説明

ムラ検査装置、ムラ検査方法、およびプログラム

【課題】 基板上に形成された膜厚が巨視的に見てなだらかに傾斜している場合でも、光の波長帯に依存せず、検出感度の良いムラ検査装置、およびムラ検査方法、およびプログラムを提供する。
【解決手段】 基板9の上面に形成された膜92に対して異なる波長帯の光を照射し、それぞれの波長帯の光により膜92の膜厚の変動を示すムラ画像を取得する。ムラ画像からムラを含む領域を選択し、それぞれの領域を合成することにより、基板全面において膜厚ムラが高感度に検出されたムラ画像を得ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物上に形成された膜の膜厚ムラを検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、表示装置用のガラス基板等(以下、単に「基板」という。)の主面上に所定のパターンを形成する際には、当該主面上にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成することが行われている。主面上に形成されたレジスト膜は、後の処理により露光、現像などが行われるため、出来る限り均一な膜厚が要求される。そのため、膜厚が不均一になった部分や、微小な不要物によって膜厚が変動した部分(以下、総じて「ムラ」と称する)を検査する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、複数の波長帯の光を基板の主面上に形成された膜に照射し、膜の表面および裏面にて反射した光の干渉を計測することにより、膜厚ムラを検査する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006 − 292487 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、基板上に形成された膜には、その形成方法によっては巨視的に見てなだらかな傾斜が出来る場合がある。そのような場合、特許文献1の手法では光の波長帯に依存して、基板面内で検査感度の悪い部分が発生するおそれがある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板の全面にわたって感度の高い検査を行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、基板上に形成された膜の膜厚ムラを検査するムラ検査装置において、その主面上に光透過性の膜が形成された基板に対して、光を照射する光照射部と、前記光照射部により照射された光が、前記膜の表面および裏面で反射することにより形成された画像を撮像する撮像手段と、前記光照射部から前記撮像手段に至る光路上に配置されるとともに、所定の第1および第2の波長帯の光を透過する光学フィルタと、前記撮像手段により撮像された、第1の波長帯の光による第1画像および第2の波長帯の光による第2画像から、ムラの位置および形状を検出するムラ検出手段と、前記ムラ検出手段によりムラが検出された第1画像および第2画像を、各々対応する領域に分割する分割手段と、前記分割手段により分割された各領域内のムラに基づいて、第1画像または第2画像から分割されたいずれか一方の画像を、当該領域における代表画像とする画像選択手段と、を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のムラ検査装置において、前記画像選択手段により選択された代表画像同士を配置する事により、ムラ検査画像を合成する合成手段をさらに備える。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のムラ検査装置において、前記分割手段によって分割される領域が、前記基板上に形成される繰り返しパターンの一つであると。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のムラ検査装置において、前記分割手段によって分割される領域が、前記ムラ検出手段によって検出されたムラを含む領域である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のムラ検査装置において、前記ムラ検出手段が、前記第1画像および第2画像の所定の検出領域内に含まれる画素値の最大値と最小値との差に基づいて、ムラを検出する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、基板上に形成された膜の膜厚ムラを検査するムラ検査方法において、その主面上に光透過性の膜が形成された基板に対して、第1および第2の波長帯の光を照射し、当該膜の表面および裏面にて反射した光によって形成された画像を撮像する撮像工程と、前記第1の波長帯の光による第1画像と、前記第2の波長帯の光による第2画像とから、ムラの位置および形状を検出するムラ検出工程と、第1画像および第2画像を、各々対応する領域に分割する分割工程と、前記分割された各領域内のムラに基づいて、第1画像または第2画像から分割されたいずれか一方の画像を、当該領域における代表画像とする画像選択工程と、を備える。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のムラ検査方法において、前記画像選択工程にて選択された代表画像同士を配置する事により、ムラ検査画像を合成する合成工程をさらに備える。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項6または請求項7に記載のムラ検査方法において、前記分割工程にて分割される領域が、前記基板上に形成される繰り返しパターンの一つである。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項6または請求項7に記載のムラ検査方法において、前記分割工程にて分割される領域が、前記ムラ検出工程にて検出されたムラを含む領域である。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項6から請求項9のいずれかに記載のムラ検査方法において、前記ムラ検出工程では、前記第1画像および第2画像の所定の検出領域内に含まれる画素値の最大値と最小値との差に基づいて、ムラを検出する。
【0017】
請求項11に記載の発明は、対象物上に形成された光透過性の膜の膜厚ムラをコンピュータに検査させるプログラムであって、前記プログラムの前記コンピュータによる実行は、前記コンピュータに、a)対象物上に形成された膜に対して光を照射することにより撮像された、複数の波長帯による画像を取得する工程と、b)前記複数の波長帯による画像からムラの位置および形状を検出する工程と、c)前記画像を、各々対応する領域に分割し、当該領域内のムラを比較し、分割された画像のうちいずれか一方を当該領域における代表画像として選択する工程と、を実行させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、膜厚に依存せず、基板の全面において膜厚ムラの検出を高感度に行うことができる。特に、請求項2および請求項7に記載の発明では、簡単な方法で基板全面に対するムラ画像を得ることができる。特に請求項3および請求項8に記載の発明では、繰り返しパターンが形成された基板に対して、基板全面に対する膜厚ムラの検出を簡単に行うことができる。特に請求項4および請求項9に記載の発明では、基板の一部にムラがある基板に対して、ムラの検出を高感度に行うことができる。特に請求項5および請求項10に記載の発明では、簡便な方法でムラを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態に係るムラ検査装置の構成を示す図である。
【図2】制御部6の構成を示す図である。
【図3】演算部61が実現する機能構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施の形態に係るムラ検査装置における、検査の流れを示す図である。
【図5】第1画像および第2画像を分割する模式図である。
【図6】第1画像を示す図である。
【図7】第2画像を示す図である。
【図8】膜厚と反射率との関係を示す図である。
【図9】膜厚と反射率の変動との関係を示す図である。
【図10】合成された画像を示す図である。
【図11】第2の実施の形態に係るムラ検査装置における、検査の流れを示す図である。
【図12】第2の実施の形態に係る、第1画像を示す図である。
【図13】第2の実施の形態に係る、第2画像を示す図である。
【図14】第2の実施の形態に係る、合成された画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るムラ検査装置1の構成を示す図である。ムラ検査装置1は、主面91(以下、「上面91」という。)上に膜92が形成された基板9を上面91を上側(図1中の(+Z)側)に向けて保持する保持部であるステージ2、ステージ2に保持された基板9の上面91上の膜92に向けて光を出射する光出射部3、光出射部3から出射されて膜92にて反射された後の光を受光する受光部4、基板9と受光部4との間に配置されて受光部4にて受光される光の波長帯を切り替える波長帯切替機構5、ステージ2を光出射部3、受光部4および波長帯切替機構5に対して相対的に移動する移動機構21、受光部4にて受光した光の強度分布(上面91の領域に対応する分布)に基づいて膜92の膜厚ムラを検査し、構成を制御する制御部6、および表示部7を備える。なお、図1では、図示の都合上、波長帯切替機構5の一部を断面にて示す。
【0021】
ステージ2の(+Z)側の表面は、好ましくは黒色艶消しとされる。移動機構21は、モータ211にボールねじ(図示省略)が接続された構成とされ、モータ211が回転することにより、ステージ2がガイド212に沿って基板9の上面91に沿う図1中のX方向に移動する。
【0022】
光出射部3は、白色光(すなわち、可視領域の全ての波長帯の光を含む光)を出射する光源であるハロゲンランプ31、ステージ2の移動方向に垂直な図1中のY方向に伸びる円柱状の石英ロッド32、および、Y方向に伸びるシリンドリカルレンズ33を備える。光出射部3では、ハロゲンランプ31が石英ロッド32の(+Y)側の端部に取り付けられており、ハロゲンランプ31から石英ロッド32に入射した光は、Y方向に伸びる線状光(すなわち、光束断面がY方向に長い線状となる光)に変換されて石英ロッド32の側面から出射され、シリンドリカルレンズ33を介して基板9の上面91へと導かれる。換言すれば、石英ロッド32およびシリンドリカルレンズ33は、ハロゲンランプ31からの光を、ステージ2の上面91に沿うとともに移動方向に垂直な線状光に変換して基板9の上面91上の膜92へと導く照明光学系となっている。
【0023】
図1では、光出射部3から基板9に至る光路を一点鎖線にて示している(基板9から受光部4に至る光路についても同様)。光出射部3から出射されて基板9の上面91上の膜92に対して傾斜して(すなわち、0°よりも大きい入射角にて)入射した光の一部は、基板9の上面91上の膜92の(+Z)側の上面にて反射される。膜92は光出射部3からの光に対して光透過性を有しており、光出射部3からの光のうち膜92の上面にて反射されなかった光は、膜92を透過して基板9の上面91(すなわち、膜92の下面)にて反射される。ムラ検査装置1では、基板9における膜92の上面にて反射された光と基板9の上面91にて反射された光との干渉光(以下、単に「反射光」という。)が、波長帯切替機構5を経由して受光部4に入射する。
【0024】
受光部4(撮像手段に相当する)は、複数の受光素子であるCCD(Charge Coupled Device)がY方向に直線状に配列されたラインセンサ41、および、基板9からラインセンサ41に至る光路上であってラインセンサ41と波長帯切替機構5との間に配置される集光レンズ42を備える。集光レンズ42は、光出射部3から出射されて基板9の上面91上においてY方向に伸びる直線状の照射領域(以下、「線状照射領域」という。)の膜92にて反射された後の線状光のうち、光学フィルタ51を透過した選択波長帯の光をラインセンサ41に向けて集光する。ラインセンサ41は、集光レンズ42により集光されるとともに結像された選択波長帯の光を受光し、受光した光の強度分布(すなわち、各CCDからの出力値のY方向における分布)を取得して制御部6に出力する。ムラ検査装置1では、基板9の上面91上に形成された膜92からの反射光の強度分布が、基板9およびステージ2の移動中にラインセンサ41により繰り返し取得される。
【0025】
波長帯切替機構5は、互いに異なる複数の狭い波長帯の光を選択的にそれぞれ透過する複数の光学フィルタ(例えば、半値幅10nmの干渉フィルタ)51、複数の光学フィルタ51を保持する円板状のフィルタホイール52、および、フィルタホイール52の中心に取り付けられてフィルタホイール52を回転するフィルタ回転モータ53を備える。フィルタホイール52は、その法線方向が基板9から受光部4に至る光路に平行になるように配置される。
【0026】
図2は、制御部6の構成を示す図である。制御部6は、演算部61、固定ディスク62、インターフェイス(I/F)部63、画像記憶部64、を備える。
【0027】
演算部61は、I/F部63を介して、ステージ2や光照射部3など、ムラ検査装置を構成する機器を制御する。また表示部61は、固定ディスク62に記憶されたプログラム65を実行し、後述するようにムラ検査を行う。また、画像記憶部64は、ラインセンサ41からの出力を受けて基板9の上面91の2次元画像を一時的に記憶する。具体的には、制御部6はコンピュータ等が用いられ、表示部7や図示しない入力装置に接続されている。
【0028】
図3は、演算部61がプログラム65に従って動作することにより、演算部61、固定ディスク62等が実現する機能構成を示すブロック図である。演算部61は、画像抽出機能611、画像選択機能612、画像合成機能613として機能し、演算結果を表示部7に表示する。なお、これらの全て、もしくは一部は専用の電子回路にて行われてもよい。
【0029】
次に、ムラ検査装置1による膜厚ムラの検査の流れについて説明する。図4は、ムラ検査装置1による検査の流れを示す図である。図1に示すムラ検査装置1により基板9の上面91上の膜92の膜厚ムラが検査される際には、まず、検査対象である膜92の材質や膜厚等の特性に基づいて、第1の波長帯(例えば、中心波長が550nm、半値幅が10nm)が選択され、その透過波長帯を有する第1の光学フィルタ51が光路上に配置される。
具体的には、制御部6がフィルタ回転モータ53に対して制御指令を与え、モータを所定の角度回転させることにより、基板9の上面91と受光部4との間の光軸上に、第1の光学フィルタ51を配置する。その後、図示しない基板搬送装置により、ステージ上に基板が載置される(ステップS1)。
【0030】
次に、第1の波長帯による画像が取得される(ステップS2)。
具体的には、制御部6はステージ2に指令を与え、図1中に実線にて示す検査開始位置にステージ2を移動させる。そして、光出射部3から基板9の上面91上に所定の入射角(本実施例では60°)にて線状光が照射された状態で、図1中に二点鎖線にて示す検査終了位置までステージ2を移動させる。光出射部3からの光は基板9の上面91にて反射され、第1の波長帯を透過する光学フィルタ51を透過することにより、特定の波長帯の光のみが取り出された後、受光部4へと導かれる。受光部4では、基板9の上面91における反射後の第1の波長帯の光が集光レンズ42を介してラインセンサ41により受光され、基板9上の線状照射領域からの反射光の第1の波長帯における強度分布が取得される。制御部6の画像記憶部64に記憶された第1の波長帯における強度分布は、連続するデータとして順序付けて記憶されることで、第1画像として扱うことができる。
【0031】
続いて、第2の波長帯(例えば、中心波長が575nm、半値幅が10nm)による画像が取得される(ステップS3)。
具体的には、制御部6がフィルタ回転モータ53に対して制御指令を与え、モータを所定の角度回転させることにより、基板9の上面91と受光部4との間の光軸上に、第2の光学フィルタ51を配置する。そして、前述のステップS2と同様に、光出射部3から線状光を照射しつつステージ2を移動させることにより、受光部4にて第2の波長帯における強度分布が取得される。第1画像と同様に、制御部6の画像記憶部64に記憶された第2の波長帯における強度分布は、連続するデータとして順序付けて記憶されることで、第2画像として扱うことができる。
【0032】
次に、ステップS2およびステップS3にて取得された第1画像および第2画像に対して、ムラの検出が行われる(ステップS4)。
具体的には、制御部6は、画像記憶部64に記憶された第1画像および第2画像の画素値の変化を検出することにより、ムラを判別し、記憶する。
【0033】
図5に示すように、基板9にはその後の処理にて1枚のパネルとされる、周期パターン面93が予め形成されている。図5では、周期パターン面93が6面形成されていることを表している。
【0034】
第1画像において、像の一部に他の部分と比較して光の強度が小さくなった部分が観察される。これは、光の波長帯により膜92の上面で反射した光と、膜92の下面(=基板91の上面)で反射した光とが、打ち消しあう膜厚である部分を示している。
【0035】
ここで、膜厚がなだらかに変化している場合、所定の領域(例えば、注目画素に対して隣接する8画素)内の各画素値は大きく変わらない。しかし、膜厚が急激に変化する領域(ムラが発生している領域)では、画素値が急激に変化する。そのため、所定の領域内に含まれる画素値の最大値と最小値との差を求める事で、ムラを検出する事が可能となる。
【0036】
制御部6はムラが発生している領域を判断し、その形状により点状ムラ931a、および、筋ムラ932aとして認識し、画像記憶部64に記憶させる。
【0037】
図6は、ステップS4にてムラの検出が行われた後の第1画像を示す図である。第1画像を形成する第1の波長帯の光では、図6における基板9の上側のムラは検出しているが、下側はほとんど検出できていないことを示している。
【0038】
続いて制御部6は、第1画像と同様に第2画像におけるムラを検出する。
【0039】
図7は、ムラの検出が行われた後の第2画像を示す図である。第2画像を形成する第2の波長帯の光では、図6における基板9の下側のムラ(931b,932b)は検出しているが、上側はほとんど検出できていないことを示している。
【0040】
図8は、膜92の膜厚と反射率101との関係を示す図である。膜92の反射率101は、膜厚の変動に対して周期性をもって変動する。図9は、膜92の膜厚が1nmだけ変動した場合の反射率101の変動を示す図である。図5および図6に示すように、反射率101の極大点近傍および極小点近傍では、膜厚の変動に対する反射率101の変動が非常に小さくなる。このため、膜厚の変動が僅かである場合には、受光された像の光の強度はほとんど変動せず、ムラ(すなわち、膜厚の変動)の検出の精度が低下してしまう。以下、膜厚の変動に対する反射率101の変動の割合が非常に小さい膜厚の領域を、「低感度領域」という。言うまでも無いが、反射率101とは、光出射部3から出射される光の強度と、受光部によって受光される光の強度との比である。また、反射率が高い部分では、受光される光の強度を信号で表した画素値も大きくなる。
【0041】
次にステップS4にてムラの検出が行われた第1画像および第2画像を、対応する領域に分割する。
具体的には、制御部6は、画像記憶部64に記憶された第1画像および第2画像を、各々対応する領域ごとに分割する。本実施例では、基板上に形成すべき周期パターン面93を一つの単位領域として分割する場合の例を示す。
【0042】
まず、制御部6は第1画像および第2画像から周期パターン面93を判別し、隣接する周期パターン面93との間に分割線911を形成して分割する。なお、分割された画像は、周辺部の間隙部分が削除され、周期パターン面93のみの画像が、6枚ずつ、計12枚形成される。
【0043】
なお、周期パターン面93の判別は、画像処理に拠っても行ってもよいし、基板9の設計段階のCAD(Computer Aided Design)図面に基づいてもよい。
【0044】
次に、各領域において検出されたムラの量が比較される(ステップS6)
具体的には、制御部6は、ステップS5にて分割された各領域に含まれるムラの検出個数(頻度)を検出し、第1画像および第2画像において対応する位置にある領域毎に比較を行う。
【0045】
図6に破線で囲まれた領域である93aに対して、図7に破線で囲まれた領域である93bはそれぞれ、対応する位置にある領域である。制御部6は93aおよび93b内にて検出されたムラの頻度を検出し、比較を行う。
第1画像である93aにて検出されたムラの頻度が高い場合は、その位置における代表画像として93aを選択する(ステップS7)
また、第2画像である93bにて検出されたムラの頻度が高い場合は、その位置における代表画像として93bを選択する(ステップS8)
そして、順次対応する領域毎に比較を行うことにより、各々の位置における代表画像が選択される。
【0046】
続いて、画像の合成がおこなわれる(ステップS9)
分割された領域全てに対して、前述のステップS6ないしステップS8までを行うことで、全ての領域の画像に対する代表画像が選択される。その代表画像を分割された画像と同じ位置に再度配置し、画像を合成することにより、全ての領域においてムラの検出個数の多い第3画像が形成される。
【0047】
図10は合成された画像を示す図である。合成された画像では、全ての周期パターン面においてムラの検出個数が多くなっている。また、合成された画像は、表示部7上に表示されることで、オペレーターが視認することが可能となる。
【0048】
以上のステップにより、基板9の上面91上の膜92の膜厚が、測定する波長帯により低感度領域となった場合であっても、基板9の全領域においてムラが高精度に認識することが可能となる。
【0049】
次に、本発明の第2の実施の形態に係るムラ検査装置1aについて説明を行う。
ムラ検査装置1aは第1の実施の形態に係るムラ検査装置1と、領域の分割を行う方法のみが相違する。そのため、同一の構成に関しては同一の符号を付し、説明を省略する。
【0050】
図11は、ムラ検査装置1aによる検査の流れを示す図である。ステップS1〜S4は、ムラ検査装置1同様であるため、説明を省略する。
【0051】
図12は、第1の波長帯の光によって撮像された、基板9aを示す図である。第1の波長帯の光では、基板9aは明るく(反射率が高く)観察されており、筋状のムラ(以下、筋ムラ94という)が暗く(反射率が低く)観察されていることを示している。
【0052】
また、第1の波長帯の光では、図12でいう下方向は筋ムラ94が切れたように観察されているが、これは、第1の波長帯の光では低感度領域となっていること示している。
【0053】
図13は第2の波長帯の光によって撮像された基板9aを示す図である。第2の波長帯の光では、基板9aは暗く観察されており、筋ムラ94は明るく観察されている。図13でいう上方向では、低感度領域になっており、筋ムラ94はほとんど観察できない。
【0054】
第2の実施の形態であるムラ検査装置1aは、まず、取得された画像から、背景画像を選択する(ステップS51)。
具体的には、制御部6は、画像記憶部64に記憶された第1画像および第2画像から、いずれか一方の画像を選択することにより、背景画像とする。これは、ムラの検出頻度を参考にしてもよいし、単純に取得順序によって決定されてもよい。ここでは第1画像が選択された場合について以後説明を行う。
【0055】
次に、ムラ領域を抽出する(ステップS61)。
具体的には、制御部6はステップS51にて背景画像として選択されなかった第2画像についてムラ領域の抽出を行う。ステップS4にてムラの位置および形状が検出されているため、第2画像中にムラとして検出されている領域がそれぞれ選択され、ムラ画像が抽出される。
【0056】
その後、抽出されたムラが背景画像と合成される(ステップS71)。
具体的には、制御部6は背景画像(例では第1画像)に対して、ステップS61で抽出されたムラ画像を合成する。画像の合成を行う事で、背景画像にもムラが検出されている場合、抽出されたムラ画像を重ねて表示する。これは、第2画像においてムラとして検出された領域に対応する、背景画像(第1画像)の領域を、それ以外の領域と分割したうえで、第2画像を当該領域の代表画像として選択したことを意味する。
【0057】
そして、第2画像中に含まれる全てのムラ領域に対して、前記ステップS61、S71を繰り返す(ステップS81)ことにより、背景画像(第1画像)上に、第2画像中に検出されたムラ画像が合成される。
【0058】
図14は合成された画像を示す図である。背景画像として第1画像の背景が選択され、そこに第1画像のムラ94と第2画像のムラ95が合成して表示される。合成された画像は、表示部7上に表示されることで、オペレーターが視認することができる。
【0059】
以上のように、ムラ検査装置1aでも、第1の実施の形態と同様に、基板の全領域においてムラが確実に認識できる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0061】
また例えば、基板9を保持するステージは、光出射部3、受光部4および波長帯切替機構5に対して相対的に移動すればよく、ステージが固定され、光出射部3、受光部4および波長帯切替機構5が、互いに固定された状態で移動されてもよい。
【0062】
上記実施の形態に係るムラ検査装置では、ハロゲンランプ31から出射される光に基板9上に形成された膜92に好ましくない影響を与える波長帯の光が含まれている場合、当該波長帯の光を透過しないフィルタ等がハロゲンランプ31から基板9に至る光路上に設けられる。また、基板9の上面91上の膜92が赤外線に対して透過性を有する場合、白色光を出射するハロゲンランプ31に代えて赤外線を出射する光源が光出射部3に設けられてもよい。
【0063】
光出射部3では、石英ロッド32に代えて複数の光ファイバが直線状に配列されたファイバアレイが設けられ、ハロゲンランプ31からの光がファイバアレイを通過することにより線状光に変換されてもよい。また、ハロゲンランプ31および石英ロッド32に代えて、直線状に配列された複数の光源要素が線状光を出射する光源として設けられてもよい。
【0064】
波長帯切替機構5は、光出射部3からラインセンサ41に至る光路上に配置されるのであれば、必ずしも基板9と受光部4との間に配置される必要はなく、例えば、光出射部3から基板9に至る光路上に配置されてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態では、2つの波長帯による画像を比較することにより画像を合成していたが、それよりも多くの波長帯の画像を比較することにより、より高感度にムラを検査することができる。
【0066】
上記実施の形態に係るムラ検査装置は、レジスト膜以外の他の膜、例えば、基板9上に形成された絶縁膜や導電膜の膜厚ムラの検出に利用されてよく、これらの膜は、塗布液の塗布以外の方法、例えば、蒸着法や化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング等により形成されたものであってもよい。また、ムラ検査装置は、半導体基板等の他の基板上に形成された膜の膜厚ムラの検査に利用されてよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
この発明は、半導体ウェハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般の表面に塗布液を塗布する際に発生する膜厚ムラ(塗布ムラ)を検出するムラ検出装置、ムラ検出方法、およびムラ検出を行うプログラムに適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1,1a ムラ検査装置
2 ステージ
3 光出射部
4 受光部
5 波長帯切替機構
6 制御部
9,9a 基板
61 演算部
65 プログラム
91 上面
92 膜
93 周期パターン面
931a、931b 点状ムラ
932a、932b 筋ムラ
94、95 筋ムラ
611 領域抽出機能
612 画像選択機能
613 画像合成機能
S1〜S9,S51〜S81 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された膜の膜厚ムラを検査するムラ検査装置において、
その主面上に光透過性の膜が形成された基板に対して、光を照射する光照射部と、
前記光照射部により照射された光が、前記膜の表面および裏面で反射することにより形成された画像を撮像する撮像手段と、
前記光照射部から前記撮像手段に至る光路上に配置されるとともに、所定の第1および第2の波長帯の光を透過する光学フィルタと、
前記撮像手段により撮像された、第1の波長帯の光による第1画像および第2の波長帯の光による第2画像から、ムラの位置および形状を検出するムラ検出手段と、
前記ムラ検出手段によりムラが検出された第1画像および第2画像を、各々対応する領域に分割する分割手段と、
前記分割手段により分割された各領域内のムラに基づいて、第1画像または第2画像から分割されたいずれか一方の画像を、当該領域における代表画像とする画像選択手段と、
を備えることを特徴とするムラ検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のムラ検査装置において、
前記画像選択手段により選択された代表画像同士を配置する事により、ムラ検査画像を合成する合成手段をさらに備えることを特徴とするムラ検査装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のムラ検査装置において、
前記分割手段によって分割される領域は、前記基板上に形成される繰り返しパターンの一つであることを特徴とするムラ検査装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のムラ検査装置において、
前記分割手段によって分割される領域は、前記ムラ検出手段によって検出されたムラを含む領域であることを特徴とするムラ検査装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のムラ検査装置において、
前記ムラ検出手段は、前記第1画像および第2画像の所定の検出領域内に含まれる画素値の最大値と最小値との差に基づいて、ムラを検出することを特徴とするムラ検査装置。
【請求項6】
基板上に形成された膜の膜厚ムラを検査するムラ検査方法において、
その主面上に光透過性の膜が形成された基板に対して、第1および第2の波長帯の光を照射し、当該膜の表面および裏面にて反射した光によって形成された画像を撮像する撮像工程と、
前記第1の波長帯の光による第1画像と、前記第2の波長帯の光による第2画像とから、ムラの位置および形状を検出するムラ検出工程と、
第1画像および第2画像を、各々対応する領域に分割する分割工程と、
前記分割された各領域内のムラに基づいて、第1画像または第2画像から分割されたいずれか一方の画像を、当該領域における代表画像とする画像選択工程と、
を備えることを特徴とするムラ検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載のムラ検査方法において、
前記画像選択工程にて選択された代表画像同士を配置する事により、ムラ検査画像を合成する合成工程をさらに備えることを特徴とするムラ検査方法。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のムラ検査方法において、
前記分割工程にて分割される領域は、前記基板上に形成される繰り返しパターンの一つであることを特徴とするムラ検査方法。
【請求項9】
請求項6または請求項7に記載のムラ検査方法において、
前記分割工程にて分割される領域は、前記ムラ検出工程にて検出されたムラを含む領域であることを特徴とするムラ検査方法。
【請求項10】
請求項6から請求項9のいずれかに記載のムラ検査方法において、
前記ムラ検出工程では、前記第1画像および第2画像の所定の検出領域内に含まれる画素値の最大値と最小値との差に基づいて、ムラを検出することを特徴とするムラ検査方法。
【請求項11】
対象物上に形成された光透過性の膜の膜厚ムラをコンピュータに検査させるプログラムであって、前記プログラムの前記コンピュータによる実行は、前記コンピュータに、
a)対象物上に形成された膜に対して光を照射することにより撮像された、複数の波長帯による画像を取得する工程と、
b)前記複数の波長帯による画像からムラの位置および形状を検出する工程と、
c)前記画像を、各々対応する領域に分割し、当該領域内のムラを比較し、分割された画像のうちいずれか一方を当該領域における代表画像として選択する工程と、
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−216974(P2010−216974A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63771(P2009−63771)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】