説明

プラズマ処理装置および処理方法

【課題】プラズマ発生装置を用いた成膜装置で基板に成膜を行う場合に、プラズマ発生開始時またはプラズマ発生停止時に発生するパーティクルの基板への付着を低減する手段を提供する。
【解決手段】真空容器1内において基板9に薄膜を成膜するプラズマを用いた成膜装置であって、真空容器内にプラズマを用いて基板に成膜を行う成膜領域と成膜を行わない待機領域とを持ち、真空容器内に、基板を戴置した基板トレイ10が成膜領域と待機領域との間で移動可能とする基板トレイ移動手段11と、プラズマの発生開始後に、基板トレイの待機領域から成膜領域への移動を可能とし、基板トレイの成膜領域から待機領域への移動後にプラズマの生成停止を可能とするインターロック手段とを更に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVDやエッチング等、プラズマを使用するプラズマ処理装置、およびこれを用いたプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年半導体や液晶パネル、有機ELパネル、太陽電池セルなどのデバイス製造においては、デバイスの微細化、複雑化により、デバイスの収率が低下しやすく、従ってこの収率を高くするために多くの工夫が必要となっている。デバイス収率を低下させる最も大きな問題は、デバイスパターンの欠陥であり、この欠陥の一因として、基板のプラズマ処理(一般的な平行平板型プラズマCVD装置による各種薄膜の成膜処理や、リアクティブイオンエッチング装置(RIE)などによるプラズマエッチング処理)の際に発生するパーティクルが挙げられる。
【0003】
そのパーティクルの発生および発生したパーティクルの挙動については、多くの研究がなされている。例えば非特許文献1に示されているように、パーティクルの発生には、プラズマ発生中にプラズマの中に生じるものと、プラズマ発生のためのRFパワーをOn/Offした際に発生する静電気力や熱応力によって、チャンバー内壁に付着していたものが剥離して生じるものの2種類がある。
【0004】
プラズマ発生中にプラズマ中に発生するパーティクルを減少させる方法として、特許文献1ではアモルファスシリコン膜成膜の際に、プラズマ発生のRFパワーをパルス状に変調して印加する方法が開示されている。また、特許文献2では窒化シリコン膜の成膜終了直前に成膜ガスSiHの流量比を下げることにより、微小粒子のプラズマ滞留量を低下することが開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では成膜条件を変更するため、膜質そのものが変化してしまう。さらにRFパワーOn/Off時の、チャンバー内壁からの剥離により生じるパーティクルの基板への付着は回避することができない。また特許文献2に記載の方法では、プラズマ中のパーティクルの滞留量は減少できるが、この方法でもRFパワーをOn/Offした際発生するパーティクルの基板への堆積は回避することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−51753号公報
【特許文献2】特開平5−129285号公報
【非特許文献1】J.Vac.Soc.Jpn, Vol.52.No.9,2009 P.484-490
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のプラズマ処理方法では、プラズマをOn/Offする際に発生するパーティクルの基板への堆積を回避することができない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)請求項1に記載の発明は、真空容器内において基板にプラズマを用いた処理を行なうプラズマ処理装置であって、真空容器内に基板にプラズマ処理を行う処理領域とプラズマ処理を行わない待機領域とを持ち、真空容器内に、基板を戴置した基板トレイが処理領域と待機領域との間で移動可能とする基板トレイ移動手段と、プラズマの発生開始後に、基板トレイの待機領域から処理領域への移動を可能とし、基板トレイの処理領域から待機領域への移動後にプラズマの生成停止を可能とするインターロック手段とを更に備えることを特徴とするプラズマ処理装置である。
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプラズマ処理装置において、プラズマの発生開始からの時間を計測するタイマーを更に備え、インターロック手段は、タイマーで計測されたプラズマの発生開始からの時間が所定時間経過するまでは、基板トレイの待機領域から処理領域への移動を禁止することを特徴とする。
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のプラズマ処理装置において、基板トレイの位置が処理領域にあるかまたは待機領域にあるかを検出する基板トレイ位置検出手段をさらに備え、インターロック手段は、基板トレイ位置検出手段によって検出された基板トレイの位置が処理領域にある場合は、プラズマの発生開始を禁止し、基板トレイの位置が処理領域にある場合はプラズマの生成停止を禁止することを特徴とする。
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置を用いて基板にプラズマ処理を行うプラズマ処理方法であって、基板へのプラズマ処理を開始する際は、プラズマが発生開始してから、基板を戴置した基板トレイを待機領域から処理領域に移動し、基板へのプラズマ処理を終了する際は、プラズマ発生を停止する前に、基板を戴置した基板トレイを処理領域から待機領域に移動することを特徴とするプラズマ処理方法である。
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置において、プラズマ処理が、基板への薄膜の成膜であることを特徴とする。
(6)請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のプラズマ処理装置において、成膜は、プラズマCVDを用いて行うことを特徴とする。
(7)請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のプラズマ処理装置において、成膜は、スパッタリングを用いて行なうことを特徴とする。
(8)請求項8に記載の発明は、請求項6に記載のプラズマ処理装置において、該プラズマ処理装置が表面波プラズマCVD装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、プラズマ生成開始時およびプラズマ生成停止時において発生するパーティクルが基板に付着することを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の1つの実施形態におけるプラズマCVD装置の概略を説明する垂直断面図である。基板を戴置した基板トレイは待機位置Aとなっている。
【図2】本発明の1つの実施形態におけるプラズマCVD装置の概略を説明する垂直断面図である。基板を戴置した基板トレイは成膜中の位置である位置Bに移動している。
【図3】本発明の1つの実施形態によるプラズマCVD装置を用いた窒化珪素膜の成膜工程のフロー図である。
【図4】基板へのパーティクル堆積量が、放電開始から成膜位置へ移動開始までの待機時間に依存することを示す図であり、本発明による基板へのパーティクルの堆積減少効果を説明する図である。
【図5】図3と同様に本発明の1つの実施形態によるプラズマCVD装置を用いた場合の、成膜終了時での基板へのパーティクルの堆積減少効果を示す図である。
【図6】本発明の1つの実施形態のさらに別の変形実施例によるプラズマCVD装置の概略を説明する垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明による実施形態を図1〜6を用いて説明する。なお、ここでは例として表面波プラズマCVD装置を用いて、有機ELパネルへの封止膜である窒化珪素膜(SiN膜)を成膜する場合について説明する。
【0012】
<第1の実施形態>
図1および図2は、本発明の一実施形態の表面波プラズマCVD装置を正面から見た断面の概略図である。この表面波プラズマCVD装置は、反応容器(真空容器)1を備え、この反応容器1にマイクロ波電源(不図示)で発生したマイクロ波を導入するための導波管2、スロットアンテナ3、誘電体板4が設けられている。反応容器1に導入されるマイクロ波出力は、マイクロ波電源で調整可能である。
なお、表面波プラズマの発生は、誘電体版4に印加させるマイクロ波によって、誘電体板4の真空側(反応容器側)表面を伝播する高周波電界によって、この誘電体板4の付近にあるプラズマ生成ガスが電離されることによって引き起こされる。
【0013】
反応容器1内に、プラズマ生成ガス放出口5が設けられており、誘電体板4の反応容器側表面で表面波プラズマ6を生成するためのガスを放出する。さらに、表面波プラズマPに含まれるラジカル等と反応して成膜物質を生成するための成膜ガスを放出する成膜ガス放出口7が設けられている。プラズマ生成ガス放出口5と成膜ガス放出口7は、矩形の誘電体板4の周囲を取り囲むように設けられた防着板8に取り付けられている。成膜ガス放出口7は、誘電体板4から離れて設けられている。またプラズマ生成ガス放出口7は、誘電体板4の近くに設けられている。これらのプラズマ生成ガス放出口5および成膜ガス放出口7には、それぞれ不図示のガス供給パイプが接続され、不図示の外部のガス供給装置からプラズマ生成ガスまたは成膜ガスが供給される。なお、このガス供給装置は、プラズマ生成ガスおよび成膜ガスそれぞれの組成と流量とを、独立して調整可能である。
【0014】
また防着板8により成膜領域Dが定められており、有機ELパネルなどの基板9への成膜はこの成膜領域Dに基板9を設置することにより行われる。なお、成膜領域は各請求項の「処理領域」に該当する。
【0015】
基板9は基板トレイ10に戴置され、この基板トレイ10ごと反応室1の側壁に設けられた搬入口(不図示)から搬入される。反応室1には更に基板トレイ10を反応室内で移動するための金属製コンベアベルト11が設けられている。
【0016】
反応室1の底部には排気口12が設けられ、これらに接続された真空ポンプなどからなる真空排気システム(不図示)によって、反応室1内は真空排気される。
【0017】
また反応室1内には基板トレイ10の位置を確認するための基板トレイ位置確認センサ(不図示)が設けられており、基板トレイ10の位置を検出することができるようになっている。この基板トレイ位置確認センサに用いられるセンサとしては、種々のセンサを用いることが可能である。例えば、機械的スイッチを用いた接触センサでもよく、また磁気的な近接センサや光センサなどの非接触センサを用いてもよい。センサの種類により、1個あるいは複数のセンサで基板トレイ10の位置を確認する装置構成が可能であるが、このような説明は省略する。
【0018】
なお、図1では基板9を戴置した基板トレイ10は位置Aにあり、図2では位置Bにある。位置Aは、基板9に成膜を行う前の基板トレイ10の待機位置であり、防着板で囲まれた成膜領域D直下の位置から外側、すなわち防着板から囲まれた領域の外側の領域にある。成膜の際は、基板9を戴置した基板トレイ10は、成膜領域D直下の成膜位置である位置Bに移動して成膜を行う。
【0019】
<本発明による窒化珪素膜の成膜工程フロー>
ここで、図3を参照し、本発明の一実施形態による表面波プラズマCVD装置の動作について、基板9に窒化珪素膜(SiN膜)の反射防止膜を成膜する場合を例にして説明する。なお、基板9を基板トレイ10ごと反応容器に搬入するまでの工程、すなわち基板9をまずロードロック室に搬入し、ロードロック室を真空排気したのち、さらに真空状態の反応室1へ搬入しているが、これ図3では省略されている。
【0020】
ステップS1で、基板トレイ10に戴置された基板9は、反応室1内に搬入後、成膜領域から離れた待機位置Aで金属製ベルトコンベア11上で待機する。 次に、真空排気後ステップS2で、ガス供給装置(不図示)を調整して、プラズマ生成ガス放出口5からは、プラズマ生成ガスとしてArガス350sccmが放出される。更に成膜ガス放出口7からは、SiHガス70sccmとNHガス500sccmの混合ガスが放出される。この際、反応室1内の圧力を10Pa程度にほぼ一定に保つように、排気口12のコンダクタンスを調整する。このコンダクタンスの調整は、例えばコンダクタンス調整バルブ等(不図示)を排気口12と真空排気システムの間に設け、このコンダクタンス調整バルブを調整することによって行われる。
【0021】
ステップS3では、この状態で導波管2、スロットアンテナ3を介して誘電体板4に1kWのマイクロ波電力が供給され、誘電体板4の反応室1側の表面で放電が起こって、表面波プラズマ6が生成される。
上記で発生した表面波プラズマ6の中にはラジカルやイオンが含まれており、これらは反応容器1内の下方に拡散し、誘電体板4から離れて設けられた成膜ガス放出口7から放出される成膜ガスと反応して成膜物質が生成される。
【0022】
マイクロ波電力供給が開始されて、プラズマ6が生成され、上記のような成膜物質の生成が開始されたのち、ステップS4で、例えば10秒程度経過後に、図1に示すような待機位置Aにあった基板9を戴置した基板トレイ10を、金属製ベルトコンベア11を用いて、図2に示すように成膜領域まで移動する(成膜位置B)。この位置Bに移動した状態で、基板9上に窒化珪素を堆積して成膜が行われる(ステップS5)。この状態で所望の厚さのSiN膜が得られるように成膜処理時間を調整する。
【0023】
成膜を終了する場合は、表面波励起プラズマCVD装置での上記のプラズマ発生ならびに成膜動作を継続したまま、基板9を戴置した基板トレイ10を、金属製ベルトコンベア11を用いて、基板トレイ10を位置Bから位置Aに移動する(ステップS6)。基板トレイ10が位置Bから位置Aに移動後、マイクロ波電力、プラズマ生成ガス、成膜ガスの供給を停止し、プラズマ発生ならびに成膜を停止する(ステップS7)。
【0024】
成膜終了後、基板9を反応室1から取り出す場合は、ステップS7以降に更に、基板9を基板トレイ10ごとロードロック室へ搬出するが、これらは図3では省略してある。
なお、上記の表面波プラズマCVD装置の動作において、基板トレイが成膜位置(位置B)にあるか、または待機位置(位置A)にあるかは、上述した前記の基板トレイ位置確認センサ(不図示)によって行っている。
【0025】
以上に示す本発明によるプラズマCVD装置を用いた成膜方法でのパーティクル発生の減少効果について、図4、5を参照して以下に説明する。
【0026】
<本発明による基板へのパーティクル堆積減少効果>
図4は成膜を開始する際に、放電ならびにプラズマ発生ガスおよび成膜ガス供給開始時から一定時間、基板9を成膜位置Bへ移動せず、待機位置Aに待機させることによって、基板9表面へのパーティクル堆積量が減少することを示す。すなわち、このパーティクル堆積量が成膜位置Bまで移動するまでの待機時間に依存することを示す。
【0027】
図4中の最も左側の棒グラフ(a)(放電開始から成膜位置へ移動開始までの待機時間が0)では、放電開始前に金属製ベルトコンベア11によって基板トレイ10が成膜位置Bに移動されている。
なお、金属製ベルトコンベア11によって基板トレイ10を移動した際にパーティクルの発生はほとんど無いことが確認されている。したがって、マイクロ波電力供給による放電開始前に金属製ベルトコンベア11により基板トレイを移動しておいても、基板表面に付着するパーティクルは、ほとんどマイクロ波供給開始による放電開始時に発生するパーティクルである。
【0028】
放電開始から10秒後に基板トレイ10を成膜位置Bに移動した場合(図4中央の棒グラフ(b))は、基板9に付着するパーティクルが大幅に減少する。このパーティクルの減少は、基板トレイ10を放電開始から30秒後に成膜位置Bに移動した場合(図4右側の棒グラフ(c))にもほぼ同程度である。
【0029】
図4で示す例では、基板トレイ10の成膜位置Bへの移動の待機時間が10秒程度で、基板表面に付着するパーティクル量が最少となったが、この最適の待機時間は成膜条件(マイクロ波電力等)や、反応容器内部(防着板、反応容器壁など)の状態により異なるので、待機時間は適宜調整する。
【0030】
図5は成膜を終了する際に、放電ならびにプラズマ発生ガスおよび成膜ガス供給を停止する前に、基板9を待機位置Aに移動することによって、基板9へのパーティクル堆積量が減少することを示す。
図5中の(d)は、放電停止前に基板を待機位置Aに移動した場合に、それまでの成膜工程で基板9に堆積したパーティクルの量を示す。また図5中の(e)は、基板9を成膜位置Bに置いたまま、上記のように放電ならびにプラズマ発生ガスおよび成膜ガス供給を停止した場合に、基板9上に堆積したパーティクルの量を示す。
【0031】
図5から明らかなように、放電を停止した際に基板9を成膜領域から待機領域に移動させない場合は、基板上に多くのパーティクルが堆積することが分かる。また、放電を停止する前に、基板9を待機位置Aに移動することによって、図5(d)に示すように基板9に堆積するパーティクルを大幅に減少することができる。
【0032】
上記では、表面波プラズマCVD装置を用いて、有機ELパネルなどの基板9に窒化珪素膜(SiN膜)の反射防止膜を成膜する場合について説明した。しかし本発明は、窒化珪素膜の成膜に限定されない。例えば成膜ガスを変更することによってSiN膜以外の成膜を行う場合や、プラズマ生成ガスを変更してエッチングを行う場合にも適用可能である。
【0033】
また、上記では成膜装置として特に、表面波プラズマを発生させるために、マイクロ波電源(不図示)、導波管2、スロットアンテナ3、誘電体板4を含む表面波プラズマ発生装置を備えた、表面波プラズマCVD装置を用いた成膜装置を例に本発明の装置ならびに方法について説明した。しかしながら、本発明は表面波プラズマ生成装置に限定されず、2つの電極の間にプラズマを発生させて成膜を行う他の種々の装置でも実施可能である。
例えば、平行平板型プラズマCVD装置(PECVD装置)の場合には、上記の表面波プラズマ発生装置の代わりに、高周波(RF)印加用のRF電源とRF印加用の平板型金属電極を用い、また金属製ベルトコンベア11をGND側電極として用いて、これら2つの電極の間にプラズマを発生することが可能であり、したがってPECVD装置においても同様に本発明を実施できることは明白である。
更に同様に、2つの電極間で発生したプラズマを用いたスパッタリング装置による成膜においても、本発明を用いることが可能である。
【0034】
なお、表面波プラズマCVD装置の大きな特徴は、原理的にPECVD装置のように対向電極を必要としないため、発生するプラズマは、平行平板型プラズマCVD装置においては対向電極(GND側電極)の一部となる基板トレイの位置に影響されないことである。そのため、プラズマ発生中に基板を移動させても、誘電体板4付近に発生した表面波プラズマの密度は変化しない。また表面波プラズマは、誘電体板4の近傍に発生するので、誘電体板4あるいは、表面波プラズマの発生領域から離れた場所に基板トレイが位置していれば、表面波プラズマの密度には影響しない。更に、表面波プラズマの発生には、PECVD装置のように基板を戴置するステージに相当する基板トレイ10や金属製ベルトコンベア11をGND側電極として用いないので、基板トレイ10は単に接地されていればよく、接続についてはそれほど厳しい条件はない。
【0035】
本発明は上記に説明した実施形態に限定されず、さらに種々の変形実施が可能である。
<本発明の実施形態の変形例>
上記の説明では、成膜が行われる基板は往復運動可能な金属製コンベアベルト11に戴置されるとしたが、基板を戴置するものは往復運動が可能なものであればどのようなものであってもよい。ただし、反応室1内の圧力を一定に保つため、真空排気のコンダクタンスに影響を与えないような構造が必要である。
例えば、金属製コンベアベルトの代わりに、図6に示すような、複数のローラー13(基板トレイ10を搬送できるような、基板トレイの奥行きの長さに対応した長さを持つローラー)によって、基板トレイが成膜領域(位置B)と待機領域(位置A)の間を往復するようにしてもよい。
なお、本発明をPECVD装置に適用する場合には、ローラーを金属製のローラーとし、これをGND側の対向電極とすればよい。
【0036】
<本発明のその他の変形実施例>
なお、上記の本発明の実施形態において、複数の基板トレイ位置確認センサ(不図示)によって、基板トレイ10が成膜位置にあるかまたは待機位置にあるか検出して、プラズマ発生を制御してもよい。例えば、反応室1にプラズマ生成ガスを導入し、マイクロ波電力を更に導入してプラズマ6を生成する時に、基板トレイ10が待機位置(位置A)になく成膜位置(位置B)にある場合は、プラズマ発生開始を禁止するようなインターロック装置を設ける。すなわち、このインターロック装置は、プラズマ生成の開始前に基板トレイ10が位置Bにある場合は、プラズマ生成ガスとマイクロ波電力を反応室1に導入できないようにする。
【0037】
同様に、このインターロック装置は、成膜終了時にプラズマ6の生成を停止しようとする際に、基板トレイ10が位置Aに移動していない場合には、プラズマ6の生成を停止することを禁止する。すなわち、プラズマ生成を停止する前に基板トレイ10が位置Aに移動していない場合はプラズマ生成ガスとマイクロ波電力の反応室1への供給を停止しないようにする。
【0038】
また、本発明のプラズマCVD装置には、プラズマ発生開始からの時間を計測するタイマー(不図示)をさらに備えてよい。これにより、プラズマ発生開始から所定時間経過後に基板を成膜位置Bに移動するように、成膜工程を自動化することが可能となる。
さらに、このタイマーで計測されたプラズマ発生開始から所定の時間が経過してから、基板トレイ10の待機位置Aから成膜位置Bへの移動が可能となるように、インターロック装置を動作させることも可能である。このような動作のインターロック装置によって、基板へのパーティクル堆積がもっとも少なくなるように成膜工程を自動化することが可能となる。
【0039】
上記のプラズマCVD装置は、このプラズマCVD装置を制御する不図示のマイクロコンピュータを含む制御装置をさらに備えてよい。この制御装置によって、上記の基板トレイ位置確認センサおよびタイマーからの出力信号に基づいて、また上記インターロック装置の動作状態に基づいて、プラズマの発生開始/発生停止および基板トレイの移動を制御することによって、上述の本発明の装置による基板の成膜工程のさらなる自動化を行うことが可能となる。上記のインターロック装置を、このマイクロコンピュータに組み込まれたソフトウェアによる、プラズマCVD装置の制御で実現することも可能である。
【0040】
なお、上記のインターロック装置が作動して、プラズマの発生開始/発生停止が禁止された場合、あるいは基板トレイの移動が禁止された場合には、プラズマCVD装置の操作者に対し、基板トレイ10の位置が適切でないことを知らせる警告を発するようにしてもよい。この警告は表面波プラズマCVD装置に設けられた音声発生装置のようなもので行ってもよく、またプラズマCVD装置がコンピュータ等により遠隔で操作・監視されているような場合は、警告信号をこのコンピュータのディスプレイに表示するようにしてもよい。
【0041】
上記で、本発明の実施形態およびその変形実施の例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1‥ 真空容器(反応室)
2‥ マイクロ波導波管
3‥ スロットアンテナ
4‥ 誘電体板
5‥ プラズマ生成ガス放出口
6‥ プラズマ
7‥ 成膜ガス放出口
8‥ 防着板
9‥ 基板
10‥ 基板トレイ
11‥ 金属製コンベアベルト
12‥ 排気口
13‥ ローラー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内において基板にプラズマを用いた処理を行うプラズマ処理装置であって、
前記真空容器内に前記基板にプラズマ処理を行う処理領域とプラズマ処理を行わない待機領域とを備え、
前記真空容器内に、前記基板を戴置した基板トレイが前記処理領域と前記待機領域との間で移動可能とする基板トレイ移動手段と、
前記プラズマの発生開始後に、前記基板トレイの前記待機領域から前記処理領域への移動を可能とし、前記基板トレイの前記処理領域から前記待機領域への移動後に前記プラズマの生成停止を可能とするインターロック手段とを更に備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置において、
前記プラズマの発生開始からの時間を計測するタイマーを更に備え、前記インターロック手段は、前記タイマーで計測された前記プラズマの発生開始からの時間が所定時間経過するまでは、前記基板トレイの前記待機領域から前記処理領域への移動を禁止することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプラズマ処理装置において、
前記基板トレイの位置が前記処理領域にあるかまたは前記待機領域にあるかを検出する基板トレイ位置検出手段をさらに備え、前記インターロック手段は、前記基板トレイ位置検出手段によって検出された前記基板トレイの位置が前記処理領域にある場合は、前記プラズマの発生開始を禁止し、前記基板トレイの位置が前記処理領域にある場合は前記プラズマの生成停止を禁止することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置を用いて基板にプラズマ処理を行うプラズマ処理方法であって、
前記基板へのプラズマ処理を開始する際は、プラズマが発生開始してから、前記基板を戴置した前記基板トレイを前記待機領域から前記処理領域に移動し、
前記基板へのプラズマ処理を終了する際は、プラズマ発生を停止する前に、前記基板を戴置した前記基板トレイを前記処理領域から前記待機領域に移動することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置において、
前記プラズマ処理が、前記基板への薄膜の成膜であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマ処理装置において、
前記成膜は、プラズマCVDを用いて行うことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載のプラズマ処理装置において、
前記成膜は、スパッタリングを用いて行うことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項6に記載のプラズマ処理装置において、
前記プラズマ処理装置が表面波プラズマCVD装置であることを特徴とするプラズマ処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−104544(P2012−104544A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249693(P2010−249693)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】