説明

ポリプロピレンフィルムの製造方法

本発明は、少なくとも1つの層を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法に関し、該ポリプロピレンフィルムは、プロピレンポリマーB、および、1回再利用されたプロピレンポリマーで構成されている。本フィルムは、キャパシタで用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの層を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法、および、それらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(BOPPフィルム)は、それらの優れた性能特性のために多様な包装用途で用いられている。これらの優れた性能特性とは、例えば高い機械的強度、優れた寸法安定性、および、見た目のよさである。包装フィルムとしてのそれらの使用の他にも、大量のBOPPフィルムが技術的な用途にも用いられている。このような用途としては、金属化および転写金属化、ラミネーション、および、キャパシタ製造における電気絶縁体としての使用が挙げられる。
【0003】
様々な二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法が従来技術で知られている。「テンター工程」において、BOPPフィルムは、押出し、幅広のスロットダイでの成形、および、縦方向および横方向への延伸によって生産される。
【0004】
詳細に言えば、この方法は、プロピレンポリマーを押出機で圧縮し、加熱および融解させ、続いてフィルム各層の一枚一枚に相当する溶融物を平坦なシートダイを通って押出し、このようにして得られたフィルムを1またはそれ以上のローラーで延伸してフィルムを安定させ、フィルムを配向し、熱固定するようにして行われる。最終的にこの方法で製造された機械ローラーを加工して、顧客がすぐに使える状態のカットローラーを形成する。
【0005】
このような二軸延伸フィルムの製造方法では、製造中に例えばいわゆる縁ストリップから大量のフィルムの切れ端が生じる。縁ストリップは、フィルムの端部であり、この部分は横方向の延伸フレームのクリップによって固定されているが、横方向への延伸中に同時に延伸されない。延伸されなかった端部は、配向後のフィルムに比べてかなり厚いため、切り落とさねばならない。フィルムの種類と機械の幅によるが、縁ストリップから生じる材料損失の量は25質量%にもなる可能性がある。経済的な理由で、縁ストリップは、大量生産、引き裂き、または機械が行き来する際に生じる残ったフィルムの切れ端と共に再顆粒化して、元の供給材料に戻さなければならない。
【0006】
特に高品質のフィルム基準が要求される用途分野のいくつかにおいて、この方法で、元の供給材料と共にフィルムの切れ端を再利用することは不可能である。これは、例えばキャパシタ製造に用いられる電気絶縁膜の製造においても言えることである。これらの用途に関して、例えば低い誘電正接、高い電流抵抗、高い直流および交流耐電圧、ならびに生じ得る傷の数が最小であることのような特定の膜特性が要求される。これらの特性を得る方法の1つは、石灰質および塩素含量が低い非常に純粋なポリプロピレンを使用することである。加えてこのようなポリマーは、無機成分を少しも含んでいてはならない。当然ながら、これらの純度に関する必要条件を満たす原材料は、従来の包装のための原材料よりもかなり高価である。
【0007】
極めて純粋な原材料にフィルムの切れ端を添加すると、このような電気絶縁膜に関する高品質の必要条件が満たされなくなることが発見された。製造においてトリミングされたフィルムを連続使用すると、すでに何回も再利用された材料を含むフィルム材料が絶えず再利用回路に戻されるために、必然的に複数回再利用された材料がフィルム中に一定の割合で含まれてしまう。またすでに複数回再利用された材料は、新しいサイクルごとに繰り返して分解されて汚染するため、繰り返して再利用された材料の品質を徐々に劣化させる。材料の再利用材料部分が受けるサイクル数が多くなればなるほど、完成したフィルム中の再利用材料部分は少なくなるが、平行してこの再利用材料部分の品質は徐々に低下する。
【0008】
結果として、電気絶縁膜を製造する際に生じるフィルムの切れ端は、実際には廃棄物になり、使用されたとしても、例えば包装用フィルムの製造または吹付け成形での使用のようなあまり条件の厳しくない用途でのみ使用され得る程度である。結果として、電気的なフィルム製造におけるフィルムの切れ端に関わる経済的な損失は、かなり顕著である。
【0009】
比較的安価な原材料から製造される包装フィルム分野においてさえも、特に再利用材料部分の比率が高くなりすぎた場合、複数回再利用された材料によってフィルムの品質が損なわれる可能性がある。従って、このような場合、フィルム中の複数回再利用された材料の比率をモニターして、必要に応じて低くしなければならない。従って、この分野においても同様に、フィルム製造方法における経済性および品質を改善する方法の必要性がある。
【0010】
欧州特許EP0740993号は、端部領域がより低品質の原材料で別々に作製されている二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法を説明している。このようなフィルムの高度に純粋なプロピレンポリマーを別の押出機で再溶解し、第二の押出機からこの第二のより低品質のプロピレンポリマーと共に押出す。製造工程中に、2つの溶融物を平坦なシートダイを介して一緒に且つ同時に押出し、より低品質のプロピレンポリマーでフィルムの端部領域が形成されるように第一のプロピレンポリマー溶融物の両側に沿って第二のプロピレンポリマー溶融物を配置する。フィルムを縦方向および横方向に延伸した後、この端部領域を分離して、再度使用することもできる。
【0011】
実際には、この方法で多くの不利益が指摘されていることがわかっている。2種の異なるポリマーが、フィルム端部とフィルムとの境界で、より低品質のポリマーを分離することが難しいほど互いに混ざり合っている。フィルム本体のどちらかの端部領域がより低品質のポリマーで汚染されるため、フィルム幅全体にわたって品質が均質ではなくなるか、または、過剰に幅広の端部を切り落とさなければならず、従ってこの方法での収量が少なくなる。また、数回のサイクル後に、端部領域におけるポリマーが、新しい材料で交換しなければならないほど劣化することも見出されている。このことによっても、この方法は経済的に不利になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP0740993号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、それでもなお上述した不利益を回避した高品質の(例えば非常に純粋な)ポリプロピレンからのフィルムの製造方法への必要性がある。本方法は、特に、再利用できないフィルムの切れ端によって生じる経済的な損失を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、少なくとも1つの層を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法によって解決され、本方法は、第一の押出機内で、ポリプロピレンポリマーBを加熱および融解させ、プロピレンポリマーBの溶融物を平坦なシートダイを介して押出し、平坦なシートダイから出た溶融物を1またはそれ以上のローラーで巻き取り、それを硬化してフィルム前駆体を形成し、このフィルム前駆体を縦方向および横方向に延伸することにより、本方法は、以下を特徴とする:
A.第二の押出機内で、再利用材料部分を含まないプロピレンポリマーまたはプロピレンポリマー混合物Aを加熱および融解させること、および、
B.全ての溶融物が平坦なシートダイを介して一緒に且つ同時に押出され、かつ製造工程中に再利用材料部分を含まないプロピレンポリマーまたはプロピレンポリマー混合物Aでフィルムの端部領域が形成されるように、プロピレンポリマーまたはプロピレンポリマー混合物Aの溶融物をプロピレンポリマー溶融物Bの両側に沿って供給すること、および、
C.フィルムを縦方向および横方向に延伸した後に、プロピレンポリマーまたはプロピレンポリマー混合物Aから端部領域を切り離すこと、および、
D.第一の押出機内で、端部領域から切り離された上記材料をポリプロピレンポリマーBと混合し、この混合物を融解させ、押出し、フィルム前駆体を形成すること。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の方法によって製造されたフィルムの模式図を示す。
【図2】本発明の方法を説明する模式図を示す。
【図3】図3は、本発明に係る配置での共押出し用アダプター6の使用を示す。
【図3A】図3Aは、本発明に係る配置での共押出し用アダプター6の使用を示す。
【図4A】図4Aは、単一ノズルの原則的な構造を示す。
【図4B】図4Bは、単一ノズルの原則的な構造を示す。
【符号の説明】
【0016】
A,B ポリマー溶融物
1,2 押出機
6 共押出し用アダプター
8 スロットダイ
12 端部領域
16 溶融物の流れ
10,14 フィルム
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る方法によれば、フィルムの端部領域からの切れ端を全て再使用することができるが、このフィルムには1回よりも多く上記処理工程を経た材料が含まれない。従ってその最終産物は、未処理材料と、再利用工程を1回より多く受けていない材料のみを含む。
【0018】
本発明の目的において、未処理材料または未処理ポリマーは、これまでにフィルム製造工程で未だ用いられておらず、さらにフィルム製造のための溶融プロセス、それに続く溶融物の凝固を経験していないポリマーまたはポリマー混合物を意味することとする。ポリマー混合物についても、混合物の全ての構成要素に同じことが適用される。この意味において、ポリプロピレンポリマーBおよびポリプロピレンポリマーAはいずれも未処理ポリマーである。またポリマーAおよびポリマーBはいずれも、様々な未処理のプロピレンポリマーの混合物であり得る。
【0019】
本発明の目的において、再利用された材料とは、すでに目的に応じてフィルム製造工程で用いられ、さらにフィルム製造や場合によってはさらにその後の処理プロセスで再度融解および硬化されたポリマーまたはポリマー混合物のことである。
【0020】
本発明の目的において、複数回再利用された材料とは、フィルム製造および処理中に、合計で2回よりも多く融解および硬化された、再利用された材料のことである。
【0021】
本発明の目的において、1回再利用された材料とは、フィルム製造中に1回だけ再融解および硬化された再利用された材料のことか、または、フィルム製造中とそれに続く処理工程とで2回再融解および硬化された再利用された材料のことである。フィルム製造に1回再利用された材料が用いられる場合、当然ながらこの材料の再利用材料部分は再度融解および硬化される。
【0022】
この方法において、本発明の方法に従って製造されたフィルムは、主として未処理ポリマーBで構成され、これは実際のフィルム製造工程中に1回のみ再度融解および硬化される。さらにポリマーまたはポリマー混合物Aからの1回再利用された材料も含まれ、この部分は2回または3回の融解および硬化を経験するが、すなわち1回目はフィルム端部のストリップとしてフィルム製造工程を経た時であり、2回目は、ポリマーBと混合してフィルム生成物を製造したときであり、場合によっては3回目は、端部のストリップをトリミングして、例えば粒状物に変える加工中である。従ってポリマーAとBとの違いは、ポリマーBはフィルム中で1回融解および硬化されるが、ポリマーAはフィルム中で2回または3回融解されるという点にある。一般的に、このようなフィルムは、それぞれの場合において、フィルムの総質量に対して、ポリマーAから1回再利用された材料を0.5〜60質量%、好ましくは1〜50質量%、特に5〜40質量%含み、それに対応してポリマーBを40〜99.95質量%、好ましくは50〜99質量%含む。いずれの場合でも、ポリマーBと端部のストリップのポリマーAのいずれか、またはその両方は、様々なポリマーの混合物であってもよい。本発明によれば、このようなポリマー混合物Bの全ての部分が未処理材料であり、フィルム製造に用いられるポリマー混合物Aの全ての部分が最大でも1回しか再利用されていない。
【0023】
原則的に、本発明に係る方法において、EP0740993で説明されている方法と同様に、フィルムのためのプロピレンポリマーBとして、および、端部領域のためにプロピレンポリマーAとして、様々なポリマーが使用できる。しかしながら、EP0740993で説明されている方法とは異なり、端部領域のポリマーAは、端部の材料として使用された後にフィルム本体に組み入れられるので、原則的にはフィルム製造の必要条件を満たすように選択される。結果として、本発明に係る方法において、端部領域とフィルムとで、同じポリマー、または、少なくとも匹敵する品質を有するポリマーがで用いられることが一般的に好ましい。本発明によれば、端部領域からトリミングされた材料を再び端部の押出しに用いることはなく、その代わりに、それらをフィルムポリマーBと混合して、フィルム製造に一緒に用いることによって、フィルム本体には、未処理の原材料と、1回しか再利用されていない材料だけしか含まれないようにすることができる。
【0024】
驚くべきことに、フィルムの品質、特にその電気特性は、1回再利用された材料を添加しても機能が損なわれない。従来技術によれば、複数回再利用された材料によって電気特性の機能が損なわれるため、電気絶縁膜で再利用された材料を用いることはない。包装フィルムにおいて、過剰に多くの回数再利用された材料は、機械特性または透過性を劣化させる可能性がある。これらの欠陥は、複数回再利用された材料の比率が過剰に高いことによって引き起こされると予想されるが、それらの比率は再利用工程の回数が増加するにつれて次第に小さくなる。驚くべきことに、1回しか再利用されていない材料を添加すれば、膜特性にほんのわずかな欠陥しか生じないか、または、まったく生じない。1回しか再利用されていない材料によって引き起こされるわずかな膜特性の欠陥は、1回再利用された材料の比率を減少させることによって補うことが可能である程度の規模である。
【0025】
以下に、端部領域のポリマーAとフィルムのポリマーBのの両方にとって適切なポリマーを説明する。ただし、ポリマーAおよびBは、同じ特性を有していなくてもよい。これらは、好ましくは、同じポリマーである。従って、ポリマーAおよびポリマーBのような名称は、異なる組成物または異なるポリマー構造を示すわけではなく、一方で端部領域(ポリマーA)、および、他方でフィルム(ポリマーB)での使用の違いを示す。
【0026】
一般的に、ポリマーA/Bは、70ppm未満またはそれに等しい残留した石灰質を含み、好ましくは50ppm以下、特に40ppm以下の残留した石灰質を含み、さらに、50ppm以下、好ましくは20ppm以下の塩素含量を含む。
【0027】
一般的に、ポリマーA/Bは、ポリマー質量に対して、90〜100質量%、好ましくは95〜100質量%、特に98〜100質量%のプロピレン単位を含む。一般的に、ポリマーA/Bは、150℃またはそれより高い融点、好ましくは155〜170℃の融点を有し、230℃で測定した場合、0.5g/10分〜10g/10分のメルトフローインデックス、好ましくは0.8g/10分〜5g/10分のメルトフローインデックスを有し、さらに21.6Nの力を有する(DIN53735)。
【0028】
特に適切なポリマーA/Bは、150,000〜400,000の範囲の平均分子量Mw、好ましくは180,000〜350,000の平均分子量Mwを有する。分子量分布は、広く様々であってよく、Mw/Mnは、一般的に2〜15であり、好ましくは2〜6、特に3〜6である。
【0029】
上述のポリマーA/Bにおいて、1〜15質量%、 好ましくは1〜10質量%のn−ヘプタンに可溶性の部分、および、85%以上、 好ましくは90%以上のn−ヘプタンに不溶性の部分の連鎖アイソタチック指数を有するアイソタクチックプロピレンホモポリマーが特に好ましい。
【0030】
10質量%またはそれ未満のエチレン含量を有するエチレンとプロピレンとのコポリマー、10質量%またはそれ未満のオレフィン含量を有するC〜Cオレフィンを含むプロピレンのコポリマー、10質量%またはそれ未満のエチレン含量、および、15質量%またはそれ未満のブチレン含量を有するプロピレン、エチレンおよびブチレンのターポリマーも適切である。示された質量パーセンテージは、それぞれプロピレンポリマーに対する値である。
【0031】
本発明に係るポリプロピレンフィルムの所定の特性を改善するために、一般的に、安定剤および/または中和剤がポリマーA/Bに添加され、場合によっては核剤も添加される。好ましい実施態様において、フィルムの望ましい電気特性に関して、静電防止剤および潤滑剤は添加されるべきではなく、なぜなら添加剤はフィルムの電気特性に負の作用があるためである。以下の説明で、質量パーセント(質量%)で示された全ての量は、添加剤が添加される可能性がある層または複数の層に対する量である。
【0032】
安定剤として、ポリエチレン、プロピレンおよびその他のアルファオレフィンのポリマーを安定化する作用がある一般的な化合物が使用できる。これらが添加される量は、0.05〜2質量%である。フェノール系安定剤、アルカリ/アルカリ土類金属のステアリン酸塩、および/または、アルカリ/アルカリ土類金属の炭酸塩が特に適切である。フェノール系安定剤は、0.1〜0.6質量%、特に0.15〜0.3質量%の量であり、500g/molよりも高いモル質量を有することが好ましい。ペンタエリトリトールテトラキス−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、または、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンが特に有利である。
【0033】
中和剤は、好ましくは、0.7μm以下の平均粒度、10μmよりも小さい絶対単位の粒度、および、少なくとも40m2/gの比表面積を有する、ステアリン酸カルシウムおよび/または炭酸カルシウムである。一般的に、中和剤は、0.02〜0.5質量%の量で添加される。
【0034】
核形成剤は、有機物質であってもよく、好ましくはジベンジリデンソルビトール、または、化学修飾されたジベンジリデンソルビトール誘導体、または、ナトリウム−ビス−(4−tert−ブチルフェニル)リン酸塩である。使用可能なその他の核形成剤は、例えば、安息香酸の金属塩、好ましくは安息香酸ナトリウム、および、キナクリドンおよびキナクリドン誘導体である。また、例えばタルカム、二酸化ケイ素、または、ベントナイトのような無機の核形成剤も適切である。これに関して、核形成剤は、非常に微細に分布させることが最も重要であり、すなわち平均粒度は、1μm以下、好ましくは0.7μm以下である。
【0035】
ポリマーAおよびBが同一ではない場合、これら2種のポリマーの融点はほぼ同じであるべきであり、すなわち15℃よりも大きく異なっていないことが有利であると予想され、好ましくはその差が10℃以下であるか、または、ほぼ同じである。その上、これら2つの原材料のメルトフローインデックス(MFI)が異なる場合、これらは、一般的に、縁ストリップとフィルムとが互いにしっかりと接着するように、互いに調製されていなければならない。プロピレンポリマーAのMFIは、好ましくは、プロピレンポリマーBのMFIに比べて3倍以下の大きさの値を有するべきである。必要に応じて、これら2種のポリマーのメルトフローインデックスは等しくてもよく、または、プロピレンポリマーAのMFIは、プロピレンポリマーBよりもわずかに小さくてもよい(10%)。
【0036】
フィルム端部の厚さは、ダイ設定が一定であっても、フィルム本体の厚さを変化させることなく、ポリマーAのMFIを用いて計画的に変化させたり、または調節することも可能である。ポリマーAのMFIがポリマーBのMFIと比較して大きくなればなるほど、端部領域はより厚くなり、逆もまた同様である。この方法において、製造しようとするフィルムに関係なく、縁ストリップの厚さを最適化してもよい。これは、極めて薄いフィルムを製造する場合に特に有利である。従来の方法によれば、縁ストリップが十分に厚くなるように、端部領域のダイは比較的かなり広く開かれてなければならない。このようにすると、ダイの口先が回復不能なほど曲がってしまう危険がある。本発明の方法によれば、極めて薄い膜を製造するのに、このような極端なダイの設定はもはや必要ではない。
【0037】
本発明の方法によれば、単層または多層のフィルムを生産することができる。多層ポリプロピレンフィルムは、ベース層として、上述したフィルムまたはその単層の実施態様の層、および、少なくとも片面、場合によっては両面にカバー層を含み、ここでカバー層は、それぞれの場合において、カバー層の質量に対して一般的に75〜100質量%、好ましくは90〜99.5質量%の2〜10個の炭素原子を有するオレフィンポリマー、および任意に通常の添加剤を、それぞれ有効量で、ただし電気的特性またはその他の望ましい特性に悪い影響を与えないような量で含む。
【0038】
カバー層に適切なオレフィンポリマーは、例えば、エチレン、プロピレンまたはブチレン単位で製造されたホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーであり、ここでターポリマーは、3種の異なる単量体を含む。コポリマーまたはターポリマーのそれぞれの単量体の組成は、広範囲に様々であってよい。一般的に、コポリマーおよび/またはターポリマーは、50質量%よりも多くのプロピレン単位を含み、すなわちこれらは、エチレンおよび/またはブチレン単位を共重合用単量体として含むプロピレンコ−ポリマーおよび/またはプロピレンターポリマーである。コポリマーは、一般的に、共重合用単量体として、少なくとも60〜99質量%、好ましくは65〜97質量%のプロピレン、および、最大でも1〜40質量%、好ましくは3〜35質量%のエチレンまたはブチレンを含む。ターポリマーは、一般的に、65〜96質量%、好ましくは72〜93質量%のプロピレン、および、3〜34質量%、好ましくは5〜26質量%のエチレン、および、1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%のブチレンを含む。このようなコポリマーおよび/またはターポリマーのメルトインデックスは、一般的に、0.1〜20g/10分(190℃、21.6N)、好ましくは0.1〜15g/10分である。融点は、70〜150℃の範囲であってもよく、好ましくは100〜140℃である。
【0039】
上述したコポリマーおよびターポリマーは、互いに混合されていてもよい。その場合、コポリマーとターポリマーとの比率は様々であってよい。
【0040】
好ましい実施態様において、カバー層において、上述したコポリマーおよび/またはターポリマーの代わりにプロピレンホモポリマーが用いられる。適切なプロピレンホモポリマーは、上述したフィルムの未処理のプロピレンホモポリマーBとして個々に説明されたものである。
【0041】
電気絶縁膜としての使用に関して、片側または両側に、未処理のプロピレンポリマーのみで構成されている、すなわち未処理のプロピレンポリマーの含量が、90〜100質量%、好ましくは98から100質量%未満の量であるカバー層を有する実施態様が特に好ましい。適切な未処理のプロピレンポリマーは、ポリマーA/Bとして上述した通りである。
【0042】
これらの実施態様は、キャパシタで使用される場合、さらなる利点を提供することが見出された。これは、ポリマーBに加えて1回再利用された材料を含むベース層が、再利用された材料を含まない少なくとも1つのカバー層でコーティングされており、そのために再利用された材料部分によって起こり得る負の作用が少なくなることに起因する。従って、両側に再利用された材料を含むベース層を、再利用された材料を含まないカバー層でコーティングすることが特に好ましい。
【0043】
本発明の方法に従って製造されたフィルムの多層の実施態様は、ベース層、および、少なくとも上述したカバー層を有するものである。ベース層はまた、両側にカバー層を有していてもよく、場合によっては追加の中間層を有していてもよい。本発明の目的において、ベース層は、総フィルム厚さの50〜100%よりも多く、好ましくは70〜95%を構成する層である。カバー層は、フィルムの外層を形成する層である。
【0044】
本発明の方法に従って製造されるフィルムの総厚さは、広い範囲で様々であってよく、その目的とする用途に従って調節される。フィルムの好ましい実施態様は、2〜100μm、および、2〜50μmの総厚さを有し、特に2〜20μmが好ましい。必要に応じて存在する中間層の厚さは、0.5〜15μmである。カバー層の厚さは、好ましくは0.1〜10μmの範囲、特に0.2〜5μmの範囲であり、ここで、両側に適用されたカバー層は、厚さおよび組成に関して同一でもよいし、または異なっていてもよい。ベース層の厚さは、フィルムの総厚さと、適用されたカバー層および中間層の厚さとの差によって測定され、従って総厚さと同様に様々であり得る。
【0045】
本発明に係る方法の過程で、プロピレンポリマーBおよびポリマーAから1回再利用された材料を、第一のメインの押出機(押出機1)で混合、圧縮、加熱および融解させる(溶融物1)。またプロピレンポリマーA(未処理材料のみ)を、第二の押出機(押出機2)で圧縮、加熱および融解させる(溶融物2)。プロピレンポリマーAに、すでにフィルム製造で用いられた材料(本発明の目的において「未処理」と称する)は添加されない。2種の溶融物1および2を平坦なシートダイを介して一緒に且つ同時に押出し、製造工程中にプロピレンポリマーAでフィルムの端部領域が形成されるように、未処理のプロピレンポリマーAの溶融物2を、ポリマーBと1回再利用された材料Aとを用いた溶融物1の両側に沿って配置する。図3で示すように、ポリマー溶融物2を溶融物1の端部の方向に配置することは、90°回転する共押出し用アダプターを用いて行ってもよい。当然ながら、製造工程の最初に再利用された材料が存在しないため、ポリマーAから十分な量の1回再利用された材料が生じてプロセスに戻されるまで、溶融物1はポリマーB(再利用された材料を含まない)のみで構成されると予想される。
【0046】
図3および3Aは、本発明に係る配置での共押出し用アダプター6の使用を示す。ポリマーの圧縮、加熱および溶融、ならび溶融物の流れ1および2の供給工程はいずれも同じように行われる。溶融物の流れ1および2は、示した通りに、互いに隣り合って配置される(16)。スロットダイ8で、互いに隣り合って配置された溶融物を押出してフィルム(10)を形成するが、その端部領域(12)はポリマーA(押出機2からの溶融物の流れ)から製造される。実際のフィルム(14)は、ポリマーB(押出機1からの溶融物の流れ)からなる。
【0047】
また本発明に係る方法において、溶融物Aを横方向に噴霧する単一ノズルも適している(いわゆるOhrchenduse)。図4Aおよび4Bに、このような単一ノズルの原則的な構造を示す。スロットダイ8は、主要管路18の左右それぞれに1つの開口部20を有する。溶融物Bは、ダイの中央部分で主要管路18を通じて導入される。溶融物Aは、開口部20を介してダイの両方の端部領域に流入する。このような方法で、溶融物1および2が隣り合って配置された状態でフィルムが形成され、その端部領域はポリマーAからなる。
【0048】
このようにして押出されたフィルムを1またはそれ以上のローラーでを巻き取り、それらを硬化する。また、押出されたフィルムを硬化する巻き取りローラーは、少なくとも70℃、好ましくは80〜120℃の温度で維持されることも特に有利であることがわかった。
【0049】
この方法で得られたフィルム前駆体を、押出し方向に向かって縦方向および横方向に延伸することによって、分子鎖を二軸方向に配向させる。この二軸配向は連続して行われ、延伸は、好ましくは最初に縦方向に(機械の方向で)、続いて横方向に(機械の方向に垂直に)行われる。材料は、縦方向に、好ましくは4:1〜9:1、特に5:1〜8.5:1の比率で延伸され、横方向に、好ましくは6:1〜11:1の比率で延伸される。縦方向への延伸は、理想的には、目的とする延伸比率を維持しながら異なる速度で回転する2つのローラーの補助を用いて行われ、横方向への延伸は、対応するクリップフレームの補助を用いて行われると予想される。実質的にポリマーBとポリマーAから1回再利用された材料との混合物のみが薄膜(14)に延伸され、ポリマーAの端部(12)は延伸されずに厚いままになるように、フィルムの端部領域がクリップによって挟まれる。図1に、それに相当する模式図を示す。
【0050】
縦方向および横方向への延伸が行われる温度は広く様々であってよく、それぞれの層の組成およびフィルムの望ましい特性によって決定される。一般的に、縦方向への延伸は、80〜160℃、好ましくは100〜160℃で行われ、横方向への延伸は、120〜170℃、好ましくは130〜160℃で行われる。
【0051】
二軸延伸した後、フィルムを即座に熱固定(熱処理)し、ここでフィルムは、100〜160℃、好ましくは110〜130℃の温度に0.1〜10秒間維持される。
【0052】
上述したように、二軸延伸した後、フィルムの片方の表面または両方の表面を、既知のコロナ、火炎またはプラズマ処理工程のいずれかで処理することが好ましい。焼結処理の強さは通常の範囲内であり、すなわち35〜50mN/mであり、好ましくは36〜45mN/mである。
【0053】
代りのコロナ処理に関して、ガイド素子として役立つ2つの電極間でフィルムを引き伸ばすが、ここで電極間の電圧(通常はAC電圧)は、コロナ放電を起こすことができる程度の高さである(約10,000V、および、10,000Hz)。コロナ放電によりフィルム表面上の空気がイオン化されて、フィルム表面の分子と反応し、その結果、実質的に分極していない高分子マトリックスに極性の貯蔵場所(polar pockets)が形成される。
【0054】
任意に表面処理または熱固定した後、標準的な切断装置でフィルムをトリミングし、フィルム本体を既知の巻き取り装置で巻き取る。一般的に、トリミングしようとする2つの端部の幅は、300mm以下であり、好ましくは100〜200mmであり、この部分は、少なくとも90質量%、好ましくは95〜100質量%、および、特に99〜100質量%のプロピレンポリマーAを含む。縁ストリップを切り離した際、トリミングによって生じた端部の幅は、縁ストリップとして切り離された考えられる全ての材料が、ほぼ100質量%の比率の未処理ポリマーAからなるように、すなわち未処理ポリマーAだけからなるように有利に選択されるべきである。端部を切断した時点で、ポリマーAはフィルムとして十分高い品質を有しており、低品質の領域が形成されないため、本発明に係る方法の利点は、縁ストリップ部分を、フィルム中に、縁ストリップのポリマーAがまったく含まれなくなるように広く切り離すことは必ずしも必要ではないという点にもある。それに対して、EP0740993に係る方法において、全てのポリマーAが除去されて、フィルムにポリマーAがまったく含まれなくなるように、縁ストリップを広くトリミングして切り離すことが絶対に必要である。続いてそれにより、ポリマーAと少量のポリマーBとの混合物からなる縁ストリップがトリミングされる。いずれにしてもEP0740993に係る方法は、比較的広い縁ストリップをトリミングすることが必要であり、それに対して本発明に係る方法は、トリミングしようとする縁ストリップの幅を狭い状態に保つことができる。当然ながらこれは、好ましい実施態様の場合に当てはまるように、特にポリマーAおよびBとして同一な原材料が用いられる場合に適用される。
【0055】
標準的な製造方法において、フィルムの端部は、200μm以下、一般的には20〜100μm、好ましくは20〜50μmの厚さを有する。状況に応じて、それよりも厚い、または、薄い端部の厚さが適切である場合もある。
【0056】
本発明によれば、切り離された(トリミングされた)端部領域を細断し、必要に応じて顆粒化し、ポリマーBと混合して、ポリマーBがフィルム中で再利用された材料として再利用され得るようにする。本発明に係る方法によれば、完成したフィルム中のプロピレンポリマーAが受けた押出しプロセスが確実に3回以下になり、好ましくは2回のみ(最初に縁ストリップ材料として、および、続いて実際のフィルム用原材料への混合物として)になる。切断された縁ストリップ材料を、ポリマーBと混合する前に再顆粒化する場合、3回目の押出し工程が追加されてもよい。製造工程で、未処理ポリマーのみを用いてフィルムの縁ストリップを連続的に流すため、複数回の、すなわち2回または3回よりも多く押出し工程を通過した材料が生じる可能性はない。驚くべきことに、フィルムの電気的特性だけでなくその他のあらゆる特性も、1回再利用されたポリマー部分による負の影響を受けない。
【0057】
それゆえに、本発明の方法に従って製造されるフィルムは、キャパシタにおいて誘電体として使用するのに適している。必要に応じて、このようなフィルムは、従来より関連分野でよく知られた方法を用いて金属化してもよい。再利用された材料部分は、キャパシタの性能特性を、たとえあったとしてもほんのわずかしか劣化させないことが発見された。従って、品質を損なうことなくかなりのコスト面での利点を達成することが可能である。
【実施例】
【0058】
以下の測定方法を用いて、原材料およびフィルムを特徴付けた:
メルトフローインデックス
メルトフローインデックスを、DIN53735の規格に従って21.6Nの負荷および230℃でで測定した。
【0059】
融点
DSC測定、融解曲線における最大値、加熱速度は20℃/分。
【0060】
弾性係数E
弾性係数Eは、ENISO521−1に従って、製造の少なくとも10日後に15×100mmのサイズを有する試料で測定した。
【0061】
収縮率
縦方向および横方向の収縮率は、収縮工程によるフィルム膨張のそれぞれの方向(縦方向Lおよび横方向Q)における直線的な寸法に関連する。縦方向は、機械の方向であり、横方向は、それに対応して機械の方向に垂直の方向と定義される。対流式オーブンで、10×10cmの試料をそれぞれの温度で(100〜140℃)15分間収縮させた。再度、結果得られた試料の直線的な寸法(LおよびQ)を縦方向および横方向で測定した。続いて、測定された直線的な寸法と元の寸法LおよびQとの差を、元の長さに対する収縮率に100をかけたものとして示した。
【0062】
【数1】

【0063】
この縦方向および横方向の収縮率の測定方法は、DIN40634に相当する。
【0064】
誘電正接:
誘電正接(tanα)をVDE0303パート4に従って計算した。測定前に、フィルム試料の両側を真空コーティングプラントでアルミニウム蒸気でコーティングした。測定領域F(=コーティングされた領域)の寸法はフィルム厚さdに従って様々である:
フィルム厚さdが10μm以下の場合、1cmの面積であり、
フィルム厚さdが10μmより大きい場合、5cmの面積である。
【0065】
試験される各試料に対して二重の測定が行われ、それから平均を計算した。試料を乾燥棚に置いた。下方の電極プレートは真鍮で作製した。上方の電極は円柱形であり、これもまた真鍮で作製した。試験電圧は1Vであった。1回の測定で、3種の波長それぞれ、すなわち0.1KHz、1KHzおよび10KHzで測定された。
【0066】
残留した石灰質の含量
残留した石灰質の含量を測定するために、不燃性の無機成分の割合を定量的に測定した。試料の元の質量と石灰質含量とから残留した石灰質含量(熱処理による損失)を計算した。測定結果はppmで示した。試験される材料(粒状物、再生物等)から代表的なランダムサンプル(約1kg)を採取した。これらの材料は、きれいであり、完全に乾燥していなければならず、試料を対流型の加熱棚で約80℃で予備乾燥させることが必要な場合がある。3つの空の磁器製るつぼを、るつぼ用の炉で、650℃で少なくとも1時間加熱し、デシケーター中で室温に冷却した後、0.1mgレベルの精度で質量を量った。2回の連続した計量で一定質量が達成されるまで加熱を繰り返した。次に、各るつぼに50g(+/−0.1g)の材料を計量して入れ、これを650℃で予熱したマッフル炉に置いた。ここで炉の温度を1,000℃に上昇させ、この温度で少なくとも1時間一定に維持した。デシケーター中でるつぼを冷却した後、これらを再度0.1mgレベルの精度で計量した。石灰質含量を、測定単位ppm(百万分率)=mg/mで示した。3種全てのるつぼを以下の式に従って評価し、互いに最も近接した2つの値を合計して、平均を出した:
ppm=最終的な質量(g)/初期質量(g)×1,000,000。
【0067】
塩素含量
ポリオレフィン中の塩素含量を、DIN51001のパート1に従ってX線蛍光分光分析(XFS)で定量的に測定した。圧縮した粒状物/粉末からタブレットを作製し、これを、XFSを用いた検量線と比較して測定した。10種の較正試料に基づき検量線を作成し、それによって別の方法(湿式工程)で塩素含量を測定した。
【0068】
分子量の測定
平均分子量Mwを測定するために、3つの検出器を用いたゲル透過クロマトグラフィーを用いた。物質をTHFのような溶出液に溶解させ、分離カラムに注入した。分離カラムは90cmの長さであり、これを5μmの孔サイズを有する多孔質担体材料で充填した。UV吸収分光分析を用いて様々な波長で検出を行い、さらに分画の屈折率および光散乱能力に基づく検出も行った。較正は、既知の分子量を有する標準組成物によって行われた。標準物質のUV吸収と試料のUV吸収とを比較することによって分子量を割り当てることが可能である(DIN55672のパート1)。
【0069】
以下、本発明を典型的な実施態様を参照しながらより詳細に説明する:
実施例1
厚さ6μm、および、トリミング前の幅4940mmを有する透明なフィルムを、押出し、それに続く縦方向および横方向への段階的な配向によって製造した。このようにして製造されたフィルムは単一の層からなっていた。製造の開始時に、同じ原材料から「トリミングされるストリップ−フィルム−トリミングされるストリップ」のように隣接させた溶融物を延伸した。別個の溶融物流の共押出しと配置のために、アダプター装置を用い、多層の共押出しのための通常の配置の場合は90°回転させた。
【0070】
B−フィルム用のオリジナルポリマー
約100質量%;ボレアリス社(Borealis)製の高度にアイソタクチックなポリプロピレン(商品名:HB300BF)であり、これは、融点165℃、ならびに、230℃および2.16Nにおけるメルトフローインデックス3.5g/10分を有し、その残留した石灰質含量は約20ppmであり、塩素含量は<1ppmであった。
【0071】
0.45質量%;イルガノックス(Irganox)1010フェノール系安定剤。
【0072】
0.0075質量%;中和剤として、ステアリン酸カルシウム。
【0073】
A−トリミングされるポリマー
約100質量%;ボレアリス(Borealis)製の高度にアイソタクチックなポリプロピレン(商品名:HB300BF)であり、これは、融点165℃、ならびに、230℃および2.16Nにおけるメルトフローインデックス3.5g/10分を有し、その残留した石灰質含量は約20ppmであり、塩素含量は<1ppmであった。
【0074】
0.45質量%;イルガノックス(Irganox)1010フェノール系安定剤。
【0075】
0.0075質量%;中和剤としてステアリン酸カルシウム。
【0076】
開始後、フィルムを巻き上げる前に、外側の領域において幅10cmのトリミングされるストリップを両側で分離し、続いてそのストリップを切断機で細断した。次にこの細断されたフィルム材料を輸送管で押出機にフィルムの原材料Bと共に供給し、混合し、元の原材料と共に融解した。さらに、端部領域を未処理の元の原材料と共に連続的に流し続けた。
【0077】
様々な処理工程における製造条件は以下の通りとした:
【0078】
【表1】

【0079】
横方向への延伸比は、実際の値である。この実際の値は、最終的なフィルム幅からトリミングされたストリップ幅の2倍の値を引いて、その値を、トリミングされたストリップ幅の2倍の値を引いた縦方向に延伸されたフィルムの幅で割ることによって計算した。
【0080】
この方法で、およそ22質量%の1回再利用された原材料を含むフィルムを製造した。
【0081】
実施例2a〜2c
実施例1と比較して、別の処理工程で細断されたフィルム材料を1度だけ溶融し、冷却して、再顆粒化物を生産することにより処理した。次に、この再顆粒化物を類似の方式でフィルム原材料Bと共に加工した。この方法で、5%、10%、30%の1回再利用された原材料を含むより多くのフィルムを生産した。
【0082】
比較例1
実施例1と比較して、別の溶融物の流れとと一緒に端部領域を流さず、1つの押出機からフィルムおよび端部領域を延伸した。実施例1で説明したように、端部領域をトリミングし、細断し、フィルム製造で再利用した。この方法で、およそ22%の複数回再利用された原材料を含むフィルムを製造した。
【0083】
比較例2
実施例1と比較して、端部領域を別の溶融物の流れと共に流さず、1つの押出機からフィルムおよび端部領域を延伸した。端部領域をトリミングし、廃棄物として廃棄した、すなわちフィルムは元の原材料のみを用いて生産され、再利用した回数に関係なく再利用された原材料は含んでいなかった。
【0084】
実施例3
実施例1で説明したようにフィルムを製造した。実施例1とは異なり、ベース層表面の両面にカバー層を有する3層のフィルムを共押出した。ベース層は、実施例1のフィルムに相当する。追加されたカバー層はいずれも、実施例1で説明したような100質量%のプロピレンポリマーBで構成された。ベース層の厚さは、約5μmであった。実施例1のようにフィルムの総厚さが6μmになるように、各カバー層の厚さは約0.5μmとした。残りの組成および処理条件は実施例1と同じであった。この方法で、ベース層中およそ26質量%(これは、フィルム全体に対して22質量%に相当する)の1回再利用されたポリマーを含む3層フィルムを製造した。
【0085】
実施例4
フィルムを実施例2bで説明されているようにして生産した。実施例2bとは異なり、ベース層表面の両面にカバー層を含む3層のフィルムを共押出しした。ベース層は、実施例2bのフィルムに相当する。追加されたカバー層はいずれも、実施例2bで説明したような100質量%のプロピレンポリマーBで構成された。ベース層の厚さは、約5μmであった。実施例2bのようにフィルムの総厚さが6μmになるように、各カバー層の厚さは約0.5μmとした。残りの組成および処理条件は実施例2bと同じであった。この方法で、ベース層中におよそ12質量%(これは、フィルム全体に対して10質量%に対応する)の1回再利用されたポリマーを含む3層フィルムを製造した。
【0086】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの層を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法であって、該方法は、第一の押出機内で、プロピレンポリマーBを加熱および融解させ、プロピレンポリマーBの溶融物を平坦なシートダイを介して成形かつ押出し、平坦なシートダイから出たメルトを1または2以上のローラーで巻き取り、それを硬化してフィルム前駆体を形成し、このフィルム前駆体を縦方向および横方向に延伸することを含み、該方法は、
A.第二の押出機内で、再利用材料部分を含まないプロピレンポリマーAを加熱および融解させること、および、
B.全ての溶融物が平坦なシートダイを介して一緒に且つ同時に押出され、かつ製造工程中に再利用材料部分を含まないプロピレンポリマーAでフィルムの端部領域が形成されるように、プロピレンポリマーAの溶融物をプロピレンポリマー溶融物Bの両側に沿って供給すること、および、
C.フィルムを縦方向および横方向に延伸した後に、プロピレンポリマーAを含む2つの端部領域を切り離すこと、および、
D.第一の押出機内で、この2つの端部領域から切り離されたフィルム部分を融解して、ポリプロピレンポリマーBと共に混合し、押出して、該フィルム前駆体を形成すること、
を特徴とする、上記方法。
【請求項2】
前記プロピレンポリマーBおよびプロピレンポリマーAが、同じポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロピレンポリマーAを1回目は縁ストリップとして押出し、2回目はフィルムとしてポリマーBと共に押出すことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロピレンポリマーAを、縁ストリップ材料の再顆粒化中に、融解し、押出し、冷却することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリマーBと再利用されるポリマーAとの混合物中の再利用されるポリマーAの比率が、0.5〜40質量%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プロピレンポリマーBおよびプロピレンポリマーAに、安定剤および/または中和剤が添加されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
プロピレンポリマーAの残留した石灰質含量が70ppm以下であり、塩素含量が50ppm以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プロピレンポリマーAが、再利用された材料部分を含まない様々なプロピレンポリマーの混合物であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プロピレンポリマーBが、様々なプロピレンポリマーの混合物であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プロピレンポリマーAおよびBが異なるポリマーであり、プロピレンポリマーAおよびBの融点が互いに15℃以下の範囲で異なることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリプロピレンフィルムが、追加の層を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記フィルムは多層であり、プロピレンポリマーAおよびBを含む層が、多層フィルムのベース層を形成することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記フィルムが、片側または両側に1またはそれ以上のカバー層を有し、該カバー層は、98〜100質量%のプロピレンポリマーBを含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記フィルムの切り離された端部領域が、99〜100質量%のプロピレンポリマーAからなることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
フィルムが未処理のプロピレンポリマーで構成されており、0.5〜40質量%の少なくとも1種の1回再利用されたポリプロピレンポリマーを含み、および、複数回再利用されたポリマーを含まないことを特徴とする、少なくとも1つの層を含む二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項16】
前記フィルムが、98〜100質量%の未処理のプロピレンポリマーを含む少なくとも1つのカバー層を有することを特徴とする、請求項15に記載のフィルム。
【請求項17】
前記フィルムが、それらの両側にカバー層を有し、該カバー層のそれぞれは、98〜100質量%の未処理のプロピレンポリマーを含むことを特徴とする、請求項16に記載のフィルム。
【請求項18】
前記フィルムの片側の表面が金属化されていることを特徴とする、請求項15〜17のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれか一項に記載のフィルムのキャパシタ製造における使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2012−511446(P2012−511446A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539943(P2011−539943)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008746
【国際公開番号】WO2010/066398
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(504422379)トレオファン・ジャーマニー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー (17)
【Fターム(参考)】