説明

プラズマ処理装置

【課題】レイアウトを容易にすることができると共に、プラズマ処理の均一化を充分に達成することができるプラズマ処理装置を提供すること。
【解決手段】本発明のプラズマ処理装置1は、第1のコンベア3および第2のコンベア4と、高周波電力が印加される上部電極部10と、該上部電極部10に対向するアース電極としての下部電極11とを備える。第1のコンベア3および第2のコンベア4は、ワーク2を上部電極部10および下部電極11の間の処理空間へ搬送し、ワーク2が上記処理空間を通過する際、高周波電界に発生したプラズマによってワーク2に所定のプラズマ処理が施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大気圧、または大気圧近傍において、基板(被処理体)の表面にプラズマ処理を施す装置として、大気圧プラズマ処理装置が知られている。
通常、大気圧プラズマ処理装置としては一対の電極を有する平行平板型のプラズマ処理装置が用いられる。この平行平板型のプラズマ処理装置は、高周波電力が印加された電極間に処理ガスを導入してプラズマを発生し、該発生したプラズマによって当該電極間に配された基板の表面にプラズマ処理を施す。
従来、プラズマ処理装置によってプラズマ処理が施される基板はプリント基板やプラスチックフィルムなど比較的小型の基板であり、プラズマ処理装置は、プリント基板の半田濡れ性改善処理やプラスチックフィルムの表面改質処理、例えば、親液性または撥水性向上などを行っていた。
【0003】
ところで、液晶ディスプレイや有機EL(organic electroluminescence)ディスプレイなどの表示装置用のガラス基板は、その表面に所定の材料をインクジェット法などによって塗布して成膜する工程を経て製造されることから、成膜の品質を向上すべく、成膜の前に表面改質処理が施される。そして、これら表示装置用のガラス基板の表面改質処理にもプラズマ処理装置が用いられる。
【0004】
ここで、近年、表示装置用のガラス基板は大型化しているため、プラズマ処理装置は大面積の表面を効率よくプラズマ処理する必要がある。このような、プラズマ処理装置として、図7に示すような、基板51が配置される接地した下部電極であるステージ52と、該ステージ52の上方に放電空間53を介して配置した上部電極である高周波電極54と、該高周波電極54に整合器55を介して接続され、高周波電極54に高周波電力を供給する高周波電源56と、高周波電極54をステージ52の面に沿って移動させるようにしたアクチュエータ57とを有するプラズマ処理装置が知られている。
このプラズマ処理装置では、基板51にプラズマ処理を施す際、高周波電極54が基板51の表面に沿って移動し、高周波電極54およびステージ52の間に発生する電界によって基板51の表面を走査する。これにより、比較的大型の基板に効率よくプラズマ処理を施す。
【0005】
しかしながら、上述した図7のプラズマ処理装置では、プラズマ処理が施される基板と同じ大きさのステージが必要となり、表示装置用のガラス基板のサイズは、例えば、1300mm×1600mmにも達するため、プラズマ処理装置の大型が避けられず、該装置のレイアウトが困難であるという問題がある。
また、図7のプラズマ処理装置は、ステージと高周波電極との距離を均一化することによってプラズマ処理の均一化を図るものであるが、高周波電極の移動に伴って高周波電極およびステージの位置関係が変化するため、基板の端部近傍と基板の中央部とでは高周波電界の形態が異なり、その結果、プラズマ処理の均一化が充分でないと言う問題もある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−273084号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、レイアウトを容易にすることができると共に、プラズマ処理の均一化を充分に達成することができるプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のプラズマ処理装置は、被処理体の搬送経路を挟んで互いに対向して配置され、前記被処理体の搬送方向と直交する方向に沿って細長い形状をなす第1の電極および第2の電極と、
前記第1の電極および第2の電極のうち少なくとも1つに高周波電力を供給する高周波電源と、
前記搬送方向と直交する方向に沿って細長く開口する処理ガス供給口を有する処理ガス供給部とを備え、
前記第1の電極および前記第2の電極の間を前記被処理体が通過するように前記被処理体を搬送しつつ、前記第1の電極と前記被処理体との間の空間に前記処理ガス供給口より処理ガスを供給して前記被処理体の表面をプラズマ処理することを特徴とする。
【0009】
これにより、被処理体にプラズマ処理を施す際に、電極を移動させる必要が無くなり、さらに、被処理体を載置するステージも必要ないので、プラズマ処理装置を小型化することができる。よって、被処理体が大型のものである場合であっても、プラズマ処理装置のレイアウトを容易にすることができる。
また、2つの電極の位置関係が変化しないので、高周波電界の形態が変化せず、さらに、処理ガスを被処理体の搬送方向と直交する方向に沿って満遍なく噴出することができ、もってプラズマ処理の均一化を充分に達成することができる。
【0010】
本発明のプラズマ処理装置では、前記処理ガス供給口は、前記第1の電極を貫通して開口することが好ましい。
これにより、処理ガスを第1の電極および第2の電極の間に発生する高周波電界に確実に供給することができ、安定したプラズマを形成することができる。
本発明のプラズマ処理装置では、前記第1の電極と前記被処理体との間の空間に供給された処理ガスを回収するガス回収部をさらに備えることが好ましい。
これにより、プラズマが拡散するのを確実に防止することができ、プラズマ処理領域の制御を容易に行うことができる。
【0011】
本発明のプラズマ処理装置では、前記ガス回収部は、前記搬送方向に関して前記第1の電極より前方に配置されたガス回収口を有することが好ましい。
これにより、プラズマが拡散するのをより確実に防止することができる。
本発明のプラズマ処理装置では、前記ガス回収部は、前記搬送方向に関して前記第1の電極より後方に配置されたガス回収口を有することが好ましい。
これにより、プラズマが拡散するのをより確実に防止することができる。
【0012】
本発明のプラズマ処理装置では、前記被処理体が前記第1の電極および第2の電極の間を通過するように前記被処理体を搬送する搬送手段を有することが好ましい。
これにより、被処理体を第1の電極および第2の電極の間の空間に安定して搬送することができ、もってプラズマ処理の均一化をより充分に達成することができる。
本発明のプラズマ処理装置では、前記搬送手段は、ローラーコンベアであることが好ましい。
これにより、被処理体を第1の電極および第2の電極の間の空間に安定して搬送することができ、もってプラズマ処理の均一化をより充分に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のプラズマ処理装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明のプラズマ処理装置の概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、プラズマ処理装置1は、例えばガラス基板のような平板状のワーク(被処理体)2を搬送する搬送手段としての第1のコンベア3および第2のコンベア4と、ワーク2に所定のプラズマ処理を施すプラズマ処理部5と、ワーク2に予備加熱を施す加熱部6とを備える。
【0014】
第1のコンベア3は、互いに平行に配置された複数のローラー7からなるローラーコンベア8を有し、各ローラー7はワーク2の裏面を支持する。また、第1のコンベア3は、図示しないモータによってローラー7を回転させることによってワーク2を自在に搬送する。ローラー7の表面は絶縁体、例えば、セラミックスやゴムで覆われる。これにより、第1のコンベア3とワーク2とが導通してワーク2が帯電するのを防止できる。特に、ローラー7の表面をゴムで覆った場合、ワーク2に傷が付くのを防止することもでき、好ましい。また、第1のコンベア3の上方は作業空間に開放されており、作業者が未処理のワーク2を投入し、若しくはプラズマ処理済みのワーク2を回収するワーク投入口として機能する。
第2のコンベア4は、第1のコンベア3と同様の構成を有し、プラズマ処理部5を挟んで第1のコンベア3と縦列に配置される。
【0015】
また、第1のコンベア3および第2のコンベア4におけるローラーコンベア8の高さは、プラズマ処理部5における後述の処理空間24とほぼ同じ高さに設定される。したがって、第1のコンベア3および第2のコンベア4は、ワーク2をプラズマ処理部5における処理空間24へ搬送する。
加熱部6は、第2のコンベア4の上方に配置され、第2のコンベア4のローラーコンベアに対向する図示しないヒータを有する。該ヒータは、第2のコンベア4のローラーコンベアに搬送されたワーク2を加熱する。
【0016】
プラズマ処理部5は、上述したように第1のコンベア3および第2のコンベア4の間に配置される。また、プラズマ処理部5は、後述するプラズマ処理ユニット9を内蔵する。
プラズマ処理装置1では、加熱部6にて予備加熱されたワーク2を、第1のコンベア3および第2のコンベア4の作動によって図1中の奥側から手前側に向かって搬送することによりプラズマ処理部5を通過させつつ、プラズマ処理を行う。これにより、ワーク2の全面に対しプラズマ処理を行うことができる。
このように、プラズマ処理装置1では、プラズマ処理時におけるワーク2の搬送方向(以下、単に「搬送方向」と言う)は、図1中の白抜き矢印方向である。
【0017】
図2は、図1におけるプラズマ処理部が有するプラズマ処理ユニットの概略構成を示す斜視図である。なお、以下の説明では、図2中の上側を「上方」、下側を「下方」と言う。また、図2中の白抜き矢印方向が「搬送方向」である。
図2において、プラズマ処理ユニット9は、後述の印加電極(第1の電極)14などを有する上部電極部10と、該上部電極部10に対してワーク2の搬送経路を挟んで対向するように下方に配置される下部電極(第2の電極)11と、上部電極部10の印加電極14に高周波電力を供給する高周波電源12と、高周波電源12および印加電極14の間に介在し、高周波電力を整合する整合器(Matcher)13とを有する。
【0018】
高周波電源12は、印加電極14に例えば周波数が数百Hz〜100MHzであって、出力が数十W〜数kWである高周波電力を供給する。整合器13は、印加電極14からの高周波電力の反射を低減して該高周波電力の印加電極14への供給効率を最大にする。具体的には、整合器13および印加電極14の間を流れる電流の変動に応じたインピーダンスの変動を補正する。特に、大気圧プラズマ処理は、真空プラズマ処理に比して電力印加時のインピーダンスを安定させることが困難である。したがって、整合器13としては追従性のよい整合器を用いることが好ましい。
下部電極11は接地されてアース電極として機能するとともに、整合器13の下端と接続する。この下部電極11は、搬送方向と直交する方向に沿って細長い形状をなしている。また、上部電極部10は、下部電極11との間の空間(以下「処理空間24」という。)に処理ガスを供給する処理ガス供給部23を内蔵している。
【0019】
図3は、図2に示す状態から上部電極部のカバーを取り外した状態を示す斜視図、図4は、図2における線I−Iに沿う断面図である。なお、以下の説明では、図3および図4中の上側を「上方」、下側を「下方」と言う。また、図3および図4中の白抜き矢印方向が「搬送方向」である。
図3に示すように、上部電極部10内には、導電性の材料、例えば、銅などからなる印加電極14と、該印加電極14の下方に配置されるセラミックス、例えば、SiOなどからなる誘電体15とが設けられている。印加電極14は、搬送方向と直交する方向に沿って細長い形状をなしている。この印加電極14は、整合器13と導電性の電極接続部16を介して接続され、整合器13によって整合された高周波電力が印加される。該高周波電力が印加された印加電極14は、対向する下部電極11との間に高周波電界Eを発生する。このとき、誘電体15は印加電極14および高周波電界Eが直接接触するのを防止してアーク放電などの異常放電の発生を防止する。誘電体15の厚みは、厚すぎると高周波電界Eを発生するために高電圧を要することがあり、薄すぎると高周波電力印加時に絶縁破壊が起こり、アーク放電が発生することがあるため、通常は、0.01〜4mm程度であることが好ましい。
【0020】
図4に示すように、上部電極部10内に設けられた処理ガス供給部23は、印加電極14および誘電体15を上下方向に貫通する処理ガス供給口18を有している。
印加電極14や誘電体15の上方は、逆升状のカバー17により覆われている。カバー17は、印加電極14および誘電体15によって下方の開口部が閉鎖されて、内部に処理ガス供給流路20を形成する。該処理ガス供給流路20には、カバー17の端部に接続された図示しない処理ガス供給装置から供給された混合ガスが充填され、該混合ガスは処理ガス供給口18から噴出する。処理ガス供給口18は、搬送方向と直交する方向に沿って細長くスリット状に開口しており、印加電極14の長手方向に沿って一様に混合ガスを噴出する。
【0021】
該混合ガスは、OガスやCFガスなどの処理ガスと、Heガスなどのキャリアガスから成り、混合ガスの導入量としては、例えば、数十SCCM〜数SLMであることが好ましい。また、処理ガスとキャリアガスの混合割合は、プラズマ処理の種類によって異なるが、処理ガスの割合が大きすぎると、高周波電界Eにおいて放電が発生せず、若しくは、プラズマ処理の効率向上に寄与しないため、例えば、処理ガスの割合が1〜10体積%であることが好ましい。
【0022】
処理ガス供給口18から噴出された混合ガスのうち処理ガスは、処理空間24に形成された高周波電界Eに流入し、放電によって活性化されてプラズマ、例えば、イオンやラジカルになる。該プラズマはワーク2の表面に接触してプラズマ処理を施す。
搬送方向に関してカバー17の両側(前方および後方)には、それぞれ、ガス回収部19a、19bが隣接して設けられている。各ガス回収部19a、19bは、搬送方向と直交する方向に細長い直方体状の筐体で構成され、搬送方向と直交する方向に沿ってスリット状に細長く形成されたガス回収口191a、191bを有している。ガス回収部19a、19bの内部は、ガス回収部19の端部に接続された図示しない排気ポンプによって排気されるため、ガス回収部19の内部は排気流路21として機能し、該排気流路21は、ガス回収口191a、191bを介して処理空間24に存在するプラズマ(活性化された処理ガス)やキャリアガスを回収する。
【0023】
図4において、処理ガス供給口18から噴出されガス回収部19によって回収される混合ガスの流れを黒矢印で示す。ガス回収部19aのガス回収口191aは、搬送方向に関して、印加電極14の前端142や下部電極11の前端112よりさらに前方に位置している。処理ガス供給口18からガス回収口191aまでの間には、ワーク2の移動方向と同方向に流れる気流、すなわちパラレルフローが形成される。
【0024】
これに対し、ガス回収部19bのガス回収口191bは、搬送方向に関して、印加電極14の後端141や下部電極11の後端111よりさらに後方に位置している。処理ガス供給口18からガス回収口191bまでの間には、ワーク2の移動方向と反対方向に流れる気流、すなわちカウンターフローが形成される。
このような構成により、処理空間24に外気が流入するのを確実に防止することができ、処理空間24のプラズマを安定的に発生させることができる。
【0025】
図5は、図1のプラズマ処理装置の電気的接続関係を示すブロック図である。
図5に示すように、高周波電源12は同軸ケーブル22を介して整合器13に接続し、該整合器13は電極接続部16を介して印加電極14に接続する。したがって、高周波電源12は印加電極14と電気的に接続され、高周波電源12は所定の高周波電力を印加電極14に供給する。
【0026】
所定の高周波電力を供給された印加電極14は、下部電極11に向けて放電を行うことによって処理空間24に高周波電力を印加して高周波電界Eを形成する。処理空間24に高周波電界Eが形成されている間、下部電極11は処理空間24に印加された高周波電力によって電圧が発生するが、下部電極11は整合器13に直接接続されているため、発生した電圧は整合器13へ還流する。
【0027】
プラズマ処理装置1において、ワーク2にプラズマ処理を施す場合、まず、作業者が第1のコンベア3の上部のローラーコンベア8にワーク2を載置すると、第1のコンベア3および第2のコンベア4が、ワーク2を第2のコンベア4のローラーコンベアまで搬送する。このとき、ワーク2は加熱部6のヒータと対向する。
加熱部6のヒータが所定時間に亘ってワーク2を加熱した後、高周波電源12が所定の高周波電力を印加電極14に供給し、該印加電極14は処理空間24に高周波電力を印加して高周波電界Eを形成する。そして、処理ガスを含む混合ガスが処理ガス供給口18から印加電極14の長手方向に沿って一様に噴出する。これにより、処理ガス供給口18から噴出された混合ガスのうち処理ガスは、処理空間24に形成された高周波電界Eに流入し、放電によって活性化されてプラズマとなる。
【0028】
次いで、第2のコンベア4がワーク2を第1のコンベア3に向けて比較的遅い速度で搬送する。ワーク2は第1のコンベア3に向けて搬送される間に処理空間24を通過するので、その全表面が高周波電界Eによって走査される。上述したように高周波電界Eにはプラズマが発生しているので、ワーク2の全表面にプラズマ処理が施される。また、ワーク2が処理空間24を通過する際、ガス回収部19a、19bは処理空間24に存在するプラズマやキャリアガスを回収する。
【0029】
その後、処理空間24を通過したワーク2は第1のコンベア3のローラーコンベア8まで搬送され、作業者は該搬送されたワーク2を取り出す。
以上説明したような本発明のプラズマ処理装置1によれば、ワーク2にプラズマ処理を施す際に、電極を移動させる必要が無く、さらに、ワーク2を載置するステージも必要ないので、プラズマ処理装置1を小型化することができ、もってプラズマ処理装置1のレイアウトを容易にすることができる。また、2つの電極の位置関係が変化しないので、高周波電界の形態が変化せず、さらに、処理ガスを含む混合ガスを搬送方向と直交する方向に沿って満遍なく噴出することができ、もってプラズマ処理の均一化を充分に達成することができる。
【0030】
また、上述したプラズマ処理装置1では、第1のコンベア3および第2のコンベア4はローラーコンベア8を有し、該ローラーコンベア8によってワーク2を搬送するので、ワーク2を処理空間24に安定して搬送することができ、もってプラズマ処理の均一化をより充分に達成することができる。
また、上述したプラズマ処理装置1では、処理ガス供給口18が印加電極14および誘電体15を貫通して開口するので、混合ガスを処理空間24に発生する高周波電界に確実に供給することができ、安定したプラズマを形成することができる。
【0031】
さらに、上述したプラズマ処理装置1では、ガス回収部19a、19bを設けたことにより、プラズマが拡散するのを確実に防止することができ、プラズマ処理領域の制御を容易に行うことができる。
以上、本発明のプラズマ処理装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0032】
例えば、本発明のプラズマ処理装置は、プラズマ処理部を1つ備えるものであったが、図6に示すように、ワーク2の搬送経路に沿って配置された複数のプラズマ処理部を備えていてもよく、このとき、プラズマ処理部としてワーク2を挟んで2つの上部電極部10が対向してもよい。これにより、ワーク2のプラズマ処理の効率を著しく向上することができる。
【0033】
また、第1のコンベア3および第2のコンベア4はローラーコンベアではなく、ベルトコンベアを有していてもよい。
印加電極14に印加される電力は、高周波によるものに限られず、パルス波やマイクロ波によるものであってもよい。
印加電極14および下部電極11の材料としては、銅の他に、アルミニウムなどの金属単体、ステンレス、真鍮などの合金、金属間化合物などが挙げられる。
【0034】
また、誘電体15の材料としては、SiOに限られず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック、ガラス、Al、ZrO、TiOなどの金属酸化物、BaTiO(チタン酸バリウム)などの複酸化物などを用いることができる。ここで、25℃における比誘電率が10以上のものである誘電体15を用いれば、高周波電界Eにおいて、低電圧で高密度のプラズマを発生させることができ、処理効率が向上する。
使用可能な誘電体15の比誘電率の上限は特に限定されるものではないが、比誘電率が10〜100のものが好ましい。比誘電率が10以上である誘電体15には、ZrO、TiOなどの金属酸化物、BaTiOなどの複酸化物が該当する。
【0035】
また、本発明のプラズマ処理装置が施すプラズマ処理の種類は、親水処理、撥水処理、アッシング処理、成膜処理、ダイシング処理またはエッチング処理などのいずれであってもよい。
本発明のプラズマ処理装置で用いられる処理ガスとしては、電界を印加することによってプラズマを発生するガスであれば、OガスやCFガスに限定されず、処理目的により種々のガスを用いることができる。
【0036】
例えば、ワーク2の表面を撥水化する撥水処理では、処理ガスとして、C、C、CClF、SFなどのフッ素含有化合物ガスが用いられる。また、ワーク2の表面を親水化する親水処理では、処理ガスとして、O、HO、空気などの酸素元素含有化合物、N、NHなどの窒素元素含有化合物、SO、SOなどの硫黄元素含有化合物が用いられる。これにより、ワーク2の表面にカルボニル基、水酸基、アミノ基などの親水性官能基を形成させて表面エネルギーを高くし、親水性表面を得ることができる。また、アクリル酸、メタクリル酸などの親水基を有する重合性モノマーを用いて親水性重合膜を堆積することもできる。
【0037】
ワーク2の表面に電気的、光学的機能を付加する成膜処理では、SiO、TiO、SnOなどの金属酸化物薄膜をワーク2の表面に形成するために、Si、Ti、Snなどの金属の金属−水素化合物、金属−ハロゲン化合物、金属アルコラートなどの処理ガスが用いられる。
エッチング処理やダイシング処理では、ハロゲン系ガスが用いられ、レジスト処理や有機物汚染の除去では、酸素系ガスが用いられる。表面クリーニングや表面改質では、Ar、Nなどの不活性ガスが処理ガスとして用いられ、不活性ガスのプラズマで表面クリーニングや表面改質が行われる。
キャリアガスとしても、Heガスに限られず、Ne、Ar、Xeなどの希ガス、Nガスなどが用いることができ、これらは単独でも2種以上を混合した形態でも用いられる。
【0038】
また、本発明における被処理体としては、表示装置用のガラス基板に限られず、シリコンウエハなどの半導体基板、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などのプラスチック、セラミックなどから成る基板が挙げられる。また、被処理体の形状としては、板状やフィルム状などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のプラズマ処理装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】図1におけるプラズマ処理部が有するプラズマ処理ユニットの概略構成を示す斜視図。
【図3】図2に示す状態から上部電極部のカバーを取り外した状態を示す斜視図。
【図4】図2における線I−Iに沿う断面図。
【図5】図1のプラズマ処理装置の電気的接続関係を示すブロック図。
【図6】本発明のプラズマ処理装置の変形例の概略構成を示す側面図。
【図7】従来のプラズマ処理装置の概略構成を示す図。
【符号の説明】
【0040】
E……高周波電界 1……プラズマ処理装置 2……ワーク 3……第1のコンベア 4……第2のコンベア 5……プラズマ処理部 6……加熱部 7……ローラー 8……ローラーコンベア 9……プラズマ処理ユニット 10……上部電極部 11……下部電極 111……後端 112……前端 12……高周波電源 13……整合器 14……印加電極 141……後端 142……前端 15……誘電体 16……電極接続部 17……カバー 18……処理ガス供給口 19a、19b……ガス回収部 191a、191b……ガス回収口 20……処理ガス供給流路 21……排気流路 22……同軸ケーブル 23……処理ガス供給部 24……処理空間 51……基板 52……ステージ
53……放電空間 54……高周波電極 55……整合器 56……高周波電源 57……アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体の搬送経路を挟んで互いに対向して配置され、前記被処理体の搬送方向と直交する方向に沿って細長い形状をなす第1の電極および第2の電極と、
前記第1の電極および第2の電極のうち少なくとも1つに高周波電力を供給する高周波電源と、
前記搬送方向と直交する方向に沿って細長く開口する処理ガス供給口を有する処理ガス供給部とを備え、
前記第1の電極および前記第2の電極の間を前記被処理体が通過するように前記被処理体を搬送しつつ、前記第1の電極と前記被処理体との間の空間に前記処理ガス供給口より処理ガスを供給して前記被処理体の表面をプラズマ処理することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記処理ガス供給口は、前記第1の電極を貫通して開口する請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第1の電極と前記被処理体との間の空間に供給された処理ガスを回収するガス回収部をさらに備える請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記ガス回収部は、前記搬送方向に関して前記第1の電極より前方に配置されたガス回収口を有する請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記ガス回収部は、前記搬送方向に関して前記第1の電極より後方に配置されたガス回収口を有する請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記被処理体が前記第1の電極および第2の電極の間を通過するように前記被処理体を搬送する搬送手段を有する請求項1ないし5のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記搬送手段は、ローラーコンベアである請求項6に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−134828(P2006−134828A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325549(P2004−325549)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】