説明

プラズマ処理装置のフィードフォワード温度制御

プラズマ処理チャンバ内の温度を、短いコントローラ応答時間及び高い安定性で制御する方法及びシステムが提供される。温度制御は、処理チャンバへのプラズマ電力入力から導かれたフィードフォワード制御信号に少なくとも部分的に基づく。フィードフォワード制御信号は、プラズマ電力に起因する温度の擾乱を補償するものであり、計測温度と所望の温度との間の誤差を打ち消すフィードバック制御信号と組み合せることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般にプラズマ処理装置に関し、より具体的にはプラズマ処理チャンバを用いたワークピースの処理中の温度を制御する方法に関する。
本出願は、2010年1月29日出願の米国仮特許出願第61/299,818号及び2010年10月15日出願の米国実用特許出願第12/905,624号の利益を主張するものであり、これらは引用によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
プラズマエッチング又はプラズマ堆積チャンバなどのプラズマ処理チャンバ内で、チャンバ構成要素の温度は、多くの場合、プロセス中に制御すべき重要なパラメータである。例えば、一般にチャック又はペデスタルと呼ばれる基板ホルダの温度を制御し、プロセスレシピ中にワークピースを加熱/冷却して様々な制御温度にすることができる(例えば、エッチング速度を制御するために)。同様に、シャワーヘッド/上部電極又は他の構成要素の温度をプロセスレシピ中に制御して、処理に影響を及ぼすこともできる。通常、チャンバ構成要素の温度を設定点温度に制御するために、放熱器及び/又は熱源が処理チャンバに連結される。PID(比例積分微分)コントローラのようなコントローラが、温度制御される構成要素と放熱器/熱源の間の熱移動のフィードバック制御のために用いられる。十分に大きな積分器を使用しない限り簡単なフィードバック制御には定常偏差が生じる。簡単な比例制御には、外部擾乱があると常に定常偏差が生じる(比例利得が無限大でない限り)。しかし、大きな積分制御を使用すると、大きなオーバーシュートを伴う不満足な過渡事象が生じ、長い整定時間が必要となる。短い応答時間を有し、設定点に収束するのに僅か数秒しか要さない質量流コントローラ(MFC)とは異なり、チャンバ構成要素の温度、例えば、静電チャック又はシャワーヘッドの温度は、プラズマプロセス中に擾乱されたとき、チャックなどの大きな熱質量のために、安定化するのに30秒又はそれ以上を要する可能性がある。従って、擾乱を非常に迅速に補償するためには、フィードバックコントローラ内に大きな積分器の値を用いることができるが、これは温度制御をより不安定にする望ましくない副次的悪影響を及ぼす。
【0003】
さらに、ますます複雑になってきた積層膜に適応するために、多くのプラズマプロセスが、ワークピースを同じ処理チャンバ内での多くの一連のプラズマ条件に曝す。そのようなインサイチュレシピにおける操作(別々に調整されるシステム内ではなく単一の製造装置内で実行される)は、広範囲にわたる温度設定点を必要とし、これがシステムに非線形性をもたらし、その結果、温度がシステムの極限に近い間に起る摂動又は擾乱が応答時間を容認できないものにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、安定性を向上させ、摂動を受けたときに改善された過渡応答及び小さい定常偏差をもたらす、プラズマ処理チャンバの温度制御アーキテクチャが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
プラズマ処理装置によってプラズマプロセスが実行される際に、プロセス又はチャンバ構成要素の温度を制御する方法及びシステムが本明細書で説明される。特定の実施形態において、方法及びシステムは、有利に定常偏差を減らし、応答時間を改善するために、フィードフォワード制御アルゴリズムを組み込む。
【0006】
特定の実施形態は、プロセスチャンバ内の温度が、少なくとも部分的に、プロセスチャンバ内に連結されたプラズマ電力源のプラズマ電力熱負荷に基づくフィードフォワード制御信号を用いて制御される方法を含む。特定の実施形態において、入力プラズマ電力信号の伝達関数は、電力源によるプラズマ電力出力によるプロセスチャンバの加熱を補償するためのものである。1つのそのような実施形態において、プロセスチャンバとプロセスチャンバ外部の放熱器/熱源との間の熱移動は、プラズマ電力信号に基づいて制御され、プロセスチャンバに入力するプラズマ電力から生じる温度の擾乱を補償する。さらなる実施形態において、温度制御方法は、計測された温度と所望の温度との間の誤差を打ち消すためのフィードバック制御信号をさらに含む。
【0007】
一実施形態において、プラズマ電力出力の制御信号入力は、処理中にワークピースを支持するように構成されたチャックへの第1のバイアス電力入力を含み、フィードフォワード制御信号は、バイアス電力入力をチャック温度と関係付ける既定の伝達関数を用いて、加えられたプラズマ電力によるチャックの加熱を補償する。さらなる実施形態において、プラズマ電力出力は、チャックへの第2のバイアス電力入力を含み、フィードフォワード制御信号は、第1及び第2のバイアス電力の合計とチャック温度との間の既定の伝達関数を用いて、加えられたプラズマ電力によるチャックの加熱を補償する。
【0008】
実施形態は、処理システムによって実行されるとき、処理システムが、プロセスチャンバ内の温度を少なくとも部分的に、プロセスチャンバ内部へ連結された電力源からの電力出力に基づくフィードフォワード制御信号によって制御するようにする命令をストアする、コンピュータ可読媒体を含む。特定の実施形態において、コンピュータ可読媒体は、プラズマ電力信号と温度の間の伝達関数を含み、プラズマ電力出力によるプロセスチャンバの加熱を補償するための命令をさらに含む。1つのそのような実施形態において、コンピュータ可読媒体は、プロセスチャンバとプロセスチャンバ外部の放熱器との間の熱移動を制御するための命令を含む。さらなる実施形態において、コンピュータ可読媒体は、計測された温度と所望の温度との間の誤差を打ち消すためのフィードバック制御信号による温度制御のための命令を含む。
【0009】
実施形態は、放熱器/熱源に結合される、温度制御される構成要素を有するプラズマエッチング又はプラズマ堆積システムなどのプラズマ処理チャンバを含む。プラズマ電力源が処理チャンバに連結されて、プロセスチャンバ内に配置されたワークピースの処理中にプロセスプラズマにエネルギー供給する。温度コントローラが、温度制御される構成要素と放熱器/熱源との間の熱移動を、フィードフォワード制御信号によって制御する。フィードバック信号もまた、フィードフォワード信号と組合せて用いることができる。特定の一実施形態において、温度制御される構成要素には、処理中にワークピースを支持するように構成されたチャックが含まれる。さらなる実施形態において、温度コントローラは、プラズマ電力源と通信可能に結合され、その結果、フィードフォワード制御信号は、プラズマ電力源によるプラズマ電力出力に基づいて、温度制御される構成要素のプラズマによる加熱を補償することができる。温度コントローラは、さらに放熱器/熱源(又はそのコントローラ)と通信可能に結合することができ、その結果、フィードフォワード制御信号はさらに、温度制御される構成要素と放熱器/熱源との間の温度差に基づくことができる。
【0010】
本発明の実施形態は、本明細書の結論部において具体的に指摘され、明確に特許請求される。しかし、本発明の実施形態は、構成及び操作の方法の両方に関して、その目的、特徴及び利点と共に、以下の詳細な説明を添付の図面と共に読みながら参照することにより最も良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による、フィードフォワード制御要素及びフィードバック制御要素の両方を含んだ温度制御システムを示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による、プラズマプロセスチャンバの温度を図1に示した制御システムを用いて制御する方法における特定の動作を示すフロー図を示す。
【図3A】本発明の一実施形態による、図2に示す方法を実行するための温度コントローラを含んだプラズマエッチングシステムの略図を示す。
【図3B】本発明の一実施形態による、図3Aのプラズマエッチングシステムにおいて用いられる液体熱源及び放熱器に関するバルブ及び配管の略図を示す。
【図3C】本発明の一実施形態による、利得群の参照テーブルを示す。
【図3D】本発明の一実施形態による、プラズマプロセスレシピ内の2つのステップの間の設定点温度の変化に対処するための制御アルゴリズムを示す。
【図3E】本発明の一実施形態による、図3Dの制御アルゴリズムによって用いられる利得群の参照テーブルを示す。
【図4】本発明の一実施形態による、図3Aに示したプラズマエッチングシステムに組み込まれる例示的なコンピュータシステムのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明において、本発明の実施形態の十分な理解を与えるために多くの特定の細部が説明される。しかし、当業者であればそれらの特定の細部を用いずに他の実施形態を実施することができることを理解するであろう。他の例では、本発明を不明瞭にしないように、周知の方法、手続き、構成要素及び回路は詳しく説明されていない。以下の詳細な説明の幾つかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビット又はバイナリデジタル信号に対する動作のアルゴリズム及び記号表現を用いて示される。これらのアルゴリズムによる記述及び表現は、データ処理技術分野の当業者が彼らの仕事の内容を他の当業者に伝えるのに用いる技術であり得る。
【0013】
本明細書において、アルゴリズム又は方法は、一般的に、所望の結果を導く自己矛盾のない行為又は動作のシーケンスであると考えられる。これらは物理量の物理的処理を含む。通常、必ずではないが、これらの量は、ストアし、伝達し、結合し、比較し、又はその他の操作することができる電気又は磁気信号の形態を取る。主として共通使用の理由で、これらの信号をビット、値、要素、記号、文字、項、レベル、数などと呼ぶことが場合により便利であることが分かっている。しかし、これら及び類似の用語の全ては、妥当な物理量に関連付けられるべきものであり、それらの物理量に付けられた便利なラベルに過ぎないことを理解されたい。
【0014】
特段の断りのない限り、以下の考察から明白なように、本明細書を通して、「処理すること」、「計算すること(computing)」、「計算すること(calculating)」、「決定すること」などの用語を使用する考察は、コンピュータ若しくはコンピューティングシステム、又は類似の電子的コンピューティングデバイスの動作及び/又はプロセスについて言及するものであり、これら動作及び/又はプロセスは、コンピューティングシステムのレジスタ及び/又はメモリ内の電子的量などの物理量として表されるデータを操作及び/又は変換して、コンピューティングシステムのメモリ、レジスタ又は他の類似の情報記憶装置、伝送又は表示装置内の物理量として同様に表される他のデータに変換することが理解される。
【0015】
本発明の実施形態は、本明細書における動作を実行するための装置を含むことができる。装置は、所望の目的のために特別に構築することができ、又は、装置内にストアされたプログラムによって選択的にアクティブにされ又は再構成される汎用コンピューティング装置を含むことができる。そのようなプログラムは、例えば、それらに限定されないが、フロッピーディスクを含む任意の型のディスク、光ディスク、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD−ROM)、磁気光ディスク、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的プラグラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プラグラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)、磁気又は光カード、又は電子的命令をストアするのに適し且つコンピューティング装置のシステムバスに結合することができる任意の他の型の媒体などの記憶媒体にストアすることができる。
【0016】
用語「結合された(coupled)」及び「接続された(connected)」並びにそれらの派生用語は、本明細書では構成要素間の構造的関係を記述するのに用いることがある。これらの用語は互いに同義であることを意図したものではないことを理解されたい。むしろ、特定の実施形態において「接続された」は2つ又はそれ以上の要素が互いに直接物理的又は電気的に接触することを示すのに用いられることがある。「結合された」は2つ又はそれ以上の要素が直接又は間接(それらの間の他の介在要素により)に物理的又は電気的に相互に接触すること、及び/又は2つ又はそれ以上の要素が協働するか又は互いに相互作用(例えば、効果を及ぼす関係のような)することを示すように用いられることがある。
【0017】
本明細書で説明する、プロセス又はチャンバ構成要素の温度を制御する方法及びシステムの実施形態は、擾乱伝達関数を補償するフィードフォワード制御信号を生成するフィードフォワード制御ラインを介しての温度制御エフォート(effort)を与える。より具体的には、フィードフォワード制御伝達関数は、擾乱伝達関数と等しく且つ逆向きで、制御される温度に対する擾乱を無効にすることが好ましい。さらなる実施形態において、フィードフォワード制御信号がフィードバック制御エフォートに加えられ、その結果、フィードバックループは、より小さい制御エフォートを与えるように求められるので、従って、温度誤差修正のためのフィードバック利得は、フィードフォワード制御信号が無い場合に要求されるよりも低くすることが可能になる。より低いフィードバック利得により、従来のプラズマ処理システムと比べて、改善された温度安定性及び改善された過渡応答(例えば、オーバーシュートの減少、立ち上がり時間の短縮など)が実現される。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態による、フィードフォワード制御要素(例えばF(s)115)及びフィードバック制御要素(例えばG(s)120)の両方を含んだ、ラプラス領域における温度制御システム100を示すブロック図である。市販の温度コントローラには擾乱補償のためのフィードフォワード入力が無い(例えば、計測された制御温度150及び設定点温度106を含む入力によるフィードバック制御のみを与える)ので、特定の実施形態は、フィードバック伝達関数G(s)120に関する制御計算を、自律的温度制御段階(例えば、放熱器又は熱源の個別のPIDコントローラ)から出発して、フィードバック制御エフォート及びフィードフォワード制御エフォートの両方を計算するプラズマ処理システムの統合制御ソフトウェア段階125に移行させる。本明細書でさらに説明するように、個別の温度コントローラは、次に、温度制御システム100を実施する命令を実行する統合プラズマチャンバ制御ソフトウェア段階125の指示の下で動作する制御アクチュエータ(例えば、バルブ、抵抗素子など)の単なるドライバとして、手動モードで動作することができる。しかし、代替の実施形態において、個別の温度コントローラは、統合制御ソフトウェア段階125からオフロードされる関連づけられた制御計算により、本明細書で説明するフィードフォワード制御をもたらすように構成される。
【0019】
図1に示すように、温度制御システム100はフィードフォワード伝達関数F(s)115を含み、これはワークピースの処理中にプラズマプロセスチャンバに導入されるプラズマ電力105を入力として用いる。フィードフォワードラインに入力するプラズマ電力105は、感知できる熱負荷を温度制御されるシステム構成要素に加える、RF発生器、マグネトロンなどのプラズマ電力源によるいずれかの電力出力に基づくものとすることができる。ひとつのそのような実施形態において、プラズマ電力105は、処理チャンバへの複数の電力入力の加重和としてモデル化される。例えば、プラズマ電力の加重和はc1*P1+c2*P2+c3*P3に等しく、ここでP1、P2及びP3はそれぞれバイアス又はソース電力である。重みc1、c2及びc3は任意の実数とすることができ、通常は正の実数であるが、構成要素の加熱がソース電力の増加と共に実際に減少する特定の実施形態においては、ソース電力の重みは負である。
【0020】
フィードフォワード伝達関数F(s)115は、擾乱伝達関数D(s)110をエミュレートするものであり、フィードフォワード制御信号uを出力して擾乱伝達関数D(s)110と逆符号の制御エフォートをもたらし、プラズマソース電力の熱負荷に起因する擾乱から生じる、制御温度150の上昇を補償する。擾乱伝達関数D(s)110は、プラズマ電力105による熱負荷を、特定の熱時定数τを有するプラズマ処理システムの制御温度150の上昇に関係付ける。例えば、時刻tにおける0Wから1000Wまでのプラズマ電力の階段関数的増加を、擾乱伝達関数D(s)110によって、システムの温度の経時的上昇にマッピングすることができる。
【0021】
図示した実施形態において、フィードフォワード制御信号uは、フィードバック伝達関数G(s)120がフィードバック制御信号νを与えるフィードバック制御ループに結合される。温度制御システム100は、フィードバック制御信号νを、制御温度150と設定点温度106との間の差に対応する誤差信号eの補正のために保持する。
【0022】
図1に示す実施形態において、フィードフォワード制御信号uは、設定点温度106と共にアクチュエータ伝達関数G2(s)130及び熱質量伝達関数H(s)135に入力されて、出力される制御温度150に対する擾乱伝達関数D(s)110の効果を補償する。アクチュエータ伝達関数G2(s)130は、温度制御される構成要素と放熱器との間の熱移動を制御するアクチュエータの機能を含み、さらに温度制御される構成要素と熱源との間の熱移動を制御するアクチュエータの機能を含むことができる。図1に示すように、フィードバック制御のアクチュエータはフィードフォワード制御のためにも使用され、その結果、フィードフォワード伝達関数F(s)115の付加が、既にプラズマ処理チャンバに適合させることができる従来のフィードバック制御システムと同じアクチュエータを用いて実施することができる。アクチュエータは、当技術分野で普通に用いられるいずれかの方法で実施することができる。例えば、一実施形態において、アクチュエータは、温度制御される構成要素と放熱器/熱源の間に結合されて流体冷媒の流速を制御する1つ又はそれ以上のバルブを含む。さらなる実施形態において、アクチェータは、温度制御される構成要素に結合された1つ又はそれ以上の抵抗加熱素子を含む。熱質量伝達関数H(s)135は、放熱器/熱源及び温度制御される構成要素などの熱容量の関数を含む。
【0023】
従って、図1に示す例示的な実施形態に関して、フィードフォワード伝達関数F(s)115は次の形を取る。

、ここで

、及び

【0024】
図2は、本発明の一実施形態による、図1に示した制御システム100を用いて温度を制御する方法における特定の動作を示すフロー図である。図3Aは、本発明のさらなる実施形態において、方法200によって温度が制御される構成要素を含むプラズマエッチングシステム300の断面略図を示す。プラズマエッチングシステム300は、当技術分野で既知のいずれかの型の高性能エッチングチャンバ、例えば、それらに限定されないが、米国カリフォルニア州所在のアプライドマテリアルズ(Applied Materials)社製のEnabler(商標)、MxP(登録商標)、MxP+(商標)、Super−E(商標)、DPS II AdvantEdge(商標)G3、又はE−MAX(登録商標)チャンバとすることができる。他の市販のエッチングチャンバを同様に制御することができる。例示的な実施形態をプラズマエッチングシステム300との関連で説明するが、本明細書で説明する温度制御システムの構成は、温度制御される構成要素に対する熱負荷を与える他のプラズマ処理システム(例えば、プラズマ堆積システムなど)にも適合可能である。
【0025】
プタズマエッチング・システム300は、接地したチャンバ305を含む。基板310が開口315を通して挿入され、温度制御静電チャック320に締結される。基板310は、プラズマ処理技術分野で通常用いられるいずれかのワークピースとすることができ、本発明はこの点で限定されることはない。特定の実施形態において、温度制御チャック320は複数の区域を含み、各区域は独立に設定点温度106(図1)に制御可能である。例示的な実施形態において、第1の熱区域322は基板310の中心に近接し、第2の熱区域321は基板310の外周/縁部に近接する。プロセスガスが、ガス源345から質量流コントローラ349を通してチャンバ305の内部に供給される。チャンバ305は、高容量の真空ポンプ排気管355に接続された排気バルブ351を介して排気される。
【0026】
プラズマ電力がチャンバ305に加えられると、基板310の上の処理領域内にプラズマが形成される。プラズマバイアス電力325をチャック320(例えば、カソード)に結合して、プラズマにエネルギーを供給する。プラズマバイアス電力325は、通常、約2MHz乃至60MHzの低周波数、特定の一実施形態においては13.56MHz帯の周波数を有する。例示的な実施形態において、プラズマエッチングシステム300は、2MHz帯周辺で動作する第2のプラズマバイアス電力326を含み、これがプラズマバイアス電力325と同じRFマッチ(match)327に接続される。プラズマソース電力330がマッチ(図示せず)を通してプラズマ生成要素335に結合されて高周波数ソース電力を生じ、誘導的に又は容量的にプラズマにエネルギーを供給する。プラズマソース電力330は、通常、しかし必須ではないが、プラズマバイアス電力325よりも高い、例えば100乃至180MHzの周波数、特定の実施形態においては162MHz帯の周波数を有する。バイアス電力は、より直接的に基板310のバイアス電圧に影響して、基板310のイオン衝撃を制御し、一方ソース電力は、基板310上のバイアスには比較的依存せずに、プラズマ密度により直接的に影響する。とりわけ、制御システム100によって温度制御されるシステム構成要素はチャックに限定されず、また温度制御される構成要素がプラズマ電力をプロセスチャンバ内に直接結合する必要もない。例えば、代替の実施形態において、プロセスガスがそれを通してプラズマプロセスチャンバに入るシャワーヘッドを、温度制御システム100で制御することができる。そのようなシャワーヘッドの実施形態の場合、シャワーヘッドは、RF電極として機能することができ、又は機能しなくてもよい。
【0027】
温度コントローラ375は、システムコントローラ370の統合温度制御ソフトウェア段階として、温度制御方法200を実行するものであり、ソフトウェア若しくはハードウェアのいずれか、又はソフトウェア及びハードウェアの両方の組み合せの構成とすることができる。温度コントローラ375は、チャック320と、プラズマチャンバ305外部の熱源及び/又は放熱器との間の熱移動の速度に影響を及ぼす制御信号を出力する。図2に戻ると、方法200は待ち状態の動作201で開始する。サンプル時間Tcalcが経過すると、動作205において、現在の制御温度150(図1)が取得され、設定点温度106が取得され、プラズマ電力105が取得される。放熱器の温度設定点を取得することもできる。図3に示す例示的な実施形態において、温度コントローラ375は、チャック温度センサ376から制御温度の入力信号を受け取る。温度コントローラ375は、例えばメモリ373にストアされたプロセスレシピファイルからチャックの設定点温度を取得し、温度コントローラ375は、本明細書の他箇所で説明するように計測されたプラズマ電力を取得する。
【0028】
例示的な実施形態において、温度コントローラ375は、直接的に、又は間接的に(統合制御ソフトウェア段階125を介して)、冷却器377(放熱器)及び/又は熱交換器(HTX)378(熱源)に結合され、その結果、温度コントローラ375は、冷却器377又は熱交換器(HTX)378の温度設定点を取得することができるようになっている。そのような実施形態において、冷却器377の温度と設定点温度106との間の差(又は熱交換器378の温度と設定点温度106との間の差、又は両方の差)が、プラズマ電力と共にフィードフォワード制御ラインに入力される。冷却器377は、チャック320を冷却器377に熱的に結合する冷媒ループを介して、冷却力をチャック320に供給する。従って、例示的な実施形態において、2つの冷媒ループが使用される。1つの冷媒ループは冷液(例えば、温度設定点−15℃の)を含み、一方別のループは高温の(例えば、温度設定点60℃の)液体を含む。従って、ρが負であるときには、冷却が必要となり、バルブ385が開かれる。同様に、ρが正であるときには、加熱ループのバルブ386が開かれる。しかし、代替の実施形態においては、加熱冷媒ループの代りに電気抵抗ヒータをチャック320に埋め込むことができる。
【0029】
図3Aに示した例示的な実施形態において、温度コントローラ375はさらにパルス幅変調(PWM)コントローラ380に結合される。バルブ385及び386がデジタル式であり、さらに所与の時間に一方のみが開くように動作する実施形態に関して、チャック320の加熱及び冷却は「パルス状」と見なされる。冷却力のパルスは、本明細書の他箇所でさらに説明するように、バルブ385がデューティサイクルによって定められる時間の間、開状態に制御されるときに与えられる。同様に、加熱力のパルスは、バルブ386がデューティサイクルによって定められる時間の間、開状態にあるように制御されるときにチャック320に与えられる。PWMコントローラ380は、バルブ385及び386を、それらバルブが温度コントローラ375によって送信される制御信号に依存するデューティサイクルにおいてデジタル式(即ち、全開又は完全閉鎖のバイナリ状態を有する)である実施形態に合わせて動作させるように構成可能である、普通に入手可能な任意の型のものとすることができる。代替的に、PWM機能をサポートし、デューティサイクルの外部制御をもたらすPIDコントローラ、例えば、それに限定されないが、日本の株式会社山武のアズビルから市販されているもののうちの1つを用いて本明細書で説明するフィードフォワード制御アルゴリズムを実施することができる。代替的に、PWM信号は、コンピュータ(例えば、コントローラ370)のデジタル出力ポートによって生成することができ、その信号を用いて、バルブをオン/オフ位置に制御するリレーを駆動することができる。温度コントローラ375が方法200によって温度制御システム100を実装する実施形態の場合、PWMコントローラ380は、もっぱらデジタルバルブ385のドライバとして利用される。
【0030】
本明細書で説明する全ての制御方法は、本明細書で説明する例示的なデジタルバルブ実装のアナログ実装としての比例バルブ(流量0と全開流量との間で連続可変)に対して適用することができることにも留意されたい。アナログバルブの実施形態に関して、アナログ電圧/電流は、デジタルバルブ実施形態のデューティサイクルに相当して、全開流量に対する率(0及び1を含む0と1の間)を表す。
【0031】
温度コントローラ375は、統合制御ソフトウェア段階125(図1参照)の中に含まれる必要も、それによって与えられる必要もない。具体的には、温度コントローラ375の機能を、代りに別個のシステムによって与えることができる。例えば、それに限定されないが、株式会社山武のアズビルから市販されているもののようなPIDコントローラは、将来、プラズマ電力及び冷却器温度などの付加的なフィードフォワード入力を含めるように設計される可能性がある。別個のシステムはさらに、それらのフィードフォワード入力に基づいてフィードフォワード制御エフォートを決定する機能を有するプロセッサを含むように製造することができる。従って、本明細書で説明する温度制御に関する全ての実施形態は、温度コントローラ375により統合制御ソフトウェア段階125の一面として提供されることも、又はPWMコントローラ380の一面として提供されることもできる。
【0032】
図3Bは、本発明の一実施形態による、図3Aのプラズマエッチングシステム内で用いられる、伝熱流体に基づく熱源/放熱器に関するバルブ及び配管の略図を示す。さらに図示するように、一対の伝熱流体供給ライン381及び382が、冷却器377と、チャック320内に埋め込まれた伝熱流体チャネル(処理中にワークピース310が配置されるチャックの作業面の下)とに、バルブ385(それぞれ、EV4及びEV3)を介して結合される。ライン381はチャック作業面の第1の外側区域の下に埋め込まれた伝熱流体チャネルに結合され、一方ライン382はチャック作業面の第2の内側区域の下に埋め込まれた伝熱流体チャネルに結合されて、2区域冷却を促進する。同様にライン381及び382はまた、バルブ386(それぞれ、EV2及びEV1)を介してチャック320をHTX378に結合して2区域加熱を促進する。戻りライン383及び384は、外側及び内側区域伝熱流体チャネルの各々の、冷却器/HTX377/378に対する結合を、戻りバルブ387及び388を介して完結させる。好ましい実施形態において、現時刻(例えば、Tcalcの経過後)にプロセスチャンバ305内のプラズマにエネルギー供給する実測順方向RFバイアス電力328が、プラズマ熱負荷(例えば、ワット)としてフィードフォワード制御ラインに入力される。プラズマ電力設定点値(例えば、メモリ373にストアされたプロセスレシピのファイルから)もまた、フィードフォワード制御ラインへの入力として用いることができる。そのような電力設定点値は、予め定められたものであり、システムへのプラズマ電力の印加の前、又はプラズマ電力の印加の変更に前に、電力設定点に関してフィードフォワード伝達関数F(s)115を計算することを可能にして、予測制御エフォートを生成することができる。しかし、温度制御システム100が十分迅速に反応できると仮定すると、プラズマ電力105を計測された電力出力信号と結合して、現時刻で印加されるプラズマ電力の精度を高めることが好ましい。そのような実施形態においても、未来時の制御エフォートの決定は依然としてレシピに基づくことになる。
【0033】
一実施形態において、プラズマ電力105は、プラズマ処理中にワークピースを支持するように構成されたチャックに入力する第1のバイアス電力を含む。例えば、プラズマ電力105は、プラズマバイアス電力325(図3)に設定することができる。プラズマ処理システムが複数のバイアス電力をチャックに印加する実施形態の場合は、複数のバイアス電力の(加重)和がプラズマ電力105として温度制御システム100に入力される。例えば、図3に示す例示的な実施形態において、プラズマバイアス電力325及び326の和がプラズマ電力105として入力される。第1及び/又は第2のプラズマバイアス電力がプラズマ電力105として入力されると、フィードフォワード伝達関数F(s)115が、バイアス電力入力(例えば、RFマッチ327から出力された順方向バイアス電力328として計測された)を、擾乱伝達関数D(s)110を補償するための冷却エフォートを定めるフィードフォワード制御信号uと関係付ける。
【0034】
例示的な実施形態においてバイアス電力の和がプラズマ電力105として入力されるが、プロセスチャンバに入力される全プラズマ電力に対する1つ又はそれ以上の電力入力の寄与を、加重の関数により、又は、更には負に加重して、プラズマ電力105から除外することができることに留意されたい。例えば、図3を参照すると、制御システム100(図1)が静電チャック320の温度を制御する場合、プラズマソース電力330が、プラズマ電力105から除外される。そのような実施形態に対しては、プラズマソース電力330によりチャック320に加えられる熱負荷が比較的小さいので、プラズマ電力105は、プラズマソース電力330を含む必要がなく、又はプラズマソース電力330を比較的小さい重み係数で含む必要がある。しかし、制御される温度が処理チャンバ内に入力する全てのプラズマ電力に対する感知できる依存性を有する代替的実施形態において、フィードフォワード伝達関数F(s)115から出力されるフィードフォワード制御信号uには、プラズマソース電力330に関してより大きな重み係数を用いることができる。
【0035】
図2に戻ると、動作210において、温度誤差信号e、フィードフォワード制御信号u、及びフィードバック制御信号νが全てのTcalcにおいて計算される(例えば、メモリ373にストアされる温度コントローラ375(図3)のインスタンスとしての方法200を実行するCPU372によって)。ラプラス領域において、

u(s)=F(s)p(s)

であり、ここでuはフィードフォワード信号であり、Fはフィードフォワード伝達関数であり、pはプラズマ電力である。図3に示す実施形態に関して、フィードフォワード制御信号uは、離散的時間領域において次式のように実施することができ、

式中、P(t)は現在のTcalcにおけるプラズマ電力105の入力であり、TPWMはパルス幅変調コントローラ380の時間増分である。特定の実施形態において、フィードフォワード制御信号uは、現時刻(例えば、Tcalc)におけるプラズマ電力入力に基づくものとして簡単にβ0P(t)として計算される。
【0036】
さらなる実施形態において、未来の時間において要求されることになるプラズマ電力は決定可能(例えば、プロセスレシピファイルから)であるので、フィードフォワード式は、制御温度に対する冷媒流の効果の遅れを補償するための項、θ1P(t+TPWM)+θ2P(t+2TPWM)をさらに含む。別の実施形態において、制御温度150を達成するのに必要な熱移動は、放熱器(例えば、冷却器377)の設定点温度及び/又は熱源(例えば、熱交換器378)の設定点温度に依存し、その結果、付加的な冷媒温度依存項δc(Tsp−Theatsink+δhTSPTheatsourceがフィードフォワード制御信号uに加えられ、ここでTspは制御温度150である。δc及びδhの各々は、設定点と放熱器/熱源の間の温度差の多項式関数として定義することができる。例えば、一実施形態において、δc=a0+a1(Tsp−Theatsink)+a2(Tsp−Theatsink2+a3(Tsp−Theatsink3とされ、δhは、類似の形をとる。全フィードフォワード式はまた、温度依存係数Ωhot及びΩcoldを有し、その結果、最終的なフィードフォワード制御信号uは次式のようになる。


【0037】
同様に、フィードバック制御信号νは、ラプラス領域においてν(t)=G(s)ε(s)であり、離散的時間領域においては以下の様に実施することができる。

式中、e(t)は、Tcalcにおける温度誤差信号(制御温度150と設定点温度106との間の差)である。特定の実施形態において、フィードバック制御信号νは、簡単にλ0e(t)として計算される。動作210があらゆるTcalcで実行される間、制御の計算には、時刻t、t−TPWMなどに対応する多少低頻度で入力する入力温度及びプラズマ電力値が使用される。u、ν、プラズマ電力105(P)、制御温度150、及び設定点温度106の値をデータアレイにストアすることができ、t、t−TPWMの離散的時間に対応するストアされた値は、次にその後の制御計算に用いることができる。
【0038】
動作215において、制御アクチュエータ出力信号ρが、フィードフォワード信号uとフィードバック信号νとの組合せから計算され、動作220においてアクチュエータに出力される。一実施形態において、定数利得Kνがフィードフォワード制御信号uに適用され、定数利得Kuがフィードフォワード制御信号νに適用され、その結果制御アクチュエータ出力信号ρはρ(t)=Kvν−Kuuのように計算される。利得Kν、Kuはシステムオペレータに、組み合せられたフィードフォワード及びフィードバック制御ラインに2つの簡単な係数でアクセスするための簡単なインタフェースを与え、1つ又はそれ以上の変数(キー)に基づいて温度コントローラにより決定される一群の利得値の一部分として提供されることができる。そのような一実施形態において、利得の群は、現在のレシピステップに関するチャンバ305への少なくともプラズマ電力入力に基づき、データベース又は参照テーブルからアクセスされる。図3Cに示す別の実施形態において、プラズマ入力電力及び設定点温度のキー値対に関連する第1の群の利得値が、第1の実行レシピステップのために決定される。図3Cに示すように、設定点温度486が第1のキー値であり、プラズマ電力入力485が第2のキー値である。システム100における種々の制御信号の利得値(例えば、Kv、Ku)を含む利得群1、2、3などを、温度486、プラズマ電力入力485又は実行レシピステップの条件に対応する2つの対から決定することができる。次に特定の利得群内で定義される利得を、本明細書の他箇所で図2を参照しながらさらに説明するように適用することができる。
【0039】
制御温度が実行レシピのステップの間で変更される(例えば、ポリマー堆積の制御を支援するためなど)実施形態において、過渡仕様の制御パラメータを決定して温度コントローラ375により伝達することができる。図3Dは、本発明の一実施形態による、プラズマ処理レシピ中で実行される2つの連続したステップの間での設定点温度の変更に対処するための過渡制御期間494を示す。レシピステップN(301)及びレシピステップN+1(302)を、x軸方向のレシピステップ492及びy軸方向の設定点温度491によって示す。図示した実施例において、1000Wのプラズマ入力電力が、レシピステップN(301)中に印加され、その間、設定点温度は30℃である。レシピステップN+1(302)に対しては、5000Wのプラズマ電力が設定点温度50℃で印加される。過渡制御期間494が設定点温度の変化及び/又はプラズマ電力の変化に依存する場合の実施形態においては、過渡応答利得群(例えば、高利得値を定義する)が、設定点温度の変化率を達成するのに要する時間量にわたって適用される。例えば、図4Dにおいて、過渡制御期間494は、ステップN(301)とステップN+1(302)との間の20℃の温度上昇の90%に対して、即ち温度が閾値493(48℃)に達するまで続く。従って、この過渡的な利得値の群は、設定点温度がより大きく変化するときにより長い期間適用される。同様のアルゴリズムをプラズマ電力の変化の大きさに基づいて適用することができ、例えば、ステップ間のプラズマ電力変化がより大きいほど、過渡制御期間494の継続時間が長くなる。
【0040】
一実施形態において、利得群(例えば、Kν、Ku)が含む過渡応答は、プラズマ入力電力の変化又は設定点温度の変化のうちの少なくとも1つに関連付けられ、さらに、プラズマ入力電力の変化と設定点温度の変化とを対にしたキー値に関連付けることができる。例えば、図3Eは、例えば、図3Dの過渡制御期間494に使用される過渡利得群に関する参照テーブルを示す。図3Eに示すように、過渡利得群はプラズマ入力電力の変化496及び設定点温度の変化495に関連付けられる。従って、特定の実施形態において、利得群及び過渡利得群を、処理システムにより実行されるレシピファイル内の設定に基づいて決定し、構成要素温度の制御を向上させることができる。
【0041】
制御アクチュエータ出力信号ρの値に応じて、1つ又はそれ以上の放熱器及び熱源の間の熱移動が変調される。従って、図3Aにおいて、制御アクチュエータ出力信号ρが第1の符号(例えば、ρ<0)を有する場合、冷却器377とチャック320との間の熱移動を増加させて制御温度150を下げるデューティサイクルでバルブ385を駆動させるコマンドを、PWMコントローラ380により実行可能な形態で供給することができる。制御アクチュエータ出力信号ρが第2の符号(例えば、ρ>0)を有する場合、駆動して熱交換器378とチャック320との間の熱移動を生じることにより制御温度150を上昇させる第2のデューティサイクルでバルブ386を駆動させるコマンドをPWMコントローラ380によって供給することができる。例えば、プラズマ電力を以前のレベルより低下させ(例えば、オフにする)、ρがより大きな負値からより小さい負値に変化するレシピステップに関する状況において、冷却器377からの冷媒流は、バルブ385のデューティサイクルの低下により減少する。全プラズマ電力が一定であるが設定点温度が上昇する状況においては、再びρがより大きい負値からより小さい負値に変化し、冷却器377からの冷媒流がバルブ385のデューティサイクルの低下により減少する。ρが正値に変化すると、バルブ386のデューティサイクルが0から正値に変化し、これにより熱交換器378からチャック320への高温冷媒の流れが生じる。
【0042】
図4は、本明細書で説明する温度制御動作を実行するのに使用できるコンピュータシステム500の例示的形態の機械の図的表示を示す。一実施形態において、コンピュータシステム500は、プラズマエッチングシステム300内のコントローラ370として備えることができる。代替的実施形態において、機械は、ローカルエリア・ネットワーク(LAN)、イントラネット、エクストラネット、又はインターネット内の他の機械と接続(例えば、ネットワーク接続)することができる。機械は、クライアントサーバネットワーク環境内のサーバ機械又はクライアント機械の資格で、又はピアツーピア(又は分散)ネットワーク環境内のピア機械として、動作することができる。機械は、パーソナルコンピュータ(PC)、サーバ、ネットワークルータ、スイッチ又はブリッジ、又はその機械が行う動作を指定する一組の命令(順次的又は他の)を実行することができる任意の機械とすることができる。さらに、単一の機械のみを図示したが、用語「機械」は、本明細書で説明する方法の何れか1つ又はそれ以上を実施するための一組(又は複数組)の命令を個別に又は共同で実行する機械(例えば、コンピュータ)の任意の集合を含むものと解釈されたい。
【0043】
例示的なコンピュータシステム500は、プロセッサ502、主メモリ504(例えば読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、同期型DRAM(SDRAM)又はRambusDRAM(RDRAM)などのダイナミック・ランダムアクセスメモリ(DRAM)など)、スタティックメモリ506(例えば、フラッシュメモリ、スタティック・ランダムアクセスメモリ(SRAM)など)、及び2次メモリ518(例えば、データ記憶装置)を含み、これらはバス530を介して互いに通信する。
【0044】
プロセッサ502は、1つ又はそれ以上の汎用処理装置、例えば、マイクロプロセッサ、中央処理装置などを表す。プロセッサ502は、1つ又はそれ以上の汎用又は専用処理装置、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラム可能ゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサなどとすることができる。プロセッサ502は、本明細書の他箇所で論じる温度制御動作を実行するための処理論理526を実行するように構成される。
【0045】
コンピュータシステム500は、ネットワークインタフェースデバイス508をさらに含むことができる。コンピュータシステム500はまた、ビデオディスプレイ装置510(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)又は陰極線管(CRT))、英数字入力装置512(例えば、キーボード)、カーソル制御装置514(例えば、マウス)、及び信号発生装置516(例えば、スピーカ)を含むことができる。
【0046】
2次メモリ518は、本明細書で説明した1つ又はそれ以上の温度制御アルゴリズムを具体化した一組又は複数組の命令(例えば、ソフトウェア522)をその上にストアする機械アクセス可能記憶媒体(又はより具体的にはコンピュータ可読記憶媒体)531を含むことができる。ソフトウェア522はまた、完全に又は部分的に、主メモリ504内に、及び/又は、コンピュータシステム500により実行中のプロセッサ502の中に常駐することができ、主メモリ504及びプロセッサ502もまた機械可読記憶媒体を構成する。
【0047】
機械アクセス可能記憶媒体531はさらに、本明細書で説明した温度制御アルゴリズムのいずれか1つ又はそれ以上をシステムに実行させる、処理システムによる実行のための一組の命令をストアするのに用いることができる。本発明の実施形態はさらに、コンピュータシステム(又は他の電子機器)をプログラムして本明細書の他箇所で説明した本発明によるプラズマ処理チャンバの温度を制御することができる、命令をその上にストアした機械可読媒体を含むことができる、コンピュータプログラム製品、又はソフトウェアとして提供することができる。機械可読媒体は、情報を機械(例えば、コンピュータ)により可読な形態でストア又は伝達するための任意の機構を含む。例えば、機械可読(例えば、コンピュータ可読)媒体には、機械(例えば、コンピュータ)可読記憶媒体(例えば、読み出し専用メモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、磁気ディスク記憶装置、光記憶媒体、及びフラッシュメモリ装置など)が含まれる。
【0048】
上記の説明は、例証的であり、限定的なものではないことが意図されている。当業者には、上記の説明を読み理解することによって多くの他の実施形態が明らかとなるであろう。本発明を、特定の例示的実施形態に関連して説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内の修正及び変更を伴って実施することができることを認識されたい。従って、本明細書及び図面は、限定的意味ではなく例証的意味において考慮されるべきである。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲、並びにそれら特許請求の範囲の権利を与えられる等価物の全範囲に関して定められるべきである。
【符号の説明】
【0049】
100:温度制御システム
105、485、496:プラズマ電力
106、486、495:設定点温度
110:擾乱伝達関数D(s)
115:フィードフォワード制御要素(フィードフォワード伝達関数F(s))
120:フィードバック制御要素(フィードバック伝達関数G(s))
125:統合制御ソフトウェア段階
130:アクチュエータ伝達関数G2(s)
135:熱質量伝達関数H(s)
150:制御温度
300:プラズマエッチングシステム
305:接地チャンバ(プラズマチャンバ、プロセスチャンバ)
310:基板(ワークピース)
320:温度制御チャック(静電チャック)
325、326:プラズマバイアス電力
330:プラズマソース電力
335:プラズマ発生要素
351:排気バルブ
377:冷却器
378:熱交換器(HTX)
380:パルス幅変調(PWM)コントローラ
381、382:伝熱流体供給ライン
383、384:戻りライン
385、386:バルブ
387、388:戻りバルブ
494:過渡制御期間
500:コンピュータシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースのプラズマ処理中にプロセス温度を制御する方法であって、
前記ワークピースに対する前記プラズマ処理を実施しているプロセスチャンバへのプラズマ電力の入力を決定するステップと、
前記入力プラズマ電力に基づくフィードフォワード制御信号を用いて前記プロセスチャンバ内の温度を制御するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記フィードフォワード制御信号は、外部放熱器の温度と制御される温度の設定点との間の差にさらに基づき、前記温度を制御するステップは、計測された前記温度と前記温度の設定点との間の誤差を、前記フィードフォワード制御信号に加えられるフィードバック制御信号を用いて補償するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラズマ電力は、前記ワークピースを支持するように構成されたチャックへの第1のバイアス電力入力を含み、前記フィードフォワード制御信号は、前記バイアス電力入力と前記チャックの温度との間の伝達関数を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プラズマ電力は、前記チャックへの第2のバイアス電力入力を含み、前記フィードフォワード制御信号は、前記第1及び第2のバイアス電力の合計と前記チャックの温度との間の伝達関数を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記温度を制御するステップは、前記プロセスチャンバと前記プロセスチャンバ外部の放熱器との間の冷媒流体流量を、少なくとも部分的に前記フィードフォワード制御信号に基づいて制御するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記温度を制御するステップは、前記フィードフォワード制御信号に加えられるフィードバック制御信号に基づいて、前記冷媒流量を制御するステップと、前記チャックに結合された熱源を制御するステップとをさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記冷媒流体流量を制御するステップは、冷媒流体がそれを通して流れるバルブを全開及び完全閉鎖するパルス幅変調デューティサイクルを変調するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記プラズマ電力の熱負荷は、前記プロセスチャンバへのソース電力入力を含み、前記フィードフォワード制御信号は、前記ソース電力入力とプロセスチャンバ温度との間の伝達関数を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記プラズマ処理は、薄膜エッチング及び薄膜堆積から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
処理システムによって実行されるときに前記システムに請求項1に記載の方法を実行させる命令が、その上にストアされることを特徴とするコンピュータ可読媒体。
【請求項11】
温度コントローラであって、
前記温度コントローラによって設定点温度に制御される構成要素を有するプラズマ処理チャンバへのプラズマ電力入力の示度を受け取るためのフィードフォワード入力と、
前記プラズマ電力のフィードフォワード入力に基づいて制御エフォートを生成するフィードフォワード部分を有する温度制御アルゴリズムを実行するための、プロセッサと、
前記プロセッサにより前記温度制御アルゴリズムから生成されたアクチュエータ信号を供給するためのアクチュエータ出力と、
を備え、
前記アクチュエータ信号は、前記プラズマ電力が前記構成要素の温度に及ぼす影響を減らす、
ことを特徴とする温度コントローラ。
【請求項12】
放熱器に結合される、温度制御される構成要素を含むプロセスチャンバと、
前記プロセスチャンバに結合され、前記プロセスチャンバ内に配置されたワークピースの処理中に、プラズマにエネルギー供給するためのプラズマ電力源と、
請求項11に記載の温度コントローラと、
を備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記温度制御される構成要素は、前記処理中に前記ワークピースを支持するように構成されたチャック、又は、前記プロセスチャンバへプロセスガスを供給するように構成されたシャワーヘッドを含むことを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記温度コントローラは、前記プラズマ電力源と通信可能に結合され、前記フィードフォワード制御信号は、前記プラズマ電力源から取得されたプラズマ電力の入力に基づくことを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記フィードフォワード制御信号は、前記プラズマ電力入力と前記温度制御される構成要素の温度設定点とに基づいて利得群を決定することによって前記温度制御される構成要素のプラズマ加熱を補償するためのものであり、
前記利得群は前記フィードフォワード制御ラインに適用される利得値を含む、
ことを特徴とする、請求項12に記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図3E】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−519192(P2013−519192A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551168(P2012−551168)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/062435
【国際公開番号】WO2011/093979
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】