人体形状測定装置と測定方法
【課題】複数のスリット光を同時に照射した場合に、反射光がいずれのスリット光によるものかを自動的に判別できるようにして、人体形状を高速で測定する。
【解決手段】台3に立った人体に対し、4つの昇降するステージ6からスリット光を時分割で投影し、人体形状を求める。ステージ6には上下の赤外線レーザ11,12とカメラ14とを設け、レーザ11,12を同時に動作させる。カメラ画像での反射光が上下いずれのレーザによるものかを、前回のカメラ画像を今回のカメラ位置に視点変換したものとの比較から判別する。
【解決手段】台3に立った人体に対し、4つの昇降するステージ6からスリット光を時分割で投影し、人体形状を求める。ステージ6には上下の赤外線レーザ11,12とカメラ14とを設け、レーザ11,12を同時に動作させる。カメラ画像での反射光が上下いずれのレーザによるものかを、前回のカメラ画像を今回のカメラ位置に視点変換したものとの比較から判別する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光切断法を用いた人体形状の測定に関し、特に測定時間を短縮することに関する。
【背景技術】
【0002】
スリット光を用いた人体形状の測定装置が知られている。この測定装置では、レーザ光源等から扇状をしたスリット光を取り出し人体に投影して、人体での反射光をカメラで撮像する。水平面に対するスリット光の角度が既知で、反射光の水平面からの角度がカメラ側で分かると、カメラを基準とする人体表面の3次元座標が判明する。1回のスリット光は面状に人体に触れ、カメラではスリット光で人体を切断したような画像が得られる。そしてスリット光の位置を変えながら、複数の高さで人体形状を求めると、人体表面の3次元形状が得られる。
【0003】
特許文献1は、人体の基準となる位置にマーカを貼り付け、第1のスリット光で人体表面の形状を求め、第2のスリット光でマーカを検出して人体の主要データを取得することを提案している。
特許文献2は、複数の平行なスリット光を電子部品等の対象に照射し、同時に複数のラインに沿って3次元データを求めて、測定時間を短縮することを提案している。ただし特許文献2での測定対象は、電子部品、ハンダバンプ、導電性ペーストなどの単純なものである。
【0004】
発明者は、人体形状の測定において、測定時間を短縮する必要があることを検討した。測定時間が長いと、被測定者が一定の姿勢を保つことが難しくなる。そこで複数のスリット光を同時に人体に照射することを検討したが、反射光がどのスリット光により得られたものであるかを判別することが困難であった。このため発明者は、人体からの反射光がどのスリット光によるものかを判別するための手法を検討し、この発明に到った。
【特許文献1】特開2004−45222
【特許文献2】特開2004−37317
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の基本的課題は、複数のスリット光を同時に照射した場合に、反射光がいずれのスリット光によるものかを自動的に判別できるようにして、人体形状を高速で測定できるようにすることにある。
この発明での追加の課題は、スリット光の判別をより確実に行うことにある。
この発明での補助的な課題は、同時に照射し得るスリット光の数を増して、測定時間をさらに短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、位置を変えて複数回、人体にスリット光を照射し、反射光をカメラで撮像して、人体の3次元形状を求める人体形状測定装置において、
複数のスリット光を同時に人体に照射するための光源と、
スリット光の照射位置を順次変更するための駆動部と、
該複数のスリット光の人体での反射光を撮像するカメラと、
前回のカメラ画像と今回のカメラ画像とを比較し、今回のカメラ画像での反射光を複数のスリット光のいずれかに割当てるための画像認識部と、
スリット光と前記反射光との組み合わせから、人体形状を求めるための演算部とを設けたことを特徴とする。
例えば複数のスリット光源とカメラとをステージに直線状に配置して、ステージとともに同時に運動させ、複数のスリット光は平行にして同時に人体へ照射する。
【0007】
この発明はまた、位置を変えて複数回、人体にスリット光を照射し、反射光をカメラで撮像して、人体の3次元形状を求める方法において、
同時に複数のスリット光が人体に照射されるようにしながら、スリット光を照射位置を変えて複数回照射し、
該複数のスリット光の人体での反射光をカメラで撮像し、
前回のカメラ画像と今回のカメラ画像とを比較し、今回のカメラ画像での反射光を複数のスリット光のいずれかに割当て、
スリット光と前記反射光との組み合わせから人体形状を求める、ことを特徴とする。
【0008】
この明細書での人体形状測定装置に関する記載は、そのまま人体形状測定方法にも当てはまり、逆に人体形状測定方法に関する記載は、そのまま人体形状測定装置にも当てはまる。
この明細書で、カメラ画像は、カメラから得られた画像データや、カメラ画像から得られた人体の形状データを意味する。スリット光の割り当てができると、カメラ画像と人体の形状データは互換性があるデータなので、これらを簡単のため共にカメラ画像と呼ぶ。
【0009】
好ましくは、光源とカメラとを、共に駆動部により人体に対して移動させるようにすると共に、
画像認識部では、
・ 前回のカメラ画像を前回のカメラ位置で撮像した画像から、今回のカメラ位置で撮像した画像へ視点変換し、もしくは今回のカメラ画像を今回のカメラ位置で撮像した画像から、前回のカメラ位置で撮像した画像へ視点変換し、
・ 視点変換後の前回と今回のカメラ画像間の比較から、今回のカメラ画像での反射光を複数のスリット光のいずれかに割当てる。
特に好ましくは、前記複数のスリット光はそれぞれ人体とライン状に接触し、
画像認識部では、視点変換後のカメラ画像間の比較として、前回のカメラ画像での反射光のラインと、今回のカメラ画像での反射光のラインとの距離とを求める。
【0010】
また好ましくは、少なくとも4個の昇降台の各々に、少なくとも一対のスリット光源とカメラとを取り付けて、前記駆動部で人体の周囲を昇降させ、
対角線位置にある2個の昇降台のスリット光源から同時に人体にスリット光を照射する。
【発明の効果】
【0011】
この発明では前回のカメラ画像と今回のカメラ画像とを比較し、今回のカメラ画像での反射光をいずれかのスリット光に割当てる。前回のカメラ画像での反射光はいずれかのスリット光に割り当て済みで、今回のカメラ画像での反射光は前回のカメラ画像での反射光に対して所定範囲の位置にあるので、前回のカメラ画像と今回のカメラ画像とを比較すると、今回のカメラ画像の反射光をいずれかのスリット光に割当てることができる。このため複数のスリット光を同時に照射して人体形状を求めることができ、これに伴って短時間で人体形状を測定できる。
【0012】
前回のカメラ画像と今回のカメラ画像とでカメラ位置が異なる場合、視点変換によりカメラ位置を揃えると、画像の比較をより正確に行える。
前回のカメラ画像での反射ラインと今回のカメラ画像での反射ラインとの距離を求めると、距離が小さければ2つのスリット光は近接しており、距離が大きければ2つのスリット光は離れていると推定できるので、今回のカメラ画像での反射ラインをより確実にスリット光に割り当てることができる。
【0013】
4個あるいは6個などの昇降台を人体を取り囲むように配置し、対角線位置に有る2個の昇降台から同時に各少なくとも一対のスリット光を照射した場合、対角線上の昇降台からのスリット光はノイズになり難いので、同時に照射するスリット光の数を4以上にできる。従って、測定時間をさらに短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下にこの発明を実施するための最良の形態を示すが、これに限るものではない。
【実施例】
【0015】
図1〜図12に、実施例の人体形状測定装置2とその変形とを示す。各図において、3は台で、被測定者が立つための台である。台3の例えば4隅に、ステージ6の昇降ガイドを兼ねる支柱4を設け、ステージ6を支柱4に沿って昇降させる。7はステージ6からのスリット光で、水平面からの傾斜角は例えばφで、扇状の面状のレーザービームで、人体にはライン状に接触する。測定装置2の天井部にミリ波レーダ8を設けて、被測定者の身長を測定する。ミリ波レーダ8に代えて、複数のカメラで人体形状を撮影し、大まかな人体の3次元形状を求めてもよい。またミリ波レーダ8は設けなくてもよい。10はコンピュータで、ステージ6やミリ波レーダ8を制御する。
【0016】
ステージ6の構造を図1の右上に示すと、例えば上下2台の赤外線レーザ11,12を一定の間隔をおいて同角度で設けて、平行なスリット光を人体に向けて斜め上方から照射する。レーザ11,12と一直線上に並ぶようにカメラ14を配置し、赤外線透過フィルタを介して、スリット光の反射光を視野中心が水平方向を向いたカメラ14で撮像する。これによりカメラ14の視野中心付近に人体からの反射光が入射し、画像の歪みを小さくできる。そしてステージ6は昇降モータにより支柱4に沿って昇降し、実施例では支柱4を上から下へ移動して、被測定者にスリット光を複数回、例えば毎回異なる位置に照射し人体構造を測定する。赤外線レーザ11,12の波長は同じでも異なってもよい。なお単一の赤外線レーザ光をハーフミラー等で2分し、2つの平行なスリット光を得ても良い。
【0017】
図2にコンピュータ10の構成を示すと、コントローラ20は人体形状測定装置2の全体を制御し、昇降制御21を介して、4個のステージ6を昇降モータM1〜M4により昇降させる。実施例ではステージ6は上から下へ一定速度で移動し、この間に所定のタイミングでレーザ11,12を同時に発光させ、カメラ14で反射光を受光して、人体形状を求める。撮像制御22は4個のステージ6のレーザ11,12並びにカメラ14を制御し、ミリ波レーダ8は被測定者の身長を出力する。
【0018】
4個のステージ6からのカメラ画像は、ステージ毎にエリアを区分した画像メモリ24に入力され、画像メモリ24での被測定者からの反射光の画像をH/L割当26により、上下いずれのスリット光かに割り当てる。反射光をスリット光に割り当てると、座標計算28で人体形状の3次元データを計算でき、これを人体データ記憶部30に記憶する。これ以外に人体形状を記憶したデータベース32を設けても良く、例えば人体の特徴点の座標のみを求めて、データベース32に入力し、人体形状データを読み出すようにしてもよい。またスリット光の割当では、前回までに測定した人体データをデータベース32に入力して、今回のカメラ画像に対応する人体データをデータベース32から読み出して予測し、これに基づいて割当を行ってもよい。
【0019】
スリット光の割当では、測定の最初にどのスリット光にどの反射光が対応するかを定める必要がある。ミリ波レーダ8により被測定者の身長が分かり、被測定者が台3の中央に立つと、どのスリット光が頭頂で反射したかが判明し、これからスリット光と反射光とを対応付けることができる。あるいはまた測定前に被測定者の人体形状を立体視カメラで撮像し、大まかな人体形状データを求めると、どのスリット光とどの反射光とが対応するかの初期値を求めることができる。そして一旦スリット光と反射光との対応関係の割当に成功すると、以下は前回の反射光を基準として、今回の反射光をスリット光に対応付けることができる。
【0020】
図3に実施例での測定アルゴリズムを1フレーム分、即ち1枚のカメラ画像分示す。なお図3では、スリット光と反射光との対応付けは初期的に終了済みであるとする。さらにHは上部のスリット光、即ち赤外線レーザ11からのスリット光を示し、Lは下部スリット光、即ち赤外線レーザ12からのスリット光を示す。また1つのステージ6での、上下の赤外線レーザ11,12は同時に発光する。Cは今回のカメラ位置を表し、C0は1フレーム前のカメラ位置を示す。Dはカメラから光源(赤外線レーザ11,12)までの高さを示し、DHは上側の赤外線レーザ11とカメラ14の間隔を、DLは下側の赤外線レーザ12とカメラ14の間隔を示す。またφはスリット光の水平面からの角度を示し、θはカメラへの入射光の水平面からの角度を示す。Pは仮想的な投影面上の反射点を指し、添え字0は前回の反射点を、添え字Hや添え字Lでいずれのスリット光による反射点であるかを示す。Sは人体表面の反射ラインである。図では、カメラ14から被測定者に向けて水平方向に進む向きをz方向、上下方向をy方向とし、残る方向をx方向とする。レーザ11,12は人体にライン状に接触するスリット光を照射するので、角度θはx方向によって変化する。従ってx方向の人体形状の変化はθの変化で表され、反射光は点ではなく人体表面のラインである。
【0021】
今回のカメラ画像中には、支柱4などで反射したノイズが含まれ、反射光の位置は人体表面からの反射光と著しく異なるのでこれを除去し、残る反射光を細線化する。ノイズ除去と細線化の順序は任意である。カメラ14は赤外線画像を撮像するので、室内の可視光はノイズにならず、台3に暗幕などは必要ではない。これと同時に1フレーム上の画像データ、即ち1フレーム前の画像データを読み出し、このうち下部スリット光に対応する人体データを今回のカメラ位置に視点変換する。
【0022】
今回のカメラ画像と、前回のカメラ画像を今回のカメラ位置に視点変換したデータとを比較し、今回のカメラ画像中の反射光を上部スリット光Hまたは下部スリット光Lに割り当てる。例えば今回のカメラ画像中に上下に2つの反射光のラインがあれば、前回の反射光のラインに距離が近く、かつ形状が近接しているものがスリット光Hに対応し、距離が遠く形状が離れているものが下部スリット光Lに対応する。今回のカメラ画像中に上下に平行な2つの反射光のラインがない場合、前回の反射光のラインとの距離が所定範囲内で、かつ形状が類似しているものがスリット光H,距離が所定範囲外または形状が非類似なものが下部スリット光Lに対応する。
【0023】
今回のカメラ画像中の反射光を上部スリット光Hと下部スリット光Lとに対応付けると、反射光に対応する3次元座標を求めることができる。例えばカメラ位置を原点とする座標系で、人体表面の座標(z,y)は、z=D/(tanθ+tanφ) と、y=Dtanθ/(tanθ+tanφ)として求めることができる。ここにθは反射光のラインに沿って変化する変数である。そして(z,y)の座標にカメラ位置の座標をオフセットとして加算すると、人体表面上の測定ラインの3次元データが得られる。以上の処理を1フレーム撮像する毎に繰り返すと、人体形状が得られる。
【0024】
図4に4個のステージ6の動作パターンを示す。1)では4個のステージ6を1個ずつ時分割で発光させ、例えば撮像に10〜50msec程度、カメラから画像メモリへの転送に5〜10msec程度必要である。例えば1フレームの撮像に25msecが必要な場合、撮像の1周期は100msecとなる。そして人体形状を例えば10秒以内に測定するものとすると、測定回数は100周期分で、上下のフレームの間隔は20mm程度となる。
【0025】
図4の2)は対角線にある2つのステージを同時に発光させる例で、例えば1回の撮像に25msec必要とすると、測定周期は50msecとなる。対角線の向こう側からのスリット光がノイズとなる場合、対角線の両側で赤外線レーザの波長を変え、カメラにそれぞれバンドパスフィルタを設けて、対角線の反対側のスリット光の影響を受けないようにする。
【0026】
図5に、上下2つのスリット光H/Lと、2つのカメラ画像の関係を模式的に示す。Cは今回のカメラ位置を、C0は前回のカメラ位置を示し、各スリット光が水平面と成す角φは一定である。カメラ画像から直接得られるデータは、仮想的な投影面上の反射点PH0〜PLで、カメラ位置と上側のスリット光Hの光源位置との間隔がDH、下側のスリット光Lの光源との間隔がDLである。
【0027】
図6にカメラ画像での、角度θから座標(z,y)への変換を示す。ここで上下いずれのスリット光によるものかが既知であるとし、カメラ位置からスリット光の光源までの高さをDとして、図6から明らかなように、y=ztanθ,D−y=ztanφの関係が成立し、これから(z,y)を求めることができる。また実施例で用いる座標系は、図6の左下側に示したものである。
【0028】
図7〜図9に、反射光の消失や新たな反射ラインの発生を示す。例えば図7のように、人体の肩付近をスリット光が照射していると、一方の反射光がカメラ位置Cへ届かないことがある。この場合、上下2つのスリット光H/Lに対して、1本の反射光のラインが得られる。
【0029】
反射光が人体の腕その他の障害物により遮られ、カメラ位置に届かないことがある。このような例を図8に示す。ここでは、下側のスリット光Lに対する胸部での反射光が腕に遮られてカメラに到着していない。
【0030】
図9に新たな反射光のラインの発生を示す。例えば前回に胸あるいは背中に対する反射光のみが得られていた場合に、腕による新たな反射光を検出することがある。このような場合、画像上は新たな反射光のラインが発生し、これは下側のスリット光Lに対応する反射光のラインが2つに分裂したということもできる。
【0031】
図10に実施例での視点変換を模式的に示す。前回のスリット光H0,L0に対する反射点の位置は既知である。そこでこの位置を今回のカメラ位置Cから見たものとして、仮想的なカメラ画像を作成すると、反射点の位置は図10の左側のPH0'やPL0'となる。今回のカメラ画像には、反射点PH,PLが含まれ、これらがいずれのスリット光に対応するのかを定める必要がある。そこで前回の下側のスリット光に対する反射点PL0'に近いものが、今回の上側のスリット光に対する反射点PHで、遠いものが下側のスリット光に対する反射点である。
【0032】
図11に、前回のカメラ画像中の反射ラインを視点変換した反射ラインSL0と、今回の反射ラインSH,SLの関係を示す。スリット光が近ければ反射ラインの間の距離も小さく、またその形状も類似する。逆にスリット光の間隔が大きければ、反射ラインの間の距離も大きく、形状もマッチングしにくくなる。そこで反射ラインの間の距離並びに形状の類似性の2つの評価基準により、今回の反射ラインがどのスリット光によるものであるかを判別する。なお距離の定義あるいは計算法を工夫すると、2つの反射ラインの形状の類似性と、ラインの間の間隔の大小とを、1つの概念にまとめることもできる。
【0033】
図12に、変形例でのスリット光への反射光の割当を示す。前回の下部スリット光L0による反射点P0の位置が既知で、今回の反射点Pが上側のスリット光Hによるものか(図12の実線の人体形状)、下側のスリット光Lによるものか(図12の鎖線の人体形状)を判別する。カメラへの入射角θから、上側のスリット光Hによるものとした場合の座標PHと、下側のスリット光Lによるものとした場合の座標PLを求めることができ、Cz,Cyはオフセットである。θは変数なので、反射点P0を並べたラインをSL0とし、上側のスリット光Hによるものとした場合の人体表面の反射ラインをSH,下側のスリット光Lによるものとした場合の人体表面の反射ラインをSLとすると、3次元空間に3本のラインが得られる。そして前回のラインSL0とラインSHとの距離が小さく、形状が類似していれば、SHが正しい人体表面のラインである。SL0とSHとの距離が大きく形状が非類似な場合、上側のスリット光からの反射ラインが消失しており、反射ラインをスリット光Lに割り当てる。
【0034】
実施例ではステージ6を台3に対して上から下へ移動させたが、下から上へ移動させてもよい。またステージ6を台3の周囲を円周上に回転させてもよい。実施例では1つのステージ6に2台の赤外線レーザ11,12を設けたが、3台以上の赤外線レーザを設けてもよい。この場合、前回のカメラ画像中の最も下側のスリット光との対比から、今回の反射光の割当を行う。スリット光を水平面から傾ける代わりに、鉛直面から傾けて人体に縦方向に照射しても良い。実施例では赤外線レーザ11,12とカメラ14をステージ6毎に時分割で駆動したが、これらを一斉に駆動して、他のステージのスリット光からの反射光を、実施例と同様にして除去してもよい。即ち1フレーム撮像する毎に、自己のステージのスリット光からの反射光を求め、他のステージからのスリット光による反射光を除く。次のフレームで前回の自己のステージのスリット光に対する反射光との比較から、どれが自己のステージのスリット光による反射光であるかを判別する。
【0035】
実施例では前回のカメラ画像を視点変換したが、今回のカメラ画像に対して、上下のスリット光に対する仮の3次元座標を求め、前回のカメラ画像の視点に変換してもよい。このようにすると、視点変換前に今回のカメラ画像に対応する3次元座標を複数回求める必要があるので、演算量が増加する。実施例では測定開始時のスリット光への割当以外は、前回のカメラ画像のみを用いたが、データベース32から予測される人体形状を補助的に利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例の人体形状測定装置の平面図
【図2】実施例の人体形状測定装置のブロック図
【図3】実施例の人体形状測定での、データ処理アルゴリズムを示すフローチャート
【図4】実施例での、4個のカメラの撮像とデータ転送とを示すタイミングチャートで、1)は基本パターンを、2)は高速パターンを示す。
【図5】実施例での、上下2つのスリット光H/Lと、前回のカメラ画像及び今回のカメラ画像を模式的に示す図
【図6】カメラ画像からの人体形状の算出法を示す図
【図7】反射光の消失を示す図
【図8】反射光の消失を示す図
【図9】新たな反射光の発生を示す図
【図10】実施例での、1フレーム上部の人体形状データに対する視点変換を示す図
【図11】実施例での、視点変換後の画像との比較による、スリット光の判別を示す図
【図12】スリット光の判別の変形例を示す図
【符号の説明】
【0037】
2 人体形状測定装置
3 台
4 支柱
6 ステージ
7 スリット光
8 ミリ波レーダ
10 コンピュータ
11,12 赤外線レーザ
14 カメラ
20 コントローラ
21 昇降制御
22 撮像制御
24 画像メモリ
26 H/L割当
28 座標計算
30 人体データ記憶部
32 データベース
M1〜M4 昇降モータ
H 上部スリット光
L 下部スリット光
C カメラ位置
C0 1フレーム上でのカメラ位置
D カメラから光源までの高さ
P 仮想的な投影面上の反射点
φ スリット光の水平面からの角度
θ カメラへの入射光の水平面からの角度
S 人体表面の反射部
【技術分野】
【0001】
この発明は光切断法を用いた人体形状の測定に関し、特に測定時間を短縮することに関する。
【背景技術】
【0002】
スリット光を用いた人体形状の測定装置が知られている。この測定装置では、レーザ光源等から扇状をしたスリット光を取り出し人体に投影して、人体での反射光をカメラで撮像する。水平面に対するスリット光の角度が既知で、反射光の水平面からの角度がカメラ側で分かると、カメラを基準とする人体表面の3次元座標が判明する。1回のスリット光は面状に人体に触れ、カメラではスリット光で人体を切断したような画像が得られる。そしてスリット光の位置を変えながら、複数の高さで人体形状を求めると、人体表面の3次元形状が得られる。
【0003】
特許文献1は、人体の基準となる位置にマーカを貼り付け、第1のスリット光で人体表面の形状を求め、第2のスリット光でマーカを検出して人体の主要データを取得することを提案している。
特許文献2は、複数の平行なスリット光を電子部品等の対象に照射し、同時に複数のラインに沿って3次元データを求めて、測定時間を短縮することを提案している。ただし特許文献2での測定対象は、電子部品、ハンダバンプ、導電性ペーストなどの単純なものである。
【0004】
発明者は、人体形状の測定において、測定時間を短縮する必要があることを検討した。測定時間が長いと、被測定者が一定の姿勢を保つことが難しくなる。そこで複数のスリット光を同時に人体に照射することを検討したが、反射光がどのスリット光により得られたものであるかを判別することが困難であった。このため発明者は、人体からの反射光がどのスリット光によるものかを判別するための手法を検討し、この発明に到った。
【特許文献1】特開2004−45222
【特許文献2】特開2004−37317
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の基本的課題は、複数のスリット光を同時に照射した場合に、反射光がいずれのスリット光によるものかを自動的に判別できるようにして、人体形状を高速で測定できるようにすることにある。
この発明での追加の課題は、スリット光の判別をより確実に行うことにある。
この発明での補助的な課題は、同時に照射し得るスリット光の数を増して、測定時間をさらに短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、位置を変えて複数回、人体にスリット光を照射し、反射光をカメラで撮像して、人体の3次元形状を求める人体形状測定装置において、
複数のスリット光を同時に人体に照射するための光源と、
スリット光の照射位置を順次変更するための駆動部と、
該複数のスリット光の人体での反射光を撮像するカメラと、
前回のカメラ画像と今回のカメラ画像とを比較し、今回のカメラ画像での反射光を複数のスリット光のいずれかに割当てるための画像認識部と、
スリット光と前記反射光との組み合わせから、人体形状を求めるための演算部とを設けたことを特徴とする。
例えば複数のスリット光源とカメラとをステージに直線状に配置して、ステージとともに同時に運動させ、複数のスリット光は平行にして同時に人体へ照射する。
【0007】
この発明はまた、位置を変えて複数回、人体にスリット光を照射し、反射光をカメラで撮像して、人体の3次元形状を求める方法において、
同時に複数のスリット光が人体に照射されるようにしながら、スリット光を照射位置を変えて複数回照射し、
該複数のスリット光の人体での反射光をカメラで撮像し、
前回のカメラ画像と今回のカメラ画像とを比較し、今回のカメラ画像での反射光を複数のスリット光のいずれかに割当て、
スリット光と前記反射光との組み合わせから人体形状を求める、ことを特徴とする。
【0008】
この明細書での人体形状測定装置に関する記載は、そのまま人体形状測定方法にも当てはまり、逆に人体形状測定方法に関する記載は、そのまま人体形状測定装置にも当てはまる。
この明細書で、カメラ画像は、カメラから得られた画像データや、カメラ画像から得られた人体の形状データを意味する。スリット光の割り当てができると、カメラ画像と人体の形状データは互換性があるデータなので、これらを簡単のため共にカメラ画像と呼ぶ。
【0009】
好ましくは、光源とカメラとを、共に駆動部により人体に対して移動させるようにすると共に、
画像認識部では、
・ 前回のカメラ画像を前回のカメラ位置で撮像した画像から、今回のカメラ位置で撮像した画像へ視点変換し、もしくは今回のカメラ画像を今回のカメラ位置で撮像した画像から、前回のカメラ位置で撮像した画像へ視点変換し、
・ 視点変換後の前回と今回のカメラ画像間の比較から、今回のカメラ画像での反射光を複数のスリット光のいずれかに割当てる。
特に好ましくは、前記複数のスリット光はそれぞれ人体とライン状に接触し、
画像認識部では、視点変換後のカメラ画像間の比較として、前回のカメラ画像での反射光のラインと、今回のカメラ画像での反射光のラインとの距離とを求める。
【0010】
また好ましくは、少なくとも4個の昇降台の各々に、少なくとも一対のスリット光源とカメラとを取り付けて、前記駆動部で人体の周囲を昇降させ、
対角線位置にある2個の昇降台のスリット光源から同時に人体にスリット光を照射する。
【発明の効果】
【0011】
この発明では前回のカメラ画像と今回のカメラ画像とを比較し、今回のカメラ画像での反射光をいずれかのスリット光に割当てる。前回のカメラ画像での反射光はいずれかのスリット光に割り当て済みで、今回のカメラ画像での反射光は前回のカメラ画像での反射光に対して所定範囲の位置にあるので、前回のカメラ画像と今回のカメラ画像とを比較すると、今回のカメラ画像の反射光をいずれかのスリット光に割当てることができる。このため複数のスリット光を同時に照射して人体形状を求めることができ、これに伴って短時間で人体形状を測定できる。
【0012】
前回のカメラ画像と今回のカメラ画像とでカメラ位置が異なる場合、視点変換によりカメラ位置を揃えると、画像の比較をより正確に行える。
前回のカメラ画像での反射ラインと今回のカメラ画像での反射ラインとの距離を求めると、距離が小さければ2つのスリット光は近接しており、距離が大きければ2つのスリット光は離れていると推定できるので、今回のカメラ画像での反射ラインをより確実にスリット光に割り当てることができる。
【0013】
4個あるいは6個などの昇降台を人体を取り囲むように配置し、対角線位置に有る2個の昇降台から同時に各少なくとも一対のスリット光を照射した場合、対角線上の昇降台からのスリット光はノイズになり難いので、同時に照射するスリット光の数を4以上にできる。従って、測定時間をさらに短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下にこの発明を実施するための最良の形態を示すが、これに限るものではない。
【実施例】
【0015】
図1〜図12に、実施例の人体形状測定装置2とその変形とを示す。各図において、3は台で、被測定者が立つための台である。台3の例えば4隅に、ステージ6の昇降ガイドを兼ねる支柱4を設け、ステージ6を支柱4に沿って昇降させる。7はステージ6からのスリット光で、水平面からの傾斜角は例えばφで、扇状の面状のレーザービームで、人体にはライン状に接触する。測定装置2の天井部にミリ波レーダ8を設けて、被測定者の身長を測定する。ミリ波レーダ8に代えて、複数のカメラで人体形状を撮影し、大まかな人体の3次元形状を求めてもよい。またミリ波レーダ8は設けなくてもよい。10はコンピュータで、ステージ6やミリ波レーダ8を制御する。
【0016】
ステージ6の構造を図1の右上に示すと、例えば上下2台の赤外線レーザ11,12を一定の間隔をおいて同角度で設けて、平行なスリット光を人体に向けて斜め上方から照射する。レーザ11,12と一直線上に並ぶようにカメラ14を配置し、赤外線透過フィルタを介して、スリット光の反射光を視野中心が水平方向を向いたカメラ14で撮像する。これによりカメラ14の視野中心付近に人体からの反射光が入射し、画像の歪みを小さくできる。そしてステージ6は昇降モータにより支柱4に沿って昇降し、実施例では支柱4を上から下へ移動して、被測定者にスリット光を複数回、例えば毎回異なる位置に照射し人体構造を測定する。赤外線レーザ11,12の波長は同じでも異なってもよい。なお単一の赤外線レーザ光をハーフミラー等で2分し、2つの平行なスリット光を得ても良い。
【0017】
図2にコンピュータ10の構成を示すと、コントローラ20は人体形状測定装置2の全体を制御し、昇降制御21を介して、4個のステージ6を昇降モータM1〜M4により昇降させる。実施例ではステージ6は上から下へ一定速度で移動し、この間に所定のタイミングでレーザ11,12を同時に発光させ、カメラ14で反射光を受光して、人体形状を求める。撮像制御22は4個のステージ6のレーザ11,12並びにカメラ14を制御し、ミリ波レーダ8は被測定者の身長を出力する。
【0018】
4個のステージ6からのカメラ画像は、ステージ毎にエリアを区分した画像メモリ24に入力され、画像メモリ24での被測定者からの反射光の画像をH/L割当26により、上下いずれのスリット光かに割り当てる。反射光をスリット光に割り当てると、座標計算28で人体形状の3次元データを計算でき、これを人体データ記憶部30に記憶する。これ以外に人体形状を記憶したデータベース32を設けても良く、例えば人体の特徴点の座標のみを求めて、データベース32に入力し、人体形状データを読み出すようにしてもよい。またスリット光の割当では、前回までに測定した人体データをデータベース32に入力して、今回のカメラ画像に対応する人体データをデータベース32から読み出して予測し、これに基づいて割当を行ってもよい。
【0019】
スリット光の割当では、測定の最初にどのスリット光にどの反射光が対応するかを定める必要がある。ミリ波レーダ8により被測定者の身長が分かり、被測定者が台3の中央に立つと、どのスリット光が頭頂で反射したかが判明し、これからスリット光と反射光とを対応付けることができる。あるいはまた測定前に被測定者の人体形状を立体視カメラで撮像し、大まかな人体形状データを求めると、どのスリット光とどの反射光とが対応するかの初期値を求めることができる。そして一旦スリット光と反射光との対応関係の割当に成功すると、以下は前回の反射光を基準として、今回の反射光をスリット光に対応付けることができる。
【0020】
図3に実施例での測定アルゴリズムを1フレーム分、即ち1枚のカメラ画像分示す。なお図3では、スリット光と反射光との対応付けは初期的に終了済みであるとする。さらにHは上部のスリット光、即ち赤外線レーザ11からのスリット光を示し、Lは下部スリット光、即ち赤外線レーザ12からのスリット光を示す。また1つのステージ6での、上下の赤外線レーザ11,12は同時に発光する。Cは今回のカメラ位置を表し、C0は1フレーム前のカメラ位置を示す。Dはカメラから光源(赤外線レーザ11,12)までの高さを示し、DHは上側の赤外線レーザ11とカメラ14の間隔を、DLは下側の赤外線レーザ12とカメラ14の間隔を示す。またφはスリット光の水平面からの角度を示し、θはカメラへの入射光の水平面からの角度を示す。Pは仮想的な投影面上の反射点を指し、添え字0は前回の反射点を、添え字Hや添え字Lでいずれのスリット光による反射点であるかを示す。Sは人体表面の反射ラインである。図では、カメラ14から被測定者に向けて水平方向に進む向きをz方向、上下方向をy方向とし、残る方向をx方向とする。レーザ11,12は人体にライン状に接触するスリット光を照射するので、角度θはx方向によって変化する。従ってx方向の人体形状の変化はθの変化で表され、反射光は点ではなく人体表面のラインである。
【0021】
今回のカメラ画像中には、支柱4などで反射したノイズが含まれ、反射光の位置は人体表面からの反射光と著しく異なるのでこれを除去し、残る反射光を細線化する。ノイズ除去と細線化の順序は任意である。カメラ14は赤外線画像を撮像するので、室内の可視光はノイズにならず、台3に暗幕などは必要ではない。これと同時に1フレーム上の画像データ、即ち1フレーム前の画像データを読み出し、このうち下部スリット光に対応する人体データを今回のカメラ位置に視点変換する。
【0022】
今回のカメラ画像と、前回のカメラ画像を今回のカメラ位置に視点変換したデータとを比較し、今回のカメラ画像中の反射光を上部スリット光Hまたは下部スリット光Lに割り当てる。例えば今回のカメラ画像中に上下に2つの反射光のラインがあれば、前回の反射光のラインに距離が近く、かつ形状が近接しているものがスリット光Hに対応し、距離が遠く形状が離れているものが下部スリット光Lに対応する。今回のカメラ画像中に上下に平行な2つの反射光のラインがない場合、前回の反射光のラインとの距離が所定範囲内で、かつ形状が類似しているものがスリット光H,距離が所定範囲外または形状が非類似なものが下部スリット光Lに対応する。
【0023】
今回のカメラ画像中の反射光を上部スリット光Hと下部スリット光Lとに対応付けると、反射光に対応する3次元座標を求めることができる。例えばカメラ位置を原点とする座標系で、人体表面の座標(z,y)は、z=D/(tanθ+tanφ) と、y=Dtanθ/(tanθ+tanφ)として求めることができる。ここにθは反射光のラインに沿って変化する変数である。そして(z,y)の座標にカメラ位置の座標をオフセットとして加算すると、人体表面上の測定ラインの3次元データが得られる。以上の処理を1フレーム撮像する毎に繰り返すと、人体形状が得られる。
【0024】
図4に4個のステージ6の動作パターンを示す。1)では4個のステージ6を1個ずつ時分割で発光させ、例えば撮像に10〜50msec程度、カメラから画像メモリへの転送に5〜10msec程度必要である。例えば1フレームの撮像に25msecが必要な場合、撮像の1周期は100msecとなる。そして人体形状を例えば10秒以内に測定するものとすると、測定回数は100周期分で、上下のフレームの間隔は20mm程度となる。
【0025】
図4の2)は対角線にある2つのステージを同時に発光させる例で、例えば1回の撮像に25msec必要とすると、測定周期は50msecとなる。対角線の向こう側からのスリット光がノイズとなる場合、対角線の両側で赤外線レーザの波長を変え、カメラにそれぞれバンドパスフィルタを設けて、対角線の反対側のスリット光の影響を受けないようにする。
【0026】
図5に、上下2つのスリット光H/Lと、2つのカメラ画像の関係を模式的に示す。Cは今回のカメラ位置を、C0は前回のカメラ位置を示し、各スリット光が水平面と成す角φは一定である。カメラ画像から直接得られるデータは、仮想的な投影面上の反射点PH0〜PLで、カメラ位置と上側のスリット光Hの光源位置との間隔がDH、下側のスリット光Lの光源との間隔がDLである。
【0027】
図6にカメラ画像での、角度θから座標(z,y)への変換を示す。ここで上下いずれのスリット光によるものかが既知であるとし、カメラ位置からスリット光の光源までの高さをDとして、図6から明らかなように、y=ztanθ,D−y=ztanφの関係が成立し、これから(z,y)を求めることができる。また実施例で用いる座標系は、図6の左下側に示したものである。
【0028】
図7〜図9に、反射光の消失や新たな反射ラインの発生を示す。例えば図7のように、人体の肩付近をスリット光が照射していると、一方の反射光がカメラ位置Cへ届かないことがある。この場合、上下2つのスリット光H/Lに対して、1本の反射光のラインが得られる。
【0029】
反射光が人体の腕その他の障害物により遮られ、カメラ位置に届かないことがある。このような例を図8に示す。ここでは、下側のスリット光Lに対する胸部での反射光が腕に遮られてカメラに到着していない。
【0030】
図9に新たな反射光のラインの発生を示す。例えば前回に胸あるいは背中に対する反射光のみが得られていた場合に、腕による新たな反射光を検出することがある。このような場合、画像上は新たな反射光のラインが発生し、これは下側のスリット光Lに対応する反射光のラインが2つに分裂したということもできる。
【0031】
図10に実施例での視点変換を模式的に示す。前回のスリット光H0,L0に対する反射点の位置は既知である。そこでこの位置を今回のカメラ位置Cから見たものとして、仮想的なカメラ画像を作成すると、反射点の位置は図10の左側のPH0'やPL0'となる。今回のカメラ画像には、反射点PH,PLが含まれ、これらがいずれのスリット光に対応するのかを定める必要がある。そこで前回の下側のスリット光に対する反射点PL0'に近いものが、今回の上側のスリット光に対する反射点PHで、遠いものが下側のスリット光に対する反射点である。
【0032】
図11に、前回のカメラ画像中の反射ラインを視点変換した反射ラインSL0と、今回の反射ラインSH,SLの関係を示す。スリット光が近ければ反射ラインの間の距離も小さく、またその形状も類似する。逆にスリット光の間隔が大きければ、反射ラインの間の距離も大きく、形状もマッチングしにくくなる。そこで反射ラインの間の距離並びに形状の類似性の2つの評価基準により、今回の反射ラインがどのスリット光によるものであるかを判別する。なお距離の定義あるいは計算法を工夫すると、2つの反射ラインの形状の類似性と、ラインの間の間隔の大小とを、1つの概念にまとめることもできる。
【0033】
図12に、変形例でのスリット光への反射光の割当を示す。前回の下部スリット光L0による反射点P0の位置が既知で、今回の反射点Pが上側のスリット光Hによるものか(図12の実線の人体形状)、下側のスリット光Lによるものか(図12の鎖線の人体形状)を判別する。カメラへの入射角θから、上側のスリット光Hによるものとした場合の座標PHと、下側のスリット光Lによるものとした場合の座標PLを求めることができ、Cz,Cyはオフセットである。θは変数なので、反射点P0を並べたラインをSL0とし、上側のスリット光Hによるものとした場合の人体表面の反射ラインをSH,下側のスリット光Lによるものとした場合の人体表面の反射ラインをSLとすると、3次元空間に3本のラインが得られる。そして前回のラインSL0とラインSHとの距離が小さく、形状が類似していれば、SHが正しい人体表面のラインである。SL0とSHとの距離が大きく形状が非類似な場合、上側のスリット光からの反射ラインが消失しており、反射ラインをスリット光Lに割り当てる。
【0034】
実施例ではステージ6を台3に対して上から下へ移動させたが、下から上へ移動させてもよい。またステージ6を台3の周囲を円周上に回転させてもよい。実施例では1つのステージ6に2台の赤外線レーザ11,12を設けたが、3台以上の赤外線レーザを設けてもよい。この場合、前回のカメラ画像中の最も下側のスリット光との対比から、今回の反射光の割当を行う。スリット光を水平面から傾ける代わりに、鉛直面から傾けて人体に縦方向に照射しても良い。実施例では赤外線レーザ11,12とカメラ14をステージ6毎に時分割で駆動したが、これらを一斉に駆動して、他のステージのスリット光からの反射光を、実施例と同様にして除去してもよい。即ち1フレーム撮像する毎に、自己のステージのスリット光からの反射光を求め、他のステージからのスリット光による反射光を除く。次のフレームで前回の自己のステージのスリット光に対する反射光との比較から、どれが自己のステージのスリット光による反射光であるかを判別する。
【0035】
実施例では前回のカメラ画像を視点変換したが、今回のカメラ画像に対して、上下のスリット光に対する仮の3次元座標を求め、前回のカメラ画像の視点に変換してもよい。このようにすると、視点変換前に今回のカメラ画像に対応する3次元座標を複数回求める必要があるので、演算量が増加する。実施例では測定開始時のスリット光への割当以外は、前回のカメラ画像のみを用いたが、データベース32から予測される人体形状を補助的に利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例の人体形状測定装置の平面図
【図2】実施例の人体形状測定装置のブロック図
【図3】実施例の人体形状測定での、データ処理アルゴリズムを示すフローチャート
【図4】実施例での、4個のカメラの撮像とデータ転送とを示すタイミングチャートで、1)は基本パターンを、2)は高速パターンを示す。
【図5】実施例での、上下2つのスリット光H/Lと、前回のカメラ画像及び今回のカメラ画像を模式的に示す図
【図6】カメラ画像からの人体形状の算出法を示す図
【図7】反射光の消失を示す図
【図8】反射光の消失を示す図
【図9】新たな反射光の発生を示す図
【図10】実施例での、1フレーム上部の人体形状データに対する視点変換を示す図
【図11】実施例での、視点変換後の画像との比較による、スリット光の判別を示す図
【図12】スリット光の判別の変形例を示す図
【符号の説明】
【0037】
2 人体形状測定装置
3 台
4 支柱
6 ステージ
7 スリット光
8 ミリ波レーダ
10 コンピュータ
11,12 赤外線レーザ
14 カメラ
20 コントローラ
21 昇降制御
22 撮像制御
24 画像メモリ
26 H/L割当
28 座標計算
30 人体データ記憶部
32 データベース
M1〜M4 昇降モータ
H 上部スリット光
L 下部スリット光
C カメラ位置
C0 1フレーム上でのカメラ位置
D カメラから光源までの高さ
P 仮想的な投影面上の反射点
φ スリット光の水平面からの角度
θ カメラへの入射光の水平面からの角度
S 人体表面の反射部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置を変えて複数回、人体にスリット光を照射し、反射光をカメラで撮像して、人体の3次元形状を求める装置において、
複数のスリット光を同時に人体に照射するための光源と、
スリット光の照射位置を順次変更するための駆動部と、
該複数のスリット光の人体での反射光を撮像するカメラと、
前回のカメラ画像と今回のカメラ画像とを比較し、今回のカメラ画像での反射光を複数のスリット光のいずれかに割当てるための画像認識部と、
スリット光と前記反射光との組み合わせから、人体形状を求めるための演算部とを設けたことを特徴とする、人体形状測定装置。
【請求項2】
前記光源と前記カメラとを、共に前記駆動部により人体に対して移動させるようにすると共に、
前記画像認識部では、
・ 前回のカメラ画像を前回のカメラ位置で撮像した画像から、今回のカメラ位置で撮像した画像へ視点変換し、もしくは今回のカメラ画像を今回のカメラ位置で撮像した画像から、前回のカメラ位置で撮像した画像へ視点変換し、
・ 視点変換後の前回と今回のカメラ画像間の比較から、今回のカメラ画像での反射光を複数のスリット光のいずれかに割当てるようにしたことを特徴とする、請求項1の人体形状測定装置。
【請求項3】
前記複数のスリット光はそれぞれ人体とライン状に接触し、
前記画像認識部では、視点変換後のカメラ画像間の比較として、前回のカメラ画像での反射光のラインと、今回のカメラ画像での反射光のラインとの距離とを求めることを特徴とする、請求項2の人体形状測定装置。
【請求項4】
少なくとも4個の昇降台の各々に、少なくとも一対のスリット光源とカメラとを取り付けて、前記駆動部で人体の周囲を昇降させ、
対角線位置にある2個の昇降台のスリット光源から同時に人体にスリット光を照射するようにしたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの人体形状測定装置。
【請求項5】
位置を変えて複数回、人体にスリット光を照射し、反射光をカメラで撮像して、人体の3次元形状を求める方法において、
同時に複数のスリット光が人体に照射されるようにしながら、スリット光を照射位置を変えて複数回照射し、
該複数のスリット光の人体での反射光をカメラで撮像し、
前回のカメラ画像と今回のカメラ画像とを比較し、今回のカメラ画像での反射光を複数のスリット光のいずれかに割当て、
スリット光と前記反射光との組み合わせから人体形状を求める、ことを特徴とする、人体形状測定方法。
【請求項1】
位置を変えて複数回、人体にスリット光を照射し、反射光をカメラで撮像して、人体の3次元形状を求める装置において、
複数のスリット光を同時に人体に照射するための光源と、
スリット光の照射位置を順次変更するための駆動部と、
該複数のスリット光の人体での反射光を撮像するカメラと、
前回のカメラ画像と今回のカメラ画像とを比較し、今回のカメラ画像での反射光を複数のスリット光のいずれかに割当てるための画像認識部と、
スリット光と前記反射光との組み合わせから、人体形状を求めるための演算部とを設けたことを特徴とする、人体形状測定装置。
【請求項2】
前記光源と前記カメラとを、共に前記駆動部により人体に対して移動させるようにすると共に、
前記画像認識部では、
・ 前回のカメラ画像を前回のカメラ位置で撮像した画像から、今回のカメラ位置で撮像した画像へ視点変換し、もしくは今回のカメラ画像を今回のカメラ位置で撮像した画像から、前回のカメラ位置で撮像した画像へ視点変換し、
・ 視点変換後の前回と今回のカメラ画像間の比較から、今回のカメラ画像での反射光を複数のスリット光のいずれかに割当てるようにしたことを特徴とする、請求項1の人体形状測定装置。
【請求項3】
前記複数のスリット光はそれぞれ人体とライン状に接触し、
前記画像認識部では、視点変換後のカメラ画像間の比較として、前回のカメラ画像での反射光のラインと、今回のカメラ画像での反射光のラインとの距離とを求めることを特徴とする、請求項2の人体形状測定装置。
【請求項4】
少なくとも4個の昇降台の各々に、少なくとも一対のスリット光源とカメラとを取り付けて、前記駆動部で人体の周囲を昇降させ、
対角線位置にある2個の昇降台のスリット光源から同時に人体にスリット光を照射するようにしたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの人体形状測定装置。
【請求項5】
位置を変えて複数回、人体にスリット光を照射し、反射光をカメラで撮像して、人体の3次元形状を求める方法において、
同時に複数のスリット光が人体に照射されるようにしながら、スリット光を照射位置を変えて複数回照射し、
該複数のスリット光の人体での反射光をカメラで撮像し、
前回のカメラ画像と今回のカメラ画像とを比較し、今回のカメラ画像での反射光を複数のスリット光のいずれかに割当て、
スリット光と前記反射光との組み合わせから人体形状を求める、ことを特徴とする、人体形状測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−164491(P2008−164491A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355733(P2006−355733)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】
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