説明

プリプレグ、金属張り積層板及びプリント配線板

【課題】レーザー加工に優れ、かつ、樹脂の脱落が極めて少なく、XY方向の熱膨張率が大幅に低減したプリプレグ及び同プリプレグを用いた金属張り積層板、並びに、接続信頼性に優れたプリント配線板を提供する。
【解決手段】(A)官能基を有するアクリル系ゴム、(B)ナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格及びジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも一つを有するエポキシ樹脂、(C)ナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格及びジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも一つを有するノボラック型フェノール樹脂、(D)ビスマレイミドとアミノフェノールとの付加反応物及び(E)溶融シリカを必須成分とする熱硬化性樹脂組成物と有機繊維で構成された織布又は不織布を基材として用いることとを特徴とするプリプレグ、同プリプレグを用いた金属張り積層板並びに同金属張り積層板を用いたプリント配線板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ、金属張り積層板及びプリント配線板に関する。さらに詳しくは、レーザー加工性に優れ、樹脂の脱落が極めて少なく、熱膨張率が低いプリプレグ、耐熱性、密着性及び耐湿性に優れた金属張り積層板並びに接続信頼性に優れたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子機器の小型・軽量化及び高機能化に伴い、それらの機器に使用される多層プリント配線板はますます薄型化及び高密度化が求められている。このような要求に応えるものとして、ビルドアップ方式の多層プリント配線板が使用されるようになってきている。
このビルドアップ方式の多層プリント配線板は、例えば基材に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグと銅箔とを積層配置、加熱圧着してコア材を作製した後、このコア材に接着用シートやプリプレグを用いることによりビルドアップ層が形成されている。このような方法によれば、従来の多層プリント配線板よりも高密度配線が可能になる。
従来、ビルドアップ方式の多層プリント配線板におけるコア材やビルドアップ層の形成に用いられるプリプレグは、ガラス転移温度(Tg)の高いエポキシ樹脂とガラスクロスとの組み合わせにより作製されている。このようなプリプレグを用いたビルドアップ方式の多層プリント配線板はそのXY方向あるいは平面方向(繊維方向)の熱膨張率が15〜18ppm/℃となっている。
【0003】
一方、このようなビルドアップ方式の多層プリント配線板に実装されるシリコンチップの熱膨張率は3ppm/℃程度である。このため、ビルドアップ方式の多層プリント配線板とシリコンチップとをフリップチップ実装した場合、これらの熱膨張率の違いにより応力が発生し、これらの間の接続信頼性が十分でなくなる。このような課題を解決するものとして、例えばアラミド繊維不織布に熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含浸させたアラミド繊維不織布基板が知られている。アラミド繊維は低い熱膨張係数を有するため、このアラミド繊維によって樹脂間を強固に結びつけることによって、低熱膨張、寸法安定性に優れた基板とすることが可能となっている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このようなアラミド繊維不織布にエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグを用いた多層プリント配線板であっても、シリコンチップとプリプレグの熱膨張率の差は依然としてかなり大きい。また、近年のシリコンチップには高速演算等のため表面に低誘電率層が形成されており、この低誘電率層の形成によりシリコンチップが非常に脆くなっている。
このような課題を解決するために、シリコンチップを実装するために用いられる半導体パッケージ用多層プリント配線板の熱膨張率をシリコンチップの熱膨張率と同程度まで低減させ、シリコンチップを実装した場合の接続信頼性を確保するために、基材にビスフェノールA型等の汎用エポキシ樹脂のみを含浸、乾燥させてなるプリプレグを絶縁層として用いた半導体パッケージ用多層プリント配線板において、前記プリプレグの基材として負の熱膨張率を有する有機繊維からなる織布を用いることが提案(例えば、特許文献2参照)されているが、昨今の高精細配線密度の要求に対してプリント配線板を作製する上での歩留まりの向上、及び、さらなる信頼性の向上が強く望まれている現状では性能は十分ではない。
そこで、ビスフェノールA型等のエポキシ樹脂とは異なる特定の構造を有するエポキシ樹脂をポリシロキサン骨格を有するポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂と組み合わせた樹脂組成物を負の熱膨張率を有する有機繊維からなる織布に含浸させた積層板やプリント配線板が提案(例えば、特許文献3参照)されているが、これでも性能は十分ではない。
また、小径のビア加工においては、レーザー加工が普及しているが、さらなる小径化の進展にしたがい、より優れたレーザー加工性を有するプリプレグが要求されている。このような状況において、基材に有機繊維ベースの材料を用いた改善が検討されているが、まだ改善の余地が多い(例えば、特許文献4及び5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−90721号公報
【特許文献2】特開2006−203142号公報
【特許文献3】特開2007−211182号公報
【特許文献4】特開2005−2227号公報
【特許文献5】特開2006−57074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような従来技術に鑑み、レーザー加工に優れ、かつ、樹脂の脱落が極めて少なく、XY方向の熱膨張率が大幅に低減したプリプレグ及び同プリプレグを用いた金属張り積層板、並びに、接続信頼性に優れたプリント配線板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、官能基を有するアクリルゴムと、特定の構造を有する樹脂、ビスマレイミドとアミノフェノールとの付加反応物及び特定の粒子径を有する溶融シリカを必須成分とする、熱硬化性樹脂組成物を使用するとともに、有機繊維で構成された織布又は不織布を基材として用いることにより、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記のプリプレグ、同プリプレグを用いた金属張り積層板及びプリント配線板を提供する
1.(A)官能基を有するアクリル系ゴム、
(B)ナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格及びジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも一つを有するエポキシ樹脂、
(C)ナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格及びジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも1つを有するノボラック型フェノール樹脂、
(D)下記一般式(I)で表されるビスマレイミドと、下記一般式(II)で表されるアミノフェノールとを加熱反応させてなる付加反応物、及び
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は水素原子又はアルキル基を示し、R2は−O−、−CH2−、−SO2−及びS−S−から選ばれる2価の有機基を示し、R3は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を示す。)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R4は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を示す。)
(E)溶融シリカ
を必須成分とする熱硬化性樹脂組成物と有機繊維で構成された織布又は不織布を基材として用いることとを特徴とするプリプレグ。
【0012】
2.(D)成分の付加反応物を熱硬化性樹脂組成物中に5〜60質量%含有することを特徴とする上記1に記載のプリプレグ。
3.(A)成分における官能基が水酸基及び/又はカルボキシル基である上記1又は2に記載のプリプレグ。
4.(E)成分の溶融シリカの平均粒径が0.05〜2μm、最大粒径が10μm以下である上記1〜3のいずれかに記載のプリプレグ。
5.(A)成分のアクリル系ゴムが数平均分子量1万〜10万のものである上記1〜4のいずれかに記載のプリプレグ。
6.有機繊維が負の線膨張率を有し、かつ、弾性率が70GPa以上である上記1〜5のいずれかに記載のプリプレグ。
7.有機繊維がアラミド繊維、ポリパラベンゾオキサゾール繊維及びポリアリレート繊維から選ばれるいずれかである上記1〜6のいずれかに記載のプリプレグ。
8.上記1〜7のいずれかに記載のプリプレグを加熱下で加圧成形してなる絶縁層を有し、その少なくとも一方の面に金属箔が一体化されてなる金属張り積層板。
9.上記8に記載の金属張り積層板及び半導体チップからなるプリント配線板。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、レーザー加工性に優れ、吸湿下での耐熱性が高く、熱膨張率が小さいプリプレグ、金属張り積層板及び接続信頼性に優れたプリント配線板が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[プリプレグ]
本発明のプレプレグは、下記の(A)〜(D)成分を必須成分とする熱硬化性樹脂組成物と、有機繊維で構成された織布又は不織布を基材として用いることとを特徴とするものである。
(熱硬化性樹脂組成物)
〈(A)アクリル系ゴム〉
本発明に用いられるアクリル系ゴムは炭素数1〜20のアルキル基を有するアクリル酸エステルと、架橋点として作用する水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ(グリシジル)基のような官能基を有する単量体混合物を共重合して得られる側鎖に前記水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基のような官能基を有する重合体である。
【0015】
炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸エチレングリコールメチルエーテル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸N−ビニルピロリドン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸エチレングリコールメチルエーテル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸アリル等が挙げられる。
【0016】
水酸基を有する単量体としては、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシフェニルマレイミド等が挙げられる。カルボキシル基を有する単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸及びマレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0017】
アミノ基を有する単量体としては、例えば、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート及びN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン等;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等;N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4−〔N,N−ジメチルアミノ〕スチレン、4−〔N,N−ジエチルアミノ〕スチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられる。エポキシ(グリシジル)基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0018】
アクリル系ゴムの官能基としては、水酸基及び/又はカルボキシル基が好ましく、官能基を有する単量体単位の量は、アクリル系ゴムの構成単量体単位中に0.05〜10質量%含まれることが好ましい。官能基を有する単量体の量が0.05質量%未満及び10質量%を越えるとプリプレグの外観が悪くなり、また0.05質量%未満ではアクリル系ゴムの機械的安定性が劣るようになり好ましくない。0.05〜3質量%含まれることが特に好ましい。
【0019】
アクリル系ゴムの数平均分子量は、1万〜10万であることが好ましい。数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって測定される値であって、標準ポリスチレン換算値のことを意味する。GPC分析は、たとえば、テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として用いて行うことができる。
【0020】
アクリル系ゴムは、例えば、ラジカルを発生させるラジカル重合開始剤を用いて前記の単量体をラジカル重合(主として、乳化重合あるいは懸濁重合)させる方法により得ることができる。ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過安息香酸tert−ブチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジt―ブチルペルオキシド、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、t―ブチルペルイソブチレート、t―ブチルペルピバレート、過酸化水素/第一鉄塩、過硫酸塩/酸性亜硫酸ナトリウム、クメンヒドロペルオキシド/第一鉄塩、過酸化ベンゾイル/ジメチルアニリン等が挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせてもよい。
【0021】
アクリル系ゴムには、必要に応じて、イソシアネート、メラミン等の架橋剤、エポキシ樹脂等の高分子化合物、ゴム系エラストマー、リン系化合物等の難燃剤、シリカ等の無機充填剤、カップリング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、イオントラップ剤等を配合して用いてもよい。
【0022】
官能基を有するアクリル系ゴムは市販品をそのまま使用することができる。市販品としては、SG−708−6T、SG−708−6、SG−70L(以上、ナガセケミテックス社製アクリルゴム)、AREX-120、AREX-220、AREX-320、PHR−1H(以上、JSR社製アクリルゴム)、Lx-854(日本ゼオン社製アクリルゴム)、ニポール1072、ニポール1072B、ニポール1072J(以上、日本ゼオン社製アクリルゴム)、クライナックX7.5(Bayer社製アクリルゴム)、ハイカー・CTBN1300XB、CTBN1300X15あるいはCTBNX1300XB(以上、BFグッドリッチケミカル社製アクリルゴム)、ベーマックGLS(三井・デュポンポリケミカル製アクリルゴム)等が挙げられる。
【0023】
この(A)成分であるアクリル系ゴムの配合割合は、熱硬化性樹脂組成物全体中10〜40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは15〜30質量%である。配合割合を10質量%以上とすることにより有機繊維との密着性が低下するのを防止し、40質量%以下とすることにより耐熱性が低下するのを防止する。
【0024】
〈(B)エポキシ樹脂〉
(B)成分のエポキシ樹脂としては、分子構造中にナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格及びジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも一つを有するものであれば、分子構造、分子量等に制限されることなく使用される。このようなエポキシ樹脂の具体例としては、α‐ナフトール骨格を有する多官能型エポキシ樹脂であるNC−7000L(日本化薬社製、商品名、エポキシ当量234)、β‐ナフトール骨格を有する多官能型エポキシ樹脂であるESN−175SV(東都化成社製、商品名、エポキシ当量290)、ナフタレンジオール骨格を含有する多官能型エポキシ樹脂であるESN−375(東都化成社製、商品名、エポキシ当量173)、同様にナフタレンジオール骨格を含有する4官能型エポキシ樹脂であるEXA−4700(DIC社製、商品名、エポキシ当量164)、ビフェニル骨格を有する多官能型エポキシ樹脂であるNC−3000SH(日本化薬社製、商品名、エポキシ当量291)、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能型エポキシ樹脂である(DIC社製、商品名、HP-7200HH、エポキシ当量280)等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、(B)成分以外の1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を併用することができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂等が挙げられる。
(B)成分であるエポキシ樹脂の配合割合は、熱硬化性樹脂組成物全体中10〜60質量%であることが好ましく、さらに好ましくは20〜50質量%である。配合割合を10質量%以上とすることにより耐熱性が低下するのを防止し、60質量%以下とすることにより後で述べる有機繊維との密着性が低下するのを防止する。
【0026】
〈(C)ノボラック型フェノール樹脂〉
(C)成分であるノボラック型フェノール樹脂は、上記(B)成分であるエポキシ樹脂の硬化剤として作用し、分子構造中にナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格及びジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも1種を有するものであれば、分子量等に制限されずに使用される。このようなノボラック型フェノール樹脂の具体例としては、α‐ナフトール骨格を有するクレゾールノボラック樹脂であるSN−485(新日鐵化学社製、商品名、水酸基当量215)、ナフタレンジオール骨格を含有するフェノールノボラック樹脂であるSN−395(新日鐵化学社製、商品名、水酸基当量105)、ビフェニル骨格を有するフェノールノボラック樹脂であるMEH−7851−3H(明和化成社製、商品名、水酸基当量223)、ジシクロペンタジエン骨格を含有するフェノールノボラック樹脂であるDPP-6125(新日本石油化学社製、商品名、水酸基当量185)等が挙げられる。これらのフェノール樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0027】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、(C)成分以外のフェノール樹脂を併用することができる。このようなフェノール樹脂としては、分子構造中にナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格及びジシクロペンタジエン骨格をいずれも有さないノボラック型フェノール樹脂の他、従来、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されている種々のフェノール樹脂、具体的には、クレゾールノボラック型樹脂及びフェノールノボラック型樹脂のようなフェノール又はクレゾール樹脂等を混合して使用することができる。この場合、(C)成分以外のフェノール樹脂やクレゾール樹脂は、(C)成分全体の30質量%以下とすることが好ましい。
【0028】
上記フェノール樹脂の配合量は、このフェノール樹脂が有するフェノール性水酸基数とエポキシ樹脂が有するエポキシ基数との比[フェノール性水酸基数/エポキシ基数]が0.5〜1となる範囲が好ましく、0.8〜1の範囲がより好ましい。0.5以上とすることにより耐熱性が低下するのを防止し、1以下とすることにより後で述べる有機繊維との密着性が低下するのを防止する。
【0029】
〈(D)ビスマレイミドとアミノフェノールとの付加反応物〉
(D)成分は、ビスマレイミドとアミノフェノールとを加熱反応させて得られる付加反応物である。
ビスマレイミドは、下記一般式(I)で表されるものである。
【0030】
【化3】

【0031】
一般式(I)中、R1は水素原子又はアルキル基を示し、アルキル基は直鎖、分岐鎖及び環状のものであってもよい。R2は−O−、−CH2−、−SO2−及びS−S−から選ばれる2価の有機基を示す。また、R3は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を示し、アルキル基は直鎖、分岐鎖及び環状のものであってもよい。
一般式(I)で表されるビスマレイミドの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、4,4’−ジチオビス(N−フェニルマレイミド)等を挙げることができる。
アミノフェノールは、下記一般式(II)で表されるものである。
【0032】
【化4】

【0033】
一般式(II)中、R4は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を示し、アルキル基は直鎖、分岐鎖及び環状のものであってもよい。
一般式(II)で表されるアミノフェノールの具体例としては、オルト、メタ又はパラ異性体のアミノフェノール及びアミノクレゾール、2−アミノ−4−クロロフェノール、2−アミノ−4−クロロクレゾール等の位置異性体を有するアミノクレゾール、アミノクロロフェノール及びアミノブロモフェノール等が挙げられる。
【0034】
ビスマレイミドとアミノフェノールとの加熱反応は、溶融させて加熱反応してもよく、ジオキサン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒中で加熱反応してもよい。
溶融下での加熱反応は、例えば、ビスマレイミドとアミノフェノールとを撹拌しながら温度を上昇させると100℃程度で溶融し、100〜150℃程度の温度に保持して反応させ、その後常温に冷却すると固体又は粘調の付加反応物を得ることできる。
反応させる割合は、ビスマレイミド100質量部に対して、アミノフェノールを10〜30質量部であることが好ましい。
(D)成分の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中5〜60質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましい。この範囲とすることにより、耐熱性及び密着性が安定し、レーザー加工性が向上する。
【0035】
〈(E)溶融シリカ〉
(E)成分である溶融シリカは平均粒径が0.05〜2μm、最大粒径が10μm以下であることが好ましい。このような平均粒径及び最大粒径を有するものを用いることにより、熱硬化性樹脂組成物の流動性が良好になるため好ましい。なお、上記平均粒径及び最大粒径の測定には、例えば、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いることができる。
(E)成分である溶融シリカは必要に応じて、シラン系あるいはチタン系カップリング剤等で表面処理して使用することができる。シラン系カップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン系;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン系等が挙げられる。
【0036】
この(E)成分である溶融シリカの配合割合は、熱硬化性樹脂組成物全体中20〜50質量%であることが好ましく、30〜40質量%の範囲がより好ましい。配合割合を20質量%以上とすることにより耐熱性が低下するのを防止し、50質量%以下とすることにより、後で述べる有機繊維との密着性が低下するのを防止する。
(E)成分である溶融シリカとともに、必要に応じて、合成シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコニア、タルク、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維、ガラス繊維等を単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0037】
〈添加剤〉
本発明における熱硬化性樹脂組成物には、以上の各成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、硬化促進剤、金属水酸化物やホウ酸亜鉛のような難燃剤、消泡剤、レベリング剤、その他の一般に使用される添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0038】
硬化促進剤としては、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−エニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等の有機ホスフィン化合物;1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5等のジアザビシクロアルケン化合物;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン化合物等が挙げられる。これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0039】
(樹脂溶液の調製)
本発明における熱硬化性樹脂組成物は、上述した必須成分である(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分、ならびに、必要に応じて配合される前記各種添加剤を、適当な溶剤に均一に溶解又は分散させることにより、樹脂溶液(ワニス)として調製される。
【0040】
熱硬化性樹脂組成物の溶解又は分散に用いる溶剤は、特に制限されないが、プリプレグ中に残留する量を極力少なくするために、沸点220℃以下のものが好ましく用いられる。溶剤の具体例としては、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。上記の溶剤の中でプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましく用いられる。
ワニスの固形分濃度も、特に制限されないが、低すぎるとプリプレグ中の樹脂の含浸量が少なくなり、また、高すぎると、ワニスの粘度が増大し、プリプレグの外観が不良となるおそれがあるので40〜80質量%の範囲が好ましく、より好ましくは60〜70質量%である。
【0041】
(基材)
ワニスを含浸させる基材としては、熱膨張率(JIS K7197)が負で、かつ、引張弾性率(JIS L1013)が70GPa以上の、アラミド繊維、ポリパラベンゾオキサゾール繊維、ポリアリレート繊維のような有機繊維からなる織布又は不織布が好ましい。織布の場合の織り方は、特に制限されるものではないが、平坦性の観点から、平織りが好ましい。
【0042】
上記有機繊維からなる織布又は不織布は市販されており、アラミド繊維としては、例えば、帝人テクノプロダクツ社製テクノーラ繊維を用いた旭シュエーベル製アラミド繊維織布、ケブラー(デュポン社製、商品名)を用いたアラミド繊維織布KS1020、KS1080、KS1220(カネボウ社製、商品名)等が挙げられる。また、ポリパラベンゾオキサゾール繊維としては、東洋紡社製ザイロン−ASやザイロンHM繊維を用いた旭シュエーベル製ポリパラベンゾオキサゾール繊維織布等が挙げられる。さらに、ポリアリレート繊維としては、クラレ社製ベクトランUM繊維を用いた旭シュエーベル製ポリアリレート繊維織布等が挙げられる。
【0043】
(プリプレグの製造)
本発明のプリプレグは、上記のように調製されたワニスを基材に塗付又は含浸させ、次いで、乾燥させて溶剤を除去することにより製造することができる。
プリプレグ中のワニスの含浸量は基材との合計量中、固形分として40〜70質量%となる範囲が好ましい。40質量%以上とすることにより基材中に未含浸部分が生じるのを防止し、積層板としたときにボイドやカスレが生じるのを防止する。また、70質量%以下とすることにより厚みのばらつきが大きくなって、均一な積層板やプリント配線板を得ることが困難になるのを防止する。ワニスを基材に含浸又は塗付する方法、及び、含浸又は塗付後乾燥させる方法は、特に制限されるものではなく、従来、一般に知られている方法を用いることができる。
【0044】
[金属張り積層板及びプリント配線板]
このようにして得られたプリプレグを、所要枚数積層し、加熱下で加圧することにより、本発明の積層板を製造することができる。また、所要枚数積層したプリプレグの片面又は両面に銅箔等の金属箔を重ね、加熱下で加圧することにより、本発明の金属張り積層板を製造することができる。
さらに、この金属張り積層板を常法によりエッチング加工してシリコンチップのような半導体チップを積層することにより本発明のプリント配線板を製造することができる。積層板及び金属張り積層板を製造する際の加熱及び加圧条件は、特に制限されるものではないが、通常、170〜200℃程度の温度、5〜50MPa程度の圧力、時間90〜150分程度である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において「部」は「質量部」を表わす。
【0046】
[(D)付加反応物の製造]
4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド 1000部と、m−アミノフェノール 183部とを混合し、撹拌させながら100℃にて溶融させた後、130℃に昇温し60分間保持して加熱反応した。その後、常温まで冷却させ固体の付加反応物を製造した。
この付加反応物を粉砕し、付加反応物1000部に、N−メチル−2−ピロリドン 1000部を加え付加反応物溶液を調製した。
【0047】
[ワニス調製例1]:ナフトール系
水酸基及びカルボキシル基を有するアクリル系ゴム((A)成分:ナガセケミテック社製、商品名「SG−708−6T」、固形分20質量%、数平均分子量10万)1256部、α−ナフトール骨格を有する多官能型エポキシ樹脂((B)成分:日本化薬社製 商品名「NC−7000L」、エポキシ当量234)552部、α−ナフトール骨格含有クレゾールノボラック樹脂((C)成分:新日鐵化学社製、商品名「SN−485」、水酸基当量215)113部、前記付加反応物溶液((D)成分)489部、溶融シリカ((E)成分:アドマテックス社製、商品名「SE1050」、平均粒径0.3μm、最大粒径5μm)1005部、2−エチル−4−メチルイミダゾール(以下、「2E4MZ」)8.3部からなる混合物に、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、「PGMME」)を加えて固形分65質量%のワニス1を調製した。
【0048】
[ワニス調製例2]:ビフェニル系
「SG−708−6T」((A)成分)1754部、ビフェニル骨格を有する多官能型エポキシ樹脂((B)成分:日本化薬社製、商品名「NC−3000SH」、エポキシ当量291)646部、ビフェニル骨格を有するノボラック型フェノール樹脂((C)成分:明和化成社製、商品名「MEH−7851−3H」、水酸基当量223)196部、前記付加反応物溶液((D)成分)846部、「SE1050」((E)成分)600部、「2E4MZ」9.0部からなる混合物に、溶剤として「PGMME」を加えて固形分65質量%のワニス2を調製した。
【0049】
[ワニス調製例3]
付加反応物溶液((D)成分)を加えない他はワニス調製例1と同様にワニス3を調整した。
[ワニス調製例4]
アクリル系ゴム((A)成分)を加えない他はワニス調製例1と同様にワニス4を調整した。
[ワニス調製例5]
溶融シリカ((E)成分)を加えない他はワニス調製例1と同様にワニス5を調整した。
【0050】
[ワニス調製例6]
付加反応物溶液((D)成分)の代わりに、ポリイミド樹脂(シロキサン骨格含有、宇部興産社製、商品名「UPA−83」)250部を使用する他はワニス調製例1と同様にワニス6を調整した。
[ワニス調製例7]
付加反応物溶液((D)成分)の代わりに、ポリアミドイミド樹脂(日立化成工業社製、商品名「KS9005」)840部を使用する他はワニス調製例1と同様にワニス7を調整した。
【0051】
[ワニス調製例8]
水酸基及びカルボキシル基を有するアクリル系ゴム((A)成分:ナガセケミテック社製、商品名「SG−708−6T」、固形分20質量%、数平均分子量10万)1210部、α−ナフトール骨格を有する多官能型エポキシ樹脂((B)成分:日本化薬社製 商品名「NC−7000L」、エポキシ当量234)552部、イミド変性ノボラック樹脂((C)成分:明和化成社製、商品名「MEH−8205」、水酸基当量146)344部、溶融シリカ((E)成分:アドマテックス社製、商品名「SE1050」、平均粒径0.3μm、最大粒径5μm)968部、「2E4MZ」8.3部からなる混合物に、溶剤として「PGMME」を加えて固形分65質量%のワニス8を調製した。
【0052】
[実施例1−1〜3−2][比較例1−1〜3−7]
表1〜3に示す組み合わせのとおり、ワニス調製例で調整したワニス1〜8を、旭シュエーベル製アラミド繊維織布(61g/m2、熱膨張率−5ppm/℃、弾性率70GPaである帝人テクノプロダクツ社製テクノーラ繊維を使用)、旭シュエーベル製ポリアリレート繊維織布(61g/m2、熱膨張率−6ppm/℃、弾性率106GPaであるクラレ社製ベクトランUM繊維(液晶ポリマー繊維)を使用)、旭シュエーベル製ポリパラベンゾオキサゾール繊維織布(64.5g/m2、熱膨張率−6ppm/℃、弾性率270GPaである東洋紡社製ザイロンHM繊維を使用)、あるいはユニチカ製Eガラス繊維織布(54g/m2、商品名 E06CSK)にそれぞれ含浸後、乾燥することにより樹脂含浸量65質量%のプリプレグを得た。
【0053】
得られたプリプレグを8枚重ね合わせてその上下に厚さ18μmの銅箔を重ね、ステンレス板で挟み、190℃、4MPaで130分間加熱下で加圧して銅張り積層板を得た。
この銅張り積層板の銅箔をエッチングして作製したプリント基板のXY方向(基板の平面方向)及びZ方向(基板の厚さ方向)の線膨張率、銅箔引き剥がし強度(ピール強度)、ハンダ耐熱性及び耐ミーズリング性の試験を行なった。
また、厚さ0.03mmの試験用シリコンチップをC4工法で積層板に実装し、気相冷熱衝撃試験を行い、スルーホールの接続信頼性、チップとの接続信頼性を試験するとともに、プリプレグ粉落ち、プリント配線板歩留及びレーザー加工性を調べた。
【0054】
上記各物性の測定方法は以下の通りである。
(1)線膨張率
銅箔をエッチング後、X方向(織布の機械搬送方向)及びY方向(織布の幅方向)、Z方向(織布の厚み方向)の各熱膨張率を、セイコーインスツルメンツ社製の熱機械分析装置TMA/SS6000(商品名)を用いて、TMA法により、窒素雰囲気下、5℃/分の昇温条件において測定した。また、同様にして、プリプレグのX方向及びY方向の各熱膨張率を測定した。
【0055】
(2)銅箔引き剥がし強度(ピール強度)
JIS C 6481に準じて測定した。
(3)ハンダ耐熱性
280℃、288℃の各半田浴に10分間試料を浮かべて膨れの有無を観察し、次の基準で評価した。
◎:膨れなし、×:膨れ有り
(4)耐ミーズリング性
121℃、2気圧の飽和水蒸気中で、5時間の耐湿処理を行った後、260℃の半田浴に30秒間浸漬して膨れの有無を観察し、次の基準で評価した。表中の「PCT2時間」はプレッシャークッカーテストを意味する。
◎:良好、○:やや不良、×:不良
(5)スルーホールの接続信頼性
0.5mmφのドリルで穴明け後、スルーホールメッキ及び回路形成を行い、連続500穴のテストサンプルを作製し、このテストサンプルに、25℃×30秒〜260℃×10秒、200サイクルの液相衝撃試験を行い、次の基準で導通信頼性を評価した。
◎:良好、△:やや不良、×:不良
(6)チップとの接続信頼性
パターン形成した銅張積層板に、0.03mm□の試験用シリコンチップをC4工法でフリップチップ実装し、気相冷熱衝撃試験(−55℃と150℃の間で加熱、冷却を1000回繰り返し)を行い、次の基準で導通信頼性を評価した。
○:良好、△:やや不良、×:不良
【0056】
(7)プレプリグ粉落ち
プレプリグ表面に付着している粉末をセロテープ(登録商標)で脱離させ、その付着レベルを判定した。
○:付着粉がほとんどない
×:付着粉が多い
(8)プリント配線板歩留
上記(6)の試験に用いた銅張積層板にパターンを形成させた基板の回路形成による外観歩留を確認した。回路にショート又は断線のないものを良とし、それらのあるものを不良とした。基板500枚を判定し、良品率(%)で判定した。
○:良品率が90%以上
×:良品率が70%未満
(9)レーザー加工性
銅張積層板の表裏面にレーザーシートを貼り付け、炭酸ガスレーザーを用い、穴径0.1mmのスルーホール加工を施し、メッキ処理後の穴の断面観察を実施した。
穴の形状のレベルを次の基準で評価した。
○:えぐれ発生なし
△:えぐれ発生小
×:えぐれ発生大
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のプリプレグ及び金属張り積層板は、レーザー加工性が良好で、吸湿下での耐熱性が高く、熱膨張率が小さいため、接続信頼性に優れており、プリント配線板、特にビルドアップ方式の多層プリント配線を製造する分野において極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)官能基を有するアクリル系ゴム、
(B)ナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格及びジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも一つを有するエポキシ樹脂、
(C)ナフトール骨格、ナフタレンジオール骨格、ビフェニル骨格及びジシクロペンタジエン骨格から選ばれる少なくとも1つを有するノボラック型フェノール樹脂、
(D)下記一般式(I)で表されるビスマレイミドと、下記一般式(II)で表されるアミノフェノールとを加熱反応させてなる付加反応物、及び
【化1】

(式中、R1は水素原子又はアルキル基を示し、R2は−O−、−CH2−、−SO2−及びS−S−から選ばれる2価の有機基を示し、R3は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を示す。)
【化2】

(式中、R4は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を示す。)
(E)溶融シリカ
を必須成分とする熱硬化性樹脂組成物と有機繊維で構成された織布又は不織布を基材として用いることとを特徴とするプリプレグ。
【請求項2】
(D)成分の付加反応物を熱硬化性樹脂組成物中に5〜60質量%含有することを特徴とする請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
(A)成分における官能基が水酸基及び/又はカルボキシル基である請求項1又は2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
(E)成分の溶融シリカの平均粒径が0.05〜2μm、最大粒径が10μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項5】
(A)成分のアクリル系ゴムが数平均分子量1万〜10万のものである請求項1〜4のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項6】
有機繊維が負の線膨張率を有し、かつ、弾性率が70GPa以上である請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項7】
有機繊維がアラミド繊維、ポリパラベンゾオキサゾール繊維及びポリアリレート繊維から選ばれるいずれかである請求項1〜6のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のプリプレグを加熱下で加圧成形してなる絶縁層を有し、その少なくとも一方の面に金属箔が一体化されてなる金属張り積層板。
【請求項9】
請求項8に記載の金属張り積層板及び半導体チップからなるプリント配線板。

【公開番号】特開2010−209140(P2010−209140A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53679(P2009−53679)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】