説明

プラズマディスプレイパネルの製造方法

【課題】PDPの保護層の膜特性からエージング処理を行う時間を決定することで、適切なエージング処理を実施できるようにする。
【解決手段】間に放電空間を形成するように配置した第1基板および第2基板と、前記第2基板上に形成された複数の表示電極と、前記表示電極を覆うように前記第2基板上に形成された誘電体層と、前記誘電体層上に形成された保護層とを有するプラズマディスプレイパネルの製造方法において、前記保護層は複数の層が積層された構造であると仮定して、前記保護層の表層の膜特性を測定するステップと、前記膜特性からエージング時間を決定するステップと、前記エージング時間にわたってエージングを行うステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PDPは薄型、大画面の視認性に優れた表示デバイスであり、AC型で面放電型のPDPが主流を占めるようになっている。このようなPDPは、走査電極および維持電極などを形成した前面基板と、アドレス電極、隔壁および蛍光体層などを形成した背面基板とを対向配置して周囲を封着し、基板間に形成される放電空間に放電ガスを封入して構成されている。PDPの製造工程では、PDPの全面を安定に放電させるためにエージング工程が導入されている。エージング工程では、動作駆動時よりも高い電圧を走査電極と維持電極とに交互に印加して放電を発生させるエージングを行うことで、放電特性の安定化が図られている。このようなエージングの終了時点を決定する方法として、例えば特許文献1には、PDPに印加される電流波形の変化を監視して電流波形の変化によりエージング終了時点を判断することが提案されている。
【特許文献1】特開2003−229062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されているPDPのエージング処理方法では、パネル全体の電流変化を観測することによりエージング終了時点を判断するものであり、パネル内の特性バラツキを考慮して判定することは困難である。特にこの課題はパネルサイズが大型化するとより顕著に現れる。
【0004】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、PDPの保護層の膜特性からエージング処理を行う時間を決定することで、適切なエージング処理を実施できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、間に放電空間を形成するように配置した第1基板および第2基板と、前記第2基板上に形成された複数の表示電極と、前記表示電極を覆うように前記第2基板上に形成された誘電体層と、前記誘電体層上に形成された保護層とを有するプラズマディスプレイパネルの製造方法において、前記保護層は複数の層が積層された構造であると仮定して、前記保護層の表層の膜特性を測定するステップと、前記膜特性からエージング時間を決定するステップと、前記エージング時間にわたってエージングを行うステップとを有することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、適切なエージング処理を行うことができ、安定した品質のPDPを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、PDPの構造についてAC(交流)型カラーPDPの一例を示す断面図である図1を用いて説明する。図1(a)、図1(b)は互いに直交する面で切ったPDPの断面を示している。
【0008】
図1に示すように、ガラス基板からなる背面基板1(第1基板)上にはストライプ状のアドレス電極2が形成され、それを覆うように誘電体層3が形成されている。誘電体層3上には、隣り合うアドレス電極2の中間に位置するようにストライプ状の隔壁4が形成され、隣り合う隔壁4の間には、赤色(R)、緑色(G)または青色(B)に発光する蛍光体層5が形成されている。隔壁4の形状としては格子状でもよい。またガラス基板からなる前面基板(第2基板)6上には、アドレス電極2と直交するように透明電極7とバス電極8からなる表示電極11が設けられ、表示電極11を覆うように誘電体層9が形成されている。さらに、誘電体層9上にマグネシウム(Mg)を主成分とする酸化膜よりなる保護層10が形成されている。PDPは、このような背面基板1と前面基板6とを対向配置させて周囲をフリットガラスで封着し、基板間に形成される放電空間12にネオン(Ne)、キセノン(Xe)などの希ガスを封入して構成されている。
【0009】
表示を行う最小単位である放電セルは、2本の表示電極11と1本のアドレス電極2との立体交差部に形成される。放電セル内の2本の表示電極のうち、一方は走査電極であり他方は維持電極である。そして、走査電極に走査パルスを印加するとともにアドレス電極2にアドレスパルスを印加してアドレス放電を発生させることにより、点灯させる放電セルを選択する動作を走査電極毎に順次行った後、走査電極と維持電極に交互に維持パルスを印加することにより維持放電を発生させ、この維持放電によって生じる真空紫外線により、蛍光体層5の蛍光体を励起発光させて前面基板6を透過する光でカラー画像表示を行う。
【0010】
続いて、PDPの製造方法について説明する。始めに、表示電極11やアドレス電極2のような電極を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法、スクリーン印刷法、コーティング法、フィルムラミネート法などによってガラス基板上に電極材料の膜を形成し、これをフォトリソグラフィー法によってパターニングする方法と、スクリーン印刷法あるいはオフセット印刷法によりパターニングする方法とがある。
【0011】
また、誘電体層3、9を形成する方法として、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、ダイコーティング法、フィルムラミネート法などが用いられる。また、隔壁4を形成する方法としては、コーティング法やスクリーン印刷法などにより、基板上に隔壁4用の材料で隔壁材料膜を形成し、隔壁材料膜上にフォトリソグラフィー法を用いてサンドブラストに耐性があるパターンをフォトレジスト膜で形成した後に、フォトレジスト膜をマスクとして不要部分を削り取り、隔壁4の部分のみを残すサンドブラスト法がある。隔壁4を形成する他の方法として、基板上に隔壁4用の材料の感光性ペーストをコーティング法により成膜後、フォトリソグラフィー法により直接隔壁4をパターニング形成する方法、隔壁パターンをマスク化したスクリーンを用い、隔壁4用の材料のペーストまたはインクで印刷を複数回繰り返し、乾燥させて隔壁4を形成するスクリーン印刷法などがある。また、蛍光体層5を形成する方法としては、ディスペンサーによる塗布法や、スクリーン印刷法により隔壁4の間に各色の蛍光体ペーストを選択的に充填する方法などがあり、通常蛍光体ペースト塗布後に乾燥工程、焼成工程を経て蛍光体層5が形成される。
【0012】
誘電体層9上に保護層10を形成する方法としては、スクリーン印刷法、スパッタ法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法、有機金属原料を用いた熱CVD法(化学的気相成長法)などがある。現在では、Mgを主成分とする金属酸化物ペレットからなる蒸着源に、電子銃を用いて発生させた大電流の電子ビームを照射して蒸着源を加熱蒸発させ、酸素雰囲気中でMgを主成分とする金属酸化物であるMgO薄膜を形成させる電子ビーム蒸着法が最も広く用いられている。
【0013】
このような方法で成膜したMgO薄膜は通常の場合、三角柱や四角柱などの柱状構造をしている。蒸着室内の圧力、酸素流量、基板温度などの成膜条件によって前記柱状構造の形状は変化することが知られている。また、柱状構造のために電子ビーム蒸着法で形成したMgO薄膜の表面は段差が大きく、滑らかではない。さらに結晶成長の程度によっては成膜初期段階と最終段階で結晶粒径も変化し、それにともなって屈折率、消衰係数といったMgO薄膜の物理的特性、すなわち膜特性が深さ方向(膜の厚み方向)に変化する場合がある。
【0014】
次に、本発明の一実施の形態におけるPDPの製造方法について、図2に示すPDPの製造フローを示す図を用いて説明する。
【0015】
前面基板6上に透明電極7、バス電極8を形成する(ステップA.1)。次に、透明電極7、バス電極8を覆うように前面基板6上に誘電体層9を形成する(ステップA.2)。次に、保護層10を誘電体層9上に形成する(ステップA.3)。その後、保護層10の表層の膜特性として、空隙率および膜厚を分光エリプソメータにより測定する(ステップA.4)。この測定は、例えば図3に示すように、前面基板6において十字状に設定した5つのポイントP1〜P5で行う。
【0016】
次に測定により得られた保護層10の表層の膜厚および空隙率から、エージング工程においてPDPの特性が安定化するまでに必要な処理時間(エージング時間)を、図4のデータを用いて内挿法または外挿法により算出する(ステップA.5)。ここで図4は、予め実験により得られたデータであり、維持パルスの高さ(印加電圧)を210Vとしてエージングを行うとき、保護層10の表層の膜厚とエージング時間との関係を「100−空隙率」に相当する保護層10の表層の体積百分率をパラメータとして示している。体積百分率は30%、50%、70%である。
【0017】
また、背面基板1上にアドレス電極2を形成する(ステップB.1)。次に、アドレス電極2を覆うように背面基板1上に誘電体層3を形成する(ステップB.2)。次に、誘電体層3上に隔壁4を形成する(ステップB.3)。その後、隣り合う隔壁4の間にB、R、Gそれぞれの色を発光する蛍光体層5を塗布形成する(ステップB.4)。
【0018】
次に、ステップB.1〜ステップB.4を行って各構成部材を形成した背面基板1の周囲にガラスフリットを塗布し乾燥させた後、その背面基板1とステップA.1〜ステップA.4を行って各構成部材を形成した前面基板6とを対向配置して加熱することにより封着する。続いて、基板間に形成された放電空間12を排気した後、XeガスとNeガスとからなる混合ガスを所望の圧力になるまで封入する(ステップC.1)。
【0019】
次に、維持パルスの高さを210Vとして、ステップA.5で求めたエージング時間にわたってエージングを行う(ステップC.2)。その後、PDPの表示品質検査を行う(ステップC.3)。なお、ステップC.2における維持パルスの高さは図4のデータを得たときの実験条件に合わせて設定すればよい。
【0020】
以上のように図2に示したステップを経ることにより、PDPが製造される。
【0021】
次に、ステップA.4における測定について図5〜図7を用いて説明する。図5はこの測定で用いる測定装置の一例を示す概略構成図であり、図6は測定のフローを示す図であり、図7は図6のステップS3で設定される初期光学モデルを示す図である。
【0022】
図5に示すように、本実施の形態において用いる測定装置21は、測定対象の基板20を保持するステージ22と、X、Y、Z軸の駆動系を備えることで、基板20上の任意の位置に移動して測定することが可能な回転補償子型の分光エリプソメータ23と、解析用PC(パーソナルコンピュータ)24と、データ保存用PC25とを備えている。なお、基板20は、前面基板6上に透明電極7、バス電極8、誘電体層9および保護層10を形成したものである。
【0023】
分光エリプソメータ23はXe光源、光ファイバーによるライトガイド、偏光子、回転補償子、検光子、ホログラフィック回折格子およびフォトダイオードアレイから構成されている。Xe光源には多くの波長の光が含まれるいわゆる白色光であり、さらにランダムに偏光している。この白色光はライトガイドを通り、特定の偏光軸の光のみを透過させる偏光子によって45°の直線に偏光される。一般に、偏光された光は偏光成分の電界ベクトルがEp(入射面に平行で光軸と垂直に交わる軸(P軸)の成分)とEs(P軸に垂直な軸(S軸)の成分)からなっている。そして、次に、回転補償子によってS軸またはP軸の位相を変えることにより直線偏光、楕円偏光、円偏光、楕円偏光、直線偏光へと連続的に変化する。回転補償子は20〜25回転/秒で光軸に沿って回転し、測定値の精度を向上させるために、100〜500回転させている。
【0024】
上述した方法でMgO薄膜からなる保護膜10を形成した前面基板6を測定対象の基板20として、測定装置21のステージ22上に載置し、分光エリプソメータ23の偏光子と回転補償子を通過した位相が連続的に変化する直径約2mmの光束を、基板20のMgO薄膜に基板20の鉛直方向からθ(例えば60°)の角度で照射する。照射された光束はMgO薄膜によって再びS偏光、P偏光の位相差とそれらの反射振幅比が変化する。この基板20によって反射された光を特定の偏光軸の光だけを透過させる検光子を経て、さらにホログラフィック回折格子により、250nm〜800nmの範囲にわたって1nmの間隔で分光する。次に、フォトダイオードアレイによって各波長における光の強度を連続的に検出する。ここで、各波長において光強度と補償子回転角度との関係からサンプルによる反射P偏光、S偏光の位相差Δ、反射振幅比ψを算出でき、Δ、ψの波長分散波形が得られる。
【0025】
分光エリプソメータ23が利用する分光エリプソメトリーでは、多層膜構造におけるΔとψの波長分散波形は、各層の膜厚、屈折率、消衰係数の関数なので、得られたΔ、ψから直接多層膜構造における各層の光学定数、膜厚を求めることはできない。そのために、多層膜構造における各層の膜厚や屈折率、消衰係数の組み合わせモデルである光学モデルを設定し、物質の誘電率の波長依存性を示す式である分散式からフィッティングを行い、解析的に多層膜構造における各層の屈折率、消衰係数、膜厚を算出することになる。すなわち、光学モデルから一義的に計算できるΔとψの波長分散波形と、測定によって得られたΔ、ψの波長分散波形とのフィッティング誤差関数から、誤差が最小になったモデルの膜厚、屈折率、消衰係数を算出する。そして、近赤外から紫外線領域では、分散式における誘電率は材料の構成原子の結合様式から決定されるのであるが、分散式として、調和振動子を基にした計算式、量子力学を基にした計算式、実験的な経験式等が知られており、これらは通常2つ以上のパラメータを含んでいる。
【0026】
次に、測定装置21を用いた保護層10の表層部分の膜特性測定について、図6および図7により数値例を用いて具体的な測定の手順を説明する。
【0027】
図6に示すように、最初にステージ22上に設置された基板20の分光測定を行う(ステップS1)。次いで、分光測定により得られた光強度から前述の位相差Δ、反射振幅比ψの波長分散波形を算出する(ステップS2)。続いて、光学モデル構築ステップに入り、基板20の製造プロセス等を考慮して光学モデルを設定する(ステップS3)。光学モデル構築ステップで設定される光学モデルの一例を図7に示している。図7の光学モデルにおいて、基板31は誘電体層9に対応しており、基板31には誘電体層9の光学定数を設定する必要があるが、これには前面基板6上に誘電体層9のみを形成した状態で、既知の手法により予め光学定数を測定しておくことが望ましく、保護層10を測定する分光エリプソメータ23を用いて誘電体層9の光学定数を測定することがより望ましい。なお、図7に示す初期の光学モデルでは、基板31(誘電体層9)上にMgO層32が形成され、その上に混合層33が形成されている。MgO層32および混合層33は保護層10に対応するもので、混合層33は保護層10の表層に対応するものである。ここで、MgO層32は誘電率が分散式1となるMgOが900nmの厚みで形成された層とし、混合層33は構成材料であるMgOと空気との混合割合を体積百分率で表して、MgO50%と空気50%とが混合されて50nmの厚みで形成された層とする。そして、最初に設定する光学モデルでは、光学定数は既知の数値を用い、必要に応じて修正する。
【0028】
引き続き、光学モデル構築ステップで設定した光学モデルから分散式を用いてΔ、ψの波長分散波形を作成し、実測値との比較を行う(ステップS4)。例えば、調和振動子を基にした計算式から分散式を構成する。
【0029】
また、保護層10の表層においてはラフネスおよび界面、あるいは膜の不均質や不連続性を実効的な均質膜に置き換えて解析する有効媒質近似を用い、表面ラフネスの誘電関数を計算する。これらの分散式、光学モデルにおいて設定した膜厚、表層におけるMgOと空気との混合割合からΔ、ψの波長分散波形が算出される。このようにして得たシミュレーション波形と実測波形のフィッティング誤差を算出し、評価する(ステップS5)。
【0030】
ここでのフィッティング誤差が大きければ、再度光学モデルを設定し、膜厚、屈折率、消衰係数の設定を変更する(ステップS6−1)。変更した光学モデルにおいて、再度、シミュレーション波形と実測値との比較を行う(ステップS4)。このようにして、ステップS6−1で光学モデルの設定を変更してステップS4、ステップS5を行うフローを繰り返し行い、フィッティング誤差が小さく、シミュレーション波形と実測波形がよく一致すると判断されると、そのときの光学モデルを採用する(ステップS6−2)。
【0031】
次に、ステップS6−2において採用した光学モデルから得られた、保護層10の表層の膜厚、空隙率のデータから、エージング工程においてPDPの特性が安定化するまでに必要な処理時間(エージング時間)を、図4のデータを用いて内挿法または外挿法により算出する(ステップS7)。なお、このステップ7は図2に示したステップA.5のステップであり、図6においてステップ7以外のステップS1〜S6−2が図2のステップA.4に相当する。
【0032】
次に、本実施の形態によってPDPを製造するときの実施例について説明する。
【0033】
前面基板6としての対角50インチ(1270mm)、厚さ3mmのガラス基板上に透明電極7、バス電極8を形成した後、ダイコート法により膜厚40μmの誘電体層9を形成した(ステップA.1、ステップA.2)。次に、誘電体層9上に保護層10としての膜厚1μmのMgO薄膜を電子ビーム蒸着法により形成した(ステップA.3)。
【0034】
次に、MgO薄膜の表層部分の膜特性として空隙率、膜厚を分光エリプソメータ23により測定した。この測定は、図3に示すように前面基板6において十字状に設定した5つのポイントP1〜P5において行った。ポイントP1は前面基板6の中央の位置であり、ポイントP2、P3、P4、P5については、それぞれの基板端部から20mmだけ内側の位置において測定を行った。この測定結果の一例として、保護層10の表層の膜特性は、ポイントP1では体積百分率48%、膜厚37nmであり、ポイントP2では体積百分率46%、膜厚45nmであり、ポイントP3では体積百分率48%、膜厚35nmであり、ポイントP4では体積百分率42%、膜厚32nmであり、ポイントP5では体積百分率51%、膜厚41nmであった(ステップA.4)。ここで、体積百分率はMgOの体積百分率であり「100−空隙率」に相当する。
【0035】
次に、測定した表層の膜厚、体積百分率のデータから、図4のデータを用いてエージング時間を算出した。最も長いエージング時間を必要とする箇所はポイントP4であり、計算によって求められたエージング時間は3時間であった(ステップA.5)。
【0036】
次に、背面基板1としての対角50インチ(1270mm)、厚さ3mmのガラス基板上にアドレス電極2、誘電体層3を形成した(ステップB.1、ステップB.2)。次に、ダイコート法およびリソグラフィ法により幅50μm、高さ100μmの隔壁4を形成した(ステップB.3)。次に、隣り合う隔壁4間にB、R、Gそれぞれに発光する蛍光体層5を塗布形成した(ステップB.4)。
【0037】
次に、ステップB.1〜ステップB.4を行った背面基板1の周囲にガラスフリットを塗布し乾燥させた後、その背面基板1とステップA.1〜ステップA.5を行った前面基板6とを対向配置して450℃で加熱することにより封着した。続いて、400℃に加熱して基板間に形成された放電空間12を4時間にわたって排気した後、10%のXeガスと90%のNeガスとからなる混合ガスを66.7kPa(500Torr)の圧力になるまで封入した(ステップC.1)。
【0038】
次に、維持パルスの高さを210Vとして、ステップA.5で求めたエージング時間にわたってエージング処理を行った(ステップC.2)。その後、PDPの表示品質検査を行ったところ、放電電圧の異常、全白表示における色ムラ等の不具合は無く、製品としての品質を満足するものであった(ステップC.3)。
【0039】
なお、上述した説明においては、回転補償子型の分光エリプソメータ23を例に挙げているが、補償子の代わりに光弾性モジュールを用いた位相変調型あるいは、回転検光子型の分光エリプソメータを用いてもよい。また、分散式には調和振動子に基づく計算式を例に挙げているが、消衰係数が0に近い膜の場合には経験的な式であるCauchy計算式などを用いることも可能であり、調和振動子型の分散式に限定されるものではない。
【0040】
また、上述した実施例の説明においては、白色光の照射角度を基板20の鉛直方向からの角度θ=60°で照射しているが、これに限定されるものではなく、角度θが50°〜70°の範囲ならば測定値に大きな差異はなく、この範囲に照射角度を設定しても問題はない。
【0041】
また、上述した説明においては、分光測定における分光範囲を250nm〜800nmとしているが、この波長範囲に限るものではない。ただし、光学干渉で発生するピークの間隔は光子エネルギーの逆数に比例するため、短波長側では長波長側よりも多くのピークが観測される。膜厚700nm程度のMgO/誘電体層の積層構造での光学干渉から得られる位相差Δ、反射振幅比ψの波形は250nm〜370nmの紫外線領域において4回のピークを示し、370nm〜800nmにおいては3回のピークを示すために、分光範囲が紫外線領域と可視領域の両方を含んでいることが測定精度の維持という観点から望ましい。また、このような理由から波長が長い近赤外線や赤外線領域を測定に用いることはそれほど有効ではない。
【0042】
また、上述した説明においては、光学モデルの設定に際し、MgOと空気との混合層33、MgO層32、基板31(誘電体層)の3層構造を例示しているが、MgO膜の成膜条件によっては、さらに層の数を増やした光学モデルを用いてフィッティングを行うようにしてもよい。
【0043】
さらに上述した説明においては、前面基板6において十字状に設定した5つのポイントで保護層10の表層部分の膜特性を測定しているが、基板サイズ、MgO膜の成膜条件、エージング条件によって測定ポイントの位置や数を変えてもよい。
【0044】
以上説明したように、本発明の実施の形態におけるPDPの製造方法では、初期に設定する光学モデルで保護層が複数の層が積層された構造であると仮定し、保護層の表層の膜特性を測定することにより、エージング工程でPDPの特性が安定化するまでに必要なエージング時間を決定するので、エージング時間を正確に決定することができる。また、膜特性の測定を前面基板6の複数の箇所において行い、その結果に基づいてエージング時間を決定するので、パネル内の特性バラツキを考慮したエージングを行うことができる。このため、適切なエージング処理を行うことができ、パネル全面において安定した品質のPDPを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、必要なエージング時間を予め得ることができるため、PDPの歩留りを高め、性能、品質の安定したPDPの量産に際して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)、(b)はAC型カラーPDPの一例を示す断面図
【図2】本発明の実施の形態におけるPDPの製造フローを示す図
【図3】本発明の実施の形態における保護層の表層部分の膜特性測定での測定箇所を示す図
【図4】保護層の表層の膜厚とエージング時間との関係を示す図
【図5】本発明の実施の形態における保護層の表層部分の膜特性測定で用いる測定装置の一例を示す概略構成図
【図6】同測定装置を用いた測定のフローを示す図
【図7】図6のステップS3で設定される初期光学モデルを示す図
【符号の説明】
【0047】
1 背面基板(第1基板)
6 前面基板(第2基板)
7 透明電極
8 バス電極
9 誘電体層
10 保護層
11 表示電極
20 基板
21 測定装置
23 分光エリプソメータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間に放電空間を形成するように配置した第1基板および第2基板と、前記第2基板上に形成された複数の表示電極と、前記表示電極を覆うように前記第2基板上に形成された誘電体層と、前記誘電体層上に形成された保護層とを有するプラズマディスプレイパネルの製造方法において、前記保護層は複数の層が積層された構造であると仮定して、前記保護層の表層の膜特性を測定するステップと、前記膜特性からエージング時間を決定するステップと、前記エージング時間にわたってエージングを行うステップとを有することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】
前記保護層の表層の膜特性は、前記表層の構成材料の体積百分率および前記表層の膜厚であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項3】
前記第2基板の複数の箇所において、前記保護層の表層の膜特性を測定することを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項4】
分光エリプソメータを用いて前記保護層の表層の膜特性を測定することを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項5】
前記分光エリプソメータを用いて前記保護層の表層の膜特性を測定するときの分光範囲が可視領域と紫外線領域の両方を含んでいることを特徴とする請求項4に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−324077(P2007−324077A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155763(P2006−155763)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】