走行するために最低限必要な高仕事率バッテリの個数を取得し、各位置における累積使用エネルギーの最大値から当該個数の高仕事率バッテリによる出力エネルギーを除いた残余エネルギーを出力するために最低限必要な高エネルギー密度バッテリの個数を取得する。
【0038】
バッテリ情報案内部21dは、バッテリ情報(最低限必要な高仕事率バッテリの個数および最低限必要な高エネルギー密度バッテリの個数)を案内する機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、制御部20は、車両ECU43を介してバッテリ42として現在搭載されているバッテリの種類および個数を取得し、上述のバッテリ情報と比較し、一致している場合にはバッテリ42の搭載内容を変更する必要はないとして変更不要の旨の通知をユーザI/F部44にて出力させる。一方、現在搭載されているバッテリの種類および個数が上述のバッテリ情報と一致していない場合には変更すべきバッテリを示す通知をユーザI/F部44にて出力させる。
【0039】
(2)バッテリ情報案内処理:
次に、以上の構成においてナビゲーション装置10が実施するバッテリ情報案内処理について説明する。図3はバッテリ情報案内処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、走行予定経路が設定されたときに実行される。はじめに、制御部20は、走行予定経路取得部21aの処理により走行予定経路を取得する(ステップS100)。
【0040】
次に、制御部20は、電力使用状況推定部21bの処理により、電力の使用状況を推定する(ステップS105)。すなわち、走行予定経路上の各位置で車両にて必要とされる仕事率を出力させるためにバッテリ42にて必要とされる出力性能としての仕事率と、累積使用エネルギーを車両にて利用するためにバッテリ42に必要とされるバッテリ容量(あるいは充電済エネルギー量)を取得する。図4Aにおいては実線にて各位置で車両にて必要とされる仕事率、図4Bにおいては実線にて各位置における車両の累積使用エネルギーを模式的に示しており、横軸は車両の現在位置からの距離である。なお、図4Aに示すように、走行予定経路を走行するために車両にて必要とされる仕事率は正あるいは負の値を取り、仕事率が正の値の区間ではモーター40によって車両を推進させる必要があるため、バッテリ42に蓄電された電力が使用される。また、仕事率が負の値の区間では回生エネルギーによってバッテリ42が充電される。
【0041】
次に、制御部20は、バッテリ情報取得部21cの処理により、ステップS110〜S130において、走行予定経路を走行するために最低限必要なバッテリを示すバッテリ情報を取得する。具体的には、まず、高仕事率区間において消費するエネルギー量Epを取得する(ステップS110)。すなわち、制御部20は、所定の基準Th(本例においては、高エネルギー密度バッテリによって車両に出力させることが可能な仕事率の上限値)以上の仕事率が必要な高仕事率区間Zを特定する。そして、高仕事率区間Zにおける仕事率を当該区間に渡って積分することによって高仕事率区間において消費するエネルギー量Epを取得する。なお、図4Aに示す例においては破線にて所定の基準Thを示し、一点鎖線の矢印で高仕事率区間Zを示している。
【0042】
次に、制御部20は、高仕事率区間を、高仕事率バッテリの電力を使用し、高エネルギー密度バッテリの電力を使用せずに走行したときに最低限必要となる高仕事率バッテリの個数を取得する(ステップS115)。すなわち、高エネルギー密度バッテリによって車両に出力させることが可能な仕事率は高仕事率区間における仕事率よりも小さく、仕事率に着目すると高エネルギー密度バッテリの出力性能は不充分である。そこで、高仕事率バッテリによってエネルギー量Epを車両に出力させることとし、当該エネルギー量Epを車両に出力させるために最低限必要な高仕事率バッテリの個数を取得する。
【0043】
次に、制御部20は、累積使用エネルギーの最大値Emaxを取得する(ステップS120)。すなわち、図4Aにて実線で示すような仕事率を走行予定経路に沿って積分して図4Bにて実線に示すような累積使用エネルギーを取得する。そして、図4Bにて破線で示すように走行予定経路上での累積使用エネルギーの最大値Emaxを取得する。
【0044】
次に、制御部20は、残余エネルギー(Emax−Ep)を取得し(ステップS125)、当該残余エネルギー(Emax−Ep)を車両に出力させることが可能な高エネルギー密度バッテリの個数を取得する(ステップS130)。すなわち、残余エネルギー(Emax−Ep)を車両に出力させるために最低限必要な高エネルギー密度バッテリの個数を取得する。ここで、残余エネルギー(Emax−Ep)は、高仕事率区間以外の区間の走行を完了するために車両にて必要とされるエネルギーであり、図4Bにおいてはエネルギー量Epを一点鎖線、残余エネルギー(Emax−Ep)を二点鎖線で示している。
【0045】
また、高エネルギー密度バッテリは、高仕事率バッテリよりもエネルギー密度が高い。従って、残余エネルギー(Emax−Ep)を賄うためのバッテリとして高仕事率バッテリではなく高エネルギー密度バッテリを選択し、当該高エネルギー密度バッテリの個数を取得すれば、2種類のバッテリについて走行予定経路を走行するために最低限必要な個数を特定することができるとともに、その重量を最低限の重量に設定することができる。
【0046】
そこで、図3に示す処理においては、ステップS135〜S150においてバッテリ情報案内部21dの処理により制御部20がバッテリ情報の案内を行う。具体的には、まず、制御部20が車両ECU43に制御信号を出力し、車両ECU43からの出力信号に基づいて車両に搭載中のバッテリの種類および個数を取得する(ステップS135)。
【0047】
次に制御部20は、上述のステップS115,S130にて取得した高仕事率バッテリの個数および高エネルギー密度バッテリの個数と比較して、現在の車両におけるバッテリの搭載内容を変更する必要があるか否か判別する(ステップS140)。そして、現在の車両におけるバッテリの搭載内容を変更する必要があると判別されたとき、制御部20は、ユーザI/F部44に制御信号を出力し、変更すべきバッテリを通知させる(ステップS145)。また、現在の車両におけるバッテリの搭載内容を変更する必要があると判別されないとき、制御部20は、ユーザI/F部44に制御信号を出力し、変更不要の旨を通知させる(ステップS150)。この結果、利用者は、ユーザI/F部44の案内に応じて適宜バッテリを載せ替え、あるいは維持するように選択し、走行前に走行予定経路を走行するために最低限必要なバッテリが車両に搭載された状態にすることが可能である。
【0048】
本実施形態においては、走行予定経路を走行するために最低限必要なバッテリが車両に搭載された状態となっているときに車両で走行予定経路の走行を開始すると、制御部20がナビゲーションプログラム21の処理により車両ECU43に制御信号を出力し、走行の過程においてバッテリ42を適宜選択する。すなわち、走行予定経路内の高仕事率区間を走行する際には高仕事率バッテリから電力を取得し、他の区間を走行する際には高エネルギー密度バッテリから電力を取得するように制御する。この結果、走行予定経路を走行する際に、最低限必要なバッテリによって車両を走行させることができ、車両の重量ができるだけ軽くなった状態で車両を走行させることができる。このため、走行予定経路を効率よく走行させることが可能である。さらに、過剰なバッテリを搭載せずに車両を走行させ、また、バッテリが不足する状態で車両を走行させることを防止することができる。さらに、走行予定経路を走行するために必要な仕事率を出力可能なバッテリを搭載するため、出力不足が生じることはなくスムーズに車両を走行させることが可能である。
【0049】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、走行予定経路を走行する際の電力の使用状況に基づいて、当該使用状況に応じた電力を出力するために搭載すべきバッテリを特定する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、搭載すべきバッテリとして最低限必要なバッテリを特定する場合、最低限必要なバッテリであるとみなすための条件は上述の実施形態における条件の他、種々の構成を採用可能である。
【0050】
例えば、上述の実施形態においては、高仕事率区間を走行するためのエネルギーの総てを高仕事率バッテリにて賄うことを想定したが、当該高仕事率区間において高エネルギー密度バッテリを併用する構成を採用しても良い。より具体的には、車両ECU43に制御信号を出力して高仕事率バッテリと高エネルギー密度バッテリとのいずれかまたは双方を使用するように制御する構成において、高仕事率区間においては高仕事率バッテリと高エネルギー密度バッテリとの双方を使用することとする。
【0051】
そして、高仕事率区間Zにおいて、所定の基準(例えば、図4Aに示すTh)以上の仕事率を車両に出力させるために高仕事率バッテリおよび高エネルギー密度バッテリを使用する。この構成は図1と同様の構成で実現することが可能であり、図3に示す処理の一部を変更することによって実現可能である。すなわち、図3に示すステップS110に相当する処理にて制御部20は、所定の基準Th以上の仕事率を高仕事率区間内で積分する(すなわち、図4Aにおいて実線で示す仕事率から所定の基準Thを減じた残余を高仕事率区間Z内において積分する)ことによって当該高仕事率区間において高仕事率バッテリが消費するエネルギー量Ep2を取得する。
【0052】
また、図3に示すステップS115の替わりに、高仕事率バッテリの電力を使用してエネルギー量Ep2を車両に出力させるために最低限必要となる高仕事率バッテリの個数を取得する処理を行う。そして、ステップS125,S130に相当する処理では残余エネルギー(Emax−Ep2)を取得し、当該残余エネルギー(Emax−Ep2)を車両に出力させることが可能な高エネルギー密度バッテリの個数を取得する。この結果、走行予定経路を走行するために最低限必要なバッテリが特定される。なお、図4Cは、図4Aに示す例に対し、高仕事率区間において高仕事率バッテリと高エネルギー密度バッテリとの双方を使用する構成を適用した場合のエネルギー量Ep2(一点鎖線)および残余エネルギー(二点鎖線)を示している。以上の構成においても図3に示すステップS135〜S150にてバッテリ情報を案内することにより、利用者は最適なバッテリを選択して車両に搭載することが可能である。従って、走行予定経路を高効率および低コストで走行させることが可能である。
【0053】
さらに、バッテリ情報は走行予定経路を走行するために最低限必要なバッテリを示す情報の他、走行予定経路を走行するために搭載すべきバッテリを示す情報であっても良い。例えば、走行予定経路を走行するための電力を提供するために充分なバッテリの種類や個数の組み合わせが複数個存在し得るときに、少なくともその組み合わせのいずれかを示す案内を行う構成を採用可能である。
【0054】
さらに、走行予定経路を走行するために搭載すべきバッテリ、あるいは最低限必要なバッテリを特定するための指標は、上述のような車両の仕事率と累積使用エネルギーの組み合わせに限定されるわけではない。すなわち、走行予定経路を走行する際の電力の使用状況は、走行時に使用される電力を示す各種の情報であればよく、走行時に使用される電力によって車両に搭載すべきバッテリを特定することができる限りにおいて、種々のパラメータを電力の使用状況とすることが可能である。例えば、車両における仕事率を勘案せず、車両における累積使用エネルギーのみに基づいて搭載すべきバッテリを判定する構成としても良い。この構成は、図1と同様な構成において図5に示す処理を実行することによって実現される。
【0055】
図5に示す処理において、ステップS200,S220〜S230は、図3に示すステップS100,S120〜S130と同様である。また、制御部20は、走行予定経路上の各位置における累積使用エネルギーを取得し(ステップS205)、車両にて当該累積使用エネルギーの最大値を出力させるために必要なエネルギーを蓄積可能なバッテリの個数を取得する(ステップS210)。そして、ステップS220〜S230において、車両に現在搭載中のバッテリの個数を取得し、現在の搭載内容に応じてバッテリの変更を促す通知、あるいは変更不要の旨を通知する処理を行う。この構成によれば、搭載不要のバッテリを搭載したまま走行することを防止することができ、高効率および低コストで車両を走行させることが可能になる。むろん、車両にて必要とされる仕事率を出力させるためにバッテリに要求される出力性能としての仕事率のみを電力の使用状況を示すパラメータとしても良い。
【0056】
さらに、上述の実施形態は電気自動車であったが、むろん、本発明は、バッテリの電力を利用して走行する総ての車両に対して適用可能である。例えば、燃料タンクに蓄積された燃料を動力源としたエンジンとバッテリに蓄積された電力を動力源としたモーターとを備えたハイブリッド車両(プラグインハイブリッド車両を含む)に対して本発明を適用しても良い。
【0057】
当該ハイブリッド車両においては、複数の種類のバッテリを搭載可能に、例えば、図1と同様に高仕事率バッテリと高エネルギー密度バッテリとのそれぞれをN個,M個ずつ搭載可能に構成される。また、電力制御回路によってバッテリの充放電を制御し、車両ECUによって予め決められた規定通りにエンジンおよびモーターの駆動タイミングを制御する。従って、走行予定経路を走行するときに車両ECUが上述の規定に従ってエンジンおよびモーターを駆動するタイミングを推定すれば、当該走行予定経路を走行する際の電力の使用状況を推定することができる。
【0058】
例えば、走行予定経路内でバッテリが使用されるタイミングのみを抽出してそのタイミングにおいてバッテリの電力によって車両に出力される仕事率を特定し、当該仕事率を経路に沿って積分することによってバッテリの電力に起因するエネルギーの累積値(累積使用エネルギー)を特定する。この結果、図3等に示した処理によって走行予定経路を走行するために最低限必要なバッテリを取得することが可能である。従って、ハイブリッド車両においても、走行予定経路を走行するために最低限必要なバッテリを搭載して走行を開始することが可能になり、高効率および低コストで車両を走行させることが可能になる。
【0059】
さらに、バッテリの種類は2種類に限定されず、3種以上のバッテリを複数個搭載可能な車両に本発明を適用しても良い。むろん、同種のバッテリにおいて、重量や容量等のサイズが異なる場合には、最低限必要なバッテリを特定するための指標としてサイズを採用しても良い。また、高仕事率バッテリの個数を先に決定し、その後に高エネルギー密度バッテリの個数を決定する構成に限定されない。例えば、3種類のバッテリ、バッテリA,B,Cを車両に対して搭載可能であり、各バッテリA,B,Cから車両を駆動するためのエネルギーとして取り出すことが可能な最大エネルギー量をそれぞれXA,XB,XCとしたとき、以下の式(1)を満たすか否かを判別すれば、走行予定経路を走行するためのエネルギーを車両に出力させるために充分なバッテリの組み合わせを特定することができる。
A・α+XB・β+XC・γ≧Emax …(1)
なお、ここで、αはバッテリAの個数であり0≦α≦バッテリAの搭載可能上限個数、βはバッテリBの個数であり0≦β≦バッテリBの搭載可能上限個数、γはバッテリCの個数であり0≦γ≦バッテリCの搭載可能上限個数である。また、Emaxは走行予定経路を走行する際の累積使用エネルギーの最大値であり、α,β,γによって車両の重量が変動するため、α,β,γの組み合わせ毎に当該Emaxは異なる値となる。
【0060】
さらに、各バッテリA,B,Cから車両を駆動させる際の仕事率として継続的に出力可能な最大仕事率をそれぞれYA,YB,YCとしたとき、以下の(2)に示す条件を満たすか否かを判別すれば、走行予定経路を走行するための仕事率を出力するために必要なバッテリを特定することができる。
(YA≧Pmax かつ XA・α≧Ep)または
(YB≧Pmax かつ XB・β≧Ep)または
(YC≧Pmax かつ XC・γ≧Ep) …(2)
なお、ここで、Pmaxは走行予定経路を走行する際の各位置における仕事率の中の最大値、Epは高仕事率区間において消費するエネルギー量であり、α,β,γによって車両の重量が変動するため、α,β,γの組み合わせ毎に当該Pmax,Epは異なる値となる。
【0061】
以上の式および条件を利用すれば、走行予定経路を走行するために搭載すべきバッテリを特定することが可能である。すなわち、α,β,γを任意に変化させて、式(1)を満たし、かつ条件(2)を満たす組み合わせを取得すれば、走行予定経路を走行するために搭載すべきバッテリを特定することが可能である。従って、式(1)を満たし、かつ条件(2)を満たす組み合わせを案内すれば、走行予定経路を走行するために搭載すべきバッテリを案内することができる。
【0062】
さらに、各組み合わせの中から有利な組み合わせを特定し、当該有利な組み合わせが走行予定経路を高効率で走行するために最低限必要なバッテリであるとみなす構成としても良い。例えば、バッテリA,B,Cの重量を予め特定しておき、式(1)を満たし、条件(2)を満たす組み合わせの中からバッテリの総重量が最も軽くなる組み合わせをα,β,γに基づいて特定すれば、走行予定経路を走行するために充分なエネルギーおよび仕事率を車両に出力させることが可能な組み合わせから最も軽い組み合わせを特定することができる。バッテリの重量が最も軽い場合には、各組み合わせの中で最も効率的に走行可能であるとともに、過剰なバッテリを最大限排除した組み合わせであるといえる。従って、以上のような構成により、最低限必要なバッテリを特定することが可能である。
【0063】
むろん、以上のような構成は一例であり、他にも種々の構成を採用可能である。例えば、車両の重量によって上述のEmax,Pmaxが変化する度合いを無視できる場合にはEmax,Pmaxが一定であるとみなして上述の式(1)および条件(2)を満たす組み合わせを抽出しても良い。さらに、上述の式(1)および条件(2)以外の条件を加味してバッテリを特定しても良い。例えば、式(1)を満たすα,β,γを特定する際に、エネルギー密度が高いバッテリから優先的にα,β,γを増加させていき、初めて式(1)を満たしたときに同時に条件(2)を満たすか否か判別し、満たすときにそのα,β,γの組み合わせを最低限必要なバッテリを示す組み合わせであるとみなしても良い。さらに、有利なバッテリの種類および個数の組み合わせを特定するためには、上述のようなバッテリの総重量以外の要素を考慮しても良く、例えば、充電コストが最も安くなるようなバッテリの組み合わせを有利な組み合わせとしても良い。さらに、購入コストや利用コストが異なるバッテリを選択可能である状況において、購入コストや利用コストが最も安くなるようなバッテリの組み合わせを有利な組み合わせとしても良い。
【0064】
さらに、走行予定経路は、自車両の現在位置より先の経路を推定して得られた経路を示す情報であっても良く、種々の構成を採用可能である。さらに、バッテリ情報の案内においては、搭載すべきバッテリに関する情報を案内することができれば良く、バッテリを積み込み、または、おろすことを促す案内であっても良いし、バッテリの過剰、または、不足を示す案内であっても良い。むろん、自動で搭載する機器を制御して自動でバッテリの積み込み作業やおろし作業を行うように構成してもよい。
【0065】
さらに、走行予定経路を走行する際の電力の使用状況を取得するための構成は、種々の構成を採用可能であり、例えば、車両にて走行を行う際に仕事率および累積使用エネルギーなどの履歴を取得し、当該履歴通りの仕事率および累積仕事エネルギーを車両に出力させるための電力の使用状況を取得しても良い。また、車両のシャフトや車輪等の動作を測定し、当該シャフト等の回転に基づいてトルクを取得することによって仕事率および累積使用エネルギーを取得し、当該仕事率および累積仕事エネルギーを車両に出力させるための電力の使用状況を取得しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】バッテリ情報提供装置を含むナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】バッテリの種類毎の特性を示す図である。
【図3】バッテリ情報案内処理のフローチャートである。
【図4】(4A)は各位置の仕事率の例を示すグラフ、(4B)および(4C)は各位置の累積使用エネルギーの例を示すグラフである。
【図5】バッテリ情報案内処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
10…ナビゲーション装置、20…制御部、21…ナビゲーションプログラム、21a…走行予定経路取得部、21b…電力使用状況推定部、21c…バッテリ情報取得部、21d…バッテリ情報案内部、30…記憶媒体、30a…地図情報、40…モーター、41…電力制御回路、42…バッテリ、44…ユーザI/F部、45…GPS受信部、46…車速センサ、47…ジャイロセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電力によって駆動される車両の走行予定経路を取得する走行予定経路取得手段と、
前記車両が前記走行予定経路を走行する際の電力の使用状況を推定する電力使用状況推定手段と、
前記使用状況に応じた電力を出力するために搭載すべきバッテリを示すバッテリ情報を取得するバッテリ情報取得手段と、
前記バッテリ情報を案内するバッテリ情報案内手段と、
を備えるバッテリ情報提供装置。
【請求項2】
前記バッテリ情報取得手段は、前記使用状況に応じた電力を出力するために最低限必要なバッテリを示す情報を前記バッテリ情報として取得する、
請求項1に記載のバッテリ情報提供装置。
【請求項3】
前記バッテリ情報取得手段は、前記使用状況に応じた電力を出力するために搭載すべきバッテリの個数と種類とを示す情報を前記バッテリ情報として取得する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載のバッテリ情報提供装置。
【請求項4】
前記電力使用状況推定手段は、前記走行予定経路の各位置で前記車両にて必要とされる仕事率と前記各位置での前記車両の累積使用エネルギーとに対応した前記電力の使用状況を取得する、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のバッテリ情報提供装置。
【請求項5】
前記バッテリ情報取得手段は、前記各位置で前記車両にて必要とされる仕事率に基づいて前記車両にて所定の基準以上の仕事率が必要とされる高仕事率区間を特定し、前記所定の基準以上の仕事率を前記車両に出力させることが可能な高仕事率バッテリを使用して前記高仕事率区間で前記車両にて必要とされる仕事率を出力させるために最低限必要な前記高仕事率バッテリの個数を取得し、前記各位置での前記車両の累積使用エネルギーの最大値から前記高仕事率区間で前記高仕事率バッテリによって前記車両から出力される出力エネルギーを除いた残余エネルギーを前記車両から出力させるために最低限必要な前記高仕事率バッテリよりもエネルギー密度の高い高エネルギー密度バッテリの個数を取得する、
請求項3または請求項4のいずれかに記載のバッテリ情報提供装置。
【請求項6】
バッテリの電力によって駆動される車両の走行予定経路を取得する走行予定経路取得工程と、
前記車両が前記走行予定経路を走行する際の電力の使用状況を推定する電力使用状況推定工程と、
前記使用状況に応じた電力を出力するために搭載すべきバッテリを示すバッテリ情報を取得するバッテリ情報取得工程と、
前記バッテリ情報を案内するバッテリ情報案内工程と、
を含むバッテリ情報提供方法。
【請求項7】
バッテリの電力によって駆動される車両の走行予定経路を取得する走行予定経路取得機能と、
前記車両が前記走行予定経路を走行する際の電力の使用状況を推定する電力使用状況推定機能と、
前記使用状況に応じた電力を出力するために搭載すべきバッテリを示すバッテリ情報を取得するバッテリ情報取得機能と、
前記バッテリ情報を案内するバッテリ情報案内機能と、
をコンピュータに実現させるバッテリ情報提供プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−71736(P2010−71736A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237805(P2008−237805)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】