説明

ベルト駆動装置及び画像形成装置

【課題】 ベルトが接触子に乗り上げることにより蛇行制御が正常に行われなくなるのを防止し、記録紙に転写される画像の位置精度を向上するとともに、中間転写ベルトの破損を防止すること。
【解決手段】 画像形成装置1には、中間転写ベルト8の幅方向の端部に当接し、中間転写ベルト8の幅方向の位置に応じて変位する接触子202と、接触子202の位置を検知する変位センサ403が設けられており、変位センサ403の検知結果に基づき、中間転写ベルト8の幅方向の位置を制御する。また、中間転写ベルト8を幅方向に移動させるための制御を行っても、変位センサ403の出力が変動しない場合は、中間転写ベルト8が接触子202に乗り上げていると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写ベルト、定着ベルト、記録紙搬送ベルト等のベルトを駆動するベルト駆動装置、及び当該ベルト駆動装置を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置には、中間転写ベルト、定着ベルト、記録紙搬送ベルトといった様々な種類のベルトが設けられていた。
【0003】
これらのベルトは、複数のローラに懸架されて回転駆動されるが、ベルトの回転過程において、ベルトがその幅方向の一端側または他端側に寄り移動(以下、蛇行と記す)する現象が発生する傾向がある。ベルトの蛇行によって、ベルトを懸架しているローラからベルトが脱落したり、ベルトの端部が破損したりしてしまうおそれがある。
【0004】
そこで、ベルトの幅方向のエッジ位置を検出するエッジセンサを有し、エッジセンサの検出結果に基づいて、ベルトを支持するステアリングローラの傾き動作を制御してベルトの蛇行を補正するものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このエッジセンサは、ベルトの一端に接触する接触子と、当該接触子の位置変動を検出する変位センサを有し、ベルトの蛇行を連続的に検出する。
【特許文献1】特開2000−034031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなエッジセンサを有する画像形成装置では、作業者がベルトを交換する際に、接触子がベルトの端部に接触しない状態、例えば、接触子にベルトが乗り上げた状態でベルトを装着されてしまうことがあった。
【0007】
図10は、エッジセンサの接触子へのベルトの乗り上げ状態を説明するための図である。
【0008】
図10(a)の点線で示されるように、中間転写ベルト8は、ステアリングローラ10、ベルト駆動ローラ11、及び回転ローラ21によって支持され、適度な張力がかけられている。また、図4(a)に示されるように、中間転写ベルト8の端部には、中間転写ベルト8の幅方向の移動量を検出するための接触子202が適度の力で圧接されている。
【0009】
ここで、作業者が中間転写ベルト8を交換する際には、ステアリングローラ10を図10(a)の矢印方向に移動させることで、実線に示されるように中間転写ベルト8が弛み、ベルトの交換がし易くなる。この際、中間転写ベルト8の弛みが大きいために、中間転写ベルト8の端部が接触子202から外れる。
【0010】
中間転写ベルト8の交換後、再度ステアリングローラ10を戻して中間転写ベルト8に張力をかける際に、作業者は、接触子202を中間転写ベルト8の端部側に退避させる。この退避がうまく行われない場合、図4(b)及び図10(b)に示されるように、接触子202が中間転写ベルト8の端部に接触せず、中間転写ベルト8が接触子202の先端に乗り上げた状態になる。
【0011】
この場合、正常なベルト蛇行制御が行われないために、記録紙に転写される画像の位置精度が低下したり、長時間の使用により接触子202と中間転写ベルト8が擦れて中間転写ベルト8が破損したりするといった問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、ベルトが接触子に乗り上げることにより蛇行制御が正常に行われなくなるのを防止することで、記録紙に転写される画像の位置精度を向上するとともに、ベルトの破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係るベルト駆動装置は、所定方向に回転移動するベルトと、前記ベルトの前記所定方向に直交する幅方向の端部に当接し、前記ベルトの前記幅方向の位置に応じて変位する接触子と、前記接触子の位置を検知するセンサと、前記センサの検知結果に基づき、前記幅方向の前記ベルトの位置を制御する制御手段と、前記ベルトに異常があった場合、その旨を報知する報知手段と、を有し、前記制御手段は、前記ベルトを前記幅方向に移動させるための制御を行ったときの前記センサの検知結果に基づいて、前記ベルトが前記接触子に乗り上げているかどうかを判断することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る画像形成装置は、前記ベルト駆動装置と、記録紙に画像を形成する画像形成手段と、を有し、前記ベルトは、中間転写ベルト、定着ベルト、又は記録紙搬送ベルトであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ベルトが接触子に乗り上げることにより蛇行制御が正常に行われなくなるのを防止でき、記録紙に転写される画像の位置精度を向上するとともに、中間転写ベルトの破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、ベルト駆動装置を備えた画像形成装置の全体構成を示す断面図である。
【0018】
画像形成装置1は、記録紙に画像形成する電子写真方式のフルカラープリンタである。画像形成装置1には、4色の感光ドラム2a〜2d、帯電器3a〜3d、クリーナ4a〜4d、レーザ走査ユニット5a〜5d、転写ブレード6a〜6d、現像ユニット7a〜7d、中間転写ベルト8、及びクリーナ12が設けられている。また、画像形成装置1には、中間転写ベルト8を支持するステアリングローラ10、及び中間転写ベルト8を所定方向に回転移動させるベルト駆動ローラ11が設けられている。
【0019】
手差しトレイ13にセットされた複数の記録紙Sは、ピックアップローラ14及び分離ローラ15により1枚に分離されて給紙される。一方、給紙カセット17に収納された複数の記録紙Sは、ピックアップローラ18及び分離ローラ19により1枚に分離されて給紙された後、縦パスローラ20により搬送される。
【0020】
給紙された記録紙Sは、レジローラ16でレジタイミングがとられつつ二次転写ローラ22へ搬送される。ここで、記録紙Sを搬送するための各ローラ14、15、16、18、19、20は、高速で安定した搬送動作を実現するため、各々独立したステッピングモータにより駆動される。
【0021】
一方、帯電器3a〜3dは、感光ドラム2a〜2dの表面を一様に帯電させる。そして、半導体レーザを光源とする各々のレーザ走査ユニット5a〜5dは、各色の感光ドラム2a〜2dにレーザを照射することで、それぞれの感光ドラム2a〜2dの表面に静電潜像を形成する。現像器7a〜7dは、この静電潜像をトナー画像として現像する。
【0022】
次に、転写ブレード6a〜6dは、この感光ドラム2a〜2d上に現像された各色のトナー画像を中間転写ベルト8に転写する。中間転写ベルト8上のトナー画像は、回転ローラ21及び二次転写ローラ22のニップ部において記録紙に転写される。そして、加熱ローラを有する定着器23により、記録紙上に転写されたトナー画像に熱が加えられ、記録紙上に定着する。
【0023】
また両面印刷時には、定着器23を通過した記録紙Sは、両面反転パス27の方向に導かれた後に逆方向に搬送されて表裏を反転され、両面パス28へ搬送される。両面パス28を通った記録紙Sは、再び縦パスローラ20を搬送され、1面目と同様に2面目の画像を形成されて排紙ローラ24により排紙トレイ25へ排出される。
【0024】
図2は、中間転写ベルト8の蛇行補正制御を説明するための概略構成を示す図である。
【0025】
ベルト駆動モータ210は、中間転写ベルト8を図2で図示する矢印方向に搬送するために、ベルト駆動ローラ11を回転駆動する。ステアリングローラ10は、中間転写ベルト8の幅方向の移動変動(蛇行)を補正するためのローラである。ステアリングローラ10のベルト搬送方向下流側には、ベルトHPセンサ205とエッジセンサ203が配置されている。
【0026】
ベルトHPセンサ205は、中間転写ベルト8の裏面に貼り付けられたホームポジションマーク204を検出して、ベルト位置の基準信号(HP信号)を生成する。また、エッジセンサ203は、中間転写ベルト8の端部(エッジ)に当接するよう配置された接触子202の移動量(変位)を検知して、中間転写ベルト8の蛇行に応じた出力信号を発生する。
【0027】
エッジセンサ203の検知結果に応じて、中間転写ベルト8の幅方向への位置変動を検知でき、この位置変動に基づいて、ステアリングローラ10の傾き動作が制御される。これにより、中間転写ベルト8の蛇行を補正することが可能となる。
【0028】
なお、ベルト駆動モータ210及びステアリングモータ209には、その回転角度や回転速度を高精度に制御可能なステッピングモータが用いられる。
【0029】
図3は、中間転写ベルトの蛇行補正の原理を説明するための図である。
【0030】
この図の左から、偏心カム208の正面図、偏心カム208及びステアリングローラ10の側面図、ステアリングローラ10の正面図を示す。
【0031】
図3(a)に示されるように、偏心カム208が所定の角度で停止し、その停止角度に対応してステアリングローラ10がほぼ水平(傾きがほぼゼロ)に保持された状態では、基本的には中間転写ベルト8が幅方向に移動(蛇行)しない。
【0032】
この状態から、図3(b)に示されるように、ステアリングモータ209の駆動により偏心カム208を回転させると、偏心カム208の偏心量に応じて揺動アーム206がθ1方向に揺動する。これにより、ステアリングローラ10の一端が揺動アーム206によって持ち上げるため、その持ち上げ量に応じてステアリングローラ10に傾きが生じる。このとき、ステアリングローラ10に巻き付けられた中間転写ベルト8は、揺動アーム206にて持ち上げられたローラ端側に移動する。
【0033】
これに対して、図3(c)に示されるように、ステアリングモータ209の駆動により偏心カム208を回転させると、偏心カム208の偏心量に応じて揺動アーム206がθ2方向に揺動する。これにより、ステアリングローラ10の一端が揺動アーム206によって押し下げられるため、その押し下げ量に応じてステアリングローラ10に傾きが生じる。このとき、ステアリングローラ10に巻き付けられた中間転写ベルト8は、揺動アーム206にて押し下げられたローラ端と反対側に移動する。
【0034】
このことから、中間転写ベルト8の幅方向への位置変動をエッジセンサ203で連続的に検出し、その検出結果に基づいてステアリングローラ10の傾き動作を制御することにより、中間転写ベルト8の蛇行を補正することが可能となる。
【0035】
図4は、エッジセンサの具体的な構成を示す図である。
【0036】
ここで、図4(a)は、中間転写ベルト8の端部に接触子202が正常に圧接されている状態を示している。また、図4(b)は、中間転写ベルト8の端部に接触子202が圧接されずに、中間転写ベルト8が接触子202に乗り上げている状態を示している。
【0037】
図4(a)に示されるように、接触子202の一方の端部は、スプリング401からの引っ張り力を受けて中間転写ベルト8の端部に圧接状態に保持されている。スプリング401による接触子202の圧接力は、中間転写ベルト8を変形させない程度の適度な大きさに設定されている。
【0038】
また、接触子202の中間部は、支軸402によって回転自在に支持されている。そして、変位センサ403は、接触子202の他方の端部側に対向して配置されている。変位センサ403は光学式のセンサであり、接触子202光を照射するとともに、接触子202から反射した光を受光し、受光光量に応じて接触子202の変位を検知する。
【0039】
エッジセンサ203により、中間転写ベルト8の進行方向に対して直交する幅方向の移動量が、中間転写ベルト8の端部に圧接する接触子202の動きに置き換えられる。このとき、接触子202の変位に応じて変位センサ403の出力レベルが変動するため、そのセンサ出力に基づいて中間転写ベルト8の端部の位置変動を連続的に検出することができる。
【0040】
一方、図4(b)に示されるように、接触子202が中間転写ベルト8の端部に接触せず、中間転写ベルト8が接触子202に乗り上げた状態では、エッジセンサ203は中間転写ベルト8の位置変動を正確に検出できない。
【0041】
この図の例のように、接触子202は、変位センサ403の出力が正常値を示す適当な位置に留まってしまうことになる。これは、中間転写ベルト8が、ステアリングローラ10、ベルト駆動ローラ11、及び回転ローラ21により適度な張力で支持されているため、その力によって接触子202の先端より支軸402に向かって力が加えられるからである。
【0042】
この乗り上げ状態では、エッジセンサ203は異常を検出できず、通常通り中間転写ベルト8が駆動され続けることになる。
【0043】
図5は、画像形成装置の制御ブロック図である。
【0044】
制御部501は、CPU502、ROM503、及びRAM504を有する。CPU502は、画像形成装置1全体を制御する制御回路である。ROM503には、画像形成装置1で実行する各種処理を制御するための制御プログラムが格納されている。
【0045】
RAM504は、CPU502が動作するためのシステムワークメモリであり、また画像データを一時記憶するための画像メモリとしても機能する。ハードディスクドライブ(HDD)505には、システムソフトウェア、画像データ等のデータが格納されている。
【0046】
HDD505には、中間転写ベルト8が固有にもつエッジプロファイルデータPが、予めホームポジションマーク204の位置を基準に順番に格納されている。エッジプロファイルデータPは、中間転写ベルト8の接触子202が当接する側の端部の形状データを示す。
【0047】
制御部501において、CPU502は、ベルトHPセンサ205から入力されるHP信号に基づいて、HDD505にアクセスしてエッジプロファイルデータPを読み出す。このプロファイルデータPの読み出しは、所定間隔で順次行われる。
【0048】
また、CPU502は、中間転写ベルト8の回転移動中に、ベルトHPセンサ205から入力されるHP信号に基づいて、エッジセンサ203からエッジデータEをエッジプロファイルデータPと同じ間隔で取り込む。そして、CPU502は、順次読み出したエッジプロファイルデータPと取り込んだエッジデータEから、中間転写ベルト8の蛇行量に相当する位置変化量(以下、変位と呼ぶ)を算出する。
【0049】
さらに、CPU502は、算出した中間転写ベルト8の変位に応じて、蛇行が減少するようステアリングモータ209に対して駆動方向と駆動量からなるステアリング制御信号を出力して、ステアリングモータ209を駆動する。また、CPU502は、中間転写ベルト8の変位に対応したステアリングデータSをRAM504へ格納する。
【0050】
CPU502は、ベルトHPセンサ205からHP信号が入力されたことに応じて、所定時間経過後にエッジプロファイルデータPとステアリングデータSを取得して、エッジプロファイルデータPとステアリングデータSを用いた所定の演算を行う。そして、CPU502は、RAM504に演算データを格納する。この演算とRAM504への格納は、エッジプロファイルデータPが読み出される間隔と同様の所定間隔で順次行われる。
【0051】
CPU502は、新たにHP信号が入力されると、RAM504に格納した中間転写ベルト8の1周分の演算データを取り出して演算し、中間転写ベルト8が接触子202に乗り上げているか否かを判断する。
【0052】
乗り上げている場合は、CPU502は、表示部506に対して中間転写ベルト8の乗り上げ信号を出力する。表示部506は、当該乗り上げ信号を入力すると、ユーザに対してベルトの乗り上げを示す情報を表示する。
【0053】
図6は、第1の実施形態に係るベルト乗り上げ検知を説明するための図である。
【0054】
図6(a)は、図4(a)に示されるように正常に中間転写ベルト8のエッジが接触子202に圧接されている場合の蛇行補正特性を示している。また、図6(b)は、図4(b)に示されるように中間転写ベルト8が接触子202に乗り上げている場合の蛇行補正特性を示している。
【0055】
まず、正常時の蛇行補正特性から説明する。図6(a)の上段は、中間転写ベルト8の1周分のエッジプロファイルデータPの特性である。エッジプロファイルデータPは、個々の中間転写ベルト8で異なる固有のエッジ形状データで、予め形状データが測定されてHDD505に格納されている。
【0056】
CPU502は、中間転写ベルト8の駆動の開始とともに蛇行制御を開始すると、ベルトHPマークに同期してエッジプロファイルデータPをHDD505から読み出し、同時にエッジセンサ203よりエッジデータEを取得する。CPU502は、エッジプロファイルデータPとエッジデータEから、中間転写ベルト8の移動量H(以下、変位と呼ぶ)を算出する。ここで、変位Hは、H=P−Eで表される。
【0057】
また、CPU502はステアリングデータSを算出する。ステアリングデータSは、算出された変位Hを用いて、S=α・Hで表される。ここで、αはベルト変位に対する蛇行補正のゲインであり一定である。
【0058】
CPU502は、算出したステアリングデータSに相当する偏心カムの回転位置θnと、現在のカム回転位置θo(前回算出されたステアリングデータSに相当する)の差分θn−θoを算出する。そして、CPU502は、偏心カム208をθn−θo回転させるようステアリングモータ209へステアリング制御信号を出力する。これに応じて、ステアリングモータ209が制御されて、中間転写ベルト8の変位Hが0になる方向に揺動アーム206が動き、ステアリングローラ10が傾く。
【0059】
上記のようなステアリングモータ209の制御を所定間隔で繰り返し行うことで、中間転写ベルト8の変位が0に収束する。そして、最終的にエッジデータEは、図6(a)の中段に示される特性になり、ステアリングデータSは、図6(a)の下段に示される特性になる。
【0060】
次に、ベルト乗り上げ時の蛇行補正特性について説明する。エッジプロファイルデータP及びエッジデータEの取得、ステアリング制御信号の算出、及びステアリングモータ209の制御は図6(a)の正常時と同様である。
【0061】
図6(b)上段のエッジプロファイルデータPの特性も、正常時の特性と同じであり、予めHDD505に格納されたデータである。ベルト乗り上げ時は、図6(b)中段のエッジデータE及び図6(b)下段のステアリングデータSの特性が、図6(a)の正常時と異なる。
【0062】
ベルト乗り上げ時は、エッジセンサ203で中間転写ベルト8のエッジを正確に検出できなくなり、また中間転写ベルト8に加えられる張力で接触子202の長さ方向に力を受けているため、支軸402を中心としたフラグの動きが規制される。そのため、エッジデータEは、図6(b)の中段に示されるように正常時と比べて変化量が少なくなる。また、ステアリングデータSは、逆に正常時と比べて変化量が大きくなり、エッジプロファイルデータPと同様の特性になる。
【0063】
図7は、第1の実施形態に係る蛇行補正制御を説明するフローチャートである。
【0064】
このフローチャートを実行するためのプログラムは、ROM503に記憶されており、CPU502により読み出されることにより実行される。
【0065】
まず、CPU502は、ベルトHPセンサ205からベルトHP信号が入力されたかどうかを判断する(S701)。ベルトHP信号が入力された場合は、CPU502は、番地Xを1に初期化する(S702)。一方、ベルトHP信号が入力されない場合は、番地Xの初期化は行われない。
【0066】
そして、CPU502は、番地Xに対応するエッジデータEをエッジセンサ203から取得する(S703)。また、CPU502は、番地Xに対応するエッジプロファイルデータPをHDD505から取得する(S704)。
【0067】
ここで得られたエッジデータE及びエッジプロファイルデータPに基づいて、CPU502は、ステアリングデータSを算出する(S705)。具体的には、CPU502は、中間転写ベルト8の変位HをH=P−Eの計算式で求めた上で、ステアリングデータSをS=α・Hの計算式で求める。
【0068】
そして、CPU502は、算出したステアリングデータSに基づき、ステアリングモータ209を駆動する(S706)。具体的には、CPU502は、算出したステアリングデータSに相当する偏心カムの回転位置θnと、現在のカム回転位置θo(ステアリングデータSX−1に相当する偏心カムの回転位置)の差分θn−θoを算出する。そして、CPU502は、偏心カム208をθn−θo回転させるようステアリングモータ209へステアリング制御信号を出力する。これに応じて、ステアリングモータ209が制御されて、中間転写ベルト8の変位Hが0になる方向に揺動アーム206が動き、ステアリングローラ10が傾く。
【0069】
その後、CPU502は、画像形成動作の終了等で、蛇行補正制御を停止するかどうかを判断する(S707)。蛇行補正制御を停止しない場合は、CPU502は、番地Xに1を加算する(S708)。
【0070】
そして、ステッピングモータであるベルト駆動モータ210が所定のステップ数回転するまで待ってから(S709)、前述のステップS701に戻る。すなわち、ベルト駆動モータ210が所定のステップ数回転するごとに上記の制御が繰り返されることになる。一方、蛇行補正制御を停止する場合は、CPU502は、本制御フローを終了する。
【0071】
図8は、第1の実施形態に係るベルト乗り上げ検知動作を説明するフローチャートである。
【0072】
このフローチャートを実行するためのプログラムは、ROM503に記憶されており、CPU502により読み出されることにより実行される。本制御フローは、中間転写ベルト8の交換がされた場合等、中間転写ベルト8が接触子202に乗り上がってしまう可能性の有る場合に実行される。
【0073】
まず、CPU502は、ベルトHPセンサ205からベルトHP信号が入力されたかどうかを判断する(S801)。ベルトHP信号が入力された場合は、CPU502は、番地Xを1に初期化する(S802)。一方、ベルトHP信号が入力されない場合は、番地Xの初期化は行われない。
【0074】
次に、CPU502は、番地Xが100に到達したかどうかを判断する(S803)。これは、所定数(本実施形態では100個)のデータをサンプリングするために、当該所定数に達したかどうかを判断している。
【0075】
番地Xが100に到達していない場合は、CPU502は、番地Xに対応するエッジデータEをエッジセンサ203から取得する(S804)。また、CPU502は、番地Xに対応するエッジプロファイルデータPをHDD505から取得する(S805)。
【0076】
ここで得られたエッジデータE及びエッジプロファイルデータPに基づいて、CPU502は、ステアリングデータSを算出する(S806)。具体的な算出方法は、前述のステップS705で説明したので省略する。また、CPU502は、算出したステアリングデータSに基づき、ステアリングモータ209を駆動する(S807)。具体的な駆動方法は、前述のステップS706で説明したので省略する。
【0077】
そして、CPU502は、ステアリングデータSとエッジプロファイルデータPの比率Wを算出する(S808)。具体的には、下記の数式により比率Wを算出する。
【0078】
【数1】

【0079】
その後、CPU502は、番地Xに1を加算し(S809)、前述のステップS801に戻る。
【0080】
一方、ステップS803において、番地Xが100に到達したと判断された場合は、CPU502は、ステアリングデータSの絶対値の平均値であるSAVEを算出する(S810)。平均値SAVEは蛇行補正の制御精度を表し、平均値SAVEが大きいほど制御精度が低いことを示す。具体的には、下記の数式により平均値SAVEを算出する。
【0081】
【数2】

【0082】
また、CPU502は、比率Wの偏差εを算出する(S811)。偏差εは、エッジプロファイルデータPとステアリングデータSの比例関係を表し、偏差εが小さいほど比例関係が強いことを示している。具体的には、下記の数式により比率Wの偏差εを算出する。
【0083】
【数3】

【0084】
次に、CPU502は、算出した平均値SAVE及び偏差εに基づき、接触子202が中間転写ベルト8の端部に接触していないかどうか、すなわち、中間転写ベルト8が接触子202に乗り上がっているかどうかを判断する(S812)。
【0085】
ここで、中間転写ベルト8が接触子202に乗り上がっている場合は、ステアリングデータSの変動が大きくなることから、ステアリングデータSの絶対値の平均値SAVEは大きな値となる。一方、エッジプロファイルデータPとステアリングデータSは同じような特性になることから、比率Wの偏差εは小さな値となる。そこで、例えば、SAVE≧3、かつ、ε≦0.3の場合に、CPU502は中間転写ベルト8が接触子202に乗り上がっていると判断する。
【0086】
中間転写ベルト8が接触子202に乗り上がっていると判断された場合は、CPU502は、表示部506に中間転写ベルト8が乗り上がっている旨のメッセージを表示し(S813)、このフローを終了する。
【0087】
また、ステップS812において、中間転写ベルト8が接触子202に乗り上がっていないと判断された場合は、CPU502は、表示部506にメッセージを表示することなくこのフローを終了する。
【0088】
以上で説明したように、本実施形態によれば、中間転写ベルト8の乗り上げをユーザに通知し、メンテナンスを促すことで、中間転写ベルト8が接触子202に乗り上げることにより蛇行制御が正常に行われなくなるのを防止できる。これによって、記録紙に転写される画像の位置精度を向上するとともに、中間転写ベルトの破損を防止することができる。
【0089】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0090】
第1の実施形態では、中間転写ベルト8の乗り上げ検知を、ステアリングデータSとエッジプロファイルデータPとを用いて行っていたが、第2の実施形態では、エッジデータEとエッジプロファイルデータPとを用いて行う。なお、第1の実施形態と同一ないし相当する部材には同一符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0091】
図9は、第2の実施形態に係るベルト乗り上げ検知動作を説明するフローチャートである。
【0092】
このフローチャートを実行するためのプログラムは、ROM503に記憶されており、CPU502により読み出されることにより実行される。本制御フローは、中間転写ベルト8の交換がされた場合等、中間転写ベルト8が接触子202に乗り上がってしまう可能性の有る場合に実行される。
【0093】
第2の実施形態においては、ステアリングデータSとエッジプロファイルデータPの比率Wを算出する代わりに、エッジデータEとエッジプロファイルデータPの比率Txを算出するものである。なお、ステップS901〜S907については、前述のステップS801〜S807と同様であるので説明を省略する。
【0094】
CPU502は、エッジデータEとエッジプロファイルデータPを取得した後、エッジデータEとエッジプロファイルデータPの比率Txを算出する(S908)。具体的には、下記の数式により比率Txを算出する。
【0095】
【数4】

【0096】
その後、CPU502は、番地Xに1を加算し(S909)、ステップS901に戻る。
【0097】
一方、ステップS903において、番地Xが100に到達したと判断された場合は、CPU502は、比率Txの平均値であるTXAVEを算出する(S910)。平均値TXAVEはエッジプロファイルの再現性を表しており、平均値TXAVEが小さいほどエッジプロファイルの再現性が低く、蛇行補正が正常に行われていないか、もしくは接触子202が規制等を受けてうまく動けない場合を示す。具体的には、下記の数式により平均値TXAVEを算出する。
【0098】
【数5】

【0099】
また、CPU502は、比率Tの偏差εを算出する(S911)。偏差εは、エッジプロファイルデータPとエッジデータEの比例関係を表し、偏差εが小さいほど比例関係が強いことを示している。具体的には、下記の数式により比率Tの偏差εを算出する。
【0100】
【数6】

【0101】
次に、CPU502は、算出した比率T及び偏差εに基づき、接触子202が中間転写ベルト8の端部に接触していないかどうか、すなわち、中間転写ベルト8が接触子202に乗り上がっているかどうかを判断する(S912)。
【0102】
ここで、中間転写ベルト8が接触子202に乗り上がっている場合は、エッジデータEはあまり変動が無いにもかかわらずステアリングデータSの変動が大きくなることから、比率Txの平均値であるTXAVEは大きな値となる。一方、エッジプロファイルデータPとエッジデータEは異なる特性になることから、比率Tの偏差εは小さな値となる。そこで、例えば、TXAVE≦0.5、かつ、ε≧0.3の場合に、CPU502は中間転写ベルト8が接触子202に乗り上がっていると判断する。
【0103】
その後のステップS912〜S913については、前述のステップS812〜S813と同様であるので説明を省略する。
【0104】
以上で説明したように、第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
なお、上記の説明では、ベルトとして中間転写ベルトを例に説明したが、これに限られない。例えば、定着ベルト、記録紙搬送ベルト等の蛇行補正制御及びベルト乗り上げ検知動作に、本発明を適用してもかまわない。
【0106】
また、上記の説明では、ベルトの乗り上げ状態を報知する方法として、表示部にメッセージを出すことを例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、音声でユーザに報知する等してもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】ベルト駆動装置を備えた画像形成装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】中間転写ベルトの蛇行補正制御を説明するための概略構成を示す図である。
【図3】中間転写ベルトの蛇行補正の原理を説明するための図である。
【図4】エッジセンサの具体的な構成を示す図である。
【図5】画像形成装置の制御ブロック図である。
【図6】第1の実施形態に係るベルト乗り上げ検知を説明するための図である。
【図7】第1の実施形態に係る蛇行補正制御を説明するフローチャートである。
【図8】第1の実施形態に係るベルト乗り上げ検知動作を説明するフローチャートである。
【図9】第2の実施形態に係る蛇行補正制御を説明するフローチャートである。
【図10】エッジセンサの接触子へのベルトの乗り上げ状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0108】
1 画像形成装置
8 中間転写ベルト
10 ステアリングローラ
11 ベルト駆動ローラ
202 接触子
203 エッジセンサ
205 ベルトHPセンサ
209 ステアリングモータ
210 ベルト駆動モータ
403 変位センサ
501 制御部
502 CPU
503 ROM
504 RAM
505 HDD
506 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に回転移動するベルトと、
前記ベルトの前記所定方向に直交する幅方向の端部に当接し、前記ベルトの前記幅方向の位置に応じて変位する接触子と、
前記接触子の位置を検知するセンサと、
前記センサの検知結果に基づき、前記幅方向の前記ベルトの位置を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記ベルトを前記幅方向に移動させるための制御を行ったときの前記センサの検知結果に基づいて、前記ベルトが前記接触子に乗り上げているかどうかを判断することを特徴とするベルト駆動装置。
【請求項2】
前記制御手段により前記ベルトが前記接触子に乗り上げていると判断された場合、その旨をユーザに報知する報知手段を更に有することを特徴とする請求項1記載のベルト駆動装置。
【請求項3】
前記ベルトは、複数のローラにより支持され、
前記制御手段は、前記複数のローラのうち、いずれか1つのローラの軸を傾けることにより、前記幅方向の前記ベルトの位置を制御することを特徴とする請求項2記載のベルト駆動装置。
【請求項4】
前記ベルトの前記接触子が当接する側の端部の形状データを示すエッジプロファイルデータを記憶する記憶手段を更に有し、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された前記エッジプロファイルデータと、前記ローラの軸を傾けて前記ベルトの前記幅方向の位置を補正するためのデータであるステアリングデータとに基づき、前記ベルトが前記接触子に乗り上げているかどうかを判断することを特徴とする請求項3記載のベルト駆動装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ベルトを回転駆動させつつ前記ステアリングデータの所定数のサンプリングを行い、前記所定数の前記ステアリングデータの絶対値の平均値を算出するとともに、前記ステアリングデータと前記エッジプロファイルデータの比率の偏差を算出し、算出した前記平均値と前記偏差とに基づいて、前記ベルトが前記接触子に乗り上げているかどうかを判断することを特徴とする請求項4記載のベルト駆動装置。
【請求項6】
前記ベルトの前記接触子が当接する側の端部の形状データを示すエッジプロファイルデータを記憶する記憶手段を更に有し、
前記制御手段は、前記記憶手段に記憶された前記エッジプロファイルデータと、前記ベルトの回転移動中に前記センサの出力により得られるエッジデータとに基づき、前記ベルトが前記接触子に乗り上げているかどうかを判断することを特徴とする請求項2記載のベルト駆動装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記ベルトを回転駆動させつつ前記エッジデータの所定数のサンプリングを行い、前記所定数の前記エッジデータと前記エッジプロファイルデータの比率の平均値を算出するとともに、前記平均値の偏差を算出し、算出した前記平均値と前記偏差とに基づいて、前記ベルトが前記接触子に乗り上げているかどうかを判断することを特徴とする請求項6記載のベルト駆動装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のベルト駆動装置と、
記録紙に画像を形成する画像形成手段と、を有し、
前記ベルトは、中間転写ベルト、定着ベルト、又は記録紙搬送ベルトであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−145655(P2010−145655A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321627(P2008−321627)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】