説明

プラズマ処理方法

【課題】低誘電率膜や下地膜に与えるダメージを低減可能なプラズマ処理方法の提供。
【解決手段】処理室1の中心部側と側壁の近傍側にそれぞれ独立して処理ガスを供給するガス供給手段41、42と、被処理体Wを載置する試料載置電極13と、プラズマ生成用高周波電源21と、アンテナ11と、処理室内にプラズマを生成するプラズマ生成手段17を有するプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法であって、プラズマを用いて被処理体Wの絶縁膜エッチング処理を行ない、その後被処理体Wを試料載置電極13に載置したまま処理室中央部から大流量の不活性ガスを処理室1の側壁近傍にのみ堆積物除去ガスを供給し、さらにプラズマ密度分布を制御することにより処理室中心部側のプラズマ密度と処理室側壁近傍のプラズマ密度を異ならせて処理室側壁の堆積膜を除去する堆積膜除去処理を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造に用いられるプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、マスクとして使用されるレジスト膜や有機膜の除去にアッシング処理が用いられる。これまでアッシング処理は、エッチング処理後、エッチング処理装置とは別に専用のアッシング処理装置を用いて処理されてきた。しかし、処理時間短縮の観点から、エッチング処理とアッシング処理を同一の装置で連続処理する要求が高まってきた。
【0003】
しかしながら、主に絶縁膜加工の際に用いられるフルオロカーボン系ガスを主成分とするエッチング処理を行った場合、反応容器側壁にはCF系の膜が堆積する。この状態でアッシング処理を行うと、このCF系堆積物が除去される際に放出するフッ素がウエハに入射し、寸法変動を引き起こしてしまう。このような現象を、アッシング処理前に行った処理の履歴を引きずることからメモリ効果と呼ばれる。
【0004】
このメモリ効果を抑制するために、二段階に分けてアッシング処理する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。まず、特許文献1のフローチャートによる説明にあるように、第一段階として、ウエハバイアスを印加せずに酸素プラズマを生成し、反応容器側壁の堆積物を除去する。次に、ウエハバイアスを印加し、ウエハ上のレジスト膜等を除去する方法である。
【0005】
また、上記と同様に二段に分けてアッシング処理を行う他の方法があるが、酸素プラズマを用いる代わりに、二酸化炭素プラズマを用いることによりダメージを抑制する手法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−145111号公報
【特許文献2】特開2007−80850号公報
【特許文献3】特開2001−110783号公報
【特許文献4】特開2008−03449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のこれまでの発明は、反応容器側壁の堆積物を除去する際にウエハバイアスを印加しないことで寸法変動を抑制するという手法をとっているが、何れの場合も反応容器側壁の堆積物を除去する際に、被処理体上方にはその後にウエハバイアスを印加して行うアッシング処理と同様なプラズマが生成されていることや、反応容器側壁のクリーニング中に壁から放出されるフッ素がウエハに拡散してくることにより、寸法変動を引き起こす恐れがある。また、二酸化炭素プラズマを使用する場合であっても、壁から拡散してくるフッ素がウエハに入射する懸念があり、この点に関してはウエハバイアスを印加しないだけでは不十分である。このため、Low−k膜へのダメージが増加することや下地膜(ライナー)等がエッチングされてしまう恐れがある。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に対処したもので、従来以上に低誘電率膜や下地膜に与えるダメージを低減することができるアッシング処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、処理室と、処理室の中心部側と側壁の近傍側にそれぞれ独立して処理ガスを供給するガス供給手段と、処理室を減圧する真空排気手段と、被処理体を載置する被処理体戴置台と、プラズマ生成のための高周波電源と、プラズマ生成用高周波電力を前記処理室内に供給するアンテナと、処理室内にプラズマを生成するプラズマ生成手段を有するプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法であって、エッチングガスのプラズマを用いて前記被処理体の絶縁膜エッチング処理を行ない、その後前記被処理体を前記被処理体載置台に載置した状態で被処理体上方から大流量の不活性ガスを供給するとともに前記処理室の側壁近傍にのみ堆積物除去ガスを供給し、さらにプラズマ密度分布を制御することにより前記処理室中心部側のプラズマ密度と前記処理室側壁近傍のプラズマ密度を異ならせて前記処理室側壁の堆積膜を除去する堆積膜除去処理を行なうようにした。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明では、被処理体のエッチング処理の後に、被処理体を処理室内の載置したまま被処理体に影響を与えずに処理室側壁の堆積膜除去処理を実行し、その後アッシング処理を行うので、従来以上に低誘電率膜や下地膜に与えるダメージを低減することができるとともに、スループットを低下させずにアッシング処理を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
アッシング処理を施した際にウエハ外周部に発生するLow−k膜の予期せぬ過剰なエッチング等は、反応容器側壁に堆積したCF膜から放出されたフッ素が影響している。本願発明者は、効率的に反応容器側壁に堆積したCF膜を除去し、且つ、ウエハへ拡散するフッ素の影響をより低減する方法を見出した。
以下、プラズマ処理装置を用いた半導体製造装置における本発明のプラズマ処理方法の実施形態を説明する。
【0011】
[プラズマ処理装置]以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。第1の実施の形態に用いるプラズマ処理装置の構成の概要を図1に示す。図1のプラズマ処理装置は本発明に用いる装置の基本的構成を示す。プラズマ処理装置(半導体製造装置)は、第一のガス導入手段41および第二のガス導入手段42と真空排気手段15を有する真空容器1の外側に複数の電磁コイル17が配置されており、同軸ケーブルによりアンテナ11に導入される電磁波と該電磁コイル17による磁場の相互作用で真空容器1内に導入されたガスをプラズマ化する。この時、バイアス用電源31より発振された電磁波を整合器32とブロッキングコンデンサ33を用いて載置台12を経由して試料設置電極13に印加することで、高速に被処理体Wのプラズマ処理を行うことができる。
【0012】
本実施の形態におけるアンテナ11には第一の整合器22を介し200MHzのプラズマ生成用の第一の電源21と、第二の整合器24を介し、4MHzの電位調節用の第二の電源23の2つの周波数が印加されている。被処理体Wは12インチ径であり、該被処理体Wとアンテナ11の間隔は3cmとなっている。アンテナ11は、シリコンで形成されており、また該シリコンの表面に形成した複数の孔から原料ガスが真空容器1内に導入される構成となっている。アンテナ11の裏には、アンテナ裏誘電体16が設けられている。なお、原料ガスを真空容器内に導入するための複数の孔は、アンテナ中心部と外周部で分離されており、アンテナ中心部からは第一のガス導入手段41により供給された原料ガス、処理室側壁近傍(アンテナ外周部)からは第二のガス導入手段42により供給された原料ガスを独立に供給することができる。また、処理室1内を所定の圧力に減圧するため、例えばターボ分子ポンプなどの排気手段15と、処理室内を所定の圧力値に調節するためのバルブなど(図示せず)が該排気手段15の前段に設置されている。
【0013】
電位調節用の4MHzの第二の電源23の電磁波は、アンテナ11表面とプラズマとの間で形成される電位を調節する機能を持つ。該4MHzの第二の電源23の出力を調節することでシリコン表面の電位を任意に調節でき、アンテナ11とプラズマ内活性種の反応が制御できる。処理室内には被処理体Wを戴置するための載置台(ステージ)12が設置されている。該戴置台12には被処理体Wを吸着するための試料設置電極13と被処理体を上に持ち上げるためのプッシャーピン(図示せず)が設置されている。また、試料設置電極13には温調装置34が接続されており、電極温度をコントロールすることができる。
【0014】
[第1の実施の形態(プラズマ分布制御の具体例)]図1に示すようにエッチング処理室周辺に設置された磁場発生用の2つの電磁コイル17を用い、磁場分布を変化させることにより、プラズマの密度分布を凹分布から凸分布まで任意に変化させることが可能となる。磁場によるプラズマ分布制御の原理は、上記特許文献3に示された原理と同様である。
【0015】
図2に、磁場を変化させた時のウエハ面内のエッチングレート分布(a)、またはプラズマ生成用第2の電源23からの高周波とバイアス用電源31の位相変化させた時のウエハ面内のエッチングレート分布(b)を示す。エッチングは主にエッチャントとなるラジカルやイオンがウエハ表面に入射することによって進行する。このラジカルやイオンは、生成されたプラズマから供給されることから、エッチングレート分布は、おおよそのプラズマ分布を示していることになる。図2(a)は被処理体W上の位置とフォトレジストのエッチングレートの関係を磁場をパラメータとして示す図であり、この図に示すように、磁場を変化させることにより、径方向に対し中心でのプラズマ密度が高くなる凸型(C1c)、プラズマ密度が均一であるフラット型(C1a)、外周のプラズマ密度が高くなる凹型(c1b)に変化させることができる。特に、凹型分布(C1b)にした場合、ウエハ中心部ではプラズマ密度が低く、ラジカルやイオンの入射を抑制することが可能になり、ウエハ中心部にフッ素が入射した場合の寸法変動を低減することができる。一方、外周でのプラズマ密度は高くすることができるので、反応容器側壁に堆積するCF系の堆積物を効率的に除去することが可能になる。
【0016】
なお、図2(b)に示すように、アンテナ11に印加する第2の電源23の周波数と試料載置電極13に印加する周波数が同じ場合には、位相差を制御することによって、位相差を180°とした場合(C2B)と0°とした場合(C2a)とでプラズマ分布を制御できることは言うまでもない。
【0017】
図3のグラフを用いて、フッ素除去のために生成した酸素プラズマの放電時間と酸素プラズマに含まれるフッ素の発光強度(703.8nm)の関係を説明する。図3からわかるように放電開始後、フッ素の発光が上昇し、時間とともに発光は減衰し、約20秒後にはフッ素の発光は観測されなくなる。フッ素の発光は、酸素プラズマによるクリーニングによって反応容器内に堆積したCF膜から離脱したフッ素であり、フッ素の発光がなくなった時には反応容器内のクリーニングが十分になされていると判断することができる。磁場制御によりプラズマ分布を変化させた場合、外周部のプラズマ密度が高くなる凹型のプラズマ分布を用いた場合(C3b)には、フラット型(C3a)や凸型(C3c)に比べ、より短時間にフッ素の発光が減衰していることから、効果的に反応容器側壁をクリーニングできることがわかる。
【0018】
また、この実施の形態では電磁コイルのみを用いて磁場を形成したが、永久磁石および電磁コイルと永久磁石の複合で磁場を形成しても前記のようなプラズマ分布の制御ができれば同様の効果があることはいうまでもない。
【0019】
さらにプラズマ分布は磁場による制御に限らず、例えば外周部のみに高周波電力を印加することができる機能を備えた装置を用いることにより、ウエハ上ではプラズマを生成せず、外周部のみにプラズマを発生させ、反応容器側壁の堆積物のみ除去することも可能であることは言うまでもない。
【0020】
[第2の実施例(大流量プロセスによる効果の具体例)]図4のグラフを用いて、フッ素除去のために生成した酸素プラズマのガス流量と酸素プラズマに含まれるフッ素の発光強度の関係を説明する。本実施形態において酸素流量を50ccとした場合(C4a)、クリーニング開始から150秒後もフッ素の発光が確認された。これに対して、酸素流量を増加するとフッ素の発光強度のピーク値が低下するとともに減衰時間も短くなり、酸素流量が400ccの場合(C4d)、100秒後にはフッ素の発光強度は観測されなくなった。図4において、曲線C4bは酸素流量が100ccの場合を、曲線C4cは酸素流量が200ccの場合を示す。
【0021】
このように、酸素プラズマを生成する際のガス流量を増加することにより、ウエハ面上でのフッ素を抑制することができると同時に、処理室側壁に堆積した堆積膜を除去でき短時間にクリーニングできることがわかる。
【0022】
[プラズマ処理手順]図5を用いて、本発明におけるプラズマ処理方法の手順を説明する。先ず、図1に示したプラズマ処理装置のステージ12にシリコン基板Wを設置し、例えば、Ar/C/Nの混合ガスを用いて絶縁膜エッチング工程を実施する(S11)。アンテナ11より高周波電力を印加し、反応装置内にプラズマを生成し、試料載置電極(下部電極)13に電圧を印加することでイオンを引き込みエッチングする。絶縁膜エッチングにはフルオロカーボンガスをプラズマ化して処理をするため、特にイオンの入射が無く、温度コントロールを行っていない真空容器(処理室)1の側壁にはCF系の堆積膜が形成される。
【0023】
次に、壁クリーニング工程を実施する(S12)。壁クリーニングに使用するガスは、シャワープレートを介して供給されるが、シャワープレート中央部(処理室の中心部)側からは第一のガス導入手段41によりArガスを導入し、シャワープレート外周部(処理室側壁近傍)側からは第二のガス導入手段42により酸素あるいは二酸化炭素を含むガスを導入する。また、本実施形態では、第一のガス導入手段41および第二のガス導入手段42ともにガス流量を400cc以上とする。
【0024】
次いで、プラズマ生成用第1の高周波電源21からアンテナ11に高周波電力を印加し、プラズマを生成する。図1に示す電磁コイル17の電流を制御することにより、反応容器1内に発生する磁場を調整することで凹型のプラズマ分布(図2(a)C1B)を形成する(S13)。このように側壁近傍付近のプラズマ密度を上昇させることにより、真空容器側壁に堆積したCF系の堆積膜を効率的に除去し、壁をクリーニングすることができる(S14)。
【0025】
次に、アッシングガスとしてシャワープレート中央部および外周部ともに酸素あるいは二酸化炭素を含むガスを供給する(S15)。
【0026】
次いで、アンテナ11から高周波電力を印加し、反応容器1内に発生する磁場を調整することで、プラズマを生成する。このときプラズマ分布をフラット型あるいは凸型とすることにより、被処理体W直上のプラズマ密度を高くすることができ、被処理体Wに入射する酸素ラジカル量を増加することができる(S16)。こうして、被処理体W上のレジストや有機膜をより効率的に除去することができる(S17)。
【0027】
このプラズマ処理手順によれば、壁をクリーニングする際には、処理室中心部側および処理室側壁近傍側に供給するガス流量を大きくすることで、真空容器側壁から放出されるフッ素が被処理体W上に拡散してくる量を抑制することができる。また、シャワープレート中央部(被処理体直上)側からArを大量に流すことにより、反応容器側壁をクリーニングしている際に壁から放出されるフッ素が被処理体上に拡散してくることを抑制し、Low−kダメージの発生を抑制することができる。さらに、凹型のプラズマ分布(図2(a)c1b)とすることで、反応容器側壁のCF膜除去に十分なプラズマを生成しつつ、反応容器中央部に位置する被処理体上では、プラズマ密度が低く、イオンの入射による被処理体への影響を最小限にすることができる。
【0028】
また、このプラズマ処理方法では壁クリーニング用ガスを導入する際、処理室中心部からArを導入する手法を示したが、Ar以外の希ガスまたは不活性ガスを導入してもフッ素がウエハ上に拡散してくることを抑制できることは言うまでもない。さらに、酸素や二酸化炭素といったアッシング用ガスを用いた場合でも、大流量にすることで壁から放出されるフッ素がウエハに拡散してくる量を抑制できることは言うまでもない。尚、ガスの供給は、反応容器側壁にガスを導入するガス導入手段を設け、シャワープレートを介することなく側壁部にガスを供給しても同様の効果が得られる。
【0029】
上記のプラズマ処理方法では、フルオロカーボンガスを用いた絶縁膜エッチング後、酸素ガスによるクリーニングまたはアッシングによってCF系の堆積物から発生するフッ素が電極上に設置されたままの被処理体に影響を与えることを妨げる方法を示したが、CH系ガスを用いたエッチング後、クリーニングの際に堆積物から発生する水素が被処理体に影響を与えることを妨げることができるのは勿論である。さらに、絶縁膜エッチングに限らず、プラズマを用いたエッチングにより堆積物が発生するプロセスにおいて、クリーニングの際に該堆積物より放出されるガスが、電極上に設置されたままの被処理体に影響を与えることなく、処理室側壁をクリーニングできることは言うまでも無い。
【0030】
なお、本実施の形態では、被処理体を処理室から出すことなく電極上に設置したままの状態において、エッチング処理、壁クリーニング処理、アッシング処理を同一の処理室で連続して行っても、被処理体にダメージを与えずに処理することができる。また、上記プロセスを、プラズマを消すことなく、放電を継続したまま連続して処理しても同様の効果が得られ、さらにスループットの向上や被処理体上への異物の落下を抑制する効果を期待することができる。
【0031】
[第2の実施の形態]以下、本発明の第2の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施例は、図1に示したプラズマ処理装置の温調装置34を用いて電極温度を高速に変化させることができるようにした点で異なる。本実施形態では、被処理体Wを設置する電極13の温度をコントロールする手段として、前記特許文献2、特許文献4に記載の直膨式電極を用いることにより約1℃/secの高速制御を可能にしている。また、電極はヒーターを具備し、温度を上昇させることができる。
【0032】
図6を参照しながら、本実施の形態におけるプラズマ処理方法の手順を説明する。
先ず、図6のステップS11に示すように、図1のプラズマ処理装置のステージ12に被処理体Wを設置し、絶縁膜エッチング工程を実施する。エッチングガスとして、例えばAr/C/N混合ガスを使用する。アンテナ11より高周波電力を印加し、反応装置内にプラズマを生成し、下部電極に電圧を印加することでイオンを引き込みエッチングする(S11)。このエッチング処理は図5に示したエッチング処理ステップS11と同様である。
【0033】
次に、絶縁膜のエッチングが終了した時点で、図1の温調装置34として直膨式温度制御装置を用いて、被処理体Wが設置された試料載置電極13の設定温度を0℃以下に低下させる(S21)。
【0034】
その後、試料載置電極13上に被処理体Wを載置した状態で壁クリーニング処理を実行する。まず、処理室内に壁クリーニングガスを導入する。壁クリーニングに使用するガスは、シャワープレートを介して供給されるが、処理室中央部(シャワープレート中央部)からは第一のガス導入手段41によりArガスを導入し、処理室側壁近傍(シャワープレート外周部)からは第二のガス導入手段42により酸素あるいはCOを含むガスを用いる。また、本実施の形態では、ガス流量を400ccm以上の大流量とする(S12)。
【0035】
ステップS13でプラズマ生成用第1の高周波電源21によりアンテナ11から高周波電力を印加し、プラズマを生成する。図1に示す電磁コイル17の電流を制御することにより、反応容器内に発生する磁場を調整することで凹型のプラズマ分布を形成し(S13)、真空容器側壁の堆積膜を除去する(S14)。この壁クリーニング処理は図5に示した壁クリーニング処理ステップS13、S14と同様である。
【0036】
壁クリーニング処理の終点を検知すると、処理室中心部に酸素ガス、処理室側壁近傍に酸素ガスからなるアッシングガスを導入し、アッシング処理への移行に備える(S15)。
【0037】
次に、ステップS22で被処理体の設置された電極の設定温度(例えば20℃)以上に上昇させる。その後、ステップS16のアッシング工程を実施する。アッシングに使用するガスは、シャワープレート中央部および外周部ともに酸素あるいは二酸化炭素を含むガスを用いる。
【0038】
ステップS16において、プラズマ分布をフラット型あるいは凸型とする。これにより、ウエハ直上のプラズマ密度を高くすることにより、ウエハに入射する酸素ラジカル量を増加することができる。こうして、ウエハ上のカーボン膜をより効率的に除去することができる。このようにして、被処理体のレジストや有機膜を除去することができる(S17)。
【0039】
この実施の形態では、壁クリーニング用ガスを導入する際に、中心部からはArを導入する手法を示したが、Ar以外の希ガスや酸素や二酸化炭素といったアッシング用ガスを導入しても、壁から放出されるフッ素がウエハに入射するのを抑制する効果を得られることは言うまでもない。
【0040】
本実施の形態によれば、壁クリーニング工程時に被処理体の温度を低くすることにより、仮に被処理体にフッ素や酸素ラジカルが来ても反応を抑制することができ、ダメージを低減できる効果がある。また、アッシング工程時に被処理体の温度を高くすることにより、酸素ラジカルとの反応速度を高くし、効率的にアッシングを進めることが可能になる。
【0041】
[第3の実施の形態]以下、本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。本発明による実施の形態を図1に示す。第3の実施の形態は第1の実施形態と基本的に同じ構造を有しており、プラズマ中のフッ素の発光をモニタする装置18、発光を解析する装置51、発光解析に基づき磁場分布およびプロセスガスを制御できる装置52を用いてプラズマ処理をさらに高精度に制御する点で異なる。
【0042】
本実施の形態では、図1のプラズマ処理装置で絶縁膜エッチングを行った後に行う壁クリーニング工程時に、発光解析手段51によりプラズマからの発光を分光し、フッ素の発光強度を測定する。フッ素の発光は、酸素プラズマ等による壁クリーニングによって反応容器内に堆積したCF膜から離脱したフッ素であり、フッ素の発光がなくなった時には反応容器内のクリーニングが十分になされていると判断することができる。この点を利用し、フッ素の発光強度が設定した閾値を下回り、壁のクリーニングが十分になされたと判断したところでガス導入装置41、42、磁場制御用コイル17に通信線を介してフィードバック手段53から制御信号が送られる。その後、アッシング工程が開始し、被処理体上の有機膜が除去される。
【0043】
上記の実施の形態では、フッ素の発光強度を測定することにより処理室側壁のクリーニングが十分であるかを判断しているが、CF膜が酸素プラズマあるいは二酸化炭素プラズマにより除去される際に発生する炭素、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素の発光強度を測定することにより、処理室側壁のクリーニングが十分であるかを判断することができるのは言うまでもない。
【0044】
また、上記の実施の形態では、プラズマの生成手段が被処理体の対面に配置された電極に被処理体と別の高周波電力を印加してプラズマを生成する手段について説明したが、プラズマの生成が被処理体の載置台に高周波電力を印加することでプラズマを生成する手段あるいはプラズマ生成手段が誘導結合方式または磁場と高周波電界の相互作用によってプラズマが生成されることを特徴とするプラズマ処理装置であっても同様の効果が得られることは言うまでも無い。
【0045】
なお、上記の調査の対象とした具体的な壁クリーニング工程は、ガス系が、Oを400ccm、圧力を約2Paとし、半導体ウエハの設定温度を20℃、ウエハバイアスを約200Wの条件で行なった。ガス種、ガス流量、圧力、ウエハの設定温度およびウエハバイアスがこの条件から大きく逸脱しない範囲において、同様の効果が得られることは言うまでも無い。また、壁クリーニング工程の前工程として、プラズマの原料ガスにフルオロカーボン系ガスを主成分とするプロセスにおいて、被処理体であるシリコン基板上のSiO、SiC、SiOC、SiOCH、SiN、Siのいずれか一つを主原料とする膜をエッチング処理するプロセスに適用できることは勿論である。なお、エッチングに用いる絶縁膜は、該プラズマ処理装置を用いて被処理体であるシリコン基板上のSiO、SiC、SiOC、SiOCH、SiN、Siの二種類以上の多層構造をエッチング処理することにも適用できることは勿論である。
【0046】
以上のように、本発明によれば、半導体製造工程において歩留りが向上することから、産業上利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明をプラズマ処理装置(断面図)に適用した携帯を説明する概略図。
【図2】磁場分布とアッシングレート分布との関係を示すグラフ(a)、および、アンテナと電極に印加する周波数との位相差とアッシングレートの関係を示すグラフ(b)。
【図3】プラズマ分布をパラメータとしたクリーニング処理時間とフッ素の発光強度との関係を示すグラフ。
【図4】酸素流量をパラメータとしたクリーニング処理時間とフッ素の発光強度との関係を示すグラフ。
【図5】本発明の第1実施の形態に係る、半導体処理工程を説明する図。
【図6】本発明の第2実施の形態に係る、半導体処理工程を説明する図。
【符号の説明】
【0048】
1…真空容器、
11…アンテナ、
12…ステージ、
13試料設置電極、
14…フォーカスリング、
15…排気手段、
16…アンテナ裏誘電体、
17…磁場コイル、
18…受光部、
21…第一の電源、
22…第一の整合器、
23…第二の電源、
24…第二の整合器、
31…バイアス用電源、
32…第三の整合器、
33…ブロッキングコンデンサ、
34…温調装置、
41…第一のガス供給手段、
42…第二のガス供給手段、
51…発光解析手段
52…フィードバック手段
C1c…プラズマ分布(凸型)、
C1a…プラズマ分布(フラット)、
C1b…プラズマ分布(凹型)、
C3c…フッ素発光強度(プラズマ分布:凸型)、
C3a…フッ素発光強度(プラズマ分布:フラット)、
C3b…フッ素発光強度(プラズマ分布:凹型)、
C2a…レジストエッチングレート(φ0°)、
C2b…レジストエッチングレート(φ180°)、
C4a…フッ素発光強度(O2=50sccm)、
C4b…フッ素発光強度(O2=100sccm)、
C4c…フッ素発光強度(O2=200sccm)、
C4d…フッ素発光強度(O2=400sccm)、
W…被処理体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室と、処理室の中心部側と側壁の近傍側にそれぞれ独立して処理ガスを供給するガス供給手段と、処理室を減圧する真空排気手段と、被処理体を載置する被処理体戴置台と、プラズマ生成のための高周波電源と、プラズマ生成用高周波電力を前記処理室内に供給するアンテナと、処理室内にプラズマを生成するプラズマ生成手段を有するプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法であって、
エッチングガスのプラズマを用いて前記被処理体の絶縁膜エッチング処理を行ない、
その後前記被処理体を前記被処理体載置台に載置した状態で被処理体上方から大流量の不活性ガスを供給するとともに前記処理室の側壁近傍にのみ堆積物除去ガスを供給し、さらにプラズマ密度分布を制御することにより前記処理室中心部側のプラズマ密度と前記処理室側壁近傍のプラズマ密度を異ならせて前記処理室側壁の堆積膜を除去する堆積膜除去処理を行なう
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理方法であって、
前記処理室側壁の堆積膜除去処理は、前記処理室側壁近傍のプラズマ密度に対して処理室の中心部側のプラズマ密度を低くする
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項3】
請求項1記載のプラズマ処理方法であって、
前記堆積膜除去処理では、処理室の中心部側から供給する不活性ガスが、希ガスである
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項4】
請求項1記載のプラズマ処理方法であって、
前記堆積膜除去処理では、処理室の中心部側から供給するガスが、希ガスと不活性ガスとを含む
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項5】
請求項1記載のプラズマ処理方法であって、
前記絶縁膜のエッチング処理は、フルオロカーボンガスを含むエッチングガスを用いて行なう
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項6】
請求項1記載のプラズマ処理方法であって、
前記アンテナに印加するプラズマ生成用高周波電力と前記被処理体載置台に印加する高周波電力の位相差を制御することによって処理室内のプラズマ密度分布を制御する
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項7】
請求項1記載のプラズマ処理方法であって、
前記プラズマ処理装置がプラズマ中の特定の原子あるいは分子の発光強度の変化を検出する検出手段を備えており、
処理室側壁の堆積膜除去処理において、プラズマ中の特定の原子あるいは分子の発光強度の変化に基づき、被処理体上方より供給するガスの量および反応室内のプラズマ密度分布を変化させる
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項8】
請求項1記載のプラズマ処理方法であって、
前記プラズマ中の特定の原子あるいは分子が、フッ素、炭素、酸素、一酸化炭素である
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項9】
請求項1記載のプラズマ処理方法であって、
前記処理室側壁の堆積膜除去処理を行なう前に被処理体の温度を低下させる
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項10】
請求項1記載のプラズマ処理方法であって、
前記処理室側壁の堆積膜除去処理の後、前記処理室の中心部側からアッシングガスを供給し、プラズマ密度分布を制御することにより、処理室中心部側のプラズマ密度を高くして前記被処理体をアッシング処理する
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項11】
請求項10記載のプラズマ処理方法であって、
前記処理室側壁の堆積膜除去処理の後、前記処理室中心部側のプラズマ密度を高くする前に被処理体の温度を上昇させる
ことを特徴とするプラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−34415(P2010−34415A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−196725(P2008−196725)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】