伝動ベルト製造用ベルトスリーブの加硫方法及び伝動ベルトの製造方法
【課題】残存空気が発生することなくベルトスリーブを加硫することができ、ベルト寿命を向上させた伝動ベルトを製造することができる、伝動ベルト製造用ベルトスリーブの加硫方法を提供する。
【解決手段】金型1の外周面に少なくとも心線2とゴムシート3からなる未加硫のベルトスリーブ4を巻き付けて装着する。この金型1に装着したベルトスリーブ4を加圧・加熱して圧縮する成形を行なう。この後に、加硫工程でベルトスリーブ4を加圧・加熱することによって、ベルトスリーブ4を加硫する。未加硫のベルトスリーブ4を圧縮することによって、心線2の間や心線2とゴムシート3の間に存在する空気を追い出してベルトスリーブ4内のエアー抜きをすることができ、空気が残存しない状態でベルトスリーブ4を加硫することができる。
【解決手段】金型1の外周面に少なくとも心線2とゴムシート3からなる未加硫のベルトスリーブ4を巻き付けて装着する。この金型1に装着したベルトスリーブ4を加圧・加熱して圧縮する成形を行なう。この後に、加硫工程でベルトスリーブ4を加圧・加熱することによって、ベルトスリーブ4を加硫する。未加硫のベルトスリーブ4を圧縮することによって、心線2の間や心線2とゴムシート3の間に存在する空気を追い出してベルトスリーブ4内のエアー抜きをすることができ、空気が残存しない状態でベルトスリーブ4を加硫することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルトの製造に用いられるベルトスリーブの加硫方法に関するものであり、またこの加硫方法を用いた伝動ベルトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伝動ベルトの製造の一例として、円筒状の金型の外周に心線とゴムシートを巻き付けて未加硫のベルトスリーブを作製し、このベルトスリーブを加熱・加圧して加硫した後に、加硫ベルトスリーブを金型から取り外し、そしてこの加硫ベルトスリーブを輪切りするように切断することによって、伝動ベルトを得る方法がある。そしてこのように金型の外周に巻き付けて装着した未加硫のベルトスリーブを加硫する方法としては、特許文献1など、従来から種々の方法が提案されている。
【0003】
図21は特許文献1で提案されているベルトスリーブの加硫方法を示すものであり、図21(a)のように金型11の外周に未加硫のベルトスリーブ4が装着してある。また12は外型であって、その内周に伸縮自在なジャケット13が取り付けてあり、外型12とジャケット13の間に密閉された空間部14が形成してある。この空間部14には注入排出口15が設けてある。16は加熱蒸気導入筒、17はパッキングである。
【0004】
そして空間部14内の圧力媒体を注入排出口15から排出して図21(a)のようにジャケット13をその内径を広げるように弾性変形させた状態で、ベルトスリーブ4を装着した金型11を外型12のジャケット13の内周に挿入してセットし、次に、加熱蒸気導入筒16から金型11の内側に加熱蒸気を供給して加熱しながら、注入排出口15から空間部14内に圧力流体を注入してジャケット13を内方へ膨張させ、図21(b)のようにジャケット13の内周面でベルトスリーブ4の外周を押圧して加圧することによって、ベルトスリーブ4を加硫することができるものである。図21において18は、ベルトスリーブ4の外周とジャケット13の内周との間のサイズ調整をするために、ジャケット13の内側に装着されたサイズ調整用スリーブである。
【特許文献1】特開平11−156857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように外型12の内周に設けたジャケット13を内方へ膨張させることによって、ジャケット13で未加硫のベルトスリーブ4を加圧し、ベルトスリーブ4の加硫を行なうことができるものであるが、ジャケット13の膨張力ではベルトスリーブ4を十分な圧力で加圧することができないことがある。そしてこのように加圧の圧力が十分でない状態で加硫をすると、ベルトスリーブ4内において、心線の間や、心線とゴムシートの間に存在する空気が十分に押し出されず、ベルトスリーブ4内に空気が残ったまま加硫がなされることになり、加硫したベルトスリーブ4内に残存空気が発生するおそれがあるという問題があった。特にベルトスリーブ4の上下の両端部はジャケット13による加圧が作用し難いので残存空気が多く発生し易いものであった。そしてこのように加硫したベルトスリーブ4に残存空気があると、この加硫ベルトスリーブ4を切断加工して得られる伝動ベルトは、残存空気によってベルト寿命が短くなるものであった。
【0006】
また、ベルトスリーブ4のゴムとして、耐オゾン性、耐熱性、耐寒性などにおいて優れた特性を有するエチレン・α−オレフィンエラストマーが用いられることがあるが、エチレン・α−オレフィンエラストマーは本来粘着性に欠けるために、ベルトスリーブ4に層間剥離が生じ易く、この層間剥離によってベルト寿命が短くなるおそれがあるという問題もあった。
【0007】
また、伝動ベルトとしてリブをベルト方向に沿って設けたリブベルトを製造する場合、加硫したベルトスリーブ4の外周にV溝を研磨加工することによって、V溝間にリブを形成することが行なわれているが、この場合には研磨によってゴムスクラップが多く発生して材料ロスが大きくなる。このため、図22(a)に示すように、未加硫のベルトスリーブ4を加硫する成形型6の内周にV溝8と同形の成形用凸部41を設けておき、ベルトスリーブ4を加硫する際に同時にV溝8をベルトスリーブ4に成形することによって、研磨を行なう必要なくベルトスリーブ4にV溝8を形成して、V溝8間にリブ9を形成することが検討されている。
【0008】
しかしこの場合、ベルトスリーブ4のゴム中には補強用の短繊維42が配合されているが、この短繊維42はV溝8を成形する際に、図22(b)に示すようにV溝8の表面に沿うように配向されることになり、リブ9の幅方向に配向する短繊維42の量が少なくなって、リブ9の幅方向の剛性が低下し、ベルト寿命が短くなるおそれがあるという問題があった。
【0009】
また、図22のように作製される作製されるリブドベルトにあって、リブ9は表面にゴムが露出した状態で形成されているので、プーリに対する摩擦係数が高く、このためベルトを走行させる際に異音が発生し易いという問題があった。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、残存空気が発生することなく、また層間密着性を高めた状態で、ベルトスリーブを加硫することができ、ベルト寿命を向上させた伝動ベルトを製造することができる、伝動ベルト製造用ベルトスリーブの加硫方法を提供することを目的とするものであり、さらに研磨による材料ロスを少なくすることができると共にベルト寿命を向上させた伝動ベルトを製造することができる伝動ベルトの製造方法を提供することを目的とするものである。加えて、ベルト走行時の異音の発生を低減した伝動ベルトを製造することができる伝動ベルトの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る伝動ベルト製造用ベルトスリーブの加硫方法は、金型1の外周面に少なくとも心線2とゴムシート3からなる未加硫のベルトスリーブ4を巻き付けて装着し、この金型1に装着したベルトスリーブ4を加圧・加熱して圧縮する成形を行なった後、加硫工程でベルトスリーブ4を加圧・加熱することによって、ベルトスリーブ4を加硫することを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、未加硫のベルトスリーブ4を圧縮する成形を行なうことによって、ベルトスリーブ4内において心線2の間や心線2とゴムシート3の間に存在する空気を追い出してエアー抜きをすることができ、空気が残らない状態でベルトスリーブ4を加硫することができるものであり、残存空気が発生することなくベルトスリーブ4を加硫することができるものである。
【0013】
また本発明の請求項2に係る伝動ベルト製造用ベルトスリーブの加硫方法は、外周にブラダー5を設けた金型1のブラダー5の外周に、少なくとも心線2とゴムシート3からなる未加硫のベルトスリーブ4を巻き付けて装着し、ベルトスリーブ4を外周側から加圧しつつ加熱して圧縮する成形を行なった後、このベルトスリーブ4を装着した金型1を加硫型6内に設置し、加硫型6を加熱しつつ、金型1のブラダー5を膨張させてベルトスリーブ4を加硫型6の内周に押圧して加圧することによって、ベルトスリーブ4を加硫することを特徴とするものである。
【0014】
この発明によれば、金型1のブラダー5の外周に装着したベルトスリーブ4を外周側から加圧しつつ加熱して圧縮することによって、ベルトスリーブ4内において心線2の間や心線2とゴムシート3の間に存在する空気を追い出してエアー抜きをすることができ、この後にブラダー5を膨張させてベルトスリーブ4を加硫型6の内周に押圧して加圧することによって、空気が残らない状態でベルトスリーブ4を加硫することができるものであり、残存空気が発生することなくベルトスリーブ4を加硫することができるものである。またベルトスリーブ4をこのように圧縮することによって、ベルトスリーブ4の厚みを小さくすることができるものであり、金型1を加硫型6内に配置してブラダー5を膨張させ、ベルトスリーブ4を加硫型6の内周に押圧して加硫するにあたって、ベルトスリーブ4を拡径させる量を小さくすることができ、ベルトスリーブ4の拡径変形による心線2の伸び率を小さくすることができるものである。
【0015】
また請求項3に係る発明は、請求項1又は2のゴムシート3として、エチレン・α−オレフィンエラストマーをゴム材質として形成されるものを用いることを特徴とするものである。
【0016】
この発明によれば、未加硫のベルトスリーブ4を加熱・加圧して圧縮することによって、本来粘着性が低いエチレン・α−オレフィンエラストマーを加熱して粘着性を高めた状態で、ゴムの層同士やゴムの層と心線を加圧して密着させることができ、層間密着性を高めた状態でベルトスリーブ4を加硫することができるものである。
【0017】
また本発明の請求項4に係る伝動ベルトの製造方法は、外周にブラダー5を設けた金型1のブラダー5の外周に、少なくとも心線2とゴムシート3からなる未加硫のベルトスリーブ4を巻き付けて装着し、ベルトスリーブ4を外周側から加圧しつつ加熱して圧縮する成形を行なった後、このベルトスリーブ4を装着した金型1を加硫型6内に設置し、加硫型6を加熱しつつ、金型1のブラダー5を膨張させてベルトスリーブ4を加硫型6の内周に押圧して加圧することによって、ベルトスリーブ4の外周に溝形成用凹部7を成形しつつベルトスリーブ4を加硫し、この加硫したベルトスリーブ4の溝形成用凹部7の箇所に溝形成用凹部7より深い溝8を研磨加工して、溝8間にリブ9を形成することを特徴とするものである。
【0018】
この発明によれば、ベルトスリーブ4を加硫する際に、溝8より浅い溝形成用凹部7をベルトスリーブ4に成形し、溝形成用凹部7の箇所を深く掘り下げるようにベルトスリーブ4を研磨することによってリブ9を形成するための溝8を作製することができるものであり、溝形成用凹部7の容積分、ベルトスリーブ4を研磨する量を少なくすることができ、研磨による材料ロスを少なくすることができると共に、溝形成用凹部7を成形する際に短繊維が溝形成用凹部7の表面に沿って配向しても、この短繊維が配向する部分は溝8を研磨加工する際に除去される部分であり、リブ9の幅方向に配向する短繊維の量を確保することができるものである。
【0019】
また本発明の請求項5に係る伝動ベルトの製造方法は、外周に伸縮自在なブラダー5を設けた金型1のブラダー5の外周に、少なくとも心線2とゴムシート3からなる未加硫のベルトスリーブ4を巻き付けて装着し、ベルトスリーブ4の外周面には短繊維10が植毛してあると共に、この短繊維10を植毛したベルトスリーブ4を外周側から加圧しつつ加熱して圧縮する成形を行なった後、このベルトスリーブ4を装着した金型1を加硫型6内に設置し、加硫型6を加熱しつつ、金型1のブラダー5を膨張させてベルトスリーブ4を加硫型6の内周に押圧して加圧することによって、ベルトスリーブ4の外周に溝8を成形しつつベルトスリーブ4を加硫すると共に溝8間にリブ9を形成することを特徴とするものである。
【0020】
この発明によれば、植毛した短繊維10でリブ9の表面を被覆した伝動ベルトを製造することができるものであり、表面を被覆する短繊維10でプーリに対するリブ9の摩擦係数を小さくすることができ、ベルト走行時の異音の発生を低減することができるものである。
【0021】
また請求項6に係る発明は、請求項4又は請求項5のゴムシート3として、エチレン・α−オレフィンエラストマーをゴム材質として形成されるものを用いることを特徴とするものである。
【0022】
この発明によれば、未加硫のベルトスリーブ4を加熱・加圧して圧縮することによって、本来粘着性が低いエチレン・α−オレフィンエラストマーを加熱して粘着性を高めた状態で、ゴムの層同士やゴムの層と心線を加圧して密着させることができ、層間密着性を高めた状態でベルトスリーブ4を加硫することができるものであり、ベルト寿命を向上させた伝動ベルトを得ることができるものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、加硫に先立って、未加硫のベルトスリーブ4を加熱・加圧して圧縮する成形を行なうことによって、心線2の間や心線2とゴムシート3の間に存在する空気を追い出してベルトスリーブ4内からエアー抜きをすることができ、空気が残らない状態でベルトスリーブ4を加硫することができるものであり、またベルトスリーブ4のゴムとしてエチレン・α−オレフィンエラストマーを用いる場合、層間密着性を高めた状態でベルトスリーブ4を加硫することができるものであり、残存空気のない、また層間密着性の高い加硫ベルトスリーブ4を得ることができるものであって、ベルト寿命を向上させた伝動ベルトを製造することができるものである。さらに、加硫に先立ってベルトスリーブ4を圧縮することによって、ベルトスリーブ4の厚みを小さくすることができ、ブラダー5を膨張させてベルトスリーブ4を加硫型6の内周に押圧して加硫するにあたって、ベルトスリーブ4を拡径させる量を小さくすることができて心線2の伸び率を小さくすることができるものであり、外周長の小さな伝動ベルトを製造することが可能になるものである。
【0024】
また本発明によれば、ベルトスリーブ4を加硫する際に、溝8より浅い溝形成用凹部7をベルトスリーブ4に成形することによって、溝形成用凹部7の容積分、ベルトスリーブ4を研磨する量を少なくして溝8を作製することができ、研磨による材料ロスを少なくすることができると共に、溝形成用凹部7を成形する際に短繊維が溝形成用凹部7の表面に沿って配向しても、この短繊維が配向する部分は溝8を研磨加工する際に除去される部分であり、リブ9の幅方向に配向する短繊維の量を確保して、ベルト寿命を向上させた伝動ベルトを製造することができるものである。
【0025】
さらに本発明によれば、ベルトスリーブ4の外周面に短繊維10を植毛しておくことによって、リブ9の表面が短繊維10で被覆された伝動ベルトを製造することができるものであり、摩擦係数を小さくしてベルト走行時の異音の発生を低減することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0027】
図1は本発明において内型として用いる金型1の一例を示すものであり、円柱乃至円筒状に形成してあって、上下両端面にフランジ22a、22bが外周に張り出して設けてある。金型1の外周にはゴムなど伸縮自在で且つ気密性を有する材料で円筒形に形成したブラダー5が設けてある。このブラダー5はその開口の両端の全周を各フランジ22a,22bに密着させて取着してあり、金型1の外周とブラダー5の内周の間は上下両端で密閉されるようにしてある。また金型1には、上端が上のフランジ22aから上方に突出し、下端が金型1内を通って、ブラダー5の内側において金型1の外周面で開口する流体供給路23が設けてあり、流体供給路23を通してエアーなどの流体を金型1の外周とブラダー5の内周の間に供給することができるようにしてある。このように流体供給路23を通して流体を供給すると、金型1の外周とブラダー5の内周の間は上下両端で密閉されているので、ブラダー5は流体の流入に伴なって外方へ膨らんで膨張されるようになっている。またこのように流体供給路23から流体が供給されていないときには、ブラダー5は金型1の外周に密接した状態になっている。
【0028】
このように外周にブラダー5を設けた金型1を内型としてベルトスリーブ4の成形を行なうものであり、まず、金型1のブラダー5の外周に未加硫のベルトスリーブ4を巻き付けて装着する。ベルトスリーブ4は図2に示すように、ブラダー5の外周にスパイラル状に巻き付ける心線2と、ブラダー5の外周に巻き付ける未加硫のゴムシート3の積層体として形成されるものである。図2の実施の形態では、内側から背面ゴム層形成用のゴムシート3(3a)、心線2、圧縮ゴム層形成用のゴムシート3(3b)の順にブラダー5の外周に巻き付けて三層構成にベルトスリーブ4を形成するようにしたが、両ゴムシート3a,3bの間に接着ゴム層形成用のゴムシートを設けるなどしてもよく、上記の層構成に限定されないのはいうまでもない。
【0029】
次に、このように未加硫のベルトスリーブ4を装着した金型1をフォーミング装置25内にセットする。フォーミング装置25は、図3に示すように、上面が開口する有底の円筒状に形成されるものであり、上面が開口する外郭26の上端にリング状のフランジ27を設け、外郭26の円筒状の側壁26aの内側において円筒状の伸縮自在なゴムなどで形成される加圧筒28を設けることによって、形成してある。この加圧筒28は上端開口の全周をフランジ27の下面に密着させて取着すると共に下端開口の全周を外郭26の底面に密着させて取着してあり、外郭26の側壁26aと加圧筒28の間に密閉された環状の空間29が形成されるようになっている。外郭26の側壁26aにはエアー供給路30が接続してあり、このエアー供給路30からエアーを密閉空間29内に供給できるようにしてある。また密閉空間29内には環状の蒸気缶31が配置してあり、蒸気缶31に接続した蒸気供給路32が外郭26の側壁26aを通して導出してある。
【0030】
そして、未加硫のベルトスリーブ4を装着した金型1をフォーミング装置25内に上面の開口から図3のように差し入れてセットした後、蒸気供給路32から蒸気缶31に加熱蒸気を供給して密閉空間29内を加熱しつつ、エアー供給路30から密閉空間29内に高圧エアーを供給することによって、加圧筒28を内方へ膨らませて膨張させる。このように加圧筒28を内方へ膨張させることによって、図4に示すように、金型1に装着された未加硫のベルトスリーブ4の外周にこの加圧筒28を押圧させ、ベルトスリーブ4を外周側から加圧することができるものである。このとき密閉空間29内は蒸気缶31で加熱されているので、加圧筒28を通して伝達される熱で加熱を行ないながら、加圧筒28でベルトスリーブ4を加圧することができるものである。この加熱・加圧による成形は、100〜120℃程度の温度、0.5〜1.5MPa程度の圧力で、2〜10分間程度の、ベルトスリーブ4を加硫させない条件で行なうものであり、このように未加硫のベルトスリーブ4を外側から加熱・加圧することによって、ベルトスリーブ4を圧縮して、心線2の間や、心線2とゴムシート3の間に存在する空気を追い出すことができ、ベルトスリーブ4からエアー抜きをすることができるものである。
【0031】
ここで、ベルトスリーブ4のゴムシート3として、エチレン・α−オレフィンエラストマーをゴム材質とするものが用いられつつある。このエチレン・α−オレフィンエラストマーは耐オゾン性、耐熱性、耐寒性などにおいて優れた特性を有し、しかも脱ハロゲンという近年の要求も満たしているために、伝動ベルトの材質として適しているのである。このエチレン・α−オレフィンエラストマーは、エチレンと、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテンなどのα−オレフィンとの共重合体、あるいはエチレンとα−オレフィンと非共役ジエンの共重合体であり、ジエン成分としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、エチレンノルボルネンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエンを挙げることができる。このようなエチレン・α−オレフィンエラストマーとして、具体的には、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)などを挙げることができるが、なかでもEPDMがよく用いられる。
【0032】
しかしこのエチレン・α−オレフィンエラストマーは本来粘着性に欠ける性質を有するため、ベルトスリーブ4の層間密着性、例えば背面ゴム層形成用のゴムシート3aと圧縮ゴム層形成用のゴムシート3bの間、圧縮ゴム層形成用のゴムシート3bと心線2の間などで層間密着性が不十分になり、ベルトスリーブ4に層間剥離が生じ易い。
【0033】
これに対して、本発明では、上記のように金型1に装着した未加硫のベルトスリーブ4をフォーミング装置25内にセットして、ベルトスリーブ4を外周側から加熱しながら加圧して圧縮するようにしているため、加熱によってエチレン・α−オレフィンエラストマーの粘着力を高めた状態で、加圧圧縮してベルトスリーブ4内の層間を密着させることができるものであり、層間密着性が高いベルトスリーブ4を得ることができるものである。ベルトスリーブ4のゴムをエチレン・α−オレフィンエラストマーで形成する場合の、この加熱・加圧による圧縮は、120〜170℃程度の温度、0.5〜1.5MPa程度の圧力、2〜10分間程度の、ベルトスリーブ4を加硫させない条件で行なうのが好ましい。
【0034】
尚、図3のフォーミング装置25では、加圧は加圧筒28で、加熱は蒸気缶31で行なうようにしたが、熱風発生器でプレヒートされた高温の高圧エアーをエアー供給路30から密閉空間29内に供給することによって、この高温・高圧のエアーで加圧筒28を内方へ膨らませてベルトスリーブ4を加圧すると共に加圧筒28を通してベルトスリーブ4を加熱するようにしてもよい。このとき、密閉空間29内のエアーを少しずつ排気しながら常にエアー供給路30から高温・高圧のエアーが供給されるようにしてあり、加圧筒28を通したベルトスリーブ4の加熱温度が一定に保たれるようにしてある。
【0035】
上記のように金型1に装着した未加硫のベルトスリーブ4をフォーミング装置25内で加熱・加圧して圧縮することによって、圧縮前の厚みT1から圧縮後の厚みT2へと、ベルトスリーブ4の厚みは薄くなる(T1>T2)。そしてベルトスリーブ4を圧縮する成形が終了した後、密閉空間29へのエアーの供給を停止し、加圧筒28を元の状態に収縮させ、図5のように、未加硫のベルトスリーブ4を装着した金型1をフォーミング装置25から取り出す。
【0036】
次に加硫工程で、加硫型6を外型として用いてベルトスリーブ4を加硫する。図6は加硫型6を示すものであり、上面が開口する円筒状に形成してあり、加硫型6の側壁6aの内部は全周に亘って密閉された中空にして、加熱・冷却ジャケット35が形成されるようにしてある。この加熱・冷却ジャケット35には、蒸気などの加熱媒体を供給する熱媒供給路36と、冷却水などの冷却媒体を供給する冷媒供給路37が接続してあり、加硫型6を加熱及び冷却することができるようにしてある。
【0037】
そして上記のように圧縮成形した未加硫のベルトスリーブ4を装着した金型1を、加硫型6内に上面の開口から差し込んで図6のようにセットする。次に、熱媒供給路36から加熱媒体を加熱・冷却ジャケット35に供給して加硫型6を加熱しながら、流体供給路23を通してエアーなどの流体を金型1の外周とブラダー5の内周の間に供給することによって、図7のようにエアーの圧力でブラダー5を外方へ膨らませるように膨張させる。このようにブラダー5が外方へ膨張すると、ブラダー5の外周に巻き付けて装着されているベルトスリーブ4が加硫型6の内周面に押し付けられ、ベルトスリーブ4は内側から加圧される。このようにして加熱・冷却ジャケット35で加熱しながら、膨張したブラダー5と加硫型6の間でベルトスリーブ4を加圧することによって、ベルトスリーブ4を加硫することができるものである。この加熱・加圧による加硫成形は、120〜170℃程度の温度、0.5〜1.5MPa程度の圧力で、15〜30分間程度の条件で行なうのが好ましい。
【0038】
このように加硫を行なった後、流体供給路23からの流体の供給を停止することによって、ブラダー5を収縮させて元の状態に戻し、また冷媒供給路37から加熱・冷却ジャケット35に冷媒を供給して加硫型6を冷却する。ブラダー5がこのように元の状態にまで収縮すると、ブラダー5は外径が小さくなって、加硫されたベルトスリーブ4Aの内径よりも小さくなるので、図8のように、加硫されたベルトスリーブ4Aを加硫型6の内周に残したまま金型1を抜き出すことができる。
【0039】
そして冷却されている加硫型6で加硫されたベルトスリーブ4Aの温度を脱型可能な温度まで低下させた後に、図9のように加硫型6から加硫済みのベルトスリーブ4Aを取り出すことができるものである。
【0040】
ここで上記のように、未加硫のベルトスリーブ4は加熱・加圧による圧縮によって、内部の空気が排出されており、空気が残っていないので、加硫成形の際の加圧が十分に高いものでない場合でも、加硫して得られたベルトスリーブ4Aには残存空気が発生することがないものである。また同様に未加硫のベルトスリーブ4は加熱・加圧による圧縮によって、層間密着性が高められており、加硫して得られたベルトスリーブ4Aは層間密着性が高いものである。そしてこの加硫ベルトスリーブ4Aを輪切りするように切断加工して、Vベルトなどの伝動ベルトを製造するにあたって、残存空気がない伝動ベルトを得ることができるものであり、また層間密着性が高い伝動ベルトを得ることができるものであり、伝動ベルトのベルト寿命を向上することができるものである。
【0041】
また、既述のように、金型1に装着した未加硫のベルトスリーブ4を加熱・加圧して圧縮することによって、ベルトスリーブ4の厚みは、圧縮前の厚みT1から圧縮後の厚みT2へと薄くなっている。そしてベルトスリーブ4を加硫するために、図6のようにベルトスリーブ4を装着した金型1を加硫型6内に差し込むにあたって、差し込みのためのクリアランスCがベルトスリーブ4の外周と加硫型6の内周との間に必要である。従って、図7のようにブラダー5を膨張させて、ブラダー5に装着したベルトスリーブ4を加硫型6の内周面に押し付けることによって、ベルトスリーブ4を加硫するにあたって、このクリアランスCの寸法分、ベルトスリーブ4は直径が拡径するようにブラダー5によって押し広げられながら加硫型6の内周面に押圧されることになる。このようにベルトスリーブ4の直径が拡径されると、ベルトスリーブ4に円周方向に設けられている心線2はこれに伴なって伸張されることになる。
【0042】
このとき、ブラダー5に装着したベルトスリーブ4が、上記のような圧縮をせずに厚みT1を有するままのものであると、ブラダー5の膨張でベルトスリーブ4を加硫型6の内周に押圧することによってベルトスリーブ4は圧縮されて厚みがT1よりも薄くなるので、クリアランスCの寸法とこの厚みが薄くなる分の寸法の合計の寸法分、ベルトスリーブ4は直径が大きく拡径することになり、このようにベルトスリーブ4の直径が大きく拡径すると心線2の伸張も大きくなる。そして、伝動ベルトとしてベルト外周長が長いものであれば、心線2の伸張が少々大きくなっても、全体としての伸張率はさほど大きくなく、成形に特に影響を与えることはないが、ベルト外周長が1000mm以下程度に短くなると、心線2の全体としての伸張率が無視できない大きさになって、成形にも影響を与えるおそれがある。
【0043】
これに対して本発明では、上記のようにベルトスリーブ4を圧縮して、厚みが圧縮前の厚みT1から圧縮後の厚みT2へと薄くしたベルトスリーブ4を加硫型6内で加硫するようにしているので、ブラダー5の膨張でベルトスリーブ4が加硫型6の内周に押圧されても、ベルトスリーブ4の厚みがT2よりも薄くなることは殆どなく、クリアランスCの寸法分以上にベルトスリーブ4の直径が拡径されることは殆どない。従って、心線2の伸張も大きくなることはないものであり、伝動ベルトとしてベルト外周長が短いものであっても心線2の伸張率はさほど大きくならず、成形に特に影響を与えるようなことなく、ベルト外周長が1000mm以下程度の小さなサイズの伝動ベルトも成形することが可能になるものである。
【0044】
次に、伝動ベルトとして、リブベルトを製造する方法について説明する。金型1の外周に未加硫のベルトスリーブ4を装着し、このベルトスリーブ4をフォーミング装置25で加熱・加圧して圧縮成形した後に取り出すまでは、上記の図1〜図5の工程と同様にして行なうことができる。
【0045】
本実施の形態では、図5の工程の次に、ベルトスリーブ4を加硫型6で加硫するにあたって、加硫型6として、図10(b)に示すように、加硫型6の成形面となる内周面に成形用凸部45を設けたものを用いるものである。成形用凸部45は加硫型6の内周の全周に亘るように突設されるものであり、加硫型6の内周の周方向と直交する方向に所定の一定間隔で平行に多数本設けるようにしてある。またこの成形用凸部45は、リブベルトにリブ9を成形するために既述の図22(a)において設けられる成形用凸部41よりも高さを低くして一回り小さく形成されるものである。加硫型6の他の構成は図6のものと同じである。
【0046】
そして、圧縮成形した未加硫のベルトスリーブ4を装着した金型1を加硫型6内に図10のようにセットし、加熱・冷却ジャケット35で加硫型6を加熱しながら、流体供給路23からエアー等の流体を金型1の外周とブラダー5の内周の間に供給して、図11のようにエアーの圧力でブラダー5を外方へ膨張させることによって、ブラダー5の外周に巻き付けて装着されているベルトスリーブ4が加硫型6の内周面に押し付けられ、ブラダー5と加硫型6の間でベルトスリーブ4を加熱・加圧することができ、ベルトスリーブ4を加硫することができるものである。この加熱・加圧による加硫成形は上記と同じ条件で行なうことができる。またこのようにベルトスリーブ4を加硫型6の内周面に押し付けて加圧すことによって、加硫型6の成形用凸部45でベルトスリーブ4の外周に溝形成用凹部7を成形することができるものである。
【0047】
このように加硫を行なった後、図8の工程と同様にして、ブラダー5を収縮させて元の状態に戻し、また加硫型6を冷却する。ブラダー5がこのように元の状態にまで収縮すると、ブラダー5は外径が小さくなって、加硫されたベルトスリーブ4Aの内径よりも小さくなるので、図12のように、加硫されたベルトスリーブ4Aを加硫型6の内周に残したまま金型1を抜き出すことができる。そして冷却されている加硫型6で加硫されたベルトスリーブ4Aの温度を脱型可能な温度まで低下させた後に、図13のように加硫型6から加硫済みのベルトスリーブ4Aを取り出すことができるものである。
【0048】
このようにして得られた加硫済みのベルトスリーブ4Aの外周には、上記のように加硫型6の成形用凸部45で溝形成用凹部7が成形されており、この溝形成用凹部7は図14(a)に示すように、リブベルトに形成される溝8よりも小さい凹部として形成されている。溝形成用凹部7の深さは、リブベルトに形成される溝8の深さの40〜70%程度が好ましい。そして、ベルトスリーブ4Aの表面を研磨装置などで外周に沿って断面V字形に研磨することによって、図14(b)のように溝8を作製し、このように作製される溝8間にリブ9を形成することができるものである。溝8の研磨は、ベルトスリーブ4Aに成形した溝形成用凹部7の箇所に、溝形成用凹部7を掘り下げるようにして行なわれるものである。従って、ベルトスリーブ4Aを研磨して溝8を作製するにあたって、溝形成用凹部7の部分は研磨する必要がないので、研磨量は溝形成用凹部7の容積分少なくなり、研磨による材料ロスを少なくすることができるものである。研磨による材料ロスを少なくするために、上記のように、溝形成用凹部7の深さをリブベルトの溝8の深さの70%未満に設定するのが好ましいのである。
【0049】
そしてこのように溝8を研磨加工してリブ9を形成した加硫ベルトスリーブ4Aを輪切りするように切断加工することによって、圧縮ゴム層にベルト方向のリブ9を複数本設けたリブベルトを得ることができるものである。
【0050】
ここで、ベルトスリーブ4のゴムには補強用の短繊維42が含有されており、短繊維42がベルトスリーブ4の幅方向に配向していても、上記のようにベルトスリーブ4に加硫型6の内周の成形用凸部41で溝形成用凹部7を成形する際に、溝形成用凹部7の近傍内に含有される短繊維42は、図14(a)のように、溝形成用凹部7の内面に沿うように配向されることになる。しかし、このように短繊維42が溝形成用凹部7の内面に沿うよう配向する部分は、溝8を作製する際に研磨加工される部分であり、溝形成用凹部7の内面に沿うよう配向した短繊維42は溝8を研磨加工することによって除去され、図14(b)に示すように、溝8を研磨して形成されるリブ9中に含有される短繊維42はリブ9の幅方向に配向しているものが多くなる。このため、リブ9の幅方向の剛性が高くなり、ベルト寿命を向上することができるものである。溝形成用凹部7の成形による短繊維42の配向を抑制するために、上記のように、溝形成用凹部7の深さをリブベルトの溝8の深さの40%以上に設定するのが好ましいのである。
【0051】
また、溝形成用凹部7の上から溝8を研磨加工するにあたって、溝形成用凹部7の近傍内に含有される短繊維42は上記のように溝形成用凹部7の内面に沿うように配向しているため、溝8を研磨する方向と短繊維42が配向する方向とが平行に近くなる。このため、溝8を研磨する刃物によって短繊維42は切断され難くなり、図14(b)に示すように、研磨加工された溝8の内面から短繊維42がカールされた状態で長く突出することになる。そしてこのように溝8の内面に短繊維42がカールして長く突出していることによって、リブベルトをプーリに懸架して走行駆動させるにあたって、プーリとリブ9の間に介在される短繊維42の量が増大することになり、プーリにリブ9の表面が直接接触することによって発生する走行時の音を低減することができるものである。
【0052】
次に伝動ベルトとして、リブベルトを製造する他の方法について説明する。まず図1及び図2の工程と同様にして、金型1の外周に未加硫のベルトスリーブ4を装着する。
【0053】
そしてこのように金型1に装着した未加硫のベルトスリーブ4の外周の全面に図15のように短繊維10を植毛する。短繊維10としては、特に限定されるものではないが、レーヨン、綿、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、炭素繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維等を用いることができる。また短繊維10の繊維長は0.1〜5.0mm程度の範囲が好ましく、アスペクト比(長さ/太さ)が30〜300の範囲が好ましい。さらにベルトスリーブ4の外周への短繊維10の植毛密度は1〜5万本/cm2程度が好ましい。勿論これらの範囲に限定されるものではない。
【0054】
ベルトスリーブ4の外周に短繊維10を植毛するにあたっては、公知の静電気植毛装置を用いて行なうことができる。具体的には、ベルトスリーブ4を装着した金型1を回転台(図示省略)に設置し、金型1の軸方向(縦方向)に移動可能にしたスプレーノズル(図示省略)をベルトスリーブ4の外周面に向けて配置する。そして回転台によって金型1を軸回りに周方向へ回転させながら、スプレーノズルからベルトスリーブ4の外周面に水系接着剤を塗布し、ベルトスリーブ4の外周面に接着膜を形成する。水系接着剤としては、例えば、ウレタン系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、スチレン系エマルジョンなどを用いることができる。次に、同様に金型1を回転させながら、金型1の軸方向に移動可能にした短繊維塗布器(図示省略)によってベルトスリーブ4の外周面に短繊維10を付着させる。すなわち、金型1をアースし、短繊維塗布器に設けられた電極板に電圧を印加することによって電界を形成させ、短繊維塗布器の電極板に電着処理を施した短繊維10を供給すると、短繊維10は帯電して、電界から静電力を受けて飛翔し、ベルトスリーブ4の外周面に衝突して接着膜に付着する。ここで電着処理とは、短繊維10の漏洩抵抗値や水分を調整して短繊維10の飛翔性を向上させる処理のことである。そしてこのように短繊維10をベルトスリーブ4の外周面に接着膜によって付着させた後、水系接着剤を自然乾燥もしくは加熱乾燥することによって、短繊維10を接着膜でベルトスリーブ4の外周面に固着させることができるものである。
【0055】
このようにベルトスリーブ4に短繊維10を植毛した後、上記の図4及び図5の工程と同様にして、ベルトスリーブ4をフォーミング装置25にセットし、加熱・加圧してベルトスリーブ4を圧縮成形する。
【0056】
次に、この圧縮成形したベルトスリーブ4を加硫型6で加硫するにあたって、加硫型6として、図16(b)に示すように、加硫型6の成形面となる内周面に成形用凸部41を設けたものを用いる。成形用凸部41は加硫型6の内周の全周に亘るように突設されるものであり、加硫型6の内周の周方向と直交する方向に所定の一定間隔で平行に多数本設けるようにしてある。そしてこの成形用凸部41は、リブベルトにリブ9を成形するために既述の図22(a)において設けられる成形用凸部41と同じ高さ寸法に形成されるものであり、図10(b)において形成される成形用凸部45より一回り大きく形成されるものである。加硫型6の他の構成は図6や図10のものと同じである。
【0057】
そして、圧縮成形した未加硫のベルトスリーブ4を装着した金型1を加硫型6内に図16のようにセットし、加熱・冷却ジャケット35で加硫型6を加熱しながら、流体供給路23からエアー等の流体を金型1の外周とブラダー5の内周の間に供給して、図17のようにエアーの圧力でブラダー5を外方へ膨張させることによって、ブラダー5の外周に巻き付けて装着されているベルトスリーブ4が加硫型6の内周面に押し付けられ、ブラダー5と加硫型6の間でベルトスリーブ4を加熱・加圧することができ、ベルトスリーブ4を加硫することができるものである。この加熱・加圧による加硫成形は上記と同じ条件で行なうことができる。またこのようにベルトスリーブ4を加硫型6の内周面に押し付けて加圧することによって、加硫型6の成形用凸部41でベルトスリーブ4の外周に溝8を成形することができるものである。
【0058】
このように加硫を行なった後、既述の図8の工程と同様にして、ブラダー5を収縮させて元の状態に戻し、また加硫型6を冷却する。ブラダー5がこのように元の状態にまで収縮すると、ブラダー5は外径が小さくなって、加硫されたベルトスリーブ4Aの内径よりも小さくなるので、図18のように、加硫されたベルトスリーブ4Aを加硫型6の内周に残したまま金型1を抜き出すことができる。そして冷却されている加硫型6で加硫されたベルトスリーブ4Aの温度を脱型可能な温度まで低下させた後に、図19のように加硫型6から加硫済みのベルトスリーブ4Aを取り出すことができるものである。
【0059】
このようにして得られた加硫済みのベルトスリーブ4Aの外周には、上記のように加硫型6の成形用凸部41で深いV型の溝8が成形されており、溝8間にリブ9を形成することができるものである。従って本実施の形態では、図14の実施の形態のようにリブ9を形成するための研磨を行なう必要がないものであり、研磨による材料ロスをゼロにすることができるものである。
【0060】
次にこのようにリブ9を形成した加硫ベルトスリーブ4Aを輪切りするように切断加工することによって、図20に示すような、ベルト方向のリブ9をベルト幅方向に複数本設けたリブベルトを得ることができるものである。図20において46は圧縮ゴム層、47は背面ゴム層である。そして、上記のようにベルトスリーブ4の外周面には短繊維10が植毛してあるので、図20のように作製されるリブドベルトのリブ9の表面は短繊維10の植毛層で被覆されている。このようにリブ9の表面を短繊維10で被覆することによって、リブドベルトをプーリに懸架して走行させるにあたって、プーリに対する摩擦係数を小さくすることができるものであり、ベルト走行時の異音の発生を低減することができるものである。
【0061】
尚、本実施形態では、ベルトスリーブ4を金型1の外周に装着した状態で短繊維10を植毛するようにしたが、ベルトスリーブ4の外周側の圧縮ゴム層形成用のゴムシート3bの表面に予め短繊維10を植毛しておいてもよい。この場合にはこのゴムシート3bを金型1に巻き付けることによって、外周面に短繊維10が植毛されたベルトスリーブ4を形成することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図8】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図9】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示す斜視図である。
【図10】本発明の他の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図11】本発明の他の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図12】本発明の他の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図13】本発明の他の実施の形態の一例における、一工程を示す斜視図である。
【図14】本発明の他の実施の形態の一例を示すものであり、(a)(b)はそれぞれベルトスリーブの一部の拡大した断面図である。
【0063】
【図15】本発明のさらに他の実施の形態の一例における、一工程を示す斜視図である。
【図16】本発明のさらに他の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図17】本発明のさらに他の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図18】本発明のさらに他の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図19】本発明のさらに他の実施の形態の一例における、一工程を示す斜視図である。
【図20】本発明のさらに他の実施の形態によって製造される伝動用ベルトの一例を示す一部の拡大断面図である。
【図21】従来例を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ断面図である。
【図22】他の従来例を示すものであり、(a)は成形型の一部の断面図、(b)はベルトスリーブの一部の拡大した断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 金型
2 心線
3 ゴムシート
4 ベルトスリーブ
5 ブラダー
6 加硫型
7 溝形成用凹部
8 溝
9 リブ
10 短繊維
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルトの製造に用いられるベルトスリーブの加硫方法に関するものであり、またこの加硫方法を用いた伝動ベルトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伝動ベルトの製造の一例として、円筒状の金型の外周に心線とゴムシートを巻き付けて未加硫のベルトスリーブを作製し、このベルトスリーブを加熱・加圧して加硫した後に、加硫ベルトスリーブを金型から取り外し、そしてこの加硫ベルトスリーブを輪切りするように切断することによって、伝動ベルトを得る方法がある。そしてこのように金型の外周に巻き付けて装着した未加硫のベルトスリーブを加硫する方法としては、特許文献1など、従来から種々の方法が提案されている。
【0003】
図21は特許文献1で提案されているベルトスリーブの加硫方法を示すものであり、図21(a)のように金型11の外周に未加硫のベルトスリーブ4が装着してある。また12は外型であって、その内周に伸縮自在なジャケット13が取り付けてあり、外型12とジャケット13の間に密閉された空間部14が形成してある。この空間部14には注入排出口15が設けてある。16は加熱蒸気導入筒、17はパッキングである。
【0004】
そして空間部14内の圧力媒体を注入排出口15から排出して図21(a)のようにジャケット13をその内径を広げるように弾性変形させた状態で、ベルトスリーブ4を装着した金型11を外型12のジャケット13の内周に挿入してセットし、次に、加熱蒸気導入筒16から金型11の内側に加熱蒸気を供給して加熱しながら、注入排出口15から空間部14内に圧力流体を注入してジャケット13を内方へ膨張させ、図21(b)のようにジャケット13の内周面でベルトスリーブ4の外周を押圧して加圧することによって、ベルトスリーブ4を加硫することができるものである。図21において18は、ベルトスリーブ4の外周とジャケット13の内周との間のサイズ調整をするために、ジャケット13の内側に装着されたサイズ調整用スリーブである。
【特許文献1】特開平11−156857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように外型12の内周に設けたジャケット13を内方へ膨張させることによって、ジャケット13で未加硫のベルトスリーブ4を加圧し、ベルトスリーブ4の加硫を行なうことができるものであるが、ジャケット13の膨張力ではベルトスリーブ4を十分な圧力で加圧することができないことがある。そしてこのように加圧の圧力が十分でない状態で加硫をすると、ベルトスリーブ4内において、心線の間や、心線とゴムシートの間に存在する空気が十分に押し出されず、ベルトスリーブ4内に空気が残ったまま加硫がなされることになり、加硫したベルトスリーブ4内に残存空気が発生するおそれがあるという問題があった。特にベルトスリーブ4の上下の両端部はジャケット13による加圧が作用し難いので残存空気が多く発生し易いものであった。そしてこのように加硫したベルトスリーブ4に残存空気があると、この加硫ベルトスリーブ4を切断加工して得られる伝動ベルトは、残存空気によってベルト寿命が短くなるものであった。
【0006】
また、ベルトスリーブ4のゴムとして、耐オゾン性、耐熱性、耐寒性などにおいて優れた特性を有するエチレン・α−オレフィンエラストマーが用いられることがあるが、エチレン・α−オレフィンエラストマーは本来粘着性に欠けるために、ベルトスリーブ4に層間剥離が生じ易く、この層間剥離によってベルト寿命が短くなるおそれがあるという問題もあった。
【0007】
また、伝動ベルトとしてリブをベルト方向に沿って設けたリブベルトを製造する場合、加硫したベルトスリーブ4の外周にV溝を研磨加工することによって、V溝間にリブを形成することが行なわれているが、この場合には研磨によってゴムスクラップが多く発生して材料ロスが大きくなる。このため、図22(a)に示すように、未加硫のベルトスリーブ4を加硫する成形型6の内周にV溝8と同形の成形用凸部41を設けておき、ベルトスリーブ4を加硫する際に同時にV溝8をベルトスリーブ4に成形することによって、研磨を行なう必要なくベルトスリーブ4にV溝8を形成して、V溝8間にリブ9を形成することが検討されている。
【0008】
しかしこの場合、ベルトスリーブ4のゴム中には補強用の短繊維42が配合されているが、この短繊維42はV溝8を成形する際に、図22(b)に示すようにV溝8の表面に沿うように配向されることになり、リブ9の幅方向に配向する短繊維42の量が少なくなって、リブ9の幅方向の剛性が低下し、ベルト寿命が短くなるおそれがあるという問題があった。
【0009】
また、図22のように作製される作製されるリブドベルトにあって、リブ9は表面にゴムが露出した状態で形成されているので、プーリに対する摩擦係数が高く、このためベルトを走行させる際に異音が発生し易いという問題があった。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、残存空気が発生することなく、また層間密着性を高めた状態で、ベルトスリーブを加硫することができ、ベルト寿命を向上させた伝動ベルトを製造することができる、伝動ベルト製造用ベルトスリーブの加硫方法を提供することを目的とするものであり、さらに研磨による材料ロスを少なくすることができると共にベルト寿命を向上させた伝動ベルトを製造することができる伝動ベルトの製造方法を提供することを目的とするものである。加えて、ベルト走行時の異音の発生を低減した伝動ベルトを製造することができる伝動ベルトの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る伝動ベルト製造用ベルトスリーブの加硫方法は、金型1の外周面に少なくとも心線2とゴムシート3からなる未加硫のベルトスリーブ4を巻き付けて装着し、この金型1に装着したベルトスリーブ4を加圧・加熱して圧縮する成形を行なった後、加硫工程でベルトスリーブ4を加圧・加熱することによって、ベルトスリーブ4を加硫することを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、未加硫のベルトスリーブ4を圧縮する成形を行なうことによって、ベルトスリーブ4内において心線2の間や心線2とゴムシート3の間に存在する空気を追い出してエアー抜きをすることができ、空気が残らない状態でベルトスリーブ4を加硫することができるものであり、残存空気が発生することなくベルトスリーブ4を加硫することができるものである。
【0013】
また本発明の請求項2に係る伝動ベルト製造用ベルトスリーブの加硫方法は、外周にブラダー5を設けた金型1のブラダー5の外周に、少なくとも心線2とゴムシート3からなる未加硫のベルトスリーブ4を巻き付けて装着し、ベルトスリーブ4を外周側から加圧しつつ加熱して圧縮する成形を行なった後、このベルトスリーブ4を装着した金型1を加硫型6内に設置し、加硫型6を加熱しつつ、金型1のブラダー5を膨張させてベルトスリーブ4を加硫型6の内周に押圧して加圧することによって、ベルトスリーブ4を加硫することを特徴とするものである。
【0014】
この発明によれば、金型1のブラダー5の外周に装着したベルトスリーブ4を外周側から加圧しつつ加熱して圧縮することによって、ベルトスリーブ4内において心線2の間や心線2とゴムシート3の間に存在する空気を追い出してエアー抜きをすることができ、この後にブラダー5を膨張させてベルトスリーブ4を加硫型6の内周に押圧して加圧することによって、空気が残らない状態でベルトスリーブ4を加硫することができるものであり、残存空気が発生することなくベルトスリーブ4を加硫することができるものである。またベルトスリーブ4をこのように圧縮することによって、ベルトスリーブ4の厚みを小さくすることができるものであり、金型1を加硫型6内に配置してブラダー5を膨張させ、ベルトスリーブ4を加硫型6の内周に押圧して加硫するにあたって、ベルトスリーブ4を拡径させる量を小さくすることができ、ベルトスリーブ4の拡径変形による心線2の伸び率を小さくすることができるものである。
【0015】
また請求項3に係る発明は、請求項1又は2のゴムシート3として、エチレン・α−オレフィンエラストマーをゴム材質として形成されるものを用いることを特徴とするものである。
【0016】
この発明によれば、未加硫のベルトスリーブ4を加熱・加圧して圧縮することによって、本来粘着性が低いエチレン・α−オレフィンエラストマーを加熱して粘着性を高めた状態で、ゴムの層同士やゴムの層と心線を加圧して密着させることができ、層間密着性を高めた状態でベルトスリーブ4を加硫することができるものである。
【0017】
また本発明の請求項4に係る伝動ベルトの製造方法は、外周にブラダー5を設けた金型1のブラダー5の外周に、少なくとも心線2とゴムシート3からなる未加硫のベルトスリーブ4を巻き付けて装着し、ベルトスリーブ4を外周側から加圧しつつ加熱して圧縮する成形を行なった後、このベルトスリーブ4を装着した金型1を加硫型6内に設置し、加硫型6を加熱しつつ、金型1のブラダー5を膨張させてベルトスリーブ4を加硫型6の内周に押圧して加圧することによって、ベルトスリーブ4の外周に溝形成用凹部7を成形しつつベルトスリーブ4を加硫し、この加硫したベルトスリーブ4の溝形成用凹部7の箇所に溝形成用凹部7より深い溝8を研磨加工して、溝8間にリブ9を形成することを特徴とするものである。
【0018】
この発明によれば、ベルトスリーブ4を加硫する際に、溝8より浅い溝形成用凹部7をベルトスリーブ4に成形し、溝形成用凹部7の箇所を深く掘り下げるようにベルトスリーブ4を研磨することによってリブ9を形成するための溝8を作製することができるものであり、溝形成用凹部7の容積分、ベルトスリーブ4を研磨する量を少なくすることができ、研磨による材料ロスを少なくすることができると共に、溝形成用凹部7を成形する際に短繊維が溝形成用凹部7の表面に沿って配向しても、この短繊維が配向する部分は溝8を研磨加工する際に除去される部分であり、リブ9の幅方向に配向する短繊維の量を確保することができるものである。
【0019】
また本発明の請求項5に係る伝動ベルトの製造方法は、外周に伸縮自在なブラダー5を設けた金型1のブラダー5の外周に、少なくとも心線2とゴムシート3からなる未加硫のベルトスリーブ4を巻き付けて装着し、ベルトスリーブ4の外周面には短繊維10が植毛してあると共に、この短繊維10を植毛したベルトスリーブ4を外周側から加圧しつつ加熱して圧縮する成形を行なった後、このベルトスリーブ4を装着した金型1を加硫型6内に設置し、加硫型6を加熱しつつ、金型1のブラダー5を膨張させてベルトスリーブ4を加硫型6の内周に押圧して加圧することによって、ベルトスリーブ4の外周に溝8を成形しつつベルトスリーブ4を加硫すると共に溝8間にリブ9を形成することを特徴とするものである。
【0020】
この発明によれば、植毛した短繊維10でリブ9の表面を被覆した伝動ベルトを製造することができるものであり、表面を被覆する短繊維10でプーリに対するリブ9の摩擦係数を小さくすることができ、ベルト走行時の異音の発生を低減することができるものである。
【0021】
また請求項6に係る発明は、請求項4又は請求項5のゴムシート3として、エチレン・α−オレフィンエラストマーをゴム材質として形成されるものを用いることを特徴とするものである。
【0022】
この発明によれば、未加硫のベルトスリーブ4を加熱・加圧して圧縮することによって、本来粘着性が低いエチレン・α−オレフィンエラストマーを加熱して粘着性を高めた状態で、ゴムの層同士やゴムの層と心線を加圧して密着させることができ、層間密着性を高めた状態でベルトスリーブ4を加硫することができるものであり、ベルト寿命を向上させた伝動ベルトを得ることができるものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、加硫に先立って、未加硫のベルトスリーブ4を加熱・加圧して圧縮する成形を行なうことによって、心線2の間や心線2とゴムシート3の間に存在する空気を追い出してベルトスリーブ4内からエアー抜きをすることができ、空気が残らない状態でベルトスリーブ4を加硫することができるものであり、またベルトスリーブ4のゴムとしてエチレン・α−オレフィンエラストマーを用いる場合、層間密着性を高めた状態でベルトスリーブ4を加硫することができるものであり、残存空気のない、また層間密着性の高い加硫ベルトスリーブ4を得ることができるものであって、ベルト寿命を向上させた伝動ベルトを製造することができるものである。さらに、加硫に先立ってベルトスリーブ4を圧縮することによって、ベルトスリーブ4の厚みを小さくすることができ、ブラダー5を膨張させてベルトスリーブ4を加硫型6の内周に押圧して加硫するにあたって、ベルトスリーブ4を拡径させる量を小さくすることができて心線2の伸び率を小さくすることができるものであり、外周長の小さな伝動ベルトを製造することが可能になるものである。
【0024】
また本発明によれば、ベルトスリーブ4を加硫する際に、溝8より浅い溝形成用凹部7をベルトスリーブ4に成形することによって、溝形成用凹部7の容積分、ベルトスリーブ4を研磨する量を少なくして溝8を作製することができ、研磨による材料ロスを少なくすることができると共に、溝形成用凹部7を成形する際に短繊維が溝形成用凹部7の表面に沿って配向しても、この短繊維が配向する部分は溝8を研磨加工する際に除去される部分であり、リブ9の幅方向に配向する短繊維の量を確保して、ベルト寿命を向上させた伝動ベルトを製造することができるものである。
【0025】
さらに本発明によれば、ベルトスリーブ4の外周面に短繊維10を植毛しておくことによって、リブ9の表面が短繊維10で被覆された伝動ベルトを製造することができるものであり、摩擦係数を小さくしてベルト走行時の異音の発生を低減することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0027】
図1は本発明において内型として用いる金型1の一例を示すものであり、円柱乃至円筒状に形成してあって、上下両端面にフランジ22a、22bが外周に張り出して設けてある。金型1の外周にはゴムなど伸縮自在で且つ気密性を有する材料で円筒形に形成したブラダー5が設けてある。このブラダー5はその開口の両端の全周を各フランジ22a,22bに密着させて取着してあり、金型1の外周とブラダー5の内周の間は上下両端で密閉されるようにしてある。また金型1には、上端が上のフランジ22aから上方に突出し、下端が金型1内を通って、ブラダー5の内側において金型1の外周面で開口する流体供給路23が設けてあり、流体供給路23を通してエアーなどの流体を金型1の外周とブラダー5の内周の間に供給することができるようにしてある。このように流体供給路23を通して流体を供給すると、金型1の外周とブラダー5の内周の間は上下両端で密閉されているので、ブラダー5は流体の流入に伴なって外方へ膨らんで膨張されるようになっている。またこのように流体供給路23から流体が供給されていないときには、ブラダー5は金型1の外周に密接した状態になっている。
【0028】
このように外周にブラダー5を設けた金型1を内型としてベルトスリーブ4の成形を行なうものであり、まず、金型1のブラダー5の外周に未加硫のベルトスリーブ4を巻き付けて装着する。ベルトスリーブ4は図2に示すように、ブラダー5の外周にスパイラル状に巻き付ける心線2と、ブラダー5の外周に巻き付ける未加硫のゴムシート3の積層体として形成されるものである。図2の実施の形態では、内側から背面ゴム層形成用のゴムシート3(3a)、心線2、圧縮ゴム層形成用のゴムシート3(3b)の順にブラダー5の外周に巻き付けて三層構成にベルトスリーブ4を形成するようにしたが、両ゴムシート3a,3bの間に接着ゴム層形成用のゴムシートを設けるなどしてもよく、上記の層構成に限定されないのはいうまでもない。
【0029】
次に、このように未加硫のベルトスリーブ4を装着した金型1をフォーミング装置25内にセットする。フォーミング装置25は、図3に示すように、上面が開口する有底の円筒状に形成されるものであり、上面が開口する外郭26の上端にリング状のフランジ27を設け、外郭26の円筒状の側壁26aの内側において円筒状の伸縮自在なゴムなどで形成される加圧筒28を設けることによって、形成してある。この加圧筒28は上端開口の全周をフランジ27の下面に密着させて取着すると共に下端開口の全周を外郭26の底面に密着させて取着してあり、外郭26の側壁26aと加圧筒28の間に密閉された環状の空間29が形成されるようになっている。外郭26の側壁26aにはエアー供給路30が接続してあり、このエアー供給路30からエアーを密閉空間29内に供給できるようにしてある。また密閉空間29内には環状の蒸気缶31が配置してあり、蒸気缶31に接続した蒸気供給路32が外郭26の側壁26aを通して導出してある。
【0030】
そして、未加硫のベルトスリーブ4を装着した金型1をフォーミング装置25内に上面の開口から図3のように差し入れてセットした後、蒸気供給路32から蒸気缶31に加熱蒸気を供給して密閉空間29内を加熱しつつ、エアー供給路30から密閉空間29内に高圧エアーを供給することによって、加圧筒28を内方へ膨らませて膨張させる。このように加圧筒28を内方へ膨張させることによって、図4に示すように、金型1に装着された未加硫のベルトスリーブ4の外周にこの加圧筒28を押圧させ、ベルトスリーブ4を外周側から加圧することができるものである。このとき密閉空間29内は蒸気缶31で加熱されているので、加圧筒28を通して伝達される熱で加熱を行ないながら、加圧筒28でベルトスリーブ4を加圧することができるものである。この加熱・加圧による成形は、100〜120℃程度の温度、0.5〜1.5MPa程度の圧力で、2〜10分間程度の、ベルトスリーブ4を加硫させない条件で行なうものであり、このように未加硫のベルトスリーブ4を外側から加熱・加圧することによって、ベルトスリーブ4を圧縮して、心線2の間や、心線2とゴムシート3の間に存在する空気を追い出すことができ、ベルトスリーブ4からエアー抜きをすることができるものである。
【0031】
ここで、ベルトスリーブ4のゴムシート3として、エチレン・α−オレフィンエラストマーをゴム材質とするものが用いられつつある。このエチレン・α−オレフィンエラストマーは耐オゾン性、耐熱性、耐寒性などにおいて優れた特性を有し、しかも脱ハロゲンという近年の要求も満たしているために、伝動ベルトの材質として適しているのである。このエチレン・α−オレフィンエラストマーは、エチレンと、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテンなどのα−オレフィンとの共重合体、あるいはエチレンとα−オレフィンと非共役ジエンの共重合体であり、ジエン成分としては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、エチレンノルボルネンなどの炭素原子数5〜15の非共役ジエンを挙げることができる。このようなエチレン・α−オレフィンエラストマーとして、具体的には、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)などを挙げることができるが、なかでもEPDMがよく用いられる。
【0032】
しかしこのエチレン・α−オレフィンエラストマーは本来粘着性に欠ける性質を有するため、ベルトスリーブ4の層間密着性、例えば背面ゴム層形成用のゴムシート3aと圧縮ゴム層形成用のゴムシート3bの間、圧縮ゴム層形成用のゴムシート3bと心線2の間などで層間密着性が不十分になり、ベルトスリーブ4に層間剥離が生じ易い。
【0033】
これに対して、本発明では、上記のように金型1に装着した未加硫のベルトスリーブ4をフォーミング装置25内にセットして、ベルトスリーブ4を外周側から加熱しながら加圧して圧縮するようにしているため、加熱によってエチレン・α−オレフィンエラストマーの粘着力を高めた状態で、加圧圧縮してベルトスリーブ4内の層間を密着させることができるものであり、層間密着性が高いベルトスリーブ4を得ることができるものである。ベルトスリーブ4のゴムをエチレン・α−オレフィンエラストマーで形成する場合の、この加熱・加圧による圧縮は、120〜170℃程度の温度、0.5〜1.5MPa程度の圧力、2〜10分間程度の、ベルトスリーブ4を加硫させない条件で行なうのが好ましい。
【0034】
尚、図3のフォーミング装置25では、加圧は加圧筒28で、加熱は蒸気缶31で行なうようにしたが、熱風発生器でプレヒートされた高温の高圧エアーをエアー供給路30から密閉空間29内に供給することによって、この高温・高圧のエアーで加圧筒28を内方へ膨らませてベルトスリーブ4を加圧すると共に加圧筒28を通してベルトスリーブ4を加熱するようにしてもよい。このとき、密閉空間29内のエアーを少しずつ排気しながら常にエアー供給路30から高温・高圧のエアーが供給されるようにしてあり、加圧筒28を通したベルトスリーブ4の加熱温度が一定に保たれるようにしてある。
【0035】
上記のように金型1に装着した未加硫のベルトスリーブ4をフォーミング装置25内で加熱・加圧して圧縮することによって、圧縮前の厚みT1から圧縮後の厚みT2へと、ベルトスリーブ4の厚みは薄くなる(T1>T2)。そしてベルトスリーブ4を圧縮する成形が終了した後、密閉空間29へのエアーの供給を停止し、加圧筒28を元の状態に収縮させ、図5のように、未加硫のベルトスリーブ4を装着した金型1をフォーミング装置25から取り出す。
【0036】
次に加硫工程で、加硫型6を外型として用いてベルトスリーブ4を加硫する。図6は加硫型6を示すものであり、上面が開口する円筒状に形成してあり、加硫型6の側壁6aの内部は全周に亘って密閉された中空にして、加熱・冷却ジャケット35が形成されるようにしてある。この加熱・冷却ジャケット35には、蒸気などの加熱媒体を供給する熱媒供給路36と、冷却水などの冷却媒体を供給する冷媒供給路37が接続してあり、加硫型6を加熱及び冷却することができるようにしてある。
【0037】
そして上記のように圧縮成形した未加硫のベルトスリーブ4を装着した金型1を、加硫型6内に上面の開口から差し込んで図6のようにセットする。次に、熱媒供給路36から加熱媒体を加熱・冷却ジャケット35に供給して加硫型6を加熱しながら、流体供給路23を通してエアーなどの流体を金型1の外周とブラダー5の内周の間に供給することによって、図7のようにエアーの圧力でブラダー5を外方へ膨らませるように膨張させる。このようにブラダー5が外方へ膨張すると、ブラダー5の外周に巻き付けて装着されているベルトスリーブ4が加硫型6の内周面に押し付けられ、ベルトスリーブ4は内側から加圧される。このようにして加熱・冷却ジャケット35で加熱しながら、膨張したブラダー5と加硫型6の間でベルトスリーブ4を加圧することによって、ベルトスリーブ4を加硫することができるものである。この加熱・加圧による加硫成形は、120〜170℃程度の温度、0.5〜1.5MPa程度の圧力で、15〜30分間程度の条件で行なうのが好ましい。
【0038】
このように加硫を行なった後、流体供給路23からの流体の供給を停止することによって、ブラダー5を収縮させて元の状態に戻し、また冷媒供給路37から加熱・冷却ジャケット35に冷媒を供給して加硫型6を冷却する。ブラダー5がこのように元の状態にまで収縮すると、ブラダー5は外径が小さくなって、加硫されたベルトスリーブ4Aの内径よりも小さくなるので、図8のように、加硫されたベルトスリーブ4Aを加硫型6の内周に残したまま金型1を抜き出すことができる。
【0039】
そして冷却されている加硫型6で加硫されたベルトスリーブ4Aの温度を脱型可能な温度まで低下させた後に、図9のように加硫型6から加硫済みのベルトスリーブ4Aを取り出すことができるものである。
【0040】
ここで上記のように、未加硫のベルトスリーブ4は加熱・加圧による圧縮によって、内部の空気が排出されており、空気が残っていないので、加硫成形の際の加圧が十分に高いものでない場合でも、加硫して得られたベルトスリーブ4Aには残存空気が発生することがないものである。また同様に未加硫のベルトスリーブ4は加熱・加圧による圧縮によって、層間密着性が高められており、加硫して得られたベルトスリーブ4Aは層間密着性が高いものである。そしてこの加硫ベルトスリーブ4Aを輪切りするように切断加工して、Vベルトなどの伝動ベルトを製造するにあたって、残存空気がない伝動ベルトを得ることができるものであり、また層間密着性が高い伝動ベルトを得ることができるものであり、伝動ベルトのベルト寿命を向上することができるものである。
【0041】
また、既述のように、金型1に装着した未加硫のベルトスリーブ4を加熱・加圧して圧縮することによって、ベルトスリーブ4の厚みは、圧縮前の厚みT1から圧縮後の厚みT2へと薄くなっている。そしてベルトスリーブ4を加硫するために、図6のようにベルトスリーブ4を装着した金型1を加硫型6内に差し込むにあたって、差し込みのためのクリアランスCがベルトスリーブ4の外周と加硫型6の内周との間に必要である。従って、図7のようにブラダー5を膨張させて、ブラダー5に装着したベルトスリーブ4を加硫型6の内周面に押し付けることによって、ベルトスリーブ4を加硫するにあたって、このクリアランスCの寸法分、ベルトスリーブ4は直径が拡径するようにブラダー5によって押し広げられながら加硫型6の内周面に押圧されることになる。このようにベルトスリーブ4の直径が拡径されると、ベルトスリーブ4に円周方向に設けられている心線2はこれに伴なって伸張されることになる。
【0042】
このとき、ブラダー5に装着したベルトスリーブ4が、上記のような圧縮をせずに厚みT1を有するままのものであると、ブラダー5の膨張でベルトスリーブ4を加硫型6の内周に押圧することによってベルトスリーブ4は圧縮されて厚みがT1よりも薄くなるので、クリアランスCの寸法とこの厚みが薄くなる分の寸法の合計の寸法分、ベルトスリーブ4は直径が大きく拡径することになり、このようにベルトスリーブ4の直径が大きく拡径すると心線2の伸張も大きくなる。そして、伝動ベルトとしてベルト外周長が長いものであれば、心線2の伸張が少々大きくなっても、全体としての伸張率はさほど大きくなく、成形に特に影響を与えることはないが、ベルト外周長が1000mm以下程度に短くなると、心線2の全体としての伸張率が無視できない大きさになって、成形にも影響を与えるおそれがある。
【0043】
これに対して本発明では、上記のようにベルトスリーブ4を圧縮して、厚みが圧縮前の厚みT1から圧縮後の厚みT2へと薄くしたベルトスリーブ4を加硫型6内で加硫するようにしているので、ブラダー5の膨張でベルトスリーブ4が加硫型6の内周に押圧されても、ベルトスリーブ4の厚みがT2よりも薄くなることは殆どなく、クリアランスCの寸法分以上にベルトスリーブ4の直径が拡径されることは殆どない。従って、心線2の伸張も大きくなることはないものであり、伝動ベルトとしてベルト外周長が短いものであっても心線2の伸張率はさほど大きくならず、成形に特に影響を与えるようなことなく、ベルト外周長が1000mm以下程度の小さなサイズの伝動ベルトも成形することが可能になるものである。
【0044】
次に、伝動ベルトとして、リブベルトを製造する方法について説明する。金型1の外周に未加硫のベルトスリーブ4を装着し、このベルトスリーブ4をフォーミング装置25で加熱・加圧して圧縮成形した後に取り出すまでは、上記の図1〜図5の工程と同様にして行なうことができる。
【0045】
本実施の形態では、図5の工程の次に、ベルトスリーブ4を加硫型6で加硫するにあたって、加硫型6として、図10(b)に示すように、加硫型6の成形面となる内周面に成形用凸部45を設けたものを用いるものである。成形用凸部45は加硫型6の内周の全周に亘るように突設されるものであり、加硫型6の内周の周方向と直交する方向に所定の一定間隔で平行に多数本設けるようにしてある。またこの成形用凸部45は、リブベルトにリブ9を成形するために既述の図22(a)において設けられる成形用凸部41よりも高さを低くして一回り小さく形成されるものである。加硫型6の他の構成は図6のものと同じである。
【0046】
そして、圧縮成形した未加硫のベルトスリーブ4を装着した金型1を加硫型6内に図10のようにセットし、加熱・冷却ジャケット35で加硫型6を加熱しながら、流体供給路23からエアー等の流体を金型1の外周とブラダー5の内周の間に供給して、図11のようにエアーの圧力でブラダー5を外方へ膨張させることによって、ブラダー5の外周に巻き付けて装着されているベルトスリーブ4が加硫型6の内周面に押し付けられ、ブラダー5と加硫型6の間でベルトスリーブ4を加熱・加圧することができ、ベルトスリーブ4を加硫することができるものである。この加熱・加圧による加硫成形は上記と同じ条件で行なうことができる。またこのようにベルトスリーブ4を加硫型6の内周面に押し付けて加圧すことによって、加硫型6の成形用凸部45でベルトスリーブ4の外周に溝形成用凹部7を成形することができるものである。
【0047】
このように加硫を行なった後、図8の工程と同様にして、ブラダー5を収縮させて元の状態に戻し、また加硫型6を冷却する。ブラダー5がこのように元の状態にまで収縮すると、ブラダー5は外径が小さくなって、加硫されたベルトスリーブ4Aの内径よりも小さくなるので、図12のように、加硫されたベルトスリーブ4Aを加硫型6の内周に残したまま金型1を抜き出すことができる。そして冷却されている加硫型6で加硫されたベルトスリーブ4Aの温度を脱型可能な温度まで低下させた後に、図13のように加硫型6から加硫済みのベルトスリーブ4Aを取り出すことができるものである。
【0048】
このようにして得られた加硫済みのベルトスリーブ4Aの外周には、上記のように加硫型6の成形用凸部45で溝形成用凹部7が成形されており、この溝形成用凹部7は図14(a)に示すように、リブベルトに形成される溝8よりも小さい凹部として形成されている。溝形成用凹部7の深さは、リブベルトに形成される溝8の深さの40〜70%程度が好ましい。そして、ベルトスリーブ4Aの表面を研磨装置などで外周に沿って断面V字形に研磨することによって、図14(b)のように溝8を作製し、このように作製される溝8間にリブ9を形成することができるものである。溝8の研磨は、ベルトスリーブ4Aに成形した溝形成用凹部7の箇所に、溝形成用凹部7を掘り下げるようにして行なわれるものである。従って、ベルトスリーブ4Aを研磨して溝8を作製するにあたって、溝形成用凹部7の部分は研磨する必要がないので、研磨量は溝形成用凹部7の容積分少なくなり、研磨による材料ロスを少なくすることができるものである。研磨による材料ロスを少なくするために、上記のように、溝形成用凹部7の深さをリブベルトの溝8の深さの70%未満に設定するのが好ましいのである。
【0049】
そしてこのように溝8を研磨加工してリブ9を形成した加硫ベルトスリーブ4Aを輪切りするように切断加工することによって、圧縮ゴム層にベルト方向のリブ9を複数本設けたリブベルトを得ることができるものである。
【0050】
ここで、ベルトスリーブ4のゴムには補強用の短繊維42が含有されており、短繊維42がベルトスリーブ4の幅方向に配向していても、上記のようにベルトスリーブ4に加硫型6の内周の成形用凸部41で溝形成用凹部7を成形する際に、溝形成用凹部7の近傍内に含有される短繊維42は、図14(a)のように、溝形成用凹部7の内面に沿うように配向されることになる。しかし、このように短繊維42が溝形成用凹部7の内面に沿うよう配向する部分は、溝8を作製する際に研磨加工される部分であり、溝形成用凹部7の内面に沿うよう配向した短繊維42は溝8を研磨加工することによって除去され、図14(b)に示すように、溝8を研磨して形成されるリブ9中に含有される短繊維42はリブ9の幅方向に配向しているものが多くなる。このため、リブ9の幅方向の剛性が高くなり、ベルト寿命を向上することができるものである。溝形成用凹部7の成形による短繊維42の配向を抑制するために、上記のように、溝形成用凹部7の深さをリブベルトの溝8の深さの40%以上に設定するのが好ましいのである。
【0051】
また、溝形成用凹部7の上から溝8を研磨加工するにあたって、溝形成用凹部7の近傍内に含有される短繊維42は上記のように溝形成用凹部7の内面に沿うように配向しているため、溝8を研磨する方向と短繊維42が配向する方向とが平行に近くなる。このため、溝8を研磨する刃物によって短繊維42は切断され難くなり、図14(b)に示すように、研磨加工された溝8の内面から短繊維42がカールされた状態で長く突出することになる。そしてこのように溝8の内面に短繊維42がカールして長く突出していることによって、リブベルトをプーリに懸架して走行駆動させるにあたって、プーリとリブ9の間に介在される短繊維42の量が増大することになり、プーリにリブ9の表面が直接接触することによって発生する走行時の音を低減することができるものである。
【0052】
次に伝動ベルトとして、リブベルトを製造する他の方法について説明する。まず図1及び図2の工程と同様にして、金型1の外周に未加硫のベルトスリーブ4を装着する。
【0053】
そしてこのように金型1に装着した未加硫のベルトスリーブ4の外周の全面に図15のように短繊維10を植毛する。短繊維10としては、特に限定されるものではないが、レーヨン、綿、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、炭素繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維等を用いることができる。また短繊維10の繊維長は0.1〜5.0mm程度の範囲が好ましく、アスペクト比(長さ/太さ)が30〜300の範囲が好ましい。さらにベルトスリーブ4の外周への短繊維10の植毛密度は1〜5万本/cm2程度が好ましい。勿論これらの範囲に限定されるものではない。
【0054】
ベルトスリーブ4の外周に短繊維10を植毛するにあたっては、公知の静電気植毛装置を用いて行なうことができる。具体的には、ベルトスリーブ4を装着した金型1を回転台(図示省略)に設置し、金型1の軸方向(縦方向)に移動可能にしたスプレーノズル(図示省略)をベルトスリーブ4の外周面に向けて配置する。そして回転台によって金型1を軸回りに周方向へ回転させながら、スプレーノズルからベルトスリーブ4の外周面に水系接着剤を塗布し、ベルトスリーブ4の外周面に接着膜を形成する。水系接着剤としては、例えば、ウレタン系エマルジョン、アクリル系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、スチレン系エマルジョンなどを用いることができる。次に、同様に金型1を回転させながら、金型1の軸方向に移動可能にした短繊維塗布器(図示省略)によってベルトスリーブ4の外周面に短繊維10を付着させる。すなわち、金型1をアースし、短繊維塗布器に設けられた電極板に電圧を印加することによって電界を形成させ、短繊維塗布器の電極板に電着処理を施した短繊維10を供給すると、短繊維10は帯電して、電界から静電力を受けて飛翔し、ベルトスリーブ4の外周面に衝突して接着膜に付着する。ここで電着処理とは、短繊維10の漏洩抵抗値や水分を調整して短繊維10の飛翔性を向上させる処理のことである。そしてこのように短繊維10をベルトスリーブ4の外周面に接着膜によって付着させた後、水系接着剤を自然乾燥もしくは加熱乾燥することによって、短繊維10を接着膜でベルトスリーブ4の外周面に固着させることができるものである。
【0055】
このようにベルトスリーブ4に短繊維10を植毛した後、上記の図4及び図5の工程と同様にして、ベルトスリーブ4をフォーミング装置25にセットし、加熱・加圧してベルトスリーブ4を圧縮成形する。
【0056】
次に、この圧縮成形したベルトスリーブ4を加硫型6で加硫するにあたって、加硫型6として、図16(b)に示すように、加硫型6の成形面となる内周面に成形用凸部41を設けたものを用いる。成形用凸部41は加硫型6の内周の全周に亘るように突設されるものであり、加硫型6の内周の周方向と直交する方向に所定の一定間隔で平行に多数本設けるようにしてある。そしてこの成形用凸部41は、リブベルトにリブ9を成形するために既述の図22(a)において設けられる成形用凸部41と同じ高さ寸法に形成されるものであり、図10(b)において形成される成形用凸部45より一回り大きく形成されるものである。加硫型6の他の構成は図6や図10のものと同じである。
【0057】
そして、圧縮成形した未加硫のベルトスリーブ4を装着した金型1を加硫型6内に図16のようにセットし、加熱・冷却ジャケット35で加硫型6を加熱しながら、流体供給路23からエアー等の流体を金型1の外周とブラダー5の内周の間に供給して、図17のようにエアーの圧力でブラダー5を外方へ膨張させることによって、ブラダー5の外周に巻き付けて装着されているベルトスリーブ4が加硫型6の内周面に押し付けられ、ブラダー5と加硫型6の間でベルトスリーブ4を加熱・加圧することができ、ベルトスリーブ4を加硫することができるものである。この加熱・加圧による加硫成形は上記と同じ条件で行なうことができる。またこのようにベルトスリーブ4を加硫型6の内周面に押し付けて加圧することによって、加硫型6の成形用凸部41でベルトスリーブ4の外周に溝8を成形することができるものである。
【0058】
このように加硫を行なった後、既述の図8の工程と同様にして、ブラダー5を収縮させて元の状態に戻し、また加硫型6を冷却する。ブラダー5がこのように元の状態にまで収縮すると、ブラダー5は外径が小さくなって、加硫されたベルトスリーブ4Aの内径よりも小さくなるので、図18のように、加硫されたベルトスリーブ4Aを加硫型6の内周に残したまま金型1を抜き出すことができる。そして冷却されている加硫型6で加硫されたベルトスリーブ4Aの温度を脱型可能な温度まで低下させた後に、図19のように加硫型6から加硫済みのベルトスリーブ4Aを取り出すことができるものである。
【0059】
このようにして得られた加硫済みのベルトスリーブ4Aの外周には、上記のように加硫型6の成形用凸部41で深いV型の溝8が成形されており、溝8間にリブ9を形成することができるものである。従って本実施の形態では、図14の実施の形態のようにリブ9を形成するための研磨を行なう必要がないものであり、研磨による材料ロスをゼロにすることができるものである。
【0060】
次にこのようにリブ9を形成した加硫ベルトスリーブ4Aを輪切りするように切断加工することによって、図20に示すような、ベルト方向のリブ9をベルト幅方向に複数本設けたリブベルトを得ることができるものである。図20において46は圧縮ゴム層、47は背面ゴム層である。そして、上記のようにベルトスリーブ4の外周面には短繊維10が植毛してあるので、図20のように作製されるリブドベルトのリブ9の表面は短繊維10の植毛層で被覆されている。このようにリブ9の表面を短繊維10で被覆することによって、リブドベルトをプーリに懸架して走行させるにあたって、プーリに対する摩擦係数を小さくすることができるものであり、ベルト走行時の異音の発生を低減することができるものである。
【0061】
尚、本実施形態では、ベルトスリーブ4を金型1の外周に装着した状態で短繊維10を植毛するようにしたが、ベルトスリーブ4の外周側の圧縮ゴム層形成用のゴムシート3bの表面に予め短繊維10を植毛しておいてもよい。この場合にはこのゴムシート3bを金型1に巻き付けることによって、外周面に短繊維10が植毛されたベルトスリーブ4を形成することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図4】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図8】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図9】本発明の実施の形態の一例における、一工程を示す斜視図である。
【図10】本発明の他の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図11】本発明の他の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図12】本発明の他の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図13】本発明の他の実施の形態の一例における、一工程を示す斜視図である。
【図14】本発明の他の実施の形態の一例を示すものであり、(a)(b)はそれぞれベルトスリーブの一部の拡大した断面図である。
【0063】
【図15】本発明のさらに他の実施の形態の一例における、一工程を示す斜視図である。
【図16】本発明のさらに他の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図17】本発明のさらに他の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図18】本発明のさらに他の実施の形態の一例における、一工程を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は一部の拡大した断面図である。
【図19】本発明のさらに他の実施の形態の一例における、一工程を示す斜視図である。
【図20】本発明のさらに他の実施の形態によって製造される伝動用ベルトの一例を示す一部の拡大断面図である。
【図21】従来例を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ断面図である。
【図22】他の従来例を示すものであり、(a)は成形型の一部の断面図、(b)はベルトスリーブの一部の拡大した断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 金型
2 心線
3 ゴムシート
4 ベルトスリーブ
5 ブラダー
6 加硫型
7 溝形成用凹部
8 溝
9 リブ
10 短繊維
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の外周面に少なくとも心線とゴムシートからなる未加硫のベルトスリーブを巻き付けて装着し、この金型に装着したベルトスリーブを加圧・加熱して圧縮する成形を行なった後、加硫工程でベルトスリーブを加圧・加熱することによって、ベルトスリーブを加硫することを特徴とする伝動ベルト製造用ベルトスリーブの加硫方法。
【請求項2】
外周に伸縮自在なブラダーを設けた金型のブラダーの外周に、少なくとも心線とゴムシートからなる未加硫のベルトスリーブを巻き付けて装着し、ベルトスリーブを外周側から加圧しつつ加熱して圧縮する成形を行なった後、このベルトスリーブを装着した金型を加硫型内に設置し、加硫型を加熱しつつ、金型のブラダーを膨張させてベルトスリーブを加硫型の内周に押圧して加圧することによって、ベルトスリーブを加硫することを特徴とする伝動ベルト製造用ベルトスリーブの加硫方法。
【請求項3】
上記ゴムシートは、エチレン・α−オレフィンエラストマーをゴム材質として形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の伝動ベルト製造用ベルトスリーブの加硫方法。
【請求項4】
外周に伸縮自在なブラダーを設けた金型のブラダーの外周に、少なくとも心線とゴムシートからなる未加硫のベルトスリーブを巻き付けて装着し、ベルトスリーブを外周側から加圧しつつ加熱して圧縮する成形を行なった後、このベルトスリーブを装着した金型を加硫型内に設置し、加硫型を加熱しつつ、金型のブラダーを膨張させてベルトスリーブを加硫型の内周に押圧して加圧することによって、ベルトスリーブの外周に溝形成用凹部を成形しつつベルトスリーブを加硫し、この加硫したベルトスリーブの溝形成用凹部の箇所に溝形成用凹部より深い溝を研磨加工して、溝間にリブを形成することを特徴とする伝動ベルトの製造方法。
【請求項5】
外周に伸縮自在なブラダーを設けた金型のブラダーの外周に、少なくとも心線とゴムシートからなる未加硫のベルトスリーブを巻き付けて装着し、ベルトスリーブの外周面には短繊維が植毛してあると共に、この短繊維を植毛したベルトスリーブを外周側から加圧しつつ加熱して圧縮する成形を行なった後、このベルトスリーブを装着した金型を加硫型内に設置し、加硫型を加熱しつつ、金型のブラダーを膨張させてベルトスリーブを加硫型の内周に押圧して加圧することによって、ベルトスリーブの外周に溝を成形しつつベルトスリーブを加硫すると共に溝間にリブを形成することを特徴とする伝動ベルトの製造方法。
【請求項6】
上記ゴムシートは、エチレン・α−オレフィンエラストマーをゴム材質として形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の伝動ベルトの製造方法。
【請求項1】
金型の外周面に少なくとも心線とゴムシートからなる未加硫のベルトスリーブを巻き付けて装着し、この金型に装着したベルトスリーブを加圧・加熱して圧縮する成形を行なった後、加硫工程でベルトスリーブを加圧・加熱することによって、ベルトスリーブを加硫することを特徴とする伝動ベルト製造用ベルトスリーブの加硫方法。
【請求項2】
外周に伸縮自在なブラダーを設けた金型のブラダーの外周に、少なくとも心線とゴムシートからなる未加硫のベルトスリーブを巻き付けて装着し、ベルトスリーブを外周側から加圧しつつ加熱して圧縮する成形を行なった後、このベルトスリーブを装着した金型を加硫型内に設置し、加硫型を加熱しつつ、金型のブラダーを膨張させてベルトスリーブを加硫型の内周に押圧して加圧することによって、ベルトスリーブを加硫することを特徴とする伝動ベルト製造用ベルトスリーブの加硫方法。
【請求項3】
上記ゴムシートは、エチレン・α−オレフィンエラストマーをゴム材質として形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の伝動ベルト製造用ベルトスリーブの加硫方法。
【請求項4】
外周に伸縮自在なブラダーを設けた金型のブラダーの外周に、少なくとも心線とゴムシートからなる未加硫のベルトスリーブを巻き付けて装着し、ベルトスリーブを外周側から加圧しつつ加熱して圧縮する成形を行なった後、このベルトスリーブを装着した金型を加硫型内に設置し、加硫型を加熱しつつ、金型のブラダーを膨張させてベルトスリーブを加硫型の内周に押圧して加圧することによって、ベルトスリーブの外周に溝形成用凹部を成形しつつベルトスリーブを加硫し、この加硫したベルトスリーブの溝形成用凹部の箇所に溝形成用凹部より深い溝を研磨加工して、溝間にリブを形成することを特徴とする伝動ベルトの製造方法。
【請求項5】
外周に伸縮自在なブラダーを設けた金型のブラダーの外周に、少なくとも心線とゴムシートからなる未加硫のベルトスリーブを巻き付けて装着し、ベルトスリーブの外周面には短繊維が植毛してあると共に、この短繊維を植毛したベルトスリーブを外周側から加圧しつつ加熱して圧縮する成形を行なった後、このベルトスリーブを装着した金型を加硫型内に設置し、加硫型を加熱しつつ、金型のブラダーを膨張させてベルトスリーブを加硫型の内周に押圧して加圧することによって、ベルトスリーブの外周に溝を成形しつつベルトスリーブを加硫すると共に溝間にリブを形成することを特徴とする伝動ベルトの製造方法。
【請求項6】
上記ゴムシートは、エチレン・α−オレフィンエラストマーをゴム材質として形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の伝動ベルトの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2009−119846(P2009−119846A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136695(P2008−136695)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]