説明

パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計

【課題】厚みの薄いパッケージであってもこれを構成するウエハの取扱いを容易にすることができるとともに、ウエハ同士を接合した後でも他の厚さ寸法に自在に転用することができるパッケージの製造方法を提供すること。
【解決手段】ベース基板用ウエハ40およびリッド基板用ウエハ41を接合して形成されたウエハ接合体48の内部に、圧電振動片5を封入可能なキャビティ4を備えたパッケージ1aの製造方法であって、ウエハ接合体48を構成するベース基板用ウエハ40の外面40bおよびリッド基板用ウエハ41の外面43のうち、少なくとも一方を研磨するウエハ接合体研磨工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号等のタイミング源、リファ
レンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動
子は、様々なものが知られているが、その1つとして、表面実装(SMD)型の圧電振動
子が知られている。この種の圧電振動子としては、例えば互いに接合されたベース基板及
びリッド基板と、両基板の間に形成されたキャビティと、キャビティ内に気密封止された
状態で収納された圧電振動片(電子部品)と、を備えている。
【0003】
このタイプの圧電振動子は、ベース基板とリッド基板とが直接接合されることで2層構造になっており、両基板の間に形成されたキャビティ内に圧電振動片が収納されている。 このような2層構造タイプの圧電振動子を製造する場合、リッド基板にキャビティ用の凹部を形成する一方、ベース基板上に圧電振動片をマウントした後、接合層を介して両基板を陽極接合する。これにより、キャビティ内に圧電振動片が気密封止された圧電デバイス(パッケージ)を製造するものである(特許文献1参照)。なお、複数のキャビティが形成されたリッド基板用ウエハと、ベース基板用ウエハとを接合した後に、複数の圧電デバイス(パッケージ)に分離する、ウエハレベルガラスパッケージの手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−319838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の製造方法では、圧電デバイス等のパッケージは厚みが決まっているので、完成品の仕様に基づいて予め決められた厚さに研磨したウエハを接合する必要がある。そのため、パッケージが薄くなるほど1枚のウエハも薄くなり、ウエハの取扱いが面倒である。また、途中でパッケージの厚みが仕様変更になった場合には、厚みの決められたパッケージを他に転用することが難しく、無駄が生じてしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、厚みの薄いパッケージであってもこれを構成するウエハの取扱いを容易にすることができるとともに、ウエハ同士を接合した後でも他の厚さ寸法に自在に転用することができるパッケージの製造方法、圧電振動子、発振器、電子機器、及び電波時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。本発明に係るパッケージの製造方法は、複数のウエハを接合して形成されたウエハ接合体の内部に、電子部品を封入可能なキャビティを備えたパッケージの製造方法であって、前記ウエハ接合体の表面および裏面のうち、少なくとも一方を研磨するウエハ接合体研磨工程を有することを特徴とする。
【0008】
この発明に係るパッケージの製造方法においては、複数のウエハの接合後に全体の厚さを研磨によって調整するので、厚みを自由に調整することができ、個々のウエハの厚みの仕様を予め決めて生産を開始する必要がなく、ウエハ同士を接合した後でも他の厚さ寸法に自在に転用することができる。また、接合前にウエハの厚さを薄くする必要がないので、パッケージを構成するウエハの取り扱いを容易にすることができる。
【0009】
また、本発明に係るパッケージの製造方法は、前記ウエハ接合体研磨工程では、前記ウエハ接合体の表面および裏面を一括して研磨することを特徴とする。
【0010】
この発明に係るパッケージの製造方法においては、全体の製造工程を短縮することができる。
【0011】
また、本発明に係るパッケージの製造方法は、前記ウエハ接合体は、前記キャビティとなる凹部が形成された第1ウエハと、平板状の第2ウエハとを接合して形成され、前記ウエハ接合体研磨工程では、前記ウエハ接合体の表面および裏面のうち、前記第2ウエハの外面を研磨することを特徴とする。
【0012】
この発明に係るパッケージの製造方法においては、キャビティとなる凹部が形成された第1ウエハは、凹部形成領域の厚さが薄くなっているので、研磨代の確保が困難である。これに対して、平板状の第2ウエハは研磨代の確保が容易であり、第2ウエハの外面を研磨することで、厚さ寸法を自在に調整することができる。
【0013】
また、本発明に係るパッケージの製造方法は、前記ウエハは、ガラスウエハであることを特徴とする。
【0014】
この発明に係るパッケージの製造方法においては、ガラス研磨方法を用いてウエハ接合体を容易に研磨することができる。
【0015】
また、本発明に係るパッケージの製造方法は、前記ウエハ接合体の内部には、複数の前記キャビティが形成され、前記ウエハ接合体研磨工程の後に、前記キャビティを備えた複数のパッケージに前記ウエハ接合体を切断する切断工程を有することを特徴とする。
【0016】
この発明に係るパッケージの製造方法においては、ウエハレベルでバッチ処理を行うことで製造効率を向上させることができる。
【0017】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動片を有することを特徴とする。
【0018】
この発明に係る圧電振動子においては、パッケージの厚さ寸法を自在に調整して仕様違いに対応できるので、製造コストを低減することができる。
【0019】
本発明に係る発振器は、上記本発明の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明に係る電子機器は、上記本発明の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明に係る電波時計は、上記本発明の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0020】
この発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、同様に低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、厚みの薄いパッケージであってもこれを構成するウエハの取扱いを容易にすることができるとともに、ウエハ同士を接合した後でも他の厚さ寸法に自在に転用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態による圧電振動子の一例を示す外観斜視図である。
【図2】(a)は(b)に示す圧電振動子のA−A線断面図であり、(b)は(a)に示す圧電振動子のB−B線断面図である。
【図3】図1に示す圧電振動子を製造する際に使用する鋲体の斜視図である。
【図4】図1に示す圧電振動子を製造する流れを示すフローチャートである。
【図5】図1に示す圧電振動子に備えるベース基板を形成するベース基板用ウエハを示す斜視図である。
【図6】(a)、(b)、(c)、(d)は図2(a)、(b)に示す圧電振動子に備える貫通電極を形成する工程を示す図である。
【図7】図1に示す圧電振動子に備えるリッド基板を形成するリッド基板用ウエハを示す断面図である。
【図8】図7に示す状態から、リッド基板用ウエハに凹部を加工した状態を示す図である。
【図9】リッド基板用ウエハを平面からみた図である。
【図10】(a)ベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとを接合した状態、(b)接合後に表裏面を研磨した状態を示す図である。
【図11】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図12】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図13】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態によるパッケージの製造方法について、図1乃至図10に基づいて説明する。
図1及び図2(a)、(b)に示すように、本実施の形態による圧電振動子1はベース基板2とリッド基板3とで2層に積層されたパッケージ1aを備えており、パッケージ1a内部のキャビティ4内に圧電振動片5が収納された表面実装型の圧電振動子1である。そして、圧電振動片5とベース基板2の外側に設置された外部電極6、7とが、ベース基板2を貫通する一対の貫通電極8、9によって電気的に接続されている。
【0024】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板で板状に形成されている。ベース基板2には、一対の貫通電極8、9が形成される一対のスルーホール(貫通孔)21、22が形成されている。スルーホール21、22はベース基板2の下面から上面に向かって漸次径が縮径した断面テーパー形状をなしている。
【0025】
リッド基板3は、ベース基板2と同様に、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明の絶縁基板であり、ベース基板2に重ね合わせ可能な大きさの板状に形成されている。そして、リッド基板3のベース基板2が接合される接合面側には、圧電振動片5が収容される矩形状の凹部3aが形成されている。
【0026】
この凹部3aは、ベース基板2およびリッド基板3が重ね合わされたときに、圧電振動片5を収容するキャビティ4を形成する。そして、リッド基板3は、この凹部3aをベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して接合膜23を介して陽極接合されている。
【0027】
圧電振動片5は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片5は、平行に配置された一対の振動腕部24、25と、該一対の振動腕部24、25の基端側を一体的に固定する基部26と、からなる平面視略コの字型で、一対の振動腕部24、25の外表面上には、振動腕部24、25を振動させる図示しない一対の第1の励振電極と第2の励振電極とからなる励振電極と、第1の励振電極及び第2の励振電極に電気的に接続された一対のマウント電極とを有している。
【0028】
そして、圧電振動片5の第1の励振電極が、一方のマウント電極および一方の貫通電極8を介して一方の外部電極6に電気的に接続され、圧電振動片5の第2の励振電極が、他方のマウント電極、引き回し電極27および他方の貫通電極9を介して、他方の外部電極7に電気的に接続されている。圧電振動片5は、導電性接着剤28等によりベース基板2に実装されている。外部電極6、7は、ベース基板2底面の長手方向の両端に設置されている。
【0029】
貫通電極8、9は、スルーホール21、22の中心軸に配設された芯材部31と、芯材部31とスルーホール21、22との間に充填されたガラスフリット32aが焼成されて形成された筒体32とから構成されている。一方の貫通電極8は、外部電極6の上方で基部26の下方に位置しており、他方の貫通電極9は、外部電極7の上方で引き回し電極27の下方に位置している。
貫通電極8、9は、筒体32が芯材部31をスルーホール21、22に対して一体的に固定しており、芯材部31および筒体32がスルーホール21、22を完全に塞いでキャビティ4内の気密を維持している。
【0030】
芯材部31は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)などの、熱膨張係数αがガラスフリット32aよりも小さい材料(α=6〜7ppm)により円柱状に形成された導電性の金属芯材で、両端が平坦で且つベース基板2の厚みと同じ厚さである。なお、貫通電極8、9が完成品として形成された場合には、上述したように芯材部31は、円柱状でベース基板2の厚みと同じ厚さとなるように形成されているが、製造過程では、図3に示すような、芯材部31の一方の端部に連結された平板状の土台部36と共に鋲体37を形成している。また、この土台部36は製造過程において、研磨されて除去される。
貫通電極8、9は、導電性の芯材部31を通して電気導通性が確保されている。
【0031】
筒体32は、ペースト状のガラスフリット(封着材料)32aが焼成されたもので、両端が平坦で且つベース基板2と略同じ厚さで、中心軸に芯材部31が貫通する貫通孔が形成されている。筒体32は、スルーホール21、22と同形のテーパー状の外形をしている。そして、この筒体32は、スルーホール21、22内に埋め込まれた状態で焼成されており、スルーホール21、22に対して強固に固着されると共に芯材部31を強固に固定している。
【0032】
(パッケージの製造方法)
次に上述した圧電振動片を収容したパッケージ(圧電振動子)の製造方法について図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。本実施形態では、ウエハレベルガラスパッケージの手法を採用し、ウエハレベルで各工程を行った後に、ウエハ接合体を切断して複数の圧電振動子を形成する。ウエハレベルでバッチ処理を行うことで、製造効率を向上させることができる。
【0033】
まず、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を製作する工程を行う(S10)。まず、図5に示すような、円板状のベース基板用ウエハ40を形成する。具体的には、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去する(S11)。なお、図5では、ベース基板用ウエハ40の一部分を示しており、実際のベース基板用ウエハ40は円板状である。また、図5中の点線Mは、後の切断工程においてベース基板用ウエハ40を切断する切断線を図示している。
【0034】
続いて、ベース基板用ウエハ40に貫通電極8、9を形成する貫通電極形成工程を行う(S10A)。具体的には、図6(a)に示すような、ベース基板用ウエハ40を貫通する一対のスルーホール21、22を複数形成する(S12)。続いて、スルーホール21、22内に中心軸を合わせて鋲体37の芯材部31を上側から挿入し、この鋲体37の土台部36とベース基板用ウエハ40とを接触させて上下反転させる(S13)。このとき、図6(b)に示すように、スルーホール21、22はそのテーパー形状が下方に向かって漸次径が縮径する向きで、鋲体37は土台部36の上側に芯材部31が位置する向きで配置される。土台部36の平面形状はスルーホール21、22の小径側21a、22aの開口よりも大きく、この小径側21a、22aの開口を塞ぐことができる形状とする。そして、図6(c)に示すように、スルーホール21、22と芯材部31との隙間にペースト状のガラスフリット32aを充填し(S14)、所定の温度で焼成しガラスフリット32aを固化させる(S15)。
【0035】
続いて、ベース基板用ウエハ研磨工程を行う(S16)。まず、鋲体37の土台部36を研磨して除去する(S17)。土台部36の研磨は、不図示の片面研磨装置を使用して行う。そして、土台部36を撤去して、図6(d)に示すように、芯材部31のみを筒体32の内部に残す。
【0036】
そして、土台部36が撤去されたベース基板用ウエハ40の両面(内面40aおよび外面40b)を研磨する工程を行う(S18)。
両面を研磨する工程は、主に焼成によりくぼみが生じたフリットガラスを平坦にするためのもので、不図示の両面研磨装置を使用して行う。外面40bについては、最終寸法まで仕上げるのではなく、所定の研磨代を残した状態まで研磨する。ベース基板用ウエハ40の厚さを残すことで、ベース基板用ウエハ40の剛性が高くなって取り扱いが容易になる。
【0037】
次に、ベース基板用ウエハ40の上面に導電性材料をパターニングして、接合膜23を形成する接合膜形成工程を行う(S19)と共に、引き回し電極を形成する引き回し電極形成工程を行う(S20)。このようにして、ベース基板用ウエハ40の製作工程が終了する。
【0038】
ベース基板用ウエハ40の製作と同時または前後のタイミングで、陽極接合を行う直前の状態まで、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハを製作する(S20)。具体的には、図7に示すように、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチング等により最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ41を形成する(S21)。次いで、図8,9に示すように、リッド基板用ウエハ41の接合面42に、プレス加工やエッチング等により行列方向にキャビティC用の凹部3aを複数形成する凹部形成工程を行う(S22)
【0039】
次に、リッド基板用ウエハ41の少なくとも接合面42を研磨するリッド基板用ウエハ研磨工程(S23)を行う。リッド基板用ウエハ研磨工程(S23)では、まず図示しない両面研磨装置を用い、リッド基板用ウエハ41の両面(接合面42及び外面43)をラッピング(粗削り)する(ラッピング工程:S24)。外面43については、最終寸法まで仕上げるのではなく、所定の研磨代を残した状態まで研磨する。リッド基板用ウエハ41の厚さを残すことで、リッド基板用ウエハ41の剛性が高くなって取り扱いが容易になる。
【0040】
続いて、リッド基板用ウエハ41の少なくとも接合面42を鏡面仕上げするために、ポリッシュ工程を行う(S25)。このポリッシュ工程では、リッド基板用ウエハ41の両面42,43を一括して研磨する不図示の両面研磨装置を使用して行う。ポリッシュ工程で使用する研磨パッドとしては、例えば不織布やスエード状の研磨布であるセリウムパッド等が好適に用いられる。
【0041】
そして、ベース基板用ウエハ40の内面40aに圧電振動片5をマウントするマウント工程を行う(S26)。次に、作成されたベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ41を重ね合わせる、重ね合わせ工程を行う(S27)。これにより、マウントされた圧電振動片5が、リッド基板用ウエハ41に形成された凹部3aとベース基板用ウエハ40とで囲まれるキャビティC内に収納された状態となる。
【0042】
重ね合わせ工程後、重ね合わせた2枚のウエハを図示しない陽極接合装置に入れ、図示しない保持機構によりウエハの外周部分をクランプした状態で、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する(S28)。具体的には、接合膜23とリッド基板用ウエハ41との間に所定の電圧を印加する。すると、接合膜23とリッド基板用ウエハ41との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片5をキャビティC内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ41とが接合したウエハ接合体48を得ることができる。
【0043】
得られたウエハ接合体48には、図10(a)に示すように、ベース基板用ウエハ40の外面40bには研磨代45が、またリッド基板用ウエハ41の外面43には研磨代46が、それぞれ残されている。そこで、ウエハ接合体研磨工程(S29)として、ウエハの表裏両面を研磨する不図示の両面研磨装置を使用し、研磨代45,46を一括して研磨して、図10(b)に示すように所定の厚みに仕上げる。なお、ベース基板用ウエハ40およびリッド基板用ウエハ41はともにガラスウエハであるため、公知のガラス研磨方法を用いてウエハ接合体48を容易に研磨することができる。
【0044】
そして、一対の貫通電極8、9にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極6、7を形成し(S30)、圧電振動子1の周波数を微調整する(S31)。そして、ウエハ接合体48を小片化する切断を行い(S32)、内部の電気特性検査(S33)を行うことで圧電振動片を収容したパッケージ(圧電振動子1)が形成される。
【0045】
本実施形態のパッケージの製造方法によれば、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ41とを陽極接合する前に各ウエハ40,41のすべての研磨代を除去するのではなく、陽極接合後に両面の研磨代を一括して除去する。すなわち、各ウエハ単体ではなく接合後に全体の厚さを調整するので、パッケージ1aの厚みを自由に調整することができ、個々のウエハの厚みの仕様を予め決めて生産を開始する必要がなく、各ウエハ同士を接合した後でも他の厚さ寸法に自在に転用することができる。また、接合前に各ウエハ40,41の厚さを薄くする必要がないので、パッケージ1aを構成するベース基板用ウエハ40およびリッド基板用ウエハ41の取り扱いを容易にすることができる。
【0046】
また、本実施形態の圧電振動子1によれば、パッケージ1aの厚さ寸法を自在に調整して仕様違いに対応できるので、製造コストを低減することができる。
【0047】
(発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図11を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、図11に示すように、上述した圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。
【0048】
この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上記集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片5が実装されている。
これら電子部品102、集積回路101及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0049】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片5が振動する。この振動は、圧電振動片5が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0050】
本実施形態の発振器100によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、発振器100自体の低コスト化を図ることができる。
【0051】
(電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図12を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器110を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0052】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。
この携帯情報機器110は、図12に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0053】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0054】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片5が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0055】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123及び呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0056】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0057】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119及び着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0058】
即ち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0059】
本実施形態の携帯情報機器110によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器自体の低コスト化を図ることができる。
【0060】
(電波時計)
次に、本発明に係る電波時計130の一実施形態について、図13を参照して説明する。本実施形態の電波時計130は、図13に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0061】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0062】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。
続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0063】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0064】
本実施形態の電波時計130によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、電波時計自体の低コスト化を図ることができる。
【0065】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、ベース基板用ウエハ40及びリッド基板用ウエハ41をガラスウエハとしているが、これに限らず他の材料のものでも構わない。
【0066】
また、上記実施形態では、ウエハ接合体48を構成するリッド基板用ウエハ41の外面43とベース基板用ウエハ40の外面40bとを一括して研磨することで製造工程を短縮しているが、いずれか一方の外面のみを研磨してもよい。この場合には、ベース基板用ウエハ40の外面40bを研磨することが望ましい。キャビティ4となる凹部3aが形成されたリッド基板用ウエハ41は、凹部3aの形成領域の厚さが薄くなっているので、研磨代46の確保が困難である。これに対して、平板状のベース基板用ウエハ40は研磨代45の確保が容易であり、ベース基板用ウエハ40の外面40bを研磨することで、厚さ寸法を自在に調整することができる。
【0067】
また、上記実施形態では、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ41とを陽極接合するため、接合工程(S28)の前にベース基板用ウエハ研磨工程(S16)およびリッド基板用ウエハ研磨工程(S23)を行った。これに対して、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ41とを低融点ガラスや接着剤等により接合する場合には、ベース基板用ウエハ研磨工程(S16)およびリッド基板用ウエハ研磨工程(S23)のうち一方または両方を、廃止または簡略化することができる。これにより、ウエハ接合体研磨工程(S29)を追加した場合でも、製造効率の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0068】
S29…ウエハ接合体研磨工程
S32…切断工程
1…圧電振動子
1a…パッケージ
3a…凹部
4…キャビティ
5…圧電振動片
40…ベース基板用ウエハ(ウエハ、第2ウエハ)
40b…ベース基板用ウエハの外面(ウエハ接合体の裏面)
41…リッド基板用ウエハ(ウエハ、第1ウエハ)
43…リッド基板用ウエハの外面(ウエハ接合体の表面)
48…ウエハ接合体
100…発振器
110…携帯情報機器(電子機器)
130…電波時計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウエハを接合して形成されたウエハ接合体の内部に、電子部品を封入可能なキャビティを備えたパッケージの製造方法であって、
前記ウエハ接合体の表面および裏面のうち、少なくとも一方を研磨するウエハ接合体研磨工程を有することを特徴とするパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記ウエハ接合体研磨工程では、前記ウエハ接合体の表面および裏面を一括して研磨することを特徴とする請求項1に記載のパッケージの製造方法。
【請求項3】
前記ウエハ接合体は、前記キャビティとなる凹部が形成された第1ウエハと、平板状の第2ウエハとを接合して形成され、
前記ウエハ接合体研磨工程では、前記ウエハ接合体の表面および裏面のうち、前記第2ウエハの外面を研磨することを特徴とする請求項1に記載のパッケージの製造方法。
【請求項4】
前記ウエハは、ガラスウエハであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項5】
前記ウエハ接合体の内部には、複数の前記キャビティが形成され、
前記ウエハ接合体研磨工程の後に、前記キャビティを備えた複数のパッケージに前記ウエハ接合体を切断する切断工程を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のパッケージの製造方法によって製造されたパッケージの前記キャビティの内部に、前記電子部品として圧電振動片が封入されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項7】
請求項6に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項8】
請求項6に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項6に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−205255(P2012−205255A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70533(P2011−70533)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】