説明

プラズマCVD成膜装置及び成膜方法

【課題】膜質及びバリア性を改善する。
【解決手段】プラズマCVD成膜装置10は、第1成膜ロール20A及び該第1成膜ロールに対して平行に対向配置された第2成膜ロール20Bを含む成膜ロール20と、第1対称面18Aが設定され、成膜ゾーン22が設定され、第2対称面18Bが設定されており、第1対称面内に配列される1本又は2本以上のガス供給管32であって、成膜ゾーンと対向し、かつ第2対称面に対して鏡面対称に配列される1個又は2個以上のガス供給口を有するガス供給管を備えるガス供給部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD成膜装置及びこの成膜装置を用いる成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子や有機薄膜太陽電池などをロールツーロールプロセスで生産する場合には、支持基板(及び/又は封止基板)には柔軟性を有するフレキシブル基板が用いられる。
【0003】
フレキシブル基板には透明性の他に水蒸気や酸素に対するバリア性(以下、単にバリア性という場合がある。)が要求される。フレキシブル基板にバリア性を持たせるために、基材上に透明な無機膜を成膜することが一般的に行われている。透明な無機膜の材料としては、例えばシリコン(Si)の酸化物、窒化物、酸窒化物などが挙げられる。
【0004】
無機膜の成膜法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法(PVD法)や、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、光CVD法、Cat-CVD法、プラズマCVD(Plasma Enhanced-Chemical Vapor Deposition)法などの化学蒸着法(CVD法)がある。
【0005】
物理蒸着法である真空蒸着法は、成膜速度が高いため生産性の高い成膜方法である。よって主に食品包装用フィルムの成膜方法として広く適用されている。しかしながら真空蒸着法により成膜された膜は、バリア性において水蒸気透過率、酸素透過率のいずれも不十分であるため、有機エレクトロルミネッセンス素子といった電子デバイス用のフレキシブル基板の製造方法への適用は困難である。
【0006】
またスパッタ法は、真空蒸着法と比較すると成膜速度が低いため生産性が低い。さらにスパッタ法を含む物理蒸着法で形成された膜は脆いため、膜厚を厚くするとクラックや基材からの剥離が発生しやすくなる。成膜された膜にもフレキシブル性が要求されるロールツーロールプロセスなどの成膜方法を採用した場合には、例えばスパッタ法により成膜された膜には基材の変形に追従できずにクラックや剥離が生じるといった問題がある。
【0007】
他方、化学蒸着法であるプラズマCVD法は、成膜速度が高く、生産性の高い成膜方法である。
【0008】
またプラズマCVD法で成膜された膜は、柔軟性に優れるため数百nm〜数μm程度の任意の膜厚とすることができる。
【0009】
さらにプラズマCVD法により成膜された膜は、柔軟性に富み、基材の変形に追従できるためクラックや基材からの剥離が発生せず、バリア性が劣化しない。よってプラズマCVD法は、成膜ロール、搬送ロールといった曲率のあるロールに巻き取られ、また巻き出されるプロセスを含むロールツーロールプロセスに適した成膜法であると言える。このため、プラズマCVD法は、新しい成膜法として期待されている。
【0010】
プラズマCVD法には、基板と対向電極との間で放電させる平行平板型、ロールと対向電極との間で放電させる形式など種々の形式があり、種々の形状の電極(対向電極)が用いられているが、電極への膜材料の堆積が問題となっている。ロール上の基材(フィルム)と対向電極との間に導入された原料ガスは、基材及び対向電極の両方にほぼ等量の薄膜を堆積させるので、長尺の基材上に連続的に膜を成膜させる場合には、対向電極に相当量の堆積物が厚く堆積する。
【0011】
この堆積物がロールと対向電極との間の放電インピーダンスに影響を及ぼして成膜条件の変動を引き起こしたり、堆積物が剥離してフレーク状のダストとなり、また剥離時にフレーク状のダストよりもさらに細かい破片がパーティクルとなってチャンバ内を浮遊し、浮遊したパーティクルが基材及び成膜される膜上に達して、成膜される膜に欠陥を生成させたり、バリア性を損なったりしてしまうおそれがある。
【0012】
対向電極への膜材料の堆積を抑制して成膜条件の変動を抑えるための対策としては、例えば対向電極とは別にガス流によって保護された電極を配置する構成が知られている。
【0013】
また対向電極への膜材料の堆積の問題を解決する別の方法として、フィルムを搬送する2つの対向する成膜ロール間に放電プラズマを発生させ、ガスを供給することで成膜ロールに巻き付けられた基材に膜を形成する方法が知られている(特許文献1及び2参照)。
【0014】
この方法では、放電プラズマ発生領域の両側に基材を配置しているので、放電プラズマ発生領域で分解された膜材料を効率的に成膜に利用でき、膜材料の堆積は主として放電プラズマ発生領域両側の基材上でのみ行われ、成膜プロセス中は対向電極に相当する成膜ロールには常に基材が巻き付けられているため、電極に膜材料が堆積することがなく、長時間にわたって安定な成膜が可能となる。
【0015】
ここで図10を参照して、上記従来技術にかかるプラズマCVD成膜装置の構成例について説明する。図10は従来のプラズマCVD成膜装置を、内部の構成が理解できるように透過的に示す、上からみた概略的な平面図である。
【0016】
図10に示すように、プラズマCVD成膜装置110は、作動機構集積部111と真空チャンバ112とを備えている。作動機構集積部111は、真空チャンバ112と連接して設けられている。真空チャンバ112は、内部空間を減圧可能とした容器状の構成を有している。真空チャンバ112はこの例では直方体状の形状を有している。
【0017】
真空チャンバ112内には、第1成膜ロール120Aと、この第1成膜ロール120Aと対向配置される第2成膜ロール120Bと、第1成膜ロール120A及び第2成膜ロール120Bの間隙に対向するように配置されているガス供給部130が格納されている。ガス供給部130は、第1成膜ロール120A(及び/又は第2成膜ロール120B)の回転軸(延在方向)に対して平行に延在するガス供給管132を備えている。
【0018】
真空チャンバ112には、真空排気口114が設けられる。真空排気口114は、通常、作動機構集積部111と真空チャンバ112とを隔てる壁部に設けられる場合が多いが、この例では作動機構集積部111と真空チャンバ112とを隔てる壁部近傍の底部(底面)に設ける例を示してある。
【0019】
ガス供給管132は、ガス供給口134を備えている。ガス供給口134は、ガス供給口134から供給されるガスの流れを考慮して、真空排気口114側とは反対側の端部寄りの位置に、第1成膜ロール120A及び第2成膜ロール120Bの間隙を指向するように設けられている。
【0020】
作動機構集積部111には、第1成膜ロール120Aを作動させる第1成膜ロール作動機構122A、第2成膜ロール120Bを作動させる第2成膜ロール作動機構122B及び真空排気口114と図示しない配管等により接続される真空ポンプ140が設けられている。
【0021】
主として成膜工程を目視により観測するという観点から、作動機構集積部111には、第1成膜ロール作動機構122A、第2成膜ロール作動機構122B及び真空ポンプ140といった作動機構が集積されていた。よって真空排気口114は、作動機構集積部111と真空チャンバ112とを隔てる壁部、この壁部近傍の底部又は上部のような真空ポンプ140の近傍に設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特許第2587507号公報
【特許文献2】特許第4268195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら上記特許文献にかかるロールツーロールプロセスによる成膜方法では、真空チャンバ内に圧力分布が生じやすく、長尺の基材(形成されるフレキシブル基板)の幅方向(TD(traverse direction)方向という場合がある。)でみたときに膜質が不均一となってしまい、結果として水蒸気や酸素に対するバリア性がTD方向でみたときに不均一となってしまい、部分的にバリア性が不十分な領域ができてしまうという問題があることが本願発明者らの知見から明らかとなった。
【0024】
具体的には、上述したように真空排気口が作動機構集積部と真空チャンバとを隔てる壁部又は壁部近傍のような真空ポンプの近傍に偏在していたため、真空チャンバ内に圧力分布が生じやすくなっていた。またガス供給管に設けられるガス供給口の配置位置を真空排気口の配置位置に対応させざるを得なかったため、ガス供給管から真空排気口に至るガスの流れを考慮すると、ガス供給口は、真空排気口からなるべく離間する位置に配置せざるを得なかった。結果として成膜された膜をTD方向でみたときに膜質が不均一となってしまっていた。
【0025】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたもので、長尺の基材上に成膜される膜の膜質を均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にできるプラズマCVD成膜装置及びこの成膜装置を用いる成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者らは、プラズマCVD法について鋭意研究を進めたところ、プラズマCVD成膜装置の真空チャンバにおいて、ガス供給管の構成及びガス供給管に設けられるガス供給口の配置を所定の配置とし、さらに真空ポンプが接続される真空排気口の配置を所定の配置とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0027】
すなわち本発明によれば、
[1] 長尺の基材を連続的に搬送しながら、該基材上に連続的に成膜するプラズマCVD成膜装置において、第1成膜ロール及び該第1成膜ロールに対して平行に対向配置された第2成膜ロールを含み、前記基材を巻き付けて搬送する成膜ロールと、前記第1成膜ロールの回転軸と前記第2成膜ロールの回転軸とを最短距離で結ぶ線分を2等分し、かつ該線分と直交する第1対称面が設定され、前記第1成膜ロール及び前記第2成膜ロールの間隙に成膜ゾーンが設定され、前記成膜ゾーンの前記回転軸に沿う方向の長さを2等分し、かつ前記第1対称面と直交する第2対称面が設定されており、前記第1対称面内に配列される1本又は2本以上のガス供給管であって、前記成膜ゾーンと対向し、かつ前記第2対称面に対して鏡面対称に配列される1個又は2個以上のガス供給口を有する前記ガス供給管を備えるガス供給部とを備えるプラズマCVD成膜装置。
[2] 隣り合う前記ガス供給口同士が等間隔に配置される、[1]に記載のプラズマCVD成膜装置。
[3] 2本以上の前記ガス供給管を備え、隣り合う前記ガス供給口同士の間隔が該ガス供給管ごとに異なっている、[2]に記載のプラズマCVD成膜装置。
[4] 2本以上の前記ガス供給管を備え、前記ガス供給管それぞれが同じ個数の前記ガス供給口を備える、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
[5] 2本以上の前記ガス供給管を備え、隣り合う前記ガス供給管のうちの一方の前記ガス供給管が、前記第2対称面内に配置される前記ガス供給口を備える、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
[6] 前記ガス供給部が、前記ガス供給管に接続される接続部であって、前記第2対称面に対して鏡面対称となる位置に設けられる前記接続部を有する、前記ガス供給管にガスを供給する配管を備える、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
[7] 前記ガス供給部が、前記ガス供給管の延在方向の長さを2等分する位置に設けられる前記接続部を有する配管を備える、[6]に記載のプラズマCVD成膜装置。
[8] 前記ガス供給部が、前記ガス供給管の延在方向の両端部に設けられる前記接続部を有する配管を備える、[6]に記載のプラズマCVD成膜装置。
[9] 前記ガス供給管が、延在方向の長さが互いに等しい2以上の短管部により構成され、該2以上の短管部それぞれに前記ガス供給口が設けられる、[1]〜[8]のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
[10] 前記ガス供給部が、前記2以上の短管部それぞれに接続される接続部であって、前記短管部の延在方向の長さを2等分する位置に設けられる前記接続部を有する、前記ガス供給管にガスを供給する配管を備える、[9]に記載のプラズマCVD成膜装置。
[11] 前記接続部を有する前記配管には、前記ガスの流量を調節するガス流量調節バルブが設けられる、[10]に記載のプラズマCVD成膜装置。
[12] 前記ガス流量調節バルブを制御するための第1センサをさらに備える、[11]に記載のプラズマCVD成膜装置。
[13] 前記第1センサに接続されており、該第1センサが測定した測定値又は設定値からの変動幅が入力できるように、かつ前記ガス流量調節バルブに接続されており、該ガス流量調節バルブの開閉動作を制御できるように設けられる自動制御部をさらに備える、[12]に記載のプラズマCVD成膜装置。
[14] 前記第1センサが成膜される膜の厚さを検知する膜厚センサである、[12]又は[13]に記載のプラズマCVD成膜装置。
[15] 前記第1対称面と前記第2対称面とが交差して画成される交差線に対して軸対称となるように、前記ガス供給部との間に前記成膜ロールを挟んで配置される1個又は2個以上の真空排気口を有し、
前記真空排気口に接続される真空ポンプをさらに含む、[1]〜[14]のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
[16] 前記第1対称面及び前記第2対称面に対して鏡面対称となるように配置されている1個又は2個以上の真空排気口を有する、[15]に記載のプラズマCVD成膜装置。
[17] 前記真空排気口が3個以上であり、該真空排気口が奇数個である場合には、少なくとも1個が第1対称面と第2対称面が直交する直線上に位置し、かつ第1対称面及び第2対称面で分断される真空排気口の平面形状及びその面積が均等になるように設けられている[15]又は[16]に記載のプラズマCVD成膜装置。
[18] 前記真空排気口と前記真空ポンプとの間に設けられており、前記真空排気口の個数と同数である1個又は2個以上の圧力調節バルブと、
前記第1対称面及び前記第2対称面に対して鏡面対称の位置に、前記真空排気口それぞれと対をなす前記真空排気口の個数と同数の第2センサとをさらに備える、[15]〜[17]のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
[19] 前記第2センサが、対をなす前記真空排気口と対向する位置に設けられている、[18]に記載のプラズマCVD成膜装置。
[20] 前記第2センサが、対をなす前記真空排気口の近傍に設けられている、[18]に記載のプラズマCVD成膜装置。
[21] 前記第2センサが、対をなす前記真空排気口と前記真空ポンプとの間に設けられている前記圧力調節バルブと一体的に設けられている、[18]に記載のプラズマCVD成膜装置。
[22] 前記第2センサに接続されており、該第2センサが測定した測定値又は設定値からの変動幅が入力できるように、かつ前記圧力調節バルブに接続されており、該圧力調節バルブの開閉動作を制御できるように設けられる自動制御部を備える、[18]〜[21]のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
[23] 前記第2センサが圧力を検知する圧力センサである、[18]〜[22]のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
[24] [1]〜[23]のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法。
[25] [12]〜[14]のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法において、
前記第1センサが、測定値を取得する工程と、
前記第1センサが取得した前記測定値及び予め設定されていた設定値に基づいて、前記ガス流量調節バルブの開閉動作を制御して、前記測定値と前記設置値とが等しくなるように前記ガス流量調節バルブを開閉動作させる工程と
を含む、成膜方法。
[26] [13]又は[14]に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法において、
前記第1センサが、測定値を取得する工程と、
前記第1センサが、取得された前記測定値を前記自動制御部に入力する工程と、
前記自動制御部が、入力された前記測定値及び予め設定されていた設定値に基づいて、前記ガス流量バルブの開閉動作を制御して、前記測定値と前記設定値とが等しくなるように前記ガス流量バルブを開閉動作させる工程と
を含む、成膜方法。
[27] [14]に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法において、
前記膜厚センサが、測定値を取得する工程と、
前記膜厚センサが、取得された前記測定値を前記自動制御部に入力する工程と、
前記自動制御部が、前記測定値を予め設定された設定値と比較する工程と、
前記制御部が、前記測定値は前記設定値より小さいと判断した場合には前記膜厚センサと対をなす前記ガス流量調節バルブを動作させてガス流量を増加させ、前記測定値は前記設定値よりも大きいと判断した場合には前記膜厚センサと対をなす前記ガス流量調節バルブを動作させてガス流量を減少させて、全領域の膜厚が前記設定値に近づくように制御する工程と
を含む、成膜方法。
[28] [18]〜[23]のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法において、
前記第2センサが、測定値を取得する工程と、
前記第2センサが取得した前記測定値及び予め設定されていた設定値に基づいて、前記圧力調整バルブの開閉動作を制御して、前記測定値と前記設定値とが等しくなるように前記圧力調節バルブを開閉動作させる工程と
を含む、成膜方法。
[29] [22]又は[23]に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法において、
前記第2センサが、測定値を取得する工程と、
前記第2センサが、取得された前記測定値を前記自動制御部に入力する工程と、
前記自動制御部が、入力された前記測定値及び予め設定されていた設定値に基づいて、前記圧力調節バルブの開閉動作を制御して、前記測定値と前記設定値とが等しくなるように前記圧力調節バルブを開閉動作させる工程と
を含む、成膜方法。
[30] [18]〜[23]のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法において、
前記第1センサ及び前記第2センサが、測定値を取得する工程と、
前記第1センサ及び前記第2センサが取得した前記測定値及び予め設定されていた設定値に基づいて、前記ガス流量調節バルブ及び前記圧力調整バルブの開閉動作を制御して、前記測定値と前記設定値とが等しくなるように前記ガス流量調節バルブ及び前記圧力調節バルブを開閉動作させる工程と
を含む、成膜方法。
[31] [22]又は[23]に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法において、
前記第1センサ及び前記第2センサが、測定値を取得する工程と、
前記第1センサ及び前記第2センサが、取得された前記測定値を前記自動制御部に入力する工程と、
前記自動制御部が、入力された前記測定値及び予め設定されていた設定値に基づいて、前記圧力調節バルブ及び前記ガス流量バルブの開閉動作を制御して、前記測定値と前記設定値とが等しくなるように前記圧力調節バルブ及び前記ガス流量バルブを開閉動作させる工程と
を含む、成膜方法。
[32] [24]〜[31]のいずれか一項に記載の成膜方法により、前記基材上に膜を成膜する工程を含む、フレキシブル基板の製造方法。
が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明のプラズマCVD成膜装置及びプラズマCVD成膜方法によれば、特にTD方向における圧力、ガスの流れ(方向)及びガスの流量といった成膜条件を精密に制御できるので、TD方向に対する対称性に優れ、かつ安定なプラズマ放電を発生させることができる。結果として成膜条件の不均一性に起因して生じる成膜された膜における欠陥の発生、成膜条件の不均一化を抑制することができるため、成膜される膜の膜質を特にTD方向について均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1−1】図1−1は、第1の実施形態のプラズマCVD成膜装置を上からみた、概略的な平面図である。
【図1−2】図1−2は、第1の実施形態のプラズマCVD成膜装置を正面からみた、概略的な平面図である。
【図1−3】図1−3は、第1の実施形態のプラズマCVD成膜装置を側面からみた、概略的な平面図である。
【図1−4】図1−4は、真空排気口の構成例を説明するための概略的な平面図である。
【図1−5】図1−5は、真空排気口の構成例を説明するための概略的な平面図である。
【図2】図2は、第2の実施形態のプラズマCVD成膜装置を側面からみた、概略的な平面図である。
【図3】図3は、第3の実施形態のプラズマCVD成膜装置を側面からみた、概略的な平面図である。
【図4−1】図4−1は、第4の実施形態のプラズマCVD成膜装置を正面からみた、概略的な平面図である。
【図4−2】図4−2は、第4の実施形態のプラズマCVD成膜装置を側面からみた、概略的な平面図である。
【図5−1】図5−1は、第5の実施形態のプラズマCVD成膜装置を上からみた、概略的な平面図である。
【図5−2】図5−2は、第5の実施形態のプラズマCVD成膜装置を正面からみた、概略的な平面図である。
【図5−3】図5−3は、第5の実施形態のプラズマCVD成膜装置を側面からみた、概略的な平面図である。
【図6−1】図6−1は、第6の実施形態のプラズマCVD成膜装置を上からみた、概略的な平面図である。
【図6−2】図6−2は、第6の実施形態のプラズマCVD成膜装置を正面からみた、概略的な平面図である。
【図6−3】図6−3は、第6の実施形態のプラズマCVD成膜装置を側面からみた、概略的な平面図である。
【図7】図7は、第7の実施形態のプラズマCVD成膜装置を側面からみた、概略的な平面図である。
【図8】図8は、第7の実施形態の自動制御部の構成を説明する概略的なブロック図である。
【図9−1】図9−1は、第7の実施形態のプラズマCVD成膜装置の動作を説明する概略的なフローチャートである。
【図9−2】図9−2は、第7の実施形態のプラズマCVD成膜装置の動作を説明する概略的なフローチャートである。
【図10】図10は、従来のプラズマCVD成膜装置を上からみた、概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を詳細に説明する。なお以下の説明において図を参照して説明する場合があるが、各図は発明が理解できる程度に構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎず、これにより本発明が特に限定されるものではない。また各図において、同様の構成成分については同一の符号を付して示し、その重複する説明を省略する場合がある。
【0031】
本発明のプラズマCVD成膜装置は、長尺の基材を連続的に搬送しながら、基材上に連続的に成膜するプラズマCVD成膜装置であって、第1成膜ロール及び第1成膜ロールに対して平行に対向配置された第2成膜ロールを含み、基材を巻き付けて搬送する成膜ロールと、第1成膜ロールの回転軸と第2成膜ロールの回転軸とを最短距離で結ぶ線分を2等分し、かつこの線分と直交する第1対称面が設定され、第1成膜ロール及び第2成膜ロールの間隙に成膜ゾーンが設定され、成膜ゾーンの回転軸に沿う方向の長さを2等分し、かつ第1対称面と直交する第2対称面が設定されており、第1対称面内に配列される1本又は2本以上のガス供給管であって、成膜ゾーンと対向し、かつ第2対称面に対して鏡面対称に配列される1個又は2個以上のガス供給口を有するガス供給管を備えるガス供給部とを備える。
【0032】
本発明のプラズマCVD装置は、減圧下において、対向配置された第1成膜ロール及び/又は第2成膜ロールに、交流あるいは極性反転を伴うパルス電圧を印加し、互いに対向している第1成膜ロール及び第2成膜ロールの間隙であって、少なくとも第1成膜ロール及び第2成膜ロールの全長にわたる範囲である放電プラズマ発生領域(成膜ゾーンという場合がある。)に放電を発生させ、成膜ロールに巻き付けられた長尺の基材のうち成膜ゾーンに露出する部分領域に、連続的に成膜を行うものである。
【0033】
例えば有機エレクトロルミネッセンス素子、有機薄膜太陽電池といった電子デバイスに使用される基板(フレキシブル基板)を用途として想定すると、長尺の基材としては、無色透明な樹脂からなるフィルム又はシートなどのロール状に巻き取り可能な絶縁性の材料であれば特に限定されない。このような基材に用いる樹脂としては、例えば、ポリエーテルスルホン(PES);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物;ポリアクリロニトリル系樹脂;アセタール系樹脂;ポリイミド系樹脂;エポキシ樹脂が挙げられる。
【0034】
これらの樹脂の中でも、耐熱性が高く、線膨張率が小さく、製造コストが低いため、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが特に好ましい。また、これらの樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
基材の厚みは特に限定されないが、成膜時の安定性を考慮して適宜に設定することができる。基材の厚みは、真空中でも基材の搬送を可能とするという観点から、5μm〜500μmの範囲であることが好ましく。さらに、50μm〜200μmの範囲であることがより好ましく、50μm〜100μmの範囲であることが特に好ましい。
【0036】
(第1の実施形態)
図1−1から図1−5を参照して、本発明の第1の実施形態にかかるプラズマCVD成膜装置及びこのプラズマCVD成膜装置を用いる成膜方法について説明する。
まず図1−1から図1−3を参照して、プラズマCVD成膜装置の構成例について説明する。図1−1は、プラズマCVD成膜装置を上からみた、内部の構成を透過的に示した概略的な平面図である。なお以下の説明において、図1−1中の白抜き矢印A方向を正面方向とし、白抜き矢印B方向を側面方向として説明する。図1−2は、プラズマCVD成膜装置を正面からみた、内部の構成を透過的に示した概略的な平面図である。図1−3は、プラズマCVD成膜装置を側面からみた、内部の構成を透過的に示した概略的な平面図である。なお図10を参照して説明したような真空チャンバ外に設けられていて、成膜ロールを作動させる成膜ロール作動機構等については本発明の要旨ではないため、図示及びその説明を省略する。
【0037】
<プラズマCVD成膜装置>
図1−1、図1−2及び図1−3に示すように、第1の実施形態のプラズマCVD成膜装置10は、上述した基材を巻きつけて搬送できる成膜ロール20を備えている。成膜ロール20は、第1成膜ロール20Aと第2成膜ロール20Bとを含んでいる。
【0038】
この構成例では、第1成膜ロール20Aと第2成膜ロール20Bとは、いずれも円柱状の形状を有しており、全長及び径がいずれも等しくされている。この円柱状の第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bの直径の中心を通る芯部は回転軸とされており、第1成膜ロール20Aは回転軸20Aaを有しており、第2成膜ロール20Bは回転軸20Baを有している。第2成膜ロール20Bは第1成膜ロール20Aに対して平行に対向配置されている。なお成膜ロール20の全長とは円柱の芯部の延在方向における一端から他端までの長さである。
【0039】
この構成例では、第1成膜ロール20Aと第2成膜ロール20Bとが、同一構成である例につき説明したが、第1成膜ロール20Aと第2成膜ロール20Bとの全長及び径のいずれか一方又は双方が互いに異なっている構成としてもよい。
【0040】
具体的には、第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bは、回転軸20Aa及び20Baに直交する面に第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bの両端部が揃うように平行に対向配置されている。
【0041】
なおプラズマCVD成膜装置10は、成膜ロール20以外にも巻き出しロール、巻き取りロールといった他のロールを備えるが、こうした成膜ロール20以外の他のロールは本発明の要旨ではないので図示及びその詳細な説明は省略する。
【0042】
第1成膜ロール20A内及び第2成膜ロール20B内には、図示しない放電プラズマ発生部材が格納されている。放電プラズマ発生部材は、第1成膜ロール20Aと、この第1の成膜ロール20Aと対向する第2成膜ロール20Bとの間隙である成膜ゾーン22に、成膜工程において放電(放電プラズマ)を発生させることができる部材である。
【0043】
成膜ゾーン22は、機能的観点から定義すると、ガスが電離して放電プラズマとなることにより成膜可能となる領域であって、所定の膜厚(許容される膜厚精度の範囲内である所望の膜厚)で成膜可能な領域である。成膜ゾーン22は、第1成膜ロール20Aの表面及び第2成膜ロール20Bの表面に接し、かつ第1成膜ロール20Aの回転軸20Aa及び第2成膜ロール20Bの回転軸20Baを含む面とは非交差である、互いに対向する2つの面とこれら2つの面に挟まれる第1成膜ロール20Aの表面及び第2成膜ロール20Bの表面とにより画成される領域である。
図示例では、成膜ゾーン22の成膜ロール20の回転軸に沿う方向の長さが、基材の長尺方向に直交する幅方向(TD方向)の長さ(第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bの全長)と実質的に等しくされている。
【0044】
成膜ゾーン22の成膜ロール20の回転軸に沿う方向(成膜ロール20の延在方向に沿う方向)の長さは、成膜対象の基材のTD方向の長さ(基材の幅)、成膜ロール20の全長などを考慮して任意好適な長さとすることができる。成膜ゾーン22の成膜ロール20の回転軸(回転軸20Aa及び/又は回転軸20Ba)に沿う方向の長さは、最大でも第1成膜ロール20Aの回転軸20Aaに沿う方向の全長又は第2成膜ロール20Bの回転軸20Baに沿う方向の全長のより長い方の全長となる。
【0045】
プラズマCVD成膜装置10は、内部のガスを排気して減圧可能な気密の真空チャンバ12を備えている。上述した成膜ロール20は真空チャンバ12内に格納されている。真空チャンバ12の内部には、第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bの配置と成膜ゾーン22を基準として、対称面18、すなわち第1対称面18Aと第2対称面18Bとが設定されている。
【0046】
第1対称面18Aは、第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20B間に設定されており、第1成膜ロール20Aの回転軸20Aaと第2成膜ロール20Bの回転軸20Baとを最短距離で結ぶ線分を2等分し、かつ線分と直交する平面として設定される。
【0047】
第2対称面18Bは、成膜ゾーン22の成膜ロール20の回転軸に沿う方向の長さを2等分し、かつ第1対称面18Aと直交する平面として設定される。
また第1対称面18Aと第2対称面18Bとが交差して画成される直線を交差線19とする。
【0048】
プラズマCVD成膜装置10は、ガス供給部30を備えている。ガス供給部30は、1本又は2本以上のガス供給管32を含んでいる。ガス供給管32は、1個又は2個以上のガス供給口34を有している(詳細は後述する。)。
【0049】
真空チャンバ12は、1個又は2個以上の真空排気口14を備えている。真空排気口14は、好ましくは第1対称面と第2対称面とが交差して画成される交差線19に対して軸対称となるように配置されており、より好ましくは第1対称面18A及び第2対称面18Bに対して鏡面対称となるように配置されている。第1の実施形態の真空チャンバ12は、1個の真空排気口14を備えている。
【0050】
第1の実施形態の1個の真空排気口14は、第1対称面18Aと第2対称面18Bとが直交して形成される直線である交差線19上に位置し、かつ第1対称面18A及び第2対称面18Bで分断される第1領域21a、第2領域21b、第3領域21c及び第4領域21dにおいて真空排気口14の平面形状及びその面積が略均等になるように設けられている。
【0051】
真空排気口14が「第1対称面と第2対称面とが交差して画成される交差線19に対して軸対称となるように配置されている」とは、真空チャンバ12が備える真空排気口14が3個以上の奇数個の場合は、少なくとも1個が第1対称面18Aと第2対称面18Bとが交差して画成される直線である交差線19上に位置し、かつ第1対称面18A及び第2対称面18Bで分断される真空排気口14の平面形状及びその面積が略均等になるように設けられ、残りの偶数個が第1対称面18Aと第2対称面18Bとが交差して画成される交差線19に対して軸対称となるように配置されていることを意味しており、「第1対称面18A及び第2対称面18Bに対して鏡面対称となるように配置されている」とは、真空チャンバ12が備える真空排気口14が3個以上の奇数個の場合は、少なくとも1個が第1対称面18Aと第2対称面18Bとが交差して画成される直線である交差線19上に位置し、かつ第1対称面18A及び第2対称面18Bで分断される真空排気口14の平面形状及びその面積が略均等になるように設けられ、残りの偶数個が第1対称面18A及び第2対称面18Bに対して鏡面対称となるように配置されていることを意味する。
真空排気口14の配置位置は、ガスの拡散などを妨げないことを条件として本発明の目的を損なわない範囲で、上記定義の配置位置からから若干ずれていてもよい。
【0052】
ここで図1−4及び図1−5を参照して、真空排気口14の配置例について具体的に説明する。図1−4は、第1対称面及び第2対称面に対して鏡面対称に配置された真空排気口の構成例を説明するための概略的な平面図である。図1−5は、第1対称面と第2対称面とが交差して画成される交差線に対して軸対称に配置された真空排気口の構成例を説明するための概略的な平面図である。
【0053】
図1−4に示すように、この例の真空排気口14の構成は、3つの真空排気口14を含んでおり、真空排気口14同士が等間隔に第1対称面18Aに沿って配列されている。2番目(真ん中)の真空排気口14は、第1対称面18Aと第2対称面18Bとが直交して画成される交差線19上に位置し、かつ第1対称面18A及び第2対称面18Bで分断される第1領域21a、第2領域21b、第3領域21c及び第4領域21dにおいて平面形状及びその面積が略均等になるように設けられている。
【0054】
残りの2つの真空排気口14のうち、一方の真空排気口14は第1領域21aと第2領域21bに均一にまたがるように第1対称面18Aに対して鏡面対称に設けられている。他方の真空排気口14は、一方の真空排気口14について第2対称面18Bに対して鏡面対称である位置であって、かつ第3領域21cと第4領域21dに均一にまたがるように第1対称面18Aに対して鏡面対称である位置に設けられている。この構成は、第1対称面18A及び第2対称面18Bに対して鏡面対称に配置された真空排気口14の構成例であるが、真空排気口14同士の配置関係は交差線19に対して軸対称であるともいえる。
【0055】
図1−5に示すように、この例の真空排気口14の構成は、3つの真空排気口14を含んでいる。3つの真空排気口14のうち、1つの真空排気口14は、第1対称面18Aと第2対称面18Bとが直交して画成される交差線19上に位置し、かつ第1対称面18A及び第2対称面18Bで分断される第1領域21a、第2領域21b、第3領域21c及び第4領域21dにおいて平面形状及びその面積が略均等になるように設けられている。
【0056】
残りの2つの真空排気口14のうち、一方の真空排気口14は第2領域21b内に設けられている。他方の真空排気口14は、一方の真空排気口14に対して交差線19を挟んで交差線19を通る直線上に配置されており、かつ交差線19からの距離が互いに等しくなるように、交差線19に対して軸対称に配置されている。この構成の真空排気口14は、交差線19に対して軸対称に配置されているといえるが、第1対称面18A及び第2対称面18Bに対して鏡面対称に配置されているとはいえない。
【0057】
第1対称面18A及び第2対称面18Bに対して鏡面対称ではないが交差線19に対して軸対称である真空排気口14のその他の具体的な構成例としては、交差線19を挟んで交差線19を通る直線上に配置されており、かつ交差線19からの距離が互いに等しくなるように第1領域21a内及び第4領域21d内にそれぞれ1個ずつ(同数ずつ)配置されている構成、交差線19を挟んで交差線19を通る直線上に配置されており、かつ交差線19からの距離が互いに等しくなるように第2領域21b内及び第3領域21c内にそれぞれ1個ずつ(同数ずつ)配置されている構成、交差線19を挟んで交差線19を通る直線上に配置されており、かつ交差線19からの距離が互いに等しくなるように第1領域21a内、第2領域21b内、第3領域21c内及び第4領域21d内にそれぞれ1個ずつ(同数ずつ)配置されている構成などが挙げられる。
【0058】
なお、第1の実施形態、その他の実施形態において、説明の便宜上、真空排気口14を、真空チャンバ12の底部(底面)に設ける構成例として説明するが、真空排気口14の配置位置はこれに限定されるものでなく、後述するガス供給口34から成膜ゾーン22内を通って真空排気口14に至るガスの流路が確保できることを前提とし、第1対称面18Aと第2対称面18Bとが交差して画成される交差線19に対して軸対称となるように配置されているか、又は第1対称面18A及び第2対称面18Bに対して鏡面対称となることを条件として、側壁部(側面)、天井部(上面)などに真空排気口14を設けることができる。
【0059】
また真空排気口14は、真空チャンバ12に直接的に設けずに、例えば真空チャンバ12外に設けられている真空ポンプ40に接続されており、真空チャンバ12内に突出する管状体である図示しない真空排気管に設ける構成としてもよい。
【0060】
また、以下の実施形態においては、真空排気口14(及びセンサ50)の配置を第1対称面18A及び第2対称面18Bに対して鏡面対称であり、かつ交差線19に対して軸対称でもある例につき説明するが、これに限定されず、真空排気口14(及びセンサ50)の配置を、第1対称面18A及び第2対称面18Bに対して鏡面対称ではないが交差線19に対して軸対称であるものとすることもできる。
【0061】
図1−2及び図1−3に示すように、ガス供給部30は、この例では第1ガス供給管32Aと第2ガス供給管32Bとからなる2本のガス供給管32を有している。第1ガス供給管32Aと第2ガス供給管32Bとは同一の形状(径)であり、かつ同一の長さとされている。第1ガス供給管32A及び第2ガス供給管32Bは、互いに平行に、第1対称面18A内に、その延在方向の軸(芯)が第1対称面18Aに一致するように配列されている。
【0062】
ガス供給管32は、成膜工程において、原料ガス、反応ガス、キャリアガス及び放電用ガスを含む群から選ばれるいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせからなるガスを成膜ゾーン22に供給する(ガスの詳細については後述する。)。
【0063】
例えば第1ガス供給管32Aを反応ガス、キャリアガス、放電用ガスの供給に用い、かつ第2ガス供給管32Bを原料ガスの供給管として用いる構成とすることができる。
【0064】
ガス供給管32は、1個又は2個以上のガス供給口34を有している。この例では第1ガス供給管32Aは2つの第1ガス供給口34Aを有し、第2ガス供給管32Bは2つの第2ガス供給口34Bを有している。第1ガス供給口34A及び第2ガス供給口34Bは、平面形状が略円形である開口とされている。
【0065】
2つの第1ガス供給口34A及び2つの第2ガス供給口34Bは、成膜ゾーン22と対向し、かつ第2対称面18Bに対して鏡面対称に配列されている。また2つの第1ガス供給口34A同士の間隔P1及び2つの第2ガス供給口34B同士の間隔P2とは、この例では等しくされている。また第1ガス供給口34Aと第2ガス供給口34Bとを交差線19の延在方向に沿う方向でみたときに、第1ガス供給口34A及び第2ガス供給口34Bが一直線上に揃うように配置されている。第1ガス供給口34Aの個数及び第2ガス供給口34Bの個数は、図示例に限定されず、例えば第1ガス供給口34Aの個数、及び第2ガス供給口34Bの個数を4つとし、かつ間隔P1及び間隔P2を等しくする構成としてもよい。
【0066】
ガス供給管32及びガス供給口34は、成膜ゾーン22に対向するように設けられている。ガス供給管32は、真空排気口14と対向配置されるのが好ましく、真空チャンバ12内で成膜ゾーン22を挟んで真空排気口14に対向配置される構成とするのが好ましい。ガス供給部30(ガス供給管32)は、成膜ゾーン22の特にTD方向において、均一にガスを供給する機能を有している。
【0067】
ガス供給管32は、本発明の目的を損なわない範囲で従来公知の任意好適な材料により構成することができ、市場にて入手可能な管状部材を用いることができる。
ガス供給管32には、真空チャンバ12外から延在して、ガス供給管32にガスを輸送する配管が接続されている(図示しない。)。
【0068】
ガス供給部30(ガス供給管32)から成膜ゾーン22までの距離及び成膜ゾーン22から真空排気口14までの距離は、供給されたガスの拡散状況、ガスの流路などを考慮して任意好適な距離とすることができる。
【0069】
プラズマCVD成膜装置10は、真空ポンプ40を備えている。真空ポンプ40は真空チャンバ12外に設けられており、真空排気口14に配管等を介して接続されている。真空ポンプ40は、真空チャンバ12内のガスを排出して圧力を調整する機能を有する。真空ポンプ40は、例えば市場にて入手可能な従来公知の任意好適な構成とすることができる。
【0070】
真空排気口14及びガス供給管32のガス供給口34を上記のように配置することにより、成膜ゾーン22内を流れるガスの流れを成膜ゾーン22内を均一に流れるように最適化することができ、真空チャンバ12内の圧力、供給されるガスの濃度、放電プラズマの発生といった特にTD方向における成膜条件を均一にすることができる。よって成膜条件の不均一性に起因して生じる薄膜欠陥の発生、成膜条件の不均一化を抑制することができるため、成膜される膜の膜質を特にTD方向について均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にできる。
【0071】
<成膜方法>
プラズマCVD成膜方法は、プラズマCVD成膜装置を準備する工程と、プラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程とを含む。
具体的には、図1−1から図1−5までを参照して説明した構成を備えるプラズマCVD成膜装置10を準備する。
次に、真空チャンバ12に設けられている、第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bに、図示しない巻き出しロールから巻き出された上述の長尺の基材を、搬送可能、かつ巻き取りロールに巻き取り可能となるように巻き付ける。
【0072】
この工程は、1つの巻き出しロールから巻き出された長尺の基材を第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bの2つの成膜ロールの両方に、成膜ゾーン22を2回通るように巻き付けてもよいし、2つの巻き出しロールを準備し、第1成膜ロール20Aと第2成膜ロール20Bとに2つの異なる巻き出しロールから巻き出される、異なる長尺の基材をそれぞれ巻き付けるようにしてもよい。
【0073】
長尺の基材は、成膜される膜との密着性を高めるという観点から、基材表面を清浄化するための常法に従う表面活性処理を予め実施しておくことが好ましい。このような表面活性処理としては、例えばコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理が挙げられる。
【0074】
次に、ガス供給部30から成膜ゾーン22に向けてガスを供給し、真空ポンプ40を動作させる。また真空チャンバ12内の圧力(真空度)を調整して放電プラズマ発生部材を動作させる。さらに図示しない巻き出しロールから長尺の基材を巻き出し、巻き取りロールに長尺の基材を巻き取っていく。巻き出しロールから巻き取りロールへの経路の途中に位置する第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bは、長尺の基材を搬送する。こうして第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bによって搬送される長尺の基材のうち成膜ゾーン22内を進行する部分領域に、所望の膜が連続的に成膜される。
【0075】
第1の実施形態のプラズマCVD成膜装置10は、既に説明したように1個の真空排気口14が、第1対称面18Aと第2対称面18Bとが交差(直交)して画成される直線である交差線19上に位置し、かつ第1対称面18A及び第2対称面18Bで分断される第1領域21a、第2領域21b、第3領域21c及び第4領域21dにおいて真空排気口14の平面形状及びその面積が略均等になるように、すなわち第1対称面18Aと第2対称面18Bとが交差して画成される交差線19に対して軸対称であり、かつ第1対称面18A及び第2対称面18Bに対して鏡面対称となるように設けられている。さらにこの真空排気口14は、ガス供給部30と成膜ゾーン22を挟んで対向しているため、ガスを成膜ゾーン22の特にTD方向に均一に供給することができる。よって成膜条件の不均一性に起因して生じる薄膜欠陥の発生、成膜条件の不均一化を抑制することができるため、成膜される膜の膜質を特にTD方向について均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にできる。
【0076】
ガス供給部30から供給されるガスの成分である原料ガスは、成膜される膜の材質に応じて適宜選択して使用することができる。原料ガスの成分としては、例えば膜を酸化ケイ素等のケイ素を含有するものとする場合には、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物を用いることができる。
【0077】
このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、取り扱い性及び成膜される膜のガスバリア性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。またこれらの有機ケイ素化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0078】
ガスは、成膜される膜の材質が酸化物、窒化物、硫化物等の無機化合物である場合には、上記原料ガスに加えて、反応ガスが混合されていてもよい。このような反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物、窒化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。
【0079】
酸化物の膜を成膜するための反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができる。また窒化物の膜を成膜するための反応ガスとしては、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。例えば酸窒化物の膜を成膜する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用すればよい。
【0080】
ガスは、原料ガスを真空チャンバ内に供給するために、必要に応じてキャリアガスが混合されていてもよい。またガスは、プラズマ放電を効率的に発生させるために、必要に応じて、さらに放電用ガスが混合されていてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、任意好適な従来公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス、水素を用いることができる。
【0081】
真空チャンバ12内の圧力は、原料ガスの種類等を勘案して任意好適な圧力に調整することができるが、0.1Pa〜10Paの範囲とすることが好ましく、0.1Pa〜5Paの範囲とすることがより好ましく、0.1Pa〜2.5Paの範囲とすることがさらに好ましい。
【0082】
真空チャンバ12内の圧力が0.1Pa程度未満であると、磁場領域における放電の発生が困難になり、圧力が10Pa程度を超えると磁場領域(成膜ゾーン22)以外でのプラズマ放電の発生が顕著になって、成膜ロール20に巻き付けられた基材のみならずそれ以外の部分にも成膜されてしまうおそれがある。圧力を5Pa以下とすれば成膜ゾーン22内での原料ガスの反応によるパーティクルの発生を効果的に抑制でき、パーティクルの堆積による膜のバリア性の低下を効果的に防止することができる。さらに、圧力を2.5Pa以下とすれば、パーティクルの発生をさらに抑制することができる。
【0083】
放電プラズマ発生部材に供給される電力は、原料ガスの種類や真空チャンバ12内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.1kW〜10kWの範囲とすることが好ましい。
【0084】
長尺の基材の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバ内の圧力等を勘案して任意好適な速度とすることができる。ライン速度は、0.25m/min〜100m/minの範囲とすることが好ましく、0.5m/min〜20m/minの範囲とすることがより好ましい。
【0085】
ライン速度が0.25m/min未満であると、長尺の基材に、プラズマ放電に起因する熱により皺が発生しやすくなってしまう傾向がある。他方でライン速度が20m/minを超えると、形成される膜の厚みが薄くなる傾向があり、所望の膜厚を得られないおそれがある。
【0086】
(第2の実施形態)
図2を参照して、本発明の第2の実施形態のプラズマCVD成膜装置及びこのプラズマCVD成膜装置を用いる成膜方法につき説明する。なおガス供給口の配置関係以外については、既に説明した第1の実施の形態と変わるところがないため、図1−1及び図1−2に対応する図を省略して説明する。また第1の実施形態と同一の構成成分については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0087】
図2は、第2の実施形態のプラズマCVD成膜装置を図1−3と同様に側面からみた、内部の構成を透過的に示した概略的な平面図である。
【0088】
第2の実施形態のプラズマCVD成膜装置は、隣り合うガス供給口同士が等間隔に配置され、隣り合うガス供給管同士のうちの一方のガス供給管が第2対称面内に配置されるガス供給口を備え、かつ少なくとも隣り合うガス供給管同士において、第1ガス供給口と第2ガス供給口とを第1対称面及び第2対称面により画成される交差線に沿う方向で見たときに、第1ガス供給口及び第2ガス供給口が、一直線上に揃わないようにずらして配置されている点に特徴を有している。
【0089】
<プラズマCVD成膜装置>
図2に示すように、第2の実施形態のプラズマCVD成膜装置10は、上述した基材を巻きつけて搬送できる成膜ロール20を備えている。成膜ロール20は、第1成膜ロール20Aと第2成膜ロール20Bとを含んでいる。
【0090】
プラズマCVD成膜装置10は、内部のガスを排気して減圧可能な気密の真空チャンバ12を備えている。上述した成膜ロール20は真空チャンバ12内に格納されている。真空チャンバ12の内部には、第1の実施形態と同様に成膜ゾーン22を基準として、第1対称面18Aと第2対称面18Bとが設定されている。
【0091】
真空チャンバ12は、第1の実施形態と同様の構成の真空排気口14を備えている。
【0092】
プラズマCVD成膜装置10は、ガス供給部30を備えている。ガス供給部30は、この例では第1ガス供給管32Aと第2ガス供給管32Bとからなる2本のガス供給管32を有している。第1ガス供給管32Aと第2ガス供給管32Bとは同一の形状(径)であり、かつ同一の長さとされている。第1ガス供給管32A及び第2ガス供給管32Bは、互いに平行に配列されている。
【0093】
ガス供給管32は、1個又は2個以上のガス供給口34を有している。この例では第1ガス供給管32Aは3つの第1ガス供給口34Aを有し、第2ガス供給管32Bは2つの第2ガス供給口34Bを有している。
【0094】
3つの第1ガス供給口34A及び2つの第2ガス供給口34Bは、成膜ゾーン22と対向し、かつ第2対称面18Bに対して鏡面対称に配列されている。3つの第1ガス供給口34Aのうち、1つの第1ガス供給口34Aは、第1対称面18Aと第2対称面18Bとが直交して画成される交差線19上に位置するように、かつ第2対称面18Bに対して鏡面対称となるように設けられている。
【0095】
残りの2つの第1ガス供給口34Aのうち、一方の第1ガス供給口34Aは第1領域21aと第2領域21bにまたがるように設けられている。他方の第1ガス供給口34Aは、第3領域21cと第4領域21dにまたがるように設けられており、一方の第1ガス供給口34Aについて、第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に配置されている(図1−1参照。)。
【0096】
第2ガス供給口34Bについては、一方の第2ガス供給口34Bが第1領域21aと第2領域21bにまたがるように設けられている。他方の第2ガス供給口34Bは、第3領域21cと第4領域21dにまたがるように設けられており、一方の第2ガス供給口34Bについて、第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に配置されている。
【0097】
隣り合う3つの第1ガス供給口34A同士の間隔P1と、隣り合う2つの第2ガス供給口34B同士の間隔P2とは等しくされている。隣り合うガス供給口34同士の間隔は、1本のガス供給管32のガス供給口34が3個である場合にはこれらが軸対称(鏡面対称)に配置されれば必然的に等しくなる。よって「隣り合うガス供給口34同士の間隔が等しい」とは、ガス供給口34が特に4個以上である場合に、隣り合うガス供給口34同士間にできる3つ以上の間隔がいずれも等しくなることを意味する。
また第1ガス供給口34Aと第2ガス供給口34Bとを交差線19に沿う方向で見たときに、第1ガス供給口34A及び第2ガス供給口34Bが一直線上に揃わないようにずらして配置されている。ここで「ずらして(ずれる)」とは、少なくとも隣り合うガス供給管同士において、交差線19に沿う方向で見たときに、ガス供給口同士が一直線上に揃わずにずれるように配置されていることを意味する。よってガス供給管が3本以上の場合に、互いに隣り合わないガス供給管同士について、交差線19に沿う方向で見たときに、ガス供給口同士が一直線上に揃う場合も含まれる(他の実施形態についても同様である。)。
【0098】
第1ガス供給口34Aの個数と第2ガス供給口34Bの個数とは、図示例に限定されず、例えば第1ガス供給口34Aの個数を5つとし、第2ガス供給口34Bの個数を4つとし、かつ隣り合う第1ガス供給口34A同士の間隔P1及び隣り合う第2ガス供給口34B同士の間隔P2を等しくする構成としてもよい。
【0099】
ガス供給管32には、真空チャンバ12外から延在して、ガス供給管32にガスを輸送する配管が接続されている(図示しない)。
【0100】
ガス供給管32及びガス供給口34は、成膜ゾーン22に対向して設けられている。ガス供給管32は、真空排気口14と対向配置されるのが好ましく、真空チャンバ12内で成膜ゾーン22を挟んで真空排気口14に対向配置されている構成とするのがよい。
【0101】
プラズマCVD成膜装置10は、真空ポンプ40を備えている。真空ポンプ40は、真空チャンバ12外に設けられている。
【0102】
真空排気口14及びガス供給管32のガス供給口34を上記のように配置することにより、成膜ゾーン22内を流れるガスの流れを最適化することができ、真空チャンバ12内の圧力、供給されるガスの濃度、放電プラズマの発生といった特にTD方向における成膜条件を均一にすることができる。また第1ガス供給口34Aと第2ガス供給口34Bとを交差線19に沿う方向で見たときに、第1ガス供給口34A及び第2ガス供給口34Bが一直線上に揃わないようにずらして配置しているため、第1ガス供給管32A及び第2ガス供給管32Bそれぞれから供給される異なる種類のガスをより均一に成膜ゾーン22内で拡散させ、より均一に分布させることができる。よって成膜条件の不均一性に起因して生じる薄膜欠陥の発生、成膜ゾーン22内の成膜条件の不均一化を抑制することができるため、成膜される膜の膜質を特にTD方向について均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にできる。
【0103】
<成膜方法>
第2の実施形態のプラズマCVD成膜方法を実施するにあたり、図2を参照して説明した構成を備えるプラズマCVD成膜装置10を準備する。
【0104】
次に、真空チャンバ12に設けられている、第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bに、図示しない巻き出しロールから巻き出された上述の長尺の基材を、搬送可能、かつ巻き取りロールに巻き取り可能となるように巻き付ける。
【0105】
次に、ガス供給部30から成膜ゾーン22にガスを供給し、真空ポンプ40を動作させる。また真空チャンバ12内の圧力(真空度)を調整して放電プラズマ発生部材を動作させる。さらに巻き出しロールから長尺の基材を巻き出し、巻き取りロールに長尺の基材を巻き取っていく。巻き出しロールから巻き取りロールへの経路の途中に位置する第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bは、長尺の基材を搬送する。こうして第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bによって搬送される長尺の基材のうち成膜ゾーン22内を進行する部分領域に、所望の膜が連続的に成膜される。
【0106】
第2の実施形態のプラズマCVD成膜方法では、第2対称面18Bに対して鏡面対称に配置されている、隣り合うガス供給口34同士が等間隔に配置され、かつ第1ガス供給口34Aと第2ガス供給口34Bとを第1対称面18A及び第2対称面18Bにより画成される交差線19に沿う方向で見たときに、第1ガス供給口34A及び第2ガス供給口34Bが一直線上に揃わないようにずらして配置されているガス供給部30により、成膜ゾーン22に供給されるガスを成膜ゾーン22の特にTD方向に均一に供給しつつ実施される。
【0107】
このため、第2の実施形態のプラズマCVD成膜方法によれば、第1ガス供給管32A及び第2ガス供給管32Bそれぞれから供給される異なる種類のガスをより均一に成膜ゾーン22内で拡散させ、より均一に分布させることができる。よって成膜条件の不均一性に起因して生じる薄膜欠陥の発生、成膜条件の不均一化を抑制することができるため、成膜される膜の膜質を特にTD方向について均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にすることができる。
【0108】
(第3の実施形態)
図3を参照して、本発明の第3の実施形態のプラズマCVD成膜装置及びこのプラズマCVD成膜装置を用いる成膜方法につき説明する。
【0109】
図3は、第3の実施形態のプラズマCVD成膜装置を側面からみた、内部の構成を透過的に示した概略的な平面図である。
【0110】
第3の実施形態のプラズマCVD成膜装置は、2本以上のガス供給管を備え、隣り合うガス供給口同士の間隔がガス供給管ごとに異なっている点に特徴を有している。
【0111】
なおガス供給口の配置以外の構成については、既に説明した実施の形態と変わるところがないため、同一の構成成分については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0112】
<プラズマCVD成膜装置>
図3に示すように、第3の実施形態のプラズマCVD成膜装置10は、上述した基材を巻きつけて搬送できる成膜ロール20を備えている。成膜ロール20は、第1成膜ロール20Aと第2成膜ロール20Bとを含んでいる。
【0113】
プラズマCVD成膜装置10は、内部のガスを排気して減圧可能な気密の真空チャンバ12を備えている。上述した成膜ロール20は真空チャンバ12内に格納されている。真空チャンバ12の内部には、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に成膜ゾーン22を基準として、第1対称面18Aと第2対称面18Bとが設定されている。
【0114】
真空チャンバ12は、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の構成の真空排気口14を備えている。
【0115】
プラズマCVD成膜装置10は、ガス供給部30を備えている。ガス供給部30は、この例では第1ガス供給管32Aと第2ガス供給管32Bとからなる2本のガス供給管32を有している。第1ガス供給管32Aと第2ガス供給管32Bとは同一の形状(径)であり、かつ同一の長さとされている。第1ガス供給管32A及び第2ガス供給管32Bは、互いに平行に配列されている。
【0116】
ガス供給管32は、1個又は2個以上のガス供給口34を有している。この例では第1ガス供給管32Aは2つの第1ガス供給口34Aを有し、第2ガス供給管32Bは2つの第2ガス供給口34Bを有している。
【0117】
2つの第1ガス供給口34A及び2つの第2ガス供給口34Bは、成膜ゾーン22と対向し、かつ第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に配列されている。
【0118】
2つの第1ガス供給口34Aのうち、一方の第1ガス供給口34Aは第1領域21a及び第2領域21bにまたがるように設けられている。他方の第1ガス供給口34Aは、第3領域21c及び第4領域21dにまたがるように設けられており、一方の第1ガス供給口34Aについて、第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に配置されている。
【0119】
第2ガス供給口34Bについては、一方の第2ガス供給口34Bが第1領域21aと第2領域21bにまたがるように設けられている。他方の第2ガス供給口34Bは、第3領域21cと第4領域21dにまたがるように設けられており、一方の第2ガス供給口34Bについて、第2対称面38Bに対して鏡面対称となる位置に配置されている。
【0120】
隣り合う2つの第1ガス供給口34A同士の間隔P1及び隣り合う2つの第2ガス供給口34B同士の間隔P2とは、異なる間隔とされている。具体的には間隔P1の方が間隔P2よりも大きくされている。なお第1ガス供給口34A及び第2ガス供給口34Bの配置は、第1ガス供給口34Aと第2ガス供給口34Bとを交差線19に沿う方向で見たときに、第1ガス供給口34Aと第2ガス供給口34Bとが一直線上に揃わないようにずれるようにされている。第1ガス供給口34Aの個数と第2ガス供給口34Bの個数は、図示例に限定されず、例えば第1ガス供給口34Aの個数を5つとし、第2ガス供給口14Bの個数を4つとするなどの構成としてもよい。
【0121】
ガス供給管32には、真空チャンバ12外から延在して、ガス供給管32にガスを輸送する配管が接続されている(図示しない。)。
【0122】
ガス供給管32及びガス供給口34は、成膜ゾーン22に対向して設けられている。ガス供給管32は、真空排気口14と対向配置されるのが好ましく、真空チャンバ12内で成膜ゾーン22を挟んで真空排気口14に対向配置されている構成とするのがよい。
【0123】
プラズマCVD成膜装置10は、真空ポンプ40を備えている。真空ポンプ40は、真空チャンバ12外に設けられている。
【0124】
真空排気口14及びガス供給管32のガス供給口34を上記のように配置することにより、成膜ゾーン22内を流れるガスの流れを最適化することができ、真空チャンバ12内の圧力、供給されるガスの濃度、放電プラズマの発生といった特にTD方向における成膜条件を均一にすることができる。また第1ガス供給口34A同士の間隔P1と第2ガス供給口34B同士の間隔P2とが互いに異なる間隔とされ、かつ第1ガス供給口34Aと第2ガス供給口34Bとを交差線19に沿う方向で見たときに、第1ガス供給口34A及び第2ガス供給口34Bが一直線上に揃わないようにずらして配置されているため、第1ガス供給管32A及び第2ガス供給管32Bそれぞれから供給される異なる種類のガスをより均一に成膜ゾーン22内で拡散させ、より均一に分布させることができる。よって成膜条件の不均一性に起因して生じる薄膜欠陥の発生、成膜ゾーン22内の成膜条件の不均一化を抑制することができるため、成膜される膜の膜質を特にTD方向について均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にできる。
【0125】
<成膜方法>
第3の実施形態のプラズマCVD成膜方法を実施するにあたり、図3を参照して説明した構成を備えるプラズマCVD成膜装置10を準備する。
【0126】
次に、真空チャンバ12に設けられている、第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bに、図示しない巻き出しロールから巻き出された上述の長尺の基材を、搬送可能、かつ巻き取りロールに巻き取り可能となるように巻き付ける。
【0127】
次に、ガス供給部30から成膜ゾーン22にガスを供給し、真空ポンプ40を動作させる。また真空チャンバ12内の圧力(真空度)を調整して放電プラズマ発生部材を動作させる。さらに巻き出しロールから長尺の基材を巻き出し、巻き取りロールに長尺の基材を巻き取っていく。巻き出しロールから巻き取りロールへの経路の途中に位置する第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bは、長尺の基材を搬送する。こうして第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bによって搬送される長尺の基材のうち成膜ゾーン22内を進行する部分領域に、所望の膜が連続的に成膜される。
【0128】
第3の実施形態のプラズマCVD成膜方法では、2本以上のガス供給管34を備え、隣り合うガス供給口34同士の間隔がガス供給管32ごとに異なるようにされ、第1ガス供給口34Aと第2ガス供給口34Bとを第1対称面18A及び第2対称面18Bにより画成される交差線19に沿う方向で見たときに、第1ガス供給口34A及び第2ガス供給口34Bが一直線上に揃わないようにずらして配置されているガス供給部30により、成膜ゾーン22に供給されるガスを成膜ゾーン22の特にTD方向に均一に供給しつつ実施される。
【0129】
このため、第3の実施形態のプラズマCVD成膜方法によれば、第1ガス供給管32A及び第2ガス供給管32Bそれぞれから供給される異なる種類のガスをより均一に成膜ゾーン22内で拡散させ、より均一に分布させることができる。よって成膜条件の不均一性に起因して生じる薄膜欠陥の発生、成膜条件の不均一化を抑制することができるため、成膜される膜の膜質を特にTD方向について均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にすることができる。
【0130】
(第4の実施形態)
図4−1及び図4−2を参照して、本発明の第4の実施形態のプラズマCVD成膜装置及びこのプラズマCVD成膜装置を用いる成膜方法につき説明する。
【0131】
図4−1は、プラズマCVD成膜装置を正面からみた、内部の構成を透過的に示した概略的な平面図である。図4−2は、第4の実施形態のプラズマCVD成膜装置を側面からみた、内部の構成を透過的に示した概略的な平面図である。
【0132】
第4の実施形態のプラズマCVD成膜装置は、ガス供給部が、ガス供給管に接続される接続部であって、第2対称面に対して鏡面対称となる位置に設けられる接続部を有する、ガス供給管にガスを供給する配管を備える点に特徴を有している。
なお接続部以外の構成については、既に説明した実施の形態と変わるところがないため、同一の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0133】
<プラズマCVD成膜装置>
図4−1及び図4−2に示すように、第4の実施形態のプラズマCVD成膜装置10は、上述した基材を巻きつけて搬送できる成膜ロール20を備えている。成膜ロール20は、第1成膜ロール20Aと第2成膜ロール20Bとを含んでいる。
【0134】
プラズマCVD成膜装置10は、内部のガスを排気して減圧可能な気密の真空チャンバ12を備えている。上述した成膜ロール20は真空チャンバ12内に格納されている。真空チャンバ12の内部には、第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態と同様に成膜ゾーン22を基準として、第1対称面18Aと第2対称面18Bとが設定されている。
【0135】
真空チャンバ12は、第1の実施形態、第2の実施形態及び第3の実施形態と同様の構成の真空排気口14を備えている。
【0136】
プラズマCVD成膜装置10は、ガス供給部30を備えている。ガス供給部30は、この例では第1ガス供給管32Aと第2ガス供給管32Bとからなる2本のガス供給管32を有している。第1ガス供給管32Aと第2ガス供給管32Bとは同一の形状(径)であり、かつ同一の長さとされている。第1ガス供給管32A及び第2ガス供給管32Bは、互いに平行に配列されている。
【0137】
ガス供給管32は、1個又は2個以上のガス供給口34を有している。この例では第1ガス供給管32Aは2つの第1ガス供給口34Aを有し、第2ガス供給管32Bは2つの第2ガス供給口34Bを有している。
【0138】
2つの第1ガス供給口34A及び2つの第2ガス供給口34Bは、成膜ゾーン22と対向し、かつ第2対称面18Bに対して鏡面対称に配列されている。
【0139】
2つの第1ガス供給口34Aのうち、一方の第1ガス供給口34Aは第1領域21a及び第2領域21bにまたがるように設けられている。他方の第1ガス供給口34Aは、第3領域21c及び第4領域21dにまたがるように設けられており、一方の第1ガス供給口34Aについて、第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に配置されている。
【0140】
第2ガス供給口34Bについては、一方の第2ガス供給口34Bが第1領域21aと第2領域21bにまたがるように設けられている。他方の第2ガス供給口34Bは、第3領域21cと第4領域21dにまたがるように設けられており、一方の第2ガス供給口34Bについて、第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に配置されている。
【0141】
隣り合う2つの第1ガス供給口34A同士の間隔P1及び隣り合う2つの第2ガス供給口34B同士の間隔P2とは、異なる間隔とされている。具体的には間隔P1の方が間隔P2よりも大きくされている。なお第1ガス供給口34A及び第2ガス供給口34Bの配置は、第1ガス供給口34Aと第2ガス供給口34Bとを交差線19に沿う方向で見たときに、第1ガス供給口34Aと第2ガス供給口34Bとが一直線上に揃わないようにずらして配置されている。
【0142】
ガス供給管32及びガス供給口34は、成膜ゾーン22に対向して設けられている。ガス供給管32は、真空排気口14と対向配置されるのが好ましく、真空チャンバ12内で成膜ゾーン22を挟んで真空排気口14に対向配置されている構成とするのがよい。
【0143】
ガス供給管32には、真空チャンバ12外から延在して、ガス供給管32にガスを輸送する配管36が接続されている。この例では第1ガス供給管32Aに接続される第1配管36Aと、第2ガス供給管32Bに接続される第2配管36Bとを備えている。第1配管36Aが第1ガス供給管32Aと接続されている箇所(位置)を第1配管接続部36Aaと称し、第2配管36Bが第2ガス供給管32Bと接続されている箇所(位置)を第2配管接続部36Baと称する。
【0144】
第1配管接続部36Aa及び第2配管接続部36Baそれぞれは、第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に設けられている。すなわち第1配管接続部36Aa及び第2配管接続部36Baそれぞれは、第1配管36A及び第2配管36Bに開口する第1配管接続部36Aa及び第2配管接続部36Baの面積が第2対称面18Bにより略均等に分断される位置に設けられている。
【0145】
プラズマCVD成膜装置10は、真空ポンプ40を備えている。真空ポンプ40は、真空チャンバ12外に設けられている。
【0146】
真空排気口14及びガス供給管32のガス供給口34を上記のように配置することにより、成膜ゾーン22内を流れるガスの流れを最適化することができ、真空チャンバ12内の圧力、供給されるガスの濃度、放電プラズマの発生といった特にTD方向における成膜条件を均一にすることができる。またガス供給管32に接続される配管36との接続部を、第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に設けるため、第1ガス供給管32A及び第2ガス供給管32Bそれぞれから供給される異なる種類のガスを第1ガス供給管32A内及び第2ガス供給管32B内に均一に供給することができ、ガスをより均一に成膜ゾーン22内で拡散させ、より均一に分布させることができる。よって成膜条件の不均一性に起因して生じる薄膜欠陥の発生、成膜ゾーン22内の成膜条件の不均一化を抑制することができるため、成膜される膜の膜質を特にTD方向について均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にできる。
【0147】
<成膜方法>
第4の実施形態のプラズマCVD成膜方法を実施するにあたり、図4−1及び図4−2を参照して説明した構成を備えるプラズマCVD成膜装置10を準備する。
【0148】
次に、真空チャンバ12に設けられている、第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bに、図示しない巻き出しロールから巻き出された上述の長尺の基材を、搬送可能、かつ巻き取りロールに巻き取り可能となるように巻き付ける。
【0149】
ガス供給部30から成膜ゾーン22にガスを供給し、真空ポンプ40を動作させる。また真空チャンバ12内の圧力(真空度)を調整して放電プラズマ発生部材を動作させる。さらに巻き出しロールから長尺の基材を巻き出し、巻き取りロールに長尺の基材を巻き取っていく。巻き出しロールから巻き取りロールへの経路の途中に位置する第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bは、長尺の基材を搬送する。こうして第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bによって搬送される長尺の基材のうち成膜ゾーン22内を進行する部分領域に、所望の膜が連続的に成膜される。
【0150】
第4の実施形態のプラズマCVD成膜方法では、ガス供給管32に接続される配管36との接続部を、第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に設け、成膜ゾーン22に供給されるガスを成膜ゾーン22の特にTD方向に均一に供給しつつ実施される。
【0151】
このため、第4の実施形態のプラズマCVD成膜方法によれば、例えば第1ガス供給管32A及び第2ガス供給管32Bそれぞれから供給される異なる種類のガスを、第1ガス供給管32A内及び第2ガス供給管32B内に均一に供給することができるため、ガスをより均一に成膜ゾーン22内で拡散させ、より均一に分布させることができる。よって成膜条件の不均一性に起因して生じる薄膜欠陥の発生、成膜条件の不均一化を抑制することができるため、成膜される膜の膜質を特にTD方向について均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にすることができる。
【0152】
(第5の実施形態)
図5−1、図5−2及び図5−3を参照して、本発明の第5の実施形態のプラズマCVD成膜装置及びこのプラズマCVD成膜装置を用いる成膜方法につき説明する。
【0153】
図5−1は、プラズマCVD成膜装置を上からみた、内部の構成を透過的に示した概略的な平面図である。図5−2は、プラズマCVD成膜装置を正面からみた、内部の構成を透過的に示した概略的な平面図である。図5−3は、プラズマCVD成膜装置を側面からみた、内部の構成を透過的に示した概略的な平面図である。
【0154】
第5の実施形態のプラズマCVD成膜装置は、ガス供給管の延在方向の両端部に設けられる接続部を有する配管を備える点に特徴を有している。
なお接続部以外の構成については、既に説明した実施の形態と変わるところがないため、同一の構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0155】
<プラズマCVD成膜装置>
図5−1、図5−2及び図5−3に示すように、第5の実施形態のプラズマCVD成膜装置10は、上述した基材を巻きつけて搬送できる成膜ロール20を備えている。成膜ロール20は、第1成膜ロール20Aと第2成膜ロール20Bとを含んでいる。
【0156】
プラズマCVD成膜装置10は、内部のガスを排気して減圧可能な気密の真空チャンバ12を備えている。上述した成膜ロール20は真空チャンバ12内に格納されている。真空チャンバ12の内部には、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態及び第4の実施形態と同様に成膜ゾーン22を基準として、第1対称面18Aと第2対称面18Bとが設定されている。
【0157】
真空チャンバ12は、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態及び第4の実施形態と同様の構成の真空排気口14を備えている。
【0158】
プラズマCVD成膜装置10は、ガス供給部30を備えている。ガス供給部30は、この例では第1ガス供給管32Aと第2ガス32Bとからなる2本のガス供給管32を有している。第1ガス供給管32Aと第2ガス供給管32Bとは同一の形状(径)であり、かつ同一の長さとされている。第1ガス供給管32A及び第2ガス供給管32Bは、互いに平行に配列されている。
【0159】
ガス供給管32は、1個又は2個以上のガス供給口34を有している。この例では第1ガス供給管32Aは2つの第1ガス供給口34Aを有し、第2ガス供給管32Bは2つの第2ガス供給口34Bを有している。
【0160】
2つの第1ガス供給口34A及び2つの第2ガス供給口34Bは、成膜ゾーン22と対向し、かつ第2対称面18Bに対して鏡面対称に配列されている。
【0161】
2つの第1ガス供給口34Aのうち、一方の第1ガス供給口34Aは第1領域21a及び第2領域21bにまたがるように設けられている。他方の第1ガス供給口34Aは、第3領域21c及び第4領域21dにまたがるように設けられており、一方の第1ガス供給口34Aについて、第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に配置されている。
【0162】
第2ガス供給口34Bについては、一方の第2ガス供給口34Bが第1領域21aと第2領域21bにまたがるように設けられている。他方の第2ガス供給口34Bは、第3領域21cと第4領域21dにまたがるように設けられており、一方の第2ガス供給口34Bについて、第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に配置されている。
【0163】
隣り合う2つの第1ガス供給口34A同士の間隔P1及び隣り合う2つの第2ガス供給口34B同士の間隔P2とは、異なる間隔とされている。具体的には間隔P1の方が間隔P2よりも大きくされている。なお第1ガス供給口34A及び第2ガス供給口34Bの配置は、第1ガス供給口34Aと第2ガス供給口34Bとを交差線19に沿う方向で見たときに、第1ガス供給口34Aと第2ガス供給口34Bとが一直線上に揃わないようにずれるようにされている。
【0164】
ガス供給管32及びガス供給口34は、成膜ゾーン22に対向して設けられている。ガス供給管32は、真空排気口14と対向配置されるのが好ましく、真空チャンバ12内で成膜ゾーン22を挟んで真空排気口14に対向配置されている構成とするのがよい。
【0165】
ガス供給管32には、真空チャンバ12外から延在して、ガス供給管32にガスを輸送する配管36が接続されている。この例では第1ガス供給管32Aに接続される第1配管36Aと、第2ガス供給管32Bに接続される第2配管36Bとを備えている。
【0166】
第1配管36Aは、第1ガス供給管32Aと2箇所で接続されており、これらの接続されている箇所(位置)を第1配管接続部36Aaと称し、第2配管36Bが第2ガス供給管32Bと接続されている箇所(位置)を第2配管接続部36Baとする。
【0167】
第1配管36Aは、2つの第1配管接続部36Aaにより、第1ガス供給管32Aに接続されている。2つの第1配管接続部36Aaそれぞれは、第1ガス供給管32Aの延在方向の両端部に設けられている。
第2配管36Bは、2つの第2配管接続部36Baにより、第2ガス供給管32Bに接続されている。2つの第2配管接続部36Baそれぞれは、第2ガス供給管32Bの延在方向の両端部に設けられている。
【0168】
第1配管接続部36Aa及び第2配管接続部36Baそれぞれは、第1配管36A及び第2配管36Bそれぞれの延在方向の長さを等分する面に対して鏡面対称となる位置に、すなわちこの例では第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に設けられている。
【0169】
プラズマCVD成膜装置10は、真空ポンプ40を備えている。真空ポンプ40は、真空チャンバ12外に設けられている。
【0170】
真空排気口14、ガス供給管32のガス供給口34を上記のように配置することにより、成膜ゾーン22内を流れるガスの流れを最適化することができ、真空チャンバ12内の圧力、供給されるガスの濃度、放電プラズマの発生といった特にTD方向における成膜条件を均一にすることができる。またガス供給管32に接続される配管36の接続部を、ガス供給管32の延在方向の両端部に設けるため、例えば第1ガス供給管32A及び第2ガス供給管32Bそれぞれから供給される異なる種類のガスを、第1ガス供給管32A内及び第2ガス供給管32B内に均一に供給することができるため、より均一に成膜ゾーン22内で拡散させ、より均一に分布させることができる。よって成膜条件の不均一性に起因して生じる薄膜欠陥の発生、成膜ゾーン22内の成膜条件の不均一化を抑制することができるため、成膜される膜の膜質を特にTD方向について均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にできる。
【0171】
<成膜方法>
第5の実施形態のプラズマCVD成膜方法を実施するにあたり、図5−1、図5−2及び図5−3を参照して説明した構成を備えるプラズマCVD成膜装置10を準備する。
【0172】
次に、真空チャンバ12に設けられている、第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bに、図示しない巻き出しロールから巻き出された上述の長尺の基材を、搬送可能、かつ巻き取りロールに巻き取り可能となるように巻き付ける。
【0173】
ガス供給部30から成膜ゾーン22にガスを供給し、真空ポンプ40を動作させる。また真空チャンバ12内の圧力(真空度)を調整して放電プラズマ発生部材を動作させる。さらに巻き出しロールから長尺の基材を巻き出し、巻き取りロールに長尺の基材を巻き取っていく。巻き出しロールから巻き取りロールへの経路の途中に位置する第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bは、長尺の基材を搬送する。こうして第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bによって搬送される長尺の基材のうち成膜ゾーン22内を進行する部分領域に、所望の膜が連続的に成膜される。
【0174】
第5の実施形態のプラズマCVD成膜方法では、ガス供給管32に接続される配管36との接続部を、ガス供給管36の延在方向の両端部となる位置に設け、成膜ゾーン22に供給されるガスを成膜ゾーン22の特にTD方向に均一に供給しつつ実施される。
【0175】
このため、第5の実施形態のプラズマCVD成膜方法によれば、例えば第1ガス供給管32A及び第2ガス供給管32Bそれぞれから供給される異なる種類のガスを第1ガス供給管32A内及び第2ガス供給管32B内に均一に供給することができるため、ガスをより均一に成膜ゾーン22内で拡散させ、より均一に分布させることができる。よって成膜条件の不均一性に起因して生じる薄膜欠陥の発生、成膜条件の不均一化を抑制することができるため、成膜される膜の膜質を特にTD方向について均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にすることができる。
【0176】
(第6の実施形態)
図6−1、図6−2及び図6−3を参照して、本発明の第6の実施形態のプラズマCVD成膜装置及びこのプラズマCVD成膜装置を用いる成膜方法につき説明する。
【0177】
図6−1は、プラズマCVD成膜装置を上からみた、内部の構成を透過的に示した概略的な平面図である。図6−2は、プラズマCVD成膜装置を正面からみた、内部の構成を透過的に示した概略的な平面図である。図6−3は、プラズマCVD成膜装置を側面からみた、内部の構成を透過的に示した概略的な平面図である。
【0178】
第6の実施形態のプラズマCVD成膜装置は、ガス供給管が、延在方向の長さが互いに等しい2以上の短管部により構成され、2以上の短管部それぞれにガス供給口が設けられており、2以上の短管部それぞれに接続される接続部であって、短管部の延在方向の長さを2等分する位置に設けられる接続部を有する、ガス供給管にガスを供給する配管を備える点に特徴を有している。
【0179】
なおガス供給管以外の構成については、既に説明した実施の形態と変わるところがないため、同一の構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0180】
<プラズマCVD成膜装置>
図6−1、図6−2及び図6−3に示すように、第6の実施形態のプラズマCVD成膜装置10は、上述した基材を巻きつけて搬送できる成膜ロール20を備えている。成膜ロール20は、第1成膜ロール20Aと第2成膜ロール20Bとを含んでいる。
【0181】
プラズマCVD成膜装置10は、内部のガスを排気して減圧可能な気密の真空チャンバ12を備えている。上述した成膜ロール20は真空チャンバ12内に格納されている。真空チャンバ12の内部には、上述の実施形態と同様に成膜ゾーン22を基準として、第1対称面18Aと第2対称面18Bとが設定されている。
【0182】
真空チャンバ12は、上述の実施形態と同様の構成の真空排気口14を備えている。プラズマCVD成膜装置10は、ガス供給部30を備えている。ガス供給部30は、この例では第1ガス供給管32Aと第2ガス供給管32Bとからなるガス供給管32を有している。第1ガス供給管32A及び第2ガス供給管32Bは、互いに平行に配列されている。
【0183】
第1ガス供給管32Aは、2以上の短管部により構成されている。2以上の短管部は、同一の形状(径)であり、かつ同一の長さとされている。
【0184】
図6−1及び図6−3に示すように、この例では、第1ガス供給管32Aは、2つの短管部32A1及び短管部32A2を含んでいる。短管部32A1と短管部32A2とは、交差線19に対して軸対称であって、かつ第2対称面18Bに対して鏡面対称となるように、延在方向に一直線状になるように互いに離間させて配置されている。
【0185】
第2ガス供給管32Bも同様に、2以上の短管部により構成されている。2以上の短管部は、同一の形状(径)であり、かつ同一の長さとされている。
【0186】
図6−2及び図6−3に示すように、第2ガス供給管32Bは、第1ガス供給管32Aと同様に、2つの短管部32B1及び短管部32B2を含んでいる。短管部32B1と短管部32B2とは、交差線19に対して軸対称であって、かつ第2対称面18Bに対して鏡面対称となるように、互いに離間して配置されている。
【0187】
なおこの例では第2ガス供給管32Bの短管部32B1及び32B2を、第1ガス供給管32Aの短管部32A1及び短管部32A2と同一の構成とする例を説明したがガス供給管32の構成は、互いに異なる構成とすることができる。
【0188】
短管部を構成するにあたり、ガス供給管32を複数の管に分割して配列する構成とせず、一連のガス供給管32を1又は2以上の仕切りで仕切った構成とすることもできる。
【0189】
ガス供給管32の短管部は、1個又は2個以上のガス供給口34を有している。この例では第1ガス供給管32Aの短管部32A1は、2つのガス供給口34A1を有し、短管部32A2は、2つのガス供給口34A2を有している。また第2ガス供給管32Bの短管部32B1は、2つのガス供給口34B1を有し、短管部32B2は、2つのガス供給口34B2を有している。
【0190】
これらのガス供給口34A1、34A2、34B1及び34B2は、成膜ゾーン22を指向し、かつ第2対称面18Bに対して鏡面対称に配列されている。
図6−3に示すように、短管部が備える1又は2以上のガス供給口は、短管部の延在方向の長さを2等分する第3対称面18C1及び18C2に鏡面対称となるように設けるのがよい。第3対称面18C1及び18C2は、第2対称面18Bに対して鏡面対称であるため、第3対称面18C1及び18C2を基準として設けられたガス供給口も第2対称面18Bに対して鏡面対称な配置となる。
【0191】
この例では、短管部32A1、32A2、32B1及び32B2は、隣り合う2つのガス供給口同士の間隔が、いずれも等しい間隔とされている。なお交差線19に沿う方向で見た短管部32A1及び短管部32B1、短管部32A2及び短管部32B2のガス供給口の配置は、ガス供給口が一直線上に揃うようにされている。
【0192】
しかしながら短管部それぞれにおける隣り合う2つのガス供給口同士の間隔は異なっていてもよく、また交差線19に沿う方向で見たときの異なるガス供給管同士のガス供給口の配置は一直線上に揃わないようにずらして配置されていてもよい。
【0193】
ガス供給管(短管部)32及びガス供給口34は、成膜ゾーン22に対向して設けられている。ガス供給管32は、真空排気口14と対向配置されるのが好ましく、真空チャンバ12内で成膜ゾーン22を挟んで真空排気口14に対向配置されている構成とするのがよい。
【0194】
短管部32A1、32A2、32B1及び32B2それぞれには、真空チャンバ12外から延在して、ガス供給管32にガスを供給する配管36が接続されている。この例では短管部32A1に接続される配管36A1、短管部32A2に接続される配管36A2、短管部32B1に接続される配管36B1及び短管部32B2に接続される配管36B2を備えている。
【0195】
短管部32A1に接続される配管36A1の接続部36A1a、短管部32A2に接続される配管36A2の接続部36A2a、短管部32B1に接続される配管36B1の接続部36B1a及び短管部32B2に接続される配管36B2の接続部36B2aそれぞれは、第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に設けられている。接続部36A1a、接続部36A2a、接続部36B1a及び接続部36B2aそれぞれは、短管部の延在方向の長さを2等分する第3対称面18C1内及び18C2内に位置するように設けるのがよい。
【0196】
プラズマCVD成膜装置10は、真空ポンプ40を備えている。真空ポンプ40は、真空チャンバ12外に設けられている。
【0197】
真空排気口14及びガス供給管32のガス供給口34を上記のように配置することにより、成膜ゾーン22内を流れるガスの流れを最適化することができ、真空チャンバ12内の圧力、供給されるガスの濃度、放電プラズマの発生といった特にTD方向における成膜条件を均一にすることができる。またガス供給管32を複数の短管部を含む構成とし、複数の短管部それぞれに接続される配管36の接続部を、第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に設ける。よって複数の短管部それぞれにガスを均一に供給することができるため、ガスをより均一に成膜ゾーン22内で拡散させ、より均一に分布させることができる。結果として成膜条件の不均一性に起因して生じる薄膜欠陥の発生、成膜ゾーン22内の成膜条件の不均一化を抑制することができるため、成膜される膜の膜質を特にTD方向について均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にできる。
【0198】
<成膜方法>
第6の実施形態のプラズマCVD成膜方法を実施するにあたり、図6−1、図6−2及び図6−3を参照して説明した構成を備えるプラズマCVD成膜装置10を準備する。
【0199】
次に、真空チャンバ12に設けられている、第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bに、図示しない巻き出しロールから巻き出された上述の長尺の基材を、搬送可能、かつ巻き取りロールに巻き取り可能となるように巻き付ける。
【0200】
ガス供給部30から成膜ゾーン22にガスを供給し、真空ポンプ40を動作させる。また真空チャンバ12内の圧力(真空度)を調整して放電プラズマ発生部材を動作させる。さらに巻き出しロールから長尺の基材を巻き出し、巻き取りロールに長尺の基材を巻き取っていく。巻き出しロールから巻き取りロールへの経路の途中に位置する第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bは、長尺の基材を搬送する。こうして第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bによって搬送される長尺の基材のうち成膜ゾーン22内を進行する部分領域に、所望の膜が連続的に成膜される。
【0201】
第6の実施形態のプラズマCVD成膜方法では、ガス供給管32を複数の短管部を含む構成とし、複数の短管部それぞれに接続される配管36の接続部を、第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に設け、成膜ゾーン22に供給されるガスを成膜ゾーン22の特にTD方向に均一に供給しつつ実施される。
【0202】
このため、第6の実施形態のプラズマCVD成膜方法によれば、複数の短管部それぞれにガスを均一に供給することができるため、ガスをより均一に成膜ゾーン22内で拡散させ、より均一に分布させることができる。よってガスをより均一に成膜ゾーン22内で拡散させ、より均一に分布させることができる。結果として成膜条件の不均一性に起因して生じる薄膜欠陥の発生、成膜条件の不均一化を抑制することができるため、成膜される膜の膜質を特にTD方向について均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にすることができる。
【0203】
(第7の実施形態)
図7、図8、図9−1及び図9−2を参照して、本発明の第7の実施形態のプラズマCVD成膜装置及びこのプラズマCVD成膜装置を用いる成膜方法につき説明する。
【0204】
図7は、プラズマCVD成膜装置を側面からみた、内部の構成を透過的に示した概略的な平面図である。図8は、第7の実施形態の自動制御部の構成を説明する概略的なブロック図である。図9−1は、プラズマCVD成膜装置の動作を説明する概略的なフローチャート(1)である。図9−2は、プラズマCVD成膜装置の動作を説明する概略的なフローチャート(2)である。
【0205】
第7の実施形態のプラズマCVD成膜装置は、第6の実施形態のプラズマCVD成膜装置が、ガスの流量を調節するガス流量調節バルブ、ガス流量調節バルブを制御するための第1センサ、第1センサに接続されており、第1センサが測定した測定値又は設定値からの変動幅が入力できるように、かつガス流量調節バルブに接続されており、ガス流量調節バルブの開閉動作を制御できるように設けられる自動制御部、真空排気口と真空ポンプとの間に設けられており、真空排気口の個数と同数である1個又は2個以上の圧力調節バルブ、真空排気口それぞれと対をなす真空排気口の個数と同数の第2センサとをさらに備える点に特徴を有している。
なお上述の他の実施の形態と同一の構成成分については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0206】
<プラズマCVD成膜装置>
図7に示すように、第7の実施形態のプラズマCVD成膜装置10は、上述した基材を巻きつけて搬送できる成膜ロール20を備えている。成膜ロール20は、第1成膜ロール20Aと第2成膜ロール20Bとを含んでいる。
【0207】
プラズマCVD成膜装置10は、内部のガスを排気して減圧可能な気密の真空チャンバ12を備えている。上述した成膜ロール20は真空チャンバ12内に格納されている。真空チャンバ12の内部には、上述の実施形態と同様に成膜ゾーン22を基準として、第1対称面18Aと第2対称面18Bとが設定されている。
【0208】
真空チャンバ12は、上述の実施形態と同様の構成の真空排気口14を備えている。プラズマCVD成膜装置10は、ガス供給部30を備えている。ガス供給部30は、この例では第1ガス供給管32Aと第2ガス供給管32Bとからなるガス供給管32を有している。第1ガス供給管32A及び第2ガス供給管32Bは、互いに平行に配列されている。
【0209】
第1ガス供給管32Aは、2以上の短管部により構成されている。2以上の短管部は、同一の形状(径)であり、かつ同一の長さとされている。
【0210】
第1ガス供給管32Aは、2つの短管部32A1及び短管部32A2を含んでいる。短管部32A1と短管部32A2とは、交差線19に対して軸対称であって、かつ第2対称面18Bに対して鏡面対称となるように、延在方向に一直線状になるように互いに離間させて配置されている。
【0211】
第2ガス供給管32Bも同様に、2以上の短管部により構成されている。2以上の短管部は、同一の形状(径)であり、かつ同一の長さとされている。
【0212】
第2ガス供給管32Bは、第1ガス供給管32Aと同様に、2つの短管部32B1及び短管部32B2を含んでいる。短管部32B1と短管部32B2とは、交差線19に対して軸対称であって、かつ第2対称面18Bに対して鏡面対称となるように、互いに離間して配置されている。
【0213】
ガス供給管32の短管部は、1個又は2個以上のガス供給口34を有している。この例では第1ガス供給管32Aの短管部32A1は、2つのガス供給口34A1を有し、短管部32A2は、2つのガス供給口34A2を有している。また第2ガス供給管32Bの短管部32B1は、2つのガス供給口34B1を有し、短管部32B2は、2つのガス供給口34B2を有している。
【0214】
これらのガス供給口34A1、34A2、34B1及び34B2は、成膜ゾーン22を指向し、かつ第2対称面18Bに対して鏡面対称に配列されている。
短管部が備える1又は2以上のガス供給口は、短管部の延在方向の長さを2等分する第3対称面18C1及び18C2それぞれに鏡面対称となるように設けるのがよい。
【0215】
この例では、短管部32A1、32A2、32B1及び32B2は、隣り合う2つのガス供給口同士の間隔が、いずれも等しい間隔とされている。なお交差線19に沿う方向で見た短管部32A1及び短管部32B1、短管部32A2及び短管部32B2のガス供給口の配置は、交差線19に沿う方向でみたときに、ガス供給口が一直線上に揃うようにされている。
【0216】
ガス供給管(短管部)32及びガス供給口34は、成膜ゾーン22に対向して設けられている。ガス供給管32は、真空排気口14と対向配置されるのが好ましく、真空チャンバ12内で成膜ゾーン22を挟んで真空排気口14に対向配置されている構成とするのがよい。
【0217】
短管部32A1、32A2、32B1及び32B2それぞれには、真空チャンバ12外から延在して、ガス供給管32にガスを供給する配管36が接続されている。この例では短管部32A1に接続される配管36A1、短管部32A2に接続される配管36A2、短管部32B1に接続される配管36B1及び短管部32B2に接続される配管36B2を備えている。
【0218】
短管部32A1に接続される配管36A1の接続部36A1a、短管部32A2に接続される配管36A2の接続部36A2a、短管部32B1に接続される配管36B1の接続部36B1a及び短管部32B2に接続される配管36B2の接続部36B2aそれぞれは、第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に設けられている。接続部36A1a、接続部36A2a、接続部36B1a及び接続部36B2aそれぞれは、短管部の延在方向の長さを2等分する第3対称面18C1内、18C2内に位置するように設けるのがよい。
【0219】
プラズマCVD成膜装置10は、真空ポンプ40を備えている。真空ポンプ40は、真空チャンバ12外に設けられている。
プラズマCVD成膜装置10は、バルブ60(第1バルブ62、第2バルブ64)を備えている。
【0220】
第7の実施形態のプラズマCVD成膜装置10では、配管36に第1バルブ62が設けられている。
配管36A1には第1バルブ62A1が設けられており、配管36A2には第1バルブ62A2が設けられており、配管36B1には第1バルブ62B1が設けられており、配管36B2には第1バルブ62B2が設けられている。
【0221】
第1バルブ62は、開閉動作により、チャンバ12外からガス供給管32に輸送されるガスの量(流量)を増減させて、成膜ゾーン22に供給されるガスの量を調整することができる、流量調節バルブである。第1バルブ62としては、例えば作動機構にフォースモータを用いる流量調節バルブを含む流量調節機構が市場にて入手可能であり、第1バルブ62としてこうした市販の流量調節機構を用いることができる。
【0222】
プラズマCVD成膜装置10は、さらにセンサ50(第1センサ52、第2センサ54)を備えている。
【0223】
第7の実施形態のプラズマCVD成膜装置10は、成膜ゾーン22内の第1対称面18A及び第2対称面18Bに対して鏡面対称となる位置に、ガス供給管32に含まれる複数の短管部(32A1、32A2、32B1及び32B2)それぞれに接続されている、配管36A1に設けられた第1バルブ62A1及び配管36B1に設けられた第1バルブ62B1の組、配管36A2に設けられた第1バルブ62A2及び配管36B2に設けられた第1バルブ62B2の組それぞれと対をなす第1センサ52が設けられている。具体的には、第1バルブ62A1及び第1バルブ62B1の組と対をなす第1センサ52a、第1バルブ62A2及び第1バルブ62B2の組と対をなす第1センサ52bが設けられている。
【0224】
第7の実施形態では、第1センサ52aは、対をなす第1バルブ62A1により制御される短管部32A1及び第1バルブ62B1により制御される短管部32B1に対向するように、成膜ゾーン22の第1部分領域22A内に設けられている。第1センサ52bは、対をなす第1バルブ62A2により制御される短管部32A2及び第1バルブ62B2により制御される短管部32B2に対向するように、成膜ゾーン22の第2部分領域22B内に設けられている。
ここで「対をなす」とは、短管部に対応する第1バルブ62の組の動作が第1センサ52の検知結果と連動するように構成されていることをいう。
【0225】
第1センサ52としては、例えば設置箇所近傍である基材上に成膜される膜の膜厚を近似的に測定することができる膜厚センサが挙げられる。第1センサ52としては、水晶振動子を用いて膜厚を測定する膜厚センサ、プラズマの発生状況をモニタするプラズマセンサなどを用いることができるが、膜厚センサが好ましい。このような膜厚センサ及び膜厚センサを含む膜厚モニタといった膜厚測定機構は市場にて入手可能であり、第1センサ52としてこうした市販の膜厚測定機構を用いることができる。
【0226】
真空排気口14と真空ポンプ40との間の例えば配管部に真空排気口14の個数と同数である第2バルブ64を備えている。
第7の実施形態のプラズマCVD成膜装置10では、真空排気口14と真空ポンプ40とを接続している配管等に第2バルブ64が設けられている。
【0227】
第2バルブ64は、開閉動作により、真空排気口14から真空ポンプ40に流入して真空チャンバ12外に排出されるガス(気体)の流量を増減させて、真空チャンバ12内の圧力を調整することができる、例えば圧力調整バルブである。第2バルブ64としては、例えば作動機構にフォースモータを用いる圧力調整バルブを含む圧力調整機構が市場にて入手可能であり、第2バルブ64としてこうした市販の圧力調整機構を用いることができる。
【0228】
第7の実施形態のプラズマCVD成膜装置10は、第1対称面18A及び第2対称面18Bに対して鏡面対称の位置に、真空排気口14と対をなす第2センサ54が設けられている。ここで「対をなす」とは、真空排気口14に対応する第2バルブ64の動作が第2センサ54の検知結果に対応して連動する組を構成していることをいう。
【0229】
第7の実施形態では真空チャンバ12に設けられた真空排気口14に対向する位置に第2センサ54を設置している。具体的には、第1成膜ロール20A、第2成膜ロール20B及びガス供給部30を挟んで真空排気口14と対向する位置に第2センサ54が設けられている。
【0230】
第7の実施形態では真空排気口14の個数と第2センサ54の個数とは1対1に対応させたため一致しているがこれに限定されず、例えば1つの真空排気口14に対して2つの第2センサ54を対応させて設けるといった構成としてもよい。
【0231】
第2センサ54としては、例えば設置箇所近傍である真空チャンバ12内の圧力を測定するか、又は圧力の設定値からの変動を検知することができる圧力センサが挙げられる。第2センサ54としては、真空チャンバ12内の圧力(気圧)を測定可能であればよく、例えばピラニゲージ、シュルツゲージ、イオンゲージ、静電容量型絶対圧真空計、B−Aゲージ、ペニング真空計などを用いることができるが、圧力0.1Pa〜50Pa程度の範囲で安定して精度良く測れるセンサが好ましい。このような圧力センサは市場にて入手可能であり、第2センサ54としてこうした市販の圧力センサを用いることができる。
【0232】
第7の実施形態では、第2センサ54が、対をなす真空排気口14と対向する位置に設けられている構成例を説明したが、第2センサ54が、例えば対をなす真空排気口14の近傍に設けられている構成としてもよい。この場合には真空排気口14と、対をなす第2センサ54とは可能な限り近距離に設けるようにするのがよい。このように構成すれば第2センサ54による圧力測定と第2バルブ64による圧力の調節をより精密に実施することができる。
【0233】
また第2センサ54が、対をなす真空排気口14と真空ポンプ40との間に設けられている第2バルブ64と一体的に設けられている構成としてもよい。
【0234】
このような構成とすれば、第2センサ54が検知した例えば圧力の変動に対応した制御をより迅速に、かつより精密に第2バルブ64の開閉動作により実施することができる。
【0235】
プラズマCVD成膜装置10は、センサ50に接続されており、センサ50が測定した測定値又は設定値からの変動幅が入力できるように、かつバルブ60に接続されており、バルブ60の開閉動作を制御できるように設けられている自動制御部70を備えている。
【0236】
自動制御部70は、センサ信号線82によりセンサ50と接続されている。自動制御部70は第1センサ信号線82Aにより第1センサ52と接続されている。第1センサ52aは第1センサ信号線82Aaにより自動制御部70と接続されており、第1センサ52bは第1センサ信号線82Abにより自動制御部70と接続されている。また自動制御部70は、第2センサ信号線82Bにより第2センサ54と接続されている。
【0237】
また自動制御部70は、バルブ信号線84によりバルブ60と接続されている。自動制御部70は、第1バルブ信号線84A(84Aa、84Ab、84Ac及び84Ad)により第1バルブ62と接続されており、第2バルブ信号線84Bにより第2バルブ64と接続されている。
第1バルブ62A1は第1バルブ信号線84Aaにより自動制御部70と接続されており、第1バルブ62B1は第1バルブ信号線84Abにより自動制御部70と接続されており、第1バルブ62A2は第1バルブ信号線84Acにより自動制御部70と接続されており、第1バルブ62B2は第1バルブ信号線84Adにより自動制御部70と接続されている。
【0238】
センサ信号線82は、センサ50が測定した測定値又は設定値からの変動幅(データ信号)を自動制御部70に入力するための信号線である。
バルブ信号線84は、バルブ60の開閉動作を制御するための自動制御部70からの制御信号をバルブ60に入力するための信号線である。
これらセンサ信号線82及びバルブ信号線84は、いわゆる電気通信回線である。電気通信回線とは、電気、光等の媒体による有線又は無線による情報回線を意味する。
【0239】
図8を参照して、自動制御部70の機能的な構成について説明する。図8に示すように、自動制御部70は、信号入力部72と、信号入力部72と接続されている演算部74と、演算部74と接続されている信号出力部76とを含んでいる。
【0240】
信号入力部72は、センサ信号線82によりセンサ50と接続されている。信号出力部76はバルブ信号線84によりバルブ60と接続されている。
【0241】
自動制御部70は、演算部74に相当する例えばマイクロプロセッサ、信号入力部72及び信号出力部76に相当する例えばシリアル接続、パラレル接続のインターフェースを備えるコンピュータハードウェアにより実現することができる。
【0242】
自動制御部70は、複数のセンサ50からの入力及び複数のバルブ60の動作をそれぞれ独立に制御できる構成とするのが好ましい。なおこの例では、1つの自動制御部70により第1センサ52及び第2センサ54、並びに第1バルブ62及び第2バルブ64を制御する構成を説明したが、複数の自動制御部により、例えば第1センサ52及び第1バルブ62の組と、第2センサ54及び第2バルブ64の組とを別々の自動制御部により制御する構成としてもよい。
【0243】
真空排気口14及びガス供給管32のガス供給口34を上記のように配置することにより、成膜ゾーン22内を流れるガスの流れを最適化することができ、真空チャンバ12内の圧力、供給されるガスの濃度、放電プラズマの発生といった特にTD方向における成膜条件を均一にすることができる。またガス流量調節バルブ、第1センサ、自動制御部、圧力調節バルブ、及び第2センサをさらに備える。よって複数の短管部それぞれのガスの流量を第1センサの測定値に基づいて精密に制御することができる。よって成膜条件の不均一性に起因して生じる薄膜欠陥の発生、成膜ゾーン22内の成膜条件の不均一化を抑制することができるため、成膜される膜の膜質を特にTD方向について均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にできる。
【0244】
<成膜方法>
第7の実施形態のプラズマCVD成膜方法を実施するにあたり、図7及び図8を参照して説明した構成を備えるプラズマCVD成膜装置10を準備する。
次に、真空チャンバ12に設けられている、第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bに、図示しない巻き出しロールから巻き出された上述の長尺の基材を、搬送可能、かつ巻き取りロールに巻き取り可能となるように巻き付ける。
【0245】
次に、ガス供給部30から成膜ゾーン22にガスを供給し、第1真空ポンプ40A及び第2真空ポンプ40Bを動作させる。また真空チャンバ12内の圧力(真空度)を調整して放電プラズマ発生部材を動作させる。さらに巻き出しロールから長尺の基材を巻き出し、巻き取りロールに長尺の基材を巻き取っていく。巻き出しロールから巻き取りロールへの経路の途中に位置する第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bは、長尺の基材を搬送する。こうして第1成膜ロール20A及び第2成膜ロール20Bによって搬送される長尺の基材のうち成膜ゾーン22内を進行する部分領域に、所望の膜が連続的に成膜される。
【0246】
第7の実施形態のプラズマCVD成膜方法は、自動制御部70により、第1センサ52及び第1バルブ62を用いて、成膜条件を調整しつつ実施される。
【0247】
成膜条件の調整は、例えば膜厚センサである第1センサ52が測定した成膜ゾーン22の部分領域ごと(例えば第1部分領域22A、第2部分領域22B)の膜厚に偏りが検知された場合に、又は部分領域ごとの膜厚が設定された膜厚と異なっていることが検知された場合に、対をなす第1バルブ62を開閉動作させてガスの流量を調節することにより実施される。
【0248】
ガスの流量の調整は、具体的には流量を増加させる方向への調整であればバルブ60の開度を増加させ、流量を減少させる方向への調整であればバルブ60を閉じるか、又は開度を減少させることにより調整すればよい。
【0249】
なお組となる例えば第1バルブ62A1及び62B1の開閉動作を1組として一律に制御するのではなく、第1バルブ62A1及び62B1を個別に制御することもできる。例えば第1バルブ62A1にかかるキャリアガスの流量を制御せずに、第1バルブ62B1にかかる原料ガスの流量のみを制御するなどしてもよい。
【0250】
ここで図9−1を参照して、自動制御部70による膜厚制御の一例を説明する。
【0251】
まず、真空チャンバ12内の所定位置に設置された第1センサ52が、膜厚を測定し、膜厚についての測定値を取得する(S1A)。
【0252】
第1センサ52が、取得した測定値をデータ信号として、第1センサ信号線82Aを介して自動制御部70(信号入力部72)に入力する(S2A)。
【0253】
自動制御部70(演算部74)が、測定値と予め設定されていた設定値とを比較する(S3A)。
【0254】
自動制御部70が、測定値が設定値と等しいか否か判断する(S4A)。等しい(Yes)と判断した場合には、終了する(エンド:この場合には、第1バルブ62の制御は行われない。)。
【0255】
自動制御部70が、測定値が設定値と一致しない(No)と判断した場合には、自動制御部70は、測定値が設定値より小さいか否か判断する(S5A)。なお、このステップは、逆に測定値が設定値より大きいか否かを判断するステップとすることもできる。
【0256】
自動制御部70が、測定値が設定値より小さい(Yes)と判断した場合には、自動制御部70(信号出力部76)は、バルブ信号線84(第1バルブ信号線84A)を介して、バルブ60(第1バルブ62)の開閉動作を制御するための制御信号を第1バルブ62に入力し、第1バルブ62の開度を増加させて(バルブを開いて)ガスの流量を増加させる方向へ調節する(S6A)。
【0257】
自動制御部70が、測定値が設定値より大きい(No)と判断した場合には、自動制御部70(信号出力部76)は、第1バルブ信号線84Aを介して、第1バルブ62の開閉動作を制御するための制御信号を第1バルブ62に入力し、第1バルブ62の開度を増大させて(バルブを開いて)上昇した圧力を低下させる方向へ調整する(S7A)。
【0258】
第7の実施形態のプラズマCVD成膜方法は、自動制御部70により、さらに第2センサ54及び第2バルブ64を用いて、成膜条件を調整しつつ実施される。
【0259】
成膜条件の調整は、例えば圧力センサである第2センサ54が真空チャンバ12内の圧力の変動を検知した場合に、圧力の変化を検知した第2センサ54と対をなす真空排気口14に対応して設けられている第2バルブ64を開閉動作させることにより実施される。
【0260】
真空チャンバ12内の圧力の調整は、具体的には低下した圧力を上昇させる方向への調整であればバルブ60を閉じるか又は開度を減少させ、上昇した圧力を低下させる方向への調整であればバルブ60の開度を増加させることにより所定の圧力になるように調整すればよい。
【0261】
ここで図9−2を参照して、自動制御部70による真空チャンバ12内の圧力制御の一例を説明する。
【0262】
まず、真空チャンバ12の所定位置に設置されたセンサ50(第2センサ54)が、圧力を測定し、圧力についての測定値を取得する(S1B)。
【0263】
第2センサ54が、取得した測定値をデータ信号として、センサ信号線82(第2センサ信号線82B)を介して自動制御部70(信号入力部72)に入力する(S2B)。
【0264】
自動制御部70(演算部74)が、測定値と予め設定されていた設定値とを比較する(S3B)。
【0265】
自動制御部70が、測定値が設定値と等しいか否か判断する(S4B)。等しい(Yes)と判断した場合には、終了(エンド:この場合には、第2バルブ64の制御は行われない。)する。
【0266】
自動制御部70が、測定値が設定値と一致しない(No)と判断した場合には、自動制御部70は、測定値が設定値より小さいか否か判断する(S5B)。なお、このステップは、逆に測定値が設定値より大きいか否かを判断するステップとすることもできる。
【0267】
自動制御部70が、測定値が設定値より小さい(Yes)と判断した場合には、自動制御部70(信号出力部76)は、第2バルブ信号線84Bを介して、第2バルブ64の開閉動作を制御するための制御信号を第2バルブ64に入力し、第2バルブ64の開度を減少させて(バルブを閉じて)圧力を上昇させる方向へ調整する(S6B)。
【0268】
自動制御部70が、測定値が設定値より大きい(No)と判断した場合には、自動制御部70(信号出力部76)は、第2バルブ信号線84Bを介して、第2バルブ64の開閉動作を制御するための制御信号を第2バルブ64に入力し、第2バルブ64の開度を増大させて(バルブを開いて)上昇した圧力を低下させる方向へ調整する(S7B)。
【0269】
上述した膜厚調節制御及び圧力調整制御において、自動制御部70は、上記制御ステップを繰り返して測定値が設定値と等しくなるまでバルブ60の開閉動作を制御する。自動制御部70は、センサ50及びバルブ60がそれぞれ複数存在する場合には、複数のバルブ60の動作をそれぞれ独立に制御することができる構成とするのがよい。
【0270】
上述の自動制御部70による制御は一例であり、自動制御部70による制御は、例えばフィードバック制御の一種であるPID制御といった制御が可能な市場で入手できる種々の制御機器により実現することができる。
上述した自動制御部70による圧力制御及び膜厚制御は、同時に並行して実施してもよいし、いずれか一方を個別に実施してもよい。
【0271】
上述のように自動制御部により成膜条件を調整する構成とすれば、ガス供給部から供給されるガスを、成膜ゾーンの特にTD方向について、膜厚及び圧力に基づいてより精密に制御しつつ供給することができる。よって成膜条件の不均一性に起因して生じる薄膜欠陥の発生、成膜ゾーン22内の成膜条件の不均一化を抑制することができるため、成膜される膜の膜質を特にTD方向について均一かつ良好にでき、ひいてはバリア性をも均一かつ良好にできる。
【符号の説明】
【0272】
10、110 CVD成膜装置
12、112 真空チャンバ
14、114 真空排気口
18 対称面
18A 第1対称面
18B 第2対称面
18C1、18C2 第3対称面
19 交差線
20 成膜ロール
20A、120A 第1成膜ロール
20B、120B 第2成膜ロール
20Aa、20Ba 回転軸
21a 第1領域
21b 第2領域
21c 第3領域
21d 第4領域
22 成膜ゾーン
22A 第1部分領域
22B 第2部分領域
30、130 ガス供給部
32、132 ガス供給管
32A 第1ガス供給管
32B 第2ガス供給管
34、134 ガス供給口
34A 第1ガス供給口
34B 第2ガス供給口
36 配管
36A 第1配管
36Aa 第1配管接続部
36B 第2配管
36Ba 第2配管接続部
40、140 真空ポンプ
50 センサ
52 第1センサ
54 第2センサ
60 バルブ
62 第1バルブ
64 第2バルブ
70 自動制御部
72 信号入力部
74 演算部
76 信号出力部
82 センサ信号線
82A 第1センサ信号線
82B 第2センサ信号線
84 バルブ信号線
84A 第1バルブ信号線
84B 第2バルブ信号線
111 作動機構集積部
122A 第1成膜ロール作動機構
122B 第2成膜ロール作動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の基材を連続的に搬送しながら、該基材上に連続的に成膜するプラズマCVD成膜装置において、
第1成膜ロール及び該第1成膜ロールに対して平行に対向配置された第2成膜ロールを含み、前記基材を巻き付けて搬送する成膜ロールと、
前記第1成膜ロールの回転軸と前記第2成膜ロールの回転軸とを最短距離で結ぶ線分を2等分し、かつ該線分と直交する第1対称面が設定され、前記第1成膜ロール及び前記第2成膜ロールの間隙に成膜ゾーンが設定され、前記成膜ゾーンの前記回転軸に沿う方向の長さを2等分し、かつ前記第1対称面と直交する第2対称面が設定されており、前記第1対称面内に配列される1本又は2本以上のガス供給管であって、前記成膜ゾーンと対向し、かつ前記第2対称面に対して鏡面対称に配列される1個又は2個以上のガス供給口を有する前記ガス供給管を備えるガス供給部と
を備えるプラズマCVD成膜装置。
【請求項2】
隣り合う前記ガス供給口同士が等間隔に配置される、請求項1に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項3】
2本以上の前記ガス供給管を備え、隣り合う前記ガス供給口同士の間隔が該ガス供給管ごとに異なっている、請求項2に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項4】
2本以上の前記ガス供給管を備え、前記ガス供給管それぞれが同じ個数の前記ガス供給口を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項5】
2本以上の前記ガス供給管を備え、隣り合う前記ガス供給管のうちの一方の前記ガス供給管が、前記第2対称面内に配置される前記ガス供給口を備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項6】
前記ガス供給部が、前記ガス供給管に接続される接続部であって、前記第2対称面に対して鏡面対称となる位置に設けられる前記接続部を有する、前記ガス供給管にガスを供給する配管を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項7】
前記ガス供給部が、前記ガス供給管の延在方向の長さを2等分する位置に設けられる前記接続部を有する配管を備える、請求項6に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項8】
前記ガス供給部が、前記ガス供給管の延在方向の両端部に設けられる前記接続部を有する配管を備える、請求項6に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項9】
前記ガス供給管が、延在方向の長さが互いに等しい2以上の短管部により構成され、該2以上の短管部それぞれに前記ガス供給口が設けられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項10】
前記ガス供給部が、前記2以上の短管部それぞれに接続される接続部であって、前記短管部の延在方向の長さを2等分する位置に設けられる前記接続部を有する、前記ガス供給管にガスを供給する配管を備える、請求項9に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項11】
前記接続部を有する前記配管には、前記ガスの流量を調節するガス流量調節バルブが設けられる、請求項10に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項12】
前記ガス流量調節バルブを制御するための第1センサをさらに備える、請求項11に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項13】
前記第1センサに接続されており、該第1センサが測定した測定値又は設定値からの変動幅が入力できるように、かつ前記ガス流量調節バルブに接続されており、該ガス流量調節バルブの開閉動作を制御できるように設けられる自動制御部をさらに備える、請求項12に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項14】
前記第1センサが成膜される膜の厚さを検知する膜厚センサである、請求項12又は13に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項15】
前記第1対称面と前記第2対称面とが交差して画成される交差線に対して軸対称となるように、前記ガス供給部との間に前記成膜ロールを挟んで配置される1個又は2個以上の真空排気口を有し、
前記真空排気口に接続される真空ポンプをさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項16】
前記第1対称面及び前記第2対称面に対して鏡面対称となるように配置されている1個又は2個以上の真空排気口を有する、請求項15に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項17】
前記真空排気口が3個以上であり、該真空排気口が奇数個である場合には、少なくとも1個が第1対称面と第2対称面が直交する直線上に位置し、かつ第1対称面及び第2対称面で分断される真空排気口の平面形状及びその面積が均等になるように設けられている請求項15又は16に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項18】
前記真空排気口と前記真空ポンプとの間に設けられており、前記真空排気口の個数と同数である1個又は2個以上の圧力調節バルブと、
前記第1対称面及び前記第2対称面に対して鏡面対称の位置に、前記真空排気口それぞれと対をなす前記真空排気口の個数と同数の第2センサとをさらに備える、請求項15〜17のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項19】
前記第2センサが、対をなす前記真空排気口と対向する位置に設けられている、請求項18に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項20】
前記第2センサが、対をなす前記真空排気口の近傍に設けられている、請求項18に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項21】
前記第2センサが、対をなす前記真空排気口と前記真空ポンプとの間に設けられている前記圧力調節バルブと一体的に設けられている、請求項18に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項22】
前記第2センサに接続されており、該第2センサが測定した測定値又は設定値からの変動幅が入力できるように、かつ前記圧力調節バルブに接続されており、該圧力調節バルブの開閉動作を制御できるように設けられる自動制御部を備える、請求項18〜21のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項23】
前記第2センサが圧力を検知する圧力センサである、請求項18〜22のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法。
【請求項25】
請求項12〜14のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法において、
前記第1センサが、測定値を取得する工程と、
前記第1センサが取得した前記測定値及び予め設定されていた設定値に基づいて、前記ガス流量調節バルブの開閉動作を制御して、前記測定値と前記設置値とが等しくなるように前記ガス流量調節バルブを開閉動作させる工程と
を含む、成膜方法。
【請求項26】
請求項13又は14に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法において、
前記第1センサが、測定値を取得する工程と、
前記第1センサが、取得された前記測定値を前記自動制御部に入力する工程と、
前記自動制御部が、入力された前記測定値及び予め設定されていた設定値に基づいて、前記ガス流量バルブの開閉動作を制御して、前記測定値と前記設定値とが等しくなるように前記ガス流量バルブを開閉動作させる工程と
を含む、成膜方法。
【請求項27】
請求項14に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法において、
前記膜厚センサが、測定値を取得する工程と、
前記膜厚センサが、取得された前記測定値を前記自動制御部に入力する工程と、
前記自動制御部が、前記測定値を予め設定された設定値と比較する工程と、
前記制御部が、前記測定値は前記設定値より小さいと判断した場合には前記膜厚センサと対をなす前記ガス流量調節バルブを動作させてガス流量を増加させ、前記測定値は前記設定値よりも大きいと判断した場合には前記膜厚センサと対をなす前記ガス流量調節バルブを動作させてガス流量を減少させて、全領域の膜厚が前記設定値に近づくように制御する工程と
を含む、成膜方法。
【請求項28】
請求項18〜23のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法において、
前記第2センサが、測定値を取得する工程と、
前記第2センサが取得した前記測定値及び予め設定されていた設定値に基づいて、前記圧力調整バルブの開閉動作を制御して、前記測定値と前記設定値とが等しくなるように前記圧力調節バルブを開閉動作させる工程と
を含む、成膜方法。
【請求項29】
請求項22又は23に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法において、
前記第2センサが、測定値を取得する工程と、
前記第2センサが、取得された前記測定値を前記自動制御部に入力する工程と、
前記自動制御部が、入力された前記測定値及び予め設定されていた設定値に基づいて、前記圧力調節バルブの開閉動作を制御して、前記測定値と前記設定値とが等しくなるように前記圧力調節バルブを開閉動作させる工程と
を含む、成膜方法。
【請求項30】
請求項18〜23のいずれか一項に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法において、
前記第1センサ及び前記第2センサが、測定値を取得する工程と、
前記第1センサ及び前記第2センサが取得した前記測定値及び予め設定されていた設定値に基づいて、前記ガス流量調節バルブ及び前記圧力調整バルブの開閉動作を制御して、前記測定値と前記設定値とが等しくなるように前記ガス流量調節バルブ及び前記圧力調節バルブを開閉動作させる工程と
を含む、成膜方法。
【請求項31】
請求項22又は23に記載のプラズマCVD成膜装置を用いて基材上に膜を形成する工程を含む、成膜方法において、
前記第1センサ及び前記第2センサが、測定値を取得する工程と、
前記第1センサ及び前記第2センサが、取得された前記測定値を前記自動制御部に入力する工程と、
前記自動制御部が、入力された前記測定値及び予め設定されていた設定値に基づいて、前記圧力調節バルブ及び前記ガス流量バルブの開閉動作を制御して、前記測定値と前記設定値とが等しくなるように前記圧力調節バルブ及び前記ガス流量バルブを開閉動作させる工程と
を含む、成膜方法。
【請求項32】
請求項24〜31のいずれか一項に記載の成膜方法により、前記基材上に膜を成膜する工程を含む、フレキシブル基板の製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−157575(P2011−157575A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18937(P2010−18937)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】