説明

パワーモジュール構造体及びその製造方法

【課題】セラミックス回路基板と金属ベース板の放熱性が高く信頼性に優れた、安価なパワーモジュール構造体と、その製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックス回路基板1の熱膨張係数をα(×10−6/K)、応力緩和板2の熱膨張係数をβ(×10−6/K)、金属ベース板3の熱膨張係数をγ(×10−6/K)とした時、(α+γ)/2−4<β<(α+γ)/2+4を満たす熱膨張係数を有し、板厚が0.5〜3.0mmで温度25℃の熱伝導率が100W/(m・K)以上、3点曲げ強度が50MPa以上の応力緩和板2の表面に金属層を形成した後、セラミックス回路基板1と金属ベース板3との間にはんだ付け又はロウ付けしてなるパワーモジュール構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱材及びその製造方法に係わり、詳しくはパワーモジュール用の放熱用基板として好適な放熱材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、半導体素子の高集積化、小型化に伴い、発熱量は増加の一途をたどっており、いかに効率よく放熱させるかが課題となっている。そして、高絶縁性・高熱伝導性を有する例えば窒化アルミニウム基板、窒化珪素基板等のセラミックス回路基板の表面に、銅製又はアルミニウム製の金属回路を、また裏面に銅製又はアルミニウム製の金属放熱板が形成されてなるセラミックス回路基板が、パワーモジュール用回路基板として使用されている。
【0003】
従来の回路基板の典型的な放熱構造は、回路基板の裏面(放熱面)の金属板、例えば銅板を介してベース板がはんだ付けされてなるものであり、ベース板としては銅が一般的であった。しかしながら、この構造においては、半導体装置に熱負荷がかかった場合、ベース板と回路基板の熱膨張係数差に起因するクラックがはんだ層に発生し、その結果放熱が不十分となって半導体素子を誤作動させたり、破損させたりするという課題があった。
【0004】
そこで、熱膨張係数を回路基板のそれに近づけたベース板として、アルミニウム−炭化珪素質複合体が提案されている。このベース板用のアルミニウム−炭化珪素質複合体の製法としては、炭化珪素の多孔体にアルミニウム合金の溶湯を加圧含浸する溶湯鍛造法(特許文献1)、炭化珪素の多孔体にアルミニウム合金の溶湯を非加圧で浸透させる非加圧含浸法(特許文献2)が実用化されている。一方、コスト面からは、アルミニウム粉末と炭化珪素粉末を混合して、加熱成形する粉末冶金法が有利であり、同製法によるアルミニウム−炭化珪素質複合体の検討も行われている(特許文献3,4)。しかし、いずれの製法のアルミニウム−炭化珪素質複合体でもコスト面に問題があることから、低コスト化が要求される分野では安価な銅ベース板が使用される場合が多くなり、セラミックス回路基板と銅ベース板間の信頼性に課題があった。
【特許文献1】特許第3468358号
【特許文献2】特表平5−507030号公報。
【特許文献3】特開平9−157773号公報
【特許文献4】特開平10−335538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベース板に用いられる銅やアルミニウムなどの金属は熱膨張係数が17〜23×10−6/K程度と大きく、熱膨張係数が5×10−6/K程度のセラミックス回路基板との熱膨張係数差が大きいため、接合層のはんだ層にはんだクラックが発生する。
【0006】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、パワーモジュール構造体として、セラミックス回路基板と銅ベース板との間の熱膨張係数を有する応力緩和板を搭載することによって、熱膨張係数差によって発生する応力を緩和し信頼性の向上が達成できる応力緩和板及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、セラミックス回路基板の熱膨張係数をα(×10−6/K)、応力緩和板の熱膨
張係数をβ(×10−6/K)、金属ベース板の熱膨張係数をγ(×10−6/K)とした時、(α+γ)/2−4<β<(α+γ)/2+4を満たす熱膨張係数を有し、板厚が0.5〜3.0mmで温度25℃の熱伝導率が100W/(m・K)以上、3点曲げ強度が50MPa以上の応力緩和板の表面に金属層を形成した後、セラミックス回路基板と金属ベース板との間にはんだ付け又はロウ付けしてなるパワーモジュール構造体を提案したものである。
【0008】
また、本発明においては、応力緩和板が、炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素、及び黒鉛の中から選ばれるセラミックス粉末1種類以上からなる多孔体、又は粉末成形体とアルミニウム又はアルミニウム合金を複合化した板状の金属含浸セラミックス基板、又はCu,Ni,Mo,W、Co及びFeから選ばれた金属板、上記金属成分の少なくとも1種を含む合金板、又は上記金属板及び上記合金板から選ばれた2種以上で構成された積層板であるパワーモジュール構造体であることが好ましい。
【0009】
更に、本発明は、応力緩和板が下記の(1)〜(4)のいずれかの工程を経て得られる板状の金属含浸セラミックス基板の表面に、0.5〜20μmの厚みのNi、Co、Pd、Cu、Ag、Au、Pt、Snの中から選ばれる少なくとも1種以上の金属をめっきにより形成してなるパワーモジュール構造体に用いる応力緩和板の製造方法である。
(1)炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素、及び黒鉛の中から選ばれるセラミックス粉末1種類以上からなる気孔率が10〜60体積%のブロック状の多孔体、又は粉末成形体とアルミニウム又はアルミニウム合金を溶湯鍛造法にて30MPa以上の圧力で複合化し、ブロック状の金属含浸セラミックス体を切断加工及び又は形状加工して板状の金属含浸セラミックス基板を作製する工程。
(2)炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素、及び黒鉛の中から選ばれるセラミックス粉末1種類以上からなる気孔率が10〜60体積%の板状の多孔体、又は粉末成形体を離型板を介して積層し、アルミニウム又はアルミニウム合金を溶湯鍛造法にて30MPa以上の圧力で含浸し板状の金属含浸セラミックス体を作製した後、形状加工して金属含浸セラミックス基板を作製する工程。
(3)炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素、及び黒鉛の中から選ばれる1種類以上のセラミックス粉末を40〜90体積%とアルミニウム又はアルミニウム合金を10〜60体積%混合した粉末を離型処理を施した金型に充填し、アルミニウム又はアルミニウム合金の融点以上の温度に加熱して、30MPa以上の圧力で加熱プレスしてブロック状に複合化し、切断加工及び又は外周加工により板状の金属含浸セラミックス基板を得る工程。
(4)炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素、及び黒鉛の中から選ばれる1種類以上のセラミックス粉末を40〜90体積%とアルミニウム又はアルミニウム合金を10〜60体積%混合した粉末を離型処理を施した金型に充填し、アルミニウム又はアルミニウム合金の融点以上の温度に加熱して、30MPa以上の圧力で加熱プレスして板状の金属含浸セラミックス基板に複合化する工程。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、応力緩和板に用いるセラミックス粉末の粒度、種類、含有量を適正化することにより、また、金属成分の適正化により、得られる応力緩和板をセラミックス回路基板と銅ベース板の間の熱膨張係数に制御することができるため、セラミックス回路基板側及び銅ベース板側の両方に対して良好なマッチングがとれ、信頼性を著しく向上したパワーモジュール構造体を提供できる。
【0011】
更に、熱伝導率が100W/(m・K)以上なのでセラミックス回路基板からの熱を銅ベース板に良好に伝えることができ、パワーモジュール構造体として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明のパワーモジュール構造体の一例を示した説明図である。
【図2】図2は本発明の金属含浸セラミックス体の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の、パワーモジュール構造体に用いる応力緩和板は、板厚が0.5〜3.0mmt、好ましくは0.5〜2.0mmで、3点曲げ強度が50MPa以上である。該応力緩和板の表面に金属層を形成した後、セラミックス回路基板と金属ベース板との間にはんだ付け又はロウ付けしたパワーモジュール構造体であるので、セラミックス回路基板からの熱をベース板に良好に伝えることができ、かつ高信頼性を有するパワーモジュール構造体が実現できる。
【0014】
応力緩和板の板厚が0.5mm未満であると、応力緩和層が薄すぎて応力を緩和できずに信頼性が低下してしまう。一方、3.0mmを越えると応力緩和板の熱抵抗が大きくなる。
【0015】
応力緩和板の温度25℃の熱伝導率は100W/(m・K)以上、好ましくは200W/(m・K)以上であり、100W/(m・K)より小さいと、セラミックス回路基板からの熱を金属ベース板に十分に伝えられずに、半導体が誤作動を起こしたり損傷したりする場合がある。
【0016】
また、セラミックス回路基板の熱膨張係数をα(×10−6/K)、応力緩和板の熱膨張係数をβ(×10−6/K)、金属ベース板の熱膨張係数をγ(×10−6/K)とした時、(α+γ)/2−4<β<(α+γ)/2+4を満たす熱膨張係数を有することが好ましく、熱膨張係数がセラミックス回路基板と金属ベース板の間の応力緩和板を用いることで、高信頼性が実現できる。
応力緩和板の熱膨張係数が上記の範囲外の場合、半導体素子作動時の熱負荷により、接合層(はんだ層等)やセラミックス回路基板の破壊が起こり、放熱特性が低下する場合がある。また、応力緩和板が金属含浸セラミックス体からなる場合、熱伝導率と熱膨張係数は、複合化する金属の含浸率、セラミックスの材質によって増減させることができる。
【0017】
応力緩和板の3点曲げ強度は50MPa以上が好ましい。パワーモジュール用の放熱部品として用いる場合、3点曲げ強度が50MPa未満では使用時の振動等の影響による欠けの問題があり好ましくない。3点曲げ強度の上限に関しては、特性状の制約はないが、3点曲げ強度を極端に向上させるためには、炭化珪素の添加量の増加及び微粉化が必要となり、その結果、得られる金属含浸セラミックス体の熱伝導率が低下するため、350MPa以下であることが好ましい。
【0018】
金属含浸セラミックス体からなる応力緩和板は、セラミックス粉末1種類以上を40〜90体積%含有し、残部(10〜60体積%)がアルミニウム又はアルミニウム合金、好ましくはアルミニウム含有率が80〜100質量%のアルミニウム−シリコン合金を複合化したものであることが好ましい。
セラミックスとアルミニウム又はアルミニウム合金の複合化の方法としては、例えば特許3468358号の実施例等の方法によって含浸される、溶湯鍛造法により製造されたものであることが好ましい。
【0019】
また、上記溶湯鍛造法の代わりに、セラミックス粉末とアルミニウム又はアルミニウム合金粉末の混合粉末を離型処理した金型に充填し、アルミニウム又はアルミニウム合金の融点以上の温度に加熱後にプレスして複合化する方法によって製造されたものでも使用できる。
【0020】
セラミックス粉末とアルミニウム又はアルミニウム合金の複合化に必要な圧力は、30MPa以上が好ましい。加熱プレス成形時の圧力が、30MPa未満では、セラミックス粉末とアルミニウム又はアルミニウム合金の密着性が不足して、熱伝導率、強度等の特性が低下するため好ましくない。また、プレス圧の上限については、特性面からの制約はないが、金型の強度、装置の力量より、200MPa以下が適当である。金属含浸セラミックス体は、融点以下の温度で減圧した後、室温まで冷却する。なお、複合化時の歪み除去の目的で、金属含浸セラミックス体のアニール処理を行うこともある。
【0021】
セラミックス粉末の材質は、炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素、及び黒鉛の中から選ばれた無機成分の少なくとも1種であることが好ましい。セラミックスの充填量は40〜90体積%、特に50〜80体積%であることが好ましい。セラミックスの充填量が40体積%未満であると、金属含浸セラミックス体の熱膨張係数が大きくなりすぎる。一方、90体積%を越えると、金属を十分に含浸させることができずに、熱伝導率が小さくなりすぎる恐れがある。また、セラミックスの充填状態は特に制限はなく、セラミックス多孔体、又はセラミックス粉末成形体を用いることができる。セラミックスの充填量の調整はセラミックス成分の粒度調整、整形圧力、焼結条件などによって行うことができる。
【0022】
また、セラミックスと複合化する金属成分は、アルミニウム80〜100質量%、珪素0〜20質量%を含有するアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。珪素成分が20質量%を超えると合金の融点が高くなり、未含浸部分が発生する場合がある。一方、珪素成分が20質量%を超えると、得られる合金の熱伝導率が低下し、その結果、得られる金属含浸セラミックス基板の熱伝導率が低下し好ましくない。珪素成分以外の成分としては特性に影響を与えない範囲であれば、特に制限はないが、マグネシウムは、得られる合金とセラミックスの濡れ性を向上させる効果があり、3質量%以内であれば、強度や熱伝導特性に悪影響を与える炭化アルミニウム(Al)の生成を抑制できるため含有してもよい。
【0023】
セラミックス粉末成形体は、セラミックス成分の粉末のみを成形して製造することもできるし、例えば、シリカゾル、アルミナゾル等の無機バインダーと共に用いて製造することもできる。成形には、プレス成形、鋳込み成形等の一般的なセラミックス粉末の成形方法が採用される。また、セラミックス多孔体は、例えば、上記セラミックス粉末成形体を焼結処理することによって製造することができる。セラミックス多孔体とセラミックス粉末成形体の形状には制約はなく、平板状、円柱状などで用いられる。
【0024】
金属を含浸したセラミックス多孔体又はセラミックス粉末成形体から金属含浸セラミックス基板にするには、通常、切断加工と面加工が施される。金属を含浸したセラミックス多孔体又はセラミックス粉末成形体の形状が直方体形状である場合、平面研削板によりダイヤモンド砥石を用いて所定寸法に外形加工した後、マルチワイヤソー、内周刃切断機等で最終形状より0.1〜0.5mm程度厚い板厚に切断加工するのがよい。切断方法には限定はないが、切断代が少なく量産性に適したマルチワイヤソーが好適である。マルチワイヤソーの切断では、遊離砥粒タイプ及びダイヤモンド等の研削材を付着したワイヤーが用いられる。面加工では、両面研削盤、ロータリー研削盤、平面研削盤、ラップ盤等の加工機を用い、板厚が0.5〜3mmに加工される。
【0025】
金属を含浸したセラミックス多孔体又はセラミックス粉末成形体の形状が板状である場合は、両面研削盤、ロータリー研削盤、平面研削盤、ラップ盤等の加工機を用い、板厚が0.5〜3mm、表面粗さ(Ra)が1.0μm以下に面加工をし、次いでウォータージェット加工機、放電加工機、レーザー加工機、ダイシングマシン、円筒研削盤等で所定形状に外周加工を行う。この場合、外周加工を先に行ってから面加工をしてもよい。
【0026】
一方、金属からなる応力緩和板は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、コバルト(Co)及び鉄(Fe)から選ばれた金属板、上記金属成分の少なくとも1種を含む合金板、又は上記金属板及び上記合金板から選ばれた2種以上で構成された積層板から構成されていることが好ましい。その形状は、平板状、円柱状などが用いられる。
【0027】
金属含浸セラミックス基板又は金属基板のいずれの応力緩和板にあっても、その表面に、Ni、Co、Pd、Cu、Ag、Au、Pt及びSnから選ばれた少なくとも1種の金属による、特に好ましくはNi又はAuによる、厚みが0.5〜20μmの金属層を有していることが好ましい。特に好ましい金属層の厚みは2〜10μmである。これによって、セラミックス回路基板、応力緩和板及び金属ベース板の接着状態が良好になる。金属層の厚みが0.5μm未満であると、接着状態が悪くなり、20μmをこえると、金属層と応力緩和板との熱膨張差による剥離が生じる恐れがある。金属層は、応力緩和板を洗浄後、上記金属種による無電解めっき又は電解めっきを施すことによって形成させることができる。また、金属蒸着法や金属被覆法によっても形成させることができる。
【0028】
セラミックス回路基板、応力緩和板及び金属ベース板との接合は、はんだ付けまたはロウ付けを用いて行われる。はんだとしてはクリームはんだ、共晶はんだ、鉛フリーはんだなどを用いてもよい。好ましくはロウ付け法による接合が好ましく、接合層が薄く均一にできるため熱抵抗を小さくできる。

【実施例】
【0029】
[実施例1]
炭化珪素粉末A(市販品:平均粒子径150μm)3250g、炭化珪素粉末B(市販品:
平均粒子径10μm)1750g、シリカゾル(日産化学社製:スノーテックス)750gを秤取し、攪拌混合機で30分間混合した後、70mm×70mm×100mmの寸法の形状に面圧10MPaでプレス成形して成形体を作製した。得られた成形体を、温度120℃で1時間乾燥後、窒素雰囲気下、温度1000℃で2時間焼成して、気孔率が35%の焼結体を製造し、平面研削盤を用いて、外形寸法が、56mm×47mm×100mm
の形状に加工してSiC多孔体を製造した。得られたSiC多孔体に窒化硼素の離型剤を塗布してから、筒状黒鉛治具(外寸法:80mm×80mm×100mm、内寸法:56.5mm×47.5×100mm)に挿入して構造体とした。
【0030】
黒鉛離型剤の塗布されたステンレス板からなる離型板(80mm×100mm×0.8mm)を挟んで上記構造体の4個を組み立て(160.8mm×160.8mm×100mm)、両側に鉄板(厚み12mm)を配置し、ボルト8本で連結して一つの積層体とした。
この積層体を電気炉で温度700℃に予備加熱した後、あらかじめ加熱しておいたプレス金型(内径400mm×高さ300mm)内に収め、シリコンを12質量%及びマグネシウムを1質量%含有するアルミニウム合金の溶湯(温度800℃)を注ぎ、100MPaの圧力で25分間加圧してアルミニウム合金を含浸させた。室温まで冷却した後、湿式バンドソーにて離型板の形状に沿って切断して離型板を剥がし、旋盤で黒鉛治具部分を除去して4個の複合体(56×47×100mm)を製造した。これを530℃の温度で3時間アニール処理して含浸時の歪みを除去した。
【0031】
得られた複合体から、研削加工により熱膨張係数測定用試験体(直径4mm長さ20mm)、熱伝導率測定用試験体(25mm×25mm×1mm)、強度測定用試験体(40mm×4mm×3mm)を切り出し、温度25℃〜150℃の熱膨張係数を熱膨張計(セイコー電子工業社製;TMA300)で、温度25℃での熱伝導率をレーザーフラッシュ法(アルバック社製;TC3000)で、3点曲げ強度を曲げ強度試験機(今田製作所製;SV301)で測定した。その結果、熱膨張係数は7.5×10−6/K、熱伝導率は200W/(m・K)、3点曲げ強度400MPaであった。
【0032】
ついで、複合体を54mm×45mm×100mmの形状に外周加工を行ってから、マルチワイヤソーでダイヤモンド砥粒を用い、切り込み速度0.2mm/minで、板厚1.5mmの板状に切断加工し、更に両面研削盤で#600のダイヤモンド砥石を用いて板厚1.2mmに研削加工した。その後、ラップ盤でダイヤモンドの砥粒を用いて、板厚1.0mmまで研磨加工をしてから、無電解Ni−Pめっきを行い、金属層(6μm厚)を形成し応力緩和板Aを製造した。
<パワーモジュール構造体>
以下の構成材料を用い、図1に示されるパワーモジュール構造体を作製した。すなわち、セラミックス回路基板1と金属ベース板3との間に接合層4を介して応力緩和板2を積層してパワーモジュール構造体を作製した。
【0033】
<構成材料>
セラミックス回路基板1:窒化珪素基板:58mm×49mm×0.635mm
(銅回路:54mm×45mm×0.2mm)
応力緩和板2:上記で製造された応力緩和板A:54mm×45mm×1.0mm
ベース板3:銅板:100mm×80mm×4mm
接合層4:クリームはんだ(0.2mm厚み)
【0034】
<パワーモジュール構造体の信頼性の評価>
パワーモジュール構造体を−40℃と125℃の恒温槽に30分間保持しヒートサイクル処理(1000回)を行った後に、外観及び接合状態を超音波探傷により確認したところ、接合層の剥離等の問題箇所は確認されなかった。
【0035】
[実施例2]
炭化珪素粉末A(市販品:平均粒子径150μm)3250g、炭化珪素粉末B(市販品:平均粒子径10μm)1750g、シリカゾル(日産化学社製:スノーテックス)750gを秤取し、攪拌混合機で30分間混合した後、70mm×70mm×100mmの寸法の板状に面圧10MPaでプレス成形して成形体を作製した。得られた成形体を、温度120℃で1時間乾燥後、窒素雰囲気下、温度1000℃で2時間焼成して、気孔率が35%の焼結体を製造し、平面研削盤を用いて、外形寸法が、56mm×47mm×100mmの形状に加工してSiC多孔体を製造した。得られたSiC多孔体をスライサーとラップ研削盤により、外形寸法が56mm×47×2mmの形状に加工した。
【0036】
外形寸法が56mm×47×2mmのセラミックス多孔体の32枚を4枚毎に黒鉛離型剤が塗布された離型板(160mm×160mm×0.8mm)を挟んで積層し、特性評価用として56×47×5mmの4枚も一緒に挟んで構造体となし(170mm×170mm×30mm)、両側に鉄板(板厚12mm)を配置して、ボルト8本で連結して一つの積層体とした。以下、実施例1の応力緩和板Aと同様にして複合体(56mm×47mm×2mm)を製造し、温度25℃〜150℃の熱膨張係数と温度25℃での熱伝導率、3点曲げ強度を測定したところ、それぞれ、7.5×10−6/K、200W/(m・K)、400MPaであった。
【0037】
得られた複合体を、平面研削盤でダイヤモンドの砥石を用いて、板厚1.0mmの板状に面加工した後、続いて、ウォータージェット加工機(スギノマシン製アブレッシブ・ジェットカッタNC)により、圧力250MPa、加工速度100mm/minの条件で、研磨砥粒として粒度100μmのガーネットを使用して、54mm×45mm×1.0mmの形状に切断加工した。その後、上記応力緩和板Aと同様な金属層を施して応力緩和板Bとし、その後、得られた応力緩和板Bを実施例1のセラミックス回路基板、金属ベース板と同様の手法を用いて接合し、パワーモジュール構造体を製造し実施例1と同様の信頼性評価を行った。その結果、接合層の剥離等の問題は確認されなかった。
【0038】
[実施例3、4]
炭化珪素粉末C(市販品:平均粒子径10μm)818gの粉末(実施例3)、又は黒鉛粉末A(市販品:平均粒子径300μm)245gと炭化珪素粉末D(市販品:平均粒子径20μm)358gの混合粉末(実施例4)を、筒状黒鉛治具(内寸法:70mm×70mm×100mm)に充填し、プレス成形して気孔率が48%(実施例3)又は気孔率が35%(実施例4)の粉末成形体を製造した。この粉末成形体を治具に充填した状態で実施例1と同様の手法を用いて積層体とし、複合体を製造した。それらを用い、セラミックス回路基板として窒化アルミニウム基板:61mm×54mm×0.635mm(Cu回路:59mm×52mm×0.2mm)を使用したこと以外は、実施例1の応力緩和板Aの場合と同様にして応力緩和板C:59mm×52mm×1.0mm(実施例3)、応力緩和板D:59mm×52mm×2.0mm(実施例4)の製造、パワーモジュール構造体を製造し、信頼性評価を行った。その結果、接合層の剥離等は確認されなかった。
また、実施例1と同様にして、温度25℃〜150℃の熱膨張係数と温度25℃での熱伝導率、3点曲げ強度を測定したところ、応力緩和板Cの熱膨張係数11.5×10-6/K、熱伝導率は120W/(m・K)、3点曲げ強度は510MPa、応力緩和板Dの熱膨張係数は8.5×10-6/K、熱伝導率は250W/(m・K)、3点曲げ強度は110MPaであった。
【0039】
[実施例5〜11、比較例1]
(Ni−P:6μm)のめっき層のかわりに、表2に示す金属種と金属層厚みを有する金属層を形成、及び板厚を変えたこと、接合方法を変えたこと以外は、実施例1の応力緩和板Aを用いたのと同様にして応力緩和板及びパワーモジュール構造体を製造し、信頼性評価を行った。その結果、実施例5〜11では接合層の剥離等の問題は確認されなかったが、比較例1では応力緩和板の割れが確認された。
【0040】
[実施例12〜14、比較例2、3]
セラミックス多孔体として等方性黒鉛成形体A(市販品、気孔率:22体積%、寸法:70mm×70mm×100mm)を(実施例12)、等方性黒鉛成形体B(市販品、気孔率:21体積%、寸法:70mm×70mm×100mm)を(実施例13)、等方性黒鉛成形体C(市販品、気孔率:40体積%、寸法:70mm×70mm×100mm)を(実施例14)、押出黒鉛成形体A(市販品、気孔率:20体積%、寸法:70mm×70mm×100mm)を(比較例2)、等方性黒鉛成形体D(市販品、気孔率:18体積%、寸法:70mm×70mm×100mm)を(比較例3)、アルミニウム合金の代わりに純Alを用いたこと以外は実施例1と同様の手法で複合体を製造し、形状加工を59mm×52mm×2.0mm施した。その後、セラミックス回路基板として実施例3で用いた窒化アルミニウム基板を使用したこと、ベース板にアルミニウム板(100mm×80mm×4mm)を用いた(実施例14)こと以外は、応力緩和板Aの製造に準じて応力緩和板L、M、N、Z、AA及びパワーモジュール構造体を製造し、信頼性評価を行った。その結果、実施例12〜14では接合層の剥離等の問題は確認されなかったが、比較例2では応力緩和板の割れが確認され、比較例3では、はんだ接合層の剥離(はんだクラック)が確認された。
【0041】
また、実施例1と同様にして、温度25℃〜150℃の熱膨張係数と温度25℃での熱伝導率、3点曲げ強度を測定したところ、応力緩和板Lの熱膨張係数は9.2×10-6/K、熱伝導率は170W/(m・K)、強度は105MPa、応力緩和板Mの熱膨張係数は8.2×10-6/K、熱伝導率は250W/(m・K)、3点曲げ強度は65MPa、応力緩和板Nの熱膨張係数は13.2×10-6/K、熱伝導率は210W/(m・K)、3点曲げ強度は75MPa、応力緩和板Zの熱膨張係数は7.5×10-6/K、熱伝導率は350W/(m・K)、3点曲げ強度は25MPaで、応力緩和板AAの熱膨張係数は5.0×10-6/K、熱伝導率は200W/(m・K)、3点曲げ強度は80MPaあった。
【0042】
[実施例15]
窒化アルミニウム粉末(市販品:平均粒子径2μm)2300g、イットリア粉末(市販品:平均粒子径1μm)96g、成形バインダー(メチルセルロース)120g、及び純水120gの混合粉末を、面圧10MPaでプレス成形した後、更に成形圧力50MPaでCIP成形して円柱体(直径110mm×110mm)を製造した。これを、大気雰囲気中、温度600℃で2時間脱脂処理後、窒素雰囲気下、温度1780℃で4時間焼成して焼結体を製造した後、マシニングセンターでダイヤモンド砥石を用いて、気孔率が30%の無機多孔体(70mm×70mm×100mm)を製造した。
【0043】
実施例12と同様の手法にてこの無機多孔体を複合化したこと以外は、実施例12の応力緩和板Lと同様にして応力緩和板O(59mm×52mm×1.0mm)及びパワーモジュール構造体を製造し、信頼性評価を行った。その結果、接合部分の剥離等の問題は確認されなかった。また、実施例1と同様にして、温度25℃〜150℃の熱膨張係数と温度25℃での熱伝導率、3点曲げ強度を測定したところ、応力緩和板Oの熱膨張係数は7.6×10-6/K、熱伝導率は170W/(m・K)、3点曲げ強度は360MPaであった。
【0044】
[実施例16]
窒化珪素粉末(市販品:平均粒子径1μm)2760g、イットリア粉末(市販品:平均粒子径1μm)150g、及び酸化マグネシウム粉末(市販品:平均粒子径1μm)90gの混合物を用いたこと以外は、実施例15と同様にして円柱体(直径110mm×110mm)を製造した。これを、0.01MPaの窒素加圧雰囲気下、温度1600℃で4時間焼成して焼結体を製造した後、マシニングセンターでダイヤモンド砥石を用いて、気孔率が22%の無機多孔体(70mm×70mm×100mm)を製造した。
【0045】
実施例12と同様の手法にてこのセラミックス多孔体を複合化したこと以外は、実施例12の応力緩和板Lと同様にして応力緩和板P(59mm×52mm×1.0mm)及びパワーモジュール構造体を製造し、信頼性評価を行った。その結果、接合層の剥離等の問題は確認されなかった。また、実施例1と同様にして、温度25℃〜150℃の熱膨張係数と温度25℃での熱伝導率、3点曲げ強度を測定したところ、応力緩和板Pの熱膨張係数は7.3×10-6/K、熱伝導率は100W/(m・K)、3点曲げ強度は520MPaであった。
【0046】
[実施例17]
黒鉛粉末A(市販品:平均粒子径300μm)377g、炭化珪素粉末D(市販品:平均粒子径20μm)550gのセラミックス粉末、及びのアルミニウム粉末(市販品:平均粒子径20μm)343g、珪素粉末(市販品:平均粒子径7μm)47gの金属粉末をボールミルで15分混合し、筒状鉄製金型(内寸法:70mm×70mm×150mm)に混合粉末26gと黒鉛の離型処理を施した0.8mmtの離型板(SUS板)を交互に充填し、アルミニウム合金の融点以上の温度(600℃)に加熱後に圧力50MPaで加圧した状態で、一方向から凝固させてセラミックス粉末を70体積%含む複合体(70mm×70mm×2mm)を製造した。この複合体を実施例2の複合体と同様の手法で形状加工を行い、応力緩和板Q(57mm×50mm×1.0mm)を製造した。また、実施例1と同様にして、温度25℃〜150℃の熱膨張係数と温度25℃での熱伝導率、3点曲げ強度を測定したところ、応力緩和板Qの熱膨張係数は10.0×10-6/K、熱伝導率は200W/(m・K)、3点曲げ強度は100MPaであった。
【0047】
この応力緩和板Qを使用したことと、セラミックス回路基板として窒化アルミニウム基板:61×54×0.635mmt(Al回路:57×50×0.2mmt)を使用したこと以外は、実施例1と同様にしてパワーモジュール構造体を製造し、信頼性評価を行った。その結果、接合部分の剥離等の問題は確認されなかった。
【0048】
[実施例18]
黒鉛粉末A(市販品:平均粒子径300μm)296g、炭化珪素粉末D(市販品:平均粒子径20μm)433gのセラミックス粉末、及びのアルミニウム粉末(市販品:平均粒子径20μm)515g、珪素粉末(市販品:平均粒子径7μm)70gの金属粉末をボールミルで15分混合し筒状鉄製金型(内寸法:70mm×70mm×150mm)に充填し、アルミニウム合金の融点以上の温度(600℃)に加熱後に圧力50MPaで加圧した状態で、一方向から凝固させてセラミックス粉末を55体積%含む複合体(70mm×70mm×100mm)を製造した。実施例1と同様の手法を用いて、この複合体から応力緩和板R(57mm×50mm×1.0mm)を製造し、実施例17と同様の手法にてパワーモジュール構造体を製造し、信頼性評価を行った。その結果、接合部分の剥離等の問題は確認されなかった。また、実施例1と同様にして、温度25℃〜150℃の熱膨張係数と温度25℃での熱伝導率、3点曲げ強度を測定したところ、応力緩和板Rの熱膨張係数は11.9×10-6/K、熱伝導率は190W/(m・K)、3点曲げ強度は130MPaであった。
【0049】
[実施例19]
黒鉛粉末A(市販品:平均粒子径300μm)216g、炭化珪素粉末D(市販品:平均粒子径20μm)315gのセラミックス粉末、及びのアルミニウム粉末(市販品:平均粒子径20μm)687g、珪素粉末(市販品:平均粒子径7μm)94gの金属粉末をボールミルで15分混合し筒状鉄製金型(内寸法:70mm×70mm×150mm)に充填し、アルミニウム合金の融点以上の温度(600℃)に加熱後に圧力50MPaで加圧した状態で、一方向から凝固させてセラミックス粉末を40体積%含む複合体(70mm×70mm×100mm)を製造した。実施例1と同様の手法を用いて、この複合体から応力緩和板S(57mm×50mm×1.0mm)を製造し、実施例17と同様のセラミックス回路基板、実施例14と同様のベース板を使用してパワーモジュール構造体を製造し、信頼性評価を行った。その結果、接合部分の剥離等の問題は確認されなかった。また、実施例1と同様にして、温度25℃〜150℃の熱膨張係数と温度25℃での熱伝導率、3点曲げ強度を測定したところ、応力緩和板Sの線膨張係数は14.5×10-6/K、熱伝導率は180W/(m・K)、3点曲げ強度は140MPaであった。
【0050】
[比較例4]
黒鉛粉末A(市販品:平均粒子径300μm)162g、炭化珪素粉末D(市販品:平均粒子径20μm)236gのセラミックス粉末、及びのアルミニウム粉末(市販品:平均粒子径20μm)802g、珪素粉末(市販品:平均粒子径7μm)109gの金属粉末をボールミルで15分混合し筒状鉄製金型(内寸法:70mm×70mm×150mm)に充填し、アルミニウム合金の融点以上の温度(600℃)に加熱後に圧力50MPaで加圧した状態で、一方向から凝固させてセラミックス粉末を30体積%含む複合体(70mm×70mm×100mm)を製造した。実施例18と同様の手法を用いて、この複合体から応力緩和板AB(57mm×50mm×1.0mm)及びパワーモジュール構造体を製造し、信頼性評価を行った。その結果、接合部分にはんだ接合部分の剥離(はんだクラック)が確認された。また、実施例1と同様にして、温度25℃〜150℃の熱膨張係数と温度25℃での熱伝導率、3点曲げ強度を測定したところ、応力緩和板Qの熱膨張係数は17.0×10-6/K、熱伝導率は150W/(m・K)、3点曲げ強度は135MPaであった。
【0051】
[実施例20〜22]
温度25℃〜150℃の熱膨張係数が8.5×10−6/Kで、温度25℃での熱伝導率が230W/(m・K)である、銅−タングステン(組成(質量%):Cu/W=20/80)からなる金属板の板厚を表2のように変更した金属基板からなる応力緩和板を種々用意した。これらの応力緩和板を用いたこと以外は、実施例17の応力緩和板Qと同様にしてパワーモジュール構造体を製造し、信頼性評価を行った。その結果、接合部分の剥離等の問題は確認されなかった。
【0052】
[実施例23、24]
Cu/Wからなる金属板の代わりに、温度25℃の熱伝導率が240W/(m・K)である銅−モリブデン(組成(質量%):Cu/Mo=50/50)の金属基板(実施例23)を、熱伝導率が200W/(m・K)である、銅−モリブデン−銅(Cu/Mo/Cu)の3層積層板(各層の厚みは0.2mmの金属基板(実施例24)を応力緩和板として用いたこと以外は、実施例17と同様にしてパワーモジュール構造体を製造し、信頼性評価を行った。その結果、接合部分の剥離等の問題は確認されなかった。
【0053】
実施例・比較例の主要条件と結果を表1〜3に示す。
【0054】
【表1】



【0055】
【表2】



【0056】
【表3】



【符号の説明】
【0057】
1.セラミックス回路基板
2.応力緩和板
3.金属ベース板
4.金属回路
5.接合層
6.金属
7.セラミックス粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス回路基板の熱膨張係数をα(×10−6/K)、応力緩和板の熱膨張係数をβ(×10−6/K)、金属ベース板の熱膨張係数をγ(×10−6/K)とした時、(α+γ)/2−4<β<(α+γ)/2+4を満たす熱膨張係数を有し、板厚が0.5〜3.0mmで温度25℃の熱伝導率が100W/(m・K)以上、3点曲げ強度が50MPa以上の応力緩和板の表面に金属層を形成した後、セラミックス回路基板と金属ベース板との間にはんだ付け又はロウ付けしてなるパワーモジュール構造体。
【請求項2】
応力緩和板が、炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素、及び黒鉛の中から選ばれるセラミックス粉末1種類以上からなる多孔体、又は粉末成形体とアルミニウム又はアルミニウム合金を複合化した板状の金属含浸セラミックス基板であることを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール構造体。
【請求項3】
応力緩和板が、Cu,Ni,Mo,W、Co及びFeから選ばれた金属板、上記金属成分の少なくとも1種を含む合金板、又は上記金属板及び上記合金板から選ばれた2種以上で構成された積層板であることを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール構造体。
【請求項4】
下記の(1)又は(2)の工程を経て得られる板状の金属含浸セラミックス基板の表面に金属層を形成してなることを特徴とする請求項1又は2記載のパワーモジュール構造体に用いる応力緩和板の製造方法。
(1)炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素、及び黒鉛の中から選ばれるセラミックス粉末1種類以上からなる気孔率が10〜60体積%のブロック状の多孔体、又は粉末成形体とアルミニウム又はアルミニウム合金を溶湯鍛造法にて30MPa以上の圧力で複合化し、ブロック状の金属含浸セラミックス体を切断加工及び又は形状加工して板状の金属含浸セラミックス基板を作製する工程。
(2)炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素、及び黒鉛の中から選ばれるセラミックス粉末1種類以上からなる気孔率が10〜60体積%の板状の多孔体、又は粉末成形体を離型板を介して積層し、アルミニウム又はアルミニウム合金を溶湯鍛造法にて30MPa以上の圧力で含浸し板状の金属含浸セラミックス体を作製した後、形状加工して金属含浸セラミックス基板を作製する工程。
【請求項5】
下記の(3)又は(4)の工程を経て得られる板状の金属含浸セラミックス基板の表面に金属層を形成してなることを特徴とする請求項1又は2記載のパワーモジュール構造体に用いる応力緩和板の製造方法。
(3)炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素、及び黒鉛の中から選ばれる1種類以上のセラミックス粉末を40〜90体積%とアルミニウム又はアルミニウム合金を10〜60体積%混合した粉末を離型処理を施した金型に充填し、アルミニウム又はアルミニウム合金の融点以上の温度に加熱して、30MPa以上の圧力で加熱プレスしてブロック状に複合化し、切断加工及び又は外周加工により板状の金属含浸セラミックス基板を得る工程。
(4)炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化硼素、及び黒鉛の中から選ばれる1種類以上のセラミックス粉末を40〜90体積%とアルミニウム又はアルミニウム合金を10〜60体積%混合した粉末を離型処理を施した金型に充填し、アルミニウム又はアルミニウム合金の融点以上の温度に加熱して、30MPa以上の圧力で加熱プレスして板状の金属含浸セラミックス基板に複合化する工程。
【請求項6】
応力緩和板の表面の金属層が0.5〜20μmの厚みのNi、Co、Pd、Cu、Ag、Au、Pt、Snの中から選ばれる少なくとも1種以上の金属をめっきにより形成してなることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載のパワーモジュール構造体に用いる応力緩和板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−139000(P2011−139000A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79(P2010−79)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】