説明

プラズマ処理装置

【課題】プラズマ処理装置における電極間の電界をより強くする。
【解決手段】基板102を保持することが可能な上部電極12と、上部電極12と対向するように配置され、上部電極12と対向する部分に上部電極12に向かって複数の柱状凸部14aが形成された下部電極14とを設ける。そして、柱状凸部14aの配置のピッチPと先端部の幅Wとの比P/Wを1.3以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対してプラズマによる成膜、エッチング等の処理を施すために、基板を保持することが可能な第1電極と、その第1電極と対向するように配置された第2電極とを備えた平行平板型のプラズマ処理装置が知られている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
また、第2電極の第1電極に対向する面に複数の凹部と複数の凸部とを形成し、凹部又は凸部の一方にガス供給口を形成し、他方にガス排気口を形成したプラズマ処理装置の構成も開示されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−330520号公報
【特許文献2】特開平7−228965号公報
【特許文献3】特開平11−145499号公報
【特許文献4】特開2006−237490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなプラズマ処理装置では、プラズマによる処理能力を高めるためにプラズマの密度をより高くすることが重要である。プラズマの密度を高めるためには、第1電極と第2電極との間の電界を大きくする必要がある。
【0006】
本発明は、電極間の電界をより強めたプラズマ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、基板を保持することが可能な第1電極と、第1電極と対向するように配置され、第1電極と対向する部分に第1電極に向かって複数の柱状凸部が形成された第2電極と、を備え、柱状凸部の配置のピッチPと、柱状凸部の先端部の幅Wと、の比P/Wが1.3以上である、プラズマ処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電極間の電界を強めたプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態におけるプラズマ処理装置の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるプラズマ処理装置の上部電極及び下部電極の周辺の構成を示す拡大正面図である。
【図3】本発明の実施の形態における下部電極の構造を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態における下部電極の構造を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態における下部電極の柱状凸部のピッチ/幅の比に対する放電開始電圧の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施の形態におけるプラズマ処理装置100を示した概略図である。図2は、プラズマ処理装置100の上部電極及び下部電極の周辺の拡大図である。図3及び図4は、プラズマ処理装置100の下部電極の構造を詳細に説明するための平面図及び断面図である。
【0011】
プラズマ処理装置100は、図1に示すように、真空チャンバ10内に、上部電極12と下部電極14とが互いに対向するように設置された平行型構造を有する。また、上部電極12及び下部電極14は、それぞれ本発明における「第1電極」及び「第2電極」に相当する。上部電極12及び下部電極14の対向する面の面積は、例えば、約600mm×約600mmとされる。また、上部電極12には、下部電極14と対向する側に成膜又はエッチングを施す基板102を保持するための基板保持部12aが形成されている。基板102は、例えば、約400mm×約300mmの矩形形状を有している。また、上部電極12は、X方向に揺動可能な機能が設けられている。また、上部電極12は、基板102を所定の温度に保持するための加熱冷却機構部(図示せず)を備えてもよい。
【0012】
下部電極14は、図2に示すように、上部電極12と対向する面に柱状凸部14aが形成されている。これにより、成膜時に柱状凸部14aを中心として高密度なプラズマを発生させることが可能となる。また、図4に示す柱状凸部14aの先端部から柱状凸部14aの間の底面14bまでの高さhは、5mm〜10mm程度とすることが好適である。
【0013】
また、図3及び図4に示すように、柱状凸部14aは根元部から先端部に向かって幅が一定の四角柱とすることが好適である。ただし、これに限定されるものではなく、円柱としてもよいし、根元部から先端部に向かって細くなるように形成された柱形状としてもよい。これにより、柱状凸部14aの幅の小さい先端部に電界をより集中させることが可能となるので、より高密度なプラズマを発生させることが可能となる。
【0014】
また、柱状凸部14aは、下部電極14の全面に均一な密度で形成することが好適である。このとき、柱状凸部14aの配置のピッチPは、図4に示すように、隣接する柱状凸部14a間で、プラズマ発生領域200がオーバラップするように配置することが好適である。例えば、柱状凸部14aは、図3に示すX方向及びY方向にそれぞれ5mm以上20mm以下のピッチPで配置することが好適である。これにより、上部電極12と下部電極14との間に発生するプラズマの密度を略均一にすることができる。
【0015】
また、下部電極14の柱状凸部14aには、プラズマにガスを供給するためのガス供給口14cが設けられている。また、柱状凸部14aのガス供給口14cの先端部14dは、半径が約0.5mm以下の曲面形状を有するように形成されている。これにより、ガス供給口14cから供給されるガスを柱状凸部14aの先端付近で滞留させることが可能となるので、プラズマ発生領域200における原料ガスの滞留時間を長くすることが可能となる。
【0016】
このような構成とすることにより、例えば、プラズマ処理装置100を成膜に用いた場合にはより多くの成膜種を生成することが可能となり、成膜速度をより大きくすることが可能となる。
【0017】
また、図1に示すように、真空チャンバ10は、側方に排気口10aを有するとともに、その排気口10aは、排気流量調整バルブ16を介して真空排気設備18に接続されている。この真空排気設備18は、ターボ分子ポンプ(TMP)18a及び油回転ポンプ(RP)18bによって構成されている。また、下部電極14のガス供給口14cは、原料ガス供給源20に接続されている。
【0018】
下部電極14において上部電極12と対向する面に複数の柱状凸部14aを設けることによって、下部電極14の柱状凸部14aの先端部に電界を集中させることができる。これによって、下部電極14の柱状凸部14aに高密度なプラズマを発生させることができる。その結果、プラズマ化されるガスの分解効率を向上させることができる。プラズマ処理装置100を成膜に用いる場合には成膜速度を向上させることができ、エッチングに用いる場合にはエッチング速度を向上させることができる。
【0019】
また、柱状凸部14aを四角柱とすることによって、柱状凸部14aが円錐又は四角錐形状におけるテーパ部を設ける分の面積が必要になる場合に比べて柱状凸部14aの間の空間が広く保たれ真空チャンバ10の排気口10aからのガスの排気をスムーズに行うことが可能となる。さらに、柱状凸部14aを四角柱とすることによって、下部電極14の表面に縦及び横に矩形断面形状の溝を形成するだけで柱状凸部14aを形成することができ、加工が容易になる利点もある。
【0020】
また、柱状凸部14aの先端部を中心とするプラズマ発生領域200が隣接する柱状凸部14aを中心とするプラズマ発生領域200とオーバラップするように、柱状凸部14aのピッチPを設定することによって、隣接する柱状凸部14a間の領域にもプラズマ発生領域200が広がる。これにより、プラズマ発生領域200を下部電極14の全面により均一に近い密度で広げることができる。その結果、下部電極14の全面での膜の膜厚や膜質の不均一性を低減したり、エッチングの速度の不均一性を低減したりすることができる。
【0021】
また、上部電極12及び基板102をX方向に揺動可能に設け、上部電極12及び基板102を揺動させることによって、プラズマ密度の高い下部電極14の柱状凸部14aの先端領域のプラズマを基板102の表面に均一に触れさせることができる。これによって、不連続な柱状凸部14aを設けた構成であっても成膜の膜厚及び膜質やエッチングの速度が不均一になることを抑制することができる。
【0022】
また、柱状凸部14aの配置のピッチPと柱状凸部14aの先端部の幅Wとの比P/Wが1.3以上となるように設定することが好適である。このような比P/Wの関係とすることによって、プラズマ処理装置100で発生されるプラズマの密度をより高くすることができる。
【0023】
図5は、下部電極14に形成する柱状凸部14aの配置のピッチPと先端部の幅Wとの比P/Wに対する放電開始電圧の関係を示す。図5は、プラズマ処理装置100においてシリコン薄膜を形成する際のプラズマの放電開始電圧(パッシェンミニマム値)をシミュレーション及び実験で得た結果を示す。図5において、クロスマーク(×)がシミュレーション結果を示し、白抜き菱形マーク(◇)が実験結果を示す。
【0024】
以下、図5に示す実験結果を得るために行った実験の手順を示す。図1に示すように、プラズマ処理装置100の上部電極12の基板保持部12aに基板102を固定した後、真空チャンバ10の排気口10aに接続された真空排気設備18により真空チャンバ10内を真空排気した。上部電極12と下部電極14との距離は15mmとした。また、基板102は230℃に加熱した状態で保持した。
【0025】
次に、上部電極12と下部電極14との間に、原料ガス供給源20に接続された下部電極14のガス供給口14cから原料ガスである水素(H)とシラン(SiH)を供給した。ここでは、水素(H)を100sccm及びシラン(SiH)を8sccmの流量で真空チャンバ10内の圧力が1Torrとなるように供給した。そして、下部電極14に高周波電力を供給することにより、下部電極14の柱状凸部14aを中心としてプラズマを発生させた。ここで、高周波電力としては総ての条件において同一の電力を供給し、周波数は70MHzとした。原料ガスがプラズマにより分解されて成膜種が生成され、成膜種が基板102上に堆積することによって、基板102上にシリコン薄膜が形成された。利用されなかった原料ガスは、真空チャンバ10の排気口10aから排気した。
【0026】
ここで、下部電極14の柱状凸部14aの先端幅WとピッチPとの組み合わせは表1に示すものとした。表1に示した先端幅WとピッチPとの組み合わせについて、それぞれ上記の成膜条件下において放電開始電圧(パッシェンミニマム値)を計算及び測定した。放電開始電圧が低いほどより低電圧で安定放電が可能であり、ガスの分解反応がより効率良く行われていることを示している。
【表1】

【0027】
図5に示すように、先端幅WとピッチPとの比P/Wが1.3未満では放電開始電圧の低下はみられず、1.3以上となると急激に放電開始電圧が低下する。すなわち、先端幅WとピッチPとの比P/Wを1.3以下とすることによって、より低電圧で安定放電が可能となり、ガスの分解反応をより効率良く行うことができる。これにより、プラズマ処理装置100による成膜速度やエッチング速度の向上を図ることができる。
【0028】
なお、本実施形態は、制限的なものではなく、例えば、柱状凸部14aにガス供給口を設けるとともに、柱状凸部14aに挟まれた底部14bにガス吸引口を設けてもよい。また、下部電極14の柱状凸部14aにガス吸引口を設けるとともに、柱状凸部14aに挟まれた底部14bにガス供給口を設けてもよい。このようにすることにより、大面積において均一な成膜又はエッチングが可能となる。
【0029】
また、上記実施形態では、上部電極12をX方向に揺動させることによって基板102との相対的な位置を変化させる例を示したが、本発明はこれに限らず、上部電極12又は基板102をX方向以外のたとえばY方向に沿って揺動してもよい。このようにすることにより、局所的な領域において、均一な成膜又はエッチングが可能となる。なお、上部電極12及び基板102の揺動幅は、凸部のピッチ(約7mm)以上に設定するのが望ましい。
【符号の説明】
【0030】
10 真空チャンバ、10a 排気口、12 上部電極、12a 基板保持部、14 下部電極、14a 柱状凸部、14b 底部、14c ガス供給口、14d 先端部、16 排気流量調整バルブ、18 真空排気設備、20 原料ガス供給源、100 プラズマ処理装置、102 基板、200 プラズマ発生領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持することが可能な第1電極と、
前記第1電極と対向するように配置され、前記第1電極と対向する部分に前記第1電極に向かって複数の柱状凸部が形成された第2電極と、を備え、
前記柱状凸部の配置のピッチPと、前記柱状凸部の先端部の幅Wと、の比P/Wが1.3以上であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、
前記柱状凸部は、四角柱であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置であって、
前記柱状凸部には、先端部からガスを供給するためのガス供給口が形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−181625(P2011−181625A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43154(P2010−43154)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】