説明

リピータ回路、リピータ回路設計装置、リピータ回路設計プログラムおよびリピータ回路設計方法

【課題】複数の電源電圧条件下であっても適切な遅延をおこなうリピータ回路を提供する。
【解決手段】リピータ回路100は、複数の電源電圧条件下で利用される設計対象回路に搭載され、電源電圧条件ごとに前記設計対象回路を流れる信号の伝送タイミングを遅延させるリピータが挿入された複数の伝送路110、120と、設計対象回路を動作させる電源電圧条件に応じて、前記複数の伝送路の中からいずれか一つの伝送路を選択して当該伝送路に前記信号を伝送させる伝送制御部130とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の電源電圧条件下で利用される設計対象回路に搭載するリピータ回路と、このリピータ回路を設計するリピータ回路設計装置、リピータ回路設計プログラムおよびリピータ回路設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回路を構成するブロック間をつなぐ伝送路や、LSI内部の伝送路が長距離になる場合には、伝送路を流れる信号の伝送タイミングを最適なものに調整する技術が提供されている。信号の伝送タイミングを最適化することによって、回路やLSIの性能が最大限に引き出されるため結果として性能を向上させることができる。
【0003】
信号の伝送タイミングを調整するための手法として、一般的には、伝送路にバッファ機能を備えたリピータを挿入する手法がある。このとき、回路の使用条件に応じた伝送路のバッファリング間隔をルール化しておき、このルールに従って最適なバッファリング間隔となるような設定でリピータの挿入間隔を設定する(たとえば、下記特許文献1参照。)。
【0004】
上述のように、リピータが挿入された伝送路をリピータ回路とよび、具体的には、下記のような手順によって設計される。図10は、従来のリピータ回路の設計手順を示すフローチャートである。図10のフローチャートにおいて、まず、設計装置は、設計対象回路(リピータ回路が挿入される回路)のフロアプランを取得すると(ステップS1001)、フロアプランに応じて電源配線(ステップS1002)、セル配置(ステップS1003)をおこない、配線の設計をおこなう(ステップS1004)。
【0005】
配線の設計が終了すると、つぎに、リピータ挿入ルールを取得し(ステップS1005)、このリピータ挿入ルールにしたがって伝送路にリピータ挿入する(ステップS1006)。その後、リピータ挿入後の伝送路の容量抽出し(ステップS1007)、抽出した容量から遅延計算をおこない(ステップS1008)、計算結果から適切な伝送タイミングとなっているかをチェックし(ステップS1009)、チェック結果に問題がなければ一連の処理が終了する。
【0006】
このように、リピータ回路は、設計対象回路の物理的構成や電源電圧条件に基づいて、信号が所定時間遅延して伝送されるように設計される。このようなリピータ回路を挿入することによって設計対象回路では、最適なタイミングで信号が伝送され、正しい動作が実行される。
【0007】
【特許文献1】特開2006−65669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したような従来のリピータ回路の場合、リピータ回路が搭載された回路やLSIは、一定の電源電圧条件下で利用されることが前提となっていた。しかしながら、近年は、電源電圧の異なる複数の動作モードによって動作させる機器が多く提供されている。このような機器に搭載する回路やLSIの場合、いずれか一方の動作モードの電源電圧条件に基づいてリピータ回路を設計しても、他の動作モードによって動作させる場合には、信号の伝送速度が変化するためリピータ回路を構成する伝送路間の伝送タイミングが変化してしまう。
【0009】
したがって、リピータ回路の挿入によって一の伝送モードでは最適な伝送タイミングに調整されていても、他の動作モードでは、最適な伝送タイミングとはならず、回路を正しく機能させることができなかったり、要求される性能を満たす動作を実行させることができないという問題があった。
【0010】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、複数の電源電圧条件で利用する場合であっても、最適な遅延調整をおこなうことのできるリピータ回路と、上記の機能を備えたリピータ回路を設計するリピータ回路設計装置、リピータ回路設計プログラムおよびリピータ回路設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、このリピータ回路は、複数の電源電圧条件下で利用される設計対象回路に搭載するリピータ回路であって、前記電源電圧条件ごとに前記設計対象回路を流れる信号の伝送タイミングを遅延させるリピータが挿入された複数の伝送路と、前記設計対象回路を動作させる電源電圧条件に応じて、前記複数の伝送路の中からいずれか一つの伝送路を選択して当該伝送路に前記信号を伝送させる伝送制御手段とを備えることを要件とする。
【0012】
このリピータ回路では、設計対象回路を動作させる電源電圧の条件が複数存在する場合には、これら各電源電圧条件下それぞれにおいて、最適な伝送タイミングによって信号を伝送するようにリピータが挿入された伝送路(リピータ挿入伝送路)が用意される。そして、伝送制御部によって電源電圧条件に対応したリピータ伝送路に信号が出力されるため、電源電圧条件の変更によって信号の伝送速度が変化した場合であっても、信号の伝送を最適なタイミングに調整することができる。
【0013】
また、上記のリピータ回路において、前記伝送制御手段は、外部からの制御信号に応じて前記信号の出力を制御する出力制御手段を備え、前記出力制御手段は、前記複数の伝送路の前段にそれぞれ接続されていてもよい。
【0014】
このリピータ回路によれば、外部からの制御信号に応じて設計対象回路が動作する電源電圧条件に対応したリピータ挿入伝送路に接続された出力制御手段が信号を出力するように制御することができる。
【0015】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するため、このリピータ回路設計装置、リピータ回路設計プログラムおよびリピータ回路設計方法は、複数の電源電圧条件下で利用される設計対象回路の中の伝送タイミングの調整を要する回路間に搭載して、当該回路間の信号の伝送タイミングを調整するリピータ回路を設計するものであって、前記設計対象回路によって利用する電源電圧条件に関する情報を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された電源電圧条件に関する情報を参照し、各電源電圧条件において、前記回路間の伝送路へ挿入するリピータの配置間隔を算出する算出手段と、前記伝送路に前記算出手段によって算出された配置間隔でリピータを挿入したリピータ挿入伝送路を前記電源電圧条件ごとに生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された複数のリピータ挿入伝送路の中からいずれか一つの伝送路を選択して当該伝送路に信号を伝送させる伝送制御回路を特定する特定手段と、前記複数のリピータ挿入伝送路の前段に前記特定手段によって特定された伝送制御回路を配置したリピータ回路の設計情報を構成する構成手段と、を備えることを要件とする。
【0016】
このリピータ回路設計装置、リピータ回路設計プログラムおよびリピータ回路設計方法によれば、上記のような構成のリピータ回路を設計対象回路の電源電圧条件に応じて設計することができる。
【0017】
また、上記のリピータ回路設計装置、リピータ回路設計プログラムおよびリピータ回路設計方法において、前記算出手段は、電源電圧条件ごとに、前記伝送路の長さに応じた遅延値が前記リピータを含んだ前記伝送路の遅延値以上になる場合に、前記伝送路長の中間値を前記リピータの配置間隔として算出してもよい。
【0018】
このリピータ回路設計装置、リピータ回路設計プログラムおよびリピータ回路設計方法によれば、特定の遅延値のリピータを利用した場合に、このリピータによって最適な伝送タイミングを実現するための配置間隔を算出することができる。
【0019】
また、上記のリピータ回路設計装置、リピータ回路設計プログラムおよびリピータ回路設計方法において、前記第1の取得手段は、前記設計対象回路によって利用される電源電圧条件の上限値と下限値を取得し、前記算出手段は、前記電源電圧条件の上限値から下限値までの各電源電圧条件における伝送路へのリピータの配置間隔を算出して、電源電圧条件とリピータの配置間隔をあらわす算出値テーブルを作成し、前記生成手段は、前記算出値テーブルを参照して、前記伝送路に電源電圧条件に応じた配置間隔でリピータを挿入したリピータ挿入伝送路を生成してもよい。
【0020】
このリピータ回路設計装置、リピータ回路設計プログラムおよびリピータ回路設計方法によれば、あらかじめ電源電圧条件の段階的な変化に応じてそれぞれ最適なリピータの配置間隔を算出しておき、電源電圧条件と算出結果とを対応させた算出値テーブルを作成することができる。算出値テーブルを作成しておくことによって、逐一リピータの配置間隔を算出することなく、電源電圧条件から一意的に最適な配置間隔を特定することができる。
【0021】
また、上記のリピータ回路設計装置、リピータ回路設計プログラムおよびリピータ回路設計方法において、前記第1の取得手段は、前記伝送路が配線される配線層に応じた前記伝送路および前記リピータの遅延値に関する情報を取得し、前記算出手段は、前記第1の取得手段によって取得した配線層に応じた前記伝送路および前記リピータの遅延値を参照して、前記伝送路の長さに応じた遅延値が前記リピータを含んだ前記伝送路の遅延値以上になる場合に、前記伝送路長の中間値を前記リピータの配置間隔としてもよい。
【0022】
このリピータ回路設計装置、リピータ回路設計プログラムおよびリピータ回路設計方法によれば、リピータ回路を搭載する伝送路の配線層の違いによって生じる遅延値の変化を考慮して、信号の伝送タイミングが最適なものとなるようなリピータの配置間隔を生成することができる。
【発明の効果】
【0023】
このリピータ回路、リピータ回路設計装置、リピータ回路設計プログラムおよびリピータ回路設計方法によれば、複数の電源電圧条件で利用する場合であっても、最適な遅延調整をおこなうことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に添付図面を参照して、このリピータ回路、リピータ回路設計装置、リピータ回路設計プログラムおよびリピータ回路設計方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0025】
(本実施の形態にかかるリピータ回路の構成)
まず、本実施の形態にかかるリピータ回路の構成を説明するとともに、本実施の形態にかかるリピータ挿入の概要について説明する。図1は、本実施の形態にかかるリピータ回路の構成を示すブロック図である。また、図2は、一般的なリピータ回路の構成を示すブロック図である。
【0026】
図1のように、本実施の形態では、所定の機能を実行するブロック1とブロック2との間を伝送する信号の伝送タイミングを調整するリピータ回路について説明する。ここでは、電源電圧条件として高電圧動作モードと、低電圧動作モードとが利用される。動作モードとは、同一の回路やLSIによって実行させる処理の内容に応じて設定されている。たとえば、デジタルカメラに搭載されたLSIであれば、動画撮影機能を実行させる場合と、静止画撮影機能を実行させる場合とでは異なる動作モードに設定されており、動作モードごとに電源電圧条件も異なる。
【0027】
このように、ブロック1およびブロック2からなる回路では、2種類の動作モードが利用されるため、ブロック1からは、電源電圧条件に応じて異なる周波数の信号Ih/Ilが出力される。これは、回路を伝送する信号の周波数が電源電圧値に依存するためである。したがって、高電圧動作モードで動作させた場合、ブロック1からは高周波(高伝送速度)の信号Ihが出力され、低電圧動作モードで動作させた場合、ブロック2からは低周波(低伝送速度)の信号Ilが出力される。
【0028】
図2のように、通常のリピータ回路200の場合、ブロック1から動作モードに応じた2種類の信号Ih/Ilが出力される場合であっても、ブロック2へは1本の伝送路210によって配線される。また、伝送路210に挿入されたリピータR21〜R25は、信号Ih/Ilのいずれか一方にあわせて伝送タイミングを調整するための構成(ここでは、高電圧動作モードの伝送タイミングを調整する構成)である。
【0029】
上述したように、図2のリピータ回路200の構成では、高電圧動作モードでは正しい動作を実現できても、低電圧動作モードでは、正しい動作を実現できなかったり、動作できても要求する性能を満たせないといった事態が発生する。一方、図1のリピータ回路100の場合、低電圧動作モードの信号Ilを伝送させる伝送路110と、高電圧動作モードの信号Ihを伝送させる伝送路120とが用意されている。この伝送路110には、信号Ilが最適なタイミングで伝送されるようにリピータR11と、R12とが挿入されている。また、伝送路120には、信号Ihが最適なタイミングで伝送されるようにリピータR13〜R17が挿入されている。
【0030】
リピータ回路100には、上述のように複数本の伝送路のうち、動作モードに応じてブロック1から出力された信号を対応する伝送路に伝送させ、ブロック2に入力させるための機構として伝送制御部130と、OR回路140とが備えられている。この伝送制御部130には、AND回路131、133とNOT回路132とから構成されている。
【0031】
伝送制御部130には、動作モードに応じた制御信号COが入力される。制御信号COは「1/0」の1ビット信号であり、リピータ回路100の場合、低電圧動作モードであれば「0」、高電圧動作モードであれば「1」が入力される。したがって、伝送制御部130に制御信号CO「0」が入力された場合には、NOT回路132によって制御信号COが反転され、AND回路131のみが解放されるため、ブロック1から出力された信号Ilは、伝送路110に伝送される。また、伝送制御部130に制御信号CO「1」が入力された場合には、AND回路133のみが解放されるため、ブロック1から出力された信号Ihは、伝送路120に伝送される。そして、ブロック2の前段のOR回路140は、伝送路110、120のいずれかから伝送された信号Ih/Ilをブロック2に出力する。
【0032】
なお、制御信号COは、リピータ回路100が搭載されている設計対象回路の制御プログラムによって動作モードの変更に応じて適宜入力される。また、リピータ回路100の内部に、動作モードを検出する機構と、検出した動作モードに応じて制御信号COを入力する機構を備えていてもよい。
【0033】
このように、本実施の形態にかかるリピータ回路は、各動作モードに応じて適宜リピータが挿入された伝送路110、120と、動作モードに対応した伝送路に信号が出力されるように制御する伝送制御部130とを備えることによって、動作モードによって伝送速度の異なる信号を、それぞれ最適なタイミングで伝送させることができる。
【0034】
つぎに、上述したようなリピータ回路100を設計するリピータ回路設計装置について説明する。なお、リピータ回路を設計する際には、あらかじめリピータ回路を搭載する機器(ここでは設計対象回路とよぶ)の設計情報が用意され、この設計情報を参照して、設計対象回路への搭載に適したリピータ回路が設計される。なお、設計対象回路の設計情報も、あらかじめ用意したもの以外に、リピータ回路設計装置を利用してあらたに設計したものでもよい。
【0035】
(リピータ回路設計装置のハードウェア構成)
まず、リピータ回路設計装置のハードウェア構成について説明する。図3−1は、この本実施の形態にかかるリピータ回路設計装置のハードウェア構成を示す説明図である。図3−1において、リピータ回路設計装置300は、コンピュータ本体310と、入力装置320と、出力装置330と、から構成されており、不図示のルータやモデムを介してLAN、WANやインターネットなどのネットワーク340に接続可能である。
【0036】
コンピュータ本体310は、CPU、メモリ、インターフェースを有する。CPUは、リピータ回路設計装置300の全体の制御を司る。メモリは、ROM、RAM、HD、光ディスク311、フラッシュメモリから構成される。メモリはCPUのワークエリアとして使用される。
【0037】
また、メモリには各種プログラムや、設計対象回路の設計情報が格納されており、CPUからの命令に応じてロードされる。HDおよび光ディスク311はディスクドライブによりデータのリード/ライトが制御される。また、光ディスク311およびフラッシュメモリはコンピュータ本体310に対し着脱自在である。インターフェースは、入力装置320からの入力、出力装置330への出力、ネットワーク340に対する送受信の制御をおこなう。
【0038】
また、入力装置320としては、キーボード321、マウス322、スキャナ323などがある。キーボード321は、文字、数字、各種指示などの入力のためのキーを備え、データの入力をおこなう。また、タッチパネル式であってもよい。マウス322は、カーソルの移動や範囲選択、あるいはウィンドウの移動やサイズの変更などをおこなう。スキャナ323は、画像を光学的に読み取る。読み取られた画像は画像データとして取り込まれ、コンピュータ本体310内のメモリに格納される。なお、スキャナ323にOCR機能を持たせてもよい。
【0039】
また、出力装置330としては、ディスプレイ331、スピーカ332、プリンタ333、などがある。ディスプレイ331は、カーソル、アイコンあるいはツールボックスをはじめ、文書、画像、機能情報などのデータを表示する。またスピーカ332は、利用者へ所定の報知をおこなうための効果音や読み上げ音などの音声を出力する。また、プリンタ333は、設計図の画像データや設計情報を示す文書データなどを印刷する。
【0040】
(リピータ回路設計装置の機能的構成)
つぎに、リピータ回路設計装置の機能的構成について説明する。図3−2は、リピータ回路設計装置の機能的構成を示すブロック図である。図3−2において、リピータ回路設計装置300は、取得部301と、算出部302と、生成部303と、特定部304と、構成部305と、を備えている。これら各機能301〜305は、リピータ回路設計装置300のメモリに記憶された当該機能301〜305に関するリピータ回路設計プログラムをCPUに実行させることにより、または、入出力I/Fにより、当該機能を実現することができる。
【0041】
各機能を詳細に説明すると、まず、取得部301は、設計対象回路によって利用する電源電圧条件に関する情報を取得する。電源電圧条件に関する情報とは、設計対象回路によって利用する動作モードの種類と、各モードにおける電源電圧の情報であり、設計対象回路の設計情報から取得する。
【0042】
算出部302は、取得部301によって取得された電源電圧条件に関する情報を参照し、各電源電圧条件において、前記回路間の伝送路へ挿入するリピータの配置間隔を算出する。算出部302による配置間隔の算出例としては、たとえば、電源電圧条件ごとに、伝送路の長さに応じた遅延値が、リピータを含んだ伝送路の遅延値以上になる場合に、伝送路長の中間値を前記リピータの配置間隔としてもよい。
【0043】
生成部303は、伝送路に算出部302によって算出された配置間隔でリピータを挿入したリピータ挿入伝送路を電源電圧条件ごとに生成する。ここで生成されるリピータ挿入伝送路とは正確には、リピータ挿入伝送路の構成に関する情報である。
【0044】
また、特定部304は、生成部303によって生成された複数のリピータ挿入伝送路の中からいずれか一つの伝送路を選択して当該伝送路に信号を伝送させる伝送制御回路を特定する。すなわち、特定部304は、動作モードの数に応じて、変更する伝送路の数の伝送制御が可能な伝送制御回路を特定している。このような制御をおこなう伝送制御回路の構成は既知であり、上述したメモリに制御対象となる伝送路数に応じた伝送制御回路の設計情報があらかじめ用意されている。また、特定後に伝送制御回路の設計情報を取得してもよい。
【0045】
構成部305は、複数のリピータ挿入伝送路(リピータが挿入された伝送路)の前段に特定部304によって特定された伝送制御回路を配置したリピータ回路の設計情報を構成する。この構成部305によって構成されたリピータ回路の設計情報と設計対象回路の設計情報とを合成させることによって、最適な伝送タイミングを実現するためのリピータ回路が搭載された設計対象回路が設計される。
【0046】
また、リピータ回路を設計する際、リピータ回路が搭載される配線層が確定している場合であれば、取得部301は、伝送路が配線される配線層に応じた伝送路およびリピータの遅延値に関する情報を取得することができる。この場合、算出部302は、取得部301によって取得した配線層に応じた伝送路およびリピータの遅延値を参照して、伝送路の長さに応じた遅延値が、リピータを含んだ伝送路の遅延値以上になる場合の伝送路長の中間値をリピータの配置間隔とする。
【0047】
また、取得部301によって、設計対象回路によって利用される電源電圧条件の上限値と下限値を取得させ、算出部302によって、電源電圧条件の上限値から下限値までの各電源電圧条件における伝送路へのリピータの配置間隔を算出させ、算出結果を整理することによって、電源電圧条件とリピータの配置間隔をあらわす算出値テーブルを作成してもよい。算出値テーブルが作成された場合、生成部303は、算出値テーブルを参照することによって、毎回配置間隔算出をおこなわずに、即座に電源電圧条件に応じたリピータ挿入伝送路を生成することができる。
【0048】
また、各機能301〜305からの出力データは上記メモリに保持される。また、図3−2において矢印で示した接続先の機能は、接続元の機能からの出力データをメモリから読み込んで、当該機能に関するプログラムをCPUに実行させるものとする。
【0049】
(リピータ回路の設計手順)
つぎに、リピータ回路設計装置300によるリピータ回路の設計手順について説明する。図4−1は、リピータ回路の設計手順を示すフローチャートである。図4−1のフローチャートにおいて、まず、リピータ回路設計装置は、設計対象回路(リピータ回路が挿入される回路)のフロアプランを取得すると(ステップS401)、フロアプランに応じて電源配線(ステップS402)、セル配置(ステップS403)をおこない、配線の設計をおこなう(ステップS404)。
【0050】
配線の設計が終了すると、つぎに、リピータ挿入ルールを取得する(ステップS405)、とともに、設計対象回路の電源電圧条件に関する情報として使用条件を取得する(ステップS406)。リピータ挿入ルールとは、どのような電源電圧条件でどの配線層に挿入されるかに応じて決定されたリピータの配置間隔をあらわす情報である。リピータ挿入ルールは、電源電圧条件に関する情報に応じて、専用の演算ツール(上記算出部302によって実現される)を用いて算出された情報を取得してもよいが、あらかじめリピータ挿入ルールテーブルを作成しておき、このテーブルから該当する情報を読み出すことによって取得してもよい。なお、リピータ挿入ルールテーブルの作成については詳しく後述する。また、図4−2は、使用条件テーブルの一例を示す図表である。上述した使用条件とは、各動作モードをあらわし、図4−2の図表420のように、2つの動作モードが設定されていれば、各モードの電源電圧条件が記録されている。
【0051】
取得したリピータ挿入ルールと、使用条件を参照して、まず第1条件用のリピータ回路を設計してブロック1およびブロック2からなる設計対象回路に挿入する(ステップS407)。図5−1は、第1条件用のリピータ回路の挿入例を示す説明図である。図5−1のように、設計対象回路に対してリピータ回路100の第1条件用のリピータ回路部510が挿入される。
【0052】
図4−1のフローチャートの説明に戻り、リピータ挿入ルールと、使用条件を参照することによって、続いて、第2条件用のリピータ回路を設計して設計対象回路に追加する(ステップS408)。図5−2は、第2条件用のリピータ回路の追加例を示す説明図である。図5−2のように、設計対象回路に対してリピータ回路100の第2条件用のリピータ回路部520が追加される。
【0053】
図4−1のフローチャートの説明に戻り、各使用条件のリピータ回路部への信号の出力を制御するため伝送制御回路を接続して制御信号を接続する(ステップS409)。図5−3は、制御信号の接続例を示す説明図である。図5−3のように、第1条件用のリピータ回路部と第2条件用のリピータ回路部との前段に伝送制御回路部530を配置し、制御信号を接続する。このように、以上説明したステップS407〜S409の処理によってリピータ回路100が構成される。
【0054】
図4−1のフローチャートの説明に戻り、リピータ回路100挿入後の設計対象回路の容量を抽出し(ステップS410)、抽出した容量から遅延計算をおこない(ステップS411)、計算結果から適切な伝送タイミングとなっているかをチェックし(ステップS412)、チェック結果に問題がなければ一連の処理が終了する。
【0055】
(挿入ルールテーブルの作成手順)
つぎに、フローチャートを用いて、挿入ルールテーブルの作成手順について説明する。なお、ここでは、一例として、電源電圧条件の最大値Ymax、配線層数の上限がXmaxの設計対象回路に遅延時間が固定されたリピータCを挿入する場合の挿入ルールテーブルの作成手順について説明する。図6は、挿入ルールテーブルの作成手順を示すフローチャートである。図6のフローチャートにおいて、まず、リピータを挿入する伝送路が配線されている配線層数Xを1に設定し(ステップS601)、電源電圧値Yの[V]も初期値に設定する(ステップS602)。
【0056】
つぎに、所定長のパス(伝送路)の遅延値と、リピータCを含んだ当該パスの遅延値とを比較する(ステップS603)。このステップS603は、パスディレイ比較する処理である。図7−1は、パスディレイ比較モデルを示す説明図である。また、図7−2は、遅延値設定テーブルの一例を示す図表である。
【0057】
ここで説明のために、ステップS603における所定長を図7−1のようにA+B×n[mm]とあらわす。そして、比較対象のパスは、A+B×n[mm]のパス(上段のパス)と、同じA+B×n[mm]であり、なおかつリピータCが挿入されているパス(下段のパス)となる。このとき、リピータCなしのパスと、リピータCありのパスとの遅延値は、あらかじめ算出されており、図7−2の図表のように用意されている。
【0058】
したがって、ステップS603では、A+B×n[mm]のパスディレイ比較をおこない、リピータCを含むパスの遅延値が長ければ(ステップS603:No)、パス長をインクリメントし(ステップS604)、延長されたA+B×n[mm]におけるパスディレイ比較をおこなう。なお、ステップS604においてインクリメントするパス長は、任意であり、A+B×n[mm]のnの値によって適宜調整することができる。
【0059】
ステップS603において、リピータCを含まないパスの遅延値が長ければ(ステップS603:Yes)、電源電圧値Y[V]におけるX層のリピータCの配置間隔:(A+B×n)/2[mm]となる(ステップS605)。これは、リピータCを含まないパスの遅延値が長いと判断されたA+B×n[mm]のパスの中間にリピータCを挿入するための配置間隔である。
【0060】
ステップS605によって、ある条件下の配置間隔が設定されると、条件を変更した場合の配置間隔の設定処理に移行する。したがって、まず、現在設定されている電源電圧値YがYmaxに達したか否かを判断する(ステップS606)。ここで、Ymaxに達していない場合(ステップS606:No)、電源電圧値Yの値を所定数aインクリメントし(ステップS607)、ステップS603の処理に移行する。以下、あらたに設定された電源電圧値Yについて同様にリピータCの配置間隔を設定する。
【0061】
ステップS606において、Ymaxに達した場合(ステップS606:Yes)、配線層数Xも同様に配線層数の上限Xmaxに達したか否かを判断する(ステップS608)。ここで、Xmaxに達していない場合(ステップS608:No)、配線層数Xを1層インクリメントし(ステップS609)、ステップS602の処理に移行する。
【0062】
以降、ステップS609において、あらたに設定された配線層における各電源電圧値Yのリピータの配置間隔を設定する。そして、ステップS608においてXmaxに達した場合(ステップS608:Yes)、ここまで、ステップS605によって設定した配置間隔情報を整理してテーブルを作成し(ステップS610)、一連の処理を終了する。
【0063】
図8は、挿入ルールテーブルの一例を示す図表である。図6のフローチャートによって作成されたテーブルは、たとえば、図8の図表800のように整理される。図表800では、配線層の数が1〜5と、6〜10との場合、リピータ配置間隔は同じ値になっている。たとえば、配線層の数が1〜5の場合のリピータ配置間隔のばらつきと、配線層の数が6〜10の場合のリピータ配置間隔のばらつきが所定範囲内であった場合には、図表800のように値を丸めて表現してもよい。
【0064】
(3条件以上の動作モードに対応したリピータ回路の構成)
つぎに、3条件以上の動作モードに対応したリピータ回路の構成について説明する。図9は、3条件以上の動作モードに対応したリピータ回路の構成を示すブロック図である。図9のように、ブロック1とブロック2との間の伝送路910は、n種類の動作モードに対応したn本の伝送路(伝送路911〜伝送路91n)によって構成されている。
【0065】
このn本の伝送路910は、それぞれ動作モードに応じて、上述のテーブルを参照して決定された配置間隔にリピータが挿入されている。また、伝送路910の前段には、セレクタ920が接続されている。また、伝送路910の後段には、OR回路930が接続されている。セレクタ920には、制御信号COが入力される。このとき制御信号COは、n本の中のいずれかの伝送路をあらわしているため、セレクタ920は、該当する伝送路に信号が出力されるように出力制御をおこなう。
【0066】
上述のような構成を備えることによって、3条件以上の動作モードを利用するような回路やLSIであっても、各動作モードに適した伝送タイミングに調整することができる。なお、図9に示したリピータ回路900の構成は、一例であり、他の構成を適用してもよい。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態によれば、設計対象回路を動作させる電源電圧の条件が複数存在する場合であっても、これら各電源電圧条件下において、最適な伝送タイミングによって信号を伝送させることができるリピータ回路を提供することができる。そして、上述のようなリピータ回路を設計対象回路に搭載することによって、要求されたタイミングによる信号の伝送が実現されることから、設計対象回路の機能を最大限引き出すことができる。
【0068】
なお、本実施の形態で説明したリピータ回路設計方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【0069】
また、本実施の形態で説明したリピータ回路設計装置300は、スタンダードセルやストラクチャードASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定用途向けIC(以下、単に「ASIC」と称す。)やFPGAなどのPLD(Programmable Logic Device)によっても実現することができる。具体的には、たとえば、上述したリピータ回路設計装置300の機能(301〜305)をHDL記述によって機能定義し、そのHDL記述を論理合成してASICやPLDに与えることにより、リピータ回路設計装置300を製造することができる。
【0070】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0071】
(付記1)複数の電源電圧条件下で利用される設計対象回路に搭載するリピータ回路であって、
前記電源電圧条件ごとに前記設計対象回路を流れる信号の伝送タイミングを遅延させるリピータが挿入された複数の伝送路と、
前記設計対象回路を動作させる電源電圧条件に応じて、前記複数の伝送路の中からいずれか一つの伝送路を選択して当該伝送路に前記信号を伝送させる伝送制御手段と、
を備えることを特徴とするリピータ回路。
【0072】
(付記2)前記伝送制御手段は、
外部からの制御信号に応じて前記信号の出力を制御する出力制御手段を備え、
前記出力制御手段は、前記複数の伝送路の前段にそれぞれ接続されていることを特徴とする付記1に記載のリピータ回路。
【0073】
(付記3)複数の電源電圧条件下で利用される設計対象回路の中の伝送タイミングの調整を要する回路間に搭載して、当該回路間の信号の伝送タイミングを調整するリピータ回路を設計するリピータ回路設計装置であって、
前記設計対象回路によって利用する電源電圧条件に関する情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された電源電圧条件に関する情報を参照し、各電源電圧条件において、前記回路間の伝送路へ挿入するリピータの配置間隔を算出する算出手段と、
前記伝送路に前記算出手段によって算出された配置間隔でリピータを挿入したリピータ挿入伝送路を前記電源電圧条件ごとに生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された複数のリピータ挿入伝送路の中からいずれか一つの伝送路を選択して当該伝送路に信号を伝送させる伝送制御回路を特定する特定手段と、
前記複数のリピータ挿入伝送路の前段に前記特定手段によって特定された伝送制御回路を配置したリピータ回路の設計情報を構成する構成手段と、
を備えることを特徴とするリピータ回路設計装置。
【0074】
(付記4)前記算出手段は、電源電圧条件ごとに、前記伝送路の長さに応じた遅延値が前記リピータを含んだ前記伝送路の遅延値以上になる場合に、前記伝送路長の中間値を前記リピータの配置間隔として算出することを特徴とする付記3に記載のリピータ回路設計装置。
【0075】
(付記5)前記取得手段は、前記設計対象回路によって利用される電源電圧条件の上限値と下限値を取得し、
前記算出手段は、前記電源電圧条件の上限値から下限値までの各電源電圧条件における伝送路へのリピータの配置間隔を算出して、電源電圧条件とリピータの配置間隔をあらわす算出値テーブルを作成し、
前記生成手段は、前記算出値テーブルを参照して、前記伝送路に電源電圧条件に応じた配置間隔でリピータを挿入したリピータ挿入伝送路を生成することを特徴とする付記3または4に記載のリピータ回路設計装置。
【0076】
(付記6)前記取得手段は、前記伝送路が配線される配線層に応じた前記伝送路および前記リピータの遅延値に関する情報を取得し、
前記算出手段は、前記取得手段によって取得した配線層に応じた前記伝送路および前記リピータの遅延値を参照して、前記伝送路の長さに応じた遅延値が前記リピータを含んだ前記伝送路の遅延値以上になる場合に、前記伝送路長の中間値を前記リピータの配置間隔とすることを特徴とする付記4または5に記載のリピータ回路設計装置。
【0077】
(付記7)複数の電源電圧条件下で利用される設計対象回路の中の伝送タイミングの調整を要する回路間に搭載して、当該回路間の信号の伝送タイミングを調整するリピータ回路をコンピュータに設計させるリピータ回路設計プログラムであって、
前記コンピュータを、
前記設計対象回路によって利用する電源電圧条件に関する情報を取得する取得手段、
前記取得手段によって取得された電源電圧条件に関する情報を参照し、各電源電圧条件において、前記回路間の伝送路へ挿入するリピータの配置間隔を算出する算出手段、
前記伝送路に前記算出手段によって算出された配置間隔でリピータを挿入したリピータ挿入伝送路を前記電源電圧条件ごとに生成する生成手段、
前記生成手段によって生成された複数のリピータ挿入伝送路の中からいずれか一つの伝送路を選択して当該伝送路に信号を伝送させる伝送制御回路を特定する特定手段、
前記複数のリピータ挿入伝送路の前段に前記特定手段によって特定された伝送制御回路を配置したリピータ回路の設計情報を構成する構成手段、
として機能させることを特徴とするリピータ回路設計プログラム。
【0078】
(付記8)前記算出手段は、電源電圧条件ごとに、前記伝送路の長さに応じた遅延値が前記リピータを含んだ前記伝送路の遅延値以上になる場合に、前記伝送路長の中間値を前記リピータの配置間隔として算出することを特徴とする付記7に記載のリピータ回路設計プログラム。
【0079】
(付記9)前記取得手段は、前記設計対象回路によって利用される電源電圧条件の上限値と下限値を取得し、
前記算出手段は、前記電源電圧条件の上限値から下限値までの各電源電圧条件における伝送路へのリピータの配置間隔を算出して、電源電圧条件とリピータの配置間隔をあらわす算出値テーブルを作成し、
前記生成手段は、前記算出値テーブルを参照して、前記伝送路に電源電圧条件に応じた配置間隔でリピータを挿入したリピータ挿入伝送路を生成することを特徴とする付記7または8に記載のリピータ回路設計プログラム。
【0080】
(付記10)前記取得手段は、前記伝送路が配線される配線層に応じた前記伝送路および前記リピータの遅延値に関する情報を取得し、
前記算出手段は、前記取得手段によって取得した配線層に応じた前記伝送路および前記リピータの遅延値を参照して、前記伝送路の長さに応じた遅延値が前記リピータを含んだ前記伝送路の遅延値以上になる場合に、前記伝送路長の中間値を前記リピータの配置間隔とすることを特徴とする付記8または9に記載のリピータ回路設計プログラム。
【0081】
(付記11)複数の電源電圧条件下で利用される設計対象回路の中の伝送タイミングの調整を要する回路間に搭載して、当該回路間の信号の伝送タイミングを調整するリピータ回路を設計するリピータ回路設計方法であって、
前記設計対象回路によって利用する電源電圧条件に関する情報を取得する取得工程と、
前記取得工程によって取得された電源電圧条件に関する情報を参照し、各電源電圧条件において、前記回路間の伝送路へ挿入するリピータの配置間隔を算出する算出工程と、
前記伝送路に前記算出工程によって算出された配置間隔でリピータを挿入したリピータ挿入伝送路を前記電源電圧条件ごとに生成する生成工程と、
前記生成工程によって生成された複数のリピータ挿入伝送路の中からいずれか一つの伝送路を選択して当該伝送路に信号を伝送させる伝送制御回路を特定する特定工程と、
前記複数のリピータ挿入伝送路の前段に前記特定工程によって特定された伝送制御回路を配置したリピータ回路の設計情報を構成する構成工程と、
を含むことを特徴とするリピータ回路設計方法。
【0082】
(付記12)前記算出工程は、電源電圧条件ごとに、前記伝送路の長さに応じた遅延値が前記リピータを含んだ前記伝送路の遅延値以上になる場合に、前記伝送路長の中間値を前記リピータの配置間隔として算出することを特徴とする付記11に記載のリピータ回路設計方法。
【0083】
(付記13)前記取得工程は、前記設計対象回路によって利用される電源電圧条件の上限値と下限値を取得し、
前記算出工程は、前記電源電圧条件の上限値から下限値までの各電源電圧条件における伝送路へのリピータの配置間隔を算出して、電源電圧条件とリピータの配置間隔をあらわす算出値テーブルを作成し、
前記生成工程は、前記算出値テーブルを参照して、前記伝送路に電源電圧条件に応じた配置間隔でリピータを挿入したリピータ挿入伝送路を生成することを特徴とする付記11または12に記載のリピータ回路設計方法。
【0084】
(付記14)前記取得工程は、前記伝送路が配線される配線層に応じた前記伝送路および前記リピータの遅延値に関する情報を取得し、
前記算出工程は、前記取得工程によって取得した配線層に応じた前記伝送路および前記リピータの遅延値を参照して、前記伝送路の長さに応じた遅延値が前記リピータを含んだ前記伝送路の遅延値以上になる場合に、前記伝送路長の中間値を前記リピータの配置間隔とすることを特徴とする付記12または13に記載のリピータ回路設計方法。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施の形態にかかるリピータ回路の構成を示すブロック図である。
【図2】一般的なリピータ回路の構成を示すブロック図である。
【図3−1】本実施の形態にかかるリピータ回路設計装置のハードウェア構成を示す説明図である。
【図3−2】リピータ回路設計装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図4−1】リピータ回路の設計手順を示すフローチャートである。
【図4−2】使用条件テーブルの一例を示す図表である。
【図5−1】第1条件用のリピータ回路の挿入例を示す説明図である。
【図5−2】第2条件用のリピータ回路の追加例を示す説明図である。
【図5−3】制御信号の接続例を示す説明図である。
【図6】挿入ルールテーブルの作成手順を示すフローチャートである。
【図7−1】パスディレイ比較モデルを示す説明図である。
【図7−2】遅延値設定テーブルの一例を示す図表である。
【図8】挿入ルールテーブルの一例を示す図表である。
【図9】3条件以上の動作モードに対応したリピータ回路の構成を示すブロック図である。
【図10】従来のリピータ回路の設計手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0086】
100 リピータ回路
300 リピータ回路設計装置
301 取得部
302 算出部
303 生成部
304 特定部
305 構成部
310 コンピュータ本体
311 光ディスク
320 入力装置
321 キーボード
322 マウス
323 スキャナ
330 出力装置
331 ディスプレイ
332 スピーカ
333 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源電圧条件下で利用される設計対象回路に搭載するリピータ回路であって、
前記電源電圧条件ごとに前記設計対象回路を流れる信号の伝送タイミングを遅延させるリピータが挿入された複数の伝送路と、
前記設計対象回路を動作させる電源電圧条件に応じて、前記複数の伝送路の中からいずれか一つの伝送路を選択して当該伝送路に前記信号を伝送させる伝送制御手段と、
を備えることを特徴とするリピータ回路。
【請求項2】
前記伝送制御手段は、
外部からの制御信号に応じて前記信号の出力を制御する出力制御手段を備え、
前記出力制御手段は、前記複数の伝送路の前段にそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項1に記載のリピータ回路。
【請求項3】
複数の電源電圧条件下で利用される設計対象回路の中の伝送タイミングの調整を要する回路間に搭載して、当該回路間の信号の伝送タイミングを調整するリピータ回路を設計するリピータ回路設計装置であって、
前記設計対象回路によって利用する電源電圧条件に関する情報を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された電源電圧条件に関する情報を参照し、各電源電圧条件において、前記回路間の伝送路へ挿入するリピータの配置間隔を算出する算出手段と、
前記伝送路に前記算出手段によって算出された配置間隔でリピータを挿入したリピータ挿入伝送路を前記電源電圧条件ごとに生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された複数のリピータ挿入伝送路の中からいずれか一つの伝送路を選択して当該伝送路に信号を伝送させる伝送制御回路を特定する特定手段と、
前記複数のリピータ挿入伝送路の前段に前記特定手段によって特定された伝送制御回路を配置したリピータ回路の設計情報を構成する構成手段と、
を備えることを特徴とするリピータ回路設計装置。
【請求項4】
前記算出手段は、電源電圧条件ごとに、前記伝送路の長さに応じた遅延値が前記リピータを含んだ前記伝送路の遅延値以上になる場合に、前記伝送路長の中間値を前記リピータの配置間隔として算出することを特徴とする請求項3に記載のリピータ回路設計装置。
【請求項5】
前記取得手段は、前記設計対象回路によって利用される電源電圧条件の上限値と下限値を取得し、
前記算出手段は、前記電源電圧条件の上限値から下限値までの各電源電圧条件における伝送路へのリピータの配置間隔を算出して、電源電圧条件とリピータの配置間隔をあらわす算出値テーブルを作成し、
前記生成手段は、前記算出値テーブルを参照して、前記伝送路に電源電圧条件に応じた配置間隔でリピータを挿入したリピータ挿入伝送路を生成することを特徴とする請求項3または4に記載のリピータ回路設計装置。
【請求項6】
前記取得手段は、前記伝送路が配線される配線層に応じた前記伝送路および前記リピータの遅延値に関する情報を取得し、
前記算出手段は、前記取得手段によって取得した配線層に応じた前記伝送路および前記リピータの遅延値を参照して、前記伝送路の長さに応じた遅延値が前記リピータを含んだ前記伝送路の遅延値以上になる場合に、前記伝送路長の中間値を前記リピータの配置間隔とすることを特徴とする請求項4または5に記載のリピータ回路設計装置。
【請求項7】
複数の電源電圧条件下で利用される設計対象回路の中の伝送タイミングの調整を要する回路間に搭載して、当該回路間の信号の伝送タイミングを調整するリピータ回路をコンピュータに設計させるリピータ回路設計プログラムであって、
前記コンピュータを、
前記設計対象回路によって利用する電源電圧条件に関する情報を取得する取得手段、
前記取得手段によって取得された電源電圧条件に関する情報を参照し、各電源電圧条件において、前記回路間の伝送路へ挿入するリピータの配置間隔を算出する算出手段、
前記伝送路に前記算出手段によって算出された配置間隔でリピータを挿入したリピータ挿入伝送路を前記電源電圧条件ごとに生成する生成手段、
前記生成手段によって生成された複数のリピータ挿入伝送路の中からいずれか一つの伝送路を選択して当該伝送路に信号を伝送させる伝送制御回路を特定する特定手段、
前記複数のリピータ挿入伝送路の前段に前記特定手段によって特定された伝送制御回路を配置したリピータ回路の設計情報を構成する構成手段、
として機能させることを特徴とするリピータ回路設計プログラム。
【請求項8】
複数の電源電圧条件下で利用される設計対象回路の中の伝送タイミングの調整を要する回路間に搭載して、当該回路間の信号の伝送タイミングを調整するリピータ回路を設計するリピータ回路設計方法であって、
前記設計対象回路によって利用する電源電圧条件に関する情報を取得する取得工程と、
前記取得工程によって取得された電源電圧条件に関する情報を参照し、各電源電圧条件において、前記回路間の伝送路へ挿入するリピータの配置間隔を算出する算出工程と、
前記伝送路に前記算出工程によって算出された配置間隔でリピータを挿入したリピータ挿入伝送路を前記電源電圧条件ごとに生成する生成工程と、
前記生成工程によって生成された複数のリピータ挿入伝送路の中からいずれか一つの伝送路を選択して当該伝送路に信号を伝送させる伝送制御回路を特定する特定工程と、
前記複数のリピータ挿入伝送路の前段に前記特定工程によって特定された伝送制御回路を配置したリピータ回路の設計情報を構成する構成工程と、
を含むことを特徴とするリピータ回路設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−153008(P2009−153008A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330461(P2007−330461)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】