説明

モデル加工方法およびモデル加工システム

【課題】色彩を施したクレイモデルの作製を正確に短時間で行うこと。
【解決手段】このモデル加工システム100は、先端に塗装ヘッド106を備えた多軸アームロボット1と、クレイモデルMのハンドワーク側の形状を取得するカメラ2と、CAD/CAM装置5と、多軸アームロボット1のプログラミング等を行うコンピュータ装置6と、多軸アームロボット1のドライブユニット7とを有する。CAD/CAM装置5は、カメラ2で取得したハンドワークの形状と色とに係わるデータを反転させて、反転着色情報を取得し、この反転着色情報に対応した塗装用の加工パスを生成し、多軸アームロボット1の塗装ヘッド106によりクレイモデルMを塗装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドワークにより加工する必要のあるクレイモデル等の製作を正確かつ短時間で行えるモデル加工方法およびモデル加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、モーターサイクルや自動車などの製品のデザインを開発する場合、原寸大のクレイモデルを作成してデザインの検討を行うのが通常である。また、これらの製品は殆ど左右対称形であるため、クレイモデルを製作する場合、まず対称形状となる半分をハンドワークで成形し、この半分の形状を決めた後に反対側の部分をハンドワークにより成形する。これにより、クレイモデルが一応形となるが、設計者はこのクレイモデルを基に、詳細かつ精密にクレイモデルを削り或いは肉盛りし、最終的な形状を決定する。
【0003】
一方、現在ではデザインCADが普及し、コンピュータ上でどのような複雑な形状でも作り上げることができるようになっているが、最終的にその製品がどのようなものであるか人間が感覚的に理解するには、実物大のクレイモデルによらなければ難しい。このため、デザインCADの普及によってもクレイモデルは必要であり、加工技術の進歩によりより複雑な形状の製品を製造できることが可能となった現在では、従来にも増してクレイモデルの必要性が高まっている。
【0004】
このようなクレイモデルを成形するには、クレイモデルの半分をハンドワークにより成形し、対称となる反対側を同様に成形し、これを繰り返し行うことで最終的なデザインを決定するため、当該対称となる反対側を形成するときはデザイン活動の時間ではなく単純作業となり、時間が無駄になる。実際のデザイン現場では、数ヶ月に及ぶクレイモデル全製作時間の3割強が反対側の成形作業に割かれるという問題に直面している。また、対称形状を正確に成形することは難しく、全体的に違和感のあるものとなり易い。このため、比較的正確に反対側の加工を行うには、クレイモデル作製者に相当の技能レベルが要求され、これらの者の養成にも時間がかかってしまう。
【0005】
そこで、従来の造形モデル反転システムでは、基準面に対して対称な造形モデルの形成に際し、基準面の片側の半面モデルを基に、この半面モデルを反転した反転モデルをモデル用ワークから形成するものにおいて、半面モデル上の複数の代表点の位置を測定する測定装置と、基準面に対し代表点と対称な対応点を求める対応点算出手段と、モデル用ワークにおける対応点の位置に加工用目印をつけるマーキング装置と、対応点から他の対応点へマーキング装置を移動させる際の移動軌跡を算出する軌跡算出手段と、算出された移動軌跡に従ってマーキング装置を移動させる移動手段を設け、加工用目印が反転モデル上の点を示す情報として用いられるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平10−161721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の造形モデル反転システムには、クレイモデルに色彩を施す場合、この色彩を反対形状に転写する作業を自動的に行えるものがなかった。
【0008】
本発明は、上述の点に鑑み、色彩を施したクレイモデルの作製を正確に短時間で行うことができるモデル加工方法およびモデル加工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1に、本発明のモデル加工方法は、モデルの素材である色彩を施した、クレイ、樹脂その他の軟質加工物のハンドワークにより加工した一部分形状と色とをカメラで取得する形状と色との取得ステップと、形状と色との取得ステップで取得した軟質加工物の形状に対応した着色位置のデータを反転させて反転着色情報を取得する反転着色情報取得ステップと、反転着色情報に対応した塗装用の加工パスを生成する塗装用の加工パス生成ステップと、塗装用の加工パス生成ステップで生成した塗装用の加工パスに従って軟質加工物の別部分を、多軸アームロボット先端の塗装ヘッドにより塗装を行う着色ステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
上述のモデル加工方法によれば、形状と色との取得ステップで、ハンドワークにより加工した一部分形状と施された色彩とをカメラで取得し、軟質加工物の形状に対応した着色位置のデータを反転(鏡像となるように反転)させて、反転着色情報を取得する。さらに、塗装用の加工パス生成ステップで反転着色情報に対応した塗装用の加工パスを生成する。そして、着色ステップで、塗装用の加工パスに従って軟質加工物の別部分を、多軸アームロボット先端の塗装ヘッドにより塗装を行う。これにより、デザイナーは、クレイ等の軟質加工物の一部のみに色彩を施したデザインをすれば、軟質加工物の別部分については多軸アームロボットにより自動的に塗装されて色彩が施されるので、モデルの別部分に色彩を施す作業時間を大幅に短縮できる。この結果、クレイモデル等のモデル製作を正確且つ短時間で効率的に行える。この結果、モデル加工の作業効率を向上できる。なお、軟質加工物の一部分の形状の取得をステレオカメラで行う場合には、形状と色とのデータを同時に取得できる。
【0011】
第2に、本発明のモデル加工方法は、モデルの素材である色彩を施した、クレイ、樹脂その他の軟質加工物のハンドワークにより加工した一側面の形状と色とをカメラで取得する形状と色との取得ステップと、形状と色との取得ステップで取得した軟質加工物の形状を表す点群データから、STLデータを取得する曲面形状取得ステップと、STLデータにより表現した曲面を反転して反転形状のSTLデータを生成する反転ステップと、形状と色との取得ステップ取得した軟質加工物の形状に対応した着色位置のデータを反転させて反転着色情報を取得する、反転着色情報取得ステップと、反転形状のSTLデータと反転着色情報に基づき、塗装に必要な加工条件を設定し、塗装用の加工パスを生成する、塗装用の加工パス生成ステップと、塗装用の加工パス生成ステップで生成した塗装用の加工パスに従って軟質加工物の反対側面を多軸アームロボット先端の塗装ヘッドにより塗装を行う着色ステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
上述のモデル加工方法によれば、着色ステップで、塗装用の加工パスに従って軟質加工物の別部分を、多軸アームロボット先端の塗装ヘッドにより塗装を行う。これにより、デザイナーは、クレイ等の軟質加工物の一部のみに色彩を施したデザインをすれば、軟質加工物の別部分については多軸アームロボットにより自動的に塗装されて色彩が施されるので、モデルの別部分に色彩を施す作業時間を大幅に短縮できる。この結果、クレイモデル等のモデル製作を正確且つ短時間で効率的に行える。また、塗装用の加工パス生成ステップで、反転形状のSTLデータと反転着色情報に基づき、塗装に必要な加工条件を設定し、塗装用の加工パスを生成する。ここで用いるSTLは、曲面を三角パッチの集合体として表現したものであり、データ構造が簡単である。このSTLデータは、取得した点群データから自動かつ簡易に変換が可能であり、曲面を張る場合に比べて、処理が簡易且つ高速で行える利点がある。特に複雑な形状のモデルの場合、処理量が膨大になるが、点群データをSTLデータに変換し、これにより表現した曲面から加工パスを生成するようにすれば、短時間で処理が可能となる。これにより、ハンドワークにより複雑な形状を加工しても加工パスの生成までの時間を短縮できる。この結果、モデルの反転形状部分の成形時間を大幅に短縮できるので、モデル製作を正確且つ短時間で行える。この結果、モデル加工の作業効率を向上できる。なお、軟質加工物の一部分の形状の取得は、ステレオカメラで行う場合には、形状と色とのデータを同時に取得できる。
【0013】
第3に、本発明のモデル加工システムは、モデルの素材である色彩を施した、クレイ、樹脂その他の軟質加工物のハンドワークにより加工した一部分の形状と色とをカメラで取得する形状と色との取得手段と、形状と色との取得手段で取得した軟質加工物の形状に対応した着色位置のデータを反転させて反転着色情報を取得する反転着色情報取得手段と、反転着色情報に対応した塗装用の加工パスを生成する塗装用の加工パス生成手段と、塗装用の加工パス生成手段で生成した塗装用の加工パスに従って軟質加工物の別部分を、先端の塗装ヘッドにより塗装を行う多軸アームロボットと、を有することを特徴とする。
【0014】
上述のように構成することにより、形状と色との取得手段で、ハンドワークにより加工した一部分形状と施された色彩とをカメラで取得し、軟質加工物の形状に対応した着色位置のデータを、反転着色情報取得手段により反転(鏡像となるように反転)させて反転着色情報を取得する。さらに、塗装用の加工パス生成手段で反転着色情報に対応した塗装用の加工パスを生成する。そして、多軸アームロボットの先端に取り付けた塗装ヘッドにより、塗装用の加工パスに従って軟質加工物の別部分に対する塗装を行う。これにより、デザイナーは、クレイ等の軟質加工物の一部のみに色彩を施したデザインをすれば、軟質加工物の別部分については多軸アームロボットにより自動的に塗装されて色彩が施される。よって、この構成によれば、モデルの別部分に色彩を施す作業時間を大幅に短縮でき、しかもクレイモデル等のモデル製作を正確且つ短時間で効率的に行える。なお、軟質加工物の一部分の形状の取得をステレオカメラで行う場合には、形状と色とのデータを同時に取得できる。
【0015】
第4に、本発明のモデル加工システムは、モデルの素材である色彩を施した、クレイ、樹脂その他の軟質加工物のハンドワークにより加工した一側面の形状と色とをカメラで取得する形状と色との取得手段と、形状と色との取得手段で取得した軟質加工物の形状を点群データにより取得し、この点群データからSTLデータを取得する曲面形状取得手段と、STLデータにより表現した曲面を反転して反転形状のSTLデータを取得する反転手段と、形状と色との取得手段で取得した軟質加工物の形状に対応した着色位置のデータを反転させて反転着色情報を取得する、反転着色情報取得手段と、反転形状のSTLデータと反転着色情報に基づき、塗装に必要な加工条件を設定し、塗装用の加工パスを生成する、塗装用の加工パス生成手段と、塗装用の加工パス生成手段で生成した塗装用の加工パスに従って軟質加工物の反対側面を、先端の塗装ヘッドにより塗装を行う多軸アームロボットと、を有することを特徴とする。
【0016】
上述のように構成することにより、着色ステップでは、塗装用の加工パスに従って軟質加工物の別部分を、多軸アームロボット先端の塗装ヘッドにより塗装を行う。これにより、デザイナーは、クレイ等の軟質加工物の一部のみに色彩を施したデザインをすれば、軟質加工物の別部分については多軸アームロボットにより自動的に塗装されて色彩が施されるので、モデルの別部分に色彩を施す作業時間を大幅に短縮できる。この結果、クレイモデル等のモデル製作を正確且つ短時間で効率的に行える。また、塗装用の加工パス生成手段で、反転形状のSTLデータと反転着色情報に基づき、塗装に必要な加工条件を設定し、塗装用の加工パスを生成する。ここで用いるSTL(Stereo Lithography)は、曲面を三角パッチの集合体として表現したものであり、データ構造が簡単である。このSTLデータは、取得した点群データから自動かつ簡易に変換が可能であり、曲面を張る場合に比べて、処理が簡易且つ高速で行える利点がある。特に複雑な形状のモデルの場合、処理量が膨大になるが、点群データをSTLデータに変換し、これにより表現した曲面から加工パスを生成するようにすれば、短時間で処理が可能となる。これにより、ハンドワークにより複雑な形状を加工しても加工パスの生成までの時間を短縮できる。この結果、モデルの反転形状部分の成形時間を大幅に短縮できるので、モデル製作を正確且つ短時間で行える。この結果、モデル加工の作業効率を向上できる。なお、軟質加工物の一部分の形状の取得は、ステレオカメラで行う場合には、形状と色とのデータを同時に取得できる。
【0017】
第5に、本発明のモデル加工システムは、モデルの素材である色彩を施した、クレイ、樹脂その他の軟質加工物のハンドワークにより加工した一部分の形状と色とをカメラで取得する形状と色との取得手段と、形状と色との取得手段で取得した軟質加工物の形状に対応した着色位置のデータを反転させて反転着色情報を取得する反転着色情報取得手段と、反転着色情報に対応した塗装用の加工パスを生成する、塗装用の加工パス生成手段と、カメラを先端に選択して把持して形状と色とを取得可能とすると共に、塗装用の加工パス生成手段で生成した塗装用の加工パスに従って軟質加工物の別部分を、先端に選択して把持した塗装ヘッドにより塗装するように構成した多軸アームロボットと、多軸アームロボットと軟質加工物とを相対移動させる移動手段と、を有することを特徴とする。
【0018】
上述のように構成することにより、このモデル加工システムでは、加工手段と共に形状と色との取得手段を多軸アームロボットの先端に設け、形状と色との取得手段によりハンドワークにより加工を施した一部分の形状と色とを取得した後、移動手段により多軸アームロボットと軟質加工物を相対移動させて別部分が多軸アームロボットに向かって位置するようにし、この多軸アームロボット先端の塗装ヘッドにより軟質加工物の別部分を塗装するものである。このようにすれば、モデル加工システムの設置場所を小さくできるので、狭い場所でもモデルに対する塗装を行える。
【発明の効果】
【0019】
本発明のモデル加工方法およびモデル加工システムによれば、色彩を施したクレイモデルを効率良く作製する作業を行って、短時間で正確なモデルを作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、当業者により置換可能で且つ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、この発明の実施の形態1に係るモデル加工システムを示す構成図である。図2は、図1に示したモデル加工システムのCAD・CAM装置を示すブロック図である。このモデル加工システム100は、6軸制御の多軸アームロボット1と、モーターサイクル等のクレイモデルMの一側面側の形状を取得するカメラ2と、クレイモデルMの形状を点群データとして認識し、この点群データを三角パッチにより構成するSTLデータに変換する3次元CAD装置3と、3次元CAD装置3のCADデータから加工パスを生成するCAM装置4と(CAD装置およびCAM装置を合わせてCAD/CAM装置5とする)、クレイモデルMの3次元形状や加工パスを表示し、多軸アームロボット1のプログラミング等を行うコンピュータ装置6と、多軸アームロボット1のドライブユニット7とを有している。
【0022】
カメラ2は、2つのレンズを備えることで遠近感を測定することが可能であり、それぞれのレンズの焦点や露出を制御するカメラコントローラー21を有する。カメラ2は、高さ調整できる設置台22に設置され、且つクレイモデルMのハンドワーク側に配置される。CAD/CAM装置5には、生成した3次元形状を表示するLCDディスプレイ等の表示手段50が設けられている。
【0023】
多軸アームロボット1は、先端にクレイモデルMを切削するドリル等の工具11を備えており、前記クレイモデルMに対してハンドワーク側と反対側に配置される。ハンドワークにより形成した形状を当該ハンドワーク側の反対側に転写形成するためである。即ち、多軸アームロボット1の位置は、ハンドワークの反対側に反転形状を転写加工できる位置であればよく、常時ハンドワーク側と反対側に位置していなくても、加工の際に位置していれば良い。また、クレイモデルMと離れて設置していても、多軸アームロボット1の工具類がハンドワーク側と反対側の領域に位置できれば良い。
【0024】
また、本システムにおけるクレイモデルMの切削は、金属の切削加工に比べて加工機の剛性を比較的低く設定できるので、多軸アームロボット1を軽量化し、コンパクト化できる。具体例としては、本願出願人により販売提供される「可般式汎用知能アーム:PA−10」が好適である。通常であれば最も重量物となる多軸アームロボット1が軽量化されると、モデル加工システム自体の搬送が可能になる。例えば車両のコンテナに当該モデル加工システムを収納して搬送できる。
【0025】
具体的には、多軸アームロボット1の先端には、図7に示すように、筐体12内に収納したモータ13の回転軸14にドリル等の加工工具を取り付けるホルダ15が設けられており、このホルダ15に対して複数種類の工具11が取り付けられる。複数径のドリル、シェーパー、エンドミル等の工具が用いられる。ホルダ15は、スピンドル軸に限らず、多軸アームロボット1に第7軸となる制御軸を設け、この制御軸にホルダ15を取り付けても良い。
【0026】
また、コンピュータ装置6には、HDD等の補助記憶装置にロボット言語によりプログラミングされた所定のプログラムが格納されている。コンピュータ装置6は、CAD/CAM装置5の加工パスに従って多軸アームロボット1に所定の命令を出して動作の制御を行う。なお、コンピュータ装置6にて、図示しないティーチングボックス等からの入力により多軸アームロボット1の位置の教示を行うこと等が可能である。また、コンピュータ装置6は、例えば汎用のパーソナルコンピュータに多軸アームロボット1の運動制御用CPUボードを組み込んで簡単に構成できる。
【0027】
図2を参照してCAD/CAM装置5の機能を説明すると、このCAD/CAM装置5は、カメラ2により取得した画像からハンドワーク後のクレイモデルMの曲面形状を取得する曲面形状取得部51と、曲面形状取得部51により取得したクレイモデルMのハンドワーク後の形状をクレイモデルMの反対側に実現するために必要となる反転形状を得る反転形状取得部52と、クレイモデルMのハンドワーク側の実際の曲面形状と当該曲面形状の反転形状とを合成してクレイモデルMの3次元画像を生成する3次元画像生成部53と、曲面形状から加工パスを生成する加工パス生成部54と、多軸アームロボット1とクレイモデルMとの位置関係を校正するキャリブレーション実行部55を備えている。なお、上記図1では、CAD装置、CAM装置を別のハードウエアとして説明したが、図2に示したように単一の汎用コンピュータにCAD/CAM装置5の各機能を実現するためのプログラムをインストールして構成することもできる。
【0028】
反転形状取得部52は、後に詳述するがクレイモデルMの表面を実際にカメラ2により測定して当該クレイモデルMのハンドワーク側の曲面形状を点群データとし、この点群データを反転した後、この反転した点群データから三角パッチを形成し、当該三角パッチにより反転形状の曲面を表現する。
【0029】
図3は、このモデル加工システムの動作を示すフローチャートである。まず、ユーザは、加工するクレイモデルMに対してその一方側にカメラ2を設置し、その反対側に多軸アームロボット1を設置する。設置位置は、多軸アームロボット1の加工領域の範囲内であれば、厳密に位置合わせする必要はない。この設置状態か或いはその前に、ユーザは、クレイモデルMに対してへらや型等を用いて手を加えつつデザインを行う(ハンドワーク)。このデザインは、通常、デザインCAD等により大まかには決定されているので、まず決定済みのデザインに係るクレイモデルMを作成し、このクレイモデルMに対してハンドワークを加えることになる。そして、曲面形状取得部51は、クレイモデルMのうち、カメラ2によりハンドワークを加えた側の形状を撮影する(ステップS1)。
【0030】
カメラ2により撮影した画像データはCAD/CAM装置5に送られ、図4に示すような点群データとして取得される(ステップS2)。なお、ここでは点群データを取得する方法として立体視できるカメラ2を用いたが、タッチプローブによりクレイモデルMの表面の多数の地点を測定することで取得するようにしても良い。しかしながら、処理速度が速いこと、軟質のクレイに接触しないのでプローブの押し痕をつけないことから、立体視できるカメラ2により点群データを取得するのが好ましい。
【0031】
次に、取得した点群データを反転処理する(ステップS3)。点群データは、3次元のX,Y,Z座標で表現されており、反転の基準面を入力することで簡単に反転処理の計算を行うことができる。続いて、反転した点群データを複数の三角パッチからなるSTLデータに変換する(ステップS4)。図5に、STLデータに変換した三角パッチにより曲面を表現した場合を示す。点群データから三角パッチを生成することは、通常のCAD装置において採られる手法であり、この三角パッチの集合体によりクレイモデルの曲面形状が表現される。こうして得られた反転形状は、クレイモデルMのハンドワーク側の反対側に相当する。なお、反転形状を生成する場合、最初に取得した点群データの状態でSTLデータを生成し、このSTLデータを反転させることで生成するようにしても良い。
【0032】
次に、多軸アームロボット1とクレイモデルMとの設置位置のキャリブレーションを行う(ステップS5)。キャリブレーションの手順については、後述する。続いて、加工パスの生成に先立ち、加工条件の設定を行う(ステップS6)。例えば加工に用いる工具、加工方法、加工領域、加工パラメータ等の設定である。勿論、加工に必要なデータは、CAD/CAM装置5の補助記憶装置または外部記憶装置に記憶してある。
【0033】
加工条件の設定が終了したら、反転形状のSTLデータに基づいてCAD/CAM装置5の加工パス生成部54がクレイモデルMの加工パスを生成する(ステップS7)。図6は、生成した加工パスの一例を示す説明図である。また、加工パスを実行する際の多軸アームロボット1の軌道データを生成する(ステップS8)。即ち、ハンドワーク側と反対側を多軸アームロボット1のみで且つロボット自体が移動することなく加工を行うので、クレイモデルMの形状によってはアームが干渉する場合があり、それ故にアームの干渉を防止するような軌道を生成する必要がある。例えば加工対象であるクレイモデルMの状態に応じて、当該クレイモデルMの加工部分に対するアプローチの方法を加工前に予め決定しておき、実際の加工時に最適のアプローチを選択するようにする。また、アウェイの軌跡についてもアプローチ軌跡と同じ軌跡を選択するか、或いは加工後の形状に基づいて自動生成するようにしても良い。
【0034】
生成した加工パスは、CAD/CAM装置5からコンピュータ装置6に送られ、コンピュータ装置6は加工パスに従って多軸アームロボット1のロボット言語に基づいて指令を出す。ドライバユニット7は、コンピュータ装置6の指令に従い、多軸アームロボット1を駆動し、クレイモデルMの加工を行う(ステップS9)。多軸アームロボット1によりハンドワーク側と反対側を加工することで、クレイモデルMはハンドワーク形状を反対側に転写した状態となる。また、この転写した状態で表示手段50により表示した3次元画像と同一の形状となり、ユーザは実物大のクレイモデルMを実際に認識できる。
【0035】
なお、上記説明ではドリルによる切削用の加工パスを生成したが、肉盛り用の加工パスを別途生成して、肉盛り加工を行うこともできる。肉盛り加工を行う場合は、肉盛り加工用のヘッドを多軸アームロボット1の先端に設置するようにする。肉盛り加工用のヘッドについては後述する。
【0036】
次に、ユーザは、実際に加工した後のクレイモデルMを参照して、デザイン作業を終了するか否かを決定する(ステップS10)。リデザインを行う必要がある場合は、再びハンドワークによりクレイモデルMの片側の成形を行う(ステップS11)。このハンドワークによりクレイモデルMのハンドワーク側の形状が変更されることになるので、上記ステップS1〜ステップS9を再び実行し、ハンドワーク形状の反転形状を転写する。
【0037】
ここで、ハンドワークにより修正した部分が一部である場合、当該部分のみの加工パスを生成するようにしてもよい。即ち、図8のフローチャートに示すように、CAD/CAM装置5によりハンドワークで形成した形状と、前回のハンドワークで形成した形状とを点群データとして比較し(ステップS12)、リデザインした今回のハンドワークにより修正した部分を抽出する(ステップS13)。より具体的には、CAD/CAM装置5の曲面形状取得部51により今回修正したクレイモデルの形状を点群データとして取得し、今回の修正形状の点群データと前回の形状の点群データとを逐次比較し(比較部56)、異なるデータを抽出する。そして、データを反転してSTLデータを生成し、このSTLデータで表現された反転形状に基づいて加工パスを生成する。このときキャリブレーションの必要性および加工条件設定に変更があるか否か判断する(ステップS14)。
【0038】
このように処理することで、余分な加工パスを生成して無駄にクレイモデルMの表面をトレースするのを防止できるから、リデザイン時の反転形状の加工時間を短縮できる。特に、クレイモデルMの製作は何度もリデザインを行うのが常であるから、係る処理方法が加工時間の短縮には極めて好適である。
【0039】
以上のように、ハンドワークにより形成した形状を取得してこれを反転させ、その反転形状の加工パスに基づいてハンドワーク側と反対側を転写加工するようにすれば、作業時間を極めて短縮でき、形状転写の高度の技能を作業者に要求する必要がなく、正確な転写加工が可能になる。
【0040】
また、上記実施の形態では、加工対象物であるクレイモデルを動かすことなく、ハンドワーク側から形状を取得し、その反転形状をハンドワーク側と反対側から転写加工しているが、図9に示すように、クレイモデルMを回転テーブル8に載せ、ハンドワーク側でクレイモデルMをデザインし且つ形状を取得した後、回転テーブル8を180度回転させ、ハンドワーク側から反転形状の転写加工を行うようにしてもよい。この場合、カメラ2と多軸アームロボット1は、ハンドワーク側に設置する。
【0041】
また、多軸アームロボット1は、移動用のパレット81に設置してレール82に沿って移動できるようにするのが好ましい。その際、回転テーブル8は、太鼓形状とするのが好ましい。回転テーブル8の辺部分8aを以って多軸アームロボット1をクレイモデルMに近接できる。
【0042】
さらに、上記回転テーブル8には、回転角度の位置決め装置83を設けるのが更に好ましい。位置決め装置83は、例えば回転テーブル8の側面に設けた角度の目盛84と、回転テーブル8を固定するクランプ装置85とから構成してもよい。回転角度の位置決めを行うことで、クレイモデルMを回転させた場合に多軸アームロボット1との相対位置を校正するためのキャリブレーションを行う必要がなくなる。また、クレイモデルMのハンドワークと反対側を加工する場合において、クレイモデルMを動かすときは、回転テーブル8以外の移動手段を採用できる。例えば円弧状のレール上でテーブルを動かすようにしてもよい(図示省略)。
【0043】
この場合、カメラ2は、多軸アームロボット1の先端に取り付けることもできる。このようにすれば、カメラ2の設置台を省略できる。また、クレイモデルMの形状が複雑な場合でも、カメラ2のアングルを自由に変更できるので、ハンドワークによる形状を完全に取得できる。
【0044】
上記肉盛り装置9は、図10の(a)に示すように、先端からクレイを出す肉盛りヘッド91と、肉盛り用のクレイを搬送する搬送管92と、クレイを溜めておくタンク93とを有する。クレイは、タンク93内に乾燥した粉末の状態で貯留されている。搬送管92の端部にはポンプ94が設けられ、係るポンプ94によりタンク93から肉盛りヘッド91まで粉末状のクレイが強制的に搬送される。また、図10(b)に示すように、肉盛りヘッド91は一時的に乾燥粉末のクレイを溜める貯留部95を備え、更に貯留部95に水を導入する水供給装置96を備える。また、貯留部95には、簡易の撹拌インペラが設けられており(図示省略)、粉末状のクレイを貯留部95に溜めた状態で、水供給装置96から貯留部95内に水を入れ、クレイがある程度の流動状態となったとき、肉盛りヘッド91の先端ノズル97からポンプ等の図示しない繰り出し手段により繰り出す。
【0045】
なお、肉盛り装置9は、上記構成に限定されない。即ち、多軸アームロボット1の先端に肉盛りヘッド91から流動状態としたクレイを加工対象であるクレイモデルMの表面に被着させることができれば、どのような構成を用いてもよい。また、樹脂材料によりモデルを製作する場合は、樹脂粉末を溶融させるヒーター等を肉盛りヘッド91内に設け、溶融した樹脂を肉盛りヘッド91から繰り出すようにすればよい。更に、肉盛りヘッドを溶射ガンのような構成とし、加熱した樹脂をモデル表面に溶射するようにしてもよい。
【0046】
また、図11に示すように、多軸アームロボット1の先端にハンド101を設け、このハンド101により各種の加工工具や肉盛りヘッド、カメラ等を選択して把持し、加工を行うようにしてもよい。具体的には、符号103がドリルヘッド、符号104がカメラヘッド、符号105が肉盛りヘッド、符号106が塗装ヘッドである。ドリルヘッド103や肉盛りヘッド104は、近傍に設置したストッカにストックしておく。ハンド101は、ハンド101に設けたモータまたはシリンダー等のアクチュエータにより動作し、コンピュータ装置の命令により制御される。一方、加工工具11等には、ハンド101により把持するための把持部102が設けられている。ハンド101は、各ヘッドの把持部102を把持固定し、加工を行う。
【0047】
次に、クレイモデルMに色彩を施す場合、この色彩を反対形状に転写するのは、切削加工の場合と同様に極めて手間のかかる作業である。この発明では、ハンドワーク形状に着色した場合、カメラ2によりハンドワーク側の色を取得し、この着色位置を反転させて反転着色情報を取得し、当該反転着色情報に基づいてクレイモデルMの反対形状を着色するようにしても良い(図示省略)。これらの処理は、CAD/CAM装置5、コンピュータ装置6により行う。また、着色作業は、多軸アームロボット1の先端で把持する塗装ヘッド106により行うことができる。より具体的には、反転形状のSTLデータに基づき、塗装に必要な加工条件を設定し、塗装用の加工パスを生成する。そして、この加工パスに従い多軸アームロボット1を制御し、先端に把持した塗装ヘッド106により自動的に塗装を行う。このようにすれば、クレイモデルMに着色する必要がある場合でも、クレイモデルMの半分に着色を行うことで残りの半分を自動的に着色できるから、作業時間を短縮でき、且つ色を正確に転写できる。
【0048】
また、多軸アームロボット先端のドリルヘッド103と肉盛りヘッド105とを併用した場合は、次のような加工が可能である。図12は、工具と肉盛りヘッドとを併用した場合の加工例を示す説明図である。クレイモデル(同図(a))のハンドワーク側に対し、切削および肉盛りをハンドワークで行うことで所定のリデザインを施した場合(同図(b))、ハンドワークの形状HDをカメラ2で取得して、上記同様にこれを点群データとして取得する。次に、当該新しく取得した点群データを反転して、前回の点群データ(前回の加工時に反転して得た点群データ)とを比較し、切削部分および肉盛り部分を抽出する(同図(c))。例えば(c)に示すように、A部分を切削部分、B部分を肉盛り部分として抽出する(実際には3次元的に抽出する)。
【0049】
そして、抽出した各部分の点群データからSTLデータを生成し、所定の加工条件を設定した後、加工パスを生成する。多軸アームロボットの先端には、図11で示したように、ドリルヘッド103と肉盛りヘッド105とを選択的に用いることができるハンド101が設けられており、このハンド101によりドリルヘッド103を把持し、或いは肉盛りヘッド105に持ち替えて加工を行う。即ち、前記切削部分Aはドリルヘッド103により、前記肉盛り部分Bは肉盛りヘッド105により加工を施し、ハンドワーク側の反転形状を転写する(同図(d))。なお、肉盛りにより寸法精度が著しく低下する場合は、一旦肉盛りを施した後に切削加工を行うようにするのが好ましい。このようにすれば、ハンドワークによるリデザインを自由に行え、且つそのハンドワーク形状の反転形状を正確かつ短時間に転写加工できる。実際のデザインの現場では、切削し過ぎた部分にクレイを追加して再び切削を行うケースが頻繁に起こり得るので、ドリルヘッド103と肉盛りヘッド105との併用はクレイモデルMの製作に好適なものとなる。
【0050】
次に、多軸アームロボットとクレイモデルとの位置関係についてキャリブレーションを行う。第一の方法として、多軸アームロボット1の先端にタッチプローブを設け(ハンドにより把持してもよい)、一方、クレイモデルMの設置台の特定位置にクレイモデルMの座標系の基準となる基準点を設ける。多軸アームロボット1は、この基準点をタッチプローブにより触ることでクレイモデルMに対する位置関係を取得する。そして、マッチング法により多軸アームロボット1の座標系をクレイモデルMの座標系にマッチングさせる。
このようにすれば、簡単な計算により多軸アームロボット1とクレイモデルMとの位置関係のキャリブレーションが行える。
【0051】
第二の方法として、3次元測定器によりクレイモデルMの基準点を計測し、多軸アームロボット1の先端に設けたタッチプローブにより同じ基準点を計測し、クレイモデルMと多軸アームロボット1の位置関係を取得し、この双方の位置ずれを算出する。算出した位置ずれは、多軸アームロボット1の座標系に対してキャリブレーションデータとして付加される。このようにすれば、多軸アームロボット1の座標系を基準としてクレイモデルMを設置する必要があったが、クレイモデルMを移動させることなく加工を続行できる。このため、加工後のクレイモデルMにゆがみや歪が生じない。
【0052】
(実施の形態2)
図13は、この発明の実施の形態2に係るモデル加工システムを示す構成図である。このモデル加工システム200は、自動車のクレイモデルMCのような大型のものに適したものであり、多軸アームロボット1を一箇所に固定した場合の加工領域では不足しているとき、多軸アームロボット1をクレイモデルMCに沿って敷設したレール201上を移動させることで加工領域の拡大を図るものである。多軸アームロボット1は、レール201上を移動するテーブル202上に設置される。レール201上の移動は、直動装置により行う。直動装置は、例えばテーブル202にモータおよび減速機を設け、回転軸にギアを設け、レール201に設けたラックとかみ合うようにして構成できる(図示省略)。
【0053】
テーブル202の位置は、センサーにより検出するようにしても良いが、テーブル202にクランプ装置を設けると共にレール201の特定複数位置にマークをつけ、当該テーブル202を任意のマークに合わせて固定するようにするのが経済的である。この他、センサーを用いず、機械的にテーブル202を位置決めできる機構であれば、マークとクランプ装置の組み合わせ以外であっても良い。しかしながら、機械的に位置決めした場合でも、多軸アームロボット1の位置をCAD/CAM装置5が認識する必要がある。例えばユーザが位置を入力するか、または、リミットスイッチのような接触型あるいは超音波センサーのような非接触型のスイッチを各所定位置に設置しておき、このスイッチの出力によりCAD/CAM装置5に位置情報が入力されるようにしても良い。
【0054】
また、同図では、レール201が直線的に配置されているが、クレイモデルMCの周囲に沿って湾曲しても良い(図示省略)。このように、多軸アームロボット1をレール上で移動させることで、簡単な構成により加工領域を拡大できる。
【0055】
(実施の形態3)
図14は、この発明の実施の形態3に係るモデル加工システムを示す構成図である。このモデル加工システム300は、遠隔地のモデル加工システム100A,100B同士を通信回線301により接続した構成である。このモデル加工システム300では、CAD/CAM装置5Aを構成するコンピュータのモデムその他のDCE(データ回線終端装置)302が、電話回線や、LAN、WAN、インターネット等の通信回線301を介して、他のCAD/CAM装置5Bを構成するコンピュータのDCE302と接続されている。各モデル加工システム100A,100Bは、上記実施の形態1または2に記載のものと略同じ構成である。
【0056】
図15は、モデル加工システムの動作を示すフローチャートである。まず、地点Aに存在するモデル加工システム100A側において、ユーザがハンドワークによりクレイモデルMAを成形する(ステップS31)。そして、このクレイモデルMAのハンドワーク側の形状をカメラ2Aにより取得し(ステップS32)、この画像データを圧縮する(ステップS33)。圧縮した画像は、CAD/CAM装置5AのDCE302により変調され、例えばインターネット301を介して、別の場所である地点Bに存在するクレイ加工システム100Bのコンピュータに送信される。画像データを受信したコンピュータでは、圧縮したクレイモデルMAの画像データを解凍し(ステップS34)、CAD/CAM装置5Bの記憶装置に一旦記憶し、当該形状を点群データとして取得する(ステップS35)。
【0057】
次に、CAD/CAM装置5Bでは、この点群データを反転してハンドワーク側のクレイモデルMBの全体形状を生成し、当該点群データをSTLデータに変換する(ステップS36,S37)。これにより、遠隔地においてハンドワークで成形したクレイモデルMAの全体形状を三角パッチにより表現する。次に、地点Bのクレイ加工システム100BのCAD/CAM装置5は、ハンドワークを施していない未加工のクレイと、多軸アームロボット1とのキャリブレーションを行い(ステップS38)、加工条件の設定を行う(ステップS39)。続いて、クレイモデルMBの全体形状を加工するための加工パスを生成し(ステップS40)、多軸アームロボット1の先端の工具により、クレイモデルMBの加工を行う(ステップS41)。これにより、地点Aのハンドワーク形状を反映した、全体形状のクレイモデルMAを地点Bにおいて再現成形できる。
【0058】
また、地点BのCAD/CAM装置5Bにおいて成形した反転形状を地点AのCAD/CAM装置5Aに戻すようにしても良い(ステップS42)。地点BのCAD/CAM装置5では、この反転形状の加工パスからクレイモデルMに転写加工を行う(ステップS43)。また、地点AのCAD/CAM装置5側でも反転形状の加工パスを生成し、クレイモデルMの転写加工を行うようにしても良い。
【0059】
次に、地点Bのリデザインを地点Aのクレイ加工システムに反映することもできる。まず、地点Bにおいて、クレイモデル全体を検討し、当該クレイモデルにハンドワークを施す(ステップS44)。地点Bのクレイ加工システムでは、ハンドワークを施した形状をカメラ2により撮影し、この画像データを圧縮する(ステップS45,S46)。圧縮した画像は、CAD/CAM装置5BのDCE302Bにより変調され、例えばインターネット301を介して、地点Aに存在するクレイ加工システム100Aのコンピュータに送信される。画像データを受信したコンピュータでは、圧縮したクレイモデルの画像データを解凍し(ステップS47)、CAD/CAM装置5Aの記憶装置に一旦記憶し、当該形状を点群データとして取得する(ステップS48)。この後の処理は、上記ステップS36〜ステップS41と同様の処理となる。
【0060】
以上から、このクレイ加工システム300では、通信手段により遠隔地のクレイ加工システム100A,100B同士を接続し、相互のデザインをクレイモデルMA,MBに反映しながら作業できる。このため、デザイナー等が特定の地点に集合する必要がない。例えば、海外に設置したクレイ加工システム100Aと国内に設置したクレイ加工システム100Bとを接続することで、世界規模で共同デザイン開発が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように本発明に係わるモデル加工方法およびモデル加工システムは、曲面形状を機械加工して作成し、さらに塗装処理をして彩色を施した三次元の軟質加工物を、CAD/CAM装置等を利用して自動的に製作する手段として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の実施の形態1に係るモデル加工システムを示す構成図である。
【図2】図1に示したモデル加工システムのCAD/CAM装置を示すブロック図である。
【図3】このモデル加工システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】点群データの一例を示す概念図である。
【図5】STLデータの一例を示す概念図である。
【図6】加工パスの一例を示す概念図である。
【図7】多軸アームロボットの先端に設けた加工軸の簡略構成図である。
【図8】このモデル加工システムの動作の変形例を示すフローチャートである。
【図9】このモデル加工システムの変形例を示す説明図である。
【図10】肉盛り装置の一例を示す構成図である。
【図11】ハンドによりドリルヘッド等を選択的に把持する場合の説明図である。
【図12】工具と肉盛りヘッドとを併用した場合の加工例を示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態2に係るモデル加工システムを示す構成図である。
【図14】この発明の実施の形態3に係るモデル加工システムを示す構成図である。
【図15】モデル加工システムの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
100 モデル加工システム1 多軸アームロボット2 カメラ3 3次元CAD装置4 CAM装置5 CAD/CAM装置6 コンピュータ装置7 ドライブユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モデルの素材である色彩を施した、クレイ、樹脂その他の軟質加工物のハンドワークにより加工した一部分形状と色とをカメラで取得する、形状と色との取得ステップと、
前記形状と色との取得ステップで取得した前記軟質加工物の形状に対応した着色位置のデータを反転させて、反転着色情報を取得する反転着色情報取得ステップと、
前記反転着色情報に対応した塗装用の加工パスを生成する、塗装用の加工パス生成ステップと、
前記塗装用の加工パス生成ステップで生成した前記塗装用の加工パスに従って前記軟質加工物の別部分を、多軸アームロボット先端の塗装ヘッドにより塗装を行う着色ステップと、
を有することを特徴とするモデル加工方法。
【請求項2】
モデルの素材である色彩を施した、クレイ、樹脂その他の軟質加工物のハンドワークにより加工した一側面の形状と色とをカメラで取得する形状と色との取得ステップと、
前記形状と色との取得ステップで取得した前記軟質加工物の形状を表す点群データから、STLデータを取得する曲面形状取得ステップと、
前記STLデータにより表現した曲面を反転して反転形状のSTLデータを生成する反転ステップと、
前記形状と色との取得ステップ取得した前記軟質加工物の形状に対応した着色位置のデータを反転させて反転着色情報を取得する、反転着色情報取得ステップと、
前記反転形状のSTLデータと前記反転着色情報に基づき、塗装に必要な加工条件を設定し、塗装用の加工パスを生成する、塗装用の加工パス生成ステップと、
前記塗装用の加工パス生成ステップで生成した前記塗装用の加工パスに従って前記軟質加工物の反対側面を多軸アームロボット先端の塗装ヘッドにより塗装を行う着色ステップと、
を有することを特徴とするモデル加工方法。
【請求項3】
モデルの素材である色彩を施した、クレイ、樹脂その他の軟質加工物のハンドワークにより加工した一部分の形状と色とをカメラで取得する形状と色との取得手段と、
前記形状と色との取得手段で取得した前記軟質加工物の形状に対応した着色位置のデータを反転させて反転着色情報を取得する、反転着色情報取得手段と、
前記反転着色情報に対応した塗装用の加工パスを生成する、塗装用の加工パス生成手段と、
前記塗装用の加工パス生成手段で生成した前記塗装用の加工パスに従って前記軟質加工物の別部分を、先端の塗装ヘッドにより塗装を行う多軸アームロボットと、
を有することを特徴とするモデル加工システム。
【請求項4】
モデルの素材である色彩を施した、クレイ、樹脂その他の軟質加工物のハンドワークにより加工した一側面の形状と色とをカメラで取得する形状と色との取得手段と、
前記形状と色との取得手段で取得した前記軟質加工物の形状を点群データにより取得し、当該点群データからSTLデータを取得する曲面形状取得手段と、
前記STLデータにより表現した曲面を反転して反転形状のSTLデータを取得する反転手段と、
前記形状と色との取得手段で取得した前記軟質加工物の形状に対応した着色位置のデータを反転させて反転着色情報を取得する、反転着色情報取得手段と、
前記反転形状のSTLデータと前記反転着色情報に基づき、塗装に必要な加工条件を設定し、塗装用の加工パスを生成する、塗装用の加工パス生成手段と、
前記塗装用の加工パス生成手段で生成した前記塗装用の加工パスに従って前記軟質加工物の反対側面を、先端の塗装ヘッドにより塗装を行う多軸アームロボットと、
を有することを特徴とするモデル加工システム。
【請求項5】
モデルの素材である色彩を施した、クレイ、樹脂その他の軟質加工物のハンドワークにより加工した一部分の形状と色とをカメラで取得する形状と色との取得手段と、
前記形状と色との取得手段で取得した前記軟質加工物の形状に対応した着色位置のデータを反転させて反転着色情報を取得する反転着色情報取得手段と、
前記反転着色情報に対応した塗装用の加工パスを生成する、塗装用の加工パス生成手段と、
前記カメラを先端に選択して把持して形状と色とを取得可能とすると共に、前記塗装用の加工パス生成手段で生成した前記塗装用の加工パスに従って前記軟質加工物の別部分を、先端に選択して把持した塗装ヘッドにより塗装するように構成した多軸アームロボットと、
前記多軸アームロボットと前記軟質加工物とを相対移動させる移動手段と、
を有することを特徴とするモデル加工システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−220128(P2007−220128A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62013(P2007−62013)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【分割の表示】特願2002−179030(P2002−179030)の分割
【原出願日】平成14年6月19日(2002.6.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】