説明

プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法

【課題】プラズマ処理で被処理基体上の層を、例えば窒化又は酸化するALD法で、パージに要する時間を短縮できるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】ヘッド16が、第1の空間S1内の第1の領域で第1のプロセスガスをステージ14に向けて供給する。ヘッド16は、第2の領域R2に退避可能である。ヘッド16は、第1の空間S1内の第1の領域の上方の上部領域Raと第1の領域の下方の下部領域Rbとを画成する。供給源18は、上部領域Raに電磁界エネルギーを供給する。上部領域Raには、第2のプロセスガスが供給される。ヘッド16は、ステージ14を覆い、且つ、下部領域Rbに面する連通路Pの開口を覆う大きさを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の種々の側面及び実施形態は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被処理基体上に層を形成する方法として、ラジカル反応を用いた原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法が知られている。ALD法では、第1のプロセス工程において原料ガスが被処理基体上に供給される。続く第1のパージ工程において、パージが行われ、これにより、被処理基体上に化学吸着している層(例えば、単一の原子層又は単一の分子層)が残され、被処理基体に物理吸着又は化学吸着している残部が除去される。続く第2のプロセス工程では、被処理基体上の層にプラズマ処理が施される。このプラズマ処理で、被処理基体上の層が、例えば窒化又は酸化される。続く第2のパージ工程において、再びパージが行われる。このようなALD法には、例えば、特許文献1に記載されたプラズマ処理装置が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−537979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたプラズマ処理装置では、第1のプロセス工程及び第2のプロセス工程が同じ処理空間で行われる。また、被処理基体に対するプラズマ処理を均一化するために、プラズマ源から被処理基体までの距離は大きくなっている。したがって、この処理空間は比較的大きなものとなり、その結果、パージに要する時間が長くなり得る。
【0005】
このような事情により、当技術分野においては、パージに要する時間を短縮することが要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るプラズマ処理装置は、処理容器、ステージ、ヘッド、供給源、第1の排気手段、及び、第2の排気手段を備えている。処理容器は、第1の空間及び第2の空間を画成する。ステージは、第1の空間の下方且つ前記第2の空間の上方に設けられている。ステージは、第1の空間と第2の空間とを連通させる連通路をその外周に沿って画成する。ヘッドは、層形成用の第1のプロセスガスをステージに向けて供給する。ヘッドは、第1の領域と第2の領域との間で移動可能である。第1の領域は、第1の空間内且つステージの上方の領域である。第2の領域は、ヘッドを退避させるための領域である。ヘッドは、第1の領域に位置するときに第1の空間内に第1の領域の上方の上部領域と第1の領域の下方の下部領域とを画成する。供給源は、上部領域に電磁界エネルギーを供給する。この上部領域には、プラズマ処理用の第2のプロセスガスが供給される。第1の排気手段は、上部領域に連通する。第2の排気手段は、第2の空間に連通する。ヘッドは、第1の領域に位置するときにステージを覆い、且つ、下部領域に面する連通路の開口を覆う大きさを有する。
【0007】
このプラズマ処理装置では、第1の排気手段と第2の排気手段により上部領域と連通路に通じる第2の空間が個別に排気される。したがって、ヘッドが第1の領域に位置するときに第1のプロセスガス及び第2のプロセスガスを同時に供給しても、第1のプロセスガスの上部領域への拡散、及び、第2のプロセスガスの下部領域への拡散が抑制され得る。その結果、第1のプロセスガスを用いた処理後に行なわれるパージは、下部領域及び/又はヘッドの内部の第1のプロセスガスを対象とすることができる。したがって、当該パージに要する時間を短縮することが可能である。
【0008】
一実施形態においては、処理容器内にはパージガス(第1のパージガス)の供給経路(第1のパージガス供給経路)が設けられており、この供給経路は下部領域に面する開口を含んでおり、当該供給経路の開口は、ステージに対して連通路の上記開口よりも側方に設けられており、ヘッドは、更に当該供給経路の開口を覆う大きさを有していてもよい。この実施形態によれば、ヘッドが第1の領域に位置するときに、パージガスを供給することにより、第1のプロセスガスの上部領域への拡散、及び、第2のプロセスガスの下部領域への拡散がより効果的に抑制され得る。
【0009】
一実施形態においては、処理容器には、第1の排気手段に接続する排気経路が設けられており、当該排気経路は開口を含んでおり、当該開口は、上記パージガスの供給経路の開口よりもステージに対して側方に設けられており、ヘッドは、更に当該排気経路の開口を覆う大きさを有していてもよい。この実施形態によれば、ヘッドが第1の領域に位置するときに、ヘッドの周縁部分の下方において上部領域から拡散する第2のプロセスガスを排気することができる。その結果、ヘッドが第1の領域に位置するときの第1のプロセスガスの上部領域への拡散、及び第2のプロセスガスの下部領域への拡散が、更により効果的に抑制され得る。
【0010】
一実施形態においては、プラズマ処理装置は、処理容器内において昇降可能に構成された昇降壁を更に備えていてもよい。昇降壁は、ステージに対して連通路よりも側方に設けられる。この昇降壁は、ヘッドに対面する上面を含む。この実施形態によれば、ヘッドの周縁部に対面する上面を有する昇降壁により、上部領域と下部領域との間のコンダクタンスを低くすることができる。その結果、ヘッドが第1の領域に位置するときの第1のプロセスガスの上部領域への拡散、及び、第2のプロセスガスの下部領域への拡散が、より効果的に抑制され得る。
【0011】
一実施形態においては、昇降壁には、パージガスの供給経路(第1のパージガス供給経路)が設けられており、当該供給経路の開口は昇降壁の上面に設けられていてもよい。この実施形態によれば、ヘッドが第1の領域に位置するときに、パージガス(第1のパージガス)を供給することにより、第1のプロセスガスの上部領域への拡散、及び第2のプロセスガスの下部領域への拡散が、更により効果的に抑制され得る。
【0012】
一実施形態においては、処理容器内には、第2の空間に連通するパージガスの供給経路(第2のパージガス供給経路)が設けられていてもよい。このパージガス(第2のパージガス)により、第2の空間内に第2のプロセスガスが流入することが抑制され得る。その結果、第2の空間内でのパーティクルの発生が抑制され得る。
【0013】
一実施形態においては、プラズマ処理装置は、ステージを下方から回転可能に支持する支柱を更に備え得る。支柱はその外周面に沿って第3の空間を画成し、当該第3の空間は第2の空間に連通しており、第2の空間に連通するパージガスの供給経路(第2のパージガス供給経路)は、第3の空間を介して第2の空間に連通していてもよい。この実施形態によれば、例えばヘッドの移動中にステージを回転させることができ、これにより、被処理基体に対する処理を均一化することが可能となる。また、ステージの回転中に第3の空間にパージガスを供給することにより、支柱の外周面に沿ってプロセスガスが外部に流出することを抑制することができる。
【0014】
本発明の別の側面は、上述したプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法に関するものである。このプラズマ処理方法は、(a)ヘッドを第1の領域に移動させる工程と、(b)第1の領域に配置されたヘッドから第1のプロセスガスを供給する工程と、(c)第1のプロセスガスを供給する工程と並行して、上部領域に電磁界エネルギーを供給し、上部領域に第2のプロセスガスを供給する工程と、(d)第1のプロセスガスを供給する工程と並行して、第1の排気手段及び第2の排気手段による排気を行う工程と、(e)第1のプロセスガスの供給を停止して、第2の排気手段による排気を行う工程と、(f)ヘッドを第2の領域に移動させる工程と、(g)ヘッドを第2の領域に移動させた後に、上部領域に電磁界エネルギーを供給し、上部領域に第2のプロセスガスを供給する工程と、(h)第1の排気手段及び第2の排気手段による排気を行う工程と、を含む。
【0015】
このプラズマ処理方法では、第1のプロセスガスを供給する工程と並行して、上部領域に電磁界エネルギーが供給され、当該上部領域に第2のプロセスガスが供給される。また、第1のプロセスガスを供給する工程と並行して、第1の排気手段及び第2の排気手段による排気が行なわれる。その結果、ヘッドが第1の領域に位置するときの第1のプロセスガスの上部領域への拡散、及び、第2のプロセスガスの下部領域への拡散が抑制され得る。その結果、第1のプロセスガスを用いた処理後に行なわれるパージ(即ち、工程(e))は、下部領域及び/又はヘッドの内部の第1のプロセスガスを対象とすることができる。したがって、当該パージに要する時間を短縮することが可能である。
【0016】
一実施形態においては、上述したように、プラズマ処理装置の処理容器内には、パージガスの供給経路(第1のパージガス供給経路)が設けられており、当該供給経路は下部領域に面する開口を含んでおり、当該供給経路の開口は、ステージに対して連通路の開口よりも側方に設けられており、ヘッドは、更に当該供給経路の開口を覆う大きさを有していてもよい。この実施形態のプラズマ処理装置を用いる場合には、プラズマ処理方法は、第1のプロセスガスを供給する工程と並行して、当該供給経路からパージガス(第1のパージガス)を供給する工程を更に含み得る。この実施形態によれば、ヘッドが第1の領域に位置するときにパージガスが供給されるので、上部領域と下部領域との間に、当該パージガスを用いた障壁が形成される。その結果、第1のプロセスガスの上部領域への拡散、及び、第2のプロセスガスの下部領域への拡散が、より効果的に抑制され得る。
【0017】
一実施形態においては、上述したように、プラズマ処理装置は、処理容器内において昇降可能に構成された昇降壁を更に備え、当該昇降壁は、ステージに対して連通路よりも側方に設けられ、当該昇降壁は、ヘッドに対面する上面を含んでいてもよい。この実施形態のプラズマ処理装置を用いる場合には、プラズマ処理方法は、ヘッドを第1の領域に移動させる工程の後に、昇降壁を上方に移動させる工程を更に含んでいてもよい。この実施形態によれば、昇降壁の移動によってヘッドの移動が阻害されることを防止することができる。また、昇降壁をヘッドに近づけることにより、上部領域と下部領域との間のコンダクタンスを低くすることができる。その結果、ヘッドが第1の領域に位置するときの第1のプロセスガスの上部領域への拡散、及び、第2のプロセスガスの下部領域への拡散が、より効果的に抑制され得る。
【0018】
一実施形態においては、上述したように、昇降壁にはパージガスの供給経路(第1のパージガス供給経路)が設けられており、当該供給経路の開口は昇降壁の上面に設けられていてもよい。この実施形態のプラズマ処理装置を用いる場合には、プラズマ処理方法は、昇降壁を上方に移動させる工程と並行して、供給経路の開口からパージガス(第1のパージガス)を供給する工程を更に含み得る。この実施形態によれば、ヘッドが第1の領域に位置するときにパージガスが供給されることにより、上部領域と下部領域との間に当該パージガスを用いた障壁が形成される。その結果、第1のプロセスガスの上部領域への拡散、及び、第2のプロセスガスの下部領域への拡散が、更により効果的に抑制され得る。
【0019】
一実施形態においては、上述したように、プラズマ処理装置の処理容器内には、第2の空間に連通するパージガスの供給経路(第2のパージガス供給経路)が設けられていてもよい。この実施形態のプラズマ処理装置を用いる場合には、プラズマ処理方法は、ヘッドを第2の領域に移動させる工程と並行して、及び/又は、ヘッドが第2の領域に配置されているときに、第2の空間に連通する供給経路から第2の空間にパージガス(第2のパージガス)を供給する工程を更に含み得る。この実施形態では、ヘッドが第1の領域に配置されていないときに、第2の空間内に第2のプロセスガスが流入することが抑制され得る。その結果、第2の空間内でのパーティクルの発生が抑制され得る。
【0020】
一実施形態においては、プラズマ処理方法は、第2の空間に連通する供給経路(第2のパージガス供給経路)から第2の空間にパージガス(第2のパージガス)を供給する上記工程において、当該パージガスの供給量は、第2の排気手段の排気量より多くてもよい。この実施形態によれば、第2の空間への第2のプロセスガスの流入をより効果的に抑制することができる。
【0021】
一実施形態においては、上述したように、プラズマ処理装置は、ステージを下方から回転可能に支持する支柱を更に備え、支柱はその外周面に沿って第3の空間を画成し、当該第3の空間は第2の空間に連通しており、第2の空間に連通する上記供給経路(第2のパージガス供給経路)は、第3の空間を介して第2の空間に連通していてもよい。このプラズマ処理装置を用いる場合には、プラズマ処理方法は、ヘッドを第1の領域に移動させる工程及び/又はヘッドを第2の領域に移動させる工程と並行して、ステージを回転させつつ、第2の空間に連通する供給経路(第2のパージガス供給経路)からパージガス(第2のパージガス)を供給する工程を更に含み得る。この実施形態によれば、ステージの回転により被処理基体に対する処理を均一化することが可能となる。また、第3の空間にパージガスが供給されるので、支柱の外周面に沿ってプロセスガスが外部に流出ことが抑制され得る。
【0022】
本発明の別の実施形態に係るプラズマ処理装置は、ステージ、処理容器、供給源、第1の排気手段、及び第2の排気手段を備えている。処理容器は、ステージの上方の処理空間、及び、処理空間の側方に位置するプラズマ生成空間を画成する。処理容器には、層形成用の第1のプロセスガスの第1の供給経路が設けられている。この第1の供給経路は、処理空間に接続している。また、処理容器には、プラズマ処理用の第2のプロセスガスの第2の供給経路が設けられている。この第2の供給経路は、プラズマ生成空間に接続している。供給源は、プラズマ生成空間に電磁界エネルギーを供給する。第1の排気手段は、処理空間に連通する。第2の排気手段は、プラズマ生成空間に連通する。
【0023】
このプラズマ処理装置では、第1の排気手段と第2の排気手段により、処理空間とプラズマ生成空間が個別に排気され得る。これにより、処理空間に第1のプロセスガス供給し、同時にプラズマ生成空間に第2のプロセスガスを供給しても、両プロセスガスが拡散して、互いに混合されることが抑制され得る。その結果、第1のプロセスガスを用いた処理後のパージは処理空間のみを対象とすることができので、当該パージに要する時間を短縮することが可能である。
【0024】
一実施形態においては、処理容器は、処理空間を画成する第1の容器と、当該第1の容器の側方外面に取り付けられた第2の容器でありプラズマ生成空間を画成する第2の容器と、を含み得る。
【0025】
一実施形態においては、プラズマ処理装置は、処理空間とプラズマ生成空間との間の領域に配置可能であり、且つ、当該領域から退避可能な可動壁を更に備え得る。この実施形態では、第1のプロセスガスによる処理中に処理空間とプラズマ生成空間との間の領域に可動壁を配置することができる。これにより、処理空間とプラズマ生成空間との間の領域におけるコンダクタンスを低くすることができる。その結果、第1のプロセスガスによる処理中に第2のプロセスガスをプラズマ生成空間に供給しても、当該第2のプロセスガスが処理空間に拡散することをより効果的に抑制することができる。
【0026】
一実施形態においては、第2の排気手段は、処理空間とプラズマ生成空間との間の領域に面する開口を含む排気経路に接続していてもよい。この実施形態によれば、処理空間とプラズマ生成空間との間の領域が第2の排気手段によって排気される。その結果、第1のプロセスガスによる処理中に第2のプロセスガスをプラズマ生成空間に供給しても、当該第2のプロセスガスが処理空間に拡散することをより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の種々の側面及び種々の実施形態によれば、パージに要する時間を短縮可能なプラズマ処理装置が提供される。また、当該プラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図であり、ヘッドが第1の領域に配置された状態を示す図である。
【図2】一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図であり、ヘッドが第2の領域に配置された状態を示す図である。
【図3】一実施形態に係るプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法のシーケンスを示す図である。
【図4】一実施形態に係るプラズマ処理装置の制御部を示す図である。
【図5】別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図であり、ヘッドが第1の領域に配置された状態を示す図である。
【図6】別の実施形態に係るプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法のシーケンスを示す図である。
【図7】別の実施形態に係るプラズマ処理装置の制御部を示す図である。
【図8】更に別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【図9】更に別の実施形態に係るプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法のシーケンスを示す図である。
【図10】更に別の実施形態に係るプラズマ処理装置の制御部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0030】
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図であり、ヘッドが第1の領域に配置された状態を示す図である。また、図2は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図であり、ヘッドが第2の領域に配置された状態を示す図である。図1及び図2に示すプラズマ処理装置10は、処理容器12、ステージ14、ヘッド16、電磁界エネルギーの供給源18、第1の排気装置20、及び、第2の排気装置22を備えている。
【0031】
処理容器12は、その内部空間にステージ14を収容している。処理容器12の内部空間は、第1の空間S1及び第2の空間S2を含んでいる。処理容器12は、ステージ14の上方(図中、X方向)に第1の空間S1を画成しており、ステージ14の下方(図中、−(マイナス)X方向)に第2の空間S2を画成している。
【0032】
一実施形態においては、この処理容器12は、側壁12a、底部12b、及び上部12cを含み得る。側壁12aは、軸線Xに沿って延在する略円筒形状を有している。底部12bは、側壁12aの下端に結合されている。また、上部12cは、側壁12aの上端に結合されている。
【0033】
第1の空間S1は、側壁12aの上側部分の内面によって、当該内面の内方に画成されている。また、第2の空間S2は、側壁12aの下側部分によって画成されている。第2の空間S2は、ステージ14の下方において、軸線X中心の環状の閉曲線に沿って提供され得る。一実施形態においては、ステージ14は、軸線X中心に延在する略円板形状を有している。ステージ14は、その外周に沿って連通路Pを画成している。この連通路Pは、第1の空間S1と第2の空間S2とを連通させている。
【0034】
ステージ14の上面(又は載置面)には、被処理基体Wが載置される。ステージ14は、例えば、静電チャックにより被処理基体Wを吸着することができる。ステージ14は、温度制御器26に接続されている。この温度制御器26によって、ステージ14上に載置された被処理基体Wの温度を制御することができる。
【0035】
一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、支柱24を備え得る。支柱24は、軸線Xに沿って延在する円柱形状を有している。ステージ14は、支柱24によって下方から支持され得る。この支柱24は、モータといった駆動装置28に接続されている。駆動装置28は、支柱24を軸線X中心に回転させることにより、ステージ14を軸線X中心に回転させることができる。
【0036】
第1の空間S1は、ステージ14の上方に当該ステージ14から離間した第1の領域R1を含んでいる。処理容器12は、第1の領域R1に対して側方(図中、Y方向)に第2の領域R2も画成している。処理容器12の内部空間には、第1の領域R1と第2の領域R2との間で移動可能なヘッド16が設けられている。
【0037】
ヘッド16は、層形成用の第1のプロセスガスを被処理基体Wに向けて供給するためのシャワーヘッドである。第1のプロセスガスとしては、例えば、シリコン原子を含むガス、例えばBTBAS(ビスターシャルブチルアミノシラン)等のアミノシランを用いることができる。
【0038】
ヘッド16は、略円板形状を有している。ヘッド16の下面には、第1のプロセスガスを被処理基体W上に供給するための複数の供給孔16hが形成されている。ヘッド16には、支持部36の一端が結合されている。この支持部36は、駆動装置30に連結されている。駆動装置30は、第1の領域R1と第2の領域R2との間でヘッド16を移動させる。なお、第2の領域R2は、ヘッド16をステージ14の上方から退避させることができれば、任意の位置に形成されていてもよい。また、ヘッド16は、軸線Xと並行な軸線中心に支持部36を軸支することによって、第1の領域R1と第2の領域との間で移動可能であってもよい。
【0039】
ヘッド16と支持部36には、複数の供給孔16hに第1のプロセスガスを供給するための供給経路16pが形成されている。この供給経路16pには、ガス供給系32が接続されている。
【0040】
ガス供給系32は、ガス源32a、弁32b、及び流量制御器32cを含んでいる。ガス源32aは、第1のプロセスガスのガス源である。ガス源32aからのガスの供給及び供給停止は、弁32bの開閉動作により切替えられる。また、ガス源32aからのガスの流量は、マスフローコントローラといった流量制御器32cによって調整される。
【0041】
また、供給経路16pには、パージガス供給系34が接続されている(以下、パージガス供給系34によって供給されるガスを「第3のパージガス」ということがある)。この供給系34は、ガス源34a、弁34b、及び流量制御器34cを含んでいる。ガス源34aは、アルゴンのような不活性ガスのガス源である。ガス源34aからのガスの供給及び供給停止は、弁34bの開閉動作により切替えられる。また、ガス源34aからのガスの流量は、マスフローコントローラといった流量制御器34cによって調整される。
【0042】
上述した構成を有するヘッド16は、第1のプロセス工程において、第1の領域R1に配置される(図1を参照)。ヘッド16は、第1の領域R1に配置されているときに、第1の空間S1内において、その上方に上部領域Raを画成し、その下方に下部領域Rbを画成する。第1のプロセス工程においては、ヘッド16は、ステージ14上に載置された被処理基体Wに、下部領域Rbを介して第1のプロセスガスを供給する。これにより、被処理基体W上に第1のプロセスガスに含まれる原料が吸着される。
【0043】
ヘッド16は、第1のプロセス工程に続く第1のパージ工程において、ガス供給系34からの不活性ガスを被処理基体Wに供給することができる。これにより、第1のプロセス工程において吸着された層のうち、被処理基体Wに化学吸着している部分(例えば単一の分子層又は単一の原子層)は残存し、被処理基体Wに物理吸着又は化学吸着している残部は除去される。また、第1のパージ工程では、ヘッド16内に残留した第1のプロセスガスが不活性ガスで置換される。ヘッド16は、第1のプロセス工程及び第1のパージ工程の後に、第2の領域R2に移動される(図2を参照)。
【0044】
処理容器12には、上述した上部領域Raに第2のプロセスガスを供給するための供給経路P2が設けられている。第2のプロセスガスは、第2のプロセス工程におけるプラズマ処理用のガスである。第2のプロセス工程においては、被処理基体Wに吸着された層が窒化又は酸化される。第2のプロセス工程において窒化処理が行なわれる場合には、第2のプロセスガスとして、窒素ガス又はNHガスといった窒素元素を含むガスが用いられる。一方、第2のプロセス工程において酸化処理が行なわれる場合には、第2のプロセスガスとして、酸素ガスといった酸素元素を含むガスが用いられる。
【0045】
供給経路P2は、上部領域Raを画成する側壁12aに形成されている。一実施形態においては、供給経路P2は、空洞P21及び供給孔P22を含んでいる。空洞P21は、側壁12aの内部に形成されており、軸線X中心の環状の閉曲線に沿って延在し得る。供給孔P22は、空洞P21から軸線Xに向かう方向に延びるように形成されている。この供給経路P2には、ガス供給系38が接続されている。
【0046】
ガス供給系38は、ガス源38a、弁38b、及び流量制御器38cを含んでいる。ガス源38aは、第2のプロセスガスのガス源である。ガス源38aからのガスの供給及び供給停止は、弁38bの開閉動作により切替えられる。また、ガス源38aからのガスの流量は、マスフローコントローラといった流量制御器38cによって調整される。このガス供給系38によって供給されるガスは、ガス供給経路P2に供給され、当該ガス供給経路P2の供給孔P22から上部領域Raに供給される。この上部領域Raには、供給源18からプラズマ源として電磁界エネルギーが供給される。
【0047】
一実施形態においては、供給源18は、上部領域Raに磁場を加えずにマイクロ波を供給する。一例においては、供給源18は、ラジアルスロットラインアンテナによってマイクロ波を上部領域Raに供給する。この一例においては、供給源18は、マイクロ波発生器40、矩形導波管42、モード変換器44、同軸導波管46、アンテナ48、及び誘電体窓50を含んでいる。
【0048】
マイクロ波発生器40は、例えば2.45GHzのマイクロ波を発生する。マイクロ波発生器40には矩形導波管42の一端が接続されており、当該矩形導波管42の他端はモード変換器44に接続されている。モード変換器44は、マイクロ波発生器40によって発生され矩形導波管42によって導波されたマイクロ波のモードを変更する。モード変換器44は、軸線Xに沿って延在する同軸導波管46を介してアンテナ48に接続されている。
【0049】
アンテナ48は、スロット板48a、誘電体板48b、及び、冷却ジャケット48cを含んでいる。スロット板48aは、略円板状の導体である。アンテナ48は、ラジアルラインスロットアンテナであってもよく、スロット板48aには、互いに交差又は直交する方向に延びる二つのスロットをそれぞれ含む複数のスロット対が形成されている。スロット板48aにおいては、複数のスロット対は、径方向に所定の間隔で配置され、また、周方向に所定の間隔で配置され得る。スロット板48aと冷却ジャケット48cとの間には、略円板状の誘電体板48bが設けられている。スロット板48aには、同軸導波管46の内側導体46bが接続されている。同軸導波管46の外側導体46aは、冷却ジャケット48cに接続されている。
【0050】
アンテナ48とステージ14とは、軸線X方向において対面している。このアンテナ48の直下には略円板上の誘電体窓50が設けられている。誘電体窓50は、例えば石英製であり、この誘電体窓50は、第1の空間S1を上方から画成している。
【0051】
このような供給源18によれば、マイクロ波発生器40により発生されたマイクロ波は、導波管42、モード変換器44、及び同軸導波管46を介して導波され、誘電体板48b内で伝播され、スロット板48aのスロットから誘電体窓50を透過して、上部領域Raに供給される。
【0052】
上部領域Raには、第1の排気装置20が連通している。一実施形態においては、第1の排気装置20は、弁52及び処理容器12の側壁12aに形成された排気経路Pv1を介して上部領域Raに連通している。排気経路Pv1は、第1の空間S1側の開口Pv1oから側壁12aの外面まで延在している。一実施形態においては、排気経路Pv1の開口Pv1oは軸線Xを中心とした環状の開口であり得る。
【0053】
また、下部領域Rbには、連通路Pの開口Poが面している。したがって、ヘッド16は、第1の領域R1に配置されているときに、連通路Pの開口Poを上方から覆う大きさを有している。換言すると、ヘッド16は、連通路Pの開口Poに軸線X方向において対面する周縁部分を有している。この連通路Pに接続する第2の空間S2には、排気装置22が連通している。排気装置22は、弁54及び側壁12aに形成された排気経路Pv2を介して第2の空間S2に接続している。
【0054】
このように、プラズマ処理装置10は、連通路Pに接続された第2の空間S2に連通する第2の排気装置22と、上部領域Raに連通する第1の排気装置20とを備えている。したがって、プラズマ処理装置10では、ヘッド16が第1の領域R1に配置されているときに、第1の排気装置20と第2の排気装置22により、上部領域Raと下部領域Rbがそれぞれ個別に排気される。したがって、第1の領域R1に配置されたヘッド16から第1のプロセスガスを供給し、同時に上部領域Raに第2のプロセスガスを供給しても、第1のプロセスガスの上部領域Raへの拡散、及び、第2のプロセスガスの下部領域Rbへの拡散が抑制され得る。その結果、後述する第1のパージ工程の時間が短縮され得る。
【0055】
一実施形態においては、処理容器12には、パージガス供給経路Ps1が設けられている(以下、パージガス供給経路Ps1から供給されるガスを「第1のパージガス」ということがある)。このパージガス供給経路Ps1の第1の空間S1側の開口Ps1oは、連通路Pの開口Poよりもステージ14に対して側方に設けられている。開口Ps1oは、例えば、軸線Xを中心とした環状の開口であり得る。一実施形態においては、ヘッド16は、第1の領域R1に配置されているときに、パージガス供給経路Ps1の開口Ps1oを上方から更に覆うことができる大きさを有し得る。即ち、ヘッド16の周縁部分は、軸線X方向において、開口Poに加えて開口Ps1oにも対面してもよい。このパージガス供給経路Ps1には、パージガス供給系56が接続している。
【0056】
パージガス供給系56は、ガス源56a、弁56b、及び流量制御器56cを含み得る。ガス源56aは、アルゴンといった不活性ガスのガス源である。ガス源56aからのガスの供給及び供給停止は、弁56bの開閉動作により切替えられる。また、ガス源56aからのガスの流量は、マスフローコントローラといった流量制御器56cによって調整される。
【0057】
このパージガス供給経路Ps1によって供給されるパージガスは、ヘッド16が第1の領域R1に配置されているときに、上部領域Raと下部領域Rbとの間に当該パージガスによる障壁を形成する。この障壁により、第1の領域R1に配置されたヘッド16から第1のプロセスガスを供給し、同時に上部領域Raに第2のプロセスガスを供給しても、第1のプロセスガスの上部領域Raへの拡散、及び第2のプロセスガスの下部領域Rbへの拡散が、効果的に抑制され得る。
【0058】
一実施形態においては、排気経路Pv1の第1の空間S1側の開口Pv1oは、パージガス供給経路Ps1の開口Ps1oよりもステージ14に対して側方に設けられている。ヘッド16は、第1の領域R1に配置されているときに、排気経路Pv1の開口Pv1oを上方から更に覆うことができる大きさを有していてもよい。即ち、ヘッド16の周縁部分は、ヘッド16の周縁部分は、軸線X方向において、開口Po及び開口Ps1o加えて、開口Pv1oに対面してもよい。この実施形態では、ヘッド16が第1の領域R1に配置されているときに、排気経路Pv1の開口Pv1oは、ヘッド16の周縁部分下面と処理容器12との間の比較的コンダクタンスが低い位置に存在する。その結果、第2のプロセスガスが下部領域Rbに拡散することをより効果的に抑制することができる。
【0059】
一実施形態においては、処理容器12には、第2の空間S2にパージガスを供給するためのパージガス供給経路Ps2が設けられている(以下、パージガス供給経路Ps2から供給されるガスを「第2のパージガス」ということがある)。このパージガス供給経路Ps2には、パージガス供給系58が接続している。
【0060】
パージガス供給系58は、ガス源58a、弁58b、及び流量制御器58cを含み得る。ガス源58aは、アルゴンといった不活性ガスのガス源である。ガス源58aからのガスの供給及び供給停止は、弁58bの開閉動作により切替えられる。また、ガス源58aからのガスの流量は、マスフローコントローラといった流量制御器58cによって調整される。
【0061】
パージガス供給経路Ps2から第2の空間S2内にパージガスが供給されることにより、例えば、ヘッド16が第1の領域R1に配置されていないときに、第2のプロセスガスが第2の空間S2に流入することを抑制することができる。この第2の空間S2へのパージガスの供給量は、排気装置22の排気量に対して相対的に大きくなるように調整されてもよい。これにより、第2のプロセスガスが第2の空間S2に流入することをより確実に抑制することができる。
【0062】
一実施形態においては、支柱24は、その外周面と処理容器12との間に、第3の空間S3を画成している。この第3の空間S3は、ヘッド16の下面と処理容器12との間の空洞を介して、第2の空間S2に接続している。上述したパージガス供給経路Ps2は、この第3の空間S3を介して第2の空間S2に連通されていてもよい。
【0063】
プラズマ処理装置10においては、支柱24と処理容器12(底部12b)との間に、処理容器12の内部空間を密閉するためにOリング60が設けられている。一方、上述したように、支柱24は駆動装置28によって回転される。したがって、支柱24の回転時にOリング60による気密封止の完全性が損なわれて、第3の空間S3に流入したプロセスガスが支柱24と処理容器12との間の間隙から漏れ出ることもあり得る。しかしながら、パージガス供給経路Ps2から第3の空間S3にパージガスを供給することにより、第3の空間S3内の気圧を高めることができる。これにより、第3の空間S3にプロセスガスが流入することを防止することができる。その結果、支柱24の外周面に沿ってプロセスガスが処理容器12の外部に漏れ出すことを抑制することができる。
【0064】
以下、プラズマ処理装置10を用いたプラズマ処理方法の一実施形態について説明する。図3は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法のシーケンスを示す図である。図3に示すプラズマ処理方法は、ALD法により被処理基体W上に層を形成するものである。このプラズマ処理方法は、第1のプロセス工程で開始する。
【0065】
(第1のプロセス工程)
【0066】
図3に示すように、一実施形態に係るプラズマ処理方法では、まず、第1のプロセス工程が実施される。なお、この第1のプロセス工程に先立って、ヘッド16は、第1の領域R1に配置されている。
【0067】
第1のプロセス工程においては、第1の領域R1に配置されたヘッド16から、第1のプロセスガスが供給される。図3においては、第1のプロセスガスがONであることは、第1のプロセスガスがヘッド16から供給されることを示している。一方、第1のプロセスガスがOFFであることは、ヘッド16からの第1のプロセスガスの供給が停止されていることを示している。第1のプロセスガスを供給するために、ガス供給系32の弁32bが開かれ、ガス源32aからのガスの供給量を調整するよう流量制御器32cが制御される。これにより、被処理基体W上に第1のプロセスガスの原料が吸着する。
【0068】
また、第1のプロセスガスの供給と並行して、第2のプロセスガスが上部領域Raに供給され、供給源18からのマイクロ波が上部領域Raに供給される。図3においては、第2のプロセスガスがONであることは、第2のプロセスガスが供給されることを示している。一方、第2のプロセスガスがOFFであることは、第2のプロセスガスの供給が停止されていることを示している。また、マイクロ波がONであることは、マイクロ波が供給されていることを示している。一方、マイクロ波がOFFであることは、マイクロ波の供給が停止されていることを示している。
【0069】
第2のプロセスガスを供給するために、ガス供給系38の弁38bが開かれ、ガス源32aからのガスの供給量を調整するよう流量制御器32cが制御される。また、マイクロ波を供給するためにマイクロ波発生器40に電力が与えられる。なお、図3に示すように、本実施形態のプラズマ処理方法においては、全ての工程を通じて、第2のプロセスガスの供給、マイクロ波の供給、及び第1の排気装置20による排気(第1の排気)が継続される。
【0070】
また、第1のプロセスガスの供給及び第2のプロセスガスの供給と並行して、第1の排気装置20及び第2の排気装置22による排気(第2の排気)が実施される。図3においては、排気がONであることは、排気装置が動作し当該排気装置に接続された弁が開いていることを示している。一方、排気がOFFであることは、排気装置が停止されているか、又は当該排気装置に接続する弁が閉じられていることを示している。
【0071】
本実施形態のプラズマ処理方法では、第1のプロセスガスの供給及び第2のプロセスガスの供給と並行して、第1の排気装置20及び第2の排気装置22による排気が行なわれるので、第1のプロセスガスの上部領域Raへの拡散、及び、第2のプロセスガスの下部領域Rbへの拡散が抑制される。
【0072】
また、第1のプロセスガスの供給及び第2のプロセスガスの供給と並行して、第1のパージガスがパージガス供給経路Ps1から供給される。図3においては、パージガスがHighであることは、パージガスが比較的大きな供給量で供給されていることを示している。一方、パージガスがLowであることは、パージガスが比較的小さな供給量で供給されているか又は停止されていることを示している。第1のパージガスを供給するために、パージガス供給系56の弁56bが開かれ、第1のパージガスの供給量を調整するよう流量制御器56cが制御される。この第1のパージガスにより上部領域Raと下部領域Rbとの間に障壁が形成される。この障壁により、第1のプロセスガスの上部領域Raへの拡散、及び、第2のプロセスガスの下部領域Rbへの拡散がより効果的に抑制される。
【0073】
(第1のパージ工程)
【0074】
次いで、本実施形態のプラズマ処理方法では、第1のパージ工程が実施される。第1のパージ工程においては、第1のプロセスガスの供給が停止される。同時に、第1のパージガスの供給が継続され、また、第3のパージガスの供給が開始されるか、又は、その供給量が増大される。更に同時に、第1の排気装置20及び第2の排気装置22による排気が行なわれる。第3のパージガスを供給するために、パージガス供給系32の弁32bが開かれ、第3のパージガスの供給量を調整するよう流量制御器32cが制御される。この工程において設定された第3のパージガスの供給量は、第1のプロセス工程の期間を除いて維持され得る。
【0075】
第1のパージ工程により、第1のプロセス工程において被処理基体Wに吸着された層のうち、被処理基体Wに化学吸着している部分(例えば単一の分子層又は単一の原子層)は残存し、被処理基体Wに物理吸着又は化学吸着している残部は除去される。また、第1のパージ工程では、ヘッド16内及び下部領域Rbに残留した第1のプロセスガスが不活性ガスで置換される。この第1のパージ工程におけるガスの置換は、下部領域Rb及びヘッド16内を対象としているので、短い時間で完了し得る。
【0076】
(ヘッド移動)
【0077】
次いで、本実施形態のプラズマ処理方法では、ヘッド16が駆動装置30により第2の領域R2まで移動される。これと同時に、ステージ14が駆動装置28により回転される。これにより、ヘッド16が移動している期間においてもラジカルによる被処理基体W上の層に対する処理が均一化される。より詳細に説明すると、ヘッド16はその移動中に上部領域Raとステージ14との間を横切るので、上部領域Raからステージ14に向かうラジカルの流れが一部において阻害され得る。しかしながら、ステージ14が回転されることにより、ラジカルによる処理の不均一性が被処理基体Wの面内(YZ平面内)において抑制され得る。なお、ステージ14は、図3に示すように、全工程にわたって回転されていてもよい。これにより、全工程にわたる処理の更なる均一化がもたらされ得る。
【0078】
また、ヘッド16の第2の領域R2への移動と並行して、第2のパージガスの供給が開始されるか、又は、その供給量が増大され、また、第2の排気装置22による排気が停止される。第2のパージガスを供給するために、パージガス供給系58の弁58bが開かれ、第2のパージガスの流量を調整するよう流量制御器58cが制御される。これにより、第2の空間S2内に第2のプロセスガスが流入することが抑制され得る。
【0079】
(第2のプロセス工程)
【0080】
次いで、本実施形態のプラズマ処理方法では、第2のプロセス工程が実施される。第2のプロセス工程では、上部領域Raに第2のプロセスガス及びマイクロ波が供給されることにより発生するラジカルを用いて、被処理基体W上の層が処理される。この処理により、被処理基体W上の層は、例えば窒化又は酸化される。第2のプロセス工程においては、第2の空間S2内への第2のプロセスガスの流入を抑制するために、第2のパージガスの供給量が維持され、第2の排気装置22による排気の停止が継続される。また、第1のパージガスの供給は停止されるか、又は、その供給量が減少される。
【0081】
(ヘッド移動)
【0082】
次いで、本実施形態のプラズマ処理方法では、ヘッド16が駆動装置30により第1の領域まで移動される。この工程においては、第1のパージガスの供給が再び開始されるか、又はその供給量が増大される。また、この工程においても、被処理基体W上の層の処理の均一化のために、ステージ14が駆動装置28により回転される。
【0083】
(第2のパージ工程)
【0084】
次いで、本実施形態のプラズマ処理方法では、第2のパージ工程が実施される。この工程においては、第2のパージガスの供給が停止されるか、又はその供給量が減少され、第1の排気装置20による排気の継続と共に、第2の排気装置22による排気が開始される。これにより、下部領域Rbにおけるガスが不活性ガスにより置換される。
【0085】
一実施形態においては、第1のプロセス工程から第2のパージ工程までの全工程が、複数回繰り返される。これにより、被処理基体W上にプラズマ処理された複数の層(原子層又は分子層)が形成される。
【0086】
以上説明したプラズマ処理方法を実施するために、プラズマ処理装置10は、更に、制御部62を備え得る。図4は、一実施形態に係るプラズマ処理装置の制御部を示す図である。制御部62は、例えば、中央処理装置(CPU)及びメモリといった記憶装置を備えるコンピュータであってもよい。制御部62は、記憶装置に記憶されたプログラムによって種々の制御信号を出力することができる。制御部62からの種々の制御信号は、駆動装置28、駆動装置30、マイクロ波発生器40、弁32b、流量制御器32c、弁34b、流量制御器34c、弁38b、流量制御器38c、弁56b、流量制御器56c、弁58b、流量制御器58c、温度制御器26、第1の排気装置20、弁52、第2の排気装置22、及び弁54に与えられる。これにより、図3に示したシーケンスに従った処理をプラズマ処理装置10は自動的に実施することが可能なる。なお、制御部62は、上述した全ての制御対象に制御信号を出力する必要はなく、これら制御対象のうち一つ以上の任意個数の制御対象に制御信号を出力してもよい。
【0087】
以下、別の実施形態に係るプラズマ処理装置について説明する。図5は、別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図であり、ヘッドが第1の領域に配置された状態を示す図である。図5に示すプラズマ処理装置100は、主に、昇降壁102及び駆動装置104を備える点において、プラズマ処理装置10と異なっている。以下、プラズマ処理装置100に関して、プラズマ処理装置10と異なる点を説明する。
【0088】
プラズマ処理装置100では、昇降壁102が、ステージ14と処理容器12との間に設けられている。昇降壁102は、駆動装置104に接続されており、当該駆動装置104から与えられる駆動力により、軸線X方向及び−X方向において昇降可能に構成されている。一実施形態においては、昇降壁102は、軸線Xに沿って延在する略円筒形状を有し得る。
【0089】
昇降壁102は、上面102aを含んでいる。この上面102aは、第1の領域R1に配置されたヘッド16の周縁部分の下面に対面する。一実施形態においては、昇降壁102には、第1のパージガスの供給経路Ps1が設けられている。このガス供給経路Ps1の開口Ps1oは、昇降壁102の上面102aに形成されている。また、プラズマ処理装置100では、ガス供給経路Ps2及び排気経路Pv2は、処理容器12の底部12bに形成されている。さらに、第1の空間S1と第2の空間S2とを連通させる連通路Pは、昇降壁102とステージ14の外周面との間に画成されている。
【0090】
また、プラズマ処理装置100は、ガス供給系106を更に備えている。ガス供給系106は、処理容器12の底部12bと昇降壁102との間の間隙からプロセスガスが漏出することを防止するために、アルゴンといった不活性ガスを当該間隙に供給する。
【0091】
ガス供給系106は、ガス源106a、弁106b、及び流量制御器106cを含んでいる。ガス源106aは、不活性ガスのガス源である。ガス源106aからのガスの供給及び供給停止は、弁106bの開閉動作により切替えられる。また、ガス源106aからのガスの流量は、マスフローコントローラといった流量制御器106cによって調整される。なお、本実施形態のプラズマ処理装置100を用いる後述のプラズマ処理方法においては、ガス供給系106からの不活性ガスは、全工程にわたって所定の供給量に維持される。
【0092】
プラズマ処理装置100では、第1のプロセス工程を実施するときに、昇降壁102を上方へ移動させて、当該昇降壁102をヘッド16に近づけることで、ヘッド16と昇降壁102の上面102aとの間のコンダクタンスを低下させることが可能である。これにより、第1のプロセス工程の実施時に、第1のプロセスガスの上部領域Raの拡散、及び第2のプロセスガスの下部領域Rbへの拡散を抑制し得る。更に、第1のプロセス工程の実施時に、ガス供給経路Ps1から第1のパージガスを供給することにより、ヘッド16と昇降壁102の上面102aとの間に、当該第1のパージガスを用いた障壁を形成することができる。これにより、第1のプロセスガスの上部領域Raの拡散、及び第2のプロセスガスの下部領域Rbへの拡散をより効果的に抑制し得る。
【0093】
以下、プラズマ処理装置100を用いたプラズマ処理方法の一実施形態について説明する。図6は、別の実施形態に係るプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法のシーケンスを示す図である。図6に示すプラズマ処理方法も、ALD法により被処理基体W上に層を形成するものである。ここで、図6における表記は、図3に示した表記と同様である。なお、図6において、昇降壁が「上」であることは、当該昇降壁が上方向に移動されて停止した状態を示している。一方、昇降壁が「下」であることは、当該昇降壁が下方向に移動されて停止した状態を示している。以下、図6に示すプラズマ処理方法について、図3に示したプラズマ処理方法と異なる点を説明する。
【0094】
図6に示すプラズマ処理方法では、第1のパージ工程と第2の領域R2にヘッド16を移動させる工程との間に、昇降壁を下方向へ移動させる工程が含まれている。また、第1の領域R1にヘッド16を移動させる工程と第2のパージ工程との間に、昇降壁を上方向へ移動させる工程が含まれている。
【0095】
昇降壁を下方向へ移動させる工程では、昇降壁102は、ヘッド16に近づけられた位置(上位置)から下方向に移動される。この工程では、同時に、第2のパージガスの供給が開始されるか、又は、その供給量が増大される。また、同時に、第2の排気装置22による排気が停止される。
【0096】
また、昇降壁を上方向へ移動させる工程では、昇降壁102は上方向に移動され、ヘッド16に近づけられる。この工程では、同時に、第1のパージガスの供給量が維持され、また、第2のパージガスの供給量が維持され、第2の排気装置22による排気の停止が継続される。
【0097】
図6に示すプラズマ処理方法によれば、ヘッド16が第1の領域R1に配置されているときに、ヘッド16に昇降壁102が近づけられる。これにより、ヘッド16と昇降壁102の上面102aとの間のコンダクタンスを低下させることが可能である。その結果、第1のプロセス工程の実施時に、第1のプロセスガスの上部領域Raの拡散、及び第2のプロセスガスの下部領域Rbへの拡散を抑制し得る。また、第1のプロセス工程の実施時に、ガス供給経路Ps1から第1のパージガスを供給することにより、ヘッド16と昇降壁102の上面102aとの間に、当該第1のパージガスを用いた障壁を形成することができる。これにより、第1のプロセスガスの上部領域Raの拡散、及び第2のプロセスガスの下部領域Rbへの拡散をより効果的に抑制し得る。更に、ヘッド16を第2の領域R2に移動させる前に昇降壁102を下方へ移動させ、ヘッド16を第1の領域R1に移動させた後に昇降壁102を上方へ移動させている。これにより、昇降壁102によってヘッド16の移動が阻害されることを防止することができる。
【0098】
以上説明したプラズマ処理方法を実施するために、プラズマ処理装置100は、更に、制御部162を備え得る。図7は、別の実施形態に係るプラズマ処理装置の制御部を示す図である。制御部162は、例えば、中央処理装置(CPU)及びメモリといった記憶装置を備えるコンピュータであってもよい。制御部162は、記憶装置に記憶されたプログラムによって種々の制御信号を出力することができる。制御部162からの種々の制御信号は、駆動装置28、駆動装置30、マイクロ波発生器40、弁32b、流量制御器32c、弁34b、流量制御器34c、弁38b、流量制御器38c、弁56b、流量制御器56c、弁58b、流量制御器58c、温度制御器26、第1の排気装置20、弁52、第2の排気装置22、弁54、駆動装置104、弁106b、及び流量制御器106cに与えられる。これにより、図7に示したシーケンスに従った処理をプラズマ処理装置100は自動的に実施することが可能となる。なお、制御部162は、上述した全ての制御対象に制御信号を出力する必要はなく、これら制御対象のうち一つ以上の任意の個数の制御対象に制御信号を出力してもよい。
【0099】
以下、更に別の実施形態について説明する。図8は、更に別の実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。図8に示すプラズマ処理装置200は、ステージ14、処理容器202、電磁界エネルギーの供給源204、第1の排気装置206、及び、第2の排気装置208を備えている。
【0100】
処理容器202の内部空間には、ステージ14が収容されている。このステージ14は、上述した実施形態と同様に支柱24によって支持され、温度制御器26及び駆動装置28に接続されている。
【0101】
処理容器202は、ステージ14の上方に処理空間Saを画成し、また、プラズマ生成空間Sbを画成する。一実施形態においては、処理容器202は、第1の容器210及び第2の容器212を含んでいる。第1の容器210は、ステージ14を収容する空間、及び、処理空間Saを画成している。
【0102】
一実施形態においては、第1の容器210は、側壁210a、底部210b、及び上部210cを含んでいる。側壁210aは、軸線Xに沿って延在する略円筒形状を有している。底部210bは、側壁210aの下端に結合している。上部210cは、側壁210aの上端に結合しており、当該上部210cとステージ14の上面との間に処理空間Saを画成している。
【0103】
上部210cには、処理空間Saに接続するガス供給経路Ps201が形成されている。このガス供給経路Ps201は、第1のプロセスガスを処理空間Saに供給するための経路である。ガス供給経路Ps201には、ガス供給系32が接続されている。
【0104】
また、処理容器202には、処理空間Saに接続する排気経路Pv201が設けられている。この排気経路Pv201には、弁214を介して排気装置206が接続されている。更に、処理容器202には、ガス供給経路Ps203が形成されている。このガス供給経路Ps203は、ステージ14下方の空間及びステージ14外周に沿った空間を通じて、処理空間Saに連通している。ガス供給経路Ps203は、処理空間Saにパージガスを供給する。このパージガスは、アルゴンといった不活性ガスであり得る。ガス供給経路Ps203には、ガス供給系216が接続されている。
【0105】
ガス供給系216は、ガス源216a、弁216b、及び流量制御器216cを含んでいる。ガス源216aは、不活性ガスのガス源である。ガス源216aからのガスの供給及び供給停止は、弁216bの開閉動作により切替えられる。また、ガス源216aからのガスの流量は、マスフローコントローラといった流量制御器216cによって調整される。
【0106】
第2の容器212は、第1の容器210の側方外面に取り付けられている。第2の容器212は、処理空間Saの側方(図中、Y方向)において、プラズマ生成空間Sbを画成している。この第2の容器212には、ガス供給経路Ps202が形成されている。ガス供給経路Ps202は、プラズマ生成空間Sbに接続している。プラズマ生成空間Sbには、ガス供給経路Ps202を介してガス供給系38が接続されており、当該ガス供給系38から第2のプロセスガスが供給される。また、このプラズマ生成空間Sbには、供給源204からマイクロ波が供給される。
【0107】
一実施形態においては、供給源204は、マイクロ波発生器218、導波管220、及び、誘電体窓222を含んでいる。マイクロ波発生器218は、マイクロ波を発生し、導波管220に当該マイクロ波を供給する。誘電体窓222は、第2の容器212の内部に設けられている。導波管220によって導波されたマイクロ波は、第2の容器212に形成されたスロット212a及び誘電体窓222を介してプラズマ生成空間Sbに供給される。
【0108】
プラズマ処理装置200では、第2の容器212は、処理空間Saとプラズマ生成空間Sbとの間に領域R200のみが存在するように、プラズマ生成空間Sbを提供している。この領域R220は、側壁210aによって画成されており、処理空間Saとプラズマ生成空間Sbを連通させるための領域である。領域R220は、側壁210aのY方向の厚みに等しいY方向の長さを有している。したがって、処理空間Saとプラズマ生成空間Sbとの間の距離は短い。故に、プラズマ生成空間Sbで発生し処理空間Saに到達するまでの間に失活するラジカルの量が低減される。
【0109】
一実施形態においては、プラズマ処理装置200は、可動壁224を更に備え得る。可動壁224は、例えば、側壁210a及び底部210bにわたって埋め込まれている。この可動壁224は、当該可動壁224を上下方向に移動させる駆動装置226に接続されている。可動壁224は、上方に移動されることにより、処理空間Saとプラズマ生成空間Sbとの間の領域R200に配置される。また、可動壁224は、領域R200から退避するために、駆動装置226によって下方に移動される。
【0110】
一実施形態においては、側壁210aには、排気経路Pv202が形成されている。排気経路Pv202は、領域R200に面する開口Pv202oから可動壁224に沿って延在し、側壁210aを通過して当該側壁210aの外面にまで達している。この排気経路Pv202には、弁228を介して第2の排気装置208が接続されている。
【0111】
プラズマ処理装置200では、第1の排気装置206が処理空間Saに連通しており、第2の排気装置208がプラズマ生成空間Sbに連通しており、これら排気装置が処理空間Sa及びプラズマ生成空間Sbを個別に排気する。したがって、処理空間Saに第1のプロセスガスを供給する第1のプロセス工程と並行して、プラズマ生成空間Sbに第2のプロセスガスを供給しても、処理空間Saに第2のプロセスガスが拡散することが抑制される。また、プラズマ生成空間Sbに第1のプロセスガスが拡散することが抑制される。
【0112】
また、可動壁224を領域R200に配置することにより、領域R200におけるコンダクタンスを低下させることができる。これにより、両プロセスガスの上述した拡散をより効果的に抑制することができる。
【0113】
さらに、排気経路Pv202の開口Pv202oが処理空間Saとプラズマ生成空間Sbとの間の領域R200に面している。これにより、両プロセスガスの上述した拡散を更により効果的に抑制することができる。
【0114】
以下、プラズマ処理装置200を用いたプラズマ処理方法の一実施形態について説明する。図9は、更に別の実施形態に係るプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法のシーケンスを示す図である。図9に示すプラズマ処理方法は、ALD法により被処理基体W上に層を形成するものである。なお、図9における表記は、図3及び図4に示した表記と同様である。本実施形態のプラズマ処理方法も、第1のプロセス工程で開始する。
【0115】
(第1のプロセス工程)
【0116】
本実施形態のプラズマ処理方法では、まず、第1のプロセス工程が実施される。なお、可動壁224は、領域R200内に位置するように、前もって上方へ移動されている。
【0117】
第1のプロセス工程においては、ガス供給系32から供給経路Ps201を介して第1のプロセスガスが処理空間Saに供給される。第1のプロセスガスが供給されているとき、ステージ14は駆動装置28によって回転される。これにより、第1のプロセスガスに含まれる原料が均一な厚みで被処理基体W上に吸着される。なお、本実施形態では、全ての工程にわたって、ステージ14は回転される。
【0118】
また、第1のプロセスガスの供給と並行して、ガス供給系38から供給経路Ps202を介してプラズマ生成空間Sbに第2のプロセスガスが供給され、同時に、供給源204からプラズマ生成空間Sbにマイクロ波が供給される。更に、第1のプロセスガスの供給と並行して、第1の排気装置206による排気、第2の排気装置208による排気が行なわれる。なお、本実施形態においても、第2のプロセスガスの供給及びマイクロ波の供給は、全工程にわたって継続される。
【0119】
(第1のパージ工程)
【0120】
次いで、本実施形態のプラズマ処理方法では、第1のパージ工程が実施される。第1のパージ工程では、ガス供給系32からの第1のプロセスガスの供給が停止される。これと同時に、パージガスがガス供給系216から処理空間Saに供給され、第1の排気装置206による排気、第2の排気装置208による排気が行なわれる。
【0121】
第1のパージ工程により、第1のプロセス工程において被処理基体Wに吸着された層のうち、被処理基体Wに化学吸着している部分(例えば単一の分子層又は単一の原子層)は残存し、被処理基体Wに物理吸着又は化学吸着している残部は除去される。また、処理空間Sa内のガスがパージガス、即ち、不活性ガスで置換される。
【0122】
(可動壁移動)
【0123】
次いで、本実施形態のプラズマ処理方法では、ガス供給系216からのパージガスの供給が停止され、可動壁224が、駆動装置226により下方へ移動される。これにより、領域R200を介して処理空間Saとプラズマ生成空間Sbとが連通する。
【0124】
(第2のプロセス工程)
【0125】
次いで、本実施形態のプラズマ処理方法では、第2のプロセス工程が実施される。第2のプロセス工程においては、プラズマ生成空間Sbにおいて発生したラジカルが処理空間Saに供給され、当該ラジカルによって、被処理基体W上の層が処理される。この処理により、被処理基体W上の層は、例えば窒化又は酸化される。なお、第2のプロセス工程においては、第2の排気装置208による排気は停止される。
【0126】
(可動壁移動)
【0127】
次いで、本実施形態のプラズマ処理方法では、第2の排気装置208による排気が再開され、可動壁224が、駆動装置226により上方へ移動される。これにより、可動壁224は、領域R200に再び位置するようになる。
【0128】
(第2のパージ工程)
【0129】
次いで、本実施形態のプラズマ処理方法では、第2のパージ工程が実施される。第2のパージ工程では、パージガスがガス供給系216から処理空間Saに供給され、第1の排気装置206による排気、第2の排気装置208による排気が行なわれる。これにより、処理空間Sa内のガスが不活性ガスにより置換される。
【0130】
本実施形態のプラズマ処理方法においても、第1のプロセス工程から第2のパージ工程までの全工程が、複数回繰り返される。これにより、被処理基体W上にプラズマ処理された複数の層(原子層又は分子層)が形成される。
【0131】
以上説明したプラズマ処理方法を実施するために、プラズマ処理装置200は、更に、制御部262を備え得る。図10は、一実施形態に係るプラズマ処理装置の制御部を示す図である。制御部262は、例えば、中央処理装置(CPU)及びメモリといった記憶装置を備えるコンピュータであってもよい。制御部262は、記憶装置に記憶されたプログラムによって種々の制御信号を出力することができる。制御部262からの種々の制御信号は、温度制御器26、駆動装置28、駆動装置226、マイクロ波発生器218、弁32b、流量制御器32c、弁38b、流量制御器38c、弁216b、流量制御器216c、第1の排気装置206、弁214、第2の排気装置208、及び弁228に与えられる。これにより、図9に示したシーケンスに従った処理をプラズマ処理装置200は自動的に実施することが可能となる。なお、制御部262は、上述した全ての制御対象に制御信号を出力する必要はなく、これら制御対象のうち一つ以上の任意の個数の制御対象に制御信号を出力してもよい。
【0132】
なお、上述した実施形態に限定されることなく、種々の変形態様を構成することが可能である。例えば、マイクロ波の供給源としては、ラジアルラインスロットアンテナを有する供給源に代えて、所謂SWP(Surface Wave Plasma、表面波プラズマ)型のプラズマ処理装置における供給源が用いられてもよい。また、第3のパージガスとしては、窒素を含むガスが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0133】
10…プラズマ処理装置、12…処理容器、14…ステージ、16…ヘッド、18…供給源、20…第1の排気装置、22…第2の排気装置、24…支柱、26…温度制御器、28…駆動装置、30…駆動装置、32…ガス供給系(第1のプロセスガスの供給系)、34…ガス供給系(第3のパージガスの供給系)、36…支持部、38…ガス供給系(第2のプロセスガスの供給系)、40…マイクロ波発生器、42…導波管、44…モード変換器、46…同軸導波管、48…アンテナ、50…誘電体窓、52…弁、54…弁、56…パージガス供給系(第1のパージガスの供給系)、58…パージガス供給系(第2のパージガスの供給系)、60…Oリング、62…制御部、100…プラズマ処理装置、102…昇降壁、102a…昇降壁の上面、104…駆動装置、W…被処理基体、S1…第1の空間、S2…第2の空間、R1…第1の領域、Ra…上部領域、Rb…下部領域、R2…第2の領域、P…連通路、P2…ガス供給経路(第2のプロセスガスの供給経路)、Pv1…排気経路、Pv2…排気経路、Ps1…パージガス供給経路、Ps2…パージガス供給経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の空間及び第2の空間を画成する処理容器と、
前記第1の空間の下方且つ前記第2の空間の上方に設けられたステージであって、前記第1の空間と前記第2の空間とを連通させる連通路をその外周に沿って画成する該ステージと、
層形成用の第1のプロセスガスを前記ステージに向けて供給するヘッドであって、前記第1の空間内且つ前記ステージの上方の第1の領域と該ヘッドを退避させるための第2の領域との間で移動可能であり、前記第1の領域に位置するときに前記第1の空間内に該第1の領域の上方の上部領域と該第1の領域の下方の下部領域とを画成する該ヘッドと、
プラズマ処理用の第2のプロセスガスが供給される前記上部領域に電磁界エネルギーを供給する供給源と、
前記上部領域に連通する第1の排気手段と、
前記第2の空間に連通する第2の排気手段と、
を備え、
前記ヘッドは、前記第1の領域に位置するときに前記ステージを覆い、且つ、前記下部領域に面する前記連通路の開口を覆う大きさを有する、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記処理容器内には、パージガスの供給経路が設けられており、
前記供給経路は前記下部領域に面する開口を含んでおり、該供給経路の該開口は、前記ステージに対して前記連通路の前記開口よりも側方に設けられており、
前記ヘッドは、更に前記供給経路の前記開口を覆う大きさを有する、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記処理容器には、前記第1の排気手段に接続する排気経路が設けられており、該排気経路は開口を含んでおり、該排気経路の該開口は、前記供給経路の前記開口よりも前記ステージに対して側方に設けられており、
前記ヘッドは、更に前記排気経路の前記開口を覆う大きさを有する、
請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記処理容器内において昇降可能に構成された昇降壁を更に備え、
該昇降壁は、前記ステージに対して前記連通路よりも側方に設けられており、該昇降壁は、前記ヘッドに対面する上面を含む、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記昇降壁には、パージガスの供給経路が設けられており、該供給経路の開口は該昇降壁の前記上面に設けられている、
請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記処理容器内には、前記第2の空間に連通するパージガスの供給経路が設けられている、請求項1〜5の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記ステージを下方から回転可能に支持する支柱を更に備え、
前記支柱はその外周面に沿って第3の空間を画成し、該第3の空間は前記第2の空間に連通しており、
前記第2の空間に連通する前記供給経路は、前記第3の空間を介して前記第2の空間に連通している、
請求項1〜6の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載のプラズマ処理装置を用いたプラズマ処理方法であって、
前記ヘッドを前記第1の領域に移動させる工程と、
前記第1の領域に配置されたヘッドから前記第1のプロセスガスを供給する工程と、
前記第1のプロセスガスを供給する工程と並行して、前記上部領域に電磁界エネルギーを供給し、前記上部領域に前記第2のプロセスガスを供給する工程と、
前記第1のプロセスガスを供給する工程と並行して、前記第1の排気手段及び前記第2の排気手段による排気を行う工程と、
前記第1のプロセスガスの供給を停止して、前記第2の排気手段による排気を行う工程と、
前記ヘッドを前記第2の領域に移動させる工程と、
前記ヘッドを前記第2の領域に移動させた後に、前記上部領域に電磁界エネルギーを供給し、前記上部領域に前記第2のプロセスガスを供給する工程と、
前記第1の排気手段及び前記第2の排気手段による排気を行う工程と、
を含むプラズマ処理方法。
【請求項9】
前記処理容器内には、パージガスの供給経路が設けられており、
前記供給経路は前記下部領域に面する開口を含んでおり、該供給経路の該開口は、前記ステージに対して前記連通路の前記開口よりも側方に設けられており、
前記ヘッドは、更に前記供給経路の前記開口を覆う大きさを有し、
前記第1のプロセスガスを供給する前記工程と並行して、前記供給経路から前記パージガスを供給する工程を更に含む、
請求項8に記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】
前記プラズマ処理装置は、処理容器内において昇降可能に構成された昇降壁を更に備え、
該昇降壁は、前記ステージに対して前記連通路よりも側方に設けられており、該昇降壁は、前記ヘッドに対面する上面を含み、
前記ヘッドを前記第1の領域に移動させる前記工程の後に、前記昇降壁を上方に移動させる工程を更に含む、請求項8に記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】
前記昇降壁には、パージガスの供給経路が設けられており、該供給経路の開口は該昇降壁の前記上面に設けられており、
前記昇降壁を上方に移動させる前記工程と並行して、前記供給経路の前記開口からパージガスを供給する工程を更に含む、請求項10に記載のプラズマ処理方法。
【請求項12】
前記処理容器内には、前記第2の空間に連通するパージガスの供給経路が設けられており、
前記ヘッドを前記第2の領域に移動させる前記工程と並行して、及び/又は、前記ヘッドが第2の領域に配置されているときに、前記第2の空間に連通する前記供給経路から前記第2の空間にパージガスを供給する工程を更に含む、
請求項8〜11の何れか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項13】
前記第2の空間に連通する前記供給経路から前記第2の空間にパージガスを供給する前記工程において、該パージガスの供給量は、第2の排気手段の排気量より多い、請求項12に記載のプラズマ処理方法。
【請求項14】
前記プラズマ処理装置は、前記ステージを下方から回転可能に支持する支柱を更に備え、
前記支柱はその外周面に沿って第3の空間を画成し、該第3の空間は前記第2の空間に連通しており、
前記第2の空間に連通する前記供給経路は、前記第3の空間を介して前記第2の空間に連通おり、
前記ヘッドを前記第1の領域に移動させる前記工程及び/又は前記ヘッドを前記第2の領域に移動させる前記工程と並行して、前記ステージを回転させつつ、前記第2の空間に連通する前記供給経路から前記パージガスを供給する工程を更に含む、
請求項8〜13の何れか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項15】
ステージと、
前記ステージの上方の処理空間、及び、前記処理空間の側方に位置するプラズマ生成空間を画成し、層形成用の第1のプロセスガスの第1の供給経路であり該処理空間に接続する該第1の供給経路が設けられており、プラズマ処理用の第2のプロセスガスの第2の供給経路であり前記プラズマ生成空間に接続する該第2の供給経路が設けられた処理容器と、
前記プラズマ生成空間に電磁界エネルギーを供給する供給源と、
前記処理空間に連通する第1の排気手段と、
前記プラズマ生成空間に連通する第2の排気手段と、
を備える、プラズマ処理装置。
【請求項16】
前記処理容器は、前記処理空間を画成する第1の容器と、該第1の容器の側方外面に取り付けられた第2の容器であり前記プラズマ生成空間を画成する該第2の容器と、を含む、
請求項15に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
前記処理空間と前記プラズマ生成空間との間の領域に配置可能であり、且つ、該領域から退避可能な可動壁を更に備える、請求項15又は16に記載のプラズマ処理装置。
【請求項18】
前記第2の排気手段は、前記処理空間と前記プラズマ生成空間との間の領域に面する開口を含む排気経路に接続している、請求項15〜17の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−4720(P2013−4720A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134096(P2011−134096)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】