説明

ビアホールの加工方法

【課題】メタルコンタミを発生させることなくボンディングパッドに達するビアホールを効率よく形成することができるビアホールの加工方法を提供する。
【解決手段】基板の表面に複数のデバイスが形成されているとともにデバイスにボンディングパッドが形成されているウエーハに、基板の裏面側からパルスレーザー光線を照射してボンディングパッドに達するビアホールを形成するビアホールの加工方法であって、形成したいビアホールの直径をDとした場合、スポット径を0.75〜0.9Dに設定し、1パルス当たりのエネルギー密度を40〜60J/cm2に設定したパルスレーザー光線を基板の裏面側から照射し、基板の表面より所定量内側まで未貫通穴を形成する第1の加工穴形成工程と、1パルス当たりのエネルギー密度を25〜35J/cm2に設定したパルスレーザー光線を基板に形成された未貫通穴に照射し、基板にボンディングパッドに達するビアホールを形成する第2の加工穴形成工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に複数のデバイスが形成されているとともにデバイスにボンディングパッドが形成されているウエーハに、基板の裏面側からパルスレーザー光線を照射してボンディングパッドに達するビアホールを形成するビアホールの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の半導体チップを製造している。
【0003】
装置の小型化、高機能化を図るため、複数の半導体チップを積層し、積層された半導体チップのボンディングパッドを接続するモジュール構造が実用化されている。このモジュール構造は、半導体ウエーハを構成する基板の表面に複数のデバイスが形成されているとともに該デバイスにボンディングパッドが形成されており、このボンディングパッドが形成された箇所に基板の裏面側からボンディングパッドに達する細孔(ビアホール)を穿設し、このビアホールにボンディングパッドと接続するアルミニウム、銅等の導電性材料を埋め込む構成である。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2003−163323号公報
【0004】
上述した半導体ウエーハに形成されるビアホールは、一般にドリルによって形成されている。しかるに、半導体ウエーハに設けられるビアホールは直径が100〜300μmと小さく、ドリルによる穿孔では生産性の面で必ずしも満足し得るものではない。しかも、上記ボンディングパッドの厚さは1〜5μm程度であり、ボンディングパッドを破損することなくウエーハを形成するシリコン等の基板のみにビアホールを形成するためには、ドリルを極めて精密に制御しなければならない。
【0005】
上記問題を解消するために本出願人は、基板の表面に複数のデバイスが形成されているとともに該デバイスにボンディングパッドが形成されているウエーハに、基板の裏面側からパルスレーザー光線を照射してボンディングパッドに達するビアホールを効率よく形成するウエーハの穿孔方法を特願2005−249643号として提案した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように基板に形成されたビアホールにはアルミニウム、銅等の導電性材料が埋め込まれるが、ビアホールに直接アルミニウムや銅を埋め込むと、アルミニウムや銅の原子がシリコン等からなる基板の内部に拡散してデバイスの品質を低下させるという問題がある。従って、ビアホールの内面に絶縁膜を被覆した後に、アルミニウム、銅等の導電性材料を埋め込んでいる。
而して、上述したようにパルスレーザー光線を照射してビアホールを形成すると、シリコン等からなる基板を穿孔したレーザー光線は、僅かにボンディングパッドの裏面に照射されるので、ボンディングパッドを形成する金属の金属原子が飛散しメタルコンタミとなってビアホールの内面に付着する。ビアホールの内面にアルミニウムや銅の原子が付着すると、この原子がシリコン等からなる基板の内部に拡散してデバイスの品質を低下させるという問題がある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、メタルコンタミを発生させることなくボンディングパッドに達するビアホールを効率よく形成することができるビアホールの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、基板の表面に複数のデバイスが形成されているとともにデバイスにボンディングパッドが形成されているウエーハに、基板の裏面側からパルスレーザー光線を照射してボンディングパッドに達するビアホールを形成するビアホールの加工方法であって、
形成したいビアホールの直径をDとした場合、スポット径を0.75〜0.9Dに設定し、1パルス当たりのエネルギー密度を40〜60J/cm2に設定したパルスレーザー光線を基板の裏面側から照射し、基板の表面より所定量内側まで未貫通穴を形成する第1の加工穴形成工程と、
該第1の加工穴形成工程において設定したスポット径で、1パルス当たりのエネルギー密度を25〜35J/cm2に設定したパルスレーザー光線を基板に形成された未貫通穴に照射し、基板にボンディングパッドに達するビアホールを形成する第2の加工穴形成工程と、を含む、
ことを特徴とするビアホールの加工方法が提供される。
【0009】
上記第2の加工穴形成工程を実施した後に、スポット径を0.2〜0.3Dに設定し、1パルス当たりのエネルギー密度を3〜20J/cm2に設定したパルスレーザー光線を基板に形成されたビアホールの内周面に照射するトレパニング加工を実施することにより該内周面をクリーニングするクリーニング工程を実施することが望ましい。
上記第1の加工穴形成工程および第2の加工穴形成工程によって形成されるビアホールは内周面が基板の裏面側から表面に向けて先細りとなるテーパー面に形成され、該クリーニング工程は該テーパー面に沿ってパルスレーザー光線を照射するトレパニング加工を実施する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるビアホールの加工方法においては、第1の加工穴形成工程において照射するパルスレーザー光線がシリコン等の半導体基板を効率よく加工することができるエネルギー密度(1パルス当たり40〜60J/cm2)に設定されているので、効率よく未貫通穴を形成することができる。また、第1の加工穴形成工程において形成された未貫通穴の未貫通部は、第2の加工穴形成工程においてシリコン等の半導体基板は加工されるが金属は加工され難いエネルギー密度(1パルス当たり25〜35J/cm2)に設定されたパルスレーザー光線を照射することにより加工され、ボンディングパッドに達するビアホールが形成される。従って、本発明によるビアホールの加工方法においては、メタルコンタミを発生させることなくボンディングパッドに達するビアホールを効率よく形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明によるビアホールの加工方法について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0012】
図1には本発明によるビアホールの加工方法によって加工されるウエーハとしての半導体ウエーハ2の斜視図が示されている。図1に示す半導体ウエーハ2は、厚さが例えば100μmのシリコンによって形成された基板21の表面21aに格子状に配列された複数のストリート22によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス23がそれぞれ形成されている。この各デバイス23は、全て同一の構成をしている。デバイス23の表面にはそれぞれ複数のボンディングパッド24が形成されている。このボンディングパッド24は、アルミニウム、銅、金、白金、ニッケル等の金属材からなっており、厚さが1〜5μmに形成されている。
【0013】
上記半導体ウエーハ2には、基板21の裏面21b側からパルスレーザー光線を照射しボンディングパッド24に達するビアホールが穿設される。この半導体ウエーハ2の基板21にビアホールを穿設するには、図2に示すレーザー加工装置3を用いて実施する。図2に示すレーザー加工装置3は、被加工物を保持するチャックテーブル31と、該チャックテーブル31上に保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段32を具備している。チャックテーブル31は、被加工物を吸引保持するように構成されており、図示しない加工送り機構によって図2において矢印Xで示す加工送り方向に移動せしめられるとともに、図示しない割り出し送り機構によって矢印Yで示す割り出し送り方向に移動せしめられるようになっている。
【0014】
上記レーザー光線照射手段32は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング321の先端に装着された集光器322からパルスレーザー光線を照射する。図示のレーザー加工装置3は、上記レーザー光線照射手段32を構成するケーシング321の先端部に装着された撮像手段33を備えている。この撮像手段33は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を図示しない制御手段に送る。
【0015】
以下、上述したレーザー加工装置3を用いて上記半導体ウエーハ2にビアホールを形成するビアホールの加工方法について説明する。
先ず、図2に示すレーザー加工装置3のチャックテーブル31上に半導体ウエーハ2の表面2aを載置し、チャックテーブル31上に半導体ウエーハ2を吸引保持する。従って、半導体ウエーハ2は、裏面21bを上側にして保持される。
【0016】
上述したように半導体ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル31は、図示しない加工送り機構によって撮像手段33の直下に位置付けられる。チャックテーブル31が撮像手段33の直下に位置付けられると、チャックテーブル31上の半導体ウエーハ2は、所定の座標位置に位置付けられた状態となる。この状態で、チャックテーブル31に保持された半導体ウエーハ2に形成されている格子状のストリート22がX方向とY方向に平行に配設されているか否かのアライメント作業を実施する。即ち、撮像手段33によってチャックテーブル31に保持された半導体ウエーハ2を撮像し、パターンマッチング等の画像処理を実行してアライメント作業を行う。このとき、半導体ウエーハ2のストリート22が形成されている基板21の表面21aは下側に位置しているが、撮像手段33が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、基板21の裏面21bから透かしてストリート22を撮像することができる。
【0017】
上述したアライメント作業を実施することにより、チャックテーブル31上に保持された半導体ウエーハ2は、所定の座標位置に位置付けられたことになる。なお、半導体ウエーハ2の基板21の表面21aに形成されたデバイス23に形成されている複数のボンディングパッド24は、その設計上の座標位置が予めレーザー加工装置3の図示しない制御手段に格納されている。
【0018】
上述したアライメント作業を実施したならば、図3に示すようにチャックテーブル31を移動し、半導体ウエーハ2の基板21に所定方向に形成された複数のデバイス23における図3において最左端のデバイス23を集光器322の直下に位置付ける。そして、図3において最左端のデバイス23に形成された複数のボンディングパッド24における最左端のボンディングパッド24を集光器322の直下に位置付ける。
【0019】
次に、形成したいビアホールの直径をDとした場合、スポット径を0.75〜0.9Dに設定し、1パルス当たりのエネルギー密度を40〜60J/cm2に設定したパルスレーザー光線を基板21の裏面側から照射し、基板21の表面より所定量内側まで未貫通穴を形成する第1の加工穴形成工程を実施する。即ち、レーザー光線照射手段32の集光器322から照射するパルスレーザー光線のエネルギー密度をシリコン等の半導体基板を効率よく加工することができるエネルギー密度(1パルス当たり40〜60J/cm2)に設定し、基板21の裏面21b側から所定パルス照射する。
なお、第1の加工穴形成工程の加工条件は、次のとおり設定されている。
レーザー光線の光源 :YVO4レーザーまたはYAGレーザー
波長 :355nm
1パルス当たりのエネルギー密度:40〜60J/cm2
スポット径 :形成したいビアホールの直径をDとした場合、0.
75〜0.9D
【0020】
上記加工条件においては、半導体ウエーハ2の基板21がシリコンによって形成されている場合は、図3に示すように上記スポット径のスポットS1を基板21の裏面21b(上面)に合わせることにより、パルスレーザー光線1パルスによって3μmの深さの孔を形成することができる。従って、パルスレーザー光線を30パルス照射することにより、図4に示すように基板21には裏面21bから深さが90μmの未貫通穴25aが形成される。この結果、シリコンからなる基板21の厚さが100μmの場合には、基板21の表面21a側に厚さが10μmの未貫通部211が残存する。この第1の加工穴形成工程において照射するパルスレーザー光線は、シリコン等の半導体基板を効率よく加工することができるエネルギー密度(1パルス当たり40〜60J/cm2)に設定されているので、効率よく未貫通穴25aを形成することができる。
【0021】
上述したように第1の加工穴形成工程を実施し、半導体ウエーハ2の基板21に未貫通穴25aを形成したならば、第1の加工穴形成工程において設定したスポット径で、1パルス当たりのエネルギー密度を25〜35J/cm2に設定したパルスレーザー光線を基板21に形成された未貫通穴25aに照射し、基板21にボンディングパッド24に達するビアホールを形成する第2の加工穴形成工程を実施する。即ち、レーザー光線照射手段32の集光器322から照射するパルスレーザー光線のエネルギー密度をシリコン等の半導体基板は加工されるが金属は加工され難いエネルギー密度(1パルス当たり25〜35J/cm2)に設定し、基板21に形成された未貫通穴25aに照射する。
なお、第2の加工穴形成工程の加工条件は、次のとおり設定されている。
レーザー光線の光源 :YVO4レーザーまたはYAGレーザー
波長 :355nm
1パルス当たりのエネルギー密度:25〜35J/cm2
スポット径 :形成したいビアホールの直径をDとした場合、0.
75〜0.9D
【0022】
上記加工条件においては、半導体ウエーハ2の基板21がシリコンによって形成されている場合は、図3に示すように上記スポット径のスポットS1を基板21の裏面21b(上面)に合わせることにより、パルスレーザー光線1パルスによって2μmの深さの孔を形成することができる。従って、パルスレーザー光線を10パルス照射することにより、第1の加工穴形成工程によって形成された未貫通穴25aの未貫通部211がレーザー加工され、図5に示すようにボンディングパッド24に達するビアホール25が形成される。
このようにして形成されたビアホール25は、内周面が基板21の裏面21b側から表面21aに向けて先細りとなるテーパー面251に形成される。なお、シリコンからなる基板21の厚さが100μmの場合には、ビアホール25のテーパー面251は裏面21b側の直径がφ100μmの場合、表面21a側の直径がφ60μm程度となる。
【0023】
上述した第2の加工穴形成工程を実施すると、穿孔したパルスレーザー光線は僅かにボンディングパッド24の裏面に照射される。第2の加工穴形成工程において照射されるパルスレーザー光線は、上述したようにシリコン等の半導体基板は加工されるが金属は加工され難いエネルギー密度(1パルス当たり25〜35J/cm2)に設定されているが、ボンディングパッド24を形成する金属の金属原子が僅かに飛散しメタルコンタミとなってビアホール25の内周面であるテーパー面251に静電気力により付着することがある。このビアホール25のテーパー面251に付着したメタルコンタミは、上述したように金属原子が基板21の内部に拡散してデバイス23の品質を低下させるので、除去することが望ましい。
【0024】
本実施形態においては、基板21に形成されたビアホール25の内周面であるテーパー面251にパルスレーザー光線を照射し、上記第2の加工穴形成工程においてビアホール25のテーパー面251をクリーニングするクリーニング工程を実施する。このクリーニング工程は、テーパー面251に沿ってパルスレーザー光線を照射するトレパニング加工を実施する。
【0025】
ここで、トレパニング加工を実施するためのレーザー光線照射手段について、図6を参照して説明する。
上記図2に示すレーザー加工装置3におけるレーザー光線照射手段32は、上記ケーシング321内に配設されたパルスレーザー光線発振手段4と、伝送光学系5と、パルスレーザー光線発振手段4が発振したレーザー光線の光軸を加工送り方向(X軸方向)に偏向する第1の音響光学偏向手段61と、レーザー光線発振手段4が発振したレーザー光線の光軸を割り出し送り方向(Y軸方向)に偏向する第2の音響光学偏向手段62を具備している。また、上記集光器322は、上記第1の音響光学偏向手段61および第2の音響光学偏向手段62を通過したパルスレーザー光線を下方に向けて方向変換する方向変換ミラー322aと、該方向変換ミラー322aによって方向変換されたレーザー光線を集光する集光レンズ322bを具備している。
【0026】
上記パルスレーザー光線発振手段4は、パルスレーザー光線発振器41と、これに付設された繰り返し周波数設定手段42とから構成されている。上記伝送光学系5は、ビームスプリッタの如き適宜の光学要素を含んでいる。
【0027】
上記第1の音響光学偏向手段61は、レーザー光線発振手段4が発振したレーザー光線の光軸を加工送り方向(X軸方向)に偏向する第1の音響光学素子611と、該第1の音響光学素子611に印加するRF(radio frequency)を生成する第1のRF発振器612と、該第1のRF発振器612によって生成されたRFのパワーを増幅して第1の音響光学素子611に印加する第1のRFアンプ613と、第1のRF発振器612によって生成されるRFの周波数を調整する第1の偏向角度調整手段614と、第1のRF発振器612によって生成されるRFの振幅を調整する第1の出力調整手段615を具備している。上記第1の音響光学素子611は、印加されるRFの周波数に対応してレーザー光線の光軸を偏向する角度を調整することができるとともに、印加されるRFの振幅に対応してレーザー光線の出力を調整することができる。なお、上記第1の偏向角度調整手段614および第1の出力調整手段615は、図示しない制御手段によって制御される。
【0028】
上記第2の音響光学偏向手段62は、レーザー光線発振手段4が発振したレーザー光線の光軸を加工送り方向(X軸方向)と直交する割り出し送り方向に偏向する第2の音響光学素子621と、該第2の音響光学素子621に印加するRFを生成する第2のRF発振器622と、該RF発振器622によって生成されたRFのパワーを増幅して第2の音響光学素子621に印加する第2のRFアンプ623と、第2のRF発振器622によって生成されるRFの周波数を調整する第2の偏向角度調整手段624と、第2のRF発振器622によって生成されるRFの振幅を調整する第2の出力調整手段625を具備している。上記第2の音響光学素子621は、印加されるRFの周波数に対応してレーザー光線の光軸を偏向する角度を調整することができるとともに、印加されるRFの振幅に対応してレーザー光線の出力を調整することができる。なお、上記第2の偏向角度調整手段624および第2の出力調整手段625は、図示しない制御手段によって制御される。
【0029】
また、図示の実施形態におけるレーザー光線照射手段32は、上記第1の音響光学素子611にRFが印加されない場合に、図6において1点差線で示すように第1の音響光学素子611によって偏向されないレーザー光線を吸収するためのレーザー光線吸収手段63を具備している。
【0030】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射手段32は以上のように構成されており、第1の音響光学素子611および第2の音響光学素子621にRFが印加されていない場合には、パルスレーザー光線発振手段4から発振されたパルスレーザー光線は、伝送光学系5、第1の音響光学素子611、第2の音響光学素子621を介して図6において1点鎖線で示すようにレーザー光線吸収手段63に導かれる。一方、第1の音響光学素子611に例えば10kHzの周波数を有するRFが印加されると、パルスレーザー光線発振手段4から発振されたパルスレーザー光線は、その光軸が図6において実線で示すように偏向され集光点Paに集光される。また、第1の音響光学素子611に例えば20kHzの周波数を有するRFが印加されると、パルスレーザー光線発振手段4から発振されたパルスレーザー光線は、その光軸が図6において破線で示すように偏向され、上記集光点Paから加工送り方向(X軸方向)に所定量変位した集光点Pbに集光される。なお、第2の音響光学素子621に所定周波数を有するRFが印加されると、パルスレーザー光線発振手段4から発振されたパルスレーザー光線は、その光軸を加工送り方向(X軸方向)と直交する割り出し送り方向(Y軸方向:図6において紙面に垂直な方向)に所定量変位した集光点に集光される。
【0031】
従って、第1の音響光学偏向手段61および第2の音響光学偏向手段62を作動してパルスレーザー光線の光軸をX軸方向とY軸方向に順次偏向させることにより、図7に示すようにパルスレーザー光線のスポットSを環状に移動するトレパニング加工を実施することができる。
【0032】
上述したレーザー光線照射手段32を用いて実施するクリーニング工程の加工条件は、次のとおり設定されている。
レーザー光線の光源 :YVO4レーザーまたはYAGレーザー
波長 :355nm
1パルス当たりのエネルギー密度:3〜20J/cm2
スポット径 :形成したいビアホールの直径をDとした場合、0.
2〜0.3D
【0033】
上記加工条件によってクリーニング工程を実施するには、図8に示すように上記レーザー光線照射手段32の集光器322から照射されるパルスレーザー光線のスポットS2が基板21に形成されたビアホール25の内周面であるテーパー面251に位置付けられるように調整する。そして、レーザー光線照射手段32およびチャックテーブル36を作動して上記図7に示すようにトレパニング加工を実施する。このとき、パルスレーザー光線のスポットS2の中心(ガウシアン分布がピークとなる位置)がボンディングパッド24に当たらないようにすることが重要である。この結果、基板21に形成されたビアホール25の内周面であるテーパー面251に沿ってパルスレーザー光線が照射され、テーパー面251に静電気力により付着している僅かなメタルコンタミは除去される。なお、このクリーニング工程において照射するパルスレーザー光線のエネルギー密度は小さいため、基板21を加工することはない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明によるビアホールの加工方法によって加工されるウエーハとしての半導体ウエーハの斜視図。
【図2】本発明によるビアホールの加工方法を実施するためのレーザー加工装置の要部斜視図。
【図3】本発明によるビアホールの加工方法における第1の加工穴形成工程の説明図。
【図4】本発明によるビアホールの加工方法における第1の加工穴形成工程が実施されることによって未貫通穴が形成された半導体ウエーハの一部拡大断面図。
【図5】本発明によるビアホールの加工方法における第2の加工穴形成工程が実施されることによってビアホールが形成された半導体ウエーハの一部拡大断面図。
【図6】図2に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段の構成ブロック図。
【図7】図6に示すレーザー光線照射手段により実施するトレパニング加工の説明図。
【図8】本発明によるビアホールの加工方法におけるクリーニング工程の説明図。
【符号の説明】
【0035】
2:半導体ウエーハ
21:半導体ウエーハの基板
22:ストリート
23:デバイス
24:ボンディングパッド
25:ビアホール
251:テーパー面(内周面)
3:レーザー加工装置
31:レーザー加工装置のチャックテーブル
32:レーザー光線照射手段
332:集光器
33:撮像手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に複数のデバイスが形成されているとともにデバイスにボンディングパッドが形成されているウエーハに、基板の裏面側からパルスレーザー光線を照射してボンディングパッドに達するビアホールを形成するビアホールの加工方法であって、
形成したいビアホールの直径をDとした場合、スポット径を0.75〜0.9Dに設定し、1パルス当たりのエネルギー密度を40〜60J/cm2に設定したパルスレーザー光線を基板の裏面側から照射し、基板の表面より所定量内側まで未貫通穴を形成する第1の加工穴形成工程と、
該第1の加工穴形成工程において設定したスポット径で、1パルス当たりのエネルギー密度を25〜35J/cm2に設定したパルスレーザー光線を基板に形成された未貫通穴に照射し、基板にボンディングパッドに達するビアホールを形成する第2の加工穴形成工程と、を含む、
ことを特徴とするビアホールの加工方法。
【請求項2】
該第2の加工穴形成工程を実施した後に、スポット径を0.2〜0.3Dに設定し、1パルス当たりのエネルギー密度を3〜20J/cm2に設定したパルスレーザー光線を基板に形成されたビアホールの内周面に照射するトレパニング加工を実施することにより該内周面をクリーニングするクリーニング工程を実施する、請求項1記載のビアホールの加工方法。
【請求項3】
該第1の加工穴形成工程および該第2の加工穴形成工程によって形成されるビアホールは内周面が基板の裏面側から表面に向けて先細りとなるテーパー面に形成され、該クリーニング工程は該テーパー面に沿ってパルスレーザー光線を照射するトレパニング加工を実施する、請求項1又は2記載のビアホールの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−10489(P2008−10489A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176703(P2006−176703)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】