説明

マスフローコントローラーおよびマスフローコントローラーの流量制御方法

【課題】液化ガスの再液化を防ぎながら液化ガスの流量を精密に制御可能なマスフローコントローラーを提供する。
【解決手段】実施形態のマスフローコントローラー100は、流入口11から流入した液化ガスを分流するセンサー用配管13とバイパス配管14と、前記センサー用配管を覆うように配置された熱式センサー7と、前記センサー用配管を覆って前記センサー用配管と共に二重配管を形成し、前記センサー用配管および前記バイパス配管に連通する断熱領域15と、前記連通を遮断して前記断熱領域を閉鎖領域とする閉鎖バルブ1と、を備える。実施形態のマスフローコントローラーは、前記センサー用配管と前記バイパス配管とから合流した前記液化ガスの流出口12と、前記熱式センサーの検出結果に基づいて前記流出口から流出する前記液化ガスの流量を制御する制御手段と、前記各部位の全体を下方から加熱するヒーター2と、をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、マスフローコントローラーおよびマスフローコントローラーの流量制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは、常温、常圧で液体となる液化ガスをしばしば使用する。ドライエッチングプロセスでは60℃以下で液化するSiCl4などが用いられ、CVD(Chemical Vapor Deposition)プロセスではWF6、TEOS(Tetraethoxysilane)等も液化ガスとして用いられる。これら液化ガス用のマスフローコントローラーでは、再液化を防ぐために装置自体を加熱する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−214658号公報
【特許文献2】特開平9−232295号公報
【特許文献3】特開平10−275018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の局所的なラバーヒーターやリボンヒーターによる加熱方法では局所的に温度の低いコールドスポットが発生してしまい、液化ガスが再液化してしまうという問題がある。
【0005】
本発明の一つの実施形態は、液化ガスの再液化を防ぎながら液化ガスの流量を精密に制御可能なマスフローコントローラーおよびその流量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態のマスフローコントローラーは、流入口から流入した液化ガスを分流するセンサー用配管とバイパス配管と、前記センサー用配管を覆うように配置された熱式センサーと、前記センサー用配管を覆って前記センサー用配管と共に二重配管を形成し、前記センサー用配管および前記バイパス配管に連通する断熱領域と、前記連通を遮断して前記断熱領域を閉鎖領域とする閉鎖バルブと、を備える。実施形態のマスフローコントローラーは、前記センサー用配管と前記バイパス配管とから合流した前記液化ガスの流出口と、前記熱式センサーの検出結果に基づいて前記流出口から流出する前記液化ガスの流量を制御する制御手段と、前記各部位の全体を下方から加熱するヒーターと、をさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態にかかるマスフローコントローラーの構成を示す概略図である。
【図2】図2は、実施形態にかかる二重配管部分の拡大断面図である。
【図3】図3は、実施形態にかかるマスフローコントローラーの流量制御方法の一工程を示す図である。
【図4】図4は、実施形態にかかるマスフローコントローラーの流量制御方法の一工程を示す図である。
【図5】図5は、実施形態にかかるマスフローコントローラーの流量制御方法の一工程を示す図である。
【図6】図6は、実施形態にかかるマスフローコントローラーの流量制御方法の一工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかるマスフローコントローラーおよびその流量制御方法を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態にかかるマスフローコントローラー100の構成を示す概略図である。マスフローコントローラー100は例えば、SiCl4、WF6、またはTEOS等の常温常圧で液体となる液化ガスに使用されるものである。流入口11から流入した液化ガスは、センサー用配管13およびバイパス配管14に分流して流れる。センサー用配管13には上流側と下流側にそれぞれ熱感知コイル71および72が設置されており、熱感知コイル71および72はセンサー用配管13を覆っている。熱感知コイル71および72が熱式(サーマル式)センサー7を構成している。熱式センサー7(熱感知コイル71および72)にはブリッジ回路6が接続されており、熱式センサー7の温度差を検出する。ブリッジ回路6には熱式センサー7の温度差に相当する信号を増幅する増幅回路5が接続されている。
【0010】
さらに、マスフローコントローラー100には液化ガスの所望の流量の値を保持する流量設定器8が備えられており、流量設定器8が出力する所望の流量の値に相当する信号値と増幅回路5が出力する信号値とが比較制御回路9にて比較され、その結果に基づいて比較制御回路9はアクチュエーター10を制御する。アクチュエーター10は流量制御バルブ16を動かす。これによりセンサー用配管13およびバイパス配管14を経て合流した液化ガスが流出口12から流出する流出量が所望の流量となるように制御される。さらに、本実施形態のマスフローコントローラー100は、センサー用配管13を覆ってセンサー用配管13と共に二重配管を形成する断熱領域15を備える。断熱領域15の内部は中空であり、センサー用配管13およびバイパス配管14と連通した構造になっているが、センサー用配管13およびバイパス配管14への連通を遮断する開閉式の閉鎖バルブ1が備えられている。閉鎖バルブ1を閉じることにより断熱領域15は、センサー用配管13およびバイパス配管14から遮断された閉鎖領域になる。
【0011】
図2は、図1の点線で囲んだセンサー用配管13および断熱領域15が構成する二重配管部分の拡大断面図である。図2に示されるように、断熱領域15のセンサー用配管13の延伸方向(液化ガスが流れる方向)に垂直な断面は円環形状である。ここでは、断熱領域15として入り口に閉鎖バルブ1が存在するのみで先は袋小路の形状の構成例を示してあるが、断熱領域15の両端にバルブがあって両側からセンサー用配管13およびバイパス配管14と連通した構成にしてもかまわない。
【0012】
そしてさらに、マスフローコントローラー100の上記各部位を含む装置全体を加熱することが可能なヒーター2が装置下部に設置されている。
【0013】
マスフローコントローラー100を用いたマスフローコントローラーの流量制御方法の一例を以下に説明する。
【0014】
まず、図3に示すように、空気より熱伝導率の高い、例えば、He、N2などの熱伝導性ガスを流入口11から導入して、マスフローコントローラー100の配管内部を全て熱伝導性ガスで満たす。このとき閉鎖バルブ1は開いているので、断熱領域15はセンサー用配管13およびバイパス配管14と連通している。さらに流量制御バルブ16も開いているので、流出口12から熱伝導性ガスは流出可能である。これにより、センサー用配管13、バイパス配管14、および断熱領域15を含んだマスフローコントローラー100の内部は全て熱伝導性ガスで満たされる。
【0015】
上記の状態で、ヒーター2によりマスフローコントローラー100の各部位の全体を加熱する。マスフローコントローラー100の内部は熱伝導性ガスで満たされているのでマスフローコントローラー100全体のより均一な加熱が可能である。特に上流側と下流側にそれぞれ熱感知コイル71および72が設置されたセンサー用配管13において上流側と下流側で温度勾配が生じないように均一に加熱することが可能である。
【0016】
上記加熱によりマスフローコントローラー100全体が均一に加熱された状態になった後、図4に示すように、流入口11側のバルブ(図示せず)を閉じることにより流入口11からの熱伝導性ガスの導入を止める。そして流出口12側からマスフローコントローラー100内部の真空引きを開始する。このとき閉鎖バルブ1は開いたままなので、断熱領域15もその他の領域とともに真空引きされる。
【0017】
その後、図5に示すように閉鎖バルブ1を閉じて断熱領域15を閉鎖領域にする。これにより断熱領域15の真空状態は保たれる。そしてこの状態で、図6に示すように、流入口11からSiCl4、WF6、またはTEOSなどの液化ガスを導入する。ヒーター2によりマスフローコントローラー100全体は加熱された状態のままであるが、断熱領域15は真空状態となっているので真空断熱状態となり、従来に比べてセンサー用配管13の周りに温度不均一が発生し難い状態となっている。これにより熱式センサー7が流量に起因した熱式コイル71および72の間の温度差を高い精度で検知することができ、高精度な液化ガスの流量制御が可能になる。
【0018】
熱式センサー7近傍は不均一に加熱してしまうと高精度な流量制御ができなくなるので直接加熱できない。従って本実施形態のように下方のヒーター2から加熱するのが望ましいが、その場合コールドスポットが発生しやすく液化ガスの再液化を招いてしまう。本実施形態においては、熱伝導性ガスを導入して十分均一に加熱した後、熱式センサー7近傍に真空領域を形成して周囲を真空断熱し、周囲からの熱の影響を遮断する。これにより、熱式センサー7近傍の温度を均一に保つことができるので、液化ガスの高精度な流量制御が可能となる。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0020】
1 閉鎖バルブ、2 ヒーター、7 熱式センサー、13 センサー用配管、14 バイパス配管、15 断熱領域、100 マスフローコントローラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口から流入した液化ガスを分流するセンサー用配管とバイパス配管と、
前記センサー用配管を覆うように配置された熱式センサーと、
前記センサー用配管を覆って前記センサー用配管と共に二重配管を形成し、前記センサー用配管および前記バイパス配管に連通し、前記センサー用配管の延伸方向に垂直な断面は円環形状である断熱領域と、
前記連通を遮断して前記断熱領域を閉鎖領域とする閉鎖バルブと、
前記センサー用配管と前記バイパス配管とから合流した前記液化ガスの流出口と、
前記センサー用配管の上流側と下流側にそれぞれ配置された前記熱式センサーの温度差を検出するブリッジ回路と、前記ブリッジ回路の信号を増幅する増幅回路と、前記液化ガスの所望の流量の値を保持する流量設定器と、前記増幅回路の出力信号と前記流量設定器に保持された値とに基づいてアクチュエーターを制御する比較制御回路と、前記アクチュエーターにより動かされる流量制御バルブと、を備え、前記流量制御バルブが前記流出口から流出する前記液化ガスの流量を制御する制御手段と、
前記各部位の全体を下方から加熱するヒーターと、
を備えることを特徴とするマスフローコントローラー。
【請求項2】
流入口から流入した液化ガスを分流するセンサー用配管とバイパス配管と、
前記センサー用配管を覆うように配置された熱式センサーと、
前記センサー用配管を覆って前記センサー用配管と共に二重配管を形成し、前記センサー用配管および前記バイパス配管に連通する断熱領域と、
前記連通を遮断して前記断熱領域を閉鎖領域とする閉鎖バルブと、
前記センサー用配管と前記バイパス配管とから合流した前記液化ガスの流出口と、
前記熱式センサーの検出結果に基づいて前記流出口から流出する前記液化ガスの流量を制御する制御手段と、
前記各部位の全体を下方から加熱するヒーターと、
を備えることを特徴とするマスフローコントローラー。
【請求項3】
前記断熱領域の前記センサー用配管の延伸方向に垂直な断面は円環形状である
ことを特徴とする請求項2に記載のマスフローコントローラー。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記センサー用配管の上流側と下流側にそれぞれ配置された前記熱式センサーの温度差を検出するブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の信号を増幅する増幅回路と、
前記液化ガスの所望の流量の値を保持する流量設定器と、
前記増幅回路の出力信号と前記流量設定器に保持された値とに基づいてアクチュエーターを制御する比較制御回路と、
前記アクチュエーターにより動かされる流量制御バルブと、
を備え、
前記流量制御バルブが前記流出口から流出する前記液化ガスの流量を制御する
ことを特徴とする請求項2または3に記載のマスフローコントローラー。
【請求項5】
流入口から流入した液化ガスを分流するセンサー用配管とバイパス配管と、前記センサー用配管を覆うように配置された熱式センサーと、
前記センサー用配管を覆って前記センサー用配管と共に二重配管を形成し、前記センサー用配管および前記バイパス配管に連通する断熱領域と、前記連通を遮断して前記断熱領域を閉鎖領域とする閉鎖バルブと、前記センサー用配管と前記バイパス配管とから合流した前記液化ガスの流出口と、前記熱式センサーの検出結果に基づいて前記流出口から流出する前記液化ガスの流量を制御する制御手段と、前記各部位の全体を下方から加熱するヒーターと、を備えたマスフローコントローラーの流量制御方法であって、
前記流入口から空気より熱伝導率が高い熱伝導性ガスを流入して、前記センサー用配管、前記バイパス配管、および前記断熱領域を前記熱伝導性ガスで満たす工程と、
前記熱伝導性ガスで満たした状態で、前記マスフローコントローラー全体を前記ヒーターにより加熱する工程と、
前記加熱する工程の後に、前記センサー用配管、前記バイパス配管、および前記断熱領域を真空引きする工程と、
前記真空引きする工程の後に、前記閉鎖バルブを閉じて前記断熱領域を閉鎖領域とする工程と、
前記閉鎖バルブを閉じた後に、前記流入口を介して前記マスフローコントローラーに前記液化ガスを流入させて、前記液化ガスの流量制御を行う
ことを特徴とするマスフローコントローラの流量制御方法。
【請求項6】
前記液化ガスは、SiCl4、WF6、またはTEOSである
ことを特徴とする請求項5に記載のマスフローコントローラーの流量制御方法。
【請求項7】
前記熱伝導性ガスは、HeまたはN2である
ことを特徴とする請求項5または6に記載のマスフローコントローラーの流量制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−65078(P2013−65078A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201967(P2011−201967)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】