説明

不揮発性半導体メモリ

【課題】メモリセルを可及的に小さくできるとともにセル単位で書き込み消去が可能な不揮発性半導体メモリを提供する。
【解決手段】NAND列であって、絶縁膜11上の半導体領域と、ソース/ドレイン領域14a、14bと、チャネル領域12と、電荷をトラップできる電荷トラップ膜20と、磁化の向きが固定された第1のハーフメタル強磁性金属からなるソース/ドレイン電極40とを有し、各電荷トラップ膜上に設けられ、第2のハーフメタル強磁性金属からなるゲート電極30、30であって、前記ゲート電極は、磁化の向きが前記ソース/ドレイン電極の磁化の向きに略平行な第1の領域と、磁化の向きが略反平行な第2領域から構成され、前記第1の領域が、前記ゲート電極に電流を印加することにより、前記電荷トラップ膜上から前記絶縁膜上へ、及び前記絶縁膜上から前記電荷トラップ膜上へと、可逆的に移動可能となっているゲート電極と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性半導体メモリに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波移動体通信の目覚しい普及に代表されるように、超高速高機能の半導体装置の実現により社会生活の情報化が著しく進行している。これに伴い、不揮発性半導体メモリの需要も時を追って増大している。
【0003】
このような不揮発性半導体メモリとしては、現在、フラッシュメモリが最も注目を集めている。このフラッシュメモリは、その構造によりさらに細分化され、NOR型とNAND型とに分かれるのであるが、より単純な構造と少ないコンタクト数により、メモリセルを微細化できるのは、電荷トラップ層(電荷蓄積層)を備えたトランジスタを直列接続したNAND型である(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
微細化に適したこのNAND型フラッシュメモリでは、データの書き込みはセル単位で行うのであるが、しかし、データの消去は、各セルで共有している基板ウェル領域に正電位を与えて一括して行っている。
【0005】
もちろん、セル単位で消去を行うことができれば、メモリとしての利便性が向上することは明らかではあるが、NAND型フラッシュメモリにおいてセル単位で消去を行う場合、各ビットラインでウェル領域を個別に設ける必要が生じる。このため、メモリセルを小さくすることが適わなくなるのである。
【0006】
セル単位で消去を行うことができる不揮発性半導体メモリとしては、MRAM (Magnetic Random Access Memory)が知られているが、このMRAMの構造は、基本的には、選択トランジスタとこれに接続されたMTJと呼ばれる磁気抵抗素子から構成され、結局、その構造は、NOR型フラッシュメモリと同等かそれ以上に複雑となってしまう。この事情は、磁気抵抗素子の代わりに強誘電体を用いた、強誘電体メモリ(以下、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)とも云う)においても変わらない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】"Nonvolatile Memory Technologies with Emphasis on Flash", J. Brewer and M. Gill, (2008) Wiely-Interscience (Wiley & Sons,Inc)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上、説明した通り、セル単位で書き込み消去が可能な不揮発性半導体メモリを、微細化が可能な、トランジスタを直列接続したNAND型構造で実現しようとしても、ウェル領域を分離する必要が生じるため、結局、メモリセルを小さくすることができなくなるという困難があった。
【0009】
また、セル単位で書き込み消去が可能な不揮発性半導体メモリを、NOR型構造で実現しようとしても、各セルに選択トランジスタとこれに接続された外部記憶素子からなる複雑なセル構造が必要となり、やはり、微細化に不適であった。
【0010】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、メモリセルを可及的に小さくできるとともにセル単位で書き込み消去が可能な不揮発性半導体メモリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様による不揮発性半導体メモリは、少なくとも1つのNAND列を含み、前記NAND列は、絶縁膜上に物理的に離間して配置された複数の半導体領域と、各半導体領域内に、互いに離間して形成されたソース/ドレイン領域と、各半導体領域内の前記ソース/ドレイン領域の間に形成されたチャネル領域と、各チャネル領域上に設けられ、前記チャネル領域から電荷をトラップすることのできる電荷トラップ膜と、前記半導体領域内の少なくとも一つのソース/ドレイン領域に物理的及び電気的に接続され、且つ互いに物理的に離間し、磁化の向きが同一の方向に固定された第1のハーフメタル強磁性金属からなるソース/ドレイン電極と、を有し、前記各ソース/ドレイン領域には、ただ一つの、前記ソース/ドレイン電極が物理的及び電気的に接続され、且つ、前記半導体領域と前記ソース/ドレイン電極は、前記物理的接続により、一つに連結され、端部をソース/ドレイン電極により終端された単一の直列構造を構成する少なくとも1つのNAND列と、前記NAND列の各電荷トラップ膜上に設けられ、さらに前記電荷トラップ膜以外の前記絶縁膜上に延在する、互いに電気的に絶縁された第2のハーフメタル強磁性金属からなるゲート電極であって、前記ゲート電極のそれぞれは、磁化の向きが前記ソース/ドレイン電極の磁化の向きに略平行な第1の領域と、磁化の向きが前記ソース/ドレイン電極の磁化の向きに略反平行な第2領域から構成され、前記第1領域が、前記ゲート電極に電流を印加することにより、前記電荷トラップ膜上から前記電荷トラップ膜以外の前記絶縁膜上へ、及び、前記電荷トラップ膜以外の前記絶縁膜上から前記電荷トラップ膜上へ、可逆的に移動可能となっているゲート電極と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、メモリセルを可及的に小さくできるとともにセル単位で書き込み消去が可能な不揮発性半導体メモリを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による半導体メモリのNAND列を示す回路図。
【図2】一実施形態による半導体メモリのメモリセルの構成および作用を説明する模式図。
【図3】一実施形態による半導体メモリのメモリセルの構成および作用を説明する模式図。
【図4】一実施形態による半導体メモリの上面図。
【図5】図4に示す切断線A−Aで切断した場合の一実施形態による半導体メモリの断面図。
【図6】一実施形態による半導体メモリの上面図。
【図7】図6に示す切断線B−Bで切断した場合の一実施形態による半導体メモリの断面図。
【図8】電荷トラップ膜の一具体例を示す断面図。
【図9】ゲート電極に楔状の掘削部を設けた場合の半導体メモリの上面図。
【図10】図9に示す切断線C−Cで切断した場合の一実施形態による半導体メモリの断面図。
【図11】一実施形態による半導体メモリの構成を示すブロック図。
【図12】一実施形態による半導体メモリの製造工程を示す断面図。
【図13】一実施形態による半導体メモリの製造工程を示す断面図。
【図14】一実施形態による半導体メモリの製造工程を示す断面図。
【図15】一実施形態による半導体メモリの製造工程を示す断面図。
【図16】一実施形態による半導体メモリの製造工程を示す断面図。
【図17】一実施形態による半導体メモリの製造工程を示す断面図。
【図18】磁区の移動制御を説明する断面図。
【図19】磁区の移動制御を説明する断面図。
【図20】磁区の移動制御を説明する断面図。
【図21】磁区の移動制御を説明する断面図。
【図22】磁区の移動制御を説明する断面図。
【図23】ゲート電極の他の段差形状を示す断面図。
【図24】ゲート電極の更に段差形状を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態による不揮発性半導体メモリについて図面を参照して説明する。
【0015】
まず、NAND型メモリの基本構成について説明する。
【0016】
本実施形態の不揮発性半導体メモリ(以下、単に半導体メモリともいう)は、NAND型半導体メモリであって、図1に示すように、複数のメモリセルMを有している。これらの複数のメモリセルMは、通常、第一の方向(図1の縦方向)、及び、第二の方向(図1の横方向)に周期性を持つ格子状に配置される。第一の方向(図1の縦方向)に隣接するメモリセルMは、ソース/ドレイン電極を共有する形で直列接続されてNAND列を構成する。このようなNAND列が並列されてメモリセルアレイが構成される。
【0017】
各NAND列の一端側のドレイン電極は、選択トランジスタS1を介してビット線BLに接続され、他端側のソース電極はやはり選択トランジスタS2を介してソース線(図示せず)に接続される。
【0018】
また、相異なるNAND列に属する第二の方向(図1の横方向)に隣接したメモリセルMは互いにゲート電極を共有し、第二の方向(図1の横方向)に延在する各ゲート電極がワード線WLを構成する。また、選択トランジスタS1、S2のゲートも同様に選択ゲート線SSL、GSLに共通接続される。
【0019】
次に、本実施形態の半導体メモリに用いられるメモリセルMの構成および作用を説明する。
【0020】
図2および図3は、本実施形態に係る半導体メモリセルMの断面図である。これらに示すように、メモリセルMは、半導体層からなるチャネル領域12と、このチャネル領域12上に設けられた電荷トラップ膜20と、この電荷トラップ膜上に設けられたハーフメタル強磁性金属のゲート電極30と、チャネル領域12の両側面に設けられたソース/ドレイン領域となるn型不純物領域14a、14bと、これらソース/ドレイン領域14a、14bのそれぞれに接し、チャネル領域を間に挟んで対向するように設けられたハーフメタル強磁性金属のソース/ドレイン電極40a、40bと、を備えている。
【0021】
また、ソース/ドレイン電極40a、40bは、所定の方向(図2及び図3では、例えば、左から右の方向として図示してある)に固定された磁化を有しているとする。さらに、後に別途詳しく説明するのでここでは図示はしないが、紙面に垂直方向に延在するゲート電極には、一部例外的にソース/ドレイン電極40の磁化の向きと略平行に磁化した領域(以下、簡単のため、単に「磁区」と表現する)を除いて、ソース/ドレイン電極40の磁化の向きと略反平行に磁化しているとする。このとき、この磁区の位置は、ゲート電極に電流を流すことで移動させることができる。従って、ソース/ドレイン電極の磁化の向きと略平行に磁化した磁区をチャネル領域上に移動させれば、チャネル領域上のゲート電極の磁化方向を、ソース/ドレイン電極の磁化の向きと略平行とすることができることになる。逆に、また、磁区の位置をチャネル領域から離間させることで、チャネル領域上のゲート電極の磁化方向を、略反平行に変化させることもできる。
【0022】
当然、以下詳しく説明するように、このような、ゲート電極の磁化方向の変化は、半導体メモリセルの動作に影響を与える。まず、図2に示すように、ゲート電極30の磁化方向が、ソース/ドレイン電極40の磁化の向きと略反平行(右から左の方向として表現してある)となっている場合を考える。
【0023】
ハーフメタル強磁性金属から形成されているソース電極40aからは、当然、その磁化方向と整合した方向にスピン偏極した電子のみがチャネル領域12に注入されることになる。従って、ゲート電極30に正電位を印加した時に、電荷トラップ膜20中の電荷トラップに捕縛される電子50も、ソース電極の磁化方向と整合した方向にスピン偏極している(図では、電子50に左から右の矢印を付与してこれを示す)。このとき、ゲート電極30の磁化方向はソース電極の磁化の向きと略反平行となっているので、ソース電極の磁化方向と整合した方向にスピン偏極している捕縛電子50は、ゲート電極30に流入することはできない。なぜならば、ソース電極の磁化の向きと反平行に磁化したハーフメタル強磁性金属中には、ソース電極の磁化方向と整合した方向にスピン偏極している電子が遷移できる量子力学的状態が存在しないからである。したがって、ソース電極の磁化方向と整合した方向にスピン偏極した捕縛電子50から見れば、ソース電極の磁化の向きと反平行に磁化したハーフメタル強磁性金属のゲート電極30は、実効的には絶縁膜として機能することになる。
【0024】
次に、図3に示すように、ゲート電極に電流を流すことで、磁区をチャネル領域上に移動させ、ゲート電極30の磁化方向が、ソース/ドレイン電極40の磁化の向きと略平行(左から右の方向として図示してある)となった場合を考える。この場合、ゲート電極30の磁化方向はソース電極の磁化の向きと略平行となっているので、ソース電極の磁化方向と整合した方向にスピン偏極している捕縛電子50は、ゲート電極30に流入できるようになる。したがって、ゲート電極30に正電位を印加すれば、電荷トラップ膜20中に捕縛された電子50は、容易に、ゲート電極30に移動し、電荷トラップ膜20中の電荷を消去できることになる。
【0025】
ゲート電極中の磁区を、同時には一つのチャネル領域上にしか存在しないように設えれば、磁区が特定のメモリセルのチャネル領域上にあるときには、これ以外のメモリセルのチャネル領域上のゲート電極の磁化方向はソース電極の磁化の向きと略反平行となる。当然、磁区がそのチャネル領域上にある特定のメモリセルを除いて、その他のメモリセルでは、ソース電極の磁化方向と整合した方向にスピン偏極している捕縛電子は、ゲート電極に流入することはできない。よって、電荷の消去は起こらない。従って、電荷トラップ膜20中の電荷の消去は、この特定のトランジスタのみで進行することになる。
【0026】
このようにして、ゲート電極30の磁化方向に応じて特定のトランジスタ、すなわちメモリセルでの選択的個別消去が可能となる。
【0027】
続いて、この原理を利用した、NAND型構造を持ちながらも、セル単位で書き込み消去が可能な不揮発性半導体メモリの具体的構成を示す。図4は、本実施形態による半導体メモリのメモリセルアレイの上面図である。図5は、図4における切断線A−Aによって切断した断面図である。なお、図5においては、層間絶縁膜や配線金属などは図示していない。
【0028】
図5に示すように、シリコン半導体基板10上にシリコン酸化膜(BOX膜)11が形成されている。このシリコン酸化膜11の上部に、複数の単結晶シリコン半導体層(SOI層)が形成されている。さらに、各SOI層には、互いに離間して形成されたソース/ドレイン領域14a、14bと、これらの間にチャネル領域12が設けられている。チャネル領域に含まれないSOI層は、チャネル領域により2つの連結領域に分断されている。本明細書では、以降、この各連結領域を、「ソース/ドレイン領域」と区別せず同じ呼称で統一的に表現する。ここで、各SOI層はシリコン酸化膜の上面に、第一の方向、及び、これとは異なる、第二の方向に周期性を持つ2次元格子状に配置されることが望ましい。ここで、「2次元格子」とは、直交格子、斜交格子等の平面的周期構造の一部を意味する。加えて、チャネル領域12にはp型不純物が導入されていることが好ましい。
【0029】
また、各チャネル領域12上には、電荷トラップを内部に有する電荷トラップ膜20が設けられている。さらに、シリコン酸化膜11および電荷トラップ膜上に延在して、ハーフメタル強磁性金属からなるゲート電極30、30が、形成されている。これら延在する2つのゲート電極30、30は、図4に上面図として示すように、それぞれ、縦方向に並行して、複数の電荷トラップ膜20上に積層している。延在する各ゲート電極は、それぞれワード線を形成する。加えて、各SOI層の、各ソース/ドレイン領域には、ハーフメタル強磁性金属からなるソース/ドレイン電極が、それぞれ物理的に接続されている。ここで、「物理的に接続されている」とは、「物理的に接触している」ことを意味する。本明細書では、ソース/ドレイン領域に接続する、物理的及び電気的に一体的に連結したハーフメタル強磁性金属領域を「ソース/ドレイン電極」と同じ呼称で統一的に表現する。このとき、任意のソース/ドレイン電極は、互いに物理的に離間し、且つ、少なくとも一つ、高々2つの異なるSOI層のソース/ドレイン領域に物理的及び電気的に接続するものとする。
【0030】
加えて、同一のSOI層の各ソース/ドレイン領域には、必ず、ただ一つの、ソース/ドレイン電極が物理的及び電気的に接続され、これにより、同一のSOI層には、必ず、異なる2つのソース/ドレイン電極が接続されるものとする。ここで、「電気的に接続する」とは、「電圧を印加したとき電流が流れる状態にある」ことを意味する。また、ただ一つのSOI層にのみ接続しているソース/ドレイン電極を特に端部ソース/ドレイン電極と表現することにする。また、SOI層とソース/ドレイン電極との接続により一つに物理的に連結されているSOI層とソース/ドレイン電極の集合をNAND列と表現することにする。
【0031】
すべてのNAND列は、必ず、端部ソース/ドレイン電極を含むとする。加えて、すべてのNAND列に含まれるSOI層の個数は複数であるとする。この結果、任意のNAND列は、端部ソース/ドレイン電極により終端された単一の直列構造となる。各NAND列はビット線を形成する。
【0032】
また、任意のワード線と任意のビット線は必ずただ一つのチャネル領域上で交差するとする。具体的には、図4に上面図として示すように、横方向(第一の方向)に互いに隣接した2つのSOI層の間を接続するように、ハーフメタル強磁性金属からなるソース/ドレイン電極40、40が設けられる。ソース/ドレイン電極40及びこれに接続するSOI層、また、ソース/ドレイン電極40及びこれに接続するSOI層が、それぞれ、第一の方向に並行して伸展するNAND列(ビット線)を構成する。図示はしないが、各NAND列の端部には、端部ソース/ドレイン電極が存在することは言うまでもない。
【0033】
ゲート電極30、30は、シリコン酸化膜および電荷トラップ膜上に、縦方向(第二の方向)に、並行して延在しワード線を構成する。縦方向(第二の方向)に並行して延在するワード線と、横方向(第一の方向)に並行して伸展するビット線は、ただ一つのチャネル領域上でのみ交差することも明らかである。
【0034】
図4に示す各NAND列においては、複数のSOI層(半導体層)が、図4に示す横方向に直線的に配置された構成となっているが、連続な「単純曲線」に沿って配置されていてもよい。ここで、「単純曲線」とは、自身と交わらない曲線を意味し、曲線は、直線や、折れ線をも含むものとする。この場合も、複数のNAND列に含まれる複数のSOI層はシリコン酸化膜(BOX膜)の上面に、第一の方向、及び、第二の方向に周期性を持つ2次元格子状に配置されることが望ましい。このとき、各NAND列は、第一の方向に沿って延在し、各ゲート電極は、第二の方向に沿って延在することなる。
【0035】
また、任意のNAND列上の各ゲート電極は、同時に、他の任意のNAND列上のゲート電極でもあるようにする。即ち、各ゲート電極(ワード線)は、一体として、ハーフメタル強磁性金属により構成されているのであって、単に、異なるNAND列上の各ハーフメタル強磁性金属ゲート電極を、常磁性金属等により電気的に接続して、共通のゲート電極を構成するよう延在させたものではないことを注意しておく。
【0036】
このような構成では、任意のNAND列(ビット線)と任意のゲート電極(ワード線)は、必ず、ただ一つのチャネル領域上でのみ交差する。また、以下に説明する「磁区」も、各ゲート電極中に少なくとも1つあればよいことになる。
【0037】
ソース/ドレイン電極40、40、およびゲート電極30、30を形成するハーフメタル強磁性金属としては、例えば、CoMnX(ここでXはGa、Si、Al、Ge、Sn、Sbなどの元素を表す)や、Co(CrFe1−y)Al系、或いは、CoFeAlSi1−y系のホイスラー合金、CaBi、CrまたはMnを(数atomic%以上)導入したSiC、KCrSe、CrO、CrAs、CrSb、Fe、FeCo1−x等を用いることができる。
【0038】
加えて、ソース/ドレイン電極の上部に、それぞれの磁化を強固に且つ安定的に固着するために、例えば、FeMn、PtMn、NiMn、IrMn、NiO、Feなどのような反強磁性層を設けても良い。
【0039】
さらに、ゲート電極30、30の両側には例えばシリコン窒素化膜からなるゲート側壁35を設けることが望ましい。
【0040】
そして、この、ゲート側壁35の直下の、SOI層に、n型の導電性不純物を導入し、ソース/ドレイン領域14a、14bを形成すれば都合が良い。n型ソース/ドレイン領域の存在により、メモリセルはn型電界効果型トランジスタとして機能する。また同時に、高濃度のn型の導電性不純物の導入により、ソース/ドレイン電極40、40と、チャネル領域12を含む半導体層との間のコンタクト抵抗が低減することになる。
【0041】
さらに、図4に示すように、ハーフメタル強磁性金属ソース/ドレイン電極40、40の磁化は、ある一定の方向(図4では、上方向として表示)に固定されている。また、ワード線を構成する各ハーフメタル強磁性金属ゲート電極30、30には、それぞれ、ソース/ドレイン電極の磁化の向きと略平行に磁化した磁区30b、30bが形成されている。もちろん、これ以外のゲート電極部分30a、30aの磁化は、ソース/ドレイン電極40、40の磁化と略反平行となっている。特に、図4に示す状態では、各メモリセルのチャネル領域上のゲート電極の磁化の方向は、ソース/ドレイン電極の磁化の方向と略反平行となっている。すなわち、各メモリセルの状態は、図2に示す状態となっている。
【0042】
この場合、ゲート電極の磁化方向がソース電極の磁化の向きと略反平行となっているので、図5に断面図として示すように、各ゲート電極に正電位を印加した場合、ソース電極の磁化方向と整合した方向にスピン偏極している捕縛電子(図では、左から右の矢印を付与してこれを表現する。矢印の方向は偏極の方向とは必ずしも一致してはいない。)が、電荷トラップ膜20中の電荷トラップに捕縛されるものの、ゲート電極には流入しない。したがって、通常のNAND型フラッシュメモリと同等の操作で、各メモリセルの電荷トラップ膜中の電荷トラップに電荷を蓄えること、すなわち書き込みすることが可能となる。
【0043】
これに対し、ワード線30に電流パルスを与えれば、磁区30bを特定のメモリセルのチャネル層上部に移動させれば、図6に示すような磁区配置を実現できる。実際、磁区は、米国特許第6,834,005号明細書に開示されているように、電流パルスの流れる方向と反対に移動させることが可能である。このため、ワード線30に、図6に矢印で示す方向に、電子流をパルス状に与えることで、磁区30bをメモリセルのチャネル層上部に移動させることができる。
【0044】
図7は、図6に示す切断線B−Bで切断した断面図である。図7に示すように、シリコン酸化膜(BOX)11の上部のチャネル領域12を含む半導体層102の側部には、絶縁膜38が形成されている。ワード線となるゲート電極30は、矢印で示す方向に磁化している。ソース/ドレイン電極40、40の磁化方向と略平行となるように磁化した磁区30bは、電流により、図7に示す右側のメモリセルの電荷トラップ膜20上に移動し、このメモリセルでは、図3に示す状態が実現されている。
【0045】
このとき、右側のメモリセルの電荷トラップ膜20に捕獲された、スピン偏極した捕縛電子は、磁区30bからなるゲート電極に流入できるようになる。したがって、ゲート電極に正電位を印加すれば、電荷トラップ膜20中に捕縛された電子は、容易に、ゲート電極に移動し、電荷トラップ膜中の電荷を消去できる。
【0046】
このとき、ソース/ドレイン電極の磁化の方向と略平行に磁化したゲート電極(磁区)と電荷トラップ膜20中の電荷トラップとの間の電荷遷移確率を、チャネル領域12と電荷トラップ膜中の電荷トラップとの間の電荷遷移確率よりも大きくしておくことが望ましい。これは、電荷トラップ膜20中の電荷トラップの位置を、チャネル領域12よりゲート電極により近づけることにより容易に実現できる。または、図8に示すように、電荷トラップ膜20を、絶縁層20a、電荷トラップ層20b、および絶縁層20cをこの順序でチャネル領域12上に積層した積層構造とし、絶縁層20aと、絶縁層20cを異なる材質で構成し、更に絶縁層20aの、チャネル領域12を構成する半導体の伝導帯からのエネルギーバリアの高さを大きくすることでも実現できる。
【0047】
捕縛電子50のゲート電極への遷移確率が、チャネル領域と電荷トラップ膜20中の電荷トラップとの間の遷移確率よりも大きければ、書き込み時のゲート電圧より小さな正電位をゲート電極に与えることで、チャネル領域12から電荷トラップへ電子を捕縛することなく、電荷トラップ膜20中の電荷を消去できる。ここで、電荷トラップ膜20中の電荷トラップ層としては、もちろん、例えばシリコンからなる、フローティングゲート電極を利用できる。
【0048】
もちろん、ソース/ドレイン電極の磁化の方向と略平行な方向に磁化したワード線の磁区が、特定のメモリセルのチャネル領域上のみに存在するようにすれば、上記の電荷トラップ膜20中の電荷の消去は、この特定のメモリセルのみで進行する。チャネル領域上のゲート電極に、ソース/ドレイン電極の磁化の方向と略反平行な方向に磁化したハーフメタル強磁性体が存在するその他のメモリセル(例えば、図7の左側のメモリセル)では、スピン偏極した捕縛電子がゲート電極に流入することはできないので、電荷の消去は起こらない。したがって、特定のメモリセルでの消去が個別に可能となる。
【0049】
また、図7に示すように、ワード線となるゲート電極の下部には、BOX11上にチャネル領域12を設けたことによる生じる段差18をそのまま残しておいてもよい。このような段差18が生じた場所(段差部)には磁区の境界である磁壁が束縛されやすい傾向がある。したがって、磁区の移動を、このような段差部に整合して離散的に行うことが可能となる。この結果、磁区を、制御性よく、チャネル領域上に移動させたり、ここから外したりすることができる。
【0050】
また、これとは別に、図9に上面図、図10に図9のC−C断面図として示すように、ゲート電極30、30に、楔状の掘削部19を形成すれば(即ち非磁性体の食い込みを入れることと同等)磁壁は、強磁性体中に存在する非磁性体領域に束縛されやすい性質があるので、磁壁を掘削部19に誘導することができる。このような掘削部19を所望の位置に配置することで、磁区30b、30bの移動を、掘削部19の配置に整合して離散的に行うことが可能となる。
【0051】
この結果、図7に示す場合のように段差部18を残置しなくとも、チャネル領域12を含む半導体層間に絶縁膜を埋め込み、半導体層間の段差を平坦化し上で、この平坦面上にハーフメタル強磁性金属のゲート電極を延在形成した場合でも、磁区30b、30bを、制御性よく移動させることができる。また、磁区30b、30bは、ハーフメタル強磁性金属のゲート電極の下部の材質の変化(誘電率の変化など)に同調して移動する傾向があるので、掘削部や段差がなくても、チャネル領域12を含む半導体層に移動させたり、ここから外したりすることも可能である。
【0052】
このように構成されたメモリセルアレイの周囲には、図11に示すように、周辺回路を設置する。アドレスピンから適切な信号(例えば、アドレス信号、制御信号等)を入力すると、アドレスバッファ、行デコーダ、列デコーダ、マルチプレクサ、デマルチプレクサを経てビット線、ワード線が選択され、この選択されたビット線およびワード線に接続するメモリセルが選択される。この選択されたメモリセルに、上記ビット線およびワード線を通して制御信号を送ることにより、書き込み、消去を行うことができる。また選択されたメモリセルの応答を出力ピンから検出することで、選択されたメモリセルに記憶された情報を読み出すことができる。
【0053】
本実施形態のように、各メモリセルに対して個別に消去を行う場合に、選択されたワード線に、電流パルスを印加するためには、図11に示すように、パルス発生器と、これをワード線への入力とするためのマルチプレクサを加えるだけで良い。
【0054】
このように、NAND型構造を持ちながら、メモリセル単位で書き込み、消去が可能な不揮発性半導体メモリが実現される。
【0055】
<Magnetic Shift Resisterとの差異>
次に、本実施形態の半導体メモリと、磁区の移動を利用した他のメモリ素子との差異について、説明する。
【0056】
磁区の電流パルスによる移動を用いたメモリ素子(Magnetic Shift Resister)は、米国特許第6,834,005号明細書に開示されているが、この素子は、長い強磁性体中の磁区の配置そのものに情報を蓄えるものである。当然、情報の書き換えには、強磁性体各部の磁化の反転を必要とする。一方、本実施形態においては、情報は、各メモリセルの電荷トラップ膜に電荷として蓄えられており、当然、磁化の反転は必要としない。また、本実施形態においては、磁区の移動のみを用いているので、磁化反転のための装置を設ける必要はない。
【0057】
また、米国特許第6,834,005号明細書では、情報の蓄積に利用できる領域は、基本的に、強磁性体トラックのうち半分しかない。これは、情報の蓄積された磁区の配置パターンを変えずに、読み取り装置のある特定位置に移動させるためには、情報の蓄積された磁区の配置パターンと同一の長さの、情報蓄積に利用しえないバッファ領域を設けなければならないからであり、非効率的である。
【0058】
一方、本実施形態においては、情報は、各メモリセルの電荷トラップ膜に電荷として蓄えられており、基本的に、各ワード線に1個の磁区を設け、これを移動させるだけで良い。不必要な強磁性体トラックを形成しなくてもよいので、集積化が容易となる。
【0059】
<製造方法>
次に、本実施形態による半導体メモリの製造方法の一例を、図面を参照して説明する。図12乃至図17は、図4におけるA−A断面図に対応する断面図である。
【0060】
まず、公知の技術を用いて形成した、SOI(Silicon On Insulator)ウェハーを用意する。このSOIウェハーは、シリコン半導体基板10、このシリコン半導体基板10上に形成されたシリコン酸化膜(以下、BOX膜とも云う)11、およびこのBOX膜11上に形成された素子形成用単結晶シリコン半導体層(SOI層)12を有している。
【0061】
次いで、SOI層12上に、電荷トラップを含む電荷トラップ膜20(例えば、図8に示すように、シリコン酸化膜20a、シリコン窒化膜20b、シリコン酸化膜20cの積層膜20)を公知の技術を用いて形成する(図12)。
【0062】
次に、メモリセル形成領域以外のSOI層12および電荷トラップ膜20をリソグラフィー技術、RIE(Reactive Ion Etching)法などを用いて除去し、チャネル領域12を含む半導体層を形成する。この半導体層12の側部には、例えば熱酸化により、図7に示す絶縁膜38を更に形成する。
【0063】
次いで、ゲート電極(即ちワード線)を形成すべき領域に、リソグラフィー技術、RIE法などを用いて、例えば、炭素からなるダミーゲート500を形成する(図13)。このダミーゲート500をマスクとして、例えばイオン注入法を用いて、n型不純物をダミーゲート500の両側の半導体層12に導入し、熱処理を行い、これを活性化することで、ソース/ドレイン領域14を形成する(図13)。
【0064】
なお、チャネル領域12を含む半導体層12には、予め、ソース/ドレイン領域14と逆導電型であるp型不純物を導入しておいてもよい。また、完全空乏型のトランジスタを形成する場合は、チャネル領域12に特に導電性不純物を導入する必要はない。
【0065】
この後、ダミーゲート500の左右の側面に、ゲート側壁25となる例えばシリコン窒化膜を、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法、RIE法により形成する。このとき、ゲート側壁25の直下以外の領域のソース/ドレイン領域14も同時に除去する。したがって、ゲート側壁25の直下にのみ、ソース/ドレイン領域14が存在する(図14)。
【0066】
次に、層間絶縁膜600として例えばシリコン酸化膜を、CVD法などを用いて堆積する。続いて、この層間絶縁膜600にリソグラフィー技術、RIE法などの方法で、ソース/ドレイン電極の形成部分に開口601を形成し、その後、例えば方向性スパッタ法を用いて、ハーフメタル強磁性金属40を堆積する。ソース/ドレイン電極の形成部分には、ハーフメタル強磁性金属のソース/ドレイン電極40が形成される(図15)。
【0067】
ハーフメタル強磁性金属40としては、例えば、CoMnX(ここで、XはGa、Si、Al、Ge、Sn、Sbなどの元素を表す)や、Co(CrFe1−y)Al系、或いは、CoFeAlSi1−y系のホイスラー合金、CaBi、CrまたはMnを(数atomic%以上)導入したSiC、KCrSe、CrO、CrAs、CrSb、Fe、FeCo1−x等を用いることができる。更に、ハーフメタル強磁性金属のソース/ドレイン電極の上部に、それぞれの磁化を強固に且つ安定的に固着するために、例えば、FeMn、PtMn、NiMn、IrMn、NiO、Feなどのような反強磁性層を設けても良い。
【0068】
次に、図16に示すように、ソース/ドレイン領域40に至る開口部601に、SOG(Spin on Glass、珪素化合物RSi(OH)4−n、R:有機分子及び添加材)のような流動性を示すシリコン酸化膜の材料物質を含む材料700を埋め戻し、その後、表層のハーフメタル強磁性金属40および層間絶縁膜600を、RIE法などの公知の技術の効果的な方法でエッチング除去する。さらに、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法などを用いて平坦化して、炭素からなるダミーゲート500の上部を露出させる。次いで、炭素からなるダミーゲート500を、例えば、酸素プラズマに曝すことで選択的に除去する(図16)。これにより、ダミーゲート500が除去された後には、ゲート電極形成用の溝が形成されることになる。
【0069】
このようにして形成されたゲート電極形成用の溝に、ハーフメタルゲート強磁性金属のゲート電極30、30となる、ハーフメタル強磁性金属を、スパッタ法、RIE法、CMP法などの公知の技術を用いて埋め戻す(図17)。このゲート電極の製造方法は、ダマシン形成法である。
【0070】
ゲート電極30、30となるハーフメタル強磁性金属としては、例えば、CoMnX(ここでXはGa、Si、Al、Ge、Sn、Sbなどの元素を表す)や、Co(CrFe1−y)Al系、或いは、CoFeAlSi1−y系のホイスラー合金、CaBi、CrまたはMnを(数atomic%以上)導入したSiC、KCrSe、CrO、CrAs、CrSb、Fe、FeCo1−x等を用いることができる。ソース/ドレイン電極40を形成するハーフメタル強磁性金属と必ずしも同一である必要はない。
【0071】
引き続き、ソース/ドレイン電極40とゲート電極30、30に互いに反平行な磁化を付与する。それぞれの電極に磁化を与えるに当たっては、基板の温度を、それぞれの工程に適切な温度に設定しつつ、磁化したい方向に磁場を印加することが望ましい。特に、強磁性金属とともに、磁化を強固に且つ安定的に固着するために、反強磁性層を用いる場合、反強磁性体のNeel温度程度に昇温して磁場中で冷却を行うことが効果的である。異なるNeel温度を持つ反強磁性層を各強磁性金属の電極に用いることで、適切な温度で磁化付与を行えば、各電極への個別的な磁化付与が可能となる。
【0072】
特に、ワード線となるゲート電極30、30の所定の位置に、ソース/ドレイン電極の磁化の方向に磁化した磁区30b、30bを形成するためには、磁区30b、30bを形成したい部分に、ゲート電極の30a、30a部とは異なる反強磁性層を積層し、上記の要領で異なる磁化を与えればよい。磁化を付与した後は、ゲート電極上の反強磁性層は除去しても良い。
【0073】
また、初期的に磁区を形成したい部分のみハーフメタル強磁性体の膜厚を特に薄くすることも有効である。ハーフメタル強磁性体の膜厚が異なると磁気異方性エネルギーが実効的に異なるため、ウェハー全体を磁場中において300℃前後の温度範囲でアニールし、磁場中で室温まで冷却すると、磁気異方性エネルギーが実効的に大きい膜厚が厚い層のみが、磁場の方向に向くことになる。
【0074】
この後、さらに層間絶縁膜を形成し、これに、必要な部分にコンタクトホールを穿ち、このコンタクトホールに、例えばAlのような配線金属を充填形成する。この上にコンタクトホールを接続する金属配線を加工形成し、必要ならば、多層の配線を構築し、また実装工程などを経て、半導体メモリを完成させる。
【0075】
<磁区移動制御について>
次に、磁区の移動制御について図18(a)乃至図24を参照して説明する。図18(a)乃至図24は、図6に示す切断線B−Bで切断した断面図である。
【0076】
図7で説明したように、ワード線となるハーフメタル強磁性金属のゲート電極の段差部には磁区の境界である磁壁が束縛されやすい傾向があること、および図9、図10で説明したように、ゲート電極に、掘削部を形成すれば磁壁が、掘削部に配置しやすいことは前述した。このことを利用して、磁区の移動を細かく制御することで、多段階の消去動作を実現することもできる。
【0077】
図18(a)、18(b)には、電子パルスの印加によって誘起される磁区の移動を、電子パルスの印加前後の磁区の配置によって示す。各チャネル領域12を含む半導体層の上部のハーフメタル強磁性金属のゲート電極30には、図に示すように、RIE法などの公知の技術の効果的な方法で、両側に溝322が形成されている。
【0078】
図18(a)に示す磁区配置Aにおいては、ソース/ドレイン電極40の磁化の方向に略平行に磁化した磁区30aはBOX膜11の上部に位置している。
【0079】
ゲート電極30に図に示す方向に第1電子流パルスを印加することで、磁区30bは移動し、チャネル領域12を含む半導体層上の溝322に隣接する。この結果、図18(b)に示す磁区配置Bが実現する。
【0080】
この状態で、更に第2電子流パルスをゲート電極30に印加すると、磁区30bが移動して、図19(a)に示す磁区配置Bから、図19(b)に示す磁区配置Cとなる。すなわち、チャネル領域12と、磁区30bとのオーバラップ部分が生じる。
【0081】
この状態で、更に第3電子流パルスをゲート電極30に印加すると、磁区30bが移動して、図20(a)に示す磁区配置Cから、図20(b)に示す磁区配置Dとなる。この磁区配置Dは、磁区配置Cに比べてチャネル領域12と、磁区30bとのオーバラップ部分が増加した状態となっている。
【0082】
この状態で、更に第4電子流パルスをゲート電極30に印加すると、磁区30bが移動して、図21(a)に示す磁区配置Dから、図21(b)に示す磁区配置Eとなる。この磁区配置Eは、チャネル領域12が磁区30bによって完全に覆われた状態となっている。
【0083】
この状態で、更に第5電子流パルスをゲート電極30に印加すると、磁区30bが移動して、図22(a)に示す磁区配置Eから、図22(b)に示す磁区配置A’となる。
【0084】
この磁区配置A’は、チャネル領域12と、磁区30bとのオーバラップ部分が存在しない状態となっている。そして、この磁区配置A’はビット線を一周期分移動したことを除いて、実質的に、磁区配置Aと同等である。磁区配置Eから磁区配置A’へと遷移させる第5電子流パルスは他の第1乃至第4電子流パルスに比べて強めにすることが望ましい。
【0085】
磁区配置C乃至磁区配置Eにおいては、いずれも、チャネル領域12を含む半導体層上にソース/ドレイン電極の方向に磁化した磁区30bが存在するが、そのチャネル領域12を含む半導体層上にある面積(オーバラップしている部分の面積)は、磁区配置Cから磁区配置Eに移るにしたがって順次大きくなる。
【0086】
したがって、同じ消去動作を行っても、消去動作を、磁区配置C乃至磁区配置Eのどの磁区配置の時に行うかによって、電荷トラップ膜20中の電荷の減少量を調節することが可能となる。逆にいえば、電荷トラップ膜20中の残存電荷量を多段階に設定することができることになる。このことにより、多値NAND型半導体メモリを実現することが可能となる。
【0087】
なお、ゲート電極の段差形状としては、溝322を設ける代わりに、図23及び図24に示すような凸部323、324を設けてもよい。
【0088】
また、上記実施形態は、メモリセルがn型電界効果型トランジスタであったが、メモリセルとしてp型電界効果型トランジスタを用いてよいことはいうまでもない。
【0089】
更に、電界効果型トランジスタを形成する半導体基板は、Siに限定されるものではなく、Ge、GaAsのような半導体基板、或いは、これらとSiが同一基体上に形成された 複合基板などを使用することが可能である。
【0090】
以上、詳述してきた様に、本実施形態の半導体メモリによれば、各メモリセルは、NAND型構造で直列接続されたトランジスタのソース/ドレイン電極を所定の方向に磁化したハーフメタル強磁性金属により形成し、また、ゲート電極を上記所定の方向と略反平行な方向に磁化したハーフメタル強磁性金属により形成し、加えて、ゲート電極の一部に、電流によりその位置を移動できる、上記所定の方向に磁化した磁区を具備している。これにより、以下の効果を得ることができる。
(A) チャネル領域上に所定方向と略反平行な方向に磁化したハーフメタル強磁性金属のゲート電極が存在するメモリセルでは、電荷トラップ膜中の電荷トラップに捕縛されるスピン偏極した電子はハーフメタル強磁性金属のゲート電極に流入することはできない。このため、ハーフメタル強磁性金属のゲート電極は絶縁膜としても機能する。
(B) チャネル領域上に所定の方向と略平行な方向に磁化した磁区が存在するメモリセルでは、電荷トラップ膜中の電荷トラップに捕縛されるスピン偏極した電子は、ゲート電極に流入できるようになる。したがって、ゲート電極に正電位を印加すれば、電荷トラップ膜中の電荷トラップに捕縛されるスピン偏極した電子は、容易に、ゲート電極に移動し、電荷トラップ膜中の電荷を消去することができる。
【0091】
したがって、
(1) 各メモリセルのゲート電極の磁化の方向を、ソース/ドレイン電極の磁化の方向と略反平行とすることで、通常のNAND型フラッシュメモリと同等の操作で、各メモリセルの電荷トラップ膜中の電荷トラップに電荷を蓄えること(書き込み)が可能となる。
(2) ワード線に電流パルスを与え、ソース/ドレイン電極の磁化の方向と略平行な方向に磁化した磁区を特定のメモリセルのチャネル領域の上部に移動させ、その他のメモリセルのチャネル領域の上部のゲート電極の磁化の方向を、ソース/ドレイン電極の磁化の方向と略反平行とすることで、特定のメモリセルでの消去が個別に可能となる。
(3) 磁区と電荷トラップ膜中の電荷トラップとの間の電荷の遷移確率を、チャネル領域と電荷トラップ膜中の電荷トラップとの間の電荷の遷移確率よりも大きくしておくことで、書き込み時のゲート電圧より小さな正電位をゲート電極に与えることにより、チャネル領域から電荷トラップ膜への電荷蓄積を進行させることなく、電荷トラップ膜中の電荷を消去できる。
(4) チャネル領域を含む半導体層による段差をそのまま残すことで、このような段差が形成された段差部に整合して磁区の移動を離散的に行うことが可能となる。この結果、磁区を、制御性よく、チャネル領域を含む半導体層の上部に移動させたり、ここから外したりすることができる。
(5) チャネル領域を含む半導体層の上部のゲート電極に、さらに溝や凹凸を形成することで、磁区がチャネル領域を含む半導体層とオーバラップする面積を多段階に調節することが可能となる。この結果、電荷トラップ膜中の残存電荷量を多段階に設定することができ、多値半導体メモリが実現できる。
(6) 情報は、各メモリセルの電荷トラップ膜に蓄えられており、磁化の反転は必要としない。磁区の移動のみを用いているので、米国特許第6,834,005号明細書に記載された発明と異なり、磁化反転のための装置を設ける必要はない。
(7) 情報は、各メモリセルの電荷トラップ膜に蓄えられており、基本的に、各ワード線に1個の磁区を設け、これを移動させるだけで良い。このため、米国特許第6,834,005号明細書に記載された発明と異なり、情報蓄積に利用しえないバッファ領域が必要でなくなるので集積化が容易である。
【0092】
このように、NAND型構造を持ちながら、メモリセル単位で書き込み、消去が可能な不揮発性半導体メモリが実現される。
【0093】
なお、上記実施形態の不揮発性半導体メモリにおいては、ビット線(NAND列)は複数本であったが、1本であってもよい。この場合、メモリセルは一列に配置される。
【符号の説明】
【0094】
10 シリコン半導体基板
11 シリコン酸化膜(BOX膜)
12 チャネル領域を含む半導体層
14 ソース/ドレイン領域
14a ソース領域
14b ドレイン領域
20 電荷トラップ膜
20a 絶縁層
20b 電荷トラップ層
20c 絶縁層
30 ハーフメタル強磁性金属のゲート電極
30 ハーフメタル強磁性金属のゲート電極(ワード線)
30 ハーフメタル強磁性金属のゲート電極(ワード線)
30a 磁化の方向が反転しているゲート電極中の磁区
30b 磁化の方向が反転しているゲート電極中の磁区
30a 磁化の方向が反転しているゲート電極部分
30b 磁化の方向が反転しているゲート電極部分
35 ゲート側壁
38 絶縁膜
40 ハーフメタル強磁性金属
40 ソース/ドレイン電極
40 ソース/ドレイン電極
40a ソース電極
40b ドレイン電極
322 ゲート電極中の溝(凹部)
323 ゲート電極中に形成された凸部
324 ゲート電極中に形成された凸部
500 ダミーゲート
600 層間絶縁膜
601 層間絶縁膜の開口部
700 層間絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのNAND列であって、前記NAND列は、
絶縁膜上に物理的に離間して配置された複数の半導体領域と、
各半導体領域内に、互いに離間して形成されたソース/ドレイン領域と、
各半導体領域内の前記ソース/ドレイン領域の間に形成されたチャネル領域と、
各チャネル領域上に設けられ、前記チャネル領域から電荷をトラップすることのできる電荷トラップ膜と、
前記半導体領域内の少なくとも一つのソース/ドレイン領域に物理的及び電気的に接続され、且つ互いに物理的に離間し、磁化の向きが同一の方向に固定された第1のハーフメタル強磁性金属からなるソース/ドレイン電極と、
を有し、前記各ソース/ドレイン領域には、ただ一つの、前記ソース/ドレイン電極が物理的及び電気的に接続され、且つ、前記半導体領域と前記ソース/ドレイン電極は、前記物理的接続により、一つに連結され、端部をソース/ドレイン電極により終端された単一の直列構造を構成する、少なくとも1つのNAND列と、
前記NAND列の各電荷トラップ膜上に設けられ、さらに前記電荷トラップ膜以外の前記絶縁膜上に延在する、互いに電気的に絶縁された第2のハーフメタル強磁性金属からなるゲート電極であって、前記ゲート電極のそれぞれは、磁化の向きが前記ソース/ドレイン電極の磁化の向きに略平行な第1の領域と、磁化の向きが前記ソース/ドレイン電極の磁化の向きに略反平行な第2領域から構成され、前記第1領域が、前記ゲート電極に電流を印加することにより、前記電荷トラップ膜上から前記電荷トラップ膜以外の前記絶縁膜上へ、及び、前記電荷トラップ膜以外の前記絶縁膜上から前記電荷トラップ膜上へ、可逆的に移動可能となっているゲート電極と、
を備えていることを特徴とする不揮発性半導体メモリ。
【請求項2】
前記NAND列は複数であって、これらの複数のNAND列は互いに物理的に離間され、
前記ゲート電極は、各NAND列の各電荷トラップ膜上に設けられ、
任意のNAND列の各電荷トラップ膜上に設けられた任意のゲート電極は、同時に、他の任意のNAND列中の各電荷トラップ膜上に設けられた前記ゲート電極でもあることを特徴とする請求項1記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項3】
前記半導体領域は、前記絶縁膜上に、第一の方向、及びこれと異なる第二の方向に周期性を持つ2次元格子状に配置され、
前記各NAND列は、前記第一の方向に沿って延在し、
前記各ゲート電極は、前記第二の方向に沿って延在していることを特徴とする請求項2記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項4】
前記電荷トラップ膜は、前記チャネル領域上に形成された第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層上に形成された電荷トラップ層と、前記電荷トラップ層上に形成された第2の絶縁層と、を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項5】
前記チャネル領域から第1の絶縁層を介して前記電荷トラップ層に電荷が遷移する確率が、前記電荷トラップ層から前記第2の絶縁層を介して前記ゲート電極に電荷が遷移する確率よりも小さいことを特徴とする請求項4記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項6】
前記第1のハーフメタル強磁性金属上に反強磁性体層が積層されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項7】
前記ゲート電極の厚みが、前記チャネル領域上と、前記チャネル領域以外の部分上で異なることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の不揮発性半導体メモリ。
【請求項8】
各チャネル領域上の前記ゲート電極に、これが延在する接線方向と直交する方向に凹部または凸部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の不揮発性半導体メモリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−182787(P2010−182787A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23639(P2009−23639)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】