説明

信号生成回路

【課題】 プロセス要因で生じるクロック信号の位相バラツキを抑える。
【解決手段】 信号生成回路100は、クロック信号PLLCKが通るクロック信号線30に1以上のクロックバッファ31が配置され、1以上のクロックバッファ31によりクロック信号PLLCKを遅延させ、遅延したクロック信号に基づき所定の信号を生成する。この信号生成回路100は、前記クロックバッファ31と同一チップ上に形成された複数のクロックバッファ41を有して構成される参照用クロックバッファ40と、参照用クロックバッファ40の遅延量を検知し、この遅延量と予め定められた遅延量との差に基づく位相調整信号PHADJを出力する遅延検知回路50と、位相調整信号PHADJに応じて、クロック信号PLLCKの位相を変える位相調整回路20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上のクロックバッファによりクロック信号を遅延させ、遅延したクロック信号に基づき所定の信号を生成する信号生成回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル信号素子において、その動作タイミングの基準となるクロック信号の位相バラツキが小さいことは極めて重要なことである。
【0003】
このクロック信号の位相バラツキを抑える技術としては、例えば、以下の非特許文献1に記載の技術がある。
【0004】
この文献には、基準クロック信号を基に、各種クロック信号を生成する回路が例示されている。この回路は、いわゆるクロックツリーを構成する回路である。この回路では、基準クロック信号を各種クロック信号用に分岐する前に、PLL(Phase Locked Loop)回路が設けられ、このPLL回路のフィードバック信号として、各種クロック信号のうちの一クロック信号の出力が採用されている。
【0005】
【非特許文献1】CQ出版社発行、Design Wave Magazine、2008年8月号、42頁〜47頁、図6
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記非特許文献1に記載の技術では、PLL回路により、基準クロック信号の位相バラツキを確かに抑えることができるものの、この回路の製造段階での微妙な差異に起因して生じる、つまりプロセス要因で生じる比較的大きな位相バラツキに対して、対処しきれないという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に着目して、プロセス要因で生じるクロック信号の位相バラツキを抑えることができる信号生成回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明では、クロック信号が通るクロック信号線に1以上のクロックバッファが配置され、該1以上のクロックバッファにより該クロック信号を遅延させ、遅延したクロック信号に基づき所定の信号を生成する信号生成回路を提供する。
【0009】
この信号生成回路は、前記1以上のクロックバッファと同一チップ上に形成された複数のクロックバッファを有して構成される参照用クロックバッファと、
前記参照用クロックバッファの遅延量を検知し、該遅延量と予め定められた遅延量との差に基づく位相調整信号を出力する遅延検知回路と、
前記位相調整信号に応じて、前記クロック信号の位相を変える位相調整回路と、
を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、参照用クロックバッファの遅延量を検知することで、クロック信号を遅延させる1以上のクロックバッファの遅延量を間接的に検知し、この検知した値に応じて、位相調整回路によりクロック信号の位相を変えている。よって、本発明によれば、プロセス要因等で生じるクロック信号の位相バラツキを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る信号生成回路の一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
本実施形態の信号生成回路100は、図1に示すように、クロック信号CKが入力するクロック信号入力端1と、クロック信号入力端1に接続されている入力バッファ35と、この入力バッファ35からのクロック信号CKの位相をフィードバック制御して、クロック信号PLLCKを出力するPLL回路10と、このクロック信号PLLCKが通り、先で複数に分岐しているクロック信号線30と、分岐後の各クロック信号線30に接続されている複数のクロックバッファ31,31,…と、この複数のクロックバッファ31,31,…の先に接続され、それぞれが所定の信号DTo1,DTo2,…を出力するD−フリップフロップ回路32a,32b,…と、各D−フリップフロップ回路32a,32b,…の出力端Dに接続されている出力バッファ36a,36b,…と、各出力バッファ36a,36b,…からの信号DTo1,DTo2,…をそれぞれ出力する信号出力端2a,2b,…と、を備えている。
【0013】
さらに、この信号生成回路100は、本実施形態における特徴的な構成要素として、PLL回路10からのクロック信号PLLCKの位相を調整する位相調整回路20と、複数のクロックバッファ41を有して構成される参照用クロックバッファ40と、この参照用クロックバッファ40の遅延量を検知して、位相調整信号PHADJを位相調整回路20へ出力する遅延検知回路50と、PLL回路10からのクロック信号PLLCKが安定化したことを検知して、遅延検知回路50を動作させるSTART0信号を出力する安定化検知回路60と、遅延検知回路50を定期的に動作させるSTART1信号を出力する定期駆動タイマ(定期駆動指示回路)70と、START0信号とSTART1信号との一方の信号の入力に対してSTART信号を遅延検知回路50に出力するOR回路80と、遅延検知回路50の動作を停止させるSTOP信号を遅延検知回路50に出力する検知終了タイマ(停止指示回路)90と、を備えている。
【0014】
PLL回路10は、入力バッファ35からのクロック信号CKが入力するREF入力端と、クロック信号PLLCKを出力するPLLCK出力端と、クロック信号PLLCKが入力するFB入力端とを有している。このPLL回路10のPLLCK出力端にクロック信号線30が接続されている。
【0015】
クロック信号線30中で、PLL回路10のPLLCK出力端と、このクロック信号線30の分岐点との間に、位相調整回路20が配置されている。
【0016】
クロック信号線30の各分岐信号線には、例えば、4個のクロックバッファ31,31,31,31が直列に配置され、さらにその先にD−フリップフロップ回路32a,32b,…が配置されている。
【0017】
各D−フリップフロップ回路32a,32b,…は、4個のクロックバッファ31,31,…を経たクロック信号PLLCKが入力するクロック入力端と、所望の信号が入力するD入力端と、目的の信号を出力するQ出力端とを有している。各D−フリップフロップ回路32a,32b,…は、D入力端に入力した所望の信号の信号値のうち、クロック入力端に入力したクロック信号PLLCKの立ち上がり時の信号値を、目的の信号DTo1,DTo2,…としてQ出力端から出力する。
【0018】
安定化検出回路60は、入力バッファ35からのクロック信号CKが入力した後、PLL回路10のPLLCK出力端からのクロック信号PLLCKの周波数が安定したことを検知すると、前述のSTART0信号を出力する。
【0019】
定期駆動タイマ70は、安定化検出回路60からのSTART0信号が入力してから、所定期間毎に前述のSTART1信号を出力する。なお、所定期間としては、例えば、数ヶ月〜1年程度である。
【0020】
検知終了タイマ90は、OR回路80からSTART信号が出力されてから、後述する遅延検知回路50のカウンタ54の周期をカウントし、例えば、10周期をカウントした時点で、遅延検知回路50へ前述のSTOP信号を出力する。
【0021】
参照用クロックバッファ40は、クロック信号線30の各分岐信号線に配置されているクロックバッファ31と同一仕様のクロックバッファ41を直列に複数接続して構成されている。本実施形態の信号生成回路100は、1チップで構成されている。このため、クロック信号線30の各分岐信号線に配置されているクロックバッファ31と参照用クロックバッファ40を構成する複数のクロックバッファ41とは、同一プロセスで形成されることになるため、製造段階での微妙な差異が実質的にないものとして扱うことができる。この参照用クロックバッファ40のクロックバッファ41の数量は、クロック信号線30の各分岐信号線に配置されているクロックバッファ31の数量が4個の場合、この自然数倍、例えば、8倍の32個である。
【0022】
遅延検知回路50は、図2に示すように、参照クロックバッファ40に出力するパルス信号PUL0を生成するパルス信号生成回路51と、参照クロックバッファ40を通ったパルス信号PUL1をクロック信号PLLCKに同期化させる同期化A回路52aと、クロック信号PLLCKに同期したパルス信号PUL1の立ち上がりを検知するための微分A回路53aと、この微分A回路53aによるパルス信号PUL1信号の立ち上がり検知でカウントを開始するカウンタ54と、参照クロックバッファ40を経ていないパルス信号PUL0をクロック信号PLLCKに同期化させる同期化B回路52bと、クロック信号PLLCKに同期したパルス信号PUL0の立ち上がりを検知するための微分B回路53bと、この微分B回路53bによるパルス信号PUL0の立ち上がり検知でカウンタ54によるカウント数を保持する保持回路55と、保持回路55により保持されたカウント数と予め定められたかウント数との差DEFを出力する比較回路56と、この差に基づく位相調整信号PHADJを位相調整回路20へ出力する位相調整信号生成回路57と、を有している。
【0023】
位相調整回路20は、図3に示すように、PLL回路10からのクロック信号PLLCKの位相を反転させるインバータ21と、ディレイバッファ23及びセレクタ24で構成される複数の位相調整段22,22,…と、遅延検知回路50から送られてきた位相調整信号PHADJに応じて、各位相調整段22のセレクタ24を動作させる調整信号分配器25と、を有している。インバータ21は、クロック信号PLLCKの位相を反転させることで、クロック信号PLLCKの位相を半周期分進ませる役目を担っている。また、位相調整段22は、位相調整段22のセレクタ24で、この位相調整段22のディレイバッファ23を通過したクロック信号PLLCKとこのディレイバッファ23を通過していないクロック信号PLLCKとのうち一方を出力することで、クロック信号PLLCKの遅延量を調整する役目を担っている。したがって、インバータ21と、複数の位相調整段22,22,…とで、クロック信号PLLCKの位相を多段階で可変させる位相可変回路を構成することになる。
【0024】
ここで、例えば、クロック信号PLLCKの周期Tが1600psであり、各位相調整段22のディレイバッファ23による遅延量が200psで、位相調整段22の数、言い換えると、ディレイバッファ23の数が8個であるとする。この場合、位相調整回路20のインバータ21により、クロック信号PLLCKの位相は、このクロック信号PLLCKの半周期T/2分に相当する800ps分早くなる。仮に、全位相調整段22のディレイバッファ23をクロック信号PLLCKが通過しなければ、クロック信号PLLCKの位相は、800ps早いままであり、逆に、全位相調整段22のディレイバッファ23をクロック信号PLLCKが通過すれば、クロック信号PLLCKの位相は、800ps遅くなる。したがって、この位相調整回路20は、-800〜+800psの間で、クロック信号PLLCKの位相を200ps単位で調整できる。
【0025】
このように、位相調整回路20を構成する場合、遅延検知回路50の位相調整信号生成回路57からは、8個のディレイバッファ23のうち、いずれのディレイバッファ23にクロック信号PLLCKを通過させるかを示すため、8ビットの位相調整信号PHADJが出力される。例えば、8ビットの位相調整信号PHADJが「11110000」の場合、第1段〜第4段までのディレイバッファ23にクロック信号PLLCKを通過させ、第5段〜第8段までのディレイバッファ23にクロック信号PLLCKを通過させないことを意味する。調整信号分配器25は、この8ビットの位相調整信号PHADJを受けると、各位相調整段22のセレクタ24に、この位相調整信号PHADJ中の対応ビット値を出力し、各セレクタ24を動作させる。
【0026】
遅延検知回路50の位相調整信号生成回路57は、比較回路56から出力された差DEF基づいて、以上のような8ビット位相調整信号PHADJを出力するため、図4に示すように、各種差DEFに対して、対応する8ビット位相調整信号PHADJを出力する回路構成を成している。なお、位相調整信号生成回路57の回路構成は、ハードウェアで実現してもよいが、図4に示すようなテーブルを予め保持しておき、プロセッサがこのテーブルを参照して、差DEFの入力に対して対応する8ビット位相調整信号PHADJを出力するようにしてもよい。
【0027】
次に、信号生成回路100の動作について説明する。
【0028】
クロック信号入力端1に入力したクロック信号CKは、図1に示すように、PLL回路10のREF入力端に入力すると共に、安定化回路60にも入力する。PLL回路10は、REF入力端にクロック信号CKが入力すると、PLLCK出力端からクロック信号PLLCKを出力する。このクロック信号PLLCKは、位相調整回路20、遅延検知回路50及び安定化回路60に入力すると共に、PLL回路10のFB入力端にも入力する。PLL回路10は、このFB入力端に入力したクロック信号PLLCKを用いて、クロック信号の位相をフィードバック制御する。
【0029】
但し、このPLL回路10では、前述したように、プロセス要因で生じる比較的大きな位相バラツキに対して、対処しきれない。そこで、本実施形態では、以下で説明するように、位相調整回路20でプロセス要因等で生じるクロック信号のバラツキを抑えるようにしている。
【0030】
PLL回路10は、クロック信号CKが入力してから、直ちに、安定したクロック信号PLLCKを出力しない。このため、安定化検出回路60は、このクロック信号CKが入力すると、PLL回路10のPLLCK出力端からのクロック信号PLLCKの周波数が安定したか否かの検知を開始する。そして、安定化検出回路60は、クロック信号PLLCKが安定すると、定期駆動タイマ70及びOR回路80にSTART0信号を出力する。
【0031】
定期駆動タイマ70は、START0信号が入力すると、前述したように、所定期間毎に、例えば、数ヶ月から1年程度毎に、OR回路80にSTART1信号を出力する。
【0032】
OR回路80は、START0信号とSTART1信号との一方の信号の入力に対してSTART信号を遅延検知回路50及び検知終了タイマ90に出力する。
【0033】
遅延検知回路50は、OR回路80からSTART信号が入力すると、つまり、クロック信号PLLCKが安定したとき、さらに、それから所定期間毎に、参照用クロックバッファ40の遅延量の検知動作を開始する。そして、検出終了タイマ90からSTOP信号が入力すると、この検知動作を終了する。
【0034】
OR回路80からSTART信号は、図2に示すように、遅延検知回路50のパルス信号生成回路51に入力する。この結果、パルス信号生成回路51は、図5及び図6に示すように、パルス信号PUL0を定期的に出力し、始める。このパルス信号PUL0は、参照用クロックバッファ40に入力すると共に、同期化B回路52bにも入力する。この同期化B回路52bから出力されたパルス信号PUL0は、微分B回路53bに入力して、ここからパルス信号PUL0の立ち上りタイミングを示す信号が出力される。
【0035】
一方、参照用クロックバッファ40に入力したパルス信号PUL0は、この参照クロックバッファ40の通過過程で所定時間の遅延し、パルス信号PUL1として、同期化A回路52aに入力し、クロック信号PLLCKとの同期処理を経て、この同期化A回路52aから出力される。この同期化A回路52aから出力されたパルス信号PUL1は、微分A回路53aに入力して、ここからパルス信号PUL1の立ち上りタイミングを示す信号が出力される。この信号がカウンタ54に入力すると、カウンタ54は、カウント値を、例えば、「31」に初期化して、カウントダウンを開始する。このカウンタ54によるカウンタ値は、保持回路55に入力する。この保持回路55は、微分B回路53bからの信号が入力したタイミングで、カウンタ54からのカウント値を保持し、これを比較回路56へ出力する。なお、カウント値は、カウンタ54の初期化タイミングが遅くなればなるほど、大きな値になるので、このカウント値は、参照クロックバッファ40の遅延量に正の相関性がある。
【0036】
比較回路56は、このカウント値と予め記憶している値とを比較し、両者の差DEFを位相調整信号生成回路57に出力する。ここで、予め記憶している値は、電源電圧、環境温度及びプロセスがtypical条件のときのカウント値で、例えば、「15」である。なお、typical条件とは、各パラメータが中央値や基準値であるという条件のことである。例えば、電源電圧のtypical条件とは、電源電圧が3v±10%で変動する場合、電源電圧が中央値である3vであるという条件である。位相調整信号生成回路57は、この差DEFに応じた位相調整信号PHADJを生成し、これを位相調整回路20へ送る。
【0037】
仮に、電源電圧、環境温度及びプロセスがtypical条件のときに、4個のクロックバッファ31の遅延量が、3000psであるとすると、24(=4×8)個のクロックバッファ41を有する参照用クロックバッファ40の遅延量は、24000(=3000×8)psとなる。
【0038】
したがって、電源電圧、環境温度及びプロセスがtypical条件のとき、図5に示すように、パルス信号生成回路51からパルス信号PUL0が出力されてから、24000(=3000×8)ps後に、参照用クロックバッファ40からパルス信号PUL1が出力される。このとき、保持回路55が保持するカウント値は、前述の予め記憶している値と同じ「15」になる。比較回路56は、このカウント値「15」が入力すると、予め記憶している値「15」との差DEF「0」を求める。差DEF「0」は、4個のクロックバッファ31による遅延量が目的の遅延量であることを示すので、位相調整信号生成部57は、図4に示すように、クロック信号PLLCKの位相を変えない8ビットの位相調整信号PHADJ「11110000」を生成し、これを位相調整回路20へ出力する。
【0039】
位相調整回路20の調整信号分配器25(図3)は、この8ビットの位相調整信号PHADJ「11110000」を受けると、全8個の位相調整段22のうち、第1段〜第4段までの位相調整段22のセレクタ24にそれぞれ「1」を出力し、第5段〜第8段までの位相調整段22のセレクタ24にそれぞれ「0」を出力する。この結果、PLL回路10からのクロック信号PLLCKは、位相調整回路20のインバータ21で、800ps位相が早まった後、第1段〜第4段までの位相調整段22のディレイバッファ23を通過することで、800ps位相が遅くなる。したがって、この場合、クロック信号PLLCKは、この位相調整回路20の入出力で、その位相は変化しない。
【0040】
また、仮に、図6に示すように、パルス信号生成回路51からパルス信号PUL0が出力されてから、288000(=3000×8×1.2)ps後に、参照用クロックバッファ40からパルス信号PUL1が出力されたとき、保持回路55が保持するカウント値が「18」であるとする。この場合、4個のクロックバッファ31による遅延量は、3600(=3000×1.2)psで、4個のクロックバッファ31による目的の遅延量3000psより、600ps遅いことになる。比較回路56は、前述のカウント値「18」が入力すると、予め記憶している値「15」との差DEF「3」を求める。位相調整信号生成部57は、図4に示すように、この差DEF「3」に基づいた8ビットの位相調整信号PHADJ「10000000」を生成し、これを位相調整回路20へ出力する。
【0041】
位相調整回路20の調整信号分配器25(図3)は、この8ビットの位相調整信号PHADJ「10000000」を受けると、全8個の位相調整段22のうち、第1段目の位相調整段22のセレクタ24にのみ「1」を出力し、残りの第2段〜第8段までの位相調整段22のセレクタ24にそれぞれ「0」を出力する。この結果、PLL回路10からのクロック信号PLLCKは、位相調整回路20のインバータ21で、800ps位相が早まった後、第1段目の位相調整段22のディレイバッファ23を通過することで、200ps位相が遅くなる。したがって、クロック信号PLLCKは、この位相調整回路20の入出力で、600ps位相が早まる。ところで、4個のクロックバッファ31による遅延量は、前述したように、目的の遅延量より600ps遅いので、クロック信号PLLCKは、4個のクロックバッファ31を通過することにより、目的の位相に合うことになる。
【0042】
以上のように、クロック信号線30の各分岐信号線に直列に配置されているクロックバッファ31,31,31,31を通過したクロック信号PLLCKは、目的の位相に合うようになる。このため、この先に接続されている各D−フリップフロップ回路32a,32b,…からは、目的の位相に合った信号DTo1,DTo2,…を出力できるようになる。すなわち、本実施形態では、プロセス要因で生じるクロック信号の位相バラツキを抑えることができ、結果として、目的の位相に合った信号DTo1,DTo2,…を出力できる。
【0043】
検知終了タイマ90は、OR回路80からSTART信号が出力されてから、遅延検知回路50のカウンタ54の周期をカウントし、前述したように、例えば、10周期をカウントした時点で、遅延検知回路50へSTOP信号を出力する。この結果、遅延検知回路50のパルス生成回路51によるパルスPUL0の生成及びカウンタ54によるカウントが終了する、つまり、遅延検知回路50による参照用クロックバッファ40の遅延量の検知が終了する。なお、パルス生成回路51は、START信号の入力してから、STOP信号が入力するまでの間、パルス信号PUL0を定期的に出力するが、STOP信号が入力してから再びSTART信号の入力するまでの間は、クロック信号PLLCKを出力する。このため、参照用クロックバッファ40には、遅延検知回路50による参照用クロックバッファ40の遅延量検知が実行されていないとき、パルス信号PUL0の替わりにクロック信号PLLCKが入力することになる。
【0044】
遅延検知回路50には、定期駆動タイマ70の動作により、前述したように、定期的に、OR回路80からSTART信号が入力し、遅延検知回路50による参照用クロックバッファ40の遅延量検知が実行される。このため、本実施形態では、プロセス要因で生じるクロック信号の位相バラツキを抑えることができるのみならず、クロックバッファ31の経時変化や温度等の環境変化に伴う遅延量の変化にも対応できる。したがって、本実施形態では、長期間に渡り、安定して目的の位相に合った信号DTo1,DTo2,…を出力できる。
【0045】
次に、図7を用いて、位相調整回路の変形例について説明する。
【0046】
以上の実施形態の位相調整回路20は、クロック信号PLLCKの位相を多段階で変化させるものであるが、本変形例の位相調整回路20aは、クロック信号PLLCKの位相を特定時間分だけ早めるか、クロック信号PLLCKの位相を変えないかの二段階でのみ対応するものである。
【0047】
本変形例の位相調整回路20aは、PLL回路10からのクロック信号PLLCKの位相を反転させるインバータ21と、例えば、2個のディレイバッファ23,23と、遅延検知回路50から送られてきた位相調整信号PHADJが入力するセレクタ24と、を有している。
【0048】
セレクタ24は、位相調整信号PHADJに応じて、PLL回路10からのクロック信号PLLCKをそのまま出力するか、又は、インバータ21及び2個のディレイバッファ23,23を通過させたクロック信号PLLCKを出力する。したがって、この位相調整回路20aは、PLL回路10からのクロック信号PLLCKを、400ps(=800-2×200)早めるか、まったく位相を変えないかの二段階でのみ対応できる。
【0049】
遅延検出回路50の位相調整信号生成回路57は、比較回路56からの差DEFが2以上のとき、つまり、4つのクロックバッファ31の遅延量が400ps以上のときに、位相調整信号PHADJ「1」を出力し、これ以外のときに、位相調整信号PHADJ「0」を出力する。この結果、以上の位相調整回路20aにより、4つのクロックバッファ31の遅延量が400ps以上のとき、クロック信号PLLCKの位相を400ps早める。したがって、このような単純な構成の位相調整回路20aであっても、クロック信号のバラツキを抑えることができる。
【0050】
なお、ここでは、2個のディレイバッファ23を用いているが、このディレイバッファ23を3個用いてもよいし、まったく、用いなくてもよい。これらの場合であっても、4つのクロックバッファ31の遅延量が所定以上のときに、クロック信号PLLCKの位相を所定量早めて、クロック信号のバラツキを抑えることができることは言うまでもない。また、位相調整回路は、インバータ21を用いず、1以上のディレイバッファ23とセレクタ24とで構成することも可能である。この場合、4つのクロックバッファ31の遅延量が所定未満のときに、クロック信号PLLCKの位相を所定量遅らせて、クロック信号のバラツキを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る一実施形態における信号生成回路の回路図である。
【図2】本発明に係る一実施形態における遅延検知回路の回路図である。
【図3】本発明に係る一実施形態における位相調整回路の回路図である。
【図4】本発明に係る一実施形態におけるクロックバッファによる遅延量と差DEFと位相調整信号PHADJとの関係を示す説明図である。
【図5】本発明に係る一実施形態における各種信号のタイミングチャート(その1)である。
【図6】本発明に係る一実施形態における各種信号のタイミングチャート(その2)である。
【図7】本発明に係る一実施形態における位相調整回路の変形例の回路図である。
【符号の説明】
【0052】
10:PLL回路、20,20a:位相調整回路、21:インバータ、23:ディレイバッファ、24:セレクタ、25:調整信号分配器、30:クロック信号線、31,41:クロックバッファ、32a,32b,32c,32d:D−フリップフロップ回路、40:参照用ディレイバッファ、50:遅延検知回路、60:安定化検知回路、70:定期駆動タイマ、80:OR回路、90:検知終了タイマ、100:信号生成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号が通るクロック信号線に1以上のクロックバッファが配置され、該1以上のクロックバッファにより該クロック信号を遅延させ、遅延したクロック信号に基づき所定の信号を生成する信号生成回路において、
前記1以上のクロックバッファと同一チップ上に形成された複数のクロックバッファを有して構成される参照用クロックバッファと、
前記参照用クロックバッファの遅延量を検知し、該遅延量と予め定められた遅延量との差に基づく位相調整信号を出力する遅延検知回路と、
前記位相調整信号に応じて、前記クロック信号の位相を変える位相調整回路と、
を備えていることを特徴とする信号生成回路。
【請求項2】
請求項1に記載の信号生成回路において、
前記参照用クロックバッファを構成するクロックバッファは、前記クロック信号線に配置されている前記1以上のクロックバッファと同一仕様であり、且つ該1以上のクロックバッファの数量の自然数倍の数量である、
ことを特徴とする信号生成回路。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか一項に記載の信号生成回路において、
前記クロック信号線に対して、前記1以上のクロックバッファの組が並列に配置され、各組毎に該クロック信号を遅延させて、各組毎に遅延したクロック信号に基づき所定の信号を生成する、
ことを特徴とする信号生成回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の信号生成回路において、
前記遅延検知回路は、検知された前記遅延量と前記予め定められた遅延量との差に対応した前記位相調整信号を出力し、
前記位相調整回路は、前記位相調整信号に応じて、前記クロック信号の位相を多段階で可変させる位相可変回路を有する、
ことを特徴とする信号生成回路
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の信号生成回路において、
前記遅延検知回路は、検知された前記遅延量と前記予め定められた遅延量との差が所定値以上のとき又は所定未満のときに、前記位相調整信号を出力し、
前記位相調整回路は、前記クロック信号の位相を一定量ズラす位相変更回路と、前記位相調整信号の入力に応じて、該位相変更回路を通過したクロック信号と該遅延回路を通過していないクロック信号とのうち一方を出力する選択回路と、を有する、
ことを特徴とする信号生成回路。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の信号生成回路において、
前記クロック信号を出力するPLL(Phase Locked Loop)回路を備えている、
ことを特徴とする信号生成回路。
【請求項7】
請求項6に記載の信号生成回路において、
前記PLL回路からの前記クロック信号が安定化したことを検知して、前記遅延検知回路を動作させる安定化検知回路と、
前記遅延検知回路が動作し始めてから予め定められた時間経過後に、該遅延検知回路の動作を停止させる停止指示回路と、
を備えていることを特徴とする信号生成回路。
【請求項8】
請求項7に記載の信号生成回路において、
所定時間毎に前記遅延検知回路を動作させる定期駆動指示回路
を備えていることを特徴とする信号生成回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−165134(P2010−165134A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6232(P2009−6232)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】