説明

パターン形成方法及びパターン形成装置

【課題】基板を加熱しながら基板上に形成されるパターンを目的の位置に精度良く形成す
ることが可能となるパターン形成方法及パターン形成装置を提供する。
【解決手段】ベース部材に対してマザーシートの膨張方向(X矢印方向)に沿ってスライ
ド移動可能となるキャリッジCA1〜CA15を設けた。また、互いに隣接するキャリッ
ジCA1〜CA15をマザーシートの膨張方向(X矢印方向)に沿って伸長する連結部材
Lを介して連結した。そして、マザーシートの膨張度合いに基づいて、キャリッジCA1
〜CA15間の距離を、マザーシートの膨張方向(X矢印方向)に沿って補正するように
した。従って、各ノズルの配置ピッチがキャリッジCA1〜CA15毎に補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法及びパターン形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、機能性パターンを形成するために、機能性材料をアセトンなどの溶媒に溶解また
は分散させて液状体に加工し、更に微小な液滴(インク)にして基板上に配置してパター
ニングをする、所謂液滴吐出法(インクジェット法)が知られている(例えば、特許文献
1参照)。
【0003】
この種の液滴吐出法(インクジェット法)においては、基板を加熱しながら液滴(イン
ク)を順次吐出することによって、前記基板上に配置された液滴(インク)の乾燥速度を
速めることで、パターニング速度を向上させる技術が提案されている。
【特許文献1】特開2004−306372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特に、溶媒として公知の水系溶媒を使用した場合では、前記溶媒を確実
に蒸発させるために基板温度を46℃程度に加熱させる必要がある。この結果、基板の構
成材料にもよるが、加熱中においては通常は基板が熱膨張をしてしまう。例えば、基板と
してグリーンシートを使用した場合、26℃(常温)から46℃に加熱すると、80μm
程度延びてしまう。
【0005】
この結果、基板を加熱しながらパターンを形成する場合では、膨張した基板上に液滴が
配置されてしまうため、所望の位置にパターンが形成されなくなってしまうという問題が
あった。例えば、予めビアホール等が形成されたグリーンシートに対してパターンをその
ビアホールに接続されるように形成する場合では、グリーンシートの熱膨張によって液滴
の配置位置が大きくずれてしまう。このため、形成されたパターンがビアホールに接続さ
れなくなってしまい、所望の特性の基板が作製されなくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、基板を加熱しながら基板
上にパターンを目的の位置に精度良く形成することが可能となるパターン形成方法及パタ
ーン形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパターン形成方法は、複数のノズルが一方向に沿って配列形成された吐出ヘッ
ドを、基板に対して前記一方向とは異なる方向に相対移動させて、データに基づいて前記
複数のノズルの各々から機能材料を含む機能液の液滴を吐出し、前記基板上にパターンを
形成するパターン形成方法において、前記基板を加熱する加熱工程と、前記複数のノズル
を複数の組に区分し、その区分された組に属する複数のノズルと、他の組に属する複数の
ノズルとの間の距離を、前記基板の前記一方向に対する変形度合いに応じて補正する補正
工程とを備えた。
【0008】
これによれば、加熱による基板の変形に伴って、ノズルの配列方向(一方向)に沿った
長さが変形するが、本発明では、複数のノズルが複数の組に区分され、その各組の間の配
列方向(一方向)に沿った長さが基板の変形度合いに応じて補正される。従って、各ノズ
ルがデータによって指定された所望の位置に対応することから、液滴を所望の位置に着弾
させることが可能となる。この結果、パターンを目的の位置に精度良く形成することが可
能となる。また、基板は加熱されるため、基板上に着弾した液滴は直ちに乾燥される。従
って、短時間でパターンが形成される。
【0009】
このパターン形成方法において、前記補正工程は、前記区分された組に属する前記複数
のノズルと、他の組に属する前記複数のノズルとの間を、前記変形度合いに基づいた温度
に加熱してもよい。
【0010】
これによれば、隣接した組の間隙は加熱されることで膨張して、その間隙の距離が変化
する。このとき、各ノズルがデータによって指定された所望の位置に対応するような温度
で加熱することで、ノズルのピッチが各組の間隙で補正される。
【0011】
また、各組の間隙毎に、その加熱温度を独立して制御することによって、各組の間隙の
距離を、組毎に独立して補正することができる。
このパターン形成方法において、一つの前記組に属する前記複数のノズルを、一つの前
記吐出ヘッドに設けるようにしてもよい。
【0012】
これによれば、隣接する各吐出ヘッドの間隙の距離が変化することによって、ノズルの
ピッチが各組の間隙で補正される。
このパターン形成方法において、前記区分された組に属する前記複数のノズルと、他の
組に属する前記複数のノズルとの間の加熱を、ペルチェ素子によって加熱するようにして
もよい。
【0013】
これによれば、隣接する各吐出ヘッドの間隙の距離が短時間で制御される。
このパターン形成方法において、一つの前記組に属する前記複数のノズルを一つの前記
吐出ヘッドに設け、前記補正工程は、前記基板の変形度合いに応じて、前記複数のノズル
の配列方向とその各ノズルを備えたキャリッジの前記基板に対する相対移動方向とのなす
角を補正するようにしてもよい。
【0014】
これによれば、吐出ヘッドに設けられたノズルの配列方向と、キャリッジの基板に対す
る相対移動方向とのなす角を変えると、隣接する各吐出ヘッドの間隙の距離が変化する。
このとき、基板の変形度合いに応じてなす角を調整することによって、各ノズルがデータ
によって指定された所望の位置に対応される。
【0015】
このパターン形成方法において、前記基板上に予め配置形成したマークを、前記基板を
加熱する前と加熱した後とで比較して、その加熱によるずれ度合いを算出し、その算出さ
れた前記ずれ度合いに基づいて前記基板の変形度合いを算出するようにしてもよい。
【0016】
これによれば、基板の変形度合いが正確に検出される。従って、所望の特性を有したパ
ターンを正確に形成することができる。
このパターン形成方法において、前記基板は、多孔質性基板であってセラミックス粒子
と樹脂とから構成される低温焼成用シートであり、前記機能液は、前記機能材料として金
属材料を分散させた液状体であってもよい。
【0017】
これによれば、基板上に形成される配線パターンを短時間でかつ目的の位置に精度良く
形成することが可能となる。
このパターン形成方法において、前記基板は、回路素子が実装されるとともにその実装
された前記回路素子に対して電気的に接続された配線が形成される回路基板であってもよ
い。
【0018】
これによれば、所望の特性を有した回路基板を短時間で形成することができる。
このパターン形成方法において、前記データは、ビットマップデータであってもよい。
これによれば、所望の形状のパターンを容易に形成することができる。
【0019】
本発明のパターン形成装置は、一方向に沿って配列した複数のノズルが形成された吐出
ヘッドを、基板に対して前記一方向とは異なる方向に相対移動させ、データに基づいて前
記複数のノズルの各々から機能材料を含む機能液の液滴を吐出して、前記基板上にパター
ンを形成するパターン形成装置において、前記基板の表面温度を、前記液滴の吐出時の前
記機能液の温度以上かつ前記機能液を構成する組成物の沸点以下の温度範囲内に加熱する
基板加熱手段と、前記加熱後の前記基板の変形度合いを算出する算出手段と、前記複数の
ノズルを複数の組に区分し、その区分された組に属する複数のノズルと、他の組に属する
複数のノズルとの間の距離を、前記基板の前記一方向に対する変形度合いに応じて補正す
る補正手段とを備えている。
【0020】
これによれば、加熱による基板の変形に伴って、ノズルの配列方向(一方向)に沿った
長さが変形するが、本発明では、複数のノズルが複数の組に区分され、その各組の間の配
列方向(一方向)に沿った長さが基板の変形度合いに応じて補正される。従って、各ノズ
ルがデータによって指定された所望の位置に対応することから、液滴を所望の位置に着弾
させることが可能となる。この結果、パターンを目的の位置に精度良く形成することが可
能となる。また、基板は加熱されるため、基板上に着弾した液滴は直ちに乾燥される。従
って、短時間でパターンが形成される。
【0021】
このパターン形成装置において、前記区分された組に属する前記複数のノズルと、他の
組に属する前記複数のノズルとの間に設けられ、その前記各組の間を前記変形度合いに応
じた温度に加熱する加熱手段を備えてもよい。
【0022】
これによれば、隣接した組の間隙は加熱されることで膨張して、その間隙の距離が変化
する。このとき、各ノズルがデータによって指定された所望の位置に対応するような温度
で加熱することで、ノズルのピッチが各組の間隙で補正される。
【0023】
また、各組の間隙毎に、その加熱温度を独立して制御することによって、各組の間隙の
距離を、組毎に独立して補正することができる。
このパターン形成装置において、前記吐出ヘッドは、複数設けられ、前記一つの前記組
に属する前記複数のノズルは、一つの前記吐出ヘッドに備えられていてもよい。
【0024】
これによれば、隣接する各吐出ヘッドの間隙の距離が変化することによって、ノズルの
ピッチが各組の間隙で補正される。
このパターン形成装置において、前記加熱手段は、ペルチェ素子であってもよい。
【0025】
これによれば、隣接する各吐出ヘッドの間隙の距離が短時間で制御される。
このパターン形成装置において、一つの前記吐出ヘッドは、一つの前記組に属する複数
の前記ノズルを備え、前記補正手段は、前記吐出ヘッドに設けられた前記複数のノズルの
配列方向と前記ノズルを備えたキャリッジの前記基板に対する相対移動方向とのなす角を
前記変形度合いに応じて調整してもよい。
【0026】
これによれば、隣接する各吐出ヘッド間の間隙の距離が変化する。従って、ノズルのピ
ッチが各組の間隙で補正される。
このパターン形成装置において、前記算出手段は、前記基板上に予め配置形成したマー
クを、前記基板を前記温度範囲内の温度に加熱する前と、前記基板を前記温度範囲内の温
度に加熱した後とで比較して、その加熱によるずれ度合いを算出し、その算出された前記
ずれ度合いに基づいて前記基板の変形度合いを算出してもよい。
【0027】
これによれば、基板の変形度合いが正確に検出される。従って、所望の特性を有したパ
ターンを正確に形成することができる。
このパターン形成装置において、前記基板は、多孔質性基板であってセラミックス粒子
と樹脂とから構成される低温焼成用シートであり、前記機能液は、前記機能材料として金
属材料を分散させた液状体であってもよい。
【0028】
これによれば、基板上に形成される配線パターンを短時間でかつ目的の位置に精度良く
形成することが可能となる。
このいずれか一つに記載のパターン形成装置において、前記機能液は、前記基板上に実
装される回路素子に対して電気的に接続された配線を構成する金属材料が分散された液状
体であってもよい。
【0029】
これによれば、所望の特性を有した回路基板を短時間で形成することができる。
このパターン形成装置において、前記データはビットマップデータであってもよい。
これによれば、所望の形状のパターンを容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を具体化したパターン形成方法及びパターン形成装置の一実施形態を図面
に従って説明する。
まず、本発明のパターン形成方法及びパターン形成装置を用いて形成された回路モジュ
ール1について説明する。
【0031】
図1において、回路モジュール1には、板状に形成されたLTCC多層基板2と、その
LTCC多層基板2の上側にワイヤーボンディング接続された半導体チップ3とが備えら
れている。
【0032】
LTCC多層基板2は、シート状に形成された複数の回路基板としてのLTCC基板4
の積層体である。各LTCC基板4は、それぞれガラスセラミックス系材料(例えば、ホ
ウケイ酸アルカリ酸化物などのガラス成分とアルミナなどのセラミックス成分の焼結体)
(多孔質性基板)であって、その厚みが数百μmである。
【0033】
各LTCC基板4には、抵抗素子、容量素子、コイル素子などの各種回路素子5と、各
回路素子5を電気的に接続する内部配線6と、スタックビア構造、サーマルビア構造を呈
する所定の孔径(例えば、直径30μm)を有した複数のビアホール7と、該ビアホール
7に充填されたビア配線8と、が形成されている。
【0034】
各内部配線6は、それぞれ機能材料及び金属材料としての銀(Ag)の微粒子が焼結し
た焼結体であって、その配線パターンはパターン形成装置としての液滴吐出装置(インク
ジェット装置)を使用して形成される。
【0035】
次に、その液滴吐出装置20について図2〜図8に従って説明する。図2は、液滴吐出
装置20を説明する全体斜視図である。図3、図4及び図5は、それぞれ、液滴吐出ヘッ
ド30の構成を説明するための図である。
【0036】
図2において、液滴吐出装置20は、直方体形状に形成された基台21を有している。
基台21の上面には、その長手方向(Y矢印方向)に沿って延びる一対の案内溝22が形
成されている。案内溝22の上方には該案内溝22に沿ってY矢印方向及び反Y矢印方向
に移動するステージ23が設けられている。ステージ23の上面には載置部24が設けら
れ、マザーシート4Mが載置されるようになっている。
【0037】
マザーシート4Mは、焼成前のLTCC基板4(以下、グリーンシート4G(図7参照
)という)を複数枚切出し可能とした1枚の大判の基板である。本実施形態では、説明を
簡単にするために、図7に示すように、1枚のマザーシート4M上に10×10個のLT
CC基板4をマトリクス状に形成する場合について説明する。
【0038】
つまり、図7に示すように、1枚のマザーシート4Mには、LTCC基板4を形成する
領域(以下、「描画領域」という)Zがマトリクス状に区画形成されるとともに、各描画
領域Z以外にはLTCC基板4を形成しない領域(以下、「非描画領域」という)Qが形
成されている。各描画領域Zは四角形状を成している。非描画領域Qは、各描画領域Zの
間隙に配置されることから、全体として格子形状を成している。以下、説明の便宜上、マ
ザーシート4Mの縦方向をY矢印方向とし、マザーシート4Mの横方向をX矢印方向と定
義する。尚、本実施形態のマザーシート4Mは、加熱されると横方向(X矢印方向)にの
み膨張し、縦方向(Y矢印方向)には膨張しないものとする。
【0039】
図2において、載置部24は、載置された状態のマザーシート4Mをステージ23に対
して位置決め固定して、マザーシート4MをY矢印方向及び反Y矢印方向に搬送する。ス
テージ23の上面には、基板加熱手段としてのラバーヒータUaが埋設されている。載置
部24に載置されたマザーシート4Mは、ラバーヒータUaによって加熱される。
【0040】
また、基台21には、その搬送方向(Y矢印方向)と直交する方向(X矢印方向)に跨
ぐ門型のガイド部材25が架設されている。ガイド部材25の上側には、インクタンク2
6が配設されている。インクタンク26は、機能液としての金属インクFを貯留して、貯
留する金属インクFを液滴吐出ヘッド30(図3参照)に所定の圧力で供給する。
【0041】
金属インクFは、例えば、粒径が数nmの銀(Ag)の微粒子を水系溶媒に分散させた
水系金属インクである。金属インクFの液滴Fbは、加熱されると溶媒或いは分散媒の一
部が蒸発してその表面外形部分が増粘する。
【0042】
また、ガイド部材25には、そのX矢印方向略全幅に渡って、X矢印方向に延びる上下
一対のガイドレール28が形成されている。上下一対のガイドレール28には、ベース部
材29が取り付けられている。ベース部材29は、ガイドレール28に案内されてX矢印
方向及び反X矢印方向に移動する。
【0043】
ベース部材29の底面、即ち、ステージ23の上面に相対向した面には、15個のキャ
リッジCA1〜CA15が階段状に並設されている。図3及び図4は、それぞれベース部
材29に設けられたキャリッジCA1〜CA15をマザーシート4M側(下側)から見た
図である。
【0044】
図3に示すように、各キャリッジCA1〜CA15は、それぞれ、プレート形状を成し
、その略中央部に液滴吐出ヘッド(以下、単に「吐出ヘッド」という)30を固定支持し
ている。また、各キャリッジCA1〜CA15は、ベース部材29に対してX矢印方向及
び反X矢印方向に沿ってスライド移動可能となるように連結支持されている。
【0045】
両端に位置する第1キャリッジCA1及び第15キャリッジCA15を除いたキャリッ
ジCA2〜CA14は、それぞれ、Y矢印方向に向かって延出した第1延出部W1と反Y
矢印方向に向かって延出した第2延出部W2を備えている。各延出部W1,W2には、ス
ライド機構SLa,SLbが取り付けられ、隣接する他のキャリッジの吐出ヘッド30が
固定された前記略中央部分に対してX矢印方向及び反X矢印方向に沿ってスライド移動可
能する。そして、各キャリッジCA2〜CA14は、隣接する他のキャリッジCA2〜C
A14とスライド機構SLa,SLbを介して連結している。尚、第1キャリッジCA1
は、Y矢印方向に延出した第1延出部W1のみが備えられ、また、第15キャリッジCA
15は、反Y矢印方向に延出した第2延出部W2のみが備えられている。
【0046】
一対のスライド機構SLa,SLbの間には、隣接する他のキャリッジCA1〜CA1
5の各延出部W1,W2と連結した連結部材Lが取り付けられている。連結部材Lには、
ヒータUbが取り付けられている。この連結部材Lは、加熱されるとX矢印方向にのみ伸
長する公知の金属材料で構成されており、その加熱温度に応じてX矢印方向に沿って所定
の長さだけ伸長する。尚、ヒータUbは、本実施形態においては、公知のヒートテープで
あって、連結部材Lの外周囲に巻回されている。
【0047】
従って、各ヒータUbによって連結部材Lが加熱されると、加熱された連結部材LはX
矢印方向に沿って伸長する。すると、この連結部材Lの伸長に伴って各スライド機構SL
a,SLbがX矢印方向に沿ってスライドすることによってキャリッジCA1〜CA15
は互いに離間する。つまり、隣接する各吐出ヘッド30の間の距離が大きくなる。
【0048】
図4において、各吐出ヘッド30は、第1の吐出ヘッド部Haと、該第1の吐出ヘッド
部Haに対してY矢印方向に併設された第2の吐出ヘッド部Hbとを備えている。各吐出
ヘッド部Ha,Hbのノズルプレート31には、一対のノズル列NLが形成されている。
各ノズル列NLには、X矢印方向に沿って複数のノズルNが等ピッチで配列されている。
本実施形態では、各ノズル列NLに200個のノズルNが40μmのピッチで配列されて
いる。
【0049】
また、各吐出ヘッド部Ha,Hbにおいては、一方のノズル列NLの各ノズルNが他方
のノズル列NLの各ノズルNに対してX矢印方向に沿って半ピッチずれて配列されている
。従って、各吐出ヘッド部Ha,Hbにおいては、一方のノズル列NLの各ノズルNの中
間位置に他方のノズル列NLの各ノズルNが位置することとなる。つまり、一方のノズル
列NLの各ノズルNが他方のノズル列NLの各ノズルNの間を補間している。尚、本実施
形態においては、各ノズル列NLでは各ノズルNが40μmのピッチで配列されているこ
とから、各吐出ヘッド部Ha,Hbでは、ノズルNがX矢印方向に沿って20μmのピッ
チで配列されることとなる。従って、各吐出ヘッド部Ha,Hbでは、X矢印方向に沿っ
て2×200=400個のノズルNが20μmの等ピッチで配列されている。
【0050】
また、第1の吐出ヘッド部Haの各ノズル列NLは、第2の吐出ヘッド部Hbの各ノズ
ル列NLとX矢印方向に沿って半ピッチずれて配列されている。従って、第1の吐出ヘッ
ド部Haに配置形成される各ノズルNの中間位置に第2の吐出ヘッド部Hbに配置形成さ
れるノズルNが位置することとなる。つまり、第1の吐出ヘッド部Haの各ノズル列NL
の各ノズルNが第2の吐出ヘッド部Hbのノズル列NLの各ノズルNの間を補間している
。従って、各吐出ヘッド部Ha,HbのノズルNは20μmのピッチで配列されているこ
とから、一つの吐出ヘッド30においては、ノズルNがX矢印方向に沿って10μmのピ
ッチで配列されることとなる。そして、各吐出ヘッド30では、X矢印方向に沿って2×
400=800個のノズルNが10μmの等ピッチで配列されている。
【0051】
尚、前記したように、ベース部材29には、15個のキャリッジCA1〜CA15が併
設されていることから、全体として、15×800=1.2×10個のノズルNがX矢
印方向に沿って配列されている。
【0052】
つまり、X矢印方向に沿って配列された1.2×10個のノズルNは、800個毎の
一組のノズル群に区分され、その各区分された一組のノズル群がX矢印方向に沿って15
組配置されている。
【0053】
図5は、吐出ヘッド30の第1の吐出ヘッド部Haの内部構成を説明するための要部断
面図である。尚、第2の吐出ヘッド部Hbについては、第1の吐出ヘッド部Haと同じ構
成であることから、その詳細な説明を省略する。
【0054】
図5において、各吐出ヘッド部Haは、その上側に供給チューブ30Tが連結されてい
る。供給チューブ30Tは、Z矢印方向に延びるように配設されて、ベース部材29の内
部を通ってインクタンク26からの金属インクFを吐出ヘッド30に供給する。
【0055】
ノズルNの上側には、供給チューブ30Tに連通するキャビティ32が形成されている
。キャビティ32は、供給チューブ30Tからの金属インクFを収容して、対応するノズ
ルNに金属インクFを供給する。キャビティ32の上側には、上下方向に振動してキャビ
ティ32内の容積を拡大及び縮小する振動板33が貼り付けられている。振動板33の上
側には、ノズルNに対応する圧電素子PZが配設されている。圧電素子PZは、上下方向
に収縮及び伸張して振動板33を上下方向に振動させる。上下方向に振動する振動板33
は、金属インクFを所定のサイズの液滴Fbに形成し、対応するノズルNから吐出させる
。吐出された液滴Fbは、対応するノズルNの反Z矢印方向に飛行して、マザーシート4
Mの描画平面(パターン形成面4Ma)上に配置形成された前記各描画領域Z内に着弾す
る。
【0056】
そして、各描画領域Z内に着弾した液滴Fb(金属インクF)は、前述したように、ラ
バーヒータUaによって加熱されたマザーシート4Mの描画平面(パターン形成面4Ma
)上に着弾することによって、溶媒或いは分散媒の一部が蒸発する。そして、その表面の
外形が増粘し、マザーシート4Mの面方向に沿う自身の濡れ広がりが停止して局在する。
そして、各描画領域Z内に着弾して局在した液滴Fb(金属インクF)は、複数連なって
繋がるようにして配置されることで、例えば、図6に示すような、3本のライン状の内部
配線6の配線パターンを形成する。
【0057】
また、図2に示すように、ベース部材29の底面、即ち、ステージ23の上面に相対向
した面には、カメラKが固定支持されている。カメラKは、載置部24に載置されたマザ
ーシート4Mのパターン形成面4Maを撮影可能となるように設けられている。詳述する
と、図7に示すように、焼成前のマザーシート4Mには、その左上隅にある非描画領域Q
内にマークMが形成されている。このマークMは、常温(26℃)時の焼成前のマザーシ
ート4Mに対して密着して形成されたものである。カメラKは、そのマークMの様子を撮
影し、その撮影されたマークMの画像データを後記する制御装置50に出力する。
【0058】
次に、前記液滴吐出装置20の電気的構成について図8に従って説明する。
図8に示すように、液滴吐出装置20は、制御装置50を備えている。制御装置50に
は、各種操作スイッチとディスプレイを有した入出力装置51が接続されている。入出力
装置51は、液滴吐出装置20が実行する各種処理の処理状況を表示したり、内部配線6
を形成するためのデータとしてのビットマップデータBDを制御装置50に入力したりす
る。
【0059】
ビットマップデータBDは、各ビットの値(「0」(Lレベル)或いは「1」(Hレベ
ル))に応じた各圧電素子PZのオン或いはオフを規定したデータである。詳しくは、本
実施形態のマザーシート4Mのパターン形成面4Maは、Y矢印方向に沿って1.2×1
、X矢印方向に沿って1.2×10にそれぞれ等分されることで、(1.2×10
)×(1.2×10)個の微小な四角形状の区画領域R(図6参照)に予め仮想的に
規定されている。そして、ビットマップデータBDは、吐出ヘッド30(各ノズルN)が
通過するマザーシート4M上の対応する各領域Rにそれぞれ液滴Fbを吐出するか否かを
規定したデータである。
【0060】
つまり、前記ベース部材29には、前記したように、15個の吐出ヘッド30が設けら
れており、全体として15×800=1.2×10個のノズルNがX矢印方向に沿って
配置されている。ビットマップデータBDは、マザーシート4Mが常温(26℃)である
とき、各ノズルNが、その各領域Rに対向した位置に至るタイミングで各圧電素子PZの
オン或いはオフさせるためのデータであり、(1.2×10)×(1.2×10)の
データ数を有している。
【0061】
制御装置50は、算出手段及び補正手段としてのCPU50A、ROM50B及びRA
M50Cを備えている。ROM50Bには、各種駆動制御プログラム及びヒータ制御プロ
グラムが格納されている。
【0062】
駆動制御プログラムは、ステージ23やベース部材29の往復動処理、カメラKの駆動
制御処理及び圧電素子PZの駆動制御処理等を実行させるためのプログラムを含んでいる
。また、駆動制御プログラムは、ラバーヒータUaの加熱制御処理を実行させるための加
熱制御プログラムを含んでいる。この加熱制御プログラムは、マザーシート4Mの温度を
、吐出ヘッド30から吐出される時の金属インクFの温度以上であって、かつ金属インク
Fに含まれる機能性材料の沸点未満(液体組成中の最も沸点の低い温度未満)の温度範囲
の温度(設定温度)となるようにラバーヒータUaを加熱制御するためのプログラムであ
る。本実施形態では、例えばマザーシート4Mの温度を46℃に制御するためのプログラ
ムである。
【0063】
ヒータ制御プログラムは、マザーシート4Mの膨張度合いに基づいて、各キャリッジC
A1〜CA15間に設けられた14個のヒータUbの加熱温度をそれぞれ独立して制御す
るためのプログラムである。詳しくは、ヒータ制御プログラムは、X矢印方向(横方向)
に沿って膨張(伸長)した分を考慮してノズルNの間隔をキャリッジCA1〜CA15毎
にビットマップデータBDによって指定された領域Rに対向した位置に至るようにX矢印
方向(横方向)にスライド移動させるためのプログラムである。つまり、ヒータ制御プロ
グラムは、マザーシート4Mの変形度合い(伸長度合い)に応じて各キャリッジCA1〜
CA15をスライドさせるスライド量を与える制御信号HSoを生成する。
【0064】
CPU50Aは、ROM50Bに格納された各種プログラムに従ってステージ23やベ
ース部材29の往復動処理、ラバーヒータUaの加熱制御処理、ヒータUbの加熱制御処
理、カメラKの駆動制御処理及び圧電素子PZの駆動制御処理等を実行する。
【0065】
また、CPU50Aは、加熱制御プログラムに従ってマザーシート4Mが設定温度(4
6℃)になった後の、マザーシート4Mに印刷されたマークMの画像データを入力する。
そして、CPU50Aは、その画像データに基づいて、マークMの変形度合いを算出し、
マザーシート4Mの横方向(X矢印方向)に沿った各領域Rの配列ピッチが常温(26℃
)時に比べてどのくらいの偏倚が生じたかを認識する。そして、CPU50Aは、ヒータ
制御プログラムに従って制御信号HSoを生成する。
【0066】
また、制御装置50には、X軸モータ駆動回路52が接続されている。制御装置50は
、駆動制御信号をX軸モータ駆動回路52に出力する。X軸モータ駆動回路52は、制御
装置50からの駆動制御信号に応答して、ベース部材29を移動させるためのX軸モータ
MXを正転又は逆転させる。
【0067】
さらに、制御装置50には、Y軸モータ駆動回路53が接続されている。制御装置50
は、駆動制御信号をY軸モータ駆動回路53に出力する。Y軸モータ駆動回路53は、制
御装置50からの駆動制御信号に応答して、ステージ23を移動させるためのY軸モータ
MYを正転又は逆転させる。
【0068】
さらにまた、制御装置50には、ヘッド駆動回路54が接続されている。制御装置50
は、所定の吐出周波数に同期させた吐出タイミング信号LTをヘッド駆動回路54に出力
する。制御装置50は、各圧電素子PZを駆動させるための駆動信号COMを吐出周波数
に同期させてヘッド駆動回路54に出力する。制御装置50は、ビットマップデータBD
を利用して所定の周波数に同期した吐出制御信号SIを生成し、吐出制御信号SIをヘッ
ド駆動回路54にシリアル転送する。ヘッド駆動回路54は、制御装置50からの吐出制
御信号SIを各圧電素子PZに対応させて順次シリアル/パラレル変換する。また、ヘッ
ド駆動回路54は、制御装置50からの吐出タイミング信号LTを受けるたびに、シリア
ル/パラレル変換した吐出制御信号SIをラッチし、吐出制御信号SIによって選択され
る圧電素子PZにそれぞれ駆動信号COMを供給する。
【0069】
制御装置50は、ヒータ駆動回路57が接続されている。ヒータ駆動回路57は、制御
装置50から前記制御信号HSoを入力する。すると、ヒータ駆動回路57は、各ヒータ
Ubに対してそれぞれ制御信号HSoに応じた電力を供給して各ヒータUbをそれぞれ加
熱制御する。尚、ヒータ駆動回路57は、各ヒータUbに対してそれぞれ独立して制御信
号HSoに応じた電力を供給することが可能となっている。
【0070】
制御装置50には、カメラ駆動回路56が接続されている。制御装置50は、カメラ駆
動回路56に駆動制御信号を出力する。詳しくは、制御装置50は、載置部24上に載置
されたマザーシート4Mが設定温度(46℃)に達した後にマークMを撮影する旨の駆動
信号を出力する。さらに、制御装置50は、カメラKが接続されている。制御装置50は
カメラKが撮影した設定温度(46℃)時のマークMの画像データが入力される。
【0071】
次に、前記液滴吐出装置20を使用してマザーシート4Mに内部配線6を形成する方法
について図2、図9及び図10に従って説明する。
まず、図2に示すように、パターン形成面4Maが上側(Z矢印方向側)を向くように
マザーシート4Mをステージ23に載置する。このとき、ステージ23は、マザーシート
4Mをベース部材29よりも反Y矢印方向側に配置する。尚、このマザーシート4Mは、
焼成前のものであって、予めビアホール7及びビア配線8が形成されている。
【0072】
この状態から、ビットマップデータBDを入出力装置51から制御装置50に入力する
。つまり、このときに入力されるビットマップデータBDは、マザーシート4Mが常温時
(26℃時)であると想定した場合における液滴Fbの吐出を規定するデータである。そ
して、入力されたビットマップデータBDはRAM50Cに格納される。
【0073】
その後、制御装置50は、ラバーヒータ駆動回路55を介してステージ23に設けたラ
バーヒータUaを加熱制御プログラムに従って駆動して、マザーシート4Mの表面温度を
設定温度(46℃)になるように加熱する(加熱工程)。すると、マザーシート4MはX
矢印方向(横方向)に沿って膨張し始める。その後、暫くして、ラバーヒータUaの加熱
によってマザーシート4Mが設定温度(46℃)になると、マザーシート4Mは、常温(
26℃)におけるグリーンシート4Gに比べてX矢印方向(横方向)に所定量だけ変形(
膨張)した状態となる。
【0074】
この状態で、制御装置50は、カメラ駆動回路56を介してカメラKを駆動させてマザ
ーシート4Mの左上隅に配置形成された前記マークMの様子を撮影する。この結果、制御
装置50には、設定温度(46℃)に加熱された後のマークMの画像データが入力される

【0075】
次に、制御装置50のCPU50Aは、撮影したマークMの画像データに従って変形度
合い(マザーシート4Mの横方向に対する膨張度合い)を算出する。そして、その算出さ
れた変形度合いに基づいて制御信号HSoが生成され、ヒータUbがその制御信号HSo
に対応した温度に加熱される。すると、各キャリッジCA1〜CA15に設けられた連結
部材Lが加熱され、各吐出ヘッド30のノズルNがビットマップデータBDによって指定
された領域Rに対向した位置に至るように、各キャリッジCA1〜CA15がX矢印方向
(横方向)にスライド移動する(補正工程)。
【0076】
図9は、設定温度(46℃)に加熱されたマザーシート4MのマークMの様子である。
図9に示すように、設定温度(46℃)に加熱された後のマークMは、常温(26℃)の
ときのマークMに比べてX矢印方向に沿って膨張している。本実施形態では、各区画領域
RはX矢印方向に沿って0.1μmだけ膨張している。ここで、このマザーシート4Mは
、その左端(反X矢印方向側)を基点としてX矢印方向に膨張(伸長)したものとする。
すると、CPU50Aは、例えば、マザーシート4Mの左端から数えて800番目の領域
Rと801番目の領域Rとの間の距離は、800×0.1μm=80μmだけX矢印方向
に向かって伸長したと認識する。すると、CPU50Aは、マザーシート4Mの左端から
数えて800番目の領域Rに対応するノズルNを備える第1キャリッジCA1と、801
番目の領域Rに対応するノズルNを備える第2キャリッジCA2との間の距離を、常温(
26℃)時におけるノズルピッチである10μmから80μmに離間させるための制御信
号HSoを作成する。そして、その制御信号HSoをヒータ駆動回路57へ出力する。
【0077】
すると、第1キャリッジCA1と第2キャリッジCA2との間に設けられたヒータUb
が前記制御信号HSoに従って加熱され、図10に示すように、第1キャリッジCA1と
第2キャリッジCA2とが相対的にスライド移動してその間の距離が80μmとなる。つ
まり、第1キャリッジCA1の吐出ヘッド30に形成された800個のノズルNのうちの
左端から数えて800番目のノズルNと、第2キャリッジCA2の吐出ヘッド30に形成
された800個のノズルNのうちの最も第1キャリッジCA1側に位置する1番目のノズ
ルNとの間の距離が80μmとなる。
【0078】
同様にして、CPU50Aは、各キャリッジCA2〜CA15とその隣接したキャリッ
ジCA3〜CA15との間にある連結部材Lを制御信号HSoに応じて加熱することによ
って、各キャリッジCA2〜CA15とその隣接したキャリッジCA3〜CA15との間
の距離を補正する。本実施形態では、第1キャリッジCA1と第2キャリッジCA2と間
の距離を同じ距離だけ各キャリッジCA2〜CA15とその隣接したキャリッジCA3〜
CA15との間の距離を補正する。つまり、互いに隣接した各キャリッジCA2〜CA1
5に配置されたノズルNの間の距離が80μmとなる。
【0079】
続いて、この状態で、制御装置50は、Y軸モータ駆動回路53を介してY軸モータM
Yを駆動してステージ23をY矢印方向に沿って移動させる。そして、制御装置50は、
ビットマップデータBDに基づいて吐出制御信号SIを生成し、駆動信号COMをヘッド
駆動回路54に出力する。そして、補正されたビットマップデータBDによって指定され
た位置にベース部材29が移動される。即ち、制御装置50は、ビットマップデータBD
に基づいて内部配線6が形成される区画領域RにノズルNが対向するたびに、選択された
ノズルNから液滴Fbを吐出させる。
【0080】
このとき、マザーシート4Mは加熱されていることからマザーシート4M上に着弾した
液滴Fbは加熱される。その結果、液滴Fb中の溶媒成分が蒸発して直ちに金属粒子が凝
集して内部配線6の配線パターンが形成される。
【0081】
以降、ステージ23をY矢印方向に搬送させ、各ノズルNからの液滴Fbをビットマッ
プデータBDに基づいて吐出させる動作を繰り返す。これによって、マザーシート4M上
には、着弾した液滴Fbによる内部配線6の配線パターンが形成の配線パターンが形成さ
れる。
【0082】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態によれば、ベース部材29に、マザーシート4Mの膨張方向に沿って
スライド移動可能となる15個のキャリッジCA1〜CA15を設けた。また、隣接する
キャリッジCA1〜CA15をマザーシート4Mの膨張方向に沿って伸長する連結部材L
を介して連結した。従って、キャリッジCA1〜CA15間の距離を、マザーシート4M
の横方向に沿って配置された各領域Rが各ノズルNと対向するように制御することができ
ることから、マザーシート4Mの膨張方向に沿って配列したノズルNの配置ピッチをキャ
リッジCA1〜CA15毎に補正することができる。
【0083】
(2)本実施形態によれば、ノズルNの配置ピッチをキャリッジCA1〜CA15毎に
補正したことから、内部配線6の配線パターンを所望の位置に形成することができる。従
って、所望の特性を有した回路モジュール1を形成することが可能となる。また、所望の
特性を有したグリーンシート4Gの形成が可能となることから、グリーンシート4Gの歩
留まりを向上させることができる。
【0084】
(3)本実施形態によれば、隣接するキャリッジCA1〜CA15間に連結部材Lを設
け、その各連結部材LにそれぞれヒータUbを備えた。また、各ヒータUbは、それぞれ
独立してその加熱温度が制御されるようにした。従って、各キャリッジCA1〜CA15
間の距離が独立して制御される。この結果、液滴Fbの着弾位置をより精度良く補正する
ことができることから、所望の特性を有したグリーンシート4Gを確実に形成することが
できる。
【0085】
(4)本実施形態によれば、ステージ23に載置されたマザーシート4Mを、吐出ヘッ
ド30から吐出される時の金属インクFの温度以上かつ金属インクFに含まれる機能性材
料の沸点未満(液体組成中の最も沸点の低い温度未満)の温度となるように加熱制御する
ようにした。従って、グリーンシート4G上に着弾した液滴Fbは加熱され、液滴Fb中
の溶媒成分が蒸発して直ちに金属粒子が凝集する。この結果、内部配線6を速やかに形成
することができる。
【0086】
尚、この発明は、以下のように変更して具体化することもできる。
・上記実施形態では、15個の吐出ヘッド30をそれぞれベース部材29に対して独立し
てスライド移動可能な15個のキャリッジCA1〜CA15に固定するようにしたが、本
発明はこれに限定されない。例えば、ベース部材29に対してスライド移動不可能な一つ
のキャリッジを備え、そのキャリッジに形成された複数のノズルN(例えば、800個の
ノズルN)を一組として、各組の間にヒータUbを埋設するように構成してもよい。この
構成であっても、ヒータUbを加熱すると、キャリッジ自体が加熱されて膨張することか
ら上記と同様な効果を得ることができる。
【0087】
また、上記のような構成を成したキャリッジにおいて、その埋設されたヒータUbとノ
ズル列NLとの間に断熱部材を設けるようにしてもよい。このように断熱部材を設けるこ
とによって、ヒータUbからの熱によって金属インクFが加熱されるのを抑制することが
できることから、ノズルNからの液滴Fbの吐出特性を安定させることができる。尚、こ
こで、断熱部材としては、たとえば、セラミックス材料が挙げられる。
【0088】
さらに、上記のような構成を成したキャリッジにおいて、その埋設されたヒータUbに
代えてペルチェ素子を使用するようにしてもよい。この場合、ペルチェ素子は、加熱と冷
却を行うことができることから、隣接する各組の間の距離を短時間で制御することができ
る。この結果、グリーンシート4Gの生産効率を上げることができる。
・上記実施形態では、15個のキャリッジCA1〜CA15をベース部材29に対して、
マザーシート4Mの膨張方向に沿って独立してスライド移動可能としたが、本発明はこれ
に限定されない。例えば、各キャリッジCA1〜CA15をベース部材29に対してX−
Y平面内で回動制御するようにしてもよい。この場合、マザーシート4Mの変形度合いに
応じて、各キャリッジCA1〜CA15の回動角度、即ち、ノズルNの配列方向とマザー
シート4Mに対するベース部材29の移動方向(上記実施形態では、Y矢印方向)とのな
す角、を補正するようにする。このように各キャリッジCA1〜CA15の回動させるこ
とによってノズルNの配置ピッチをキャリッジCA1〜CA15毎に変えることができる
ことから、上記実施形態と同様な効果が得られる。
・上記実施形態では、X矢印方向に沿って配列された1.2×10個のノズルNを、8
00個毎の一組のノズル群に区分したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例え
ば、800個よりも少なくてもよい。このように800個よりも少ないノズルNを一組と
することによって、上記実施形態に比べて液滴Fbの着弾位置をより精度良く補正するこ
とができる。
・上記実施形態では、キャリッジCA1〜CA15は、連結部材Lが一対のスライド機構
SLa,SLbの間に設けられた構成としたが、本発明はこれに限定されるものではなく
、他の構成であってもよい。要は、連結部材Lを介してキャリッジCA1〜CA15が連
結されていればよい。
・上記実施形態では、X矢印方向に沿ってノズルNを配置形成し、X矢印方向と直交する
Y矢印方向に沿ってマザーシート4MをノズルNに対して相対移動させるようにしたが、
本発明はこれに限定されない。ノズルNがX矢印方向に対して傾いていてもよいし、また
、マザーシート4MがY矢印方向に対して傾いて移動するような構成であってもよい。
・上記実施形態では、マザーシート4MにマークMを形成し、そのマークMのずれ量から
マザーシート4Mの熱変形度合い(膨張度合い)を算出するようにしたが、本発明はこれ
に限定されない。たとえば、マザーシート4Mに予め形成された複数のビアホール7の中
から特定のビアホール7を選択しその形成位置の偏倚量からグリーンシート4Gの熱変形
度合いを算出するようにしてもよい。このようにすることによって、変形度合いを算出す
るための特別なマーク(目印)を形成する必要が無いことから、簡単にグリーンシート4
Gの熱変形度合いを算出することができる。
・上記実施形態では、マークMをマザーシート4Mの左上隅に配置形成したが、本発明は
これに限定されるものではなく、マザーシート4M上であって、描画領域Z以外の領域で
あれば、どこに配置形成してもよい。
・上記実施形態では、基板加熱手段としてラバーヒータUaを使用したが、本発明はこれ
に限定されない。例えば、誘導加熱であってもよい。この場合、誘導加熱を構成する高周
波発振用コイルをステージ23に埋設するようにしてもよい。このようにすることによっ
てマザーシート4M上に着弾した液滴Fbを直接加熱することができる。
・上記実施形態では、内部配線6を構成する機能性材料として銀(Ag)の微粒子に具体
化したが、本発明はこれに限定されない。銀(Ag)以外に、例えば、金(Au)、白金
(Pt)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、
ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、
コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(T
a)、タングステン(W)、インジウム(In)のいずれか1つが利用されていてもよい
し、または、いずれか2以上が組み合わされた合金が利用されていてもよい。但し、銀で
あれば比較的低温で還元されるため、扱いが容易であり、この点で、液滴吐出装置を利用
する場合には、銀(Ag)を含有する機能液を利用することが好ましい。
【0089】
また、金属に代えて、有機化合物を含んでいてもよい。ここでいう有機化合物は、加熱
による分解によって金属が析出するような化合物である。このような有機化合物としては
、クロロトリエチルホスフィン金、クロロトリメチルホスフィン金、クロロトリフェニル
フォスフィン金、銀2,4−ペンタンヂオナン錯体、銅ヘキサフルオロペンタンジオナシ
クロオクタジエン錯体、等がある。
【0090】
さらに、機能液に含まれる金属の形態は、ナノ粒子に代表される粒子の形態でもよいし
、有機化合物のような化合物の形態であってもよい。
さらにまた、機能液は。金属に代えて、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレ
ンビニレン、ポリ(3,4エチレンジオキシトオフェン)(PEDOT)等の導電性高分
子の可溶性材料を含んでいてもよい。
・上記実施形態では、基板としてグリーンシート4Gに具体化したが本発明の基板はこれ
に限定されるものではなく、エポキシ基板、ガラスエポキシ基板、セラミック基板、また
はシリコン基板などが利用されてよい。このようにした場合であっても、上記実施形態で
は説明した効果と同様な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】回路モジュールの側断面図。
【図2】液滴吐出装置の全体斜視図。
【図3】キャリッジの配置を説明するための図。
【図4】液滴吐出ヘッドの構成を説明するための図。
【図5】液滴吐出ヘッドの要部側断面図。
【図6】パターンが形成された後のマザーシートの上面図。
【図7】パターンが形成される前のマザーシートの上面図。
【図8】液滴吐出装置の電気的構成を説明するためのブロック図。
【図9】本発明のパターン形成方法の作用を説明するための図。
【図10】第1キャリッジと第2キャリッジとの位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
BD…データとしてのビットマップデータ、F…機能液及び液状体としての金属インク
、Fb…液滴、Ua…基板加熱手段としてのラバーヒータ、Ub…加熱手段としてのヒー
タ、K…カメラ、4G…多孔質性基板、低温焼成用シート、基板及び回路基板としてのグ
リーンシート、5…回路素子、7…ビアホール、7a…ビアホール、20…パターン形成
装置としての液滴吐出装置、50A…算出手段及び補正手段としてのCPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが一方向に沿って配列形成された吐出ヘッドを、基板に対して前記一方向と
は異なる方向に相対移動させて、データに基づいて前記複数のノズルの各々から機能材料
を含む機能液の液滴を吐出し、前記基板上にパターンを形成するパターン形成方法におい
て、
前記基板を加熱する加熱工程と、
前記複数のノズルを複数の組に区分し、その区分された組に属する複数のノズルと、他
の組に属する複数のノズルとの間の距離を、前記基板の前記一方向に対する変形度合いに
応じて補正する補正工程と
を備えたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成方法において、
前記補正工程は、前記区分された組に属する前記複数のノズルと、他の組に属する前記
複数のノズルとの間を、前記変形度合いに基づいた温度に加熱することを特徴とするパタ
ーン形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載のパターン形成方法において、
一つの前記組に属する前記複数のノズルを、一つの前記吐出ヘッドに設けるようにした
ことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載のパターン形成方法において、
前記区分された組に属する前記複数のノズルと、他の組に属する前記複数のノズルとの
間の加熱を、ペルチェ素子によって加熱するようにしたことを特徴とするパターン形成方
法。
【請求項5】
請求項1に記載のパターン形成方法において、
一つの前記組に属する前記複数のノズルを一つの前記吐出ヘッドに設け、
前記補正工程は、前記基板の変形度合いに応じて、前記複数のノズルの配列方向とその
各ノズルを備えたキャリッジの前記基板に対する相対移動方向とのなす角を補正すること
を特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載のパターン形成方法において、
前記基板上に予め配置形成したマークを、前記基板を加熱する前と加熱した後とで比較
して、その加熱によるずれ度合いを算出し、その算出された前記ずれ度合いに基づいて前
記基板の変形度合いを算出するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載のパターン形成方法において、
前記基板は、多孔質性基板であってセラミックス粒子と樹脂とから構成される低温焼成
用シートであり、
前記機能液は、前記機能材料として金属材料を分散させた液状体であることを特徴とす
るパターン形成方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つに記載のパターン形成方法において、
前記基板は、回路素子が実装されるとともにその実装された前記回路素子に対して電気
的に接続された配線が形成される回路基板であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載のパターン形成方法において、
前記データは、ビットマップデータであることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
一方向に沿って配列した複数のノズルが形成された吐出ヘッドを、基板に対して前記一方
向とは異なる方向に相対移動させ、データに基づいて前記複数のノズルの各々から機能材
料を含む機能液の液滴を吐出して、前記基板上にパターンを形成するパターン形成装置に
おいて、
前記基板の表面温度を、前記液滴の吐出時の前記機能液の温度以上かつ前記機能液を構
成する組成物の沸点以下の温度範囲内に加熱する基板加熱手段と、
前記加熱後の前記基板の変形度合いを算出する算出手段と、
前記複数のノズルを複数の組に区分し、その区分された組に属する複数のノズルと、他
の組に属する複数のノズルとの間の距離を、前記基板の前記一方向に対する変形度合いに
応じて補正する補正手段と
を備えたことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項11】
請求項10に記載のパターン形成装置において、
前記区分された組に属する前記複数のノズルと、他の組に属する前記複数のノズルとの
間に設けられ、その前記各組の間を前記変形度合いに応じた温度に加熱する加熱手段を備
えたことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載のパターン形成装置において、
前記吐出ヘッドは、複数設けられ、
前記一つの前記組に属する前記複数のノズルは、一つの前記吐出ヘッドに備えられてい
ることを特徴とするパターン形成装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載のパターン形成装置において、
前記加熱手段は、ペルチェ素子であることを特徴とするパターン形成装置。
【請求項14】
請求項11に記載のパターン形成装置において、
一つの前記吐出ヘッドは、一つの前記組に属する複数の前記ノズルを備え、
前記補正手段は、前記吐出ヘッドに設けられた前記複数のノズルの配列方向と前記ノズ
ルを備えたキャリッジの前記基板に対する相対移動方向とのなす角を前記変形度合いに応
じて調整することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか一つに記載のパターン形成装置において、
前記算出手段は、
前記基板上に予め配置形成したマークを、前記基板を前記温度範囲内の温度に加熱する
前と、前記基板を前記温度範囲内の温度に加熱した後とで比較して、その加熱によるずれ
度合いを算出し、その算出された前記ずれ度合いに基づいて前記基板の変形度合いを算出
することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれか一つに記載のパターン形成装置において、
前記基板は、多孔質性基板であってセラミックス粒子と樹脂とから構成される低温焼成
用シートであり、
前記機能液は、前記機能材料として金属材料を分散させた液状体であることを特徴とす
るパターン形成装置。
【請求項17】
請求項10〜16のいずれか一つに記載のパターン形成装置において、
前記機能液は、前記基板上に実装される回路素子に対して電気的に接続された配線を構
成する金属材料が分散された液状体であることを特徴とするパターン形成装置。
【請求項18】
請求項11〜17のいずれか一つに記載のパターン形成装置において、
前記データはビットマップデータであることを特徴とするパターン形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−135603(P2008−135603A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321268(P2006−321268)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】