説明

三値連想磁気抵抗ランダムアクセスメモリセル

【課題】磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)に基づいた三値連想メモリ(TCAM)に書き込んで検索する方法を提供する。
【解決手段】三値連想メモリセル1は、ストレージ層23から形成されている第1磁気トンネル接合2、ストレージ層の磁化に対して調整可能な磁化方向を有するセンス層21、及び、ストレージ層とセンス層との間の絶縁層22を有し、ストレージ層に接続されているセンス線3を有し、第1フィールド線4及び第2フィールド線5を有する。第1フィールド線は、第2フィールド線に対して直交し、第2フィールド線を介してストレージ層に対して第1書込みデータを提供して、高い論理状態又は低い論理状態を有する第1記憶データを記憶する。第1フィールド線を介してストレージ層に対して第1書込みデータを提供して、マスクされた論理状態を有する第1記憶データを記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)に関し、排他的でなく特に磁気トンネル接合(MTJ)に基づいたメモリセルを有する三値連想ランダムアクセスメモリに関する。
【背景技術】
【0002】
連想メモリ(CAM)は、ランダムアクセスメモリ(RAM)の技術から発展したものである。1つのワードのアドレスに基づいてこのワードにアクセスするRAMとは違って、CAMは、1つの内容に基づいてこのワードにアクセスする。CAMは、従来のRAMに似た方式でデータを記憶する。しかしながら、CAMを「読み取ること」には、一致すべき入力データを提供し、次いで一致に対してこのCAMを検索することが含まれる。その結果、当該一致のアドレスが出力され得る。ユーザが、1つのデータワードを提供し、CAMが、1クロックサイクル中にその全体のメモリを検索して、このデータワードがこのCAM内のどこに記憶されているかを調べるように、このCAMは構成されている。当該データワードが見つけられたならば、このCAMは、そのワードが見つけられた場所の1つ又はそれ以上の記憶アドレスのリストを返す。CAMは、装置の始動時にプレロードされ、装置の稼働中に再書き込みされ得る。
【0003】
全メモリを速く検索するため、CAMは、1つのメモリ列ごとに別々の一致論理を使用する。1つの検索キーが、ユーザによって提示されたならば、この検索キーの各ビットが、1つの列内の全ての一致論理セルに対して同時に可視化される。次いで一致論理セルの各列が、当該提示された検索キーと連想されたメモリ列とをビットごとに比較する。複数の比較結果が、1つの二進値に減らされ(例えば、一致に対して1及び不一致に対して0)、プライオリティエンコーダに入力される。このプライオリティエンコーダは、検索結果を最後に生成する。全てのメモリ列に対する比較は並行に実行されるので、CAMは、広帯域幅で一定時間の検索パフォーマンスを実現する。
【0004】
CAM及び特に三値CAM(TCAM)も、主にネットワーク装置で使用される。これらのCAM及びTCAMは、通常のメモリのように読出し及び書込みを提供するものの、全メモリ内のあらゆる一致するデータのインデックスを探し出す検索も支援する。特にTCAMは、1及び零の双方に一致するワイルドカードビットを含み得る。当該ワイルドカードは、(検索の幾つかのビットが「気にしない」であることを意味する)メモリのアクセス動作に使用され得るか又は(データの幾つかのビットが一致を決定するために使用されてはならないことを意味する)データ自身と一緒に記憶され得る。マスクビットがアクティブである(例えば、論理0値にセットされる)場合、三値CAMセルは、「気にしない」(X)値を記憶しているとみなされる。このことは、アクティブにマスクされた三値CAMセル上で実行された全ての比較演算の結果として、セルを一致する状態にする。したがって、論理0のデータビットが、1つのアクティブマスクビット及び1つの論理1データビットを記憶している1つの三値CAMセルに使用される場合、比較演算が、セルが一致する状態を示す。1つの論理1データビットが、1つのアクティブマスクビット及び1つの論理0データビットを記憶している1つの三値CAMセルに使用される場合にも、セルが一致する状態が示される。よって、1つのTCAMが部分一致を実行する。TCAMによって提供される完全並行検索が、ルーティング表引きのような多数の複雑な演算を容易にする。TCAMは、メモリ内のあらゆる位置を同時に検索するので、TCAM内の素子の整列はほとんど重要でなく、大きい索引構造が多くの場合に完全に回避され得る。この並行検索は、(IPルックアップのような)幾つかのアプリケーションの要求を直接実行し、より多くの検索方式のビルディングブロックとして使用される。
【0005】
TCAMは、パケット分類、アクセスリスト制御、割り込み検出のためのパターンマッチングのようなその他の高速ネットワーク管理アプリケーションでも使用される。またTCAMは、コプロセッサとしてのネットワークプロセッサと一緒に使用されて、パケット分類及びルーティング表引きのような多くのアプリケーション向けのネットワークプロセッサを補助する。
【0006】
スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)に基づいた1つのTCAMセルの一般的な構成は、2つのSRAMを含む1つの三値ストレージから成る。この三値ストレージは、10〜12個のトランジスタを結合する。またこの三値ストレージは、1つの比較論理を有する。この比較論理は、基本的には4個のパストランジスタを使用する1つのXNORゲートである。よって、このようなセルは、非常に大きく、通常は14〜16個のトランジスタを有し、当該セルをコスト高な装置にする。従来の技術のSRAMに基づいたTCAMセルの回路図が、図1中に示されている。図1のTCAMセルは、排他的論理和(EOR)機能を実行するために構成された4個又はそれ以上のトランジスタを有する2つの標準的なSRAMセルとして提供されている。
【0007】
簡単な記憶セルを有するRAMチップとは違って、完全並行なTCAM内の各々の個別メモリビット自身が、記憶されたデータビットと入力されたデータビットとの一致を検出するための連想比較回路を有する。したがって、TCAMチップの記憶容量は、通常のメモリチップよりかなり小さい。そのうえ、1つの完全なデータワード一致信号を生成するため、データワード内の各セルからの一致出力が結合されなければならない。さらに、追加の当該連想回路は、TCAMチップの物理的な大きさを増大させる。さらに、(SRAM素子を使用して)今日生産されているようなCAM及びTCAMは本質的に揮発性である。つまり、電源が切られると、データが消失する。結果として、あらゆる比較回路が、全てのクロックサイクルで稼動される必要があり、電力を大きく消費する。高価格で、大きい電力消費で且つ本質的に揮発性のために、TCAMは、低コストの方法を使用することによって検索速度が達成され得ない特定の用途で使用されるだけである。
【0008】
進歩により出現するメモリ技術及びルックアップ専用アプリケーションが、大きいワードサイズを有する三値連想メモリを要求している。大きいセル容量に起因して、当該三値連想メモリはより遅い検索速度を我慢しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,950,335号明細書
【特許文献2】米国特許公開公報第2006/291276号明細書
【特許文献3】米国特許公開公報第2009/251957号明細書
【特許文献4】米国特許第5,695,864号明細書
【特許文献5】米国特許第6,603,677号明細書
【特許文献6】国際特許出願公開第20008040561号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Science, volume 285, page 867, 1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、従来の技術の少なくとも幾つかの限界を克服する、磁気ランダムアクセスメモリに基づいた三値連想メモリ(MRAMに基づいたTCAM)に書き込んで検索する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、実施の形態にしたがって、MRAMに基づいたTCAMセルに書き込む方法にあって、当該セルは、磁化を呈するストレージ層から形成されている第1磁気トンネル接合、前記ストレージ層の磁化に対して調整可能な磁化方向を有するセンス層、及び、前記ストレージ層と前記センス層との間の絶縁層を有し、前記ストレージ層に接続されているセンス線を有し、及び、第1フィールド線及び第2フィールド線を有し、両フィールド線は、前記ストレージ層及び前記センス層とやりとりし、前記第1フィールド線は、前記第2フィールド線に対して直交し、当該方法は、前記第2フィールド線を介して前記ストレージ層に対して第1書込みデータを提供して、高い論理状態又は低い論理状態を有する第1記憶データを記憶する方法において、前記第1フィールド線を介して前記ストレージ層に対して前記第1書込みデータを提供して、マスクされた論理状態を有する前記第1記憶データを記憶することを特徴とする方法によって解決される。
【0013】
1つの実施の形態では、前記第2フィールド線を介して上述した前記第1書込みデータを提供することは、前記ストレージ層の磁化を前記センス層の磁化方向に対して平行又は逆平行に切り替えるために適合された第2フィールド電流中に前記第1書込みデータを含めることを有し、前記第1フィールド線を介して上述した前記書込みデータを提供することは、前記ストレージ層の磁化を前記センス層の磁化に対して直交する方向に切り替えるために適合された第1フィールド電流中に前記第1書込みデータを含めることを有する。
【0014】
もう1つの好適な実施の形態では、第1選択トランジスタに接続された第1磁気トンネル接合、第2選択トランジスタに接続された第2磁気トンネル接合及びストレージ層とセンス層との間の絶縁層を有するMRAMに基づいたTCAMセルを検索する方法にあって、各磁気トンネル接合は、磁化を呈するストレージ層から形成されていて、センス層が、磁化方向が前記ストレージ層の磁化に対して調整可能である磁化を呈し、センス線が、各磁気トンネル接合のストレージ層に接続されていて、第1フィールド線及び第2フィールド線の双方が、前記第1磁気トンネル接合及び前記第2磁気トンネル接合の前記ストレージ層及び前記センス層とやりとりし、前記第1フィールド線は、前記第2フィールド線に対して直交し、当該方法は、書込み動作中に、前記第1フィールド線又は前記第2フィールド線を介して前記第1磁気トンネル接合のストレージ層に対して第1書込みデータを提供すること、第1記憶データに対応する第1方向に前記第1磁気トンネル接合の磁化を切り替えること、前記第1フィールド線又は前記第2フィールド線を介して前記第2磁気トンネル接合の前記ストレージ層に対して第2書込みデータを提供すること、第2記憶データに対応し、第1方向に対して反対の第2方向に前記第2磁気トンネル接合の磁化を切り替えること、検索動作中に、前記第2フィールド線を介して前記第1磁気トンネル接合及び前記第2磁気トンネル接合の前記センス層に対して検索データを提供すること、及び、前記MRAMに基づいたTCAMセルの磁気抵抗を測定することによって前記検索データと前記第1記憶データ及び前記第2記憶データとの一致を確認することを含む。
【0015】
また本発明は、書込み及び/又は検索の方法を実行するために適合されたMRAMに基づいたTCAMセルに関し、この場合、前記第2フィールド線は、前記センス層の磁化方向に対して平行又は逆平行に前記ストレージ層の磁化を切り替える前記第2フィールド電流を通電するために適合されている当該セルにあって、前記第1フィールド線は、前記センス層の磁化に対して直交する方向に切り替える第1フィールド電流を通電するために適合されている。
【0016】
この実施の形態によれば、当該課題は、少なくとも1つの第1磁気トンネル接合 を有するRAMに基づいたTCAMセルに書込みデータビットを書き込む方法によって解決される。前記第1磁気トンネル接合は、少なくとも1つのストレージ層と1つのセンス層との間に配置された1つの絶縁層から形成される。前記ストレージ層は、センス線に接続されていて且つ1つの磁化方向を呈する。前記センス層は、1つの磁化方向を呈する。また前記セルは、前記センス層に対して平行な第1フィールド線及び前記第1フィールド線に対して垂直な第2フィールド線を有する。当該方法は、前記センス層の磁化方向に対して平行又は逆平行に前記ストレージ層の前記磁化方向を切り替えて、前記第1フィールド線を介して前記ストレージ層に書込みデータビットを提供して、記憶データビットを高「1」又は低「0」の論理状態で前記第1磁気トンネル接合中に記憶するステップ、 又は、前記センス層の磁化方向に対して垂直に前記ストレージ層の磁化方向を切り替えて、前記第2フィールド線を介して前記ストレージ層に書込みデータビットを提供して、記憶データビットをマスクされた「X」の論理状態で前記第1磁気トンネル接合中に記憶するステップを有する。
【0017】
1つの実施の形態では、前記第1フィールド線を介して前記ストレージ層に書込みデータビットを提供することは、前記書込みデータビットを第1フィールド電流中に含めることを有し、前記第2フィールド線を介して前記ストレージ層に書込みデータビットを提供することは、前記書込みデータビットを第2フィールド電流中に含めることを有する。前記第1フィールド電流及び前記第2フィールド電流はそれぞれ、第1磁場及び第2磁場を生成する。前記磁場は、前記ストレージ層の前記磁化方向を切り替えることができる。
【0018】
別の実施の形態では、MRAMに基づいたTCAMセルは、第1選択トランジスタを有する。前記第1磁気トンネル接合が、予め決定した高い温度閾値に達するまで、この第1磁気トンネル接合を加熱するため、この第1選択トランジスタは、ONに切り替えられて、前記センス線を介して前記第1磁気トンネル接合に接合電流パルスを通電することを可能にする。次いでこの第1選択トランジスタは、OFFに切り替えられて、電流パルスを阻止し、前記第1磁気トンネル接合を冷却可能にする。
【0019】
もう1つの好適な実施の形態では、MRAMに基づいた三値CAMセルが、前記第1磁気トンネル接合に隣接した第2磁気トンネル接合に接続されている第2選択トランジスタも有する。当該書込み方法は、第1極性を有する前記第1電流又は前記第2電流によって前記第1磁気トンネル接合中に第1記憶データビットを記憶して、磁場を第1方向に指向させるステップを有し、前記第1極性と反対の第2極性を有する前記第1電流又は前記第2電流によって前記第2磁気トンネル接合中に第2記憶データビットを記憶して、前記第1方向と反対の磁場を第2方向に指向させるステップを有する。
【0020】
さらに別の実施の形態では、前記第1選択トランジスタは、第1記憶データビットの記憶中にONに切り替えられる一方で、前記第2選択トランジスタは、OFFに切り替えられて、前記接合電流パルスを前記第1磁気トンネル接合だけに通電することによってこの第1磁気トンネル接合を選択的に加熱し、前記第2選択トランジスタは、第2記憶データビットの記憶中にONに切り替えられる一方で、前記第1選択トランジスタは、OFFに切り替えられて、前記接合電流パルスを前記第2磁気トンネル接合だけに通電することによってこの第2磁気トンネル接合を選択的に加熱する。これらの課題は、MRAMに基づいた三値CAMセル内で記憶データビットを検索する方法によっても解決される。当該方法は:
a)高「1」と低「0」との間で変化する論理状態を有する検索データビットを、前記第2フィールド線を介して前記センス層に供給して、このセンス層の磁化を完全に切り替えることなしに、このセンス層の磁化方向を当該供給に応じて変更するステップ;
b)前記セルの磁気抵抗を測定して、前記検索データビットと前記記憶データビットとの一致、不一致又は「気にしない」の配置を確認するステップを有する。
【0021】
1つの実施の形態では、前記第2フィールド線を介して前記センス層に前記検索データビットを提供することは、小さい電流振幅及び交互する極性を有する前記第2磁場中に前記検索データビットを含めることを有する。第2磁場を生成する前記第2フィールド電流は、前記センス層の磁化を完全に切り替えることなしに、このセンス層の磁化方向を変更することができる。
【発明の効果】
【0022】
従来の技術の三値連想記憶メモリと比べて、本発明のMRAMに基づいたCAMセルは、不揮発性と共に低いエネルギーでより高い密度を有し、電力消費を低減する。
【0023】
さらに、MRAMに基づいたCAMセルの設計及び生産制御が簡単にされ得る。本発明のMRAMに基づいたCAMセルは、データのマスク動作を支援する。この場合、データアドレスは、読取り動作中のデータに関連しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の技術であるSRAMに基づいた三値CAMセルの回路図である。
【図2】本発明の実施の形態による接合を有するMRAMに基づいた三値CAMセルである。
【図3】本発明の実施の形態によるストレージ層及びセンス層を有する接合の概略図である。
【図4】本発明の好適な実施の形態の2つの接合を有するMRAMに基づいた三値CAMセルである。
【図5】図4のMRAMに基づいた三値CAMセルに対するストレージ層及びセンス層の磁化方向の概略図である。
【図6】図2又は図4のMRAMに基づいた幾つかの三値CAMセルを有するメモリアレイを示す。
【図7】本発明の実施の形態によるプリアンプを有するMRAMに基づいたCAMセルを示す。
【図8】本発明の別の実施の形態によるプリアンプを有するMRAMに基づいたCAMセルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
磁気ランダムアクセスメモリに基づいた三値連想メモリ(MRAMに基づいたTCAM)セル1の本発明の実施の形態が、図2中に示されている。このMRAMに基づいたTCAMセル1は、ストレージ層23とセンス層21との間に配置された絶縁層22から形成された第1磁気トンネル接合2を有する。ストレージ層23は、好ましくは1つの磁化方向を有する硬強磁性物質から作られる。その一方でセンス層21は、低保磁力の軟強磁性物質から作られ、ストレージ層23の当該磁化に対して調整できる1つの磁化方向を有する。一般に鉄、コバルト、ニッケル又はこれらの合金が、強磁性物質に属される。絶縁層22は、好ましくは一般にナノメーターの範囲内の薄い層であり、例えばアルミナ又は酸化マグネシウムのような、あらゆる適切な絶縁材料から形成される。
【0026】
第1磁気トンネル接合2は、強磁性層21及び23の組成と異なる組成を含む1つ又はそれ以上の層から成る任意の数及び/又は配置を有し得る。図3の例では、第1磁気トンネル接合2は、強磁性の層21,23及び絶縁層23に加えてこの絶縁層23の下に配置された反強磁性のピン層24を有する。このピン層24は、一般にはIrMn,PtMn又はNiMnのような反強磁性物質から作られる。この代わりに、また軟強磁性層21及び硬強磁性層23がそれぞれ、ストレージ層及びセンス層として使用されるため形成され得る。また磁気トンネル接合2は、1つ以上の強磁性層を有し得る。熱支援スイッチング(以下を参照)手続きを基礎にするMRAMに基づいたTCAMセル1の書込み動作の場合、ストレージ層23は、好ましくは例えばFeCo/PtMn及び/又はFeCo/IrMnである合金を使用して形成された強磁性/反強磁性の二重層である。
【0027】
磁気トンネル接合2は、ストレージ層23に接合しているセンス線3と選択線つまりワード線7によって制御される第1選択トランジスタ6との間に配置されている。第1フィールド線4が、第1磁気トンネル接合2及びセンス線3の上に配置されている。第2フィールド線5が、第1磁気トンネル接合2の下でセンス層21の近くに配置されている。好適な配置では、センス線3は、第2フィールド線5に対して直交し且つ第1フィールド線4に対して平行である。またセンス線3は、第2フィールド線5及び第1フィールド線4に対してそれぞれ平行に及び垂直になり得る。このことは、第1フィールド線4が第2フィールド線5に対して直交し、両フィールド線4,5がストレージ層21及びセンス層23とやりとりすることを意味する。
【0028】
MRAMに基づいたTCAMセル1の書込み動作は、米国特許第6,950,335号明細書及び米国特許公開公報第2006/291276号明細書に類似した熱支援スイッチング(TAS)手続きに基づく。TASに基づいた書込み手続きの使用は、さらに特に低減される将来のサイズ及び/又は高密度に対してMRAMに基づいたTCAMセル1の全体のパフォーマンスを向上させる。
【0029】
特に好ましくは、書込み動作は、第2フィールド線5を介して第1書込みデータビットを上述のストレージ層23に提供するステップを有する。この第2フィールド線5では、第1書込みデータビットは、第2磁場52を生成する第2フィールド電流51中に含まれている。この第2磁場52は、ストレージ層23の磁化方向を第1安定方向から第2安定方向に切り替えることが可能である。第2フィールド電流51の極性に応じて、ストレージ層23の磁化が、高い論理状態「1」又は低い論理状態「0」を別々に有する第1記憶データビットに対応するセンス層21の磁化方向に対して平行又は逆平行である磁化方向にしたがって切り替えられる。
【0030】
また第1書込みデータビットは、第1フィールド線4を介してストレージ層23に対して提供され得る。この第1フィールド線4では、第1書込みデータビットは、第1磁場42を生成する第1フィールド電流41中に含まれている。この第1磁場42は、ストレージ層23の予め決定した磁化方向を第1安定方向から第2安定方向に切り替えることができる。この場合、ストレージ層23の磁化方向は、第1フィールド電流41の両極性に対するセンス層21の磁化方向に直交し、マスクされた論理状態「X」を有する第1記憶データビットに対応する。
【0031】
第1磁気トンネル接合2を加熱するため、選択トランジスタ6は、上述した書込み動作中にワード線7を使用して飽和モード(ON)に切り替えられ、センス線3経由で第1接合2を通じて接合電流パルス31を通電可能にする。磁気トンネル接合2の温度が、予め決定した閾温度つまりブロッキング温度に到達した時に、選択トランジスタ6が、接合電流パルス31を阻止し、磁気トンネル接合2を冷却可能にするOFFに切り替えられる。磁気トンネル接合2の温度が、予め決定した低い温度閾値に達するまで、第1磁場42又は第2磁場52は、冷却中にストレージ層23に対して印加され続ける。ストレージ層23の磁化が、この低い温度閾値でこのストレージ層23の新しく記憶された論理状態に固定される。
【0032】
本発明の別の実施の形態によれば、米国特許公開公報第2009/251957号明細書中に記されているように、シングル線のMRAMセルが、TASの書込み手続きを使用して第1書込みデータビットに書き込むために使用される。
【0033】
本発明のもう1つの実施の形態によれば、MRAMに基づいたTCAMセル1の書込み動作は、外部磁場を使用することなしにスピン分極電流又は電流誘起磁化反転(CIMS)を使用することによって実行される。この書込み手続きは、TAS支援された書込み手続きによって又は書き込み手続きなしで実行され得る。このようなCIMSの書込み動作は、参考文献Science, volume 285, page 867, 1999中の低く寸法決めされた(<100 nm)金属の構造に対して実験的に明らかにされた。米国特許第5,695,864号明細書では、分極キャリア間のスピンの角運動量の移動プロセス及び磁性層の磁気モーメントによって、CIMS手続きが、調整可能な磁化方向を呈する磁性層の磁化の歳差運動を誘起することができるか又はその反転運動さえも誘起することができる。このようなアーキテクチャには、セル1の領域で要求される電流の程度としての高い拡張性がある。さらにこの書込み手続きは、潜在的に非常に速く且つ磁場を生成するための金属線を必要としない。したがって、セルの大きさ及びドライバのオーバーヘッドの双方が低減される。
【0034】
米国特許第6,950,335号明細書中のMRAMに基づいたメモリの場合で記されているように、CIMSに基づいた書込み動作は、TAS支援された書込み手続きに有益に結合され得る。この場合、磁場が第1フィールド線4又は第2フィールド線5によって生成されないという相違点を伴って、MRAMに基づいたTCAMセル1が、上述したようにTASに基づいた書込みシーケンスにしたがって書き込まれ得る。磁場が生成される代わりに、第1磁気トンネル接合2に通電する間に適切にスピン分極されることによって、接合電流パルス31が、ストレージ層23の磁化方向を切り替えるために使用される。このことは、米国特許第6,603,677号明細書中に記されているように、特有の磁性層、例えば磁気トンネル接合2中の垂直磁化を呈する層を追加することによって実施される。
【0035】
TAS支援された書込み手続きに結合されたCIMに基づいた書込み動作は、特に小さいパターン寸法と共に低減された書込み電力消費を可能にする。読出しは、磁場でドライブされるTCAMにおける読出しに依然として類似している。
【0036】
セル1内の第1記憶データビットを検索するため、高「1」又は低「0」の論理状態を有する1つの検索データビットが、本発明のMRAMに基づいたTCAMの検索動作中に第2フィールド線5を介してセンサ層21に提供される。当該検索データビットは、第2磁場52を生成する第2フィールド線5に通電する第2フィールド電流51中に含まれている。この第2フィールド電流51の極性に対応するこの検索データビットの論理状態に応じて、この第2磁場52は、この第2磁場52の方向にしたがってセンス層21の磁化方向を第1安定方向から第2安定方向に切り替えることができる。
【0037】
次いで、センス層21の磁化方向は、第1磁気トンネル接合2の接合抵抗Rを測定することによってストレージ層23の磁化方向と比較される。このことは、第1選択トランジスタ6をONに切り替え、センス電流32を第1磁気トンネル接合2に通電することによって実行される。
【0038】
高「1」又は低「0」の論理状態を別々に有する記憶されたデータビット及び検索データビットの双方に対応するセンス層21の磁化方向が、ストレージ層23の磁化方向に対して平行である場合、低い接合抵抗R1が、磁気トンネル接合2で測定される。この場合、検索データビットは、記憶されたデータビットに一致する配置である。これとは反対に、高「1」又は低「0」の論理状態を有する記憶されたデータビット及び低「0」又は高「1」の論理状態を有する検索データビットのそれぞれに対応するセンス層21の磁化方向が、ストレージ層23の磁化方向に対して逆平行である場合、高い接合抵抗R2が測定される。この場合、検索データビットは、第1記憶データビットに一致しない配置である。
【0039】
第1記憶データビットが、マスクされた論理状態「X」を有する場合、センス層21の磁化方向は、ストレージ層23の磁化方向に対して直交する。そしてR1より大きく且つR2より低い中間の接合抵抗R3が、マスクされた配置に対応する「気にしない」つまり高「1」又は低「0」の論理状態を有する検索データビットに対して測定される。
【0040】
次いで、本発明のMRAMに基づいたTCAMセル1は、組み込まれた排他的否論理和(XNOR)回路として有益に作動する。
【0041】
図4中に示された本発明の好適な実施の形態では、MRAMに基づいたTCAMセル1も、もう1つのワード線7によって制御され、第2磁気トンネル接合10に結合され、 第1磁気トンネル接合2に隣接した第2選択トランジスタ16を有する。この第2磁気トンネル接合10も、磁性を呈するストレージ層23、磁性を呈するセンス層21及びストレージ層23とセンス層21との間の絶縁層22から形成される。当該センス層21の方向が、ストレージ層23の磁化に対して調整可能である。同じ第1フィールド線4及び第2フィールド線5を共有するように、2つの磁気トンネル接合2,10が配置されているものの、これらの磁気トンネル接合2,10は、依然として2つの別個のセンス線3によって番地付けされ得る。
【0042】
2つの接合MRAMに基づいたTCAMセル1の書込み動作が、上述したTAS支援された書込み手続きを使用することによって実行されて、第2磁気トンネル接合10の磁化方向と反対である第1磁気トンネル接合2の1つの磁化方向を得る。このことは、第1方向に指向された第1磁場42又は第2磁場を別々に生成する第1極性を有する第1フィールド電流41又は第2フィールド電流51を使用して、第1記憶データビットを第1磁気トンネル接合2中に記憶することによって、及び、当該第1方向に対向する第2方向に指向された第1磁場42又は第2磁場を別々に生成する当該第1極性に対向する第2極性を有する第1フィールド電流41又は第2フィールド電流51を使用して、記憶された第2データビットを第2磁気トンネル接合10中に記憶することによって実現される。
【0043】
接合電流パルス31を第1磁気トンネル接合2だけに通電することによって第1磁気トンネル接合2を選択的に加熱するため、第1選択トランジスタ6は、第1記憶データビットを記憶する間にONに選択的に切り替えられる一方で、第2選択トランジスタ16は、OFFに切り替えられる。接合電流パルス31を第2磁気トンネル接合10だけに通電することによって第2磁気トンネル接合10を選択的に加熱するため、第2選択トランジスタ16は、第2記憶データビットを記憶する間にONに選択的に切り替えられる一方で、第1選択トランジスタ6は、OFFに切り替えられる。
【0044】
図5は、複数の円によって上から見て示された2つの隣接した磁気トンネル接合2,10に対する実線の矢印によって示されたストレージ層23の磁化を示す。欄(a)中に示された「1」の論理状態、欄(b)中に示された「0」及び欄(c)中に示された「X」を有する第1記憶データに対する第1磁気トンネル接合2のストレージ層23の磁化方向は、第2磁気トンネル接合10の磁化方向と反対である。
【0045】
フィールド線5が、国際特許出願公開第20008040561号明細書中に記されているようにU字形に提供され、ここでは図示しなかった場合では、2つの接合MRAMに基づいたTCAMセル1が、第1磁気トンネル接合2及び第2磁気トンネル接合10中で反対の磁化方向をもつように1回のステップで書き込まれ得る。
【0046】
センス層21の磁化を完全に切り替えることなしに、このセンス層21の磁化方向を適切に変えるため、2接合型のMRAMに基づいたTCAMセル1の検索動作は、予め決定した高「1」の値と低「0」の値との間で例えば連続的に変化する1つの論理状態を有する検索データビットを、第2フィールド線5を介してセンス層21に提供することによって実行される。この検索データビットは、小さい電流振幅及び交互する極性を有し、センス層21の磁化方向を切り替えることができる第2磁場52を生成する第2フィールド電流51中に含まれている。
【0047】
上述した検索動作と同様に、次いで、検索データビットが、第1記憶データビット及び第2記憶データビットに一致することを確認するため、接合抵抗Rが、2つの磁気トンネル接合2,10に対して測定され、トンネル磁気抵抗とも呼ばれるこれらの2つの抵抗間の差つまりセル1の磁気抵抗ΔRが使用される。この方法は、差分検索手続きとも呼ばれる。さらに特にこのことは、選択トランジスタ6,16のうちの1つの選択トランジスタを連続してONに切り替え、ONになっている選択トランジスタに対応する磁気トンネル接合2,10にセンス電流32を通電する一方で、その他の選択トランジスタをOFFに維持して、磁気トンネル接合2,10の各々の接合抵抗Rを連続して測定することによって実行される。例えば、第1選択トランジスタ6が、ONに切り替えられ、センス電流32が、第1磁気トンネル接合2に通電し、この磁気トンネル接合2の抵抗を測定可能にする。第2選択トランジスタ16は、この測定中にOFFに切り替えられている。次いで、センス電流32を第2磁器トンネル接合16に通電し、この第2磁気トンネル接合16の接合抵抗Rを測定するため、第2選択トランジスタ16が、ONに切り替えられる一方で、第1選択トランジスタ6は、OFFに切り替えられる。
【0048】
検索動作中のセンス層21の磁化方向は、図5中の破線の矢印によって示されている。検索動作の前(図5中の横の列(a1)中に示された初期条件)では、フィールド電流が通電せず、全ての記憶データビット論理状態に対するセンス層21の磁化方向が、2つの磁気トンネル接合2,10に対して同じ方向に指向されている。
【0049】
小さい第2フィールド電流51は、「0」の論理状態を有する検索データビットによる検索動作中に(図5中の横の列(b1))、初期状態のセンス層21の方向に比べて僅かに上方に向いて指向しているセンス層21の磁化、図5中では上方に指向した第2磁場52を含む。「1」の第1記憶データビットの場合、センス層21の磁化方向は、第1磁気トンネル接合2に対する及びさらに第2磁気トンネル接合10に対するストレージ層23の磁化方向に近づく(「0」の第2記憶データビット)。この場合、第1磁気トンネル接合2中で測定される接合抵抗Rは、第2磁気トンネル接合10中で測定される磁気抵抗Rより小さく、負のトンネル磁気抵抗(ΔR<0)及び1つの一致しない検索データビットを与える。「0」の第1記憶データビットの場合、センス層21の磁化方向が、第1磁気トンネル接合2に対する記憶層23の磁化方向に対してより遠くなり、第2磁気トンネル接合10に対してより近くなる(「1」の第2記憶データビット)。第1磁気トンネル接合2中で測定される接合抵抗Rは、第2磁気トンネル接合10より大きく、正のトンネル磁気抵抗(ΔR>0)及び1つの一致した検索データビットを与える。
【0050】
小さい第2フィールド電流51は、「1」の論理状態を有する検索データビットによる検索動作中に(図5中の横の列(c1))、初期状態のセンス層21の方向に比べて僅かに下方に向いて指向しているセンス層21の磁化、図5中では下方に指向した第2磁場52を含む。上述したように、「1」の第1記憶データビット(及び「0」の第2記憶データビット)の場合、2つの磁気トンネル接合2,10中のセンス層21の磁化方向は、正のトンネル磁気抵抗及び1つの一致した検索データビットを与える一方で、「0」の第1記憶データビット(及び「1」の第2記憶データビット)に対しては、2つの磁気トンネル接合2,10中のセンス層21の磁化方向は、負のトンネル磁気抵抗及び1つの一致しない検索データビットを与える。
【0051】
「X」の論理状態を有する第1記憶データビット(「X」の第2記憶データビット)の場合、論理状態「0」及び「1」を有する検索データビットに対して、センス層21の磁化は、第1磁気トンネル接合2に対するストレージ層23の磁化に対してより遠くなり、第2磁気トンネル接合10に対してより近くなり、両論理状態に対して正の磁気抵抗及び1つの一致したデータビットを与える。このことは、マスクされた状態つまり気にしない状態に対応する。
【0052】
2接合型のMRAMに基づいたTCAMセル1を使用する差動検索手続きは、センス層21の磁化方向を完全に切り替えることなしに検索動作を実行することを可能にし、高速検索動作を与える。さらに、一般に約700μA又はそれ以下の大きさで使用される小さい第2フィールド電流51は、センス層の磁化の完全な切り替えに対して要求される約15mA又はそれ以上の大きさの電流よりかなり小さい結果、電力消費が低減される。電力消費は、センス層21の切り替えエネルギーを最小限にすることによっても低減され得る。
【0053】
さらにMRAMに基づいたTCAMセル1は、本質的に不揮発性で高密度によるデータ記憶及び検索機能を提供する。MRAMに基づいたTCAMセル1は、集積回路の基板上に最小の表面積しか必要としないので、当該セルは、容易に且つコストをかけずに寸法を小さくできる。
【0054】
メモリアレイ8が、図6中に示されている。このメモリアレイ8は、(符号Cell00〜Cellnmによっても示されている)横の列及び欄で配置された幾つかのMRAMに基づいたTCAMセル1のマトリックスを有する。メモリアレイ8の各横の列は、1本のワード線7及び1本の第2フィールド線5を有する。各ワード線7は、図6中に符号WL〜WLによって示されている。また各フィールド線は、符号FL〜FLによって示されている。メモリアレイ8の各欄は、1本のセンス線3つまりビットライン及び1本の第1フィールド線4を有する。各ビット線は、符号BL〜BLによって示されている。各欄は、ワード線WL及び/又はフィールド線FLに対して垂直に配置されている。またメモリアレイ8は、図6中の符号ml〜mlによって示された幾つかのマッチラインを有する。各マッチラインmlは、センサアレイ8の横の列で(図7及び8中に示された)プルダウントランジスタN2に接続されている。各マッチラインmlは、信号を振る論理レベルに増幅し、信号(match0〜matchn)を従来の方法で出力するマッチラインアンプ11に接続されている。一致動作を実行するため、マッチラインアンプ11は、差動センスアンプ及び/又は多段差動センスアンプでもよい。
【0055】
図6の例では、メモリアレイ8は、[n+1]x[m+1]のMRAMに基づいた複数のTCAMセル1を有する。当該セル1では、[n+1]は、ワード線WL(横の列)の数を示し、[m+1]は、ビット線BL(欄)の数を示す。横の列及び欄の数は、メモリアレイ8の容量及び配置に依存する。
【0056】
接合抵抗を測定するために使用される電流値を測定するため、各センス線BLの末端が、(図示しなかった)エンドオブラインアンプにも接続されている。当該エンドオブラインアンプは、メモリアレイ8が一状態の全ワードの読出し及び/又は比較を提供することを可能にする。
【0057】
さらにMRAMに基づいたTCAMセル1又は2接合型のMRAMに基づいたTCAMセル1は、図7の例で示されたように、ローカルセンスアンプ等として構成された1つのローカルプリアンプ(図7及び8)を有し得る。このローカルセンスアンプは、ラッチに基づいた(図8)又はフリップ・フロップに基づいた(図7)ローカルプリアンプでもよい。図7の例では、フリップ・フロップに基づいたローカルプリアンプは、PチャネルMOSFETのトランジスタP0,P1,P2,P3及びNチャネルMOSFETのトランジスタN0,N1,N3を有する。この場合、トランジスタP0,P2及びN0は、第1磁気トンネル接合2に接続されていて、トランジスタP1,P3及びN1は、第2磁気トンネル接合10に接続されている。図8中では、ラッチに基づいたローカルプリアンプが、PチャネルMOSFETのトランジスタP0,P1及びNチャネルMOSFETのトランジスタN0及びN1を有する。トランジスタP0及びN0は、第1磁気トンネル接合2に接続されている。トランジスタP1及びN1は、第2磁気トンネル接合10に接続されている。第1磁気トンネル接合1及び第2磁気トンネル接合10が、ローカルプリアンプを介して少なくとも1つのマッチラインmlとやりとりし、各マッチラインmlが、1つのローカルプリアンプに接続されているように、図7及び8中に示された例示的なローカルプリアンプは配置されている。
【0058】
また、MRAMに基づいたTCAM1又は2接合型のMRAMに基づいたTCAMセル1は、組み込まれたセンスアンプとして、例えば接合抵抗R値の組み込まれたアンプとして作動するために構成された従来のスタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)に接続され得る。この組み込まれたアンプは差動検索手続きにしたがって作動するMRAMに基づいたTCAMセル1又は2接合型のMRAMに基づいたTCAMセル1に対して使用され得る。
【0059】
メモリアレイ8の書込み動作中に、幾つかの書込みデータビットを有する、あるいは異なる「1」、「0」及び/又は「X」の論理状態を有する1つの書込みデータワードが、フィールド線FLを通じて送信される一方で、加熱する接合電流パルス31は、選択されたセンス線つまりビット線BLに対して送信される。選択された各マッチラインmlは、書込み動作中は無効化されている。次いで、この書込みデータワードの各書き込みデータビットが、上述した書込み動作を使用して、選択されたMRAMに基づいたTCAM1内に書き込まれて記憶される。
【0060】
2接合型のMRAMセル1は連続して書き込まれ得る。この場合、予め設定した同じ論理状態(「1」又は「0」)に対応するビット線BLが、第1書込みサイクル又は第2書込みサイクルのそれぞれの間に選択される。例えば第1書込みサイクルの間には、同じ書込みデータビットの論理状態に対応する各ビット線BLが選択される(例えば「1」)。このとき、全てのMRAMに基づいたTCAMセル1に対して同じ方法で、書込み論理状態「1」に対応するパルス電流が、フィールド線FLに同時に通電される。同様に第2書込みサイクルの間には、書込みデータビット「0」に対応するビット線が選択された時に、書込み論理状態「0」に対応するパルス電流が通電される。
【0061】
検索動作の間には、幾つかの検索データビットを有する、あるいは異なる「1」及び/又は「0」の論理状態を有する1つの検索データワードが、選択されたフィールド線FLを通じて送信される一方で、センス電流32が、選択されたビット線BLに通電する。
【0062】
本発明の実施の形態では、1本のフィールド線FLが、メモリアレイ8の1つのセル、幾つかのセル又は全てのセルの横の列又は欄を同時に番地付けすることができる。
【0063】
さらに特に、マッチラインmlは、検索動作中に高い論理状態(Vdd)にプリチャージされる。図8中に符号ENによって示されたイネーブル信号が、高い論理状態を実現する。図7及び8中に符号BL0及びBL0/によって示されたビット線が起動され、検索データビットに対応する第2フィールド電流51が、上述したように第2フィールド線5中に第2磁場52を誘導するこの第2フィールド線5に通電される。その結果、PチャネルMOSFETのP0,P1及びNチャネルMOSFETのN0,N1によって構成されたラッチに基づいたローカルプリアンプが不均衡になり、ローカルプリアンプシステムが2つの磁気トンネル接合2,10の差動磁気状態を感知することを可能にする。2つの磁気トンネル接合2,10が、論理状態「0」を有する記憶データビットを含む場合、マッチラインmlは、プリチャージされた論理状態を維持する。記憶データビットが、「1」の論理状態を有する場合、マッチラインmlの電位が、論理状態「0」に降下する。
【0064】
同様に、図8の例では、フリップ・フロップに基づいたローカルプリアンプのビット線BL0,BL0/が起動され、ノードnd0,nd1が、プリチャージされた線prech0,Prech1にそれぞれ印加された電圧値にプリチャージされる。イネーブル信号EN(図7中のWord0 Select)が、低い論理状態にセットされた場合、ノードnd0,nd1が、予め決定した値にプリチャージされ、検索データビットに対応する電流パルスが、第2フィールド線5に通電される。PチャネルMOSFETのP0,P1,P2,P3及びNチャネルMOSFETのN0,N1,N3によって構成されたフリップ・フロップに基づいたローカルプリアンプが不均衡になり、2つの磁気トンネル接合2,10の差動磁気状態を測定することを可能にする。
【0065】
各選択されたマッチラインmlに接続されたセンスアンプがイネーブルされ得る。そしてメモリアレイ8の全ての列が、電圧(又は電流)関連するワード線WLに印加(又は通電)することによって選択され得る。検索データワードの各検索データビットが、当該検索データビット内に記憶された論理状態に対応する予め決定した電圧を印加する。次いでセンス電流31が、フィールド線Flに同時に通電され、同様に全てのMRAMに基づいたTCAMセル1に対して通電される。MRAMに基づいたTCAMセル1の接合抵抗Rを測定するため、第2フィールド電流51が、第2磁場52をフィールド線FL中に誘導し、センス層21の磁化を整列させる。
【0066】
MRAMに基づいたTCAMセル1は同時に書込み及び検索をすることができる。例えば、メモリアレイ8は、アドレスと共に記録されたデータとしてデータを書き込んで記憶することができ、当該データは、検索データを記憶され記録されたデータと比較することによって同時に検索され得る。
【符号の説明】
【0067】
1 磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)に基づいた三値連想メモリ (TCAM)セル
2 第1磁気トンネル接合
21 センス層
22 絶縁層
23 ストレージ層
24 反強磁性のピン層
31 接合電流パルス
32 センス電流
3 センス線、ビット線
4 第1フィールド線
41 第1フィールド電流
42 第1磁場
5 第2フィールド線
51 第2フィールド電流
52 第2磁場
6 第1選択トランジスタ
7 選択線、ワード線
8 メモリアレイ
9 エンドオブラインアンプ
10 第2磁気トンネル接合
11 マッチラインアンプ
16 第2選択トランジスタ
BL センス線、ビット線
FL 第2フィールド線
H 磁場
ml マッチ線
Match出力信号
P0〜P3 PチャネルMOSFETトランジスタ
nd0,nd1 ノード
N2 プルダウントランジスタ
N0,N1,N3 NチャネルMOSFETトランジスタ
R 接合抵抗
R1 低い接合抵抗
R2 高い接合抵抗
R3 中間の接合抵抗
ΔR 磁気抵抗
WL 選択線、ワード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ランダムアクセスメモリに基づいた三値連想メモリ(MRAMに基づいたTCAM)セルに書き込む方法において、
当該セルは:
磁化を呈するストレージ層から形成されている第1磁気トンネル接合、前記ストレージ層の磁化に対して調整可能な磁化方向を有するセンス層、及び、前記ストレージ層と前記センス層との間の絶縁層を有し、
前記ストレージ層に接続されているセンス線を有し、及び
第1フィールド線及び第2フィールド線を有し、両フィールド線は、前記ストレージ層及び前記センス層とやりとりし、前記第1フィールド線は、前記第2フィールド線に対して直交し、
当該方法は:
前記第2フィールド線を介して前記ストレージ層に対して第1書込みデータを提供して、高い論理状態又は低い論理状態を有する第1記憶データを記憶し、そして
前記第1フィールド線を介して前記ストレージ層に対して前記第1書込みデータを提供して、マスクされた論理状態を有する前記第1記憶データを記憶する方法。
【請求項2】
前記第2フィールド線を介して前記第1書込みデータを提供することは、前記ストレージ層の磁化を前記センス層の磁化方向に対して平行又は逆平行に切り替えるために適合された第2フィールド電流中に前記第1書込みデータを含めることを有し、
前記第1フィールド線を介して前記書込みデータを提供することは、前記ストレージ層の磁化を前記センス層の磁化に対して直交する方向に切り替えるために適合された第1フィールド電流中に前記第1書込みデータを含めることを有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1書込みデータを提供することは、前記第1磁気トンネル接合を予め決定した温度閾値に加熱することをさらに有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記MRAMに基づいたTCAMセルは、前記第1磁気トンネル接合に接続された第1選択トランジスタをさらに有し、
前記第1磁気トンネル接合を加熱することは、前記第1選択トランジスタを起動すること及び前記第1選択トランジスタを介して前記第1磁気トンネル接合に接合電流パルスを通電することを有する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
磁気ランダムアクセスメモリに基づいた三値連想メモリ(MRAMに基づいたTCAM)セルを検索する方法において、
当該セルは;
第1選択トランジスタに接続された第1磁気トンネル接合、第2選択トランジスタに接続された第2磁気トンネル接合及びストレージ層とセンス層との間の絶縁層を有し、各磁気トンネル接合は、磁化を呈するストレージ層から形成されていて、前記センス層は、磁化方向が前記ストレージ層の磁化に対して調整可能である磁化を呈し、
センス線が、各磁気トンネル接合の前記ストレージ層に接続されていて、
当該セルは、第1フィールド線及び第2フィールド線を有し、両フィールド線は、前記第1磁気トンネル接合及び前記第2磁気トンネル接合の前記ストレージ層及び前記センス層とやりとりし、前記第1フィールド線は、前記第2フィールド線に対して直交し、
当該方法は、書込み動作中に、前記第1フィールド線又は前記第2フィールド線を介して前記第1磁気トンネル接合のストレージ層に対して第1書込みデータを提供すること、第1記憶データに対応する第1方向に前記第1磁気トンネル接合の磁化を切り替えること、
前記第1フィールド線又は前記第2フィールド線を介して前記第2磁気トンネル接合の前記ストレージ層に対して第2書込みデータを提供すること、第2記憶データに対応し、第1方向に対して反対の第2方向に前記第2磁気トンネル接合の磁化を切り替えること、
検索動作中に、前記第2フィールド線を介して前記第1磁気トンネル接合及び前記第2磁気トンネル接合の前記センス層に対して検索データを提供すること、そして
前記MRAMに基づいたTCAMセルの磁気抵抗を測定することによって前記検索データと前記第1記憶データ及び前記第2記憶データとの一致を確認することを有する方法。
【請求項6】
前記第2フィールド線を介して前記第1書込みデータ及び前記第2書込みデータを提供することは、第1極性及びこの第1極性と反対の第2極性をそれぞれ有する第2フィールド電流中に前記第1書込みデータ及び前記第2書込みデータを書き込むことを有し、前記第2フィールド電流は、前記第2フィールド電流の極性にしたがって前記センス層の磁化方向に対して平行又は逆平行に前記ストレージ層の磁化を切り替えるために適合されることを有し、
前記第1フィールド線を介して前記第1書込みデータ及び前記第2書込みデータを提供することは、第1極性及びこの第1極性と反対の第2極性をそれぞれ有する第1フィールド電流中に前記第1書込みデータ及び前記第2書込みデータを書き込むことを有し、前記第1フィールド電流は、前記第1フィールド電流の極性にしたがって前記センス層の磁化方向に対して直交に前記ストレージ層の磁化を切り替えるために適合されることを有する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1書込みデータ及び前記第2書込みデータを前記ストレージ層に提供することは、前記第1磁気トンネル接合及び前記第2磁気トンネル接合を予め決定した閾温度でそれぞれ選択的に加熱することをさらに有する請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1磁気トンネル接合及び前記第2磁気トンネル接合を選択的に加熱することは、前記第1選択トランジスタ及び前記第2選択トランジスタをそれぞれ選択的に起動し、前記第1選択トランジスタ及び前記第2選択トランジスタを介して前記第1磁気トンネル接合及び前記第2磁気トンネル接合に接合電流パルスを通電する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記検索データを提供することは、前記検索データを前記第2フィールド電流中に含めることを有し、前記第2フィールド電流は、小さい電流振幅及び交互する極性を有し、前記センス層の交互する極性にしたがって前記センス層の磁化方向を変更するために適合される請求項5又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記磁気抵抗を測定することは:
記第1選択トランジスタ及び前記第2選択トランジスタを選択的に起動すること、
当該選択的に起動された1選択トランジスタ及び第2選択トランジスタを介して前記第1磁気トンネル接合及び前記第2磁気トンネル接合にセンス電流を通電すること、及び
前記第1磁気トンネル接合及び前記第2磁気トンネル接合の接合抵抗をそれぞれ測定することを有する請求項5又は9に記載の方法。
【請求項11】
磁気ランダムアクセスメモリに基づいた三値連想メモリ(MRAMに基づいたTCAM)セルにおいて、
当該MRAMに基づいたTCAMセルは、第1選択トランジスタ及び第2選択トランジスタにそれぞれ接続されている第1磁気トンネル接合及び第2磁気トンネル接合並びにストレージ層とセンス層との間の絶縁層を有し、各磁気トンネル接合は、磁化を呈する前記ストレージ層から形成され、前記センス層は、その磁化方向を前記ストレージ層の磁化に対して調整可能である磁化を呈し、また前記MRAMMRAMに基づいたTCAMセルは、前記ストレージ層とやりとりし、前記センス層の磁化方向に対して平行又は逆平行に前記ストレージ層の磁化を切り替えるための第2フィールド電流を通電するために適合され、前記MRAMMRAMに基づいたTCAMセルは、前記ストレージ層ともやりとりし且つ前記第2フィールド線に対して直交し、前記第1フィールド線は、前記センス層の磁化方向に対して直交に前記ストレージ層の磁化を切り替えるための第1フィールド電流を通電するために適合されるMRAMに基づいたTCAMセル。
【請求項12】
複数の磁気ランダムアクセスメモリに基づいた三値連想メモリ(MRAMに基づいたTCAM)セルを有するマトリックスから成るメモリアレイにおいて、
各MRAMに基づいたTCAMセルは、第1選択トランジスタ及び第2選択トランジスタにそれぞれ接続されている第1磁気トンネル接合及び第2磁気トンネル接合並びにストレージ層とセンス層との間の絶縁層を有し、各磁気トンネル接合は、磁化を呈する前記ストレージ層から形成され、前記センス層は、その磁化方向を前記ストレージ層の磁化に対して調整可能である磁化を呈し、第2フィールド線が、前記ストレージ層とやりとりし、前記センス層の磁化方向に対して平行又は逆平行に前記ストレージ層の磁化を切り替えるための第2フィールド電流を通電するために適合され、第1フィールド線が、前記ストレージ層ともやりとりし且つ前記第2フィールド線に対して直交し、前記第1フィールド線は、前記センス層の磁化方向に対して直交に前記ストレージ層の磁化を切り替えるための第1フィールド電流を通電するために適合されるメモリアレイ。
【請求項13】
各列は、前記第1選択トランジスタを制御する少なくとも1つのワード線、1つの第1フィールド線、1つのセンス線及び1つの第2フィールド線を有し、前記第1フィールド線及び前記センス線は、前記ワード線及び前記第2フィールド線に対して直交する請求項12に記載のメモリアレイ。
【請求項14】
各列は、少なくとも1つのマッチライン、1つのプルダウントランジスタ及びマッチラインアンプを有し、前記少なくとも1つのマッチラインの各々が、前記プルダウントランジスタを通じて1つの列又は欄中でMRAMに基づいたTCAMセルとやりとりし且つ前記マッチラインアンプに接続されている請求項12又は13に記載のメモリアレイ。
【請求項15】
1つの第2フィールド線が、前記メモリアレイの1つ、幾つか又は全てのMRAMに基づいたTCAMセルを同時に番地付けすることができる請求項12〜14のいずれか1項に記載のメモリアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−113795(P2010−113795A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−251996(P2009−251996)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(509096201)クロッカス・テクノロジー・ソシエテ・アノニム (33)
【Fターム(参考)】