説明

プリアプライド用封止樹脂組成物、及びそれを用いた半導体装置の製造方法、半導体装置

【課題】本発明の課題は、半導体チップを回路基板に実装する場合に、半導体チップや回路基板の界面に対する濡れ性が良く、はじきが少なく、また、作業性および信頼性に優れたプリアプライド用封止樹脂組成物を提供すること、また、別の課題は、本発明のプリアプライド用封止樹脂組成物を適用することにより、信頼性に優れた半導体装置を提供することにある。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂と、(B)フラックス活性を有する硬化剤と、(C)界面活性剤と、を含むプリアプライド用封止樹脂組成物おいて、金およびソルダーレジスト上で160℃、20s加熱溶融させた際の、金への接触角が40°以下、かつ、ソルダー
レジストへの接触角が40°以下、であるプリアプライド用封止樹脂組成物を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリアプライド用封止樹脂組成物、及びそれを用いた半導体装置の製造方法、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージの軽薄短小化の技術革新は目覚しいものがあり、様々なパッケージ構造が提唱され、製品化されている。近年では、従来のリードフレーム接合に代わり、半導体チップと回路基板とを、半導体チップの回路面に直接形成された突起電極を介して接合するエリア実装方式が主流になりつつある。
【0003】
このエリア実装方式の代表的なものとして、フリップチップ実装がある。フリップチップ実装においては、接合部分の補強や信頼性向上等を目的として、半導体チップと回路基板の間隙を樹脂組成物で封止することが一般的である。
【0004】
樹脂封止方法としては、一般にキャビラリーアンダーフィル方式が挙げられる。この方法は、チップの一辺または複数面に液状封止樹脂組成物を塗布し毛細管現象を利用して樹脂組成物を回路基板とチップの間隙に流れ込ませることによって行う(特許文献1)。
【0005】
しかし、キャビラリーアンダーフィル方式では、フラックスを用いて半導体チップと回路基板を接合させる工程および、フラックス洗浄工程が必要になるため、工程が長くなりかつ洗浄廃液の処理問題等環境管理を厳しくしなければならない。また、封止を毛細管現象で行うため封止時間が長くなり、生産性に問題があった。
【0006】
前記の課題を解決するにあたり、ノンフローアンダーフィル方式の樹脂封止方法が提案されてきている。この方法は、回路基板に直接樹脂組成物を塗布し、その上から半田電極を持った半導体チップを搭載し、金属結合を形成すると同時に封止を行うものである(特許文献2)。金属結合と樹脂封止を同時に行うために、キャビラリーアンダーフィル方式に比べ、工程の短縮が可能になり、また、フラックスを使用しないために、廃液処理問題も心配の必要がなくなった。
【0007】
さらに実装工程の短縮化という観点から、ウェハーに樹脂組成物を塗布、Bステージ化
させ、ダイシング等で個片化することで得た半導体チップについて、これを回路基板に搭載し、接合するプリアプライド型ノンフローアンダーフィル封止工法が検討されてきている(特許文献3)。この工法により、個々の回路基板への樹脂組成物の供給工程およびアンダーフィル工程を省略することが可能となる。
【0008】
しかしながら、従来のプリアプライド型ノンフローアンダーフィル封止方法は、以下の点で改善の余地を有していた。
半導体チップを回路基板に仮搭載する際に、従来のプリアプライド用封止樹脂組成物では、半導体チップや回路基板界面近傍に空隙が発生するという問題がある場合があった。上記空隙は、半導体チップを回路基板に実装したパッケージの信頼性を低下させてしまう原因となる。(特許文献3)
【0009】
【特許文献1】特許第3351974号
【特許文献2】米国特許5,128,746号公報
【特許文献3】特開2003−212964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、半導体チップを回路基板に実装する場合に、半導体チップや回路基板近傍に空隙が発生せず、また、作業性および信頼性に優れたプリアプライド用封止樹脂組成物を提供することにある。また、別の目的は、前記プリアプライド用封止樹脂組成物を適用することにより、信頼性に優れた半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)〜(13)に記載の技術により達成することができる。(1)半導体素子と回路基板を接続するプリアプライド用封止樹脂組成物であって、(A)エポキシ樹脂と、(B)フラックス活性を有する硬化剤と、(C)界面活性剤と、を含み、
前記プリアプライド用封止樹脂組成物を、金およびソルダーレジスト上で160℃、20s加熱溶融させた際の、金への接触角が40°以下、ソルダーレジストへの接触角が40
°以下、であることを特徴とするプリアプライド用封止樹脂組成物。
(2)前記(C)界面活性剤の、ソルダーレジストに対する接触角が40°以下、かつ、金に対する接触角が40°以下である、(1)に記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
(3)前記(C)界面活性剤が、アクリル系界面活性剤及び/又はシリコーン系界面活性剤である、(1)または(2)に記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
(4)前記アクリル系界面活性剤が、下記式(1)で示される、(3)に記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
【化1】

(5)前記シリコーン系界面活性剤が、下記式(2)で示される、(3)に記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
【化2】

(6)前記(C)界面活性剤の添加量が、プリアプライド用樹脂組成物全体に対して0.005〜5重量%である、(1)ないし(5)のいずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
(7)前記(A)エポキシ樹脂の添加量が、プリアプライド用樹脂組成物全体にして10
〜80重量%である、(1)ないし(6)のいずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
(8)前記(A)エポキシ樹脂が、(D)25℃で液状であり、一分子中にエポキシ基を2個以上含むエポキシ樹脂と、(E)25℃で固体であり、一分子中にエポキシ基を2個以上含むエポキシ樹脂と、を含むものである、(1)ないし(7)のいずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
(9)前記(E)25℃で固体であり、一分子中にエポキシ基を2個以上含むエポキシ樹脂の添加量が、エポキシ樹脂全体にして30〜95重量%である、(1)ないし(8)のいずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
(10)前記(B)フラックス活性を有する硬化剤が、1分子中に、少なくとも2個のフェノール性水酸基と、芳香族に直接結合したカルボキシル基とを、含むものである、(1)ないし(9)のいずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
(11)前記(B)フラックス活性を有する硬化剤の添加量が、プリアプライド用樹脂組成物全体に対して5〜40重量%である、(1)ないし(10)のいずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
(12)さらに、(F)硬化触媒を含むものである、(1)ないし(11)のいずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
(13)さらに、(G)溶剤を含むものである(1)ないし(12)いずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
(14)半導体素子と回路基板とを電気的に接続してなる半導体装置の製造方法であって、
(1)ないし(13)のいずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物をウェハー上に塗布する工程と、前記ウェハーに塗布した前記プリアプライド用封止樹脂組成物をB−ステージ化する工程と、前記ウェハーをダイシングして個片化し、プリアプライド用封止樹脂組成物付き半導体素子を得る工程と、前記プリアプライド用封止樹脂組成物付き半導体素子のプリアプライド用封止樹脂組成物が塗布された面と回路基板の回路面とを対向し位置合わせする工程と、前記位置合わせをしたプリアプライド用封止樹脂組成物付き半導体素子と回路基板を加熱圧着し、電気的に接続する工程とを、有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
(15)(1)ないし(14)に記載のプリアプライド用封止樹脂組成物を用いて半導体素子と回路基板とを電気的に接続してなることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体チップを回路基板に実装する場合に、半導体チップや回路基板
の界面空隙が発生せず、また、作業性および信頼性に優れたプリアプライド用封止樹脂組成物を提供される。また、本発明によれば、前記プリアプライド用封止樹脂組成物を適用することにより、信頼性に優れた半導体装置を提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、プリアプライド用封止樹脂組成物とは、以下の用途に用いられる樹脂組成物のことである。回路面に半田突起電極が形成された半導体ウェハーに樹脂組成物を塗布し、乾燥させるとともに、B−ステージ化を行う。この半導体ウェハーをダイシングにより個片化して樹脂組成物付き半導体チップを得る。この樹脂組成物付き半導体チップと回路基板とを位置合わせして加熱により仮搭載し、その後、加熱により半導体チップと回路基板の電気的接続と間隙の封止を同時に行う。このように、本発明のプリアプライド用封止樹脂組成物は、ウェハーレベルでの塗布が可能であり、また、半導体チップと回路基板の電気的接続と間隙の封止が同時に行えるため、従来のキャピラリーアンダーフィルに比べると工程短縮が可能となる。
【0014】
本発明のプリアプライド用封止樹脂組成物について説明する。ただし、本発明は以下に
限られるものではない。
【0015】
本発明のプリアプライド用封止樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)フラックス活性を有する硬化剤、(C)界面活性剤を含み、前記プリアプライド用封止樹脂組成物を、金およびソルダーレジスト上で、160℃、20s加熱溶融させた後の、金への接触角が40°以下で、かつ、ソルダーレジストへの接触角が40°以下である。
本発明のプリアプライド用封止樹脂組成物は、半導体素子と回路基板の電気的接続に使用されるものであり、一般的に、半導体素子の界面にはポリアミドの有機保護膜が、また、回路基板の界面にはソルダーレジストが配されている。そのため、プリアプライド用封止樹脂組成物のポリアミドやソルダーレジストに対する濡れ性が悪い場合、半導体素子と回路基板を電気的に接続した際に、プリアプライド用封止樹脂組成物と半導体素子及び回路基板界面近傍に空隙が発生してしまう。本発明は、プリアプライド用封止樹脂組成物の金への接触角を40°以下、かつ、ソルダーレジストへの接触角を40°以下とすることで上記課題を解決するものである。
【0016】
また、プリアプライド用封止樹脂組成物のポリアミド及びソルダーレジストに対する接触角を前記範囲とするのは、(A)エポキシ樹脂、(B)フラックス活性を有する硬化剤、(C)界面活性剤を含む樹脂組成物の各成分の配合量を調整することにより実現することが可能である。
【0017】
プリアプライド用封止樹脂組成物の、金及びポリアミドに対する接触角は以下の方法により測定することができる。
プリアプライド用封止樹脂組成物を、剥型処理を施したガラス板上に直径0.5〜1.5mm程度になるように滴下、さらに、B−ステージ化させ、得られた樹脂滴をガラス板上から、金メッキ処理した部材およびソルダーレジストPSR−4000 AUS703(太陽インキ製造(株)製)をコートした基板に載置し、160℃に加熱されたホットプレートに載せ、20秒間加熱することにより金およびソルダーレジストに濡れ広がった樹脂滴が得られる。得られた樹脂滴について、固液界面解析装置(協和界面科学(株)製、DropMaster500)を用いて接触角を測定できる。
【0018】
本発明に係る(A)エポキシ樹脂は、特に制限されるものではないが、1分子中にエポ
キシ基が2個以上であるものを使用することができる。
エポキシ樹脂の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノ
ボラック型エポキシ樹脂、クレゾールナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂等の常温で液状のエポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ、o−アリルビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル型エポキシ、4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル型エポキシ、1,6−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、臭素型クレゾールノボラック型エポキシ、ビスフェノールDジグリシジルエーテル型エポキシ,1,6ナフタレンジオールのグリシジルエーテル、アミノフェノール類のトリグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独で用いても複数組み合わせて用いても良い。また、信頼性の優れたプリアプライド用封止樹脂組成物を得るために、エポキシ樹脂のNa+、Cl-等のイオン性不純物はできるだけ少ないものが好ましい。
【0019】
本発明に係るエポキシ樹脂の添加量は、特に制限されるものではないが、プリアプライド用封止樹脂組成物全体に対して10〜80重量%であることが好ましく、30〜70重量%が特に好ましい。上記範囲とすることで、硬化後の耐熱性、耐湿性、接着性を向上さ
せることが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る(A)エポキシ樹脂は、B−ステージ時のタック性およびダイシン
グ時やハンドリング時のクラックや欠けを防止する観点から、25℃において液状のエポキシ樹脂と、25℃において固形のエポキシ樹脂を組み合わせて用いることが好ましい。
【0021】
(D)25℃において液状のエポキシ樹脂は、特に制限されるものではないが、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ、o−アリルビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル型エポキシ、4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル型エポキシ、1,6−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、臭素型クレゾールノボラック型エポキシ、ビスフェノールDジグリシジルエーテル型エポキシ、1,6ナフタレンジオールのグリシジルエーテル、アミノフェノール類のトリグリシジルエーテル、エポキシ基を分子内に一つ有するモノエポキシ化合物等が挙げられ、Bステージ後の溶融粘度という観点から、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ、1,6ナフタレンジオールのグリシジルエーテルが好ましい。
【0022】
(E)25℃において固形のエポキシ樹脂は、特に制限されるものではないが、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂等が挙げられ、Bステージ後の溶融粘度および硬化物の耐熱性という観点からビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格型エポキシ樹脂が好ましい。
【0023】
(E)25℃において固形のエポキシ樹脂の配合量は、エポキシ樹脂全体に対して、30重量%から95重量%であることがより好ましく、30〜60重量%が特に好ましい。上記範囲とすることで特に、B−ステージ化時にプリアプライド用封止樹脂組成物のタックフリー化が容易になり、また、ダイシング時やハンドリング時にプリアプライド用封止用樹脂組成物にクラックや欠けが生じにくくなる。
【0024】
本発明に係る(B)フラックス活性を有する硬化剤とは、半導体チップに設けられた半田バンプ表面の酸化膜を、基板と電気的に接合できる程度に還元する作用を示し、かつ、エポキシ樹脂と反応する硬化剤としての作用を示す化合物である。前記(B)フラックス活性を有する硬化剤は、特に制限されるものではなく、カルボン酸誘導体類、酸無水物誘導体等が挙げられ、好ましくは、1分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基と、芳香族に直接結合した1個のカルボキシル基を有する化合物である。
【0025】
1分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基と、芳香族に直接結合した1個のカル
ボキシル基とを、有する化合物は、特に制限されるものではないが、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(慣用名ゲンチジン酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、フェノールフタリン、ジフェノール酸等が挙げられ、フラックス作用とエポキシ樹脂との反応性の観点から、2,5−ジヒドロキシ安息香酸およびフェノールフタリンが好ましい。これらの化合物は何れも吸湿し易くボイドの原因となるため製造する際は前もって乾燥を行うことが好ましい。
【0026】
本発明に係るフラックス活性を有する硬化剤の添加量は、特に制限されるものではない
が、樹脂組成物全体に対して5〜40重量%が好ましく、5〜20重量%が特に好ましい。フラックス活性を有する硬化剤の添加量を上記範囲とすることで、フラックス活性、硬化剤過多、硬化性のバランスを保つことが可能となる。
【0027】
本発明に係る(C)界面活性剤は、ソルダーレジストに対する接触角が40°以下で、
かつ、金に対する接触角が40℃以下であれば、特に制限されるものではないが、その中でも、ソルダーレジストに対する接触角が20°以下で、金に対する接触角が30℃以下であるものが好ましい。上記範囲とすることで、プリアプライド用封止樹脂組成物の、回路基板の界面であるソルダーレジストと半導体チップの保護膜であるポリアミドの濡れ性を向上することが可能となり、回路基板や半導体チップの界面近傍に空隙が発生することを抑制することが可能となる。
【0028】
前記界面活性剤(C)のソルダーレジスト及び金に対する接触角は、以下の方法により測定することができる。
金メッキ処理した部材およびソルダーレジストPSR−4000 AUS703(太陽インキ製造(株)製)をコートした基板を準備し、マイクロシリンジを用いて、界面活性剤を各部材に滴下し、直径0.5〜1.5mmの液滴を作製する。滴下後5分経過させた後、固液界面解析装置(協和界面科学(株)製、DropMaster500)を用いて接触角を測定することができる。
【0029】
(C)界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤である脂肪酸系(陰イオン)界面活
性剤、直鎖アルキルベンゼン系界面活性剤、高級アルコール系(陰イオン)界面活性剤、ノルマルパラフィン系界面活性や非イオン系界面活性剤であるアルキルフェノール系界面活性剤、高級アルコール(非イオン)系界面活性剤、脂肪酸系(非イオン)界面活性剤、両性イオン界面活性剤であるアミノ酸系界面活性剤、アミンオキシド系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤である第四級アンモニウム塩系界面活性剤等が挙げられるが、その中でも、プリアプライド用封止樹脂組成物の金及びソルダーレジストに対する接触角を低下させる観点、また、印刷時やBステージ中におけるレベリング性の観点から、高分子界面活性剤の一種であるアクリル系界面活性剤および親水性基と疎水性基としてシロキサン結合を有するシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0030】
前記アクリル系界面活性剤は、特に制限されるものではないが、(メタ)アクリル酸、
(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体が挙げられ、その中でも、金およびソルダーレジストへの濡れ広がり性の観点から、式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が好ましい。
【化3】

【0031】
前記式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、特に制限さ
れるものではないが、(メタ)アクリル酸ブチル/(メタ)アクリル酸ヘキシルの共重合体、(メタ)アクリル酸プロピル/(メタ)アクリル酸―2−エチルヘキシルの共重合体、(メタ)アクリル酸ブチル/(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルの共重合体、(メタ)アクリル酸エチル/アクリル酸ヘキシルの共重合体、(メタ)アクリル酸ブチル/(メタ)アクリル酸ペンチルの共重合体等が挙げられ、その中でも金およびソルダーレジストへの濡れ広がり性の観点から、(メタ)アクリル酸ブチル/アクリル酸−2−エチルヘキシルの共重合体、(メタ)アクリル酸ブチル/(メタ)アクリル酸ヘキシルの共重合体が好ましい。
【0032】
前記シロキサン結合を有するシリコーン系界面活性剤は、特に制限されるものではない
が、アミノ変性ジメチルシロキサン、アクリル変性ジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルシロキサン、式(1)で示されるシリコーン系界面活性剤等が挙げられ、これらの中でも、金およびソルダーレジストへの濡れ広がり性の観点から、式(2)で示されるシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【化4】

【0033】
前記式(2)で示されるシリコーン系界面活性剤は、特に制限されるものではないが、ジメチルシロキサン骨格を主鎖とする化合物の側鎖にカルボキシル基または水酸基が導入された化合物である。具体的には、ジメチコン酸ポリエチレングリコール−8リン酸、ジメチコン酸ポリエチレングリコール−7コハク酸、ジメチコン酸ポリプロピレングリコール−7硫酸アンモニウム塩等が挙げられ、その中でも金およびソルダーレジストへの濡れ広がり性の観点から、ジメチコン酸ポリエチレングリコール−7コハク酸、ジメチコン酸ポリエチレングリコール−8リン酸が好ましい。
【0034】
本発明に係る(C)界面活性剤の添加量は、特に制限されるものではないが、プリアプライド用封止樹脂組成物全体に対して、0.005〜5.0重量%が好ましく、0.01〜1.0重量%が特に好ましい。上記範囲とすることで、プリアプライド用封止樹脂組成物の金やポリイミドに対する濡れ性を向上させること、また、印刷時およびBステージ中での表面平坦性を向上させることを両立することができる。
【0035】
本発明のプリアプライド用封止樹脂組成物は(F)硬化触媒を含んでいてもよい。エポキシ樹脂の硬化促進剤作用するものであれば、特に制限されるものではなく、イミダゾール類、リン化合物、ジアゾ化合物、第三級アミン等が挙げるが、これらの中でも、エポキシ樹脂の硬化性と保存性の観点からイミダゾール類が好ましい。
【0036】
本発明のプリアプライド用封止樹脂組成物は、(G)溶剤を含んでいてもよい。(G)
溶剤は、特に制限されるものではないが、プリアプライド用封止樹脂組成物の作業性の主要因である粘度を調整する観点から、前記(A)エポキシ樹脂に対して良溶媒性であるものが好ましく、前記(A)エポキシ樹脂に対して良溶媒性で、かつ、前記(B)フラックス活性を有する硬化剤に対しては貧溶媒性であるものが特に好ましい。このような溶剤を用いることにより、エポキシ樹脂を適切に溶解させつつ、フラックス活性を有する硬化剤が固形のまま樹脂組成物に分散するため、プリアプライド用封止樹脂組成物を半導体チップに塗布し、B−ステージ化する際には、硬化反応が抑制される。硬化反応が抑制される
ことで、プリアプライド用封止樹脂組成物がB−ステージ化された半導体チップを基板と接合する際にもプリアプライド用封止樹脂組成物が安定して加熱溶解し、適切にフラックス活性を発現することができる。
【0037】
前記(A)エポキシ樹脂に対して良溶媒性であり、前記(B)フラックス活性を有する
硬化剤に対しては貧溶媒性である溶剤は、使用するエポキシ樹脂及びフラックス活性を有する硬化剤によって変わりうるものである。実際には、使用するエポキシ樹脂及びフラックス活性を有する硬化剤に対する溶解性試験を行い、適宜選択することができる。
【0038】
(A)エポキシ樹脂に対して良溶媒性とは、溶剤100gに対して前記(A)エポキシ
樹脂100gを溶解させたときの前記(A)の不溶分が10g以下であることをいう。
また、(B)フラックス活性を有する硬化剤に対して貧溶媒性とは、溶剤100gに対
して前記(B)フラックス活性を有する硬化剤10gを溶解させたときの不溶分が8g以上であることをいう。
【0039】
上記溶解性試験の方法としては、室温にてガラスビーカー内に溶剤を100g入れ、そ
こに前記(A)エポキシ樹脂100g、或いは、(B)フラックス活性を有する硬化剤10gを添加したものを、マグネチックスターラーにて1時間攪拌し、重量の既知であるろ
紙を用いてろ過した後、ろ過物を80℃、3時間にて十分に乾燥させ、残渣物を秤量して行った。
【0040】
本発明に係る(G)溶剤は、特に制限されるものではなく、脂肪族アルコール系溶剤、
ケトン系溶剤、アルデヒド系溶剤、カルボン酸系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、フェノール系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、アセタール系溶剤、脂肪酸系溶剤、酸無水物系溶剤、窒素化合物系溶剤、硫黄化合物系溶剤、無機溶剤など公知の溶剤が挙げられ、その中でもエポキシ樹脂への溶解性と硬化剤の不溶性の観点からエステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤が好ましく、エステル系溶剤、エーテル系溶剤が特に好ましい。
【0041】
エーテル系溶剤およびアセテート系溶剤としては、特に制限されるものではないが、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルベンゾエート、エチレングリコールモノエチルイソブチレート、エチレングリコールモノエチルメタクリレート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソブチルエーテルベンゾエート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルベンゾエート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルアクリレート、1-アセトキシ-2-エトキシエタン、
4-(2-アセトキシエトキシ)トルエン、4'-(2-アセトキシエトキシ)アセトフェノ
ン、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート等が挙げられ、リアプライド用封止樹脂組成物混練時や半導体装置作製時の過剰な溶剤揮発を抑制させるため、沸点は140℃以上であることが好ましくプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが好ましい。
【0042】
(G)溶剤の添加量は、(A)エポキシ樹脂と(G)溶剤の合計に対して10〜70重量%であることが好ましく、適用プロセスにもよるが、印刷方式用の場合、15〜35重量%が特に好ましく、スピンコート方式用の場合、25〜45重量%が特に好ましい。上記範囲とすることで、常態での粘度特性およびウエハー上への樹脂の供給安定性が両立するこおが可能となる。
常態での粘性特性、特に作業性とウェハー上への塗布後のハンドリング性(樹脂だれ抑
制)を両立することが可能となる。
【0043】
本発明のプリアプライド用封止樹脂組成物は、硬化物性を調節する目的で、必要に応じて無機フィラーを添加することができる。無機フィラーとしては、特に制限されるものではないが、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、窒化アルミ等が挙げられ、用途によりこれらを複数混合してもよいが、純度、信頼性、コストの点でシリカが好ましい。また、無機フィラーの添加量は特に制限がないが、プリアプライド用封止樹脂組成物耐湿性、作業性等を確保する目的で、無機フィラーを含めた全樹脂量に対して80重量%以下であることが好ましい。より好ましくは50重量%以下である。上限値以下であると、接合の際、絶縁性のフィラーが半導体素子の突起電極と回路板電極との接合が妨げられず良好に行うことができる。
【0044】
また、本発明のプリアプライド用封止樹脂組成物は、硬化後の耐熱性、耐湿性を調整する目的で無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーは破砕フィラーのであるとその鋭利な面により半導体素子表面の回路を破壊する恐れがあるため、球状であることが好ましい。また、無機フィラーの粒径は平均粒径で6μm以下、最大粒径で30μm以下が好ましい。上記範囲とすることで、はんだ接合時にフィラーのかみこみによる接合不良を抑制することが可能となる。
【0045】
本発明のプリアプライド用封止樹脂組成物は、前記(A)エポキシ樹脂、(B)フラックス活性を有する硬化剤、(C)界面活性剤、(F)硬化促進剤、(G)溶剤、無機フィラー以外に、必要に応じて低応力材、反応性希釈材、顔料、染料、レベリング剤、消泡剤、カップリング材等の添加剤を添加してもよい。これらの添加剤は何れもボイドの要因になってはならないため、耐熱性等確認の上添加することが好ましい。
【0046】
前記低応力材、反応性希釈材、顔料、染料、レベリング剤、消泡剤、カップリング材等
の添加剤は、B−ステージ後のプリアプライド封止樹脂組成物の透明性を低下させる原因となるため、半導体素子の界面が認識可能な透明性を維持できる範囲で添加量を選択することが好ましい。
【0047】
以下に、本発明のプリアプライド用封止樹脂組成物を使用した半導体装置について説明する。ただし、本発明は以下に限られるものではない。
【0048】
図1に示す本発明の半導体装置10は、半導体素子11と基板12が半田バンプ13を
介して電気的に接続されており、また、半導体素子11と基板12の間隙は、本発明のプリアプライド用封止樹脂組成物14により封止されているため、耐熱性、耐湿性の両方に優れている。
【0049】
次に、本発明のプリアプライド用封止樹脂組成物を使用した半導体装置の製造方法について説明する。ただし、本発明は以下に限られるものではない。
【0050】
≪塗布工程≫
塗布工程は、プリアプライド用封止樹脂組成物を、半導体ウェハーの半田バンプが形成された面に所定の厚さに塗布する目的で行われる。
半導体ウェハー上にプリアプライド用封止樹脂組成物を塗布する方法としては、メタル
マスクやメッシュマスクを用いた印刷法、スピンコート法、またはリリースフィルム上にシート化したものを貼り付ける方法などが挙げられるが、本方式では一般的には印刷法またはスピンコート法が用いられる。
【0051】
図1(a)は、プリアプライド用封止樹脂塗布工程の一例であるが、半田バンプ13が
載置された半導体ウエハー15の半田バンプ13が載置された面に、メタルマスク16を介して、スキージ17によりプリアプライド用封止樹脂組成物14を所定の厚さに塗布し、
プリアプライド用封止樹脂組成物14付き半導体ウエハー12を得る。
≪B−ステージ化工程≫
B−ステージ化工程(図1(b))は、半導体ウェハー上に塗布したプリアプライド用封止樹脂組成物に熱履歴を加え、タック性および硬さを調節して、ハンドリング性を確保する目的で行われる。
半導体ウェハーに塗布後のプリアプライド用封止樹脂組成物を、B−ステージ化する方
法としては、一般的に乾燥工程が必要であり、乾燥オーブン内で一定時間静置させるか、インラインオーブン、コンベア式加熱炉などでも代替できる。必要に応じて、ステップ加熱、定常昇温、定常降温などが設定される。
【0052】
図1(b)は、プリアプライド用封止樹脂組成物B−ステージ化工程の一例であるが、オーブン等により、プリアプライド用封止樹脂組成物14付き半導体ウエハー15に熱履歴を加え、プリアプライド用封止樹脂組成物14表面のタック性性等の作業性を調整する。
【0053】
≪ダイシング工程≫
ダイシング工程は、プリアプライド用封止樹脂組成物付き半導体ウェハーを個片化し、
プリアプライド用封止樹脂組成物付き半導体素子を得る目的で行われる。
前記ダイシング工程は、一般的なダイシング装置を使用し、乾式又は湿式ダイシングを
行うことによって個片化することが可能である。
【0054】
図1(c)は、プリアプライド用封止樹脂組成物14付き半導体ウェハー15のダイシング工程の一例であるが、ダイシング装置により所定の大きさに切断し、プリアプライド用封止樹脂組成物14付き半導体素子11を得る。
【0055】
≪接合・封止工程≫
接合・封止工程は、半導体素子と回路基板の電気的接続を行い、さらに、半導体素子と回路基板の間隙をプリアプライド用封止樹脂組成物で封止し、半導体装置を得る目的で行われる。
個片化したプリアプライド用封止樹脂組成物付き半導体素子のプリアプライド用封止樹
脂組成物面と、基板の接続電極面とを対向・位置合せを行い、加熱圧着接合する。加熱圧着接合後に、プリアプライド用封止樹脂組成物を硬化させる目的で、更に熱履歴を加えてもよい。加熱圧着接合する方法としては、一般的には、フリップチップボンダーを用いて位置合わせをした後、そのまま加熱圧着する方法、または位置合わせ、仮搭載が終わったものをリフロー炉などで加熱接続させる方法が用いられる。その際、パッケージや封止法に適した熱プロファイルが用いられる。また、チップ搭載にはフリップチップボンダーのみならず、ダイボンダーなど位置合わせが可能なもので代替することもできる。
【0056】
図1(d)は、接合・封止工程の一例であるが、プリアプライド用封止樹脂組成物14付き半導体素子11の半田バンプ13と基板12の電極(図示しない)の位置合せを行い、熱履歴を加え、プリアプライド用封止樹脂組成物14が溶融させ、さらに熱履歴を加え、半導体素子11の半田バンプ13が溶融させて、基板12の電極と接合させる。次いで、プリアプライド用封止樹脂組成物14の硬化を完了させる目的で、さらに熱履歴を加える。上記熱履歴の他に、圧力や超音波等の因子を加えても良い。
前記プリアプライド用封止樹脂組成物14を溶融させるための熱履歴は、半田バンプ1
3の融点以下が好ましく、具体的には、100〜200℃が好ましく、特に120〜180℃が好ましい。
前記半田バンプ13を溶融させ、基板12の電極と接合ささせるための熱履歴は、半田
バンプの材質により適宜選択され、半田バンプの融点より10〜100℃高い温度が好ましく、20℃〜80℃高い温度が特に好ましい。上記範囲とすることで、半導体素子11の半田バンプ13と基板12の電極を確実に接合することができる。
また、プリアプライド用封止樹脂組成物14の硬化を完了するための熱履歴は、100
〜200℃が好ましく、120〜180℃が特に好ましい。上記範囲とすることで、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【実施例】
【0057】
(プリアプライド用封止樹脂組成物の作製)
<実施例1〜7、比較例1>
表1のように各成分を配合(重量部)し、3本ロールにて分散混練し、真空下脱泡処理
をしてプリアプライド用封止樹脂組成物を得た。またこのプリアプライド用封止樹脂組成物を用いて以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
プリアプライド用封止樹脂組成物に用いられている成分の詳細は以下の通りである。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂:大日本インキ化学工業(株)製、EXA−830LVP(エポキシ当量161)
ビフェニル型エポキシ樹脂:日本化薬(株)製、NC3000(エポキシ当量272)
低粘度型ビフェニル型エポキシ樹脂:日本化薬(株)製、CER3000L(エポキシ当量237)
ナフタレン型エポキシ樹脂:大日本インキ化学工業(株)製、HP4032D(エポキシ当量140)
ゲンチジン酸:みどり化学(株)製、2,5−ジヒドロキシ安息香酸
2P4MZ:四国化成(株)製、2−フェニル−4−メチルイミダゾール
ブタジエンニトリルゴム:宇部興産(株)製、CTBN1008SP(カルボキシル基末端ブタジエンアクリルゴム)
シリコーン系界面活性剤:Noveon製、SilsenceCA−2(接触角:金 10°、SR 10°)
アクリル系界面活性剤:共栄社化学(株)製、ポリフローNo.90 (接触角:金 20°、
SR 20°)
溶剤(BCSA):東京化成工業(製)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
【0060】
(半導体装置の作製)
さらに、上記で得られたプリアプライド用封止樹脂組成物を用いて、次のように半導体装置を製造した。
【0061】
部材は、以下のものを使用した。
ウエハ;
サイズ:8インチ
ウエハ厚さ:725um
半田バンプ:Sn−3.5Ag
バンプ高さ:80μm
バンプピッチ:200um
有機基板;
材質:FR−5基板(日立化成工業(株)製 MCL−E−679FG)
基板厚さ:0.8mm
サイズ:50mm□
ソルダーレジスト:PSR−4000 AUS703
レジスト開口径:100um
レジスト高さ:30um
Pad:金メッキ処理
【0062】
≪塗布工程≫
プリアプライド用封止樹脂組成物の塗布は、真空印刷機(東レエンジニアリング(株)
製)を用い、ウレタン製スキージ板にて2ステップ印刷法にて行った。このとき真空にはせず、100μm厚のメタルマスクを使用し、およそ100gのプリアプライド用封止樹脂をメタルマスク上に供給し、半導体素子を搭載した8インチ半導体ウェハーに塗布し、プリアプライド用封止樹脂組成物付き半導体ウェハーを得た。この時1ステップ目は、スキージ板角度を半導体素子面に対して30に°、スキージ圧は0.2Paとした。また2ステップ目は、塗布時の材料の平坦化を目的とするため、スキージ板を半導体素子面に対して50°に、スキージ圧は0.1Paとした。
【0063】
≪B−ステージ化工程≫
塗布工程で得られたプリアプライド用封止樹脂組成物付き半導体ウェハーを、あらかじ
め平行をとっておいた乾燥オーブン内で90℃、90分の条件で乾燥させ、プリアプライド用封止樹脂組成物のB−ステージ化を行った。
【0064】
≪ダイシング工程≫
プリアプライド用封止樹脂組成物を、ダイシング装置(Disco(株)製)を使用し
、湿式ダイシングを行い、Aモードにて10mm角に個片化し、プリアプライド用封止樹脂組成物付き半導体素子を得た。この際、平坦化したプリアプライド用封止樹脂組成物の溶融と、ダイシング面の形状変化を阻止するため、通常行われる半導体ウェハーの乾燥は行わなかった。
【0065】
≪接合・封止工程≫
澁谷工業社製フリップチップボンダーを用い、130℃、15秒間、5kgf/chi
pの圧力で、プリアプライド用封止樹脂組成物付き半導体素子を仮搭載させた後、半田をバンプを溶融させるために、260℃、5秒間加熱することにより接合および封止を行った。この時、有機基板上のパッド部はソルダーレジストにて開口され、キャビティーを形成させているものを用いた。接合後のプリアプライド用樹脂組成物の硬化は、150℃、90分の条件で行い、その後接続性の確認とボイド性の確認を行った。
【0066】
次に、本実施例で行った各評価について以下に説明する。
【0067】
(1)界面活性剤の接触角測定
金メッキ処理した部材およびソルダーレジストPSR−4000 AUS703(太陽
インキ製造(株)製)をコートした基板を準備し、マイクロシリンジを用いて、界面活性剤を各部材に滴下し、直径0.5〜1.5mmの液滴を作製する。滴下後5分経過させたものを固液界面解析装置(協和界面科学(株)製、DropMaster500)を用いて接触角を測定した。
【0068】
(2)プリアプライド用封止樹脂組成物の接触角測定
プリアプライド用封止樹脂組成物を、剥型処理を施したガラス板上に直径0.5〜1.5mm程度になるように滴下、さらに、B−ステージ化させ、得られた樹脂滴をガラス板上から、金メッキ処理した部材およびソルダーレジストPSR−4000 AUS703(太陽インキ製造(株)製)をコートした基板に載置し、160℃に加熱されたホットプレートに載せ、20秒間加熱することにより金およびソルダーレジストに濡れ広がった樹脂滴が得られる。得られた樹脂滴について、固液界面解析装置(協和界面科学(株)製、DropMaster500)を用いて接触角を測定した。
角を測定した。
【0069】
(3)B−ステージ化後のタック値測定
厚み1mmのガラススライド上に、厚み50μm、面積10mm×50mmにプリアプ
ライド用封止樹脂組成物を広げ、90℃、90minでB−ステージ化させた。得られたサンプルについて、プローブタック法にて評価した。各符号は以下の通りである。
◎:タック無し(0gf/5mmφ以上5gf/5mmφ以下)
△:タック若干有り(5gf/5mmφ以上100gf/5mmφ以下)
×:タック有り、実用上使用不可(100gf/5mmφ以上)
【0070】
(4)はじき性評価
半田バンプ付き8インチ半導体ウェハー(バンプ径80um、バンプピッチ200um
、半田種SnAg)に、膜厚約100umになるようにプリアプライド用封止樹脂組成物を真空印刷機にて印刷し、90℃、90minの条件でBステージ化させた。得られた半導体ウェハーについて、表面観察を行い、はじきに伴うクレーターの数を数えた。
【0071】
(5)ボイドフリー達成率
実施例で得られた半導体装置(n=20)を、超音波探傷装置(SAT)を用いて、ボ
イド、剥離の観察を行い、これらが観察されたサンプルを不良サンプルとした。ボイドフリー達成率は、20サンプルのうち、不良がみられなかったサンプルの割合であり、下記式により表される。
ボイドフリー達成率(%)={1−(不良サンプル数)/20}×100
【0072】
(6)耐リフロー試験
実施例で得られた半導体装置の中で、接続率100%の半導体装置を選び、30℃、6
0%、192時間吸湿させたあと最大温度260℃の温度プロファイルのリフローを3回通過させ、封止樹脂外観クラック、界面の剥離状態を超音波探傷装置(SAT)評価した(n=5)。界面の剥離状態は、一箇所でも剥離が生じた場合、不良とした。
【0073】
比較例1は、界面活性剤を使用いないため、半導体ウエハーへの印刷後、B−ステージ化させたタイミングではじきが発生してしまった。また金やソルダーレジストへの接触角が大きいため、半導体装置を作製した際に多数のボイドが発生した。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の半導体装置を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明のプリアプライド用封止樹脂組成物の使用方法の一実施形態を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0075】
10 半導体装置
11 半導体素子
12 基板
13 半田バンプ
14 プリアプライド用封止樹脂組成物
15 半導体ウェハー
16 メタルマスク
17 スキージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と回路基板を接続するプリアプライド用封止樹脂組成物であって、
(A)エポキシ樹脂と、
(B)フラックス活性を有する硬化剤と、
(C)界面活性剤と、
を含み、
前記プリアプライド用封止樹脂組成物を、金およびソルダーレジスト上で160℃、20s加熱溶融させた際の、
金への接触角が40°以下、
ソルダーレジストへの接触角が40°以下、
であることを特徴とするプリアプライド用封止樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)界面活性剤の、ソルダーレジストに対する接触角が40°以下、かつ、金に
対する接触角が40°以下である、請求項1に記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)界面活性剤が、アクリル系界面活性剤及び/又はシリコーン系界面活性剤である、請求項1または2に記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
【請求項4】
前記アクリル系界面活性剤が、下記式(1)で示されるアクリル酸エステル共重合体で
ある、請求項3に記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
【化1】

【請求項5】
前記シリコーン系界面活性剤が、下記式(2)で示される化合物である、請求項3に記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
【化2】

【請求項6】
前記(C)界面活性剤の添加量が、プリアプライド用樹脂組成物全体に対して0.005〜5重量%である、請求項1ないし5のいずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)エポキシ樹脂の添加量が、プリアプライド用樹脂組成物全体にして10〜8
0重量%である、請求項1ないし6のいずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
【請求項8】
前記(A)エポキシ樹脂が、
(D)25℃で液状であり、一分子中にエポキシ基を2個以上含むエポキシ樹脂と、
(E)25℃で固体であり、一分子中にエポキシ基を2個以上含むエポキシ樹脂と、
を含むものである、請求項1ないし7のいずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
【請求項9】
前記(E)25℃で固体であり、一分子中にエポキシ基を2個以上含むエポキシ樹脂の添加量が、エポキシ樹脂全体にして30〜95重量%である、請求項1ないし8のいずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
【請求項10】
前記(B)フラックス活性を有する硬化剤が、1分子中に、少なくとも2個のフェノール性水酸基と、芳香族に直接結合したカルボキシル基とを、含むものである、請求項1ないし9のいずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
【請求項11】
前記(B)フラックス活性を有する硬化剤の添加量が、プリアプライド用樹脂組成物全体に対して5〜40重量%である、請求項1ないし10のいずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物。
【請求項12】
さらに、(F)硬化触媒を含むものである、請求項1ないし11のいずれかに記載のプ
リアプライド用封止樹脂組成物。
【請求項13】
さらに、(G)溶剤を含むものである請求項1ないし12いずれかに記載のプリアプラ
イド用封止樹脂組成物。
【請求項14】
半導体素子と回路基板とを電気的に接続してなる半導体装置の製造方法であって、
請求項1ないし13のいずれかに記載のプリアプライド用封止樹脂組成物をウェハー上に塗布する工程と、
前記ウェハーに塗布した前記プリアプライド用封止樹脂組成物をB−ステージ化する工程と、
前記ウェハーをダイシングして個片化し、プリアプライド用封止樹脂組成物付き半導体素子を得る工程と、
前記プリアプライド用封止樹脂組成物付き半導体素子のプリアプライド用封止樹脂組成物が塗布された面と回路基板の回路面とを対向し位置合わせする工程と、
前記位置合わせをしたプリアプライド用封止樹脂組成物付き半導体素子と回路基板を加熱圧着し、電気的に接続する工程とを、
有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項1ないし14に記載のプリアプライド用封止樹脂組成物を用いて半導体素子と回
路基板とを電気的に接続してなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−303283(P2008−303283A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151132(P2007−151132)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】