説明

リーンバーンエンジンからの排気ガスから汚染物質を除去するための酸化鉄で安定化された貴金属触媒

リーンバーンエンジンにおける排気ガス精製のための触媒であって、該触媒が、少なくとも下記成分:(i)酸化鉄、(ii)活性金属としての白金又はロジウム又は白金とロジウムとの混合物、(iii)担体酸化物を含み、用いる該活性金属が白金単独である場合には、該担体酸化物が酸化ジルコニウム、セリウム/ジルコニウム混合酸化物又はこれらの化合物の混合物を含有する、或いは用いる該活性金属がロジウム又は白金とロジウムとの混合物である場合には、該担体酸化物が酸化ジルコニウム、セリウム/ジルコニウム混合酸化物、酸化アルミニウム、アルミノシリケート、酸化ケイ素、ゼオライト又はこれらの化合物の混合物を含有することを特徴とする触媒。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、リーンバーンエンジンからの排気ガスから汚染物質を除去するための新規な触媒であって、酸化鉄でドープされることによって、先行技術の対応する触媒よりもかなり高い熱安定性を得ている触媒に関する。該触媒は、酸化鉄の他に、貴金属の白金又はロジウム又はこれらの混合物の形態の活性金属を含有する。この場合の酸化鉄と活性金属とは、好ましい用途に依存して、酸化ジルコニウム、セリウム/ジルコニウム混合酸化物、酸化アルミニウム、アルミノシリケート及びゼオライト又はこれらの混合物を含有する担体物質上に存在する。希土類酸化物と、ガリウム又はインジウムの酸化物とを、促進成分として用いることができる。本発明はまた、当該触媒の製造方法、並びにリッチ/リーン・モード及び常時リーン・モードでのリーンバーンエンジンからの排気ガスを本発明による触媒を用いて精製するための方法に関する。
【0002】
リーンバーンエンジンからの排気ガスからの主要汚染物質は、一酸化炭素(CO)、未燃焼炭化水素(HC)−パラフィン、オレフィン、アルデヒド、芳香族化合物−と、酸化窒素(NO)、二酸化硫黄(SO)と、さらに、ディーゼル・エンジンの場合には、固体と、「揮発性有機画分」(VOF)として知られるものとの両方として炭素を含有する微粒子である。運転点(operating points)に依存して、ディーゼル排気ガス中の酸素濃度は、主として1.5%〜15%である。
【0003】
ガソリンエンジンからの排気ガスに比較すると、ディーゼル排気ガスは、著しく低い排気ガス温度である。部分負荷運転(part-load operation)に関しては、触媒の上流の排気ガス温度は120〜130℃の範囲内であり、完全負荷運転(full-load operation)での最大温度は、しばしば、600℃を超える温度に達する。特に、乗用車からのディーゼル排気ガスの精製のためには、酸化及び脱NO触媒の高い低温活性が必要であり;他方では、これらの触媒は、例えば完全負荷運転で発生するような、高温における活性損失を回避するために、高度に熱安定性でなければならない。
【0004】
現在、ディーゼル乗用車と貨物自動車は、後者は軽度に過ぎないとしても、COとHCを、さらにごく軽度には、微粒子を、CO及び水に転化させることができる貴金属含有酸化触媒を装備している。NO放出は、排気ガス中の高度に過剰な酸素のために、殆ど減少しない。
【0005】
DE 102 09 529.9は、ディーゼル・エンジンのCOとHCの触媒転化(ディーゼル酸化触媒作用)に用いられる触媒テクノロジーについて記載している。
【0006】
EP 1 129 764 A1は、Al/S、ゼオライト及び白金から成り、熱老化(thermal ageing)後に、183℃にCOの着火温度(light-off temperature)(T50)及び197℃にHCの着火温度を有するディーゼル酸化触媒を記載している。この触媒のNO活性は、非常に低い。
【0007】
US 6 274 107は、酸化セリウムと、鉄置換β−ゼオライトと、白金又はパラジウムとの混合物から成り、ディーゼル・エンジンからの排気ガス中のCOとHCの酸化に用いられる触媒を記載している。該ゼオライトは、該排気ガス中に含有される炭化水素を吸着するために用いられる。
【0008】
Pt/Fe/Al触媒は、化学量論的及びリーンバーンエンジン用途に関して、Y.Sakamoto(Applied Catalysis B: Environmental 23(1999) 159-167)によって試験されている。しかし、測定されたHCの着火温度(T50(HC))は非常に高く、約290℃であった、その結果、実際には、これらの触媒は、ディーゼル・カーに用いるために適切ではない。
【0009】
非常に一般的に述べた、NO触媒の概要に関しては、最も通常の排気ガス触媒に関する参考文献及びNO貯蔵触媒に関する関連先行技術と共に、本出願人の名前でのDE 102 09 529.9とそれに引用された先行技術が参照される。この資料は、このタイプの排気ガス触媒についての問題の深い分析も提供する。
【0010】
米国特許6 265 342は、触媒二重層から成る、ディーゼル排気ガスの後処理のための触媒を特許請求している。第1層は、任意にパラジウムをも組み合わせた鉄混入(iron-doped)酸化ジルコニウムから成り、第2層は、白金とスズをも含有する銅混入酸化ジルコニウムから成る。COとHCからCOを形成するため及びNOの転化のための着火温度は、200℃を超える。約25%という最大NO転化率が達成される。
【0011】
DE 198 36 249は、リーン運転段階とリッチ運転段階で交互に運転される燃焼デバイスからの排気ガス中の酸化窒素を分解する(breaking down)方法であって、リーン運転段階では、リッチ運転段階中に再生される分解触媒(splitting catalyst)によって物質触媒される(material-catalyzed)、直接触媒分解反応を用いて、酸化窒素が分解されることを特徴とする方法を開示している。このタイプの方法の一部として上首尾に用いることができる触媒の組成に関して唯一の表示されていることは、この方法に用いられる分解触媒物質がビスマスを含有することである。
【0012】
EP 0 722 763は、吸着成分として用いられる、Ru及び/又はCeの酸化物が、酸化チタン担体物質上に塗布されている、NOの吸着剤に関する。該酸化チタン担体物質は、非晶質二酸化チタンにマンガン化合物を加えて、次に、該二酸化チタンを加熱することによって得られる。
【0013】
DE 100 36 886は、アルカリ金属と希土類を含まず、有効成分(単数又は複数)としてロジウム又は白金とロジウムとの混合物を含有し、フレッシュ状態で非常に良好な低温活性を有するNO貯蔵触媒を記載している。該触媒の耐久性に関しては、詳細が与えられていない。
【0014】
EP 1 036 591は、アルカリ土類金属、アルカリ金属又は希土類から成る群から選択される、少なくとも1種類の元素と、少なくとも1種類の貴金属、白金とを、第1担体物質上に含有するNO貯蔵触媒を記載している。Rhが、第2担体物質としての酸化ジルコニウム上に堆積している。該Rh/ZrOが、水/水蒸気リホーミングに対して高い活性を有し、該触媒をSO毒から保護することが、説明されている。
【0015】
EP 1 010 454は、酸化ジルコニウム/アルカリ金属酸化物複合体と、Pt、Pd、Rhから選択される、少なくとも1種類の貴金属とを含有する貯蔵触媒を記載している。
【0016】
WO 02/22255は、ロジウム及びパラジウム及び/又はこれらの混合物から選択される、少なくとも1種類の貴金属と、酸化ジルコニウムと、酸化セリウム、酸化プラセジミウム、酸化ネオジミウム又はこれらの混合物のいずれかとを含有するNO触媒を提示している。該触媒は、層構造を有することができ、上層は主として上記要素から構成され、下層は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、ケイ素/アルミニウム酸化物、ゼオライト又はこれらの混合物から成る担体酸化物、並びに白金、パラジウム、ロジウム又はこれらの混合物を包含する。
【0017】
燃焼機関からの汚染物質の除去に適した触媒を最適化することを目的した既存の解決アプローチが非常に多くあるにもかかわらず、専門家領域にとって特に重要である多くの問題がまだ残存している。特に、触媒の老化防止(ageing resistance)と、該触媒の、硫黄化合物による不活化に対する耐性とは、改良する必要がある。このことは、非化学量論的範囲での燃料エンジン運転からの排気ガスの精製に用いられる触媒に、特に該当する。一例として、リーンバーンモードで、即ち、過剰な酸素で好ましくランされ、将来のために特に有望であるエンジンの一種と見なされているエンジンは、このタイプの運転モードに基づいている。
【0018】
先行技術を考慮して、本発明の1つの目的は、特に、リーンバーンエンジンからの排気ガスから汚染物質を除去するために内燃機関に用いるための新規なクラスの触媒であって、連続的リーンバーンモード下でCOとHCを酸化してCOと水にする触媒(ディーゼル酸化触媒)か、又はCOとHCの酸化の他に、NOを還元して無害な窒素(N)にすることができる触媒(スリーウェイ触媒)を提供することであった。これらの条件下で、NO還元は、エンジンがリッチ/リーン条件下で運転されることを必要として、「NOの貯蔵と還元」又は「NOの分解」なる用語で表されうる化学シーケンスを用いる。これに関連して、特に、先行技術のディーゼル酸化触媒及びNOの貯蔵と分解触媒の両方の熱老化中に起きる、ディーゼル酸化触媒又はスリーウェイ触媒としての活性の低下が最小になることが、保障されるべきである。同時に、該触媒の効率は、先行技術に記載されている触媒に比べて、さらに上昇されるべきである。
【0019】
本発明によるこの目的は、リーンバーンエンジンにおける排気ガス精製のための新規な触媒世代(catalyst generation)であって、該触媒が少なくとも下記成分(i)、(ii)及び(iii):
(i)酸化鉄、
(ii)活性金属としての白金又はロジウム又は白金とロジウムとの混合物、
(iii)担体酸化物
を含み、用いる活性金属が白金単独である場合には、該担体酸化物が、酸化ジルコニウム、セリウム/ジルコニウム混合酸化物、若しくはこれらの化合物の混合物を含有し、又は、用いる活性金属がロジウム若しくは、白金とロジウムとの混合物である場合には、該担体酸化物が、酸化ジルコニウム、セリウム/ジルコニウム混合酸化物、酸化アルミニウム、アルミノシリケート、酸化ケイ素、ゼオライト若しくはこれらの化合物の混合物を含有することを特徴とする触媒を提供することによって、達成される。
【0020】
該触媒は、高度に熱安定性である。該触媒の活性は、空気中700℃における熱老化後さえも、同じに留まるか又はごく僅かに低下するにすぎない。それ故、該触媒は、同時に高い熱安定性と結合した、高い活性を有する。このことは、該触媒をリーンバーンエンジンからの汚染物質を除去する方法に用いる予定である場合に、極めて有利である。
【0021】
本発明による触媒は、その特定の配合に依存して、
(a)一酸化炭素(CO)と炭化水素(HC)の除去のためのディーゼル酸化触媒として、
(b)周期的リッチ/リーン・モードでの酸化窒素(NO)の除去のために、及び
(c)COとHCの除去のためと、周期的リッチ/リーン・モードでのNOの除去のための両方に、
用いるために適している。
【0022】
さらに、本発明は、該触媒の製造方法、リーンバーンエンジンからの排気ガスから汚染物質を除去するための該触媒の使用、並びにリッチ/リーン・モード及び常時リーン・モードで運転されるリーンバーンエンジンからの排気ガスの、該触媒を用いた精製方法にも関する。
【0023】
下記文章は、本発明を理解し、解釈するために重要である関連用語を定義するように意図するものである。
【0024】
本発明に関連して、「酸化鉄」、「希土類酸化物」なる総称は、非常に一般的な意味で、化学量論的酸化物のみでなく、対応する硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物、亜酸化物、混合酸化物、イオン性種(ionic species)、及び上記物質の少なくとも2つの任意の望ましい混合物をも包含する。さらに、元素(elements)として挙げた全ての金属は、鉄及び希土類の対応する酸化物と亜酸化物並びにそれらの混合酸化物/酸化物混合物と、他の元素との混合酸化物/酸化物混合物を包含する。
【0025】
本発明に関連した「貴金属」とは、白金金属、ロジウム及び白金を包含し、本特許に関連して活性金属とも呼ばれる。
【0026】
燃焼機関は、燃料中に貯蔵された化学エネルギーを燃焼によって熱に変換し、最終的には機械的エネルギーに変換する熱エネルギー・コンバーターである。
【0027】
内燃機関に関しては、気密で、可変な作業空間(例えば、ピストン)中に閉じ込められた空気は、熱エンジンの意味で定義される作業媒体(working medium)であり、同時に、燃焼のために必要な酸素のキャリヤーである。燃焼は周期的に行なわれ、燃料と(空気中)酸素の両方は、各サイクル前に新たに装填される。例えば、Carnot pVダイアグラムによって表されるような、用いるサイクルに依存して、火花点火エンジンとディーゼル・エンジンとを正確に熱力学的に区別することが可能である。これらタイプのエンジンの実際的な実用的定義(working definition)を以下に記載する。
【0028】
両方の種類のエンジンと触媒を分類するための有意な基準は、「空気/燃料比率」λを用いて表現される、空気に対するガソリンの比率である。これに関連して、λ=1.0の値は、乾燥空気に対するガソリンの化学量論的比率に正確に対応する、即ち、全てのガソリンが燃焼して、化学量論的に二酸化炭素と水を形成することが可能であるために丁度充分な空気が燃焼室内に存在する。専門的な技術文献は、λ>1を有する混合物を「リーン」(酸素過剰)と呼び、λ<1を有する混合物を「リッチ」(酸素不足)と呼んでいる。本発明に関連して、化学量論的範囲からの明確な境界を画定するために、λ>1.2を有する混合物は「リーン」と呼ばれるべきであり、λ<1.0を有する混合物は「リッチ」と呼ばれるべきである。したがって、このような方法で定義したリッチ及び/又はリーン混合物は、本発明に関連して、非化学量論的混合物とも呼ばれる。
【0029】
慣用的な火花点火エンジンは、燃焼が行なわれる作業空間、即ち、ピストン空間の外部での均質なガソリン/空気混合物の形成と、制御された外部発生点火(controlled externally generated ignition)を特徴とする。火花点火エンジンは、容易に点火しない低沸点燃料を必要とする(火花点火エンジンの点火限界は、典型的にλ=0.6〜λ=1.4である)。本発明に関連して、λセンサーによって制御されるスリーウェイ触媒を有する慣用的火花点火エンジンが、主として、約1のλ値で運転される(=化学量論的運転)ことが、排気ガス触媒作用に関して特に重要である。
【0030】
リーンバーンエンジン」なる用語は、主として、過剰な酸素で運転される火花点火エンジンを意味すると理解すべきである。本発明のために、リーンバーンエンジンは、それらのλ値に基づいて、非常に具体的に定義される、即ち、本発明に関連したリーンバーンエンジンは、オーバーラン・カットオフを別としても、少なくとも部分的にリーン状態で、即ち、1.2以上のλ値で運転されるエンジンである。さらに、当然リッチ運転状態もリーンバーンエンジンにおいて生じうる:該エンジンの短時間のよりリッチな稼動(running)と、それ故、さらに排気ガスの短時間のよりリッチな稼動も、近代的インジェクション系を用いるエンジン・エレクトロニクスによって開始することができる、又は自然の運転動作でも生じる可能性がある(例えば、高い負荷の場合、完全負荷時又は始動時)。リッチ・サイクルとリーン・サイクルとを含む交互運転モードは、本発明に関連して、「リッチ−リーン・モード」と呼ばれる。
【0031】
特に、本発明に関連したリーンバーンエンジンは、非常に一般的に言えば、下記実施態様を包含するものとして理解すべきである:
・直接インジェクション(direct injection)による(Drエンジン)及びλ>1の運転状態による全ての火花点火エンジンと、外部混合物形成による全ての火花点火エンジン。このクラスは、特に、層状給気エンジン、即ち、火花プラグ付近では点火し易いがそれ以外では全体的としてリーンである混合物を有するエンジン、及び直接インジェクションに関連して、高圧縮による火花点火エンジンも包含する。これは、例えば、Mitsubishi方式(GDI=ガソリン直接インジェクション;コモンレールインジェクション(common rail injection))を用いて運転するエンジン、VWによって開発されたFSI(=燃料層状インジェクション)エンジン又はRenaultによって設計されたIDE(=インジェクションダイレクトエッセンス(injection directe essence))エンジンを包含する;
・全てのディーゼル・エンジン(下記参照);
・多種燃料エンジン、即ち、点火し易い及び/又は点火し易くない燃料及び燃料混合物、例えばアルコール、バイオ−アルコール、植物油、ケロセン、ガソリン、及び上記物質の2つ以上の任意の望ましい混合物を燃焼させるエンジン。
【0032】
ディーゼル・エンジンは、内部混合物形成、不均質な燃料/空気混合物、及び圧縮点火を特徴とする。したがって、ディーゼル・エンジンは、点火し易い燃料を必要とする。本発明に関連して、ディーゼル排気ガスがリーンバーンエンジンからの排気ガスと同様な特性を有すること、即ち、連続的にリーンである、換言すると、酸素を多く含むことが、特に重要である。その結果、酸化窒素の除去に関して、ディーゼル・エンジンに関連したNO還元の触媒に課せられる要望は、リーンバーンモードの火花点火エンジンに用いられる触媒に課せられる要望と類似する。しかし、ディーゼル乗用車エンジンと火花点火乗用車エンジンとの間の1つの有意な差は、法律で規制された運転サイクル中に発生する排気ガス温度がディーゼル乗用車エンジン(100℃〜350℃)では火花点火乗用車エンジン(250℃〜650℃)に比べて一般的に低いことである。低い排気ガス温度は、サルフェートによって汚染されていないか又はサルフェートによってごく僅かに汚染されているに過ぎない触媒の使用を特に魅力的にする、この理由は、上述したような脱硫は、約600℃を超える排気ガス温度で初めて、事実上可能になるからである。それ故、リーンバーンエンジン用の触媒に関して本明細書でなされている全ての記述は、ディーゼル・エンジンに用いられる触媒にも、同様に当てはまる。
【0033】
排気ガス処理には、混合物形成及び負荷/エンジン速度特性ダイアグラムに依存して、異なるエンジンに特異的に適合する触媒が必要である。例えば、そのガソリン/空気混合物がインジェクションとスロットルバルブを用いてλ≒1に連続的に設定されており、その空気/燃料比率がλセンサーを用いて連続的にモニターされている、慣用的な火花点火エンジン用触媒は、例えば、λ>1.2で運転される、即ち、正常な運転運転中に過剰な酸素を有するリーンバーンエンジン用触媒とは、全く異なる、NO還元のための機能を必要とする。活性金属におけるNOの触媒還元が、過剰な酸素が存在する場合に、より大きく困難であることは、明らかである。
【0034】
本発明に関連して用いるような、「ディーゼル酸化触媒」なる用語は、非常に一般的に言えば、燃焼機関からの排気ガスから2種類の主要な汚染物質を除去する、即ち、酸化によって二酸化炭素を形成することによって一酸化炭素を、及び酸化によって理想的には水と二酸化炭素を形成することによって炭化水素を除去する触媒に関する。触媒をディーゼル・エンジンに用いる場合には、上記2つの役割の他に、第3の役割、即ち、酸化による微粒子の除去を果たすことができる。
【0035】
本発明に関連して用いるような、「スリーウェイ触媒」なる用語は、非常に一般的に言えば、燃焼機関からの排気ガスから3種類の主要な汚染物質を除去する、即ち、還元によって窒素を形成することによって酸化窒素(NO)を、酸化によって二酸化炭素を形成することによって一酸化炭素を、及び酸化によって理想的には水と二酸化炭素を形成することによって炭化水素を除去する触媒に関する。触媒をディーゼル・エンジンに用いる場合には、上記3つの役割の他に、第4の役割、即ち、酸化による微粒子の除去が生じうる。
【0036】
先行技術による火花点火エンジン用の慣用的なスリーウェイ触媒は、化学量論的モードで、即ち、約1.0の狭い範囲内で変動するλ値で用いられる。この場合に、λ値は、インジェクターとスロットルバルブを用いて燃焼室内のガソリン/空気混合物を調節することによって設定される。非化学量論的運転では、即ち、非慣用的運転(non-conventional operation)では、λが1.0から有意に逸脱することが、例えば、λ>1.2又はλ>2.0、或いはλ<0.9が可能である。エンジンの不連続運転、即ち、エンジンのリーン運転モードとリッチ運転モードとの交互運転は、リッチ−リーン・モードと呼ばれる。
【0037】
特にリーン運転状態が生じる場合に、非化学量論的運転でも運転されうるスリーウェイ触媒の特定実施態様の1つは、NO貯蔵触媒である。本発明に関連して、NO貯蔵触媒とは、リッチ−リーン・モードで機能できるスリーウェイ触媒を意味するとして理解するべきであり、該触媒の組成は、リーンバーンモード中に酸化窒素(NO)が貯蔵媒質、典型的には、塩基性アルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物中に貯蔵され、貯蔵された酸化窒素が実際に分解して、窒素と酸素を形成することが、還元性排気ガス状態下でのよりリッチな段階中に初めて起きることを意味する。
【0038】
慣用的なディーゼル酸化触媒は、できるだけ、過剰な空気中酸素によって、即ち、>1のλ値において運転される。空気/燃料比率は、要求されるエンジン出力に依存して、量的に制御される。
【0039】
先行技術に対応するディーゼル酸化触媒の実施態様は、白金がその上に沈着される耐火性酸化物の使用に基づいている。特に、低温始動段階(cold-start phase)において、HCを分解から保護するために、熱安定性ゼオライトがしばしば混合される。
【0040】
本発明に開示する触媒と、リーンバーンエンジンからの排気ガスから汚染物質を除去する方法における、その使用とは、特に、自動車からの排気ガスの処理に、実際に長期間使用するために設計される。したがって、本発明に関連して、「正常運転動作」なる用語は、NEDC(New European Driving Cycle)中のエンジンの動作基点に典型的である、全ての排気ガス組成及び温度を意味すると理解すべきである。特に、エンジンの始動、ウォーミングアップ段階、及び極端な負荷下での運転は、正常運転動作によってカバーされると見なすべきではない。
【0041】
本発明による触媒は、酸化鉄(i)若しくは該酸化鉄がそれから熱処理によって形成される鉄化合物を、活性金属(ii)及び担体酸化物(iii)と接触させることを含む方法を用いて製造される。
【0042】
好ましくは液体中に溶解している、例えば、酢酸鉄又は硝酸鉄のような鉄塩を担体酸化物に接触させることによって、酸化鉄が、好ましく、担体酸化物に付着される。次の工程で、該鉄塩は、温度上昇を伴う熱処理によって分解され、それによって、酸化鉄に転化される。
【0043】
場合によっては、酸化鉄を付着させるために、他の方法を用いることも可能である。この場合に挙げることができる例は、沈殿剤を用いた、水溶液若しくは有機溶液からの鉄化合物若しくは鉄若しくは酸化鉄ナノ粒子の沈殿、又は例えば鉄カルボニルのような、鉄前駆物質の蒸着を包含する。
【0044】
酸化鉄を付着させるために用いることができる、適当な鉄化合物は、例えば、塩のような化合物、ナノ粒子又は有機金属化合物を包含する。
【0045】
貴金属成分は、原則として、鉄化合物を加える前に、鉄化合物と一緒に、又は鉄化合物を加えた後に、担体酸化物に付着させることができる。
【0046】
本発明による触媒に関して、担体酸化物上に貴金属粒子と一緒に存在する酸化鉄が、好ましくは非晶質であること、及び/又は該酸化鉄粒子が、利用可能なX線回折技術(X-ray diffractography technique)が、酸化鉄に割り当てることができる反射を全く見出さないほど小さいことが、決定的に重要である。回折図の例から見ることができるように、20°2θから40°2θまでのベース(base)における上昇を検出することが可能である。
【0047】
貴金属成分を付着させるための可能な方法として挙げることができる例は、含浸、沈殿又は蒸着を包含する。用いることができる可能な貴金属化合物は、例えば、塩形、錯体化合物又は有機金属性(organometallic nature)であることができる。
【0048】
酸化鉄及び活性金属をゼオライトに負荷させると、ゼオライトにおけるイオン交換が生じる可能性がある。イオン交換は、当業者が熟知しているものであり、例えば、水性媒質中で、又は固相反応によって起こりうる。
【0049】
両方の場合に、ゼオライト中に通常存在するカチオンは、活性金属、例えばロジウムによって完全に又は部分的に置換される。含浸方法の場合には、一般に水性媒質中に溶解した活性金属前駆物質、例えばロジウム前駆物質が、ゼオライトに付着される。
【0050】
排気ガス触媒の触媒製造に慣例的に用いられるテクノロジー、例えば、粉末形若しくはスラリーの形状である、担持される、異なる活性金属の混合若しくはブレンディング、ウォッシュコート(washcoat)内の触媒的に活性な物質の層状堆積、又はモノリシック触媒床内の異なる触媒帯の組み合わせが、本発明による方法の範囲内に包含されることは、注目すべきである。
【0051】
例えば、ディーゼル・エンジンからの排気ガス中に存在する微粒子の除去のような、本発明による触媒のある一定の用途が、酸化鉄が、X線分析下で結晶質である、比較的大きい粒子の形状で存在する「バルク酸化鉄」として知られるものの形でのさらなる鉄成分の添加を必要とすることは、注目すべきである。しかし、付加的に存在する、この種類の酸化鉄は、上記でなされた説明、即ち、上記の貴金属/担体酸化物/酸化鉄複合体中に存在する酸化鉄がX線分析下で非晶質である必要性から、明らかに除外されている。
【0052】
貴金属(活性金属)は、白金又はロジウム又はこれらの混合物のいずれかである。
【0053】
本発明による白金/酸化鉄組み合わせは、担体酸化物としての酸化ジルコニウム又はセリウム/ジルコニウム混合酸化物又はこれらの酸化物混合物と共に、排気ガス触媒に良好な結果を生じる。本発明によるロジウム/酸化鉄組み合わせはさらに、担体酸化物としての酸化ジルコニウム、セリウム/ジルコニウム混合酸化物、アルミノシリケート、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、ゼオライト、又はこれらの化合物の混合物と共に用いた場合に、排気ガス触媒作用に良好な結果を生じる。
【0054】
リーンバーンエンジンの排気ガスからの汚染物質の除去の見地から、触媒中に存在する酸化鉄がX線分析下で非晶質である、即ち、酸化鉄若しくは他の鉄含有化合物に特徴的な反射が存在しないことが好ましいこと、及び該触媒が、開示された方法で用いられることになる担体酸化物若しくはそれらの混合物に該活性金属が適合する場合にのみ、その最適効果を発揮することは意外である。
【0055】
本発明に関連して、酸化鉄の、総貴金属に対する金属元素に基づいた質量比率に関して、0.5:1〜15:1の範囲内の鉄/貴金属比率を用いることが好ましい。1:1〜10:1の範囲がより好ましく、1.5:1〜8:1の範囲が特に好ましい。
【0056】
貴金属、即ち、白金又はロジウム又は白金とロジウムの総量の、担体物質に対する重量比率に関して、貴金属と担体物質との総重量を基準として、貴金属の0.01重量%〜6重量%の割合が好ましく、0.1重量%〜4重量%の割合が特に好ましい。
【0057】
その上、本発明による触媒は、希土類酸化物、酸化ガリウム又は酸化インジウムの形で、少なくとも1種類の他の金属酸化物を含有することができ、これらの金属酸化物の少なくとも幾らかは、上記の貴金属/酸化鉄/担体酸化物複合体中に存在する。
【0058】
本明細書に関連して、「希土類酸化物」、「酸化ガリウム」及び「酸化インジウム」なる用語は、対応する亜酸化物、混合酸化物及びイオン性種をも包含する。希土類酸化物は、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びこれらの混合物の酸化物を包含する。
【0059】
本明細書に関連して、希土類酸化物、酸化ガリウム及び酸化インジウムはまた、「プロモーター」なる用語によって一括して呼ばれることもある。
【0060】
該貴金属/酸化鉄/担体酸化物複合体中に存在する総プロモーター及び/又はそれらの混合物の、貴金属に対する金属元素に基づいたモル比率は、好ましくは、1:1〜30:1の範囲内であり、2:1〜15:1の範囲がより好ましい。
【0061】
上述した、本発明による触媒の必要な成分の他に、触媒の製造又はさらなる加工のために、全ての、考えられる補助剤及び/又は添加剤、例えば、担体物質への添加剤としての酸化物と混合酸化物、結合剤、充填剤、炭化水素吸着剤と他の吸着性物質、熱安定性を高めるためのドーパント、及び上記物質の少なくとも2つの混合物を用いることができる。
【0062】
触媒の活性は、特に、該触媒の巨視的形状及び形態にも依存する。触媒の形状に関しては、非常に一般的に言って、触媒研究で今までに適切であると実証されている、あらゆる実施態様、即ち、特にウォッシュコート及び/又はハニカム・テクノロジーが好ましい。
【0063】
上記テクノロジーは、担体物質の大部分を水性懸濁液中で数μmの粒度まで粉砕してから、セラミック又は金属の造形体に塗布することに基づいている。原則として、該コーティング運転の前又は後に、水溶性形又は水不溶性形のさらなる成分を、ウォッシュコートに導入することができる。触媒の全ての成分を造形体に付着させた後に、該造形体を一般的に乾燥させ、高温においてか焼する。
【0064】
高度なBET表面積を有し、熱老化後にBET表面積を高度に保持する担体物質を配置することが、特に好ましい。
【0065】
孔構造に関して、通路を作るために完全に形成されているマクロ孔が、メソ孔及び/又はミクロ孔と共存していることが好ましい。この場合に、該メソ孔及び/又はミクロ孔は、貴金属、この場合には、白金及び/又はロジウムを含有する。上述したように、本発明に関連して、下記:
(aa)貴金属と、酸化鉄と、存在する場合のプロモーターとが直接位相的に接近して一緒に存在すること、及び
(bb)貴金属と、酸化鉄と、存在する場合のプロモーターとが、多孔質担体物質の表面上にできる限り均質に、単一ユニットとして分布されること
が特に好ましい。
【0066】
担体酸化物とプロモーターとの選択は、本発明による触媒がディーゼル酸化触媒として又はスリーウェイ触媒として用いることができるかどうかの決定において重要な要因である。
【0067】
例えば、白金と、酸化ジルコニウムと、酸化鉄と、酸化ガリウムとの複合体を用いる場合には、リッチ/リーン・モードで測定されるNO転化率は低くなりがちであるが、熱老化後のCOとHC転化の活性は非常に高い。この種類の触媒は、ディーゼル酸化触媒として好ましく用いられる。
【0068】
しかし、酸化ガリウムの代わりに酸化ランタンを用いる場合には、NO活性がかなり改良され、その結果、この触媒はスリーウェイ触媒としても用いることができる。
【0069】
Nortonによって製造されるZrO(Norton商品名「XZ 16075」)は、上記例に特に好ましく用いられる。原則として、ZrOは、当業者に知られた沈殿方法によって製造することができる。特に、この方法で沈殿させた物質を蒸気か焼すると、本発明に関連して好ましい酸化ジルコニウムが生成する。或いは、Ce/Zr混合酸化物を、貴金属及び酸化鉄の担体酸化物として用いることもできる。CeOの、ZrOに対する好ましい質量比率は、この場合に、1:1であり、より好ましくは1:5、さらにより好ましくは1:10である。
【0070】
もちろん、ZrOとCe/Zr混合酸化物との混合物を、貴金属及び酸化鉄の担体として用いることも可能であり、この場合には、該2種類の担体酸化物の相互に対する質量比率に関して制限は存在しない。
【0071】
ロジウム/酸化鉄とγ−アルミニウム酸化物とから成る複合体触媒は、有意なNO転化率を達成することができるが、ロジウムとγ−アルミニウム酸化物とから成る触媒は、周期的リーン/リッチ・モードで殆どNO活性を有さないという発見は、非常に意外である。
【0072】
幾つかの用途に関しては、貴金属の一部が他の担体酸化物、例えば、Al、SiO又はSiO/Al上に沈着することが望ましい、この理由は、一酸化炭素及び炭化水素を酸化することのその可能性のような、触媒のさらなる機能の目標設定を達成することが、このやり方で可能となるからである。この場合に、貴金属と担体酸化物とから成るこの種類の複合体は、付加的な活性コーティングとして該ハニカム担体に付着させることができるか、又は該コーティング・プロセスの前に、適当な場合には、上述したような、さらなるプロモーターと共に、貴金属/酸化鉄/担体酸化物と混合することができる。
【0073】
原則として、触媒の製造、特に、含浸触媒及び表面含浸触媒の製造のために当業者が熟知している如何なる方法も、該触媒活性物質を均質に分散させるために、即ち、特に、貴金属、酸化鉄及びプロモーターを均質に分散させるために用いることができる。これに関連して、例えば、下記方法(その一部は具体的な実施態様にも記載する):金属塩溶液による担体物質の含浸、担体物質上への気体若しくは液体からの金属塩の吸着、溶液からの沈殿による付着、層及び/又は二重層の形成、コロイド、ゲル、ナノ粒子の導入、溶液からの吹き付け若しくは沈着を挙げるべきである。
【0074】
本発明による触媒は、好ましくは、粉末、顆粒、押出成形体、造形体又は被覆ハニカム体の形状である。
【0075】
本発明はまた、リーンバーンエンジンからの排気ガスから汚染物質を除去するための触媒の使用にも関する。
【0076】
さらに、本発明はまた、リッチ/リーン・モード及び常時リーン・モードでのリーンバーンエンジンからの排気ガスを、各場合に上述したような触媒の少なくとも1種類を用いて精製する方法にも関する。
【0077】
ディーゼル酸化触媒に関連して、COとHCを転化/解毒する(detoxifying)ための本発明による方法は、本発明による触媒を常時リーン排気ガス条件下で運転することにある。
【0078】
上記で定義したようなスリーウェイ触媒の原理によって該排気ガスを転化/解毒するための本発明による方法は、本発明による触媒をリッチ/リーン・サイクルで運転することにある。前記リッチ/リーン・サイクルの時間枠(time windows)は、酸化窒素の放出がリーンバーン段階中の触媒によって低下し、よりリッチな条件を短時間用いることによって、該触媒が再生されるように、選択される。
【0079】
前記時間枠は、2つのパラメーター、即ち、リーン段階の持続時間と、リーン段階のリッチ段階に対する比率によって定められる。一般に、充分な総合的酸化窒素転化をもたらすならば、パラメーターの如何なる選択も許容される。リーン段階の持続時間は、排気ガス中の酸素及び酸化窒素の濃度と、排気ガスの総流量及び触媒の温度に大きく依存する。リッチ段階の持続時間は、空気/燃料比率λ、排気ガス中のH、COの濃度及び総流量といった要因によって決定される。リーン段階のリッチ段階に対する時間比率として、5:1より大きい値(a value of greater than 5:1)が好ましく、10:1より大きい値がより好ましく、15:1より大きい値が特に好ましい。リーン段階の持続時間としては、任意の望ましい時間が考えられ、正常運転モードの実際の用途に関して、5〜240秒間(5秒間と240秒間を包含する)の時間枠が好ましく、10〜80秒間の持続時間の時間枠が特に好ましい。
【0080】
これに関連して、本発明による方法が、排気ガスの調節された触媒作用のための任意の方法と同様に、センサーと制御コードによってのみ調節される若しくは調節されることができるのではなく、乗り物が運転される方法によっても影響されることは、注目すべきである。例えば、エンジンを高回転(high revs)に及び/又は突然に加速する、及び/又は高負荷下で運転する場合に、「自然な(natural)」リッチ運転が生じる。この種類の運転状態では、運転動作を一時的に、λ=1若しくはλ<1による非リーン運転に切り替えることができる、或いは、短時間、リッチ段階が、正常な調節された運転におけるよりも長く持続すること、又はリッチ段階が運転上の理由から好ましいことが起こりうる。
【0081】
1つの好ましい実施態様では、NOセンサーを用いて、リッチ/リーン・サイクルを制御して、各場合に、所定のNO限界値に達するちょうどその時によりリッチな段階が導入される。
【0082】
酸化鉄の使用が、CO及びHCを酸化して、CO及び水を形成するためと、NOを酸化して、NOを形成するための両方の触媒の耐久性を高めることに、注目すべきである。活性金属におけるNO形成は「NO貯蔵触媒」として知られる触媒におけるNO貯蔵の重要な亜工程であるので、例えばアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び塩基性希土類酸化物のような、NOx貯蔵媒質と組み合わせた、本発明による触媒は、非常に効果的な貯蔵触媒として役立つことができる。アルカリ金属、アルカリ土類金属及び塩基性希土類酸化物の添加は、本発明による触媒のNO貯蔵容量を著しく増大させる。この場合にもまた、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び塩基性希土類酸化物なる用語は、対応する炭酸塩、水酸化物及び亜酸化物をも包含する。活性金属におけるNO形成、NO形成とNO貯蔵元素との関係は、当業者が熟知する関係であり、例えば、刊行物 "Development of new concept three-way catalyst for automotive leanburn engines" SAE 950809 (1995) et alに記載されている。
【0083】
NOの酸化を促進して、NOを形成する触媒の他の用途は、微粒子フィルターとの組み合わせから生じる。例えば、CRT(連続再生トラップ(Continuously Regenerating Trap))系として知られるものでは、酸化触媒の下流に微粒子フィルターが接続される。該酸化触媒は、NOを形成し、これは約200〜450℃の温度枠内で強い酸化剤であり、この酸化剤は、微粒子フィルター上に集積している微粒子を酸化し、それによって分解することができる。該酸化触媒は高度に熱安定性であることが望ましい、この理由は、さもなければ、該酸化触媒の老化の進行と共にCRT活性が低下するからである。CRT系が機能する方法は、EP特許835684に記載されている。
【0084】
本発明による触媒の使用に関して、該触媒がエンジンに密接した位置に設置されるか、又は床下位置に設置されることが好ましいことは、注目すべきである。本発明による触媒はさらに、下記群:慣用的な始動若しくは着火触媒(starting or light-off catalysts)、HC−SCR触媒、NO貯蔵触媒、λ−制御スリーウェイ触媒、煤又は微粒子フィルター、から選択される、少なくとも1つの他の触媒又はフィルターと組み合わせても運転することができる。これに関連して、一例として、煤塵フィルターを本発明による触媒で被覆することができる。本発明による触媒を上記触媒と(α)種々な触媒を連続的に配置することによって、(β)種々な触媒を物理的に混合して、共通の造形体に付着させることによって、及び(γ)種々な触媒を共通の造形体に複数の層の形状に付着させることによって、及びもちろん、上記手段の任意の望ましい組み合わせでも結合させることが考えられる。
【0085】
排気ガス精製が炭化水素及び一酸化炭素の同時酸化と、酸化窒素の還元と、さらには、場合によっては、ディーゼル・エンジンの場合に、微粒子の除去をも含むようなやり方で、本発明による方法が行なわれることが好ましい。
【0086】
さらに、本発明による触媒が、実際にあらゆる考えられるリーンバーンエンジンに用いることができることも注目すべきであり、該リーンバーンエンジンに関連して、直接ガソリン・インジェクション(direct petrol injection)による火花点火エンジン、ハイブリッド・エンジン、ディーゼル・エンジン、多種燃料エンジン、層状給気エンジン(stratified charge engine);及びスロットルなし部分負荷運転と高圧縮によるか (with unthrottled part-load operation and higher compression)、又はスロットルなし部分負荷運転若しくは高圧縮による火花点火エンジンであって、直接インジェクションによるエンジン;が好ましい。
【0087】
好ましい運転モードは、最終の排気ガス触媒の下流に好ましく取り付けられるNOセンサーを用いて制御されるリッチ/リーン・モードによっても規定され、調節可能なNO閾値が越えられるときに、よりリッチな運転が誘導される。
【0088】
本発明による触媒の実施例の製造並びに、先行技術に比べて改良された、それらの性質は、以下の具体的な実施態様で例示し、説明することにする。これが特定の実施例を用いてなされて、特定の数値を与えているという事実は、本明細書及び特許請求の範囲に記載した一般的な詳細を制限するものと、決して見なすべきではない。
【実施例】
【0089】
実施例1(E1)
触媒を製造するために、Nortonによって製造された酸化ジルコニウム(XZ16075)1gを最初の担体酸化物として用意した。1モル硝酸白金水溶液20μlに3モル硝酸鉄溶液60μlを混合して、水664μlで希釈した。得られた溶液750μlを該酸化ジルコニウムに含浸させた、これは該酸化ジルコニウムの吸水量(water uptake)に相当した。この方法で含浸させたZrOを次に、80℃において16時間乾燥させた。次に、該物質を空気中で500℃において2時間か焼した(「フレッシュ」と呼ぶ)。該フレッシュ物質の一部を空気中700℃においてさらに16時間か焼した(「老化(aged)」と呼ぶ)。
【0090】
実施例2〜42(E2〜E42)
酸化ジルコニウムに、硝酸鉄と、例えば硝酸白金、硝酸ロジウム、硝酸ランタン、硝酸ガリウム、硝酸インジウム、硝酸サマリウム及び硝酸セリウムのような、他の塩との水溶液を含浸させて、触媒を実施例1に記載したように製造した。表1は、重量%に基づいて、対応する触媒の組成を示す。
【0091】
該酸化ジルコニウムのBET表面積は、未処理状態で、46m/gである。この担体酸化物の大部分は、酸化ジルコニウムの単斜晶形から成る。該担体の相組成は、図1に示すX線回折図(GADDS表面デテクター付きBRUKER AXS)で説明する。
【0092】
酸化鉄によって安定化された白金/酸化鉄/ZrO触媒の相組成は、ZrO担体物質に比べて、有意な変化を示さなかった。フレッシュ触媒と老化触媒(実施例3)のX線回折図を、図2(「フレッシュ」)と図3(「老化」)に示す。用いたX線回折計は、Brukerによって製造された器具、即ち、GADDS表面デテクター付きBRUKER AXSであった。
【0093】
図1と、図2及び図3とを比較すると、本発明による触媒が酸化鉄に典型的な反射を全く有さないことが明らかになる。
【0094】
表1:酸化鉄によって安定化された貴金属/ZrO触媒(E01〜E44)の組成
【0095】
【表1A】

【0096】
【表1B】

【0097】
実施例45
触媒を製造するために、Braceによって製造された酸化アルミニウム(XZ16075)1gを最初の担体酸化物として用意した。1モル硝酸ロジウム水溶液49μlに2.5モル硝酸鉄溶液72μlを混合して、水1029μlで希釈した。得られた溶液1150μlを該酸化アルミニウムに含浸させた、これは該酸化アルミニウムの吸水量に相当した。この方法で含浸させたAlを次に、80℃において16時間乾燥させた。次に、該物質を空気中で500℃において2時間か焼した(「フレッシュ」と呼ぶ)。該フレッシュ物質の一部を空気中700℃においてさらに16時間か焼した(「老化」と呼ぶ)。
【0098】
実施例46〜48(E46〜E48)
酸化アルミニウムに異なる量の鉄を負荷させたこと以外は、実施例45と同様に、触媒を製造した。表2は、重量%に基づいた、対応する触媒の組成を示す。
【0099】
実施例49〜50(E49〜E50)
触媒を製造するために、担体物質としてH-ZSM-5ゼオライト1gを、1モル硫酸アンモニウム溶液中に入れて、50℃において1時間撹拌した。次に、遠心分離を用いて、該ゼオライト担体を取り出し、上澄み溶液をデカントした。硫酸アンモニウム溶液中での撹拌をさらに2回繰り返した。その後、該ゼオライト担体を脱イオン水で洗浄して、乾燥させた。得られた担体物質にシュウ酸鉄(II)を混合して、マッフル炉内で、フォーミング・ガス(forming gas)(N中5%H)下、600℃において16時間か焼した。次に、該鉄含有担体に硝酸ロジウムを含浸させ、乾燥させ、空気中、500℃において2時間か焼した。
【0100】
実施例51(E51)
触媒を製造するために、β−ゼオライト1gを最初の担体として用意した。1モル硝酸ロジウム水溶液49μlに2.5モル硝酸鉄溶液72μlを混合して、水1779μlで希釈した。得られた溶液1900μlを該酸化アルミニウムに含浸させた。この方法で含浸させたβ−ゼオライトを次に、80℃において16時間乾燥させた。次に、該物質を空気中で500℃において2時間か焼した。
【0101】
実施例52(E52)
ロジウム負荷を変えたこと以外は、実施例51に記載したように触媒を製造した。表2は、対応する触媒の組成を重量%に基づいて示す。
【0102】
表2:酸化鉄で安定化した貴金属/Al触媒と貴金属/ゼオライト触媒(E45〜E52)の組成
【0103】
【表2】

【0104】
比較例1〜4(CE01〜CE04)
Pt及びFeを単独で含む触媒を、対応する硝酸塩溶液を含浸させて製造した。
【0105】
表3:Pt含有ZrO触媒とFe含有ZrO触媒(CE01〜CE04)の組成
【0106】
【表3】

【0107】
比較例5(CE05)
比較例5は、Pt/Ba/Ceに基づいた、商業的に入手可能なNO貯蔵触媒(基準触媒)を包含する。
【0108】
触媒試験
ステンレス鋼製の固定床実験室反応炉においてシミュレートした排気ガス下で、活性測定を行なった。触媒を、周期的リッチ/リーン・モード及び連続運転で、150〜450℃の温度範囲において過剰な酸素によって試験した。
【0109】
リッチ/リーン試験条件I
リッチ/リーン設定:2s リッチ/80s リーン
ガス混合物組成
リーン:1000vppm CO、100vppm プロペン、300vppm NO、6%O、5%HO、残部−N
リッチ:0.03%O、〜6%CO、〜2%H
ガス・スループット:45L/h
試験に用いられる触媒量:0.25g
リッチ/リーン試験条件II
リッチ/リーン設定:5s リッチ/60s リーン
ガス混合物組成
リーン:500vppm CO、100vppm プロペン、200vppm NO、14%O、10%HO、残部−N
リッチ:0.03%O、〜6%CO、〜2%H
ガス・スループット:32L/h
試験に用いられる触媒量:0.25g
常時リーン試験条件
ガス混合物組成:
1000vppm CO、100vppm プロペン、300vppm NO、6%O、5%HO、残部−N
ガス・スループット:45L/h
試験に用いられる触媒量:0.25g
触媒を評価するために、異なる反応温度における3リッチ/リーン・サイクル内の平均NO転化率を測定した。さらに、常時リーン試験におけるCOとプロペン酸化に関する及びNO酸化のためのNO形成に関するT50値(50%転化率に達する温度)を用いて、酸化活性を評価した。同じ量の貴金属に基づいて、触媒を相互と及び基準触媒と比較した。
【0110】
試験条件I下でのNO転化に関する触媒試験の結果を表4(フレッシュ試料)及び5(老化試料)に要約する。選択した触媒における試験条件II下での反応温度の関数としての平均NO転化率を、図4と図5に示す。3種類の老化試料(CE05、E03及びE36)における250℃でのNO転化率の時間曲線を、図6〜8に示す。
【0111】
フレッシュ触媒と老化触媒における常時リーン・モードでのT50値を、表6に示す。フレッシュ触媒と老化触媒に関する反応温度の関数としてのNO形成を、図9と図10に示す。
【0112】
該結果から、特に、ディーゼル用途のために重要である200〜300℃の温度範囲における熱老化後の新しい触媒が、基準触媒よりも有意に高いNO転化率を可能にすることを知ることができる。
【0113】
表4:フレッシュ触媒上におけるリッチ/リーン・モードでのNO転化に関する触媒試験の結果(試験条件I)
【0114】
【表4A】

【0115】
【表4B】

【0116】
表5:老化触媒上におけるリッチ/リーン・モードでのNO転化に関する触媒試験の結果(試験条件I)
【0117】
【表5A】

【0118】
【表5B】

【0119】
表6:COとHCの酸化に関する触媒試験の結果
【0120】
【表6A】

【0121】
【表6B】

【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は、実施例1による担体のX線回折図を示す。
【図2】図2は、実施例3によるフレッシュ触媒に関するX線回折図を示す。
【図3】図3は、実施例3による老化触媒に関するX線回折図を示す。
【図4】図4は、図面に列挙したフレッシュ触媒における試験条件II下での反応温度の関数としての平均NO転化率を示す。
【図5】図5は、図面に列挙した老化触媒における試験条件II下での反応温度の関数としての平均NO転化率を示す。
【図6】図6は、CE05による老化触媒における250℃でのNO転化に関する時間曲線を示す。
【図7】図7は、E03による老化触媒における250℃でのNO転化に関する時間曲線を示す。
【図8】図8は、E37による老化触媒における250℃でのNO転化に関する時間曲線を示す。
【図9】図9は、図面に表示したフレッシュ触媒に関する反応温度の関数としてのNO形成を示す。
【図10】図10は、図面に表示した老化触媒に関する反応温度の関数としてのNO形成を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーンバーンエンジンにおける排気ガス精製のための触媒であって、少なくとも下記成分:
(i)酸化鉄、
(ii)活性金属としての白金若しくはロジウム又は白金とロジウムとの混合物、
(iii)担体酸化物
を含み、用いる活性金属が白金単独である場合には、該担体酸化物が、酸化ジルコニウム、セリウム/ジルコニウム混合酸化物、若しくはこれらの化合物の混合物を含有し、又は、用いる活性金属がロジウム若しくは、白金とロジウムとの混合物である場合には、該担体酸化物が、酸化ジルコニウム、セリウム/ジルコニウム混合酸化物、酸化アルミニウム、アルミノシリケート、酸化ケイ素、ゼオライト若しくはこれらの化合物の混合物を含有することを特徴とする触媒。
【請求項2】
希土類酸化物、酸化ガリウム若しくは酸化インジウム、又はこれらの化合物の混合物からなる群から選択されるプロモーターを含むことを特徴とする、請求項1記載の触媒。
【請求項3】
酸化鉄と、活性金属と、存在する場合には、プロモーターとが、担体酸化物上に一緒に存在することを特徴とする、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
そのX線回折図が、酸化鉄に特徴的である反射を有さないことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項5】
用いる総酸化鉄の、用いる総活性金属に対する、金属元素に基づいた質量比率が、1:1から10:1までの範囲内であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
用いる総活性金属が、用いる総担体酸化物に対して、0.1重量%〜5重量%の割合を形成することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
少なくとも1種類の希土類酸化物が、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの酸化物、及び上記酸化物の少なくとも2種類の混合物若しくは混合酸化物から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項8】
用いる総プロモーターの、用いる総活性金属に対する、金属元素に基づいた質量比率が、1:1から20:1までの範囲内であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項9】
粉末、顆粒、押出成形物、造形体の形状であるか、又は被覆ハニカム体としてである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項10】
NO貯蔵成分を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項11】
前記NO貯蔵成分が、多孔質担体酸化物上のBa、Sr、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの酸化物又はカーボネートから成る群から選択されることを特徴とする、請求項10記載の触媒。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の触媒の製造方法であって、酸化鉄(i)、又は前記酸化鉄がそれからの熱処理の結果として形成される鉄化合物と、活性金属(ii)及び担体酸化物(iii)とを接触させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の触媒、又は請求項12に記載された通りに製造された触媒の、リーンバーンエンジンからの排気ガスから汚染物質を除去するための使用。
【請求項14】
リッチ/リーン及び/又は常時リーン・モードでのリーンバーンエンジンからの排気ガスの精製方法であって、請求項1〜11のいずれか1項に記載の触媒又は請求項12に記載された通りに製造された触媒を用いることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記リッチ/リーン・モードが、交互のリッチ・サイクルとリーン・サイクルで行なわれ、正常な運転モードにおけるリーン・サイクル持続時間の、リッチ・サイクル持続時間に対する比率が少なくとも10:1であり、正常運転モードにおけるリーン・サイクルの絶対持続時間が10秒間〜180秒間であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
排気ガス精製が、炭化水素及び一酸化炭素の酸化と、酸化窒素の還元とを含み、場合によっては、ディーゼル・エンジンの場合には、さらに微粒子の除去をも含むことを特徴とする、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記リーンバーンエンジンが、直接ガソリンインジェクションによる火花点火エンジン、ハイブリッド・エンジン、ディーゼル・エンジン、多種燃料エンジン、層状給気エンジン;及びスロットルなし(unthrottled)部分負荷運転と高圧縮による、又はスロットルなし部分負荷運転による、又は高圧縮による火花点火エンジンであって、直接インジェクションによるエンジン;から成る群から選択されることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
触媒が、エンジンに密接した位置又は床下位置に設置されることを特徴とする、請求項14〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
NOセンサーが、リッチ/リーン・サイクルを制御するために用いられ、所定のNO限界値を超えたちょうどそのときに、よりリッチな段階が導入されることを特徴とする、請求項14〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
始動(starting)触媒、HC−SCR触媒、NO貯蔵触媒、λ−制御スリーウェイ触媒、微粒子フィルター、煤フィルターからなる群から選択される触媒又はフィルターの少なくとも1つとの任意の望ましい組み合わせで、該触媒が用いられることを特徴とする、請求項14〜19のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2007−534467(P2007−534467A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551804(P2006−551804)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001090
【国際公開番号】WO2005/075059
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(501389637)ハーテーエー・アクチェンゲゼルシャフト・ザ・ハイ・スループット・イクスペリメンテイション・カンパニー (8)
【Fターム(参考)】